審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700324

薬剤払出装置、薬剤払出装置の制御プログラム、および制御プログラムを記録した記録媒体

審判番号
2024-700324
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-517690
登録番号
7358686
請求日
2024年04月09日
審決日
2024年12月03日
公報発行日
2025年03月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社湯山製作所
  • 【権利者代理人】川上 桂子
  • 【異議申立人】松本 保
審判長/審判官
  • 審判長 平瀬 知明
  • 審判官 土田 嘉一
  • 審判官 三森 雄介
分類
P1651.113-YAA(A61J) / P1651.121-YAA(A61J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7358686号発明「薬剤払出装置、薬剤払出装置の制御プログラム、および制御プログラムを記録した記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7358686号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、13〕、〔8~12〕について訂正することを認める。 特許第7358686号の請求項2、4~7、9、11~13に係る特許を維持する。 特許第7358686号の請求項1、3、8、10についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7358686号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)5月10日(優先権主張 平成29年5月12日)を国際出願日とする出願であって、令和5年10月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行された。 その後、請求項1~13に係る特許に対し、令和6年4月9日に特許異議申立人松本 保(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされたところ、それ以降の経緯は以下のとおりである。 令和 6年 5月30日付け:取消理由通知 令和 6年 8月 2日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 令和 6月 8月15日付け:訂正請求があった旨の通知 (特許法第120条の5第5項) 令和 6年 9月18日 :意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年8月2日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために当審で付した。) (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、 「前記制御部は、一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」とあるのを、 「前記制御部は、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項2または3に記載の」とあるのを、「請求項2に記載の」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~3のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項2に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項2、4~6のいずれか一項に記載の」に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (8)訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項9に、 「一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースへ記憶させる処理」とあるのを、 「一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースへ記憶させる処理」に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (10)訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項8~10のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項9に記載の」に訂正する。 (11)訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項12に「請求項8~11のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項9または11に記載の」に訂正する。 (12)訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~7のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項2,4~7に記載の」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~7及び13は、請求項2~7及び13が、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 訂正前の請求項8~12は、請求項9~12が、それぞれ請求項8を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項7によって訂正される請求項8に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求をされたものである。 3 本件訂正の適否 (1)訂正事項1、3、7及び9について ア 訂正の目的 訂正事項1、3、7及び9は、それぞれ訂正前の請求項1、3、8及び10を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1、3、7及び9は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1、3、7及び9は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」ことについて、「一患者に対する薬剤の全てについての払い出し作業を完了するたびに」払出薬剤情報を記憶させることを限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、本件の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0071】の「そして、手撒きで払い出される薬剤の全てについての手撒き作業が完了したと判断すると(S29にてYes)、制御部61は、前記メモリに記憶されていた製造番号および使用期限を読み出して、患者を特定する情報(患者ID、患者名等)や処方日付等と関連付けて、記憶部62の履歴データベースへ登録する(S30)。」との記載、及び段落【0074】の「以上のとおり、上記の実施形態にかかる薬剤払出装置100によれば、1人の患者に対する処方に基づいて薬剤払い出しを行うたびに、履歴データベースに、当該患者に対して、いつ、どのような薬剤を払い出したかについての履歴情報を登録する。」との記載に基づくものである。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (3)訂正事項4~6及び10~12について ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項2または3を引用していたところ、訂正事項3により訂正前の請求項3が削除されることに伴い、請求項3を引用しないものとする訂正である。 訂正事項5は、訂正前の請求項5が請求項1~3のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項1及び3により訂正前の請求項1及び3が削除されることに伴い、請求項1及び3を引用しないものとする訂正である。 訂正事項6は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項1及び3により訂正前の請求項1及び3が削除されることに伴い、請求項1及び3を引用しないものとする訂正である。 訂正事項10は、訂正前の請求項11が請求項8~10のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項7及び9により訂正前の請求項8及び10が削除されることに伴い、請求項8及び10を引用しないものとする訂正である。 訂正事項11は、訂正前の請求項12が請求項8~11のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項7及び9により訂正前の請求項8及び10が削除されることに伴い、請求項8及び10を引用しないものとする訂正である。 訂正事項12は、訂正前の請求項13が請求項1~7のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項1及び3により訂正前の請求項1及び3が削除されることに伴い、請求項1及び3を引用しないものとする訂正である。 したがって、訂正事項4~6及び10~12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4~6及び10~12は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4~6及び10~12は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (4)訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8は、訂正前の請求項9の「一患者に対する薬剤の払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースへ記憶させる処理」について、「一患者に対する薬剤の全てについての払い出し作業を完了するたびに」払出薬剤情報を記憶させることを限定するものである。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8は、本件明細書の段落【0071】の「そして、手撒きで払い出される薬剤の全てについての手撒き作業が完了したと判断すると(S29にてYes)、制御部61は、前記メモリに記憶されていた製造番号および使用期限を読み出して、患者を特定する情報(患者ID、患者名等)や処方日付等と関連付けて、記憶部62の履歴データベースへ登録する(S30)。」との記載及び段落【0074】の「以上のとおり、上記の実施形態にかかる薬剤払出装置100によれば、1人の患者に対する処方に基づいて薬剤払い出しを行うたびに、履歴データベースに、当該患者に対して、いつ、どのような薬剤を払い出したかについての履歴情報を登録する。」との記載に基づくものである。 したがって、訂正事項8は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、13〕、〔8~12〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、令和6年8月2日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】(削除) 【請求項2】 処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、 作業者による入力を受け付ける入力部と、 手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、 前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、 制御部と、 前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、 前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、 前記制御部は、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる、薬剤払出装置。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記手撒き薬品処理部は、複数のセルに区切られたトレーであって、前記複数のセルの各々に1回の服用分の薬剤が投入されるトレーを備え、 前記制御部は、前記トレーへ手撒きにより薬剤の払い出しが行われる場合、払い出す薬剤毎に、前記払出薬剤情報の入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させる、請求項2に記載の薬剤払出装置。 【請求項5】 錠剤を収容する錠剤カセットを複数有し、前記処方データにしたがって前記錠剤カセットから錠剤を払い出す錠剤供給ユニットをさらに備え、 前記制御部は、前記錠剤カセットへの錠剤の充填作業時に、前記払出薬剤情報の入力欄を含む作業支援画面を前記モニタに表示させる、請求項2に記載の薬剤払出装置。 【請求項6】 前記トレーは、ブリスターパックを受け入れるよう構成されている、請求項4に記載の薬剤払出装置。 【請求項7】 1回の服用分毎に分けて払い出された薬剤を個別の薬包に分包する分包ユニットをさらに備えた、請求項2、4~6のいずれか一項に記載の薬剤払出装置。 【請求項8】(削除) 【請求項9】 処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置の制御プログラムであって、前記制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、作業者による入力を受け付ける入力処理と、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面をモニタに表示させて、前記処方データに含まれる手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付ける処理と、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて、前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースへ記憶させる処理とを実行させる、制御プログラム。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 前記払出薬剤情報がロット番号を含む、請求項9に記載の制御プログラム。 【請求項12】 請求項9または11に記載の制御プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。 【請求項13】 前記払出薬剤情報がロット番号を含む、請求項2,4~7のいずれか一項に記載の薬剤払出装置。 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。 <甲1を主引例とする新規性欠如> 請求項1~4、6~13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1~4、6~13に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 <甲1を主引例とする進歩性欠如> 請求項1~4、6~13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証の記載事項及び甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <甲2を主引例とする進歩性欠如> 請求項1~4、6~13に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証の記載事項及び甲第4号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証の記載事項、甲第4号証の記載事項及び甲第5号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:米国特許出願公開第2013/0218330号明細書 甲第2号証:特開2004-318240号公報 甲第3号証:特開2015-223460号公報 甲第4号証:国際公開第2012/070643号 甲第5号証:特開2006-51178号公報 甲第6号証:米国特許第6611806号明細書 なお、甲第1号証~甲第6号証を、以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。 第5 取消理由通知の概要と当審の判断 1 取消理由通知の概要 令和6年5月30日付け取消理由通知に記載した取消理由(甲6を主引例とする進歩性欠如)の概要は以下のとおりである。 請求項1~13に係る発明は、甲6に記載された発明、甲4の記載事項及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 当審の判断 (1)甲6、甲4及び甲5の記載事項及び引用発明 ア 甲6の記載事項及び引用発明 (ア)甲6には、訳文にして以下の記載がある。なお、訳文は当審で作成したものであり、下線は当審で付した(以下同様)。 a 1欄5~6行 「本発明は、患者に投与された薬剤を追跡することに関する。」 b 2欄22~32行 「一実施形態では、1つの遠隔システムは、それぞれ、患者に投与される薬剤のロット番号と薬剤を受け取る患者に関する情報を関連付ける、複数の遠隔ステーションを含む。各システムには、関連付けをホストシステムに送信するための遠隔通信システムも設けられている。 ホストシステムは、遠隔システムの各々から通信を受け取るためのホスト通信システムを含む。ホストシステムは更に、遠隔通信システムから受信した関連付けを記憶するための記憶領域を含む。」 c 2欄40~44行 「遠隔システムとホストとの間の通信は、即時、時折又は周期的であり得る。時折又は周期的な場合、遠隔システムは、ロット番号と患者関連情報との間の関連を記憶するための記憶領域を更に含む。」 d 3欄39~45行 「図1は、本発明の一実施形態に従って作られた、薬剤のためのロット追跡システムのブロック図である。 図1に示されるように、ロット追跡システムは、遠隔システム1、3及び5のような複数の遠隔システムを含む。これらの遠隔システムは、ネットワーク通信システム7を介してホスト9に接続される。」 e 4欄11~20行 「典型的には、図2の処方箋発行ブロック15に示されるように、医師は、特定の薬剤、例えば、血液製剤を患者が受け取るための処方箋を発行する。処方箋は、紙に記録されるか、より現代的な設備では、コンピュータに入力される。 本発明の重要な特徴は、医師によって発行された追跡されるべき各処方箋と、処方箋の履行において実際に患者に投与される薬剤のロット番号又は複数のロット番号との間の関連を記録することである。」 f 8欄19~25行 「本発明の一実施形態では、技術者への指示はラベルに含まれ、他の実施形態では、別々に印刷される。さらに他の実施形態(図示せず)では、ロット番号を記録することの指示は、例えば、コンピュータディスプレイ、例えば、ステーション13に関連するディスプレイのような他の手段を介して技術者に提供され得る。」 g 8欄29~41行 「本発明の実施に伴い、技術者は、図2の「ロット番号入力」ブロック43に反映されるように、自分の領域のコンピュータステーション13に歩いて行き、処方を履行するために自分が選択した薬剤のロット番号(又は複数のロット番号)を入力するだけでよい。 ソフトウェアは、ステーション11のような薬剤師ステーションから処方情報を受信するステーション13において実行される。技術者は、供給した薬剤のロット番号(又は複数のロット番号)を、記入した処方箋に対応する領域に、そのロット番号(又はそれらのロット番号)をステーション13に入力することによって、簡単に関連付ける。」 h 8欄56~60行 「さらに別の実施形態では、ステーション11及び/又は13の機能は、自動薬物分配装置によって実行され得る。そのような自動分配装置は、本出願において「ステーション」と称されるものの範囲内である。」 i 9欄24~30行 「次に、入力されたロット番号と患者関連情報との間の関連付けが、図2の患者関連データへのロット番号関連付けの記憶ブロック49に示されるように、記憶装置37に記憶される。すぐわかるように、これは記憶装置の冗長レベルを提供し、遠隔システム1がこの時点でホスト9と直ちに通信する必要性を緩和する。」 j 9欄52~55行 「ロット番号及び関連付けられた患者関連情報は、図2のホストへのデータアップロードブロック53に反映されるように、通信システム51によってネットワーク通信7を介してホスト9へ送られる。」 k 10欄下から2行~11欄3行 「検証の後(又は検証を行わずにロット番号を入力した後)、ロット番号に関連付けられた患者関連情報は、図5の検索ブロック89によって示されるように、周知の技術にしたがって、記憶領域75から検索システム91によって検索される。」 l 図1 「 [図:0001420324000001.jpg] 」 m 図2 「 [図:0001420324000002.jpg] 」 (イ)上記(ア)から、甲6には以下の事項が記載されている。 n 上記hから、ステーション13の機能は、自動薬物分配装置によって実行され、そのような自動分配装置は、「ステーション」と称される。そして、上記f及びgから、ロット番号を記録することの指示は、ステーション13に関連するディスプレイを介して技術者に提供され、技術者は、供給した薬剤のロット番号(又は複数のロット番号)をステーション13に入力するから、ステーション13の機能を実行する自動薬物分配装置は、ディスプレイを制御する制御部と、技術者による入力を受け付ける入力部を備える。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を総合すると、甲6号証には、次の発明が記載されている(以下「甲6発明」という。)。 「ロット追跡システムは、遠隔システム1、3及び5のような複数の遠隔システムを含み、これらの遠隔システムは、ネットワーク通信システム7を介してホストシステム9に接続され、 1つの遠隔システム1は、それぞれ、患者に投与される薬剤のロット番号と薬剤を受け取る患者に関する情報を関連付ける、複数の遠隔ステーションを含み、 遠隔システム1には、関連付けをホストシステム9に送信するための遠隔通信システムも設けられ、 ホストシステム9は、遠隔通信システムから受信した関連付けを記憶するための記憶領域75を含み、 処方箋は、コンピュータに入力され、 ロット番号を記録することの指示は、遠隔ステーション13に関連するディスプレイを介して技術者に提供され、 技術者は、供給した薬剤のロット番号(又は複数のロット番号)を、記入した処方箋に対応する領域に、そのロット番号(又はそれらのロット番号)を遠隔ステーション13に入力することによって、簡単に関連付け、 遠隔ステーション13の機能は、自動薬物分配装置によって実行され、 自動薬物分配装置は、ディスプレイを制御する制御部と、技術者による入力を受け付ける入力部を備え、 遠隔システム1とホストシステム9との間の通信は、即時、時折又は周期的であり、時折又は周期的な場合、遠隔システム1は、ロット番号と患者関連情報との間の関連付けを記憶するための記憶装置37を更に含み、 入力されたロット番号と患者関連情報との間の関連付けが、記憶装置37に記憶され、 ロット番号及び関連付けられた患者関連情報は、通信システム51によってネットワーク通信7を介してホストシステム9へ送られる、ロット追跡システムにおける自動薬物分配装置。」 イ 甲4の記載事項 (ア)甲4には、以下の記載がある。なお、「・・・」は省略を示す(以下同様)。 a「[0001] この発明は、処方された毎服用分の錠剤をブリスターパック形式のトレー(以下、単に「トレー」という。)に分包する錠剤分包装置に関するものである。」 b「[0039]・・・後述の搬送工程の1サイクルごとに払出し口21から処方済みの錠剤が毎服用分ずつ、例えば一日4回1週間分、或いは、一日3回5日分等の分量が間欠的に払い出される。」 c「[0111]・・・錠剤のトレー24に対する分配は前述のように自動的に行うほかに、例えば錠剤収納部13に保存できない薬剤などを補助的に手動で分配すること、いわゆる手撒きによる分配を行う場合もある。」 (イ)上記(ア)から、甲4には以下の事項が記載されている。 「処方された毎服用分の錠剤をブリスターパック形式のトレーに分包する錠剤分包装置において、 払出し口21から処方済みの錠剤が毎服用分ずつ、間欠的に払い出されること。」 「錠剤のトレー24に対する分配について、自動的に行うほかに、例えば錠剤収納部13に保存できない薬剤などを補助的に手動で分配すること、いわゆる手撒きによる分配を行うこと。」 ウ 甲5の記載事項 (ア)甲5には、以下の記載がある。 a「【0094】 ここで薬剤補充用画面は、例えば図15に示すような表示画面であり、薬品名欄と、JANコード欄、管理棚の番号欄、カセットナンバー欄、在庫量欄、充填量欄、在庫上限量欄、適正在庫量欄、ロット番号欄、使用期限表示欄が表示される。」 b「【0112】 そして160番の薬剤カセット33に、新たに薬剤を充填する。作業者は、表示画面の充填量欄に補充した薬剤数を入力する。また薬剤のロット番号と使用期限を更新入力する。」 c【図15】 「 [図:0001420324000003.jpg] 」 (イ)上記(ア)から、甲5には以下の事項が記載されている。 「薬剤補充用画面に、薬品名欄と、JANコード欄、管理棚の番号欄、カセットナンバー欄、在庫量欄、充填量欄、在庫上限量欄、適正在庫量欄、ロット番号欄、使用期限表示欄が表示され、 作業者は、表示画面の充填量欄に補充した薬剤数を入力し、また薬剤のロット番号を更新入力すること。」 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲6発明を対比する。 (ア)甲6発明において「処方箋は、コンピュータに入力され」るから、甲6発明の「遠隔ステーション13の機能」を実行する「自動薬物分配装置」は、その機能及び構成からみて、本件発明2の「処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置」と、処方データに基づき、薬剤を払い出す薬剤払出装置の限りで一致する。 (イ)甲6発明の「技術者による入力を受け付ける入力部」は、その機能及び構成からみて、本件発明2の「作業者による入力を受け付ける入力部」に相当し、以下同様に、「遠隔ステーション13に関連するディスプレイ」は「前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタ」に、「ディスプレイを制御する制御部」は「制御部」に、それぞれ相当する。 (ウ)甲6発明の「患者に投与される薬剤のロット番号」は、本件発明2の「薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報」に相当する。 (エ)甲6発明の「ロット番号を記録することの指示は、遠隔ステーション13に関連するディスプレイを介して技術者に提供され」ることは、ディスプレイを制御する制御部が行うから、本件発明2の「前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させ」ることに相当する。 (オ)甲6発明の「技術者は、供給した薬剤のロット番号(又は複数のロット番号)を、記入した処方箋に対応する領域に、そのロット番号(又はそれらのロット番号)を遠隔ステーション13に入力」することと、本件発明2の「前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け」ることは、前記処方データに含まれる払出薬剤情報の入力を受け付けることの限りで一致する。 (カ)甲6発明の「入力されたロット番号と患者関連情報との間の関連付けが、記憶装置37に記憶され」ることと、本件発明2の「前記制御部は、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」ことは、前記制御部は、前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶させることの限りで一致する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「処方データに基づき、薬剤を払い出す薬剤払出装置であって、 作業者による入力を受け付ける入力部と、 前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、 制御部と、 前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる払出薬剤情報の入力を受け付け、 前記制御部は、払出作業において払い出された前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて記憶させる、薬剤払出装置。」 <相違点1> 本件発明2の薬剤払出装置は、薬剤を「1回の服用分毎に分けて」払い出すものであって、「手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部」を備え、処方データに含まれる「手撒き対象薬品の」払出薬剤情報の入力を受け付け、払い出された「手撒き対象薬品の」払出薬剤情報を記憶させるのに対して、甲6発明の自動薬物分配装置は、薬剤をどのように払い出すか不明であり、手撒きに関する特定がない点。 <相違点2> 本件発明2は、薬剤払出装置が「薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースを格納した記憶部」を備え、「一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに」、払出薬剤情報を当該患者を特定する情報と関連づけて「前記履歴データベース」へ記憶させるのに対して、甲6発明は、ロット番号と患者関連情報との間の関連付けが、記憶装置37に記憶され、時折又は周期的にホストシステム9へ送られ、ホストシステム9の記憶領域75に記憶される点。 イ 判断 上記相違点1及び2について検討する。 甲6には、手撒きにより薬剤を払い出すことや、手撒きによる一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、ロット番号と患者関連情報との間の関連付けを記憶させることは記載されていないから、上記相違点1及び相違点2は、実質的な相違点である。 また、甲4及び甲5には、薬剤払出装置の記憶部に履歴データベースを格納し、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、払い出された手撒き対象薬品の製造時期及び/又は製造場所を特定することができる払出薬剤情報を履歴データベースに記憶させることは記載されていない。 そして、甲6発明は、ロット番号及び関連付けられた患者関連情報を、即時、時折又は周期的にホストシステム9に送信して、ホストシステム9の記憶領域75に記憶するものであって、手撒きに関する特定もないから、自動薬物分配装置の記憶部にロット番号及び関連付けられた患者関連情報を記憶するようにし、更に、その記憶のタイミングを一患者に対する薬剤の全てについての払出作業の完了と関連付ける動機もない。 したがって、甲6発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人は、令和6年9月18日提出の意見書(以下「意見書」という。)に添付して甲第7号証及び甲第8号証を提出しつつ、概略以下の主張をしている。 甲第7号証:特開2006-155599号公報(以下「甲7」という。) 甲第8号証:特開2017-033173号公報(以下「甲8」という。) 甲6には、追跡のために、処方箋とロット番号の関連が記録されること、及び、ホストシステムに対して記録すべき情報が時間をおいて(時折又は周期的に)送られることが記載されていることから、「処方の情報を記憶するタイミングを設定すること」は、甲6において示唆があるといえ(意見書の7ページ3~7行)、 甲2、甲7及び甲8の各記載から、「処方に係る薬剤の全ての調剤が完了するたびに、当該薬剤の情報を記憶する」ことは周知技術であり(同9ページ下から2行~10ページ5行)、 一患者に対する薬剤の全てについての払出作業が完了していない中途半端な状態で、関連付けを履歴として記憶することは、特別な事情がない限り考えられず、また、複数患者に対する払出作業をした後に、まとめて関連付けを履歴として記憶することも考えにくいことから、本件発明2のようにタイミング設定することが、当業者において極めて自然であり(同10ページ6~10行)、 特許権者が主張する「利点」は本件明細書に記載されておらず、採用されるべきではないから(同10ページ11行~11ページ10行)、 本件発明2は、甲6発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項に基いて、又は、甲6発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)当審の判断 甲2、甲7及び甲8には、「「処方に係る薬剤の全ての調剤が完了するたびに、当該薬剤の情報を記憶する」ことは周知技術であ」るという上記主張に関して、それぞれ以下の事項が記載されている。 a 甲2の記載事項(段落【0044】、【0045】、【0053】) 「調剤基本テーブル1001では、調剤番号、処方箋番号等が管理され、このテーブル1001のレコードは、調剤薬局106で調剤行為(205)が行われる時に生成され、 調剤詳細テーブル1101では、調剤番号、医薬品識別コード、服薬番号、製造番号等が管理され、このテーブル1101のレコードは、テーブル1001と同様に、調剤薬局106で調剤(205)が行われる時に生成され、 調剤行為(205)を行い、調剤番号や医薬品識別番号、服薬番号等の情報が、調剤基本テーブル1001及び調剤詳細テーブル1101に登録されること。」 b 甲7の記載事項(段落【0058】~【0061】) 「調剤が終了したか否かを判断し(ステップS15)、 調剤作業が終了すれば、その調剤が処方通りに行われたか否かを判断し(ステップS16)、 調剤が処方通りに行われた場合、取出履歴を調剤完了テーブルに記録し(ステップS19)、 前記ステップS19で行った調剤完了テーブルへの記録は、ある処方データについての調剤が全て完了した時点で行うようにしてもよいこと。」 c 甲8の記載事項(段落【0112】~【0114】) 「ユーザーは、ピッキング薬剤表示領域401に表示された全ての薬剤について「済」のチェックが入ると、保存ボタン402を押下操作し、 保存ボタン402の押下操作を受け付けると(ステップS409)、フロントタブレット2Aは、ネットワーク5を介して薬局支援サーバ3に対して、表示されている薬剤についてのピッキング履歴の保存を要求し(ステップS411)、 ピッキング履歴の保存を要求された薬局支援サーバ3のピッキング支援部106は、ピッキング履歴記憶部17に、ピッキングの履歴として保存する(ステップS413)、具体的に、患者毎に、ピッキングした日付、ピッキングした薬剤、ピッキングした薬剤師などを関連付けて記憶させること。」 上記主張について検討する。 処方に係る薬剤の全ての調剤が完了するたびに、薬剤の情報を記憶することが周知技術であるとしても、上記a~cから、薬剤払出装置の記憶部に履歴データベースを格納し、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、払い出された手撒き対象薬品の製造時期及び/又は製造場所を特定することができる払出薬剤情報を履歴データベースに記憶させることが周知技術であるとはいえないし、上記イのとおり、甲6発明において、自動薬物分配装置の記憶部にロット番号及び関連付けられた患者関連情報を記憶するようにし、更に、その記憶のタイミングを一患者に対する薬剤の全てについての払出作業の完了と関連付ける動機もない。 したがって、甲6発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 よって、本件発明2は、甲6発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4~7、13 本件発明4~7及び13は、本件発明2の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、上記(2)と同様の理由により、甲6発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明9、11、12 本件発明9は、本件発明2の「薬剤払出装置」を、薬剤払出装置の「制御プログラム」の発明としたものであって、実質的な発明特定事項が同じであり、甲6には、甲6発明に係る「制御プログラム」の発明が記載されている。そうすると、本件発明9は、上記(2)と同様の理由により、甲6に記載された発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明11及び12は、本件発明9の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、同様の理由により、甲6に記載された発明、甲4の記載事項、甲5の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 小括 よって、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明2、4~7、9、11~13に係る特許を取消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由と当審の判断 上記第4の「甲1を主引例とする新規性欠如」、「甲1を主引例とする進歩性欠如」及び「甲2を主引例とする進歩性欠如」についての当審の判断は以下のとおりである。 1 甲1~甲6の記載事項及び引用発明 (1)甲1の記載事項 ア 甲1には、訳文にして以下の記載がある。 (ア)「[0174]ここで図18~図20を参照すると、ホルダ13又は13’又は13’’を使用して薬剤11が迅速かつ正確に装填される例示的な自動分配装置45及び例外格納装置43が示されている。」 (イ)「[0181]この例において、カセット型格納装置(図示せず)又は例外格納装置43から放出された1つ以上の薬剤11は、図22に示されているように、包装材204のウェブ内に(例えば、ヒートシール又は音波溶接によって)形成された別個のパウチ202内に装填される。・・・パウチ包装は、所与の時間に服用される正確な薬剤を単一のパウチに一緒に包装することができ、パウチは、各薬剤が服用される正確な順序、例えば、朝、昼及び夕方、に整理され、ラベル付けされ得るため、投薬計画を施す際に使用するのに理想的である。」 (ウ)「[0190]ここで図23~53を参照すると、別の例示的な物品管理システム1010、1010’が示されている。システム10、10’と同様に、システム1010、1010’は、薬剤1011の品目を管理するための好ましい物品管理システムに関連して説明される。」 (エ)[0196]システム1010の例では、上記の例の自動分配装置45の例外格納装置43内に薬剤が装填される正確な順序で、薬剤1011がホルダー1013に装填される。」 (オ)「[0296]図53の概略ブロック図を参照すると、システム1010、1010’とともに使用するためのコントローラー1017は、最も好ましくは、ドッキングステーション1015、1015’のデータポート1109及び通信リンク1111に動作可能に接続されたクライアントコンピューター1349(すなわち、処理デバイス)である。・・・そして、クライアントコンピューター1349は、システム1010、1010’の全体的な制御を提供する。」 (カ)「[0298]各システム1010、1010’は、更に好ましくは、技術者、薬剤師、又は他のユーザーが、コントローラー1017のクライアントコンピューター1349又はPIS1351から情報を入力及び受信することを可能にする、ビデオディスプレイ1125、キーボード1127、及びマウス1129を含む。」 (キ)「[0312]命令フィールド1381がディスプレイ1125上に現れて、オーダーに従ってホルダー1013、1013’内に装填される薬剤1011のタイプのうちの1つを保持する容器1135を選択するようにユーザーに促すことができる。・・・ [0313]加えて、薬剤識別フィールド1388が、薬剤タイプ及び強度1389(例えば、”フルオキセチン塩酸塩プロザック10mg”)、FDA及び顧客NDC番号1391(例えば、11桁NDC”55111014701”及び9桁顧客NDC”551110147”)、必要とされる薬剤1011の量1393(例えば、”1”)、薬剤1011の物理的外観1395(例えば、”青/オブラート/フルオキセチン10mg R147”)、 製造者名1397(例えば、”DR.REDDY’SLAB”)、 有効期限及びロット番号1399(”割り当てられた有効期限:2014年2月7日””ロット:C204817”)と共に現れ得る。」 (ク)[0323]次に、図28~28A及び図42~42Aに示されるように、ユーザーは、薬剤(複数の薬剤)1011を開口1317及びセル1033内に実際に手作業で装填するために、可視情報を利用する。」 (ケ)「[0357]好ましくは、ホルダー1013、1013’の装填及び検証に関する取引コード及び全ての他の情報は、クライアントコンピューター1349上のデータベース1371に格納される。」 (コ)図20 「 [図:0001420324000004.jpg] 」 (サ)図23 「 [図:0001420324000005.jpg] 」 (シ)図56 「 [図:0001420324000006.jpg] 」 イ 上記アを総合すると、甲1には、次の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。 「物品管理システム1010であって、 薬剤1011がホルダー1013に装填され、 クライアントコンピューター1349は、システム1010の全体的な制御を提供し、 各システム1010は、技術者、薬剤師、又は他のユーザーが、コントローラー1017のクライアントコンピューター1349又はPIS1351から情報を入力及び受信することを可能にする、ビデオディスプレイ1125、キーボード1127、及びマウス1129を含み、 命令フィールド1381がディスプレイ1125上に現れて、オーダーに従ってホルダー1013内に装填される薬剤1011のタイプのうちの1つを保持する容器1135を選択するようにユーザーに促し、加えて、識別フィールド1388が、有効期限及びロット番号1399と共に現れ、 ユーザーは、可視情報を利用し、薬剤(複数の薬剤)1011を開口1317及びセル1033内に実際に手作業で装填し、 ホルダー1013の装填及び検証に関する取引コード及び全ての他の情報は、クライアントコンピューター1349上のデータベース1371に格納される、物品管理システム1010。」 (2)甲2の記載事項 ア 甲2には、以下の記載がある。 (ア)「【0012】 この医療システムは、製薬会社101のシステムと、調剤薬局106のシステムと、医療機関111のシステムと、家庭或いは個人が利用する服用支援コンピュータ115と、および医療情報の履歴記録センタ131のシステムがそれぞれインターネット114などのネットワークを介して接続されることにより実現される。」 (イ)「【0014】 製薬会社101は医薬品を製造、販売する。そのシステムとして、サーバー又はパーソナルコンピュータ(以下PCと言う)のような医薬品コンピュータ102を備え、このコンピュータ102にはDBが接続される。DBとして、生産対象となる医薬品についての属性情報を格納する医薬品属性DB103と、生産、出荷に際して、医薬品105毎にその製造番号および出荷情報を格納する製造出荷DB104を有する。 【0015】 調剤薬局106は医薬品の調剤を行い、適正在庫を保持するための在庫管理業務により必要な医薬品が発生した時には、製薬会社101に医薬品の発注を行う。システムとしてサーバー又はPCのような調剤コンピュータ107を有し、医薬品の在庫管理のための情報処理を行う。この調剤コンピュータ107に接続されるDBとして、発注情報を格納する発注DB108を有する。また、患者が処方箋を持参した場合には、調剤業務を行なうと共に、調剤済みの医薬品110を患者に渡すことになるが、この調剤情報を格納する調剤DB109を有する。 医療機関111は患者に対して診療を行い、その結果として処方箋を発行する。医療機関111のシステムは、レセプトコンピュータ112を備える。また発行した処方箋情報を格納する処方箋DB113を有する。」 (ウ)「【0024】 図2は、医療システムの組織別の動作手順を示す。 図2において、製薬会社101は、市場動向をにらみながら医薬品の生産201を行なう。医薬品の製造には個別生産やロット生産等の生産手法があるが、いずれの場合も医薬品の生産単位に製造番号が設定される(製造番号設定202)。商社や調剤薬局等から受注を受けると、医薬品は出荷される(出荷203)。また、入力部よりシステムに対して医薬品の製造、出荷に関する情報が入力される。製造番号は調剤薬局106に送られる。」 (エ)「【0033】 調剤薬局106の調剤DB109は、調剤基本テーブル1001及び調剤詳細テーブル1101を保持し、これらテーブル1001と1101の間は調剤番号と医薬品識別コードにより関連付けられている。また、調剤基本テーブル1001と他のDB104にある製造・出荷基本テーブル501とは医薬品識別コードをキーとして関連付けられる。また、調剤詳細テーブル1101と製造・出荷詳細テーブル601とは製造番号をキーとして関連付けられる。 【0034】 処方箋基本テーブル801、処方箋詳細テーブル901及び患者テーブル911は、医療機関111の処方箋DB113内に保持され、処方箋基本テーブル801と処方箋詳細901の間は処方箋番号及び医薬品識別コードにより関連付けられる。また処方箋基本テーブル801と患者テーブル911との間は患者の個人IDによって関連付けられる。更に、テーブル801と製造・出荷基本テーブル501とは医薬品識別コードをキーとして関連付けられ、調剤基本テーブル1001とは医薬品識別コードと処方箋番号によって関連付けられる。」 (オ)「【0044】 図12は、調剤DB109に格納される調剤基本テーブル1001である。 このテーブル1001では調剤番号、処方箋番号等が管理される。これら調剤番号及び処方箋番号はメインキーとなる。このテーブル1001のレコードは、調剤薬局106で調剤行為(205)が行われる時に、生成される。 【0045】 図13は、調剤DB109に格納される調剤詳細テーブル1101である。調剤番号、医薬品識別コード、服薬番号、製造番号等が管理され、これら調剤番号、医薬品識別コード、服薬番号はメインキーとなる。このテーブル1101のレコードは、テーブル1001と同様に、調剤薬局で調剤(205)が行なわれる時に生成される。」 (カ)「【0053】 個人管理の医薬品在庫情報を確認した後、調剤行為(205)を行い、調剤番号や医薬品識別番号、服薬番号等の情報が調剤基本テーブル1001及び調剤詳細テーブル1101に登録される(1503,1504)。尚、医薬品の調剤が新たに成されない場合には、テーブル1001,1101の内容は更新されるのみである。そして、調剤済みの医薬品の包装には、服薬番号を含む服用支援情報がバーコード印刷されて(1505)、その医薬品は患者に手渡される。」 (キ)図1 「 [図:0001420324000007.jpg] 」 イ 上記アを総合すると、甲2には、次の発明が記載されている(以下「甲2発明」という。)。 「製薬会社101のシステムと、調剤薬局106のシステムと、医療機関111のシステムと、家庭或いは個人が利用する服用支援コンピュータ115と、医療情報の履歴記録センタ131のシステムがそれぞれインターネット114などのネットワークを介して接続されることにより実現される医療システムであって、 製薬会社101のシステムは、医薬品コンピュータ102を備え、このコンピュータ102にはDBが接続され、DBとして、生産対象となる医薬品についての属性情報を格納する医薬品属性DB103と、生産、出荷に際して、医薬品105毎にその製造番号及び出荷情報を格納する製造出荷DB104を有し、 調剤薬局106のシステムは、サーバー又はPCのような調剤コンピュータ107を有し、この調剤コンピュータ107に接続されるDBとして、発注情報を格納する発注DB108と、調剤情報を格納する調剤DB109を有し、 製薬会社101において、医薬品の生産単位に製造番号が設定され、製造番号は調剤薬局106に送られ、 調剤薬局106の調剤DB109は、調剤基本テーブル1001及び調剤詳細テーブル1101を保持し、これらテーブル1001と1101の間は調剤番号と医薬品識別コードにより関連付けられ、調剤詳細テーブル1101と製造・出荷詳細テーブル601とは製造番号をキーとして関連付けられ、 調剤DB109に格納される調剤基本テーブル1001では、調剤番号、処方箋番号等が管理され、このテーブル1001のレコードは、調剤薬局106で調剤行為(205)が行われる時に生成され、 調剤DB109に格納される調剤詳細テーブル1101では、調剤番号、医薬品識別コード、服薬番号、製造番号等が管理され、このテーブル1101のレコードは、調剤薬局106で調剤(205)が行なわれる時に生成され、 調剤行為(205)を行い、調剤番号や医薬品識別番号、服薬番号等の情報が調剤詳細テーブル1101に登録される、医療システムにおける調剤薬局106のシステム。」 (3)甲3の記載事項 ア 甲3には、以下の記載がある。 (ア)「【0024】 次に、分配された各医薬品をそれぞれ1つのトレーに収納していく。その際、図5に示すように、トレーに収納した医薬品の医薬品名及び処方単位数を含む医薬品情報データを作成し、さらに、この医薬品情報データとトレーに割り振られているトレー固有情報とをリンクさせることで、医薬品収納データを作成する。・・・ 【0025】 ここで、図5に示すように、医薬品情報データに、医薬品のロット番号データを含ませると、患者等に処方した後の医薬品のトレーサビリティ向上に繋がる。例えば、医薬品事故が起きてしまった場合に、どの患者等に該当する薬品を処方したか、ということがすぐさま判明するため、医薬品回収作業等の効率性が高まる。 【0026】 そして、図6(a)に示すように、医薬品が収納されたトレーをそれぞれ医薬品棚に格納していき、その格納した箇所の位置データを対応する医薬品収納データにリンクさせることで、医薬品処方データを作成し、そのデータをデータベース13等の記憶手段に記憶させていく(図6(b)参照)。」 イ 上記アから、甲3には以下の事項が記載されている。 「分配された各医薬品をそれぞれ1つのトレーに収納していく際、トレーに収納した医薬品の医薬品名及び処方単位数を含む医薬品情報データを作成し、この医薬品情報データとトレーに割り振られているトレー固有情報とをリンクさせることで、医薬品収納データを作成し、 医薬品情報データに、医薬品のロット番号データを含ませ、 医薬品が収納されたトレーをそれぞれ医薬品棚に格納していき、その格納した箇所の位置データを対応する医薬品収納データにリンクさせることで、医薬品処方データを作成し、そのデータをデータベース13等の記憶手段に記憶させていくこと。」 (3)甲4~甲6の記載事項 甲4~甲6の記載事項は、それぞれ、上記第5の2(1)イ、ウ及びアのとおりである。 2 甲1を主引例とする新規性欠如及び進歩性欠如について (1)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明を対比する。 (ア)上記1(1)ア(イ)から、甲1発明は、薬剤を別個のパウチ202内に装填して、各薬剤を、服用される正確な順序、例えば、朝、昼及び夕方に整理するから、甲1発明の「物品管理システム1010」は、本件発明2の「処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置」に相当する。 (イ)甲1発明の「キーボード1127、及びマウス1129」は、その機能及び構成からみて、本件発明2の「作業者による入力を受け付ける入力部」に相当し、以下同様に、「ビデオディスプレイ1125」は「前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタ」に、「クライアントコンピューター1349」は「制御部」に、「データベース1371」は「薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベース」に、それぞれ相当する。また、甲1発明の「データベース1371」は、記憶部に格納されることは明らかであるから、甲1発明の「データベース1371」を格納する記憶部は、本件発明2の「履歴データベースを格納した記憶部」に相当する。 (ウ)甲1発明の「ホルダー1013」は、ユーザーが薬剤(複数の薬剤)1011を手作業で装填するものであるから、本件発明2の「手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部」に相当する。 (エ)甲1発明の「有効期限及びロット番号1399」は、本件発明2の「前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報」に相当する。そうすると、甲1発明の「識別フィールド1388が、有効期限及びロット番号1399と共に現れ」ることと、本件発明2の「制御部は、」「当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け」ることは、制御部が、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報に関する画面をモニタに表示させることの限りで一致する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置であって、 作業者による入力を受け付ける入力部と、 手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部と、 前記処方データおよび作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、 制御部と、 前記薬剤払出装置における払い出しの履歴を記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、 前記制御部は、前記処方データに対応して払い出す薬剤に関する払出薬剤情報であって、当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報に関する画面を前記モニタに表示させる、薬剤払出装置。」 <相違点3> 本件発明2は、「前記制御部は」、「当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、前記制御部は、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」のに対して、甲1発明は、有効期限及びロット番号1399がディスプレイ1125上に現れるにすぎない点。 イ 判断 上記相違点3について検討する。 甲1には、有効期限及びロット番号1399をユーザーに入力させることは記載されていないから、上記相違点3は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は、甲1発明ではない。 また、甲2~8には、少なくとも、薬剤の製造時期及び/又は製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面をモニタに表示させて、手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を記憶させる薬剤払出装置は記載されておらず、上記相違点3に係る事項は、周知技術でもない。更に、甲1発明において上記相違点3に係る事項を採用する動機もない。 したがって、本件発明2は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明4~7、13 本件発明4~7及び13は、本件発明2の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲1発明ではなく、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明9、11、12 本件発明9は、本件発明2の「薬剤払出装置」を、薬剤払出装置の「制御プログラム」の発明としたものであって、実質的な発明特定事項が同じであり、甲1には、甲1発明に係る「制御プログラム」の発明が記載されている。そうすると、本件発明9は、上記(1)と同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明11及び12は、本件発明9の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲2を主引例とする進歩性欠如について (1)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲2発明を対比する。 (ア)甲2発明の「調剤薬局106のシステム」と、本件発明2の「薬剤払出装置」は、払出薬剤情報を取り扱う装置の限りで一致する。また、甲2発明の「調剤薬局106のシステム」は、「サーバー又はPCのような調剤コンピュータ107を有し」、「この調剤コンピュータ107に接続されるDBとして、発注情報を格納する発注DB108」及び「調剤情報を格納する調剤DB109」を有し、発注と調剤を支援する機能を有しており、そのためのモニタを有することが明らかであるから、本件発明2の「作業者による入力を受け付ける入力部と、作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、制御部」に相当する構成を備える。 (イ)甲2発明の「医薬品105」の「製造番号」は、本件発明2の「薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報」に相当する。 (ウ)甲2発明の「調剤基本テーブル1001」及び「調剤詳細テーブル1101」が、払い出しの履歴を記憶することは明らかである。そして、甲2発明の「調剤薬局106の調剤DB109」は、「調剤基本テーブル1001及び調剤詳細テーブル1101を保持し」ているから、本件発明2の「払い出しの履歴を記憶する履歴データベース」に相当する。また、甲2発明の「調剤薬局106の調剤DB109」が、記憶部に格納されていることは明らかである。 (エ)甲2発明の「調剤DB109に格納される調剤基本テーブル1001では調剤番号、処方箋番号等が管理され、このテーブル1001のレコードは、調剤薬局106で調剤行為(205)が行われる時に、生成され、調剤DB109に格納される調剤詳細テーブル1101では、調剤番号、医薬品識別コード、服薬番号、製造番号等が管理され、このテーブル1101のレコードは、調剤薬局で調剤(205)が行なわれる時に生成され、調剤行為(205)を行い、調剤番号や医薬品識別番号、服薬番号等の情報が調剤詳細テーブル1101に登録される」ことと、本件発明2の「制御部は、」「当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」ことは、制御部が、払出作業において払い出された薬剤の払出薬剤情報を、患者を特定する情報と関連づけて履歴データベースへ記憶させることの限りで一致する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 払出薬剤情報を取り扱う装置であって、 作業者による入力を受け付ける入力部と、 作業者からの入力に基づいて、前記作業者の作業を支援する画面を表示するモニタと、 制御部と、 払い出しの履歴を記憶する履歴データベースを格納した記憶部とを備え、 前記制御部は、払出作業において払い出された薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を、患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる、払出薬剤情報を取り扱う装置。 <相違点4> 本件発明2は、「処方データに基づき、薬剤を1回の服用分毎に分けて払い出す薬剤払出装置」であって、「手撒き対象薬品が投入される手撒き薬品処理部」を備えるのに対して、甲2発明は、調剤薬局106のシステムであって、薬剤払出装置ではなく、「処方データ」に関する特定がなく、「払い出し」が「薬剤払出装置」における払い出しではない点。 <相違点5> 本件発明2は、「前記制御部」は、「当該薬剤の製造時期および/または製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面を前記モニタに表示させて、前記処方データに含まれる前記手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、前記制御部は、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、当該払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を、当該患者を特定する情報と関連づけて前記履歴データベースへ記憶させる」のに対して、甲2発明は、医薬品105の製造番号が製薬会社101において設定される点。 イ 判断 上記相違点4及び5について検討する。 甲1、甲4及び甲5には、薬剤の製造時期及び/又は製造場所を特定することができる払出薬剤情報を作業者に入力させるための画面をモニタに表示させて、手撒き対象薬品の払出薬剤情報の入力を受け付け、一患者に対する薬剤の全てについての払出作業を完了するたびに、払出作業において払い出された手撒き対象薬品の前記払出薬剤情報を記憶させる薬剤払出装置は記載されていないし、甲2発明において上記相違点4及び5に係る事項を採用する動機もない。 したがって、本件発明2は、甲2発明、甲1の記載事項、甲4の記載事項及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明4~7、13について 本件発明4~7及び13は、本件発明2の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲2発明、甲1の記載事項、甲4の記載事項及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明9、11、12について 本件発明9は、本件発明2の「薬剤払出装置」を、薬剤払出装置の「制御プログラム」の発明としたものであって、実質的な発明特定事項が同じであり、甲2には、甲2発明に係る「制御プログラム」の発明が記載されている。そうすると、本件発明9は、上記(1)と同様の理由により、甲2に記載された発明、甲1の記載事項、甲4の記載事項及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明11及び12は、本件発明9の発明特定事項を全て備え、更に限定を付したものであるから、同様の理由により、甲2に記載された発明、甲1の記載事項、甲4の記載事項及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明2、4~7、9、11~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明2、4~7、9、11~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項1、3、8及び10は、本件訂正により削除され、この特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700324

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2019-517690)
  • 2022-014410拒絶査定不服審判 / 2023-08-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)薬剤払出装置、薬剤払出装置の制御プログラム、および制御プログラムを記録した記録媒…
    同じ出願番号
同じ当事者の審決67件(松本 保、株式会社湯山製作所)
  • 2026-700302異議申立 / 2026-06-19 / 維持薬剤払出し装置
    同じ当事者: 松本 保、株式会社湯山製作所
  • 2024-700490異議申立 / 2025-03-25 / 訂正認容薬品払出装置
    同じ当事者: 松本 保、株式会社湯山製作所
  • 2024-700839異議申立 / 2025-02-20 / 維持調剤支援システム
    同じ当事者: 松本 保、株式会社湯山製作所
  • 2023-700775異議申立 / 2023-11-02 / 維持散薬調剤業務支援システム
    同じ当事者: 松本 保、株式会社湯山製作所
  • 2024-700531異議申立 / 2026-03-24 / 訂正認容薬剤包装装置
    同じ当事者: 株式会社湯山製作所
同じ論点・分野の審決(審決分類)257件(113・A61J、121・A61J)
  • 2024-700567異議申立 / 2025-07-17 / 訂正認容薬剤払出し装置
    共通の審決分類: 113・A61J、121・A61J
  • 2024-701042異議申立 / 2025-06-05 / 訂正認容薬剤フィーダ
    共通の審決分類: 113・A61J、121・A61J
  • 2024-700839異議申立 / 2025-02-20 / 維持調剤支援システム
    共通の審決分類: 113・A61J、121・A61J
  • 2024-700422異議申立 / 2024-12-04 / 維持画像処理装置及び方法
    共通の審決分類: 113・A61J、121・A61J
  • 2023-700456異議申立 / 2024-02-15 / 訂正認容薬剤ディスペンサー
    共通の審決分類: 113・A61J、121・A61J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存