特許異議申立
2024-700531
薬剤包装装置
- 審判番号
- 2024-700531
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-048384
- 登録番号
- 7406172
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2026年03月24日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社湯山製作所
- 【権利者代理人】松谷 道子
- 【権利者代理人】前堀 義之
- 【異議申立人】鶴谷 裕二
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 石川 薫
- 分類
- P1652.121-YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7406172号発明「薬剤包装装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7406172号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。
特許第7406172号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7406172号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2015年(平成27年) 8月10日(優先権主張 平成26年 9月25日 日本国)を国際出願日とする特願2015-555471号の一部を、平成28年 1月20日に新たな特許出願とした特願2016-8744号の一部を、平成31年 2月 5日に新たな特許出願とした特願2019-18439号の一部を、令和 2年 1月15日に新たな特許出願とした特願2020-4490号の一部を、令和 3年 4月14日に新たな特許出願とした特願2021-68089号の一部を、令和 4年 3月14日に新たな特許出願とした特願2022-39307号の一部を、令和 5年 3月24日に新たな特許出願としたものであって、令和 5年12月19日にその特許権の設定登録がされ、令和 5年12月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 6年 6月 4日に特許異議申立人 鶴谷 裕二(以下「異議申立人」という。)により、請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立て以降の手続きの経緯は、以下のとおりである。
令和 6年 8月15日付け 取消理由通知書
同年10月10日提出 意見書(特許権者)・訂正請求書
同年11月26日提出 意見書(異議申立人)
令和 7年 1月15日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 3月24日提出 意見書(特許権者)・訂正請求書
同年 6月 9日提出 意見書(異議申立人)
同年 9月 2日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年10月16日提出 意見書(特許権者)・訂正請求書
同年12月 2日提出 意見書(異議申立人)
なお、令和 6年10月10日提出及び令和 7年 3月24日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 7年10月16日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する薬剤支持部」とあるのを、
「円形状に移動可能に配置され、前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する複数の薬剤支持部」に訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段と、
を有し、」とあるのを、
「前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段と、
を有し、
前記撮像手段は、所定の第1位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第1撮像手段と、前記第1位置と異なる第2位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第2撮像手段とからなり、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包することを特徴とする薬剤包装装置。」とあるのを、
「前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包し、
前記撮像手段の画像に基づき定形剤に形成された定形剤識別子を特定する特定手段をさらに備えることを特徴とする薬剤包装装置。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記錠剤支持部から落下する定形剤の数量を判断する検知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。」とあるのを、
「薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を撮像する薬剤撮像部と、前記定形剤を包装紙に分包する分包ユニットと、を備えた薬剤包装装置において、
装置本体内に、枠体と、前記枠体に引き出し可能に設けられた棚部材とを備え、前記棚部材に前記薬剤撮像部が設けられ、
前記薬剤撮像部は、
前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する薬剤支持部と、
前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段と、
を有し、
前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包し、
前記錠剤支持部から落下する定形剤の数量を判断する検知手段を備えることを特徴とする薬剤包装装置。」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1~4〕について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
なお、訂正後の請求項4に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められる場合に請求項1~3とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「薬剤支持部」について、「円形状に移動可能に配置され」る「複数の」薬剤支持部であることに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1により付加された「円形状に移動可能に配置され」との事項及び「複数の」との事項は、本件明細書の段落【0048】の「薬剤支持部3は、例えば、図13および図14に示すように、中心軸の周囲6箇所に等分に配置されている。」との記載、段落【0049】の「6箇所の薬剤支持部3は円板状の回転プレート67に支持されている。回転プレート67の回転は、図示しないが、・・・ここでは、回転プレート67を間欠的に60°ずつ回転させるようにしている。」との記載及び図14の図示内容に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「撮像手段」について、「所定の第1位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第1撮像手段と、前記第1位置と異なる第2位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第2撮像手段とからな」ることに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件明細書の段落【0061】の「図14に示すように、第1薬剤撮像位置の薬剤支持部3の上方側には撮像用の第1薬剤照明部63および第1カメラ64が配置されている。」との記載、段落【0062】の「第2薬剤撮像位置の薬剤支持部3の上方側には第2薬剤照明部65および第2カメラ66が配置されている。」との記載、段落【0065】の「第1カメラ64および第2カメラ66は、薬剤支持部3で回転する定形剤29を上方より撮像する。」との記載及び図14の図示内容に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「薬剤包装装置」について、「前記撮像手段の画像に基づき定形剤に形成された定形剤識別子を特定する特定手段をさらに備える」ことを付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3の「前記撮像手段の画像に基づき定形剤に形成された定形剤識別子を特定する特定手段をさらに備える」との事項は、本件明細書の段落【0041】の「第1カメラ64と第2カメラ66が撮像した定形剤の撮像画像から定形剤識別子を特定する特定手段は、薬剤包装装置43に内蔵されていても・・・良い。」との記載のほか、段落【0081】、【0085】、【0086】及び【0089】の記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4の記載について、請求項1との引用関係を解消し、独立形式請求項に訂正するものである。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
4 独立特許要件について
請求項1~3について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
また、特許異議の申立てがされていない請求項4に係る訂正は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を撮像する薬剤撮像部と、前記定形剤を包装紙に分包する分包ユニットと、を備えた薬剤包装装置において、
装置本体内に、枠体と、前記枠体に引き出し可能に設けられた棚部材とを備え、前記棚部材に前記薬剤撮像部が設けられ、
前記薬剤撮像部は、
円形状に移動可能に配置され、前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する複数の薬剤支持部と、
前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段と、
を有し、
前記撮像手段は、所定の第1位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第1撮像手段と、前記第1位置と異なる第2位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第2撮像手段とからなり、
前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包し、
前記撮像手段の画像に基づき定形剤に形成された定形剤識別子を特定する特定手段をさらに備えることを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部と前記分包ユニットの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記棚部材は、前記装置本体の外側に引き出し可能であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。」
第4 取消理由の概要
当審が令和 7年 9月 2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2の記載事項、周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>
1.特開2011-104077号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
2.特開2003-237702号公報(同甲第3号証)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1(甲第1号証)について
ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。以下同様。)
「【0001】
本発明は、処方にあわせて固形薬剤を払い出して分包可能な薬剤払出装置に関し、特に払い出し用に準備された固形薬剤の数量を監査可能なものである。」
「【0017】
続いて、本発明の一実施形態に係る薬剤払出装置10について、図面を参照しつつ説明する。薬剤払出装置10は、固形薬剤を処方毎に分包紙に包装して払い出すものである。図1に示すように、薬剤払出装置10は直方体状の本体20を有する。図2に示すように、薬剤払出装置10は、本体20の内部に薬剤供給手段30や、薬剤準備手段50、薬剤計数手段60、薬剤包装手段80を備えている。
【0018】
薬剤供給手段30は、固形薬剤を貯蔵すると共に、処方に応じて固形薬剤を適宜排出し、薬剤包装手段80に供給するために設けられたものである。薬剤供給手段30は、供給部32を備えている。供給部32は、固形薬剤を貯蔵しておき、処方にあわせて固形薬剤を薬剤準備手段50に向けて排出する機能を有する。また、薬剤準備手段50は、供給部32から供給された固形薬剤を一包分ずつ溜めておき、薬剤包装手段80に向けて順次排出する機能を有する。
【0019】
具体的には、図2に示すように、供給部32は、固形薬剤を供給するための手段としてフィーダ式供給部36や手撒式供給部38を有する。これに加えて、供給部32は、待機ホッパー40や収集ホッパー42、手撒ホッパー44などを備えている。フィーダ式供給部36は、カセット型の薬剤フィーダ46を多数備え、各薬剤フィーダ46に予め薬種ごとに準備しておいた固形薬剤を処方にあわせて排出することができるものである。フィーダ式供給部36の下方には待機ホッパー40が配置されている。待機ホッパー40は、各薬剤フィーダ46から払い出された固形薬剤を一包分集めた後、一度に排出することができる。待機ホッパー40から排出された固形薬剤は、待機ホッパー40の下方に設けられた収集ホッパー42を介して一包分ずつ薬剤準備手段50に供給される。
【0020】
また、手撒式供給部38は、フィーダ式供給部36とは別に用意されたものであり、フィーダ式供給部36と同様に固形薬剤を薬剤準備手段50側に向けて供給することができる。手撒式供給部38は、手撒ユニット48を備えている。手撒ユニット48は、常時は本体20内に収容されているが、必要に応じて図1に示すように本体20の正面側において引き出して使用することが可能とされている。図1に示すように、手撒ユニット48は、固形薬剤を一包分ずつ収容できるマス48aを複数、マトリックス状に設けたものである。手撒ユニット48は、マス48aを一つずつ開くことにより、固形薬剤を一包分ずつ薬剤準備手段50側に供給することができる。手撒ユニット48は、図1に示すように引き出した状態にすることにより固形薬剤を各マス48aに補充可能な状態になる。また、手撒ユニット48は、薬剤払出装置10の本体内に収容された状態にすることにより下方に手撒ホッパー44が到来し、各マス48aに準備された固形薬剤を下方に設けられた手撒ホッパー44を介して薬剤準備手段50側に供給できる状態になる。
【0021】
図2に示すように、薬剤準備手段50は、上述した供給部32よりも下方側に配置されている。薬剤準備手段50は、上述した収集ホッパー42や手撒ホッパー44を介して薬剤供給手段30から受け入れた固形薬剤を一包分ずつ溜め置くと共に、薬剤包装手段80に向けて供給することができるものである。具体的には、図3に示すように、薬剤準備手段50は、区画形成体52によってその主要部が構成されており、その他に駆動源53や駆動機構(図示せず)、シャッター開閉機構54などを備えている。薬剤準備手段50をなす区画形成体52や駆動源53などは、水平に配された天板51a(図6参照)および底板51bの間の空間内に収容されている。図6に示すように、天板51aには投入口51c,51dが設けられている。底板51bには排出口(図示せず)が設けられている。投入口51c,51dには、それぞれ上述した薬剤供給手段30を構成する収集ホッパー42及び手撒ホッパー44が接続されている。また、底板51bに設けられた排出口の下方には供給ホッパー58が設けられており、排出口から排出された固形薬剤を薬剤包装手段80側に供給可能とされている。
【0022】
図3に示すように、区画形成体52は、外観形状が略円盤状であり、その外周に沿って貯留部55が複数(図3に示す例では6個)、周方向に所定の間隔毎に形成されたものである。区画形成体52は、駆動源53から駆動機構(図示せず)を介して動力の伝達を受けることにより、中心軸52aを中心として回動可能とされている。貯留部55は、天板51aに設けられた投入口51c,51dを介して、薬剤供給手段30側から供給されてきた固形薬剤を投入可能とされている。また、区画形成体52は、底板51bよりもやや上方に離れた位置において水平となるように設けられている。区画形成体52と底板51bとの間に形成された隙間の大きさは、後に詳述する薬剤計数手段60の払出手段68が進退可能な程度である。」
「【0026】
薬剤計数手段60は、上述した薬剤準備手段50において貯留部55に一包分として準備されている固形薬剤の数量を計数し、監査するためのものである。図3や図4に示すように、薬剤計数手段60は、監査台62や、振動手段64、撮像手段66、払出手段68を備えている。図7に示すように、薬剤計数手段60は、前述した構成に加え、画像認識処理手段70を備えている。監査台62は、上述した薬剤準備手段50の区画形成体52の外周に隣接する位置に設けられている。監査台62は、区画形成体52の各貯留部55から排出されてきた固形薬剤が載る台であり、透光性を有する板体によって構成されている。」
「【0030】
撮像手段66は、カメラ66aと、ミラー66bと、照明(図示せず)とを備えている。カメラ66aは、従来公知のCCD(Charge Coupled Device)カメラなどによって形成されている。カメラ66aは、監査台62に対して側方側であって、監査台62よりも上方の位置に固定されている。ミラー66bは、監査台62の上方において、監査台62全体が映るように配置されている。また、照明(図示せず)は、LEDや蛍光灯などによって構成される光源を有し、監査台62の下方から上方に位置するミラー66b側に向けて発光させることが可能とされている。したがって、撮像手段66は、ミラー66bを介して、透過光照明を利用して監査台62全体を撮像することができる。カメラ66aは画像認識手段70に対して電気的に接続されており、カメラ66aにおいて撮影された画像データを画像認識手段70に伝達可能とされている。撮像手段66は、監査台62を振動させた状態において、監査台62上に存在する固形薬剤を複数回、連続的に撮像することが可能とされている。
【0031】
払出手段68は、監査台62上に載っている固形薬剤を払い除け、区画形成体52の下方に設けられている排出口(図示せず)に排出させるためのものである。払出手段68は、動力源68aや、動力伝達機構68b、摺動体68c、ガイドフレーム68dを備えている。動力源68aは、従来公知のモータなどによって構成されている。また、動力伝達機構68bは、従来公知のリンク機構などによって構成されており、動力源68aにおいて発生した動力を摺動体68cに伝達し、摺動体68cを直線的に往復動させることが可能とされている。」
「【0049】
本実施形態の薬剤払出装置10は、上述した薬剤計数手段60により固形薬剤の計数が完了すると、排出手段68が作動し、監査台62上に載っていた固形薬剤が摺動体68cにより区画形成体52の下方まで払い出される。その後、固形薬剤は排出口(図示せず)から排出ホッパー58を通って薬剤包装手段80に供給される。
【0050】
図2や図6に示すように、薬剤分包装置80は、薬剤準備手段50よりも下方側に設けられている。薬剤分包装置80は、図6に矢印で示すように引き出してメンテナンスなどを行うことができるが、通常は薬剤準備手段50の直下に位置している。薬剤分包装置50は、上述した排出ホッパー58を介して供給されてきた固形薬剤を一包分ずつ包装された状態で本体20の外側に向けて払い出すことができる。」
「【0057】
上記実施形態では、撮像手段66を構成するカメラ66aを監査台62に対して隣接する位置に設け、ミラー66bに映る監査台62の像をカメラ66aによって撮影可能とした例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ミラー66bを介さず直接的にカメラ66aによって監査台62上の固形薬剤を撮影可能なものとしてもよい。かかる構成とすれば、薬剤払出装置10の装置構成が上下方向に高くなる可能性があるが、ミラー66bを設けなくて良い分だけ装置構成を簡略化することが可能である。」
「【図2】
[図:0001436140000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001436140000002.jpg]
」
「【図6】
[図:0001436140000003.jpg]
」
イ 上記アの事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「本体20の内部に薬剤供給手段30や、薬剤準備手段50、薬剤計数手段60、薬剤包装手段80を備えている薬剤払出装置10において、
薬剤供給手段30は、供給部32を備え、供給部32は、フィーダ式供給部36や手撒式供給部38を有し、フィーダ式供給部36は、カセット型の薬剤フィーダ46を備え、手撒式供給部38は、フィーダ式供給部36と同様に固形薬剤を薬剤準備手段50側に向けて供給し、
薬剤準備手段50は、区画形成体52によってその主要部が構成され、区画形成体52は、その外周に沿って貯留部55が形成され、
薬剤計数手段60は、薬剤準備手段50において貯留部55に一包分として準備されている固形薬剤の数量を計数し、監査するためのものであり、監査台62、撮像手段66、払出手段68を備え、監査台62は、各貯留部55から排出されてきた固形薬剤が載る台であり、撮像手段66は、監査台62上に存在する固形薬剤を撮像し、
薬剤計数手段60により固形薬剤の計数が完了すると、監査台62上に載っていた固形薬剤が払い出され、その後、固形薬剤は排出口から排出ホッパー58を通って薬剤包装手段80に供給され、排出ホッパー58を介して供給されてきた固形薬剤を一包分ずつ包装された状態で払い出す、
薬剤払出装置10。」
(2)引用文献2(甲第3号証)について
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「【要約】
【課題】 清掃や部品交換などのメンテナンスを極めて容易に行うことができる薬剤供給装置を提供する。
【解決手段】 薬剤供給装置1は、本体7内に複数設けられ、それぞれ薬剤を収納するタブレットケース3と、本体内に構成され、各タブレットケースから排出された薬剤が落下するシュート32と、このシュート下方に対応して本体内に設けられたホッパーと、本体内に設けられ、ホッパーにて受け止められた薬剤を、袋や瓶などの容器に充填する包装機とを備えたものであって、タブレットケース、ホッパー及び包装機を、本体から引き出し、且つ、着脱可能に取り付けた。」
「【0036】一方、本体7の下部構造体7B内下部には、前述した如く包装機13(充填装置)が収納されている。この包装機13の構造については後に詳述するが、包装機13は図3に示す如く下部構造体7B内の底面左右に取り付けられた引出レール47、47に着脱可能にネジ止めされている。これにより、包装機13は、下パネル4、4を開放した状態で、下部構造体7B内から前方に引出自在とされ、更に、引き出した状態で当該引出レール47、47に着脱可能とされている。尚、48はこの包装機13と下部構造体7B間に着脱自在にコネクタ接続された包装機用のハーネスであり、当該包装機13の引出量を充分に許容できる長さを有している。」
「【0039】そして、このホッパー54の上端左右は下部構造体7B内の上部左右に取り付けられた引出レール56、56に着脱可能にネジ止めされると共に、各シャッター53、53も引出レール56、56の上側に位置して当該引出レール56、56に着脱可能にネジ止めされる。これによって、ホッパー54及びシャッター53、53は、下パネル4、4を開放した状態で、下部構造体7B内から前方に同時に引出自在とされ、更に、引き出した状態で当該引出レール56、56に着脱可能とされている(図5)。尚、図示しないがシャッター53用の着脱自在のハーネスも設けられており、このハーネスも当該シャッター53の引出量を充分に許容できる長さを有している。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「本体20」、「薬剤払出装置10」、「カセット型の薬剤フィーダ46」、「手撒式供給部38」及び「固形薬剤」は、本件発明1の「装置本体」、「薬剤包装装置」、「薬剤カセット」、「手撒き薬剤供給部」及び「定形剤」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「薬剤計数手段60」は、「監査台62上に存在する固形薬剤を撮像」するものであり、引用文献1の段落【0019】~【0026】の記載から、該固形薬剤は、カセット型の薬剤フィーダ46又は手撒き式供給部38から供給されたものであるので、本件発明1の「薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を撮像する薬剤撮像部」に相当する。
また、引用発明の「薬剤計数手段60」が備える「監査台62」は、「各貯留部55から排出されてきた固形薬剤が載る台」であるから、本件発明1の「薬剤支持部」に相当する。そして、引用発明は「固形薬剤を薬剤準備手段50側に向けて供給し、薬剤準備手段50は、区画形成体52によってその主要部が構成され、区画形成体52は、その外周に沿って貯留部55が形成され」るものであるから、引用発明の「各貯留部55から排出されてきた固形薬剤が載る台であ」る「監査台62」と、本件発明1の「円形状に移動可能に配置され、前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する複数の薬剤支持部」とは、前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する薬剤支持部である限りで一致する。
さらに、引用発明の「監査台62上に存在する固形薬剤を撮像」する「撮像手段66」は、本件発明1の「前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段」に相当する。
ウ 引用発明の「薬剤準備手段50」は、引用文献1の図6から、棚状の部材であることが看て取れるから、上記アの事項も踏まえれば、引用発明の「本体20の内部に」「薬剤準備手段50」「を備えている」ことと、本件発明1の「装置本体内に、枠体と、前記枠体に引き出し可能に設けられた棚部材とを備え」ることとは、装置本体内に、棚部材を備えることの限りで一致する。
エ 引用発明の「薬剤包装手段80」は、「排出ホッパー58を介して供給されてきた固形薬剤を一包ずつ包装された状態で払い出す」ものであり、引用文献1の段落【0017】の「薬剤払出装置10は、固形薬剤を処方毎に分包紙に包装して払い出すものである」との記載に照らせば、本件発明1の「前記定形剤を包装紙に分包する分包ユニット」に相当する。
オ 引用発明の「撮像手段66は、監査台62上に存在する固形薬剤を撮像し、薬剤計数手段60により固形薬剤の計数が完了すると、監査台62上に載っていた固形薬剤が払い出され、その後、固形薬剤は排出口から排出ホッパー58を通って薬剤包装手段80に供給され、排出ホッパー58を介して供給されてきた固形薬剤を一包分ずつ包装された状態で払い出す」ことは、引用文献1の図2を参照すると、本件発明1の「前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包する」ことに相当する。
カ してみると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を撮像する薬剤撮像部と、前記定形剤を包装紙に分包する分包ユニットと、を備えた薬剤包装装置において、
装置本体内に、棚部材を備え、
前記薬剤撮像部は、
前記薬剤カセットまたは手撒き薬剤供給部から払い出された定形剤を支持する薬剤支持部と、
前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する撮像手段と、
を有し、
前記分包ユニットは、前記撮像手段により撮像された後、前記薬剤支持部から前記分包ユニットの包装紙に向かって落下する定形剤を分包する薬剤包装装置。」
<相違点1>
本件発明1は、装置本体内に「枠体」を備え、棚部材が「前記枠体に引き出し可能に設けられ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記棚部材に前記薬剤撮像部が設けられ」るのに対し、引用発明は、薬剤計数手段60は、薬剤準備手段50において貯留部55に一包分として準備されている固形薬剤の数量を計数し、監査するためのものであるが、薬剤計数手段60と薬剤準備手段50との位置関係は明らかでない点。
<相違点3>
本件発明1は、薬剤支持部が「円形状に移動可能に配置され、」「複数」あるのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点4>
「撮像手段」に関し、本件発明1は、「所定の第1位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第1撮像手段と、前記第1位置と異なる第2位置にある前記薬剤支持部に支持されている定形剤を撮像する第2撮像手段とからな」るのに対し、引用発明は、撮像手段66は、監査台62上に存在する固形薬剤を撮像するものである点。
<相違点5>
本件発明1は、「前記撮像手段の画像に基づき定形剤に形成された定形剤識別子を特定する特定手段をさらに備える」のに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3及び4について検討する。
錠剤のような定形剤を撮像して該定形剤を鑑定する際、種々の観点から鑑定を行うために、複数の撮像手段をそれぞれ異なる位置に配置して、それぞれ異なる位置で支持されている定形剤を撮像することは、優先日前に周知である(例えば、特開2008-62945号公報(異議申立人が提出した参考資料7)の段落【0031】~【0032】、図1~3、特開平8-86757号公報(同参考資料8)の段落【0057】~【0059】、図1、特開2009-271011号公報(同参考資料9)の段落【0080】~【0082】、【0087】~【0088】、図1、2、8を参照。以下「周知の事項A」という。)。また、定形剤を支持する支持部を円形状に移動可能に複数設けることは優先日前に周知である(例えば、国際公開第2013/105198号(同参考資料1)の図13及び14、特開平11-206855号公報(同参考資料2)の図5、上記特開平8-86757号公報の図1、上記特開2009-271011号公報の図1を参照。以下「周知の事項B」という。)。
しかしながら、引用発明における監査台62の具体的な構造からは、上記周知の事項A及びBが存在するとしても、引用発明において、監査台62を円形状に移動可能に複数配置し、複数配置された該監査台62のうち、所定の第1位置にある監査台62上の固形薬剤を撮像する撮像手段66と、第1位置と異なる第2位置にある監査第62上の固形薬剤を撮像する撮像手段66とを有するように構成することまでが、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<異議申立人の主張について>
異議申立人は、令和 7年12月 2日提出の意見書において、相違点3に関して、引用文献1の段落【0056】の「区画形成体52が回動することにより、各貯留部55を監査台62に隣接する位置まで移動させることが可能な例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば監査台62を区画形成体52に沿って相対移動可能なものにするなどしてもよい。」との記載に基づき、相違点3に係る「円形状に移動可能に配置され」た薬剤支持部は引用文献1に記載されたものにすぎないこと、また、相違点3に係る周知技術を適用することについて明確な動機付けがあることを主張している。
しかしながら、上記記載における「監査台62を区画形成体52に沿って相対移動可能なもの」については、具体的な説明がされておらず、仮に、「区画形成体52に沿って相対移動可能な」監査台62(薬剤支持部)としても、該監査台62を複数設けることにはならず、複数配置された該監査台62のうち、所定の第1位置にある監査台62上の固形薬剤を撮像する撮像手段66と、第1位置と異なる第2位置にある監査第62上の固形薬剤を撮像する撮像手段66とを有する構成にもならない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、引用文献2に記載された事項、並びに周知の事項A及びBに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記2に示した理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700531