特許異議申立
2024-700344
異方性導電材料
- 審判番号
- 2024-700344
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-558357
- 登録番号
- 7363918
- 請求日
- 2024年04月15日
- 審決日
- 2025年06月13日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日産化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】前田 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 今井 聖和
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.121-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7363918号発明「異方性導電材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7363918号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7363918号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7363918号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)11月16日(優先権主張 令和1年11月20日)を国際出願日とする出願であって、令和5年10月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行されたものである。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 4月15日 :特許異議申立人 前田 桂子(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和6年 5月17日 :申立人による手続補正書(方式)の提出
令和6年 6月25日付け:取消理由通知書
令和6年 8月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 9月17日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和6年10月25日 :申立人による意見書の提出
令和6年12月18日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 1月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 3月17日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年8月15日提出の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年1月31日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その内容は、次のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために当審において付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている」とあるのを、「上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料であって、上記導電性コアが、異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
明細書の段落0009に、「上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されていることを特徴とする異方性導電材料。」とあるのを、「上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料であって、上記導電性コアが、異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっていることを特徴とする異方性導電材料。」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「導電性コア」について、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たすものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の段落0027の「上記導電性粒子は・・・(中略)・・・材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっていればよい。」との記載に基づくものである。したがって、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
本件特許は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1について、特許法第120の5第9項で読み替えて準用する特許法第126第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正事項1により訂正される請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たすものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、上記(1)イにおける検討と同様に、本件明細書等の段落0027の記載に基づくものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和7年3月17日提出の意見書において、訂正後の請求項1では、「接続/接着処理条件」が一義的に決まるように記載されておらず、一般的な無鉛ハンダ粒子を使用した異方性導電材料を包含すると解される余地が生じるから、その意味で、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものであると解すべきものである旨主張している。
しかしながら、上記(1)ウにおいて検討したとおり、訂正事項1は、「導電性コア」について、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」ことを限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、申立人が主張するように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしており、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱硬化性樹脂と、重合開始剤と、導電性粒子とを含み、
上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料であって、
上記導電性コアが、異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっていることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項2】
上記導電性コアが、In-Bi-Sn系合金、Bi-Sn系合金またはSn-Ag-Cu系合金を含む請求項1記載の異方性導電材料。
【請求項3】
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂から選ばれる1種または2種である請求項1または2記載の異方性導電材料。
【請求項4】
上記重合開始剤が、アニオン重合開始剤またはカチオン重合開始剤である請求項1~3のいずれか1項記載の異方性導電材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の異方性導電材料から得られる異方性導電層。
【請求項6】
請求項5記載の異方性導電層を有する電子素子。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和6年12月18日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は、以下のとおりである。
・取消理由1(明確性)
請求項1には、「該導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において、80~200℃で液体状態である過冷却金属で形成されている」と記載されているところ、「80~200℃」は、過冷却の温度であると解されるが、「60~250℃の融点」より高い温度を含む点で矛盾し、明確でない。
また、請求項1の上記記載において、「その融点以下の温度で」が、直後の「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において」に係るのか、あるいは「液体状態である過冷却」に係るのか明確でなく、さらに、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において」が、「液体状態である」のみに係り、「過冷却」には係らないのか、あるいは「液体状態である過冷却」に係るのか明確でない。
したがって、請求項1~6に係る発明は明確でないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由についての当審の判断
(1)取消理由1について
上記第3のとおり、本件訂正により、請求項1は、「80~200℃で液体状態である過冷却金属」との記載を含まないものとなり、上述の矛盾はなくなった。
また、本件訂正により、請求項1において、「その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料であって、上記導電性コアが、異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」ことが特定され、「その融点以下の温度で」が「液体状態である」に係り、また、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において」が「過冷却状態となっている」ことに係ることが明確となった。
したがって、本件発明1は明確であり、本件発明1の構成を含む本件発明2~6も明確である。
(2)申立人の主張について
申立人は、令和7年3月17日提出の意見書において、訂正後の請求項1に記載された「上記導電性コアが、異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」との記載は、「導電性コアが80~200℃という加熱条件を含む接続/接着処理条件で過冷却となっている」ということを意味し、その結果、過冷却状態の温度「80~200℃」が「60~250℃の融点」より高い温度を含む点で矛盾し、依然として明確ではないと言わざるを得ない旨主張している。
しかしながら、上記(1)において検討したとおり、訂正後の請求項1には、「導電性コアが80~200℃という加熱条件を含む接続/接着処理条件で過冷却となっている」との記載はないから、申立人の主張する意味に解釈する理由はなく、矛盾もない。
したがって、上記申立人の主張をすることはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから、取消理由1は解消した。
第5 取消理由通知書(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった、申立人が主張する特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)は、以下の申立理由1~申立理由3である。なお、申立人が提出した甲第1号証~甲第3号証を、以下、「甲1」~「甲3」という。
(1)申立理由1(進歩性)
請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明と、甲2に記載された技術事項と、甲3に記載された周知技術とに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
請求項1~6において、「融点以下の温度」の下限が特定されておらず、また、導電性粒子が特定されていないところ、発明の詳細な説明には、融点以下の温度の下限の温度が-5℃前後であること、及び、導電性粒子としてSAFI-Tech.Inc社のLiquital 139が記載されているのみであるから、これらの温度以外や金属合金組成以外を含む請求項1~6に係る発明は、明細書にサポートされている範囲を超えて特許されたものである。
よって、請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由3(明確性要件)
請求項6には、「異方性導電層を有する電子素子」と記載されているが、「電子素子」が「異方性導電層」をどのように有するのかが不明であり、また、どのような部品を電気的あるいは非電気的に接合しているのかが不明である。
よって、請求項6に係る発明は明確でないから、請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<申立人が提出した甲号証>
甲1 特開2017-171868号公報
甲2 特表2018-529018号公報
甲3 特開2006-77258号公報
2 申立理由についての当審の判断
(1)申立理由1(進歩性)について
ア 甲号証の記載並びに甲号証に記載された発明及び技術事項
(ア)甲1の記載及び甲1に記載された発明
a 甲1には以下の記載がある。
「【請求項1】
バインダ材中に、金属粒子の表面に絶縁膜が形成された導電性粒子と、光反射性絶縁粒子とを含有する異方性導電接着剤であって、
前記金属粒子は、軟性金属を含み、
前記絶縁膜は、酸素を含む雰囲気中で振動を加えながらスパッタリング法により前記金属粒子の表面に形成されたものである異方性導電接着剤。」
「【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明は、バインダ材中に、金属粒子の表面に絶縁膜が形成された導電性粒子と、光反射性絶縁粒子とを含有する異方性導電接着剤であって、前記金属粒子は、軟性金属を含み、前記絶縁膜は、酸素を含む雰囲気中で振動を加えながらスパッタリング法により前記金属粒子の表面に形成されたものである異方性導電接着剤である。」
「【0023】
[1.導電性粒子]
例えば図1に示すように、本発明に用いる導電性粒子1は、金属粒子10の表面11に絶縁膜12が形成されてなるものである。」
「【0025】
金属粒子10は、柔らかい金属、所謂、軟性金属を含み、金属粒子10中には、製造工程中に意図せず混入される不可避的不純物が含まれていてもよい。導電性粒子1に適用可能な軟性金属としては、はんだ合金等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0027】
導電性粒子1に適用可能な無鉛はんだとしては、概ね150℃~220℃で溶融し、後述する異方性導電接着剤としての高接続信頼性を確保することができれば、特に限定されることはない。ただし、導電性粒子1を異方性導電接着剤に適用した場合において、溶融温度が150℃を下回る無鉛はんだは、In(インジウム)やBi(ビスマス)を添加して融点を下げているが、そのような金属の添加は、はんだとしての機械的強度が弱く、接続信頼性に劣る場合がある。一方、無鉛はんだの溶融温度が220℃を超えると、基板や被接続部材等の熱破壊や劣化等の危険性があるので好ましくない。従って、導電性粒子1では、溶融温度が概ね150℃~220℃である無鉛はんだを用いることが好ましい。
【0028】
そのような無鉛はんだとしては、例えば、Sn、Ag(銀)、Cu(銅)を含むSnAgCu系、Sn、Zn(亜鉛)、Biを含むSnZnBi系、Sn、Cuを含むSnCu系、Sn、Ag、In、Biを含むSnAgInBi系、Sn、Zn、Al(アルミニウム)を含むSnZnAl系、Sn、Ag、Biを含むSnAgBi系等のものが挙げられる。無鉛はんだに含まれる金属種の組成比については特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。」
「【0031】
また、金属粒子10の形状については特に限定されず、用途に応じて適宜決定することができる。
絶縁膜12は、金属酸化物からなるもので、絶縁膜12中には、製造工程中に意図せず混入される不可避的不純物が含まれていてもよい。
【0032】
本発明に用いる導電性粒子1に適用可能な金属酸化物としては、金属粒子10の表面11に形成することができ、導電性粒子1の絶縁性を確保することができれば特に限定されず、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ等が挙げられる。絶縁膜12においては、上述した金属酸化物の何れかを少なくとも1種以上を含んでいればよい。
【0033】
また、上記金属酸化物については、価数の異なるものや異なる結晶構造のものが含まれていてもよい。例えば、酸化ケイ素(SiOx(1≦x≦2))では、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)等がある。また、酸化アルミニウム(AlOx(0.5≦x≦1.5))では、酸化アルミニウム(III)(Al2O3)、酸化アルミニウム(II)(AlO)、酸化アルミニウム(I)(Al2O)等があり、酸化アルミニウム(III)においては、α-アルミナ(コランダム型)、γ-アルミナ(スピネル型)等の結晶構造のものがある。また、酸化チタン(TiOx(1≦x≦2))では、二酸化チタン(IV)(TiO2)、酸化チタン(II)(TiO)等があり、二酸化チタン(IV)においては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等の結晶構造のものがある。更に、酸化ニオブ(NbOx(xは2以外の数)では、酸化ニオブ(II)(NbO)、酸化ニオブ(V)(Nb2O5)もある。」
「【0052】
[3.異方性導電接着剤]
図3に示すように、本発明の異方性導電接着剤2は、バインダ材3中に、上述した導電性粒子1と、光反射性絶縁粒子4が分散された状態で含有してなるものである。
本発明の場合、異方性導電接着剤2の形態は、フィルム状であってもペースト状であってもよく、用途に応じて適宜決定することができる。
【0053】
本発明に用いるバインダ材3としては、公知の熱硬化性樹脂を使用することができる。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、アクリル樹脂等が挙げられる。本発明では、少なくとも1種以上の上記熱硬化性樹脂を、バインダ材3として用いることができる。バインダ材3として用いられる熱硬化性樹脂の種類は特に限定されず、用途に応じて上記以外の樹脂を使用することも可能である。
【0054】
バインダ材3には、バインダ材3と反応する硬化剤を配合することが好ましい。硬化剤の種類は特に限定されないが、例えば、イソシアネート、酸無水物、アミノ樹脂等からなるものを用いることができる。
バインダ材3には、バインダ材3と硬化剤との硬化反応を促進させるために、好適なカップリング剤、触媒、促進剤、その他の用途に応じた成分等を併用してもよい。」
「【0063】
フィルム状の異方性導電接着剤(異方性導電フィルム)を製造する場合には、導電性粒子1及び光反射性絶縁粒子4をバインダ材3に分散させた混合物を、フィルム状に成型して得られ、異方性導電ペーストでは、異方性導電フィルムと同様にして得られた混合物について、溶媒を用いて粘度等を調整して得られる。
【0064】
[5.発光装置及びその製造方法]
図4は、本発明に係る発光装置の実施の形態の構成を示す断面図である。
図4に示すように、本実施の形態の発光装置5は、例えばセラミックスからなる配線基板50と、この配線基板50上に発光素子40が実装されて構成されている。」
「【図3】
[図:0001426811000001.jpg]
」
b 上記aによれば、以下のことがいえる。
(a)甲1の段落0023には、「本発明に用いる導電性粒子1は、金属粒子10の表面11に絶縁膜12が形成されてなるものである。」と記載され、段落0025には、「金属粒子10は、」「軟性金属を含み」及び「導電性粒子1に適用可能な軟性金属としては、はんだ合金等が挙げられる。」と記載され、段落0027には、「導電性粒子1では、溶融温度が概ね150℃~220℃である無鉛はんだを用いることが好ましい。」と記載されている。
したがって、甲1において、金属粒子が含む軟性金属としては、溶融温度が概ね150℃~220℃である無鉛はんだが用いられるといえる。
(b)上記a及び上記(a)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「バインダ材中に、金属粒子の表面に絶縁膜が形成された導電性粒子と、光反射性絶縁粒子とを含有する異方性導電接着剤であって、
前記金属粒子は、軟性金属を含み、(請求項1)
軟性金属として、溶融温度が概ね150℃~220℃である無鉛はんだが用いられ、(上記(a))
バインダ材として、熱硬化性樹脂が使用され、(段落0053)
バインダ材には、バインダ材と反応する硬化剤が配合され、(段落0054)
前記絶縁膜は、酸素を含む雰囲気中で振動を加えながらスパッタリング法により前記金属粒子の表面に形成されたものである異方性導電接着剤。(請求項1)」
(イ)甲2の記載及び甲2に記載された技術事項
a 甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
周囲条件下で接合する方法であって、1又は2以上の過冷却された液体金属コア-シェル粒子を、1又は2以上の金属又は非金属のコンポーネントを接合するように使用することを含み、前記使用が、過冷却されたコア-シェル粒子の外側シェルを破壊して、過冷却された液体金属コア材料を放出し、前記液体金属コア材料を前記1又は2以上のコンポーネントに接触させて、凝固させることによって行なわれる、方法。」
「【0015】
本発明は、過冷却された液体金属コアを有する液体金属コア-シェル粒子に関するものであって、前記粒子は、融点が62℃~900℃、例えば62℃~250℃の金属又は合金と、過冷却された液体金属コアに形成されたスタビライザーシェルと、前記シェルに被着された無機又は有機の被着層と、を含む。液体金属コアは、Biベースのはんだ、Snベースのはんだ、及び62℃~250℃の融点を有する他のはんだ合金などのはんだ合金を含むことができる。」
「【0026】
本発明は、あらゆる他の技術によって作られた液体金属ナノ粒子又はマイクロ粒子を用いて実施することができるが、過冷却された金属コア-シェル粒子は、好ましくは、エマルジョン滴技術(DET)の延長である前記SLICEプロセス(図1A)によって製造される。SLICEプロセスは、図1Aに示されるキャリア流体の存在下で、化学反応と共にTmの低い溶融金属又は合金を剪断して、液体金属コア-シェルナノ粒子又はマイクロ粒子Pを生成する。これは、図1A、図1B、図1C及び図1Dに示される。化学反応は、典型的には、外側シェルが、その場で液体金属コア上に形成されるように溶融金属又は合金を酸化することを含む。さらに、特定の用途に必要な自己集合を促進するために、外側シェルは酢酸塩又はリン酸塩などの有機部分で官能化されることができる(図1D)。それゆえ、本発明は、液体金属を所望のサイズに剪断し、安定化させる有機又は無機の被着層を有する自己不動態化酸化物層を用いて準安定状態を安定化させて、コア-シェル粒子構造を形成することにより、安定な過冷却粒子を高収率で製造する方法を含む。」
「【0038】
<使用材料>
ビスマス-インジウム-スズ(フィールド金属、Bi:In:Sn=32.5:51.0:16.5wt%、融点約62℃、凝固点はその融点にほぼ等しいAlfa Aesar)と、ビスマス-スズ(Bi:Sn=58:42重量%、融点約139℃、Alfa Aesar)の共晶組成物を使用した。粒子調製に際しては、酢酸(Biotech、シークエンシンググレード)、ジエチレングリコール(BioUltra)及びエタノール(200プルーフ)を、夫々、Fisher、Sigma及びDecon Laboratories Inc.から購入した。」
「【0048】
本発明は、はんだ付け用途に使用される液体金属コア-シェル粒子であって、62℃~900℃、例えば、62℃~250℃の範囲の融点を有する金属又は合金を含む過冷却液体金属コアと、前記液体金属コアの上の外側安定化シェルと、シェルの上の無機又は有機の被着層と、を含む。液体金属コアは、Biベースはんだ、フィールド金属のSnベースはんだなどのはんだ合金の他に、62℃~250℃の融点を有する他のはんだ合金を含むことができる。」
b 上記aによれば、甲2には、以下の技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されている。
<甲2技術事項>
「62℃~250℃の範囲の融点を有する金属又は合金を含む過冷却液体金属コアと、前記液体金属コアの上の外側安定化シェルと、シェルの上の無機又は有機の被着層とを含む液体金属コア-シェル粒子を、はんだ付け用途に使用すること。」
(ウ)甲3の記載、及び甲3に記載された技術事項
a 甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
硬化剤と反応性を有する2種以上の接着剤成分よりなる反応性接着剤において、硬化剤と該硬化剤と最も反応性の高い第1の接着剤成分を、それぞれマイクロカプセル化してなるフィルム状接着剤。」
「【0013】
硬化剤4は、イミダゾール系、オニウム塩系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素─アミン錯体、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドなど、およびこれらの変性物があり、これらは単独または2種以上の混合体として使用できる。これらは、アニオンまたはカチオン重合型などのいわゆるイオン重合性の触媒型硬化剤もくしは熱重合開始剤と呼ばれ、保存性や速硬化性を得やすく、また化学当量的な考慮が少なくてよいことから好ましい。硬化剤としてはその他に、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等や前記触媒型硬化剤との併用も可能である。これらの中では、アニオン型のイミダゾール系のものが非金属系であり、電食をおこし難く、また反応性や接続信頼性の点から特に好ましい。また、カチオン型のオニウム塩系も極めて速硬化性の得られることから、同様に好ましく適用できる。
【0014】
イミダゾール系硬化剤としては、イミダゾール、2─メチルイミダゾール、2─エチル─4─メチルイミダゾール、2─ウンデシルイミダゾール、2─ヘプタデシルイミダゾール、2─フェニルイミダゾール、1─シアノエチル─2─メチルイミダゾール、1─シアノエチル─2─エチル─4─メチルイミダゾール、1─シアノエチル─2─ウンデシルイミダゾール、1─シアノエチル─2─ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、2─フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート、2,4─ジアミノ─6─{2─ウンデシルイミダゾリル─(1)}─エチル─s─トリアジン等が例示できる。
【0015】
オニウム塩系としては、p-ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩、P─ヒドロキシフェニル─p─ニトロベンジルメチルスルホニウム塩、p─アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩、P─メトキシカルボニルフェニルベンジルメチルスルホニウム塩などのスルホニウム塩が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0019】
硬化剤がイミダゾール系の場合、第1の接着剤成分がアミノ化合物が好ましい。アミノ化合物としては、トリグリシジル─p─アミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノフェニルメタン、テトラグリシジル─1,3─ビスアミノメチルシロキサン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、ヘキサグリシジルメシチレントリアミン等のグリシジルアミン樹脂類、γ─アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アモノエチル)γ─アミノプロピルトリメトキシシラン、γ─ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤類、イソプロピル(ドデシルベンゼンスルホニル)4─アミノベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジ4─アミノベンゾイルチタネート等のシランカップリング剤類を例示できる。
【0020】
硬化剤がカチオン性熱重合開始剤であるオニウム塩系の場合は、第1の接着剤成分として脂環式エポキシ化合物が好ましい。脂環式エポキシ化合物は、その分子中に脂環族基を有し、かつ脂環族基の一部がエポキシ化されている化合物である。例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、3,4─エポキシシクロヘキシルメチル─3,4─エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式のエポキシ樹脂類、β─(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のカップリング剤類が好ましい。その他エステル化合物類、ポリアミン類を例示できる。
【0021】
本発明に用いる硬化剤との反応性に劣る他の第2の接着剤成分としては、エポキシ樹脂が代表的である。エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、D等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的であり、その他グリシジルエステル、脂環式、複素環式、ブロム化、フッ素化エポキシなどの1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物が適用できる。これらは単独または2種以上混合して用いることが可能である。これらエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na+、Cl-など)や、加水分解性塩素などを300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、電食やエレクトロンマイグレーシュン防止のために好ましい。」
「【0027】
導電粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、これらおよび非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導電層を被覆などにより形成したものでもよい。プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。導電粒子は、0~30体積%、好ましくは接着剤に対し、20体積%以上とすることで均一導電性とすることや、0.1~20体積%とすることで厚み方向に導電性の異方導電性とすることも可能である。またこれらの粒子の表面に接続時に溶融する絶縁層(表面絶縁処理粒子)を形成することもできる。」
b 上記aによれば、甲3には、以下の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されている。
<甲3技術事項>
「硬化剤と反応性を有する2種以上の接着剤成分よりなる反応性接着剤において、硬化剤として、イオン重合性の触媒型硬化剤もくしは熱重合開始剤を使用すること。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「バインダ材」は、「熱硬化性樹脂が使用され」るものであるから、本件発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する。
b 甲1発明の「金属粒子」は、本件発明1の「導電性コア」に相当する。
また、甲1発明の「金属粒子の表面に絶縁膜が形成された導電性粒子」は、本件発明1の「導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有」する「導電性粒子」に相当する。
そして、甲1発明の「金属粒子は、軟性金属を含み」、「軟性金属として、溶融温度が概ね150℃~220℃である無鉛はんだが用いられ」たものであるから、「金属粒子」は150℃~220℃の融点を有する点で、本件発明1の「該導電性コアが、60~250℃の融点を有」することに相当する。
そうすると、甲1発明の「導電性粒子」は、本件発明1の「導電性粒子」が、「導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有」する点で共通する。
c 上記a及びbを踏まえると、甲1発明の「バインダ材中に、金属粒子の表面に絶縁膜が形成された導電性粒子」「を含有する異方性導電接着剤」と、本件発明1の「異方性導電材料」とは、「熱硬化性樹脂と、重合開始材と、導電性粒子とを含」む「異方性導電材料」と、「熱硬化性樹脂と、導電性粒子とを含」む「異方性導電材料」である点で共通する。
d 上記a~cによれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「熱硬化性樹脂と、導電性粒子とを含み、
上記導電性粒子が、導電性コアと、該導電性コアを被覆する絶縁膜とを有し、該導電性コアが、60~250℃の融点を有する異方性導電材料。」
<相違点1>
本件発明1において、「異方性導電材料」が「重合開始剤」を含むのに対し、甲1発明は、「硬化剤」を含むものの、重合開始剤を含まない点。
<相違点2>
本件発明1において、「導電性コア」が「その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成され」、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」のに対し、甲1発明はそのような構成を有さない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、相違点2から検討する。
相違点2に係る本件発明1の構成において、「異方性導電材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」構成について、本件明細書には以下の記載がある。
「【0027】
なお、本発明に係る異方性導電材料は、使用する熱硬化性樹脂の種類によっては室温以下の温度で保管され、必要な場合は冷凍保管されることもある。材料が冷凍保管されるような場合において、上記導電性粒子は、保管中に凝固することが想定されるが、本発明では、材料を使用する際の接続/接着処理条件において過冷却状態となっていればよい。」
「【0064】
本発明の電子素子は、例えば、上記異方性導電材料を電子部品の接合面に塗布、または、後述の異方性導電フィルムを貼付して異方性導電層を形成し、当該異方性導電層上の適宜な位置(例えば、プリント基板の電極部分と電子部品の電極部分とが合う位置)に電子部品を配置し、所定の温度および圧力の条件で加熱/加圧して、材料を硬化させることにより製造できる。」
本件明細書のこれらの記載によれば、本件発明1の「異方性導電材料を使用する際」とは、「異方性導電材料」の保管中ではなく、例えば、「電子素子」を製造するために、「熱硬化性樹脂と、重合開始剤と、導電性粒子とを含」む「異方性導電材料」を所定の温度および圧力の条件で加熱/加圧して硬化させる際のことであると解される。
そうすると、本件発明1の上記構成は、「熱硬化性樹脂と、重合開始剤と、導電性粒子とを含」む「異方性導電材料」を所定の温度および圧力の条件で加熱/加圧して硬化させる際に、「異方性導電材料」が「過冷却状態となっている」ことを意味するものである。
これに対し、甲2技術事項は、上記ア(イ)bのとおりであるところ、本件発明1の「導電性粒子」に対応する「液体金属コア-シェル粒子」は、熱硬化性樹脂及び重合開始剤と共に用いられるものではなく、熱硬化性樹脂及び重合開始剤と共に用いられる場合に、過冷却条件となっているといえるか不明である。
したがって、甲2技術事項は、相違点2に係る本件発明1の構成ではない。
また、当該構成は、甲3技術事項(上記ア(ウ)b参照)とも異なり、さらに、当該構成が本願出願時における技術常識であったとも認められない。
よって、当業者であっても、甲1発明と、甲2及び甲3技術事項とに基づいて、相違点2に係る本件発明1の構成に想到することができたとはいえない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と、甲2に記載された甲2技術事項と、甲3に記載された甲3技術事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~6について
請求項2~6の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~6は、上記イ(ア)dで挙げた相違点2に係る本件発明1の構成を備えるものである。
したがって、上記イ(イ)における検討と同様に、本件発明2~6は、甲1発明と、甲2に記載された甲2技術事項と、甲3に記載された甲3技術事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 申立理由1(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は、理由がない。
(2)申立て理由2(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。
イ 本件明細書の段落0007には、「比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を確保しつつ、電子デバイス製造時の耐熱信頼性も改善した異方性導電材料を提供することを目的とする。」と記載されているように、本件発明が解決しようとする課題は、比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を確保しつつ、電子デバイス製造時の耐熱信頼性も改善した異方性導電材料を提供することである。
ウ そして、本件明細書の段落0008には、「導電性コアが、60~250℃の融点を有し、かつ、その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成されている異方性導電材料を用いて半導体チップ等の電子部品を実装した場合に、比較的低い温度および圧力での接続/接着処理条件での優れた電気的接続特性を確保し得ることを見出した。」(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)と記載されている。
そうすると、当該記載に接した当業者であれば、異方性導電材料を用いて実装する際の導電性コアが、本件発明1で特定されているように、「その融点以下の温度で液体状態である過冷却金属で形成され」、「導電性コアが」「接続/接着処理条件において過冷却状態となっている」構成(以下、「本件構成」という。)によって、接続/接着処理を、融点以上の温度で行う場合と比べ、低い温度で行うことができ、また、過冷却状態すなわち液体状態であるため、比較的低い圧力で行うことができることを理解できる。
また、本件明細書の段落0008には、「上記導電性コアは導電性粒子から流出した後、その際の刺激により過冷却状態の液状から凝固して、その金属本来のより高い融点(凝固点)を有する固体状となるため、電子デバイス製造時の耐熱信頼性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。」と記載されているから、当業者であれば、本件構成により、過冷却状態の液状から凝固した後、より高い融点(凝固点)を有する固体状となることにより、接続/接着処理の後の、電子デバイス製造時の耐熱信頼性を改善できることも理解できる。
エ そうすると、本件発明1において、申立人が主張するように、融点以下の温度の下限や、具体的な導電性粒子が特定されていないとしても、異方性導電材料を用いて実装する際に、本件構成、すなわち、導電性コアが接続/接着処理条件において過冷却状態となっている構成を有する導電性粒子の中から、必要に応じて適宜導電性粒子を選択すればよいのであるから、本件発明1が本件明細書にサポートされている範囲を超えて特許されたものであるとはいえない。
オ 以上によれば、本件発明1は、当業者が、上記イで挙げた課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、請求項2~6の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~6は、本件発明1の構成を全て備えるものであるから、上記と同様に、上記イで挙げた課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものである。
カ 申立理由2(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は、理由がない。
(3)申立理由3(明確性要件)について
ア 判断
申立人は、請求項6には、「異方性導電層を有する電子素子」と記載されているが、「電子素子」が「異方性導電層」をどのように有するのかが不明であり、また、どのような部品を電気的あるいは非電気的に接合しているのかが不明であるから、本件発明6は明確でないと主張する。
しかしながら、本件明細書の段落0064には、「本発明の電子素子は、例えば、上記異方性導電材料を電子部品の接合面に塗布、または、後述の異方性導電フィルムを貼付して異方性導電層を形成し、当該異方性導電層上の適宜な位置(例えば、プリント基板の電極部分と電子部品の電極部分とが合う位置)に電子部品を配置し、所定の温度および圧力の条件で加熱/加圧して、材料を硬化させることにより製造できる。」と記載されているように、「電子素子」は、電子部品の接合面に「異方性導電材料」を塗布又は貼付したものであることは明らかである。
そして、本件発明6の「電子素子」は、「異方性導電層」を有するものであればよく、どのような部品を接合しているのかは、本件発明6の明確性要件の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、本件発明6は、明確である。
イ 申立理由3(明確性要件)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は、理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、取消理由(決定の予告)及び申立理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700344