特許異議申立
2024-700430
着脱装置
- 審判番号
- 2024-700430
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-055147
- 登録番号
- 7383842
- 請求日
- 2024年05月07日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大陽日酸株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【権利者】田辺工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】前田 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 堀内 亮吾
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.121-Y (B25J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7383842号発明「着脱装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7383842号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7383842号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年3月30日に出願され、同年11月10日に特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~5に係る特許に対し、令和6年5月7日に特許異議申立人 前田 桂子(以下「申立人」という。)により、全請求項について特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下請求項○に係る発明を「本件発明○」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ボンベの口金に、配管が接続されたナットを着脱させる着脱装置であって、
前記ナットの位置及び向きを検出する3次元形状測定部と、
自身の開口部に前記配管が挿通可能であるとともに、前記ナットに着脱可能なソケットと、
前記ソケットの第1軸線回りのトルクが、予め定められた所定のトルクとなるように前記ソケットを前記第1軸線回りに回転させて前記ナットを前記口金に嵌め合わせる回転駆動部と、
前記ソケットが取付けられた支持部を、自身の第1端部に有し、自身の第2端部に対する、前記支持部の位置及び向きを調節可能なアームと、
前記回転駆動部及び前記アームを制御する制御部と、
を備え、
前記ソケットには、
前記ソケットを前記第1軸線に沿う方向に貫通する貫通孔と、
前記貫通孔の前記第1軸線に沿う方向の第1側の端部に前記貫通孔と同軸に配置され、前記第1側に向かって開口するとともに前記貫通孔よりも内径が大きく、自身に対する前記第1側から前記ナットが着脱可能な穴と、が形成され、
前記開口部は、前記ソケットにおける前記第1軸線回りの一部に形成されるとともに前記ソケットを前記第1軸線に沿う方向に貫通して前記貫通孔に連なって、前記ソケットの外側における前記第1軸線に交差する方向から前記配管が挿通される、着脱装置。
【請求項2】
前記配管には被把持部が設けられ、
前記被把持部を着脱可能に把持し、前記支持部に取付けられた把持部を備える、
請求項1に記載の着脱装置。
【請求項3】
前記ボンベは、
第2軸線に沿って延びるボンベ本体と、
前記ボンベ本体から前記第2軸線に交差する方向に延びる前記口金と、を有し、
前記ボンベの前記第2軸線回りの向きを調整可能な調整部を備える、
請求項1又は2に記載の着脱装置。
【請求項4】
前記3次元形状測定部は、前記支持部に取付けられている、
請求項1又は2に記載の着脱装置。
【請求項5】
前記3次元形状測定部、前記ソケット、前記回転駆動部、前記アーム、及び前記制御部を、支持面上で搬送する搬送部を備える、
請求項1又は2に記載の着脱装置。」
第3 申立ての理由
1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要
理由1(進歩性)[甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如]
(1)本件発明1~2、4~5は、甲第1号証に甲第2号証を組合せ、更に甲第3号証と、甲第5号証(周知技術)及び第6号証(周知技術)とを組み合わせた技術に対して進歩性を有していない(第14~16ページ)。
(2)本件発明1~2、4~5は、甲第1号証に甲第2号証を組合せ、更に甲第4号証と、甲第5号証(周知技術)及び第6号証(周知技術)とを組み合わせた技術に対して進歩性を有していない(第16~17ページ)。
(3)本件発明3は、甲第1号証に甲第2号証を組合せ、更に甲5号証及び甲第6号証の周知技術を加味した甲第3号証又は甲第4号証と、更に甲第7号証とを組み合わせた技術に対して進歩性を有していない(第17ページ)。
理由2(サポート要件違反)
請求項3の記載は、「一対の腕部と一対のローラ駆動部とを有している調整部」以外の他の調整部の構成については明細書にサポートされていない(第17~18ページ)。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:特開昭55-109899号公報
(2)甲第2号証:特開2015-168040号公報
(3)甲第3号証:特開2017-87365号公報
(4)甲第4号証:特開2023-16692号公報
(5)甲第5号証:実公昭46-5439号公報
(6)甲第6号証:実願昭49-120982号(実開昭51-47094号)のマイクロフィルム
(7)甲第7号証:特開平8-75095号公報
(以下「甲第1号証」等をそれぞれ「甲1」等という。)
第4 甲号証に記載された事項
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。
ア 発明の詳細な説明
(ア)第2欄第3行~第3欄第3行
「第1図は従来型ボンベの口金部の構造を示し、ボンベ本体1の口金部2と螺合する仕切弁3の先端部にはテーパがつけてあり、口金部2の基部内周に形成した環状体4のテーパ面と係合するよう構成してある。ボンベ本体1内のガスを抽出する場合には仕切弁3を回転してこの仕切弁3のテーパ面と環状体4のテーパ面の間に間隙を形成するが、この際、前記仕切弁3と口金部2の螺合部からガスが漏洩する慮れがある。また抽出したガスは充填口5から他の管路6に流入するわけであるが、この充填口5と管路6との接続はねじ接続であり、例えば第1図の如く、充填口5側に嵌合したユニオンつば7aと管路6に嵌合したユニオンねじ7bをユニオンナット7cに接続する等の方法を採っていた。しかしこの方法は作業員が直接ナット7cを回動させる等の必要があるため、ボンベ内容物が有毒ガスまたは放射性ガス等作業員が直接作業できない場合には使用不可能であった。また前記の如くガス漏洩の慮れもあるため、有毒ガスの抽出をより危険なものとしていた。」
(イ)第5欄第8~11行
「以上の操作はもとより作業者が直接行っても良いが、内容物が危険なものである場合にはマニピュレータ(マジックハンド)等の遠隔操作装置によっても十分操作可能である。」
(ウ)第5欄第17行~第6欄第1行
「また他の配管との接続に当り、操作の面倒なユニオン等特別な接続具を使用しないため、マニピュレータ等による遠隔操作が十分に可能であり、有毒ガス等の充填操作を非常に安全に行うことができる。」
(エ)第6欄第2~5行
「図面の簡単な説明
第1図は従来のボンベの口金部を中心とした側断面部分図、第2図はこの発明に係る口金部を有するボンベの側断面部分図である。」
イ 図面
(ア)第1図
「
[図:0001414220000001.jpg]
」
(イ)第2図
「
[図:0001414220000002.jpg]
」
(2)甲1の記載からわかること
甲1の前記(1)によれば、次のことがいえる。
ア 前記(1)ア(ア)から、甲1には、第1図(前記(1)イ(ア))に示された従来技術に関し、ボンベ本体1の口金部2の充填口5に管路6を接続するために、充填口5側に嵌合したユニオンつば7aと管路6に嵌合したユニオンねじ7bを、ユニオンナット7cに接続することが記載されている。
また、第1図から、ユニオンナット7cは、管路6とは別に設けられており、口金部2側のユニオンつば7aに回動可能に設けられていることが看取される。
してみると、甲1には、ボンベ本体1の口金部2の充填口5に嵌合されたユニオンつば7aに、管路6に嵌合されたユニオンねじ7bを着脱するために、ユニオンつば7aに回動可能に設けられたユニオンナット7cを回動させてユニオンねじ7bに螺合することが記載されているといえる。ここで、ユニオンナット7cを作業員が回動させるために、何らかの工具、すなわち着脱装置を必要とすることは、自明である。
イ 前記(1)ア(イ)及び(ウ)には、第2図(前記(1)イ(イ))の実施形態に関して、作業者による作業に代えて、マニピュレータ(マジックハンド)等の遠隔操作装置を用いることが可能であることが記載されている。ただし、マニピュレータ等による遠隔操作を行う前提として、前記(1)ア(ア)及び同イ(ア)(第1図)に示される従来の「操作の面倒なユニオン等の特別な接続具」を使用しないことが記載されている。
(3)甲1に記載された発明
以上を踏まえると、甲1には、従来技術として、以下の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されているといえる。
「ボンベ本体1の口金部2の充填口5に嵌合されたユニオンつば7aに、管路6に嵌合されたユニオンねじ7bを着脱させるために、ユニオンつば7aに回動可能に設けられたユニオンナット7cを回動させる着脱装置。」
2 甲2
(1)甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0017】
また、本発明の一態様は、ハンドを備えるロボットを動作させる制御方法であって、前記ハンドと第1物体とを含む撮像画像を取得することと、前記撮像画像に基づいて、前記第1物体の所定位置を中心に前記第1物体を回転させ、前記第1物体を第2物体に対して相対移動させることと、を含む制御方法である。
この構成により、制御方法は、撮像画像に基づいて、第1物体の所定位置を中心に第1物体を回転させ、第1物体を第2物体に対して相対移動させる。このため、制御方法は、良好な組み立て作業を行うことができる。」
「【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係るロボットシステム1の一例を示す構成図である。ロボットシステム1は、撮像部10と、ロボット20と、制御装置30を具備する。
【0021】
撮像部10は、例えば、集光された光を電気信号に変換する撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を備えたカメラである。また、撮像部10は、2台のカメラによって構成されるステレオカメラであるが、例えば、3台以上のカメラによって構成されてもよいし、1台のカメラにより二次元画像を撮像する構成であってもよい。
【0022】
撮像部10は、ケーブルによって制御装置30と通信可能に接続されている。ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)等の規格によって行われる。なお、撮像部10と制御装置30とは、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によって接続される構成であってもよい。
【0023】
撮像部10は、ロボット20と、ロボット20の把持部HNDが把持している操作対象Mと、ロボット20により操作対象Mが組み付けられる組付対象Oが含まれる範囲を撮像可能な位置に設置されている。操作対象Mは、例えば、組付対象Oへ所定の状態で組み付けられることで、1つの工業製品を形成する部材である。なお、以下の説明では、操作対象Mは、予めロボット20の把持部HNDに把持されていることを前提とする。
組付対象Oは、図1に示したように、ロボット20により操作対象Mを組み付けることが可能な範囲で、ロボット20から離れた位置に治具等によって予め設置されている。
【0024】
ロボット20は、例えば、把持部HND(エンドエフェクター)と、力センサー22と、アーム部ARM(マニピュレーター)と、図示しない複数のアクチュエーターを備えた単腕ロボットである。なお、ロボットシステム1は、単腕ロボットを具備する構成に代えて、双腕ロボットを具備する構成であってもよい。ロボットシステム1が双腕ロボットを具備する構成の実施例については、第2の実施形態で説明する。
【0025】
ロボット20の腕は、6軸垂直多関節型となっており、支持台とアーム部ARMと把持部HNDとがアクチュエーターによる連携した動作よって6軸の自由度の動作を行うことができる。なお、ロボット20の腕は、5自由度(5軸)以下で動作するものであってもよいし、7自由度(7軸)以上で動作するものであってもよい。以下では、把持部HND及びアーム部ARMを備えた腕によって行われるロボット20の動作について説明する。なお、把持部HNDは、ハンドの一例である。
【0026】
ロボット20は、例えばケーブルによって制御装置30と通信可能に接続されている。ケーブルを介した有線通信は、例えば、イーサネット(登録商標)やUSB等の規格によって行われる。なお、ロボット20と制御装置30とは、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格により行われる無線通信によって接続されてもよい。また、ロボットシステム1では、ロボット20は、図1に示したようにロボット20の外部に設置された制御装置30と接続されている構成とするが、この構成に代えて、制御装置30がロボット20に内蔵されている構成であってもよい。
【0027】
ロボット20の把持部HNDは、物体を把持可能な爪部を備える。
力センサー22は、ロボット20の把持部HNDとアーム部ARMとの間に備えられており、把持部HND(あるいは、把持部HNDに把持された操作対象M)に作用した力やモーメントを検出する。力センサー22は、検出した力やモーメントを示す情報を、通信により制御装置30へ出力する。力センサー22により検出された力やモーメントを示す情報は、例えば、制御装置30によるロボット20のコンプライアントモーション制御等に用いられる。
【0028】
ロボット20は、操作対象M、組付対象O、力センサー22それぞれの相対的な位置関係に基づいた制御信号を制御装置30から取得し、取得した制御信号に基づいて、操作対象Mに対して所定の作業を行う。所定の作業とは、例えば、ロボット20の把持部HNDにより把持された操作対象Mを現在位置から移動させ、組付対象Oに組み付ける作業等である。
【0029】
制御装置30は、ロボット20が所定の作業を行うように制御する。より具体的には、制御装置30は、撮像部10により撮像された撮像画像であって、ロボット20と、ロボット20の把持部HNDが把持している操作対象Mと、ロボット20により操作対象Mが組み付けられる組付対象Oとが含まれる範囲が撮像された撮像画像に基づいて、操作対象Mと組付対象Oと力センサー22の相対的な位置関係を導出する。
【0030】
そして、制御装置30は、導出された相対的な位置関係に基づいてロボット20が所定の作業を行うようにロボット20を制御する。すなわち、制御装置30は、把持部HND及びアーム部ARMによって操作対象Mを組付対象Oに対して相対移動させることで、操作対象Mが組付対象Oに組み付けられるようにロボット20を制御する。
【0031】
また、制御装置30は、操作対象Mを組付対象Oに対して相対移動させる際、ロボット20が把持部HNDにより把持している操作対象Mを回転させるように、ロボット20を制御する場合がある。この場合、制御装置30は、操作対象Mを、操作対象Mに設定された所定位置(以下、回転中心位置と称する)を中心として回転させるようにロボット20を制御する。なお、以下では、回転中心位置における操作対象Mの姿勢を、回転中心姿勢と称する。」
「【0124】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様な構成部には、同じ符号を付してある。第3の実施形態に係るロボットシステム1は、例えば、所定の作業として、把持部HNDにより把持されたレンチ(操作対象Mの一例)をボルト(組付対象Oの一例)に組み付け、その後、把持されたレンチによってボルトを締める。
【0125】
ここで、図7を参照して、第3の実施形態に係るロボットシステム1が行う所定の作業を説明する。図7は、第3の実施形態に係るロボットシステム1によって行われる所定の作業の一例を模式的に示す図である。図7(A)には、ロボット20により把持されたレンチM1がボルトO1に組み付けられる前の所定の初期位置の状態を示す。ロボットシステム1は、図7(A)における一点鎖線で示したレンチVM1の位置(ボルトO1の直前の位置)までレンチM1を移動させる。ここで、ロボットシステム1には、レンチVM1の状態を示す画像が予め設定されており、ロボットシステム1は、その状態を実現するように第1の実施形態において図5を参照して説明した処理によって把持部HNDを動かす。図7(B)には、ロボット20によりレンチM1がボルトO1に組み付けられた状態を示す。ロボットシステム1は、前記の図5を参照して説明した処理によって、図7(A)に示したレンチVM1の状態から、図7(B)により示されるレンチM1とボルトO1が組み付けられた状態まで把持部HNDを動かす。ここで、ロボットシステム1には、図7(B)に示した状態のレンチM1とボルトO1を示す画像が予め設定されており、ロボットシステム1は、その状態を実現するように第1の実施形態において図5を参照して説明した処理によって把持部HNDを動かす。
【0126】
図7(C)には、ロボット20に把持されたレンチM1によりボルトO1が60°回転させられる様子を示す。ロボットシステム1には、回転させた状態(例えば、図7(C)において一点鎖線で示したレンチVM2とボルトVO1の状態)を示す画像が予め設定されており、ロボットシステム1は、その状態を実現するように把持部HNDを前記の図5を参照して説明した処理に基づいて動かす。なお、図7(B)において、ボルトO1とボルトVO1は、正六角形のため、重なって示されている。
【0127】
図7(D)には、ロボット20に把持されたレンチM1によりボルトO1が回転させられた状態を示す。ロボットシステム1は、図7(D)に示したレンチM1によりボルトO1が回転させられた状態になった時、レンチM1をボルトO1から所定の距離だけ離れた位置に離す。ここで、ロボットシステム1には、レンチM1がボルトO1から所定の距離だけ離れた位置に移動した状態を示す画像が予め設定されており、ロボットシステム1は、その状態を実現するように第1の実施形態において図5を参照して説明した処理によって把持部HNDを動かす。そして、ロボットシステム1は、レンチM1がボルトO1から所定の距離だけ離れた位置から初期位置まで移動した状態となるまで把持部HNDを動かす。ロボットシステム1は、図7(A)?図7(D)に示した動作を行う処理を繰り返すことで、レンチM1によってボルトO1を締める。
【0128】
以下、図8を参照することにより、制御装置30の制御部36が、レンチM1によりボルトO1を締めるようにロボット20を動作させるための処理について説明する。図8は、制御装置30の制御部36が、レンチM1によりボルトO1を締めるようにロボット20を動作させるための処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0129】
以下では、ロボットシステム1は、図5に示したステップS100からステップS110までの処理をすでに行ったものとして説明する。まず、制御部36は、初期配置処理によって、把持部HNDに把持されたレンチM1が前述の所定の初期位置に配置されるまでロボット20の把持部HNDを動かす(ステップS300)。ここで、初期配置処理とは、図5に示したステップS120からステップS270までの処理を示す。
【0130】
次に、制御部36は、組み付け処理によってレンチM1とボルトO1を組み付ける(ステップS310)。ここで、組み付け処理とは、図5に示したステップS120からステップS270までの処理によって、レンチM1とボルトO1が図7(B)に示した状態となるまで、把持部HNDを動かしてレンチM1とボルトO1を組み付ける処理を示す。
【0131】
次に、制御部36は、ボルト締付準備処理によって、レンチM1とボルトO1が図7(D)に示した状態となるまでレンチM1を把持している把持部HNDを動かす準備を行う(ステップS320)。ここで、ボルト締付準備処理とは、図5に示したステップS120からステップS240までの処理によって把持部HNDを動かしてレンチM1によりボルトO1を回転させるための加算微小移動量と加算微小回転量を算出する処理を示す。
【0132】
次に、制御部36は、ステップS320において上記の式(10)から算出したモーメント(締め付けトルクに相当)が所定値以上か否かを判定することで、ボルトO1の締め付けが完了したか否かを判定する(ステップS330)。制御部36は、算出したモーメントが所定値以上と判定した場合(ステップS330-Yes)、ボルトO1の締め付けが完了したと判定し、処理を終了する。一方、制御部36は、算出したモーメントが所定値未満と判定した場合(ステップS330-No)、ステップS320において上記の式(15)から算出した加算微小移動量及び加算微小回転量の両方が、それぞれに対する所定の閾値未満か否かを判定する(ステップS340)。
【0133】
加算微小移動量及び加算微小回転量の両方が、それぞれに対する所定の閾値以上と判定した場合(ステップS340-No)、制御部36は、レンチM1とボルトO1が図7(D)に示した状態に達していないと判定し、ステップS320で算出された緩和動作量及び目標動作量とに基づいて、作業座標系Σ_wにおける力センサー22の目標位置及び姿勢を算出する(ステップS360)。次に、制御部36は、力センサー22の位置及び姿勢が、ステップS360で算出された作業座標系Σ_wにおける力センサー22の目標位置及び姿勢と一致するように、力センサー22を移動させるようにロボット20を制御することで、ボルトO1をレンチM1により更に回転させる(ステップS370)。なお、ステップS360は、ステップS260と同様の処理であり、ステップS370は、ステップS270と同様の処理であるため、これらの詳細な説明を省略する。一方、加算微小移動量及び加算微小回転量の両方が、それぞれに対する所定の閾値未満と判定した場合(ステップS340-Yes)、制御部36は、レンチM1とボルトO1が図7(D)に示した状態に達したと判定し、レンチM1をボルトO1から離し(ステップS350)、その後、ステップS300の処理を行う。
【0134】
以上説明したように、第3の実施形態に係るロボットシステム1は、第1の実施形態において図5で説明した処理と、締め付けトルクに相当するモーメントに応じたステップS330の処理とに基づいて、ビジュアルサーボによる制御と、力センサーによるコンプライアントモーション制御を組み合わせ、把持部HNDにより把持したレンチM1によってボルトO1を確実に締めることができる。」
イ 図面
「【図1】
[図:0001414220000003.jpg]
」
「【図7】
[図:0001414220000004.jpg]
」
(2)甲2記載の技術的事項
前記(1)から、甲2には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「ボルトO1を着脱させるロボット20であって、軸線回りのトルクが、予め定められた所定のトルクとなるようにレンチM1を軸線回りに回転させる回転駆動部と、レンチM1の位置及び向きを調節可能なアーム部ARMと、回転駆動部及びアーム部ARMを制御する制御部36とを有すること。」(以下「甲2記載の技術的事項」という。)
3 甲3
(1)甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明
「【0019】
請求項1に記載の発明は、電動ドライバーyの回転駆動軸2を嵌着せしめる嵌挿孔1を内側部に形成する主動ギヤaを枢着せしめた握持フレームdを有する電動ドライバー用補助工具Aにおいて、前記電動ドライバー用補助工具Aを構成する前記主動ギヤaに噛合せしめた従動ギヤbを枢着し、前記従動ギヤbに噛合する2個の小径ギヤc、cを、前記2個の小径ギヤc、c同士を噛合させることなく枢着し、前記2個の小径ギヤc、cに噛合せしめる内側部にボルトeの頭部3もしくはナット4が嵌挿する嵌挿通孔5を有し、且つ前記ボルトeの螺杆6が嵌挿し、且つ前記ボルトeの嵌挿通孔5の径より小径の切欠嵌挿部7を有する切欠駆動ギヤfを枢着し、前記握持フレームdの外側部8より内側部9に前記ボルトeの螺杆6が嵌挿する切欠嵌挿部7aを形成せしめることを特徴とする電動ドライバー用補助工具であるので、本発明の補助工具を握持したまま、アンカーボルトの螺杆を目がけて前進させるだけで切欠駆動ギヤの切欠嵌挿部にアンカーボルトの螺杆部分が嵌り込み、さらに上方もしくは左右何れかの方向に前進させるだけで、ナットの嵌挿通孔にナットをスムーズに嵌め込むことができる。」
「【0057】
この切欠駆動ギヤfは、表面部19と裏面部20に、嵌挿通孔5を囲繞し外周が円柱形状にして、且つアンカーボルトeの螺杆6のみが嵌挿できる形状にして、切欠駆動ギヤfの外側周囲部から前記嵌挿通孔5にかけて切欠形成されている切欠嵌挿部7を有する軸杆部22、23が上側フレームgと下側フレームiの枢着嵌挿孔29、29に枢着されている。」
イ 図面
「【図1】
[図:0001414220000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001414220000006.jpg]
」
(2)甲3記載の技術的事項
前記(1)から、甲3には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「電動ドライバー用補助工具Aには、前記電動ドライバー用補助工具Aを軸線に沿う方向に貫通するナット4が着脱可能な嵌挿通孔5が形成され、前記嵌挿通孔5は、前記電動ドライバー用補助工具Aにおける前記軸線回りの一部に形成されるとともに前記電動ドライバー用補助工具Aを前記軸線に沿う方向に貫通して前記嵌挿通孔5に連なって、前記電動ドライバー用補助工具Aの外側における前記軸線に交差する方向から螺杆6が挿通される切欠嵌挿部7が形成されること。」(以下「甲3記載の技術的事項」という。)
4 甲4
甲4の段落【0055】、【0067】の記載、及び、図1、4より、甲4には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「移動可能なロボットのアームに装着可能であり、回転可能な回転ソケット12を含むレンチヘッド11を有し、回転ソケット12には軸方向に第1解放溝12a及び開口部が形成されている電動ツール10。」(以下「甲4記載の技術的事項」という。)
5 甲5
甲5の図2~4より、甲5には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「側方に開口を有する異径構造のスパナ。」(以下「甲5記載の技術的事項」という。)
6 甲6
甲6の図1~2より、甲6には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「異径構造のスパナー。」(以下「甲6記載の技術的事項」という。)
7 甲7
甲7の段落【0020】、図5より、甲7には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
「ボンベ長手方向の軸の周りにボンベを回転させるボンベ回転装置14。」(以下「甲7記載の技術的事項」という。)
第5 当審の判断
1 理由1(甲1を主引用例とする進歩性欠如)
(1)本件発明1
<はじめに:主引用発明について>
申立人は、特許異議申立書の第13ページ~17ページの「(5-3)本件特許発明と証拠方法(甲第1号証及び甲第2号証)との対比」において、引用文献1(甲第1号証)に引用文献2(甲第2号証)を組み合わせた技術と本件発明1とを対比している。
しかし、進歩性の判断では、先行技術の中から、論理付けに最も適した一の引用発明を選んで 主引用発明とし、主引用発明から出発して、当業者が請求項に係る発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断するところ、独立した二以上の引用発明を組み合わせて主引用発明とすることはできない(特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 第2節 進歩性 3.進歩性の具体的な判断、第III部 第2章 第3節 新規性・進歩性の審査の進め方 4.1対比の一般手法 参照)。
そのため、当審は、主引用発明を甲1発明として、以下の判断を行った。
ア 本件発明1と甲1発明の対比
甲1発明の「ボンベ本体1」、「口金部2の充填口5に設けられたユニオンつば7a」、「管路6」及び「ユニオンナット7c」は、それぞれ、本件発明1の「ボンベ」、「口金」、「配管」及び「ナット」に相当する。
また、甲1発明においては、「管路6」に接続されているのはユニオンねじ7bであり、ユニオンつば7aに回動可能に設けられた「ユニオンナット7c」を回動させることで、「管路6」を「ボンベ本体1」の「口金部2の充填口5に設けられたユニオンつば7a」に着脱させるものであるから、甲1発明は、「ボンベの口金に、配管を着脱させるためのナットを回転させる」限りにおいて、本件発明1の「ボンベの口金に、配管が接続されたナットを着脱させる」点、「前記ナットに着脱可能なソケット」及び「前記ソケットを前記第1軸線回りに回転させて前記ナットを前記口金に嵌め合わせる」点に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は以下のイの点で一致し、ウの点で相違する。
イ 一致点
「ボンベの口金に、配管を着脱させるためのナットを回転させる着脱装置。」
ウ 相違点
(ア)相違点1
ボンベの口金に、配管を着脱させるためのナットについて、本件発明1は、「配管が接続されたナット」であり、ボンベの口金に対して着脱させるナットであるのに対して、甲1発明は、ユニオンナット7cが管路6に接続されておらず、管路6に嵌合されたユニオンねじ7bに対して着脱させるものである点。
(イ)相違点2
配管をボンベの口金に着脱させるための、ナットを回動させる着脱装置の構成について、本件発明1は、「ナットの位置及び向きを検出する3次元形状測定部と、前記ソケットの第1軸線回りのトルクが、予め定められた所定のトルクとなるように前記ソケットを前記第1軸線回りに回転させて前記ナットを前記口金に嵌め合わせる回転駆動部と、前記ソケットが取付けられた支持部を、自身の第1端部に有し、自身の第2端部に対する、前記支持部の位置及び向きを調節可能なアームと、前記回転駆動部及び前記アームを制御する制御部」を有しているのに対して、甲1発明はこのような構成を有しているか不明である点。
(ウ)相違点3
本件発明1は、「自身の開口部に前記配管が挿通可能であるとともに、前記ナットに着脱可能なソケット」を備えており、「前記ソケットには、前記ソケットを前記第1軸線に沿う方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の前記第1軸線に沿う方向の第1側の端部に前記貫通孔と同軸に配置され、前記第1側に向かって開口するとともに前記貫通孔よりも内径が大きく、自身に対する前記第1側から前記ナットが着脱可能な穴と、が形成され、前記開口部は、前記ソケットにおける前記第1軸線回りの一部に形成されるとともに前記ソケットを前記第1軸線に沿う方向に貫通して前記貫通孔に連なって、前記ソケットの外側における前記第1軸線に交差する方向から前記配管が挿通される」のに対して、甲1発明ではこのような構成を有しているか不明である点。
エ 相違点の検討
事案に鑑み、相違点3について主に検討する。ただし、相違点3の判断には、相違点1の判断も影響するため、以下、併せて検討する。
(ア)相違点1
甲1発明においては、ボンベ本体1の口金部2に、管路6を着脱させるためのユニオンナット7cが、口金部2側に設けられ、ユニオンねじ7bが管路6に接続されたものであり、また、配管側にナットが接続された態様については、甲2~6のいずれにも記載されていない。しかしながら、ボンベ本体1の口金部2と管路6とを、ユニオンつば7a、ユニオンねじ7b及びユニオンナット7cにて着脱可能に接続するにあたり、甲1発明のように、口金部2側にユニオンナット7cを設け、管路6側にユニオンねじ7bを設けるか、本件発明1のように、管路6側にユニオンナット7cを設け、口金部2側にユニオンねじ7bを設けるかの2択から当業者が適宜決定可能な設計的事項であり、前記相違点1に係る本件発明1のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ)相違点3
前記(ア)のとおり、甲1発明において、ボンベ本体1の口金部2に、管路6を着脱させるためのユニオンナット7cを配管に接続し、当該ユニオンナット7cをボンベ本体1の口金部2に着脱させる着脱装置を想到することが容易であったとしても、相違点3に係る「ソケットには、ソケットを第1軸線に沿う方向に貫通する貫通孔と、貫通孔の第1軸線に沿う方向の第1側の端部に貫通孔と同軸に配置され、第1側に向かって開口するとともに貫通孔よりも内径が大きく、自身に対する第1側からナットが着脱可能な穴と、が形成され、開口部は、ソケットにおける第1軸線回りの一部に形成されるとともにソケットを第1軸線に沿う方向に貫通して貫通孔に連なって、ソケットの外側における第1軸線に交差する方向から前記配管が挿通される」点について、甲2~7のいずれにも記載されていないし、甲2~7記載の技術的事項から容易ともいえないから、前記相違点3に係る本件発明1のようにすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
特に、甲2~7記載の技術的事項は、いずれも配管とソケットとの関係が記載されていないため、ソケットに設けられた開口部に、配管が挿通可能であり、ソケットの外側における第1軸線に交差する方向から配管が挿通されるものではなく、相違点3に係る本件発明1は甲1発明及び甲2~7記載の技術的事項から容易ともいえない。
また仮に、前記相違点3に係る本件発明1の構成が公知であったとしても、主引用発明である甲1発明から出発して、前記相違点1に係る本件発明1の構成を前提技術として採用したうえで、更に前記相違点3に係る本件発明1の構成を想到するためには、多段階の改変が必要となることから、当業者が容易に想到し得たということはできない。
(ウ)相違点2(甲1発明と甲2記載の技術的事項との組合せについて)
なお、相違点2についての判断についても触れると、甲2には、前記第4の2(2)に示した甲2記載の技術的事項が記載されている。しかしながら、前記第4 1(2)イに示したように、甲1には、マニピュレータ等による遠隔操作を行う前提として、操作の面倒なユニオン等の特別な接続具を使用しないことが記載されている。してみると、ユニオンつば7a、ユニオンねじ7b及びユニオンナット7cを使用する甲1発明において、ロボットで操作可能とするための特別な接続具を使用して遠隔操作を行うように改変することには阻害要因があることから、甲1発明に、ロボットシステムにより遠隔操作を行う甲2記載の技術的事項を適用することを、当業者が直ちに想到し得たということはできない。
オ よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~5
本件発明2~5は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものである。よって、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~5は、甲1発明、及び甲2~7記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたということができないことから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、理由1によっては取り消すことはできない。
2 理由2(サポート要件違反)
本件発明3の「調整部」に関連して、本件明細書には、その段落【0009】には「・・・調整部により、第2軸線周りに口金が延びる向きを調整することができる。」と記載され、段落【0033】には「図1及び図2に示すように、例えば、調整部40は、一対の腕部41と、一対のローラ42と、ローラ駆動部(不図示)と、を有する。
一対の腕部41は、装置本体10の側面に、ボンベ100のボンベ本体101を径方向に挟むように配置されている。各ローラ42は、各腕部41の先端部に回転可能に支持されている。各ローラ42の回転軸線は上下方向に沿う。ローラ駆動部は、一対のローラ42をそれぞれ同じ向きに回転させる。
調整部40は、ボンベ100の第2軸線O2回りの向きを調整可能である。」と記載され、段落【0046】には「着脱装置1は、調整部40を備える。従って、第2軸線O2周りに口金103が延びる向きを調整することができる。」と記載されている。
したがって、請求項3に記載の「前記ボンベの前記第2軸線回りの向きを調整可能な調整部」については、本件明細書に記載されていると認められる。
そして、本件明細書には、請求項3の「調整部」について具体的に、「一対の腕部41と、一対のローラ42と、ローラ駆動部と、を有する」(段落【0033】)ものが記載されているところ、それ以外のものが発明の詳細な説明に直接に記載されていないとしても、当業者の出願時の技術常識に照らせば「ボンベの前記第2軸線回りの向きを調整する」との課題を解決するための手段は他にもあり得ると解されることから、本件発明3が本件明細書に記載されていないということはできない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたということはできないから、本件特許の請求項3に係る特許は、理由2によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700430