特許異議申立
2024-700393
照明システム
- 審判番号
- 2024-700393
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-113951
- 登録番号
- 7369451
- 請求日
- 2024年04月24日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アイリスオーヤマ株式会社
- 【権利者代理人】臼井 尚
- 【権利者代理人】吉田 稔
- 【権利者代理人】田中 達也
- 【権利者代理人】鈴木 泰光
- 【権利者代理人】鈴木 伸太郎
- 【権利者代理人】小淵 景太
- 【権利者代理人】齊藤 智和
- 【異議申立人】柴田 都
- 審判長/審判官
- 審判長 草野 顕子
- 審判官 稲垣 彰彦
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.121-YAA(H05B) / P1651.537-YAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7369451号発明「照明システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7369451号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第736945号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7369451号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年7月1日の出願であって、令和5年10月18日にその特許権の設定登録がされ、同年10月26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人柴田都(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 4月24日 特許異議の申立て(全請求項)
同年 6月 5日 申立人より手続補正書(方式)の提出
同年 9月12日付け 審尋
同年 9月30日 申立人より回答書の提出
同年11月19日付け 取消理由通知書
同年12月27日 特許権者より意見書・訂正請求書の提出
令和7年 2月 5日 特許権者より手続補正書(方式)の提出
同年 3月11日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
なお、上記通知書の指定期間内に、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 本件訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年12月27日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記制御装置は、前記センサ機器毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データを保有しており、」
とあるのを
「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有しており、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
本件訂正前の請求項1の「前記制御装置は、前記センサ機器毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データを保有しており、前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」なる記載では、「制御装置」が「機器ID」を保有することの特定がなく、また、「制御装置」が保有する「機種属性データ」と「機器ID」の関係の特定もないため、いかにして「制御装置」が、「センサ機器」から送信される「測定データ」に含まれる「機器ID」に基づいて、「測定データの測定値」を「機種属性データ」と対応付けることが可能であるのか、技術的に明確ではなかった。
これに対して、本件訂正後の請求項1は、「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有しており、前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」との記載により、「制御装置」が「機器ID」を保有することを特定するとともに、「前記センサ機器の前記機器ID毎」の「機種属性データ」であることを特定しているから、「制御装置」が、「センサ機器」から送信される「測定データ」に含まれる「機器ID」に基づいて、「測定データの測定値」を「機種属性データ」と対応付けることが可能であることが明確となっている。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
(2)新規事項について
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項との関係を検討すると、【0043】「制御装置Ctは、複数の照明器具Lの灯具IDや複数のセンサ機器Esの機器IDを保有しており、」との記載がなされており、【0076】には、「機種属性データDaは、センサ機器Esnの機器IDごとに、それぞれに対応するセンサ機器Esnの位置情報(図中の場所)、センサ機器Esnの種類(図中の種別)、測定データの単位(図中の説明)が記録されている。」との記載がなされている。
以上を踏まえると、訂正事項1は、本件明細書等の記載により導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
4 訂正についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を制御する制御装置と、
を備え、
前記照明器具は、第1プロトコルを用いた無線通信を行う第1無線通信部と、第2プロトコルを用いた無線通信を行う第2無線通信部と、を有し、
前記制御装置は、前記第1プロトコルを用いて前記複数の照明器具と無線通信を行い、
前記第2プロトコルを用いて前記複数の照明器具のいずれかと無線通信を行うセンサ機器をさらに備え、
前記照明器具は、前記第2無線通信部によって前記センサ機器から受信した測定データを、前記第1プロトコルを用いた無線通信によって転送可能な転送データに変換し、当該転送データを前記第1無線通信部から直接または他の照明器具を介して前記制御装置に転送し、
前記センサ機器は、各々に特有の機器IDを有し、
前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有しており、
前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、
前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する、照明システム。
【請求項2】
前記複数の照明器具は、第1センサ機器から第1測定データを受信する第1照明器具、第2センサ機器から第2測定データを受信する第2照明器具、および前記第1照明器具および前記第2照明器具から前記転送データを受信する第3照明器具を含み、
前記第1測定データおよび前記第2測定データは、各々の測定値と測定時刻とを含み、
前記第3照明器具は、前記第1照明器具からの第1転送データと前記第2照明器具からの第2転送データとを受信した後に、前記第1転送データと前記第2転送データとを一括して前記制御装置に転送する、請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記センサ機器に対応付けられ且つ当該センサ機器が無線通信を行う前記照明器具と前記第2プロトコルを用いて無線通信を行う電子機器をさらに備え、
前記制御装置は、前記電子機器の制御基準となる基準データを有しており、前記転送データと前記基準データとに基づいて前記電子機器の状態を変化させる要否判断を行い、前記電子機器の状態変化が必要である場合に、前記複数の照明器具を介して前記電子機器の状態を変化させる要求信号を送信する、請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記第2プロトコルを用いて無線通信を行うリレーユニットをさらに備え、
前記リレーユニットは、リレースイッチを有しており、前記制御装置から送信される制御データに応じて、前記リレースイッチに接続された電子機器への電源供給のON/OFFを切り替える、
請求項1または2に記載の照明システム。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して令和6年11月19日付け取消理由通知で当審において通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(明確性要件)本件の下記の請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、当該請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
請求項1に
「前記センサ機器は、各々に特有の機器IDを有し、
前記制御装置は、前記センサ機器毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データを保有しており、
前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、
前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」
との記載がある。
上記記載によれば、「制御装置」が「機器ID」を保有することの特定がなく、また、「制御装置」が保有する「機種属性データ」と「機器ID」の関係の特定もない。
しかしながら、その場合、いかにして「制御装置」が、「センサ機器」から送信される「測定データ」に含まれる「機器ID」に基づいて、「測定データの測定値」を「機種属性データ」と対応付けることが可能であるのか、技術的に明確でない。
上記の指摘は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~4についてもいえる。
したがって、請求項1~4に係る発明は明確でない。
第5 取消理由についての当審の判断
本件訂正後の請求項1の「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有しており、前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」との記載により、「制御装置」が「機器ID」を保有することを特定するとともに、「前記センサ機器の前記機器ID毎」の「機種属性データ」であることを特定しているから、「制御装置」が、「センサ機器」から送信される「測定データ」に含まれる「機器ID」に基づいて、「測定データの測定値」を「機種属性データ」と対応付けることが可能であることが明確となっている。
よって、請求項1に記載された発明、及び請求項1を引用する請求項2~4に記載された発明は明確である。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由
申立人は、特許異議申立書において、以下の特許異議申立理由を主張している。
理由1(進歩性)
本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができない発明について特許査定がなされたものである。
本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができない発明について特許査定がなされたものである。
したがって、本件特許の請求項1-4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第113条第2号に該当する。よって、本件特許の請求項1-4に係る発明になされた特許は取り消されるべきである。
申立人が提出した証拠一覧
甲第1号証:特表2017-526219号公報
甲第2号証:特開2016-181446号公報
甲第3号証:特開2020-77455号公報
理由2(明確性要件)
本件特許の請求項1-4に係る発明は、特許法第36項第2号に規定に違反して特許されたものであるので、特許法第113条第4号に該当する。したがって、請求項1-4に係る発明になされた特許は取り消されるべきである。
(1)本件特許発明1の「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、」は、「前記機種属性データ」が、「前記センサ機器の位置情報」、「前記センサ機器の種類」、「前記測定データの単位」の全てを含むものであるのか、いずれか一つを含むものであるのかが明確ではない。
(2)本件特許発明1の「前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する、」は、測定値を制御装置に保存するのか、測定値を制御装置以外のものに保存するのかが不明である。
2 特許異議申立理由についての検討
(1)理由1(進歩性)について
ア 甲1について
(ア)甲1の認定事項
a 【0049】の記載によれば、照明ノード102を制御するノード・アプリケーション・コントローラ660は、無線アップリンクアンテナ665でサービスプラットフォーム104と無線通信するものであって、データをLAN上でサービスプラットフォーム104へ転送することもできるものであり、LANネットワークプロトコルを用いているといえる。
b 【0049】の記載によれば、照明ノード102を制御するノード・アプリケーション・コントローラ660は、無線ビーコンアンテナ667で、近くのセンサ・コントローラ・ノードとビーコン信号を送受信する無線通信を行うものであるところ、【0010】、【0025】の記載によれば、ビーコン信号は、Bluetooth(登録商標)Low Energy(BLE)通信プロトコルを用いている。以下、「Bluetooth(登録商標)Low Energy(BLE)通信プロトコル」を「BLE通信プロトコル」という。
c 【0045】の記載によれば、サービスプラットフォーム104は、センサデータベースを保有しているところ、【0144】、【0145】の記載によれば、センサデータベースには、各センサの機器の種類、位置、ビーコン識別子といった機器パラメータが入力されている。
(イ)甲1に記載された発明
甲1の記載及び上記(ア)の認定事項を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧書きは主な参照箇所を示す。
「複数の照明ノード102と、(【0010】、【0026】、【図1】、【図6】)
複数の照明ノード102を制御するサービスプラットフォーム104と、(【0048】、【図1】)
を備え、
照明ノード102は、LANネットワークプロトコルを用いた無線LAN通信を行う無線アップリンクアンテナ665と、BLE通信プロトコルを用いたビーコン信号の無線通信を行う無線ビーコンアンテナ667と、を有し、(【0010】、【0027】、【0049】、【図6】、上記(ア)a及びb)
サービスプラットフォーム104は、LANネットワークプロトコルを用いて複数の照明ノード102と無線LAN通信を行い、(【0049】、【図6】、上記(ア)a)
BLE通信プロトコルを用いて複数の照明ノード102のいずれかと無線通信を行うセンサ・コントローラ・ノード101a~101lをさらに備え、(【0010】、【0025】、【0049】、上記(ア)b)
照明ノード102は、無線ビーコンアンテナ667によってセンサ・コントローラ・ノード101a~101lから受信したセンサの値を、LANネットワークプロトコルを用いて無線アップリンクアンテナ665によってサービスプラットフォーム104へ送信し、(【0025】、【0026】)
センサ・コントローラ・ノード101a~101lは、ビーコンと関連付けられた一意の識別子を有し、(【0100】)
サービスプラットフォーム104は、各センサの機器の種類、位置、ビーコン識別子といった機器パラメータが入力されたセンサデータベースを保有しており、(【0045】、【0144】、【0145】、上記(ア)c)
センサ・コントローラ・ノード101a~101lは、センサデータを送信し、(【0101】)、
サービスプラットフォーム104は、センサデータをセンサデータベースに記憶する、(【0047】、【0101】)
複数の照明ノード102を含むシステム。」
イ 甲2について
甲2の記載を踏まえると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の照明装置10A~10Lと、(【0016】)
複数の照明装置10A~10Lを制御する制御装置200と、(【0018】)
を備え、
照明装置10A~10Lは、ケーブルCaを介して制御装置200に接続されて有線LAN通信を行うものであり、(【0017】)
制御装置200は、複数の照明装置10A~10Lと有線LAN通信を行い、(【0017】)
制御装置200と無線LAN通信を行う光センサ100A~100Lをさらに備え、(【0017】)
光センサ100A~100Lは、光センサ100を識別する固有の識別子を示すセンサIDを有し、(【0033】、【0034】)
制御装置200のセンサ情報記憶部222は、光センサ100に関する情報として、光センサ100が設置されている位置や光センサ100によって計測された照度(ルクス)を示す照度情報を、センサIDと対応付けて記憶しており、(【0027】、【0031】~【0033】)
光センサ100は、計測された照度(ルクス)を示す照度情報を、制御装置200に無線通信により送信し、(【0031】、【0032】、【0051】、【0052】)
制御装置200は、受信した照度情報を光センサ100のセンサIDと対応付けてセンサ情報記憶部222に格納する、(【0053】)
快適空間制御システム1。(【0008】)」
ウ 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲1発明を対比すると、後者の「照明ノード102」は前者の「照明器具」に相当し、以下同様に、「サービスプラットフォーム104」は「制御装置」に、「LANネットワークプロトコル」は「第1プロトコル」に、「無線アップリンクアンテナ665」は「第1無線通信部」に、「BLE通信プロトコル」は「第2プロトコル」に、「無線ビーコンアンテナ667」は「第2無線通信部」に、「センサ・コントローラ・ノード101a~101l」は「センサ機器」に、「ビーコンと関連付けられた一意の識別子」は「各々に特有の機器ID」に、「各センサの機器の種類」は「前記センサ機器の種類」に、「各センサ」の「位置」は「前記センサ機器の位置情報」に、「各センサ」の「ビーコン識別子」は「前記機器ID」に、「機器パラメータ」は「機種属性データ」に、「複数の照明ノード102を含むシステム」は「照明システム」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「LANネットワークプロトコルを用いた無線LAN通信」と「BLE通信プロトコルを用いたビーコン信号の無線通信」は、前者の「第1プロトコルを用いた無線通信」と「第2プロトコルを用いた無線通信」にそれぞれ相当する。
c 上記aを踏まえると、後者の「サービスプラットフォーム104は、LANネットワークプロトコルを用いて複数の照明ノード102と無線LAN通信を行」う態様は、前者の「前記制御装置は、前記第1プロトコルを用いて前記複数の照明器具と無線通信を行」う態様に相当する。
d 上記aを踏まえると、後者の「センサ・コントローラ・ノード101a~101l」が「BLE通信プロトコルを用いて複数の照明ノード102のいずれかと無線通信を行う」態様は、前者の「センサ機器」が「前記第2プロトコルを用いて前記複数の照明器具のいずれかと無線通信を行う」態様に相当する。
e 後者の「照明ノード102は、無線ビーコンアンテナ667によってセンサ・コントローラ・ノード101a~101lから受信したセンサの値を、LANネットワークプロトコルを用いて無線アップリンクアンテナ665によってサービスプラットフォーム104へ送信」する態様は、「BLE通信プロトコルを用いたビーコン信号の無線通信」によって受信した「センサの値」を、異なる通信プロトコルである「LANネットワークプロトコルを用いた無線LAN通信」によって送信するのだから、「センサの値」を「LANネットワークプロトコルを用いた無線LAN通信」によって転送可能な転送データに変換して「サービスプラットフォーム104」に転送しているといえる。
f 後者の「センサの値」は、「センサデータ」として送信されるものであるところ、「センサデータ」と、前者の「測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データ」とは、「測定情報」の点で共通する。
g 上記e及びfを踏まえると、後者の「照明ノード102は、無線ビーコンアンテナ667によってセンサ・コントローラ・ノード101a~101lから受信したセンサの値を、LANネットワークプロトコルを用いて無線アップリンクアンテナ665によってサービスプラットフォーム104へ送信」する態様と、前者の「前記照明器具は、前記第2無線通信部によって前記センサ機器から受信した測定データを、前記第1プロトコルを用いた無線通信によって転送可能な転送データに変換し、当該転送データを前記第1無線通信部から直接または他の照明器具を介して前記制御装置に転送」する態様とは、「前記照明器具は、前記第2無線通信部によって前記センサ機器から受信した測定情報を、前記第1プロトコルを用いた無線通信によって転送可能な転送データに変換し、当該転送データを前記第1無線通信部から直接または他の照明器具を介して前記制御装置に転送」する態様の点で共通する。
h 上記aを踏まえると、後者の「サービスプラットフォーム104は、各センサの機器の種類、位置、ビーコン識別子といった機器パラメータが入力されたセンサデータベースを保有して」いる態様と、前者の「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有して」いる態様とは、「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、を含む機種属性データと、を保有して」いる態様の点で共通する。
i 上記fを踏まえると、後者の「センサ・コントローラ・ノード101a~101lは、センサデータを送信」する態様と、前者の「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信」する態様とは、「前記センサ機器は、測定情報を送信」する態様の点で共通する。
j 上記f~iを踏まえると、後者の「サービスプラットフォーム104は、センサデータをセンサデータベースに記憶する」態様と、前者の「前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」態様とは、「前記制御装置は、測定情報を保存する」態様の点で共通する。
k そうすると両者は、
「複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を制御する制御装置と、
を備え、
前記照明器具は、第1プロトコルを用いた無線通信を行う第1無線通信部と、第2プロトコルを用いた無線通信を行う第2無線通信部と、を有し、
前記制御装置は、前記第1プロトコルを用いて前記複数の照明器具と無線通信を行い、
前記第2プロトコルを用いて前記複数の照明器具のいずれかと無線通信を行うセンサ機器をさらに備え、
前記照明器具は、前記第2無線通信部によって前記センサ機器から受信した測定情報を、前記第1プロトコルを用いた無線通信によって転送可能な転送データに変換し、当該転送データを前記第1無線通信部から直接または他の照明器具を介して前記制御装置に転送し、
前記センサ機器は、各々に特有の機器IDを有し、
前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、を含む機種属性データと、を保有しており、
前記センサ機器は、測定情報を送信し、
前記制御装置は、測定情報を保存する、照明システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
測定情報に関し、本件発明1は、「測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データ」であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
機種属性データに関し、本件発明1は、「前記センサ機器の前記機器ID毎」に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、「および前記測定データの単位」、を含む機種属性データ」であるのに対して、甲1発明は、「各センサの機器の種類、位置、ビーコン識別子といった機器パラメータ」である点。
<相違点3>
測定情報の保存に関し、本件発明1は、「前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」のに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
相違点1について検討する。
a 甲2発明について
(a)本件発明1と甲2発明を対比すると、後者の「照明装置10A~10L」は前者の「照明器具」に対応し、以下同様に、「制御装置200」は「制御装置」に、「光センサ100A~100L」は「センサ機器」に、「快適空間制御システム1」は「照明システム」に、それぞれ対応する。
(b)後者の「制御装置200は、複数の照明装置10A~10Lと有線LAN通信を行い、制御装置200と無線LAN通信を行う光センサ100A~100Lをさらに備え」ることと、前者の「前記照明器具は、第1プロトコルを用いた無線通信を行う第1無線通信部と、第2プロトコルを用いた無線通信を行う第2無線通信部と、を有し、前記制御装置は、前記第1プロトコルを用いて前記複数の照明器具と無線通信を行い、前記第2プロトコルを用いて前記複数の照明器具のいずれかと無線通信を行うセンサ機器をさらに備え」ることとは、「前記照明器具は、通信を行う第1通信部を有し、前記制御装置は、前記複数の照明器具と通信を行い、無線通信を行うセンサ機器をさらに備え」ることの点で対応する。
(c)後者の「光センサ100を識別する固有の識別子を示すセンサID」は、前者の「各々に特有の機器ID」に対応する。
(d)後者の「光センサ100が設置されている位置」は、前者の「前記センサ機器の位置情報」に対応する。
(e)後者の「制御装置200のセンサ情報記憶部222は、光センサ100に関する情報として、光センサ100が設置されている位置や光センサ100によって計測された照度(ルクス)を示す照度情報を、センサIDと対応付けて記憶」している態様は、「光センサ100」の種類及び「計測された照度(ルクス)」の単位を含むか否か不明であるから、前者の「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データと、を保有」している態様と、「前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報を含む機種属性データと、を保有」している態様の点で対応する。
(f)後者の「制御装置200に無線通信により送信」される「計測された照度(ルクス)を示す照度情報」は、「センサID」を含むか否か不明であり、「光センサ100が設置されている位置」、「光センサ100」の種類及び「計測された照度(ルクス)」の単位を含むか否か不明であるから、前者の「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含む前記測定データ」と、「前記センサ機器は、測定値を含む前記測定データ」の点で対応する。
(g)後者の「制御装置200は、受信した照度情報を光センサ100のセンサIDと対応付けてセンサ情報記憶部222に格納する」態様は、前者の「前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」態様に対応する。
(h)そうすると、甲2発明は、本件発明1の用語を用いて以下のように整理することができる。
「複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を制御する制御装置と、
を備え、
前記照明器具は、通信を行う第1通信部を有し、
前記制御装置は、前記複数の照明器具と通信を行い、
無線通信を行うセンサ機器をさらに備え、
前記センサ機器は、各々に特有の機器IDを有し、
前記制御装置は、前記機器IDと、前記センサ機器の前記機器ID毎に前記センサ機器の位置情報を含む機種属性データと、を保有しており、
前記センサ機器は、測定値を含む前記測定データを送信し、
前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する、照明システム。」
b 甲2発明は上記a(h)のとおりであるから、仮に、甲1発明に甲2発明を適用できたとしても、相違点1に係る本件発明1の構成に到達しない。
c また、他に、相違点1に係る本件発明1の構成を示す証拠はない。
d したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定したものであるから、上記ウと同様の理由により、甲1発明、甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 申立人の主張について
相違点1に関し、申立人は、通信量を削減するためにいくつかの情報のうちの特定の情報を含まないようにデータ送信することは当業者であれば至極当然のことであるから、「前記機種属性データを含まない前記測定データを送信」することは、当業者であれば容易になし得ることである旨、主張(申立書26~27ページ)している。
しかしながら、そもそも甲1発明のセンサデータの内容が不明なのだから、「測定値」と、「機器ID」とを含み、且つ、「前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データ」を含まないように選択する根拠がない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
カ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2~4は、甲1発明、甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、特許異議申立理由1は成り立たない。
(2)理由2(明確性要件)について
ア 理由2(1)について
申立人は、本件特許発明1の「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、」は、「前記機種属性データ」が、「前記センサ機器の位置情報」、「前記センサ機器の種類」、「前記測定データの単位」の全てを含むものであるのか、いずれか一つを含むものであるのかが明確ではない旨、主張(申立書29ページ)している。
上記主張について検討する。
請求項1の「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、」は、「前記機種属性データ」を「含まない」ことが特定されているから、「前記機種属性データ」といえるものを「含まない」ものである。
そして、「前記機種属性データ」は、その直前に「前記センサ機器の位置情報、前記センサ機器の種類、および前記測定データの単位、を含む機種属性データ」であることが特定されているから、「前記センサ機器の位置情報」、「前記センサ機器の種類」、「前記測定データの単位」は、全て「前記機種属性データ」といえるものである。
そうすると、「前記センサ機器は、測定値と前記機器IDとを含み、且つ、前記機種属性データを含まない前記測定データを送信し、」は、「前記センサ機器の位置情報」、「前記センサ機器の種類」、「前記測定データの単位」の全てを「含まない」ことが理解できる。
したがって、請求項1の記載は明確であるので、本件発明1の範囲が不明確であるとは認められない。
以上のとおり、申立人の主張を採用することはできない。
イ 理由2(2)について
申立人は、本件特許発明1の「前記制御装置は、前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する、」は、測定値を制御装置に保存するのか、測定値を制御装置以外のものに保存するのかが不明である旨、主張(申立書30ページ)している。
上記主張について検討する。
本件発明1は、「前記制御装置」が「前記機器IDに基づいて、前記測定データの測定値を前記機種属性データと対応付けて保存する」という態様を特定するものであって、「保存する」ための保存先の構成を特定するものではない。
そうすると、保存先が、「前記制御装置」の内部にあるのか、「前記制御装置」の外部にあるのかを問わず、「前記制御装置」が保存先に「保存する」ことができればよいと理解できる。
したがって、請求項1の記載は明確であるので、本件発明1の範囲が不明確であるとは認められない。
以上のとおり、申立人の主張を採用することはできない。
ウ 小括
以上によれば、特許異議申立理由2は成り立たない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700393