特許異議申立
2024-701042
薬剤フィーダ
- 審判番号
- 2024-701042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-214571
- 登録番号
- 7488568
- 請求日
- 2024年10月22日
- 審決日
- 2025年06月05日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社トーショー
- 【権利者代理人】工藤 修一
- 【異議申立人】前田 雅史
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 三森 雄介
- 審判官 土田 嘉一
- 分類
- P1652.113-YAA(A61J) / P1652.121-YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7488568号発明「薬剤フィーダ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7488568号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7488568号の請求項1及び3に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7488568号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年12月24日に出願され、令和6年5月14日にその特許権の設定登録がされ、令和6年5月22日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1、3に係る特許について、令和6年10月22日に特許異議申立人 前田 雅史(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年12月19日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和7年2月25日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和7年4月15日に意見書を提出した。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和7年2月25日付け訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)における訂正の内容は、以下のア、イのとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
ア 請求項1の「縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記制御部が、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする薬剤フィーダ。」を、
「縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする薬剤フィーダ。」に訂正する。
イ 発明の詳細な説明の段落【0048】の「本発明の薬剤フィーダは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
縦線を中心として軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記制御部が、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記規制部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする。
なお、上記の薬剤検出間隔には、環状回転体の回転開始から薬剤落下検出手段の薬剤検出までの時間間隔も、薬剤落下検出手段による一の薬剤検出から次の薬剤検出までの時間間隔も、該当する。」という記載を、
「本発明の薬剤フィーダは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする。
なお、上記の薬剤検出間隔には、環状回転体の回転開始から薬剤落下検出手段の薬剤検出までの時間間隔も、薬剤落下検出手段による一の薬剤検出から次の薬剤検出までの時間間隔も、該当する。」に訂正する。
上記ア、イの訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 請求項1に係る訂正について
訂正後の請求項1に係る「縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体」との記載は、訂正前の請求項1に係る「環状回転体」及び「傾斜回転体」をそれぞれ「正方向及び逆方向に軸回転可能」なものに限定し、
訂正後の請求項1に係る「該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている」との記載は、訂正前の請求項1に係る制御部による「前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」制御を「前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」制御に限定するものであるから、上記(1)アの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、明細書の発明の詳細な説明には次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「支承機構40によって、環状回転体20は鉛直線を中心として軸回転しうる状態に保たれ、傾斜回転体30は鉛直から傾いた傾斜線を中心として軸回転しうる状態に保たれる。」(段落【0005】)
「さらに、図示を割愛したが、回転駆動モータ54の動作制御を担うコントローラと、それらに動作電力を供給する電源も、同じ筐体に内蔵して又は筐体の外に設けられている。また、落下排出口14における薬剤の落下を検出するフォトセンサ等も付設されており、その検出信号がコントローラや錠剤カウンタへ送信される。
コントローラの回転制御は、低速回転から始まり、最初の薬剤の排出を検出した後、更に、予め設定された所定数の薬剤の排出を検出すると、高速回転に移行するようになっている。また、予め指定された総排出数と排出済み個数とから残数を算出するとともに、やはり指定された所定数に残数が達すると回転速度を落としたり、薬剤排出完了後に不所望な過剰落下の防止のため逆回転を行わせるようにもなっている。」(段落【0012】)
「それに加え、このコントローラ1800は、手順が複雑ではないのでフローチャートでの図示などは割愛したが、薬剤排出動作中でも必要に応じて次の薬剤渋滞の検出と薬剤搬送経路幅の緩和(薬剤搬送経路の横幅の拡大)も行うようになっている。」(段落【0087】)
「また、薬剤搬送経路の横幅の拡大は、薬剤搬送経路の上の薬剤に対する横幅の規制を緩和することであり、具体的には、第1,第2規制部材710,720の下段部分711,721(図10参照)の先端が環状回転体1020の上端周縁部23の直ぐ上方で外周側から内周側へ最も入り込む距離について、その距離を減少させて薬剤搬送経路の幅を広めることで実現されるところ、この薬剤フィーダ1100にあっては(図1参照)、大抵は型置場1740が薬剤5aの無い空の状態のときに行うが(図2(c),(d)参照)、コントローラ1800がモータ1750を作動させると、規制機構1700の挟持部1742等が進退し、それに応じてリンク機構73さらには第1,第2規制部材710,720が応動することを利用して、採寸用モータ1750の兼用を実現している。」(段落【0088】)
したがって、上記(1)アの訂正は発明の詳細な説明に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内である。
イ 段落【0048】の訂正について
上記(1)イの訂正は、上記(1)アの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、上記(1)イの訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、上記アのとおり新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件について
本件訂正請求によって、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がなされるところ、特許異議の申立てがされていない請求項2、4に係る発明は、特許法第120条の5第9項の規定により読み替えて準用する同法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、訂正後の請求項2、4に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討したが、下記3~5のとおりであって、他に独立特許要件を欠くとする事由を見いだすことができない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1「縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする薬剤フィーダ。」
本件発明2「前記制御部が前記規制部材を制御して前記横幅を拡大させた後に前記薬剤落下検出手段が薬剤落下を検出すると、それに応じて前記制御部が前記規制部材を制御して前記横幅を拡大前に戻すようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の薬剤フィーダ。」
本件発明3「前記制御部が前記横幅の拡大を段階的に行うようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された薬剤フィーダ。」
本件発明4「薬剤を挟んで寸法を測るための採寸機構が設けられており、前記駆動部材が前記採寸機構の可動部を移動させるようになっており、前記規制部材が前記採寸機構の前記可動部と連動するようになっており、前記制御部が、前記駆動部材を制御することで、前記採寸機構に置かれた薬剤の寸法データを取得するとともに、前記寸法データに基づいて前記横幅の規制を前記規制部材に行わせるようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤フィーダ。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び3に係る特許に対して、当審において、令和6年12月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(以下「取消理由1」という。)。
イ 請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到することができたものであるから、請求項1及び3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである(以下「取消理由2」という。)。
甲第1号証:国際公開2013/141130号公報(以下「甲1」という。)
(2)甲1の記載及び引用発明
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(ア)「[0041](1.全体構成)
図1は、本実施形態に係る薬剤計数装置を示す。この薬剤計数装置は、薬剤供給装置と、切換弁ユニット76(図8参照)及び制御部83(図13参照)とを備え、薬剤供給装置の機構を自動調整し、形状や大きさが異なる多種の薬剤を1個ずつ供給して計数するものである。」
(イ)「[0045](1-1-2.第1回転体)
第1回転体23は円板状をなし、仕切壁18の底を塞ぐように、この仕切壁18内に傾斜して配設されている。すなわち、図6A,Bに示すように、第1回転体23の第1回転軸24は、垂直方向に対して所定角度で傾斜するように配置されている。この第1回転体23の上面には、薬剤を移動させるための抵抗(転動抑止)となる複数の突条部25が放射状に設けられている。第1回転体23の外周部には、径方向外側に向けて下向きに傾斜する斜面部26が設けられている。この斜面部26は、上端である内周縁が第2回転体35より上側に位置し、下端である外周縁が内周縁より下側に位置するように、所定の傾斜角度で配設されている。
[0046] 第1回転体23には、第1回転軸24の下端に歯車27が連結されている。そして、この歯車27が第1駆動モータ28の出力軸に連結された歯車29に噛み合わされ、第1回転軸24を中心として回転できるように構成されている。第1回転軸24及び第1駆動モータ28は回動ブラケット30(図5参照)に取り付けられている。この回動ブラケット30の側面には、図示しないガイド用のベアリングが配設され、このベアリングが、外装体本体11に固定した装着ブラケット31(図2参照)のガイド溝に係着されている。また、図4及び図5に示すように、回動ブラケット30の側面には、円弧状をなすギア片32が固定されている。このギア片32には、角度調整手段である角度調整モータ33の歯車34が噛み合わされている。この角度調整モータ33の駆動により、装着ブラケット31に対して回動ブラケット30を回動できる。回動ブラケット30が回動されると、第1駆動モータ28と一緒に第1回転体23が回動され、この第1回転体23の傾斜角度を調整できる。
[0047](1-1-3.第2回転体)
第2回転体35は、第1回転体23の上側に位置するように、仕切壁18の上端に回転可能に配設された円環状のものである。図6A,Bに示すように、第2回転体35は、図示しない第2回転軸が垂直方向に延びるように、水平配置されている。これにより、第2回転体35の第2回転軸は、第1回転体23の第1回転軸24とは異なる方向(平行でなく、同一でない方向)で交差して延びる。これら回転軸の角度は、前述のように角度調整モータ33の駆動により相対的に変更可能である。また、第2回転体35は、第2回転軸の軸方向から見ると、第1回転体23の外側に位置し、内周部36内に第1回転体23が位置する。さらに、第2回転体35の内周部36と第1回転体23の外周部とは、第1回転体23の傾斜により、第2回転体35の内周部36に対して第1回転体23の外周部が低くなり、その間に所定高さの段差が形成される。この段差は、第1回転体23の傾斜により、図中左側である垂直方向下端に位置する部分が最も大きく、図中右側である垂直方向上端に位置する部分が最も小さくなる。そして、この段差が最も小さくなる部分が、第1回転体23が回転することで、第1回転体23と仕切壁18とで区画された収容空間に供給された薬剤が、第1回転体23から第2回転体35へ乗り移る移動部37を構成する。本実施形態の移動部37は、第2回転体35の内周部36を、第1回転体23の外周部に対して薬剤が脱落しない程度の隙間をあけて、かつ、略同一高さに位置するように構成している。但し、この移動部37での第2回転体35の内周部36及び第1回転体23の外周部の高さ設定は、薬剤が第1回転体23から第2回転体35へ乗り移すことが可能であれば、第2回転体35の内周部36を第1回転体23の外周部より上側に位置させてもよく、下側に位置させてもよい。
[0048] 第2回転体35の下面には、図3及び図5に示すように、円環状をなすギア部材38が固定されている。このギア部材38には、第2駆動手段である第2駆動モータ39の歯車40が、外壁20の第2切欠部22を通して噛み合われている。また、ギア部材38は、外周部が図示しない支持部材によって支持されている。これにより、上側回転部材は、第2回転軸に沿って移動することなく、第2回転軸を中心として回転される。」
(ウ)「[0050] 高さ規制体41のネジ孔46には、ネジ部材47が貫通されている。ネジ部材47は、外装体本体11の上面板に固定されたブラケットにより、回転可能かつ軸方向に沿って移動不可能に支持されている。また、ネジ部材47の下端には歯車48が連結されている。歯車48には、高さ調整手段である高さ調整モータ49の歯車50に噛み合わされている。高さ調整モータ49の駆動によりネジ部材47を回転させ、高さ規制体41と第2回転体35の上面との間隔が、薬剤高と略同一間隔をあけて位置するように高さ調整される。また、高さ規制体41の下流側には、この高さ規制体41の下部を通過した薬剤を検出する薬剤検出センサ51が配設されている。」
(エ)「[0053] 幅規制体52の幅規制部54には、矩形部53に対して平行に延びるように連結部材58が連結されている。連結部材58には、図4に示すように、高さ規制体41と同様に作動受部材59が連結されている。作動受部材59のネジ孔60にはネジ部材61が貫通されている。ネジ部材61は、外装体本体11の上面板に固定されたブラケットに回転可能かつ軸方向に沿って移動不可能に支持されている。ネジ部材47の外端には歯車62が連結されている。歯車62には、幅規制体52を水平方向に移動させる幅調整モータ63の歯車64が噛み合わされている。幅調整モータ63によって幅規制体52が第2回転体35に対して外側に移動されると、幅規制部54と第2回転体35の内周部36との間の移送幅、及び、外側ガイド57と後述する内側ガイド66との間の間隔を広げることができる。また、第2回転体35に対して内側に移動されると、第2回転体35の移送幅、及び、各ガイド57,66間の間隔を狭めることができる。」
(オ)「[0055] 薬剤案内部65は、幅規制体52の幅規制部54を通過した薬剤を、薬剤排出口である後述する薬剤払出部材73に案内するものである。薬剤案内部65は、図3及び図7A,Bに示すように、幅規制体52の幅規制部54より薬剤移送方向下流側に位置するように、第2回転体35上に配設されている。薬剤案内部65を構成する内側ガイド66は、外側ガイド57に対して第2回転体35の径方向内側に平行に位置すると共に、第2回転体35の内周部36に対して接線方向に延びるように配設されている。内側ガイド66は薬剤払出部材73にかけて延び、その端部に外装体本体11の上板部に固定するブラケット部67が設けられている。薬剤案内部65を構成するガイド57,66の間隔は、幅調整モータ63の駆動により薬剤幅と略同一間隔に調整される。また、内側ガイド66には、第1回転体23と第2回転体35の段差上に位置する部分に、所定角度で上向きに傾斜する傾斜縁68が設けられている。また、傾斜縁68の内面側は、下向きに傾斜する傾斜面69(傾斜縁68の第2回転体35の回転軸側が下方に位置する傾斜面69)とされている。
[0056] 薬剤計数装置は、薬剤案内部65の出口に配設した薬剤払出部材73の下部に、図8に示すように、薬剤を検出する薬剤検出ユニット70と、この薬剤検出ユニット70への薬剤の排出を許否するシャッター74と、薬剤検出ユニット70を通過した薬剤を配分する切換弁ユニット76とが配設されている。なお、薬剤払出部材73は、第2回転体35の径方向外側に設けられる薬剤排出口を構成し、薬剤案内部65から排出された薬剤を薬剤検出ユニット70に案内するものである。」
(カ)「[0061](1-3.制御部)
薬剤供給装置を含む薬剤計数装置は、図13に示すように、制御部83の指令によって動作する。制御部83は、操作パネル84(ここでは、タッチパネルを使用)からの入力、薬剤検出センサ51や薬剤検出ユニット70での検出信号に基づいて、メモリ87に記憶させたプログラムやデータを呼び出して実行し、切換弁ユニット82A,82Bや各種モータ28,33,39,49,63,75を駆動制御し、処方データに従って必要な数の薬剤を計数して供給する。なお、操作パネル84はモニタ88をタッチパネルで構成することにより兼用することが可能であり、本実施形態では兼用するようにしている。」
(キ)「[0182](欠品判定処理)
欠品判定処理は、図30のフローチャートに示すように、前記通常払出カウントモードや再カウントモードの途中で、薬剤検出ユニット70で薬剤を所定時間(ここでは、3秒間)検出できない場合(ステップS171)、薬剤検出ユニット70により薬剤が検出されなくなったのが2回以上であるのか否かを判断する(ステップS172)。
[0183] 薬剤検出ユニット70により薬剤が検出されなくなったのが2回以上でなければ、幅規制体52を移動させ、幅寸法を増大(ここでは、現状の1.2倍)させる(ステップS173)。そして、第1回転体23を停止すると共に、第2回転体35を最大速度で所定時間(ここでは、1秒間)逆転させる(ステップS174)。さらに、第1回転体23及び第2回転体35を、第1制御部104からの指定速度で正回転させる(ステップS175)。これにより、薬剤が残留しているにも拘わらず、詰まり等が原因で排出されないといった不具合を解消することができる。
[0184] 薬剤検出ユニット70により薬剤が検出されなくなったのが2回以上であれば(ステップS172:YES)、欠品であると判断し、第1回転体23及び第2回転体35を停止させる(ステップS176)。この場合、ユーザに報知するようにすればよい。」
以上(ア)~(キ)より、甲1は以下の発明(以下「引用発明」という。)を開示していると認められる。
「第1回転体の上側に位置するように、第2回転軸が垂直方向に延びるように水平配置され、仕切壁18の上端に配設され、下面に固定されたギア部材38と第2駆動モータ39の歯車40が噛み合われることにより、第2回転軸を中心として回転される円環状の第2回転体35と、
第1回転軸24が垂直方向に対して所定角度で傾斜するように配置され、仕切壁18の底を塞ぐように傾斜して配設され、第1駆動モータ28の出力軸に連結された歯車29に噛み合わされ、第1回転軸24を中心として回転できる第1回転体23と、
高さ調整モータ49の駆動によりネジ部材47を回転させ、第2回転体35の上面との間隔が、薬剤高と略同一間隔をあけて位置するように高さ調整される高さ規制体41と、
幅調整モータ63によって移動されると幅規制部54と第2回転体35の内周部36との間の移送幅を広げる又は狭めることができる幅規制体52と、
各種モータ44、63を駆動制御する制御部83と、
薬剤排出口である薬剤払出部材73の下部に配設された薬剤検出ユニット70を備える
薬剤計数装置であって、
通常払出カウントモードや再カウントモードの途中で、薬剤検出ユニット70で薬剤を所定時間検出できない場合、幅規制体52を移動させ、幅寸法を増大させ、第1回転体23を停止すると共に、第2回転体35を最大速度で所定時間逆転させ、第1回転体23及び第2回転体35を、第1制御部104からの指定速度で正回転させる、
薬剤計数装置。」
(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「第1回転体の上側に位置するように、第2回転軸が垂直方向に延びるように水平配置され、仕切壁18の上端に配設され、下面に固定されたギア部材38と第2駆動モータ39の歯車40が噛み合われることにより、第2回転軸を中心として回転される円環状の第2回転体35」及び「第1回転軸24が垂直方向に対して所定角度で傾斜するように配置され、仕切壁18の底を塞ぐように傾斜して配設され、第1駆動モータ28の出力軸に連結された歯車29に噛み合わされ、第1回転軸24を中心として回転できる第1回転体23」は、それぞれモータの歯車と噛み合うことで正方向及び逆方向に軸回転可能であるから、本件発明1の「縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体」及び「前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体」に相当する。
また、引用発明の「各種モータ44、63を駆動制御する制御部83」、「薬剤排出口である薬剤払出部材73の下部に配設された薬剤検出ユニット70」及び「薬剤計数装置」は、その作用、構造から、それぞれ、本件発明1の「前記環状回転体の回転制御を行う制御部」、「前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段」及び「薬剤フィーダ」に相当する。
また、引用発明の「高さ調整モータ49の駆動によりネジ部材47を回転させ、第2回転体35の上面との間隔が、薬剤高と略同一間隔をあけて位置するように高さ調整される高さ規制体41」は、その作用、構造から、本件発明1の「傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させ」、「前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになって」いる「仕分け部材」に相当する。
そして、引用発明の「幅調整モータ63によって移動されると幅規制部54と第2回転体35の内周部36との間の移送幅を広げる又は狭めることができる幅規制体52」は、その作用、構造から、本件発明1の「前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させ」、「前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになって」いる「規制部材」に相当し、引用発明の「薬剤検出ユニット70で薬剤を所定時間検出できない場合、幅規制体52を移動させ、幅寸法を増大させ」る処理は、本件発明1の「該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は」「前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」処理に相当する。
したがって、両発明は、
「縦線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な外側の環状回転体と、前記縦線から傾いた傾斜線を中心として正方向及び逆方向に軸回転可能な状態で前記環状回転体の内側に装備されて前記環状回転体の中空を塞ぐ傾斜回転体と、前記傾斜回転体の回転によってその上から前記環状回転体の上端周縁部の上に運ばれた固形の薬剤を前記環状回転体の回転時に整列させる仕分け部材および規制部材と、前記環状回転体の回転制御を行う制御部と、前記環状回転体によって落下排出口へ運ばれて落下した薬剤を検出する薬剤落下検出手段とを備え、前記仕分け部材が、前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤に対して高さを規制するようになっており、前記規制部材が前記環状回転体の前記上端周縁部の上の薬剤搬送経路の横幅を規制するようになっている薬剤フィーダにおいて、
前記規制部材が、該規制部材に係る駆動部材に対する前記制御部の制御に応じて前記横幅の規制量を加減するようになっており、前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記制御部は前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている、ことを特徴とする薬剤フィーダ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)本件発明1は、制御部が「前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」のに対して、引用発明は、幅規制体52を移動させ、幅寸法を増大させ、第1回転体23を停止すると共に、第2回転体35を最大速度で所定時間逆転させ、第1回転体23及び第2回転体35を、第1制御部104からの指定速度で正回転させる点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、薬剤検出ユニット70で薬剤を所定時間検出できない場合、幅規制体52を移動させ、幅寸法を増大させた後に、第1回転体23を停止すると共に、第2回転体35を最大速度で所定時間逆転させるものである。これにより、薬剤が残留しているにも拘わらず、詰まり等が原因で排出されないといった不具合を解消する。(甲1[0183]参照。)
したがって、引用発明は、幅規制体52による幅寸法の増大と、第1回転体23の停止及び第2回転体の逆転を連動させることで、薬剤の詰まりを解消させるものであり、本件発明1の「前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」ものではない。
また、出願時の技術常識を参酌しても、引用発明を「前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たとする理由はない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は引用発明ではないから、取消理由1によって取り消すことはできない。
また、本件発明1は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2によって取り消すことはできない。
イ 本件発明2、3及び4について
本件発明2、3及び4と引用発明を対比すると、請求項2、3及び4は請求項1を引用しているから、本件発明2、3及び4は引用発明と少なくとも上記相違点1で相違する。
したがって、本件発明2、3及び4は引用発明ではないから、取消理由1によって取り消すことはできない。
また、本件発明2、3及び4は、本件発明1と同様の理由で引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2によって取り消すことはできない。
5 申立人の意見について
申立人は、令和7年4月15日提出の意見書において、概略次のとおり主張する。
「甲1には、「幅規制体を移動(横幅を拡大)」するステップ(図30のステップS173)の後、「第1回転体(傾斜回転体)を停止させる」及び「第2回転体(環状回転体)を逆回転させる」のステップ(図30のステップS174)を実行することが記載されています(段落0183参照)。
ところが、特許権者は、甲1には、傾斜回転体の停止及び環状回転体の逆転が、横幅の拡大と平行してあるいは横幅の拡大より前に行われると解釈して、引用発明と本件発明1との間に相違点があるかのように、誤った判断をしており、当を得ないものです。
したがって、甲1には、本件発明1の「前記薬剤落下検出手段での薬剤検出間隔が正常時間隔より大きな設定値の渋滞時間隔に達すると、前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させるようになっている」点が記載されています。
よって、本件発明1及び3は、依然として、引用発明と実質的に同一であり、又は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、取り消されるべきものです。」
しかしながら、本件発明1及び3の「前記環状回転体及び前記傾斜回転体を前記正方向に回転させつつ前記規制部材に係る前記駆動部材を制御して前記横幅を拡大させる」ことは、明細書の段落【0087】~【0090】に記載のとおり、環状回転体及び傾斜回転体を正方向に回転させる薬物排出動作中において、横幅を拡大させることで薬剤渋滞を解消するものであるのに対し、引用発明は、上記4(3)ア(イ)で述べたとおり、幅寸法を増大させた後に、第1回転体23を停止すると共に、第2回転体35を最大速度で所定時間逆転させることで、薬剤が残留しているにも拘わらず、詰まり等が原因で排出されないといった不具合を解消するものであるから、本件発明1及び3と引用発明とは、横幅を拡大させたあとの回転体の挙動が異なる。
してみれば、本件発明1及び3は、甲1に記載された事項であるとはいえず、また、引用発明から当業者が容易に想到し得たことではない。また、他の証拠も提示されていない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701042