特許異議申立
2024-700310
硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパック
- 審判番号
- 2024-700310
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-089908
- 登録番号
- 7356257
- 請求日
- 2024年04月03日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】共同印刷株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【権利者代理人】胡田 尚則
- 【権利者代理人】塩川 和哉
- 【異議申立人】田中 俊子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7356257号発明「硫化物系全固体電池用ラミネートシート及びそれを用いたラミネートパック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7356257号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7356257号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和1年5月10日に出願され、令和5年9月26日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年4月3日に特許異議申立人田中 俊子(以下、「異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第7356257号の請求項1ないし12の特許に係る発明(以下、請求項に付された番号と同一の番号を付し、順に「本件発明1」のようにいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、その両面にスキン層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項2】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層の、前記バリア層とは反対側の面に、シーラント層を更に有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項3】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸湿剤は、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項4】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、硫化物系ガス吸収剤を更に含む、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項5】
前記硫化物系ガス吸収剤は、銅、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、亜鉛、銀、カルシウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項4に記載のラミネートシート。
【請求項6】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項7】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有する、
硫化物系全固体電池用ラミネートシート。
【請求項8】
前記バリア層の、前記吸収層とは反対側の面に、基材層を更に有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のラミネートシート。
【請求項9】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するラミネートシートを、1つ具備しており、かつ
前記ラミネートシートが前記内部側用面を内側にして折り曲げられて、前記内部側用面の周縁部がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項10】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するA面用ラミネートシートと、
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートと
を具備しており、かつ
前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と、前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層とが互いに対向して、前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項11】
外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するラミネートシートを、2つ以上、具備しており、かつ
前記内部側用面同士が互いに対向して、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている、
硫化物系全固体電池用ラミネートパック。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の硫化物系全固体電池用ラミネートパック、及び
硫化物系全固体電池
を具備している、ラミネート電池。」
第3 特許異議の申立て理由の概要
特許異議申立人が申し立てた理由は、概略以下のとおりである。
下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
・請求項1ないし8に対して、引用文献として甲第1ないし3号証
・請求項9に対して、引用文献として甲第1ないし4号証
・請求項10、11に対して、引用文献として甲第1ないし3号証、甲第5号証
・請求項12に対して、引用文献として甲第1ないし5号証
(提出された証拠)
甲第1号証: 特開2004-296174号公報
甲第2号証: 特開2015-89644号公報
甲第3号証: 特開2017-1187号公報
甲第4号証: 特開2015-179618号公報
甲第5号証: 特開2013-257981号公報
第4 甲各号証について
1.甲第1号証に記載された事項、甲1発明
甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記積層体を使用した包装体にリチウムイオン電池を包装した場合、包装した電池の電解液の支持塩として用いたLiPF6、LiBF4、LiAsF6等のフッ化リチウム塩が水分と反応してフッ化水素を生成し、このフッ化水素が包装材料に悪影響を及ぼしたり、リチウムイオン電池の機能低下を促進させる原因となっていた。その為、現在のリチウムイオン電池の製造及び包装ラインは、低湿度環境下で生産し、水分の影響を極力抑える工夫がされている。従って、使用する包装材料にも包装後に外部からの水分の侵入が少ないバリア性機能が求められていた。前記問題点を改善するべく、接着性向上の為に表面処理を施したアルミニウム箔を使用し、そのアルミニウム箔の表面処理面にイソシアネート化合物からなる接着層と接着性樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した積層材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。」
「【0005】
しかし、前記提案されている積層材料はシーラント層がポリプロピレン系樹脂フィルム単独からなっているので、その積層材料からなる包装体に電池を包装した場合、包装体の端部から吸湿して電池機能の低下や包装体のデラミネーションによる液もれ等の不具合が生じていた。」
「【0025】
〈実施例1〉
基材フィルム(1)として使用した、厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルム(興人(株)、商品名:ボニールRX)の片面にドライラミネート機を使用してグラビア法で接着剤層(2)としてポリウレタン系接着剤(東洋モートン(株)、商品名:AD502)を4g/m2(乾燥状態)塗布し、乾燥した後、金属箔層(3)として、前もって別のコーター機でエタノールアミン0.5重量%含有の95℃温水で箔を3分間表面処理し、両面ベーマイト処理した厚さ40μmの軟質アルミニウム合金箔を公知の方法で貼り合わせる。続いて、その軟質アルミニウム合金箔のベーマイト処理面に、アンカーコート層(4)として固形分5重量%のトリレンジイソシアネート化合物(東洋モートン(株)、商品名:CAT-10)溶液を、厚み0.3μm(乾燥状態)になるようにグラビア法で塗布、乾燥し、さらに、その塗布面にシーラント層(8)として、ポリエチレン樹脂(日本ポリケム(株)、商品名:LY20)、15μm/ポリエチレン樹脂(LY20)70重量%とミョウバン30重量%との混合樹脂、40μm/ポリエチレン樹脂(LY20)、15μmの三層構成の樹脂を共押出法で押出して積層し、本発明のリチウムイオン電池用外装材を作成した。
・・・(略)・・・
【0027】
〈実施例3〉
実施例1において、シーラント層(8)として、ポリエチレン樹脂(日本ポリケム(株)、商品名:LY20)、15μm/ポリエチレン樹脂(LY20)70重量%とゼオライト30重量%との混合樹脂、40μm/ポリエチレン樹脂(LY20)、15μmの三層構成の樹脂を共押出法で押出して積層した以外は、同様にして本発明のリチウムイオン電池用外装材を作成した。」
「【0031】
<評価>
実施例1~5及び比較例1で作成したリチウムイオン電池用外装材を用いて、以下の試験方法により電解液耐性を評価し、さらに外部からの吸湿の有無の指標として溶媒揮散量を測定した。その結果を表1に示す。
(1)電解液性耐性試験
エチレンカーボネート/エチレンメチルカーボネート=1/1+LiPF6(1.5N)の電解液中に実施例1~5及び比較例1の外装材を15mm×30mmのサイズにカットし、85℃で2週間侵漬し、外装材の軟質アルミニウム合金箔とシーラント層間のデラミネーションの有無を調査した。
(2)溶媒揮散量試験
実施例1~5及び比較例1の外装材を用いて、内寸45mm×85mmの三方シール袋を作成し、その袋の中にEC(エチレンカーボネート)/EDC(ジエチルカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート)=1/1/1の溶媒を3g充填、密封後、60℃、90%RHの環境下で2週間保存し、溶媒揮散量(mg/1日)を測定した。」
「【0034】
・・・・・・
【符号の説明】1…基材フィルム2…接着剤層3…金属箔4…アンカーコート層5…ポリエチレン樹脂層6…混合樹脂層7…ポリエチレン樹脂層8…シーラント層
[図:0001413368000001.jpg]
」
上記記載から次のことがいえる。
a.段落【0003】【0005】によれば、包装した電池の電解液の支持塩であるフッ化リチウム塩が水分と反応して生成するフッ化水素が包装材料に及ぼす悪影響、及びリチウムイオン電池の機能低下や、包装体のデラミネーションによる液もれ等を改善しようとするものであり、段落【0031】をみても実施例1~5のリチウムイオン電池用外装材の電解液耐性を評価していることから、甲第1号証は、電解液を有するリチウムイオン電池用外装材に関する技術について記載されたものということができる。
b.実施例1に関連して、段落【0025】によれば、基材フィルム(1)として使用した二軸延伸ナイロンフィルムの片面に接着剤層(2)としてポリウレタン系接着剤を塗布し、乾燥した後、金属箔層(3)として軟質アルミニウム合金箔を貼り合わせ、その軟質アルミニウム合金箔のベーマイト処理面に、アンカーコート層(4)を形成し、その塗布面にシーラント層(8)として、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とミョウバンとの混合樹脂、ポリエチレン樹脂の三層構成の樹脂を共押出法で押出して積層して作製したリチウムイオン電池用外装材が記載されている。
c.実施例3は段落【0027】によれば、実施例1において、シーラント層として、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂、ポリエチレン樹脂の三層構成の樹脂としたものである。
以上のことから、特に実施例3に関して、上記記載および明細書の記載を総合勘案すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材フィルムとして使用した二軸延伸ナイロンフィルムの片面に、接着剤層としてポリウレタン系接着剤を塗布し、乾燥した後、金属箔層として軟質アルミニウム合金箔を貼り合わせ、その軟質アルミニウム合金箔のベーマイト処理面に、アンカーコート層を形成し、その塗布面にシーラント層として、ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂、ポリエチレン樹脂の三層構成の樹脂を共押出法で押出して積層して作製した電解液を有するリチウムイオン電池用外装材。」
2.甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項、記載された技術事項
甲第2号証には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0003】
例えば、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池では、硫化物系固体電解質が水分と接触すると内部で硫化水素が発生し、その性能が著しく劣化するという問題がある。」
「【0050】
<硫化物系ガス吸着用積層体の使用方法>
本発明の硫化物系ガス吸着用積層体は、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池内で用いることで、内部で発生する硫化水素を吸着し、電池の性能を長期間維持させることができる。また、本発明の積層体をLED素子の付近、又はLEDパッケージ若しくはリードフレームの裏に配置することで、LED素子及び銀のリフレクタ部品等の周辺部材の腐食を防止することができる。硫化物系ガスの発生する場所で用いる機器、例えば工場内の生産機械を制御するための回路基板、並びに工場内で用いる表示装置及び通信機の付近に本発明の積層体を用いることで、それらが含む金属部材、例えば銀又は銅の端子の腐食を防止することができる。さらに、硫化物系ガスの濃度が高い下水道、排水処理施設等の金属部材やコンクリート材の付近に本発明の積層体を配置することで、それらの腐食を防止することができる。」
甲第3号証には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0003】
例えば、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池では、硫化物系固体電解質が水分と接触すると内部で硫化水素が発生し、その性能が著しく劣化するという問題がある。」
「【0070】
《硫化物系ガス吸着用積層体の使用方法》
本発明の硫化物系ガス吸着用積層体は、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池内で用いることで、内部で発生する硫化水素を吸着し、電池の性能を長期間維持させることができる。また、本発明の積層体をLED素子の付近、又はLEDパッケージ若しくはリードフレームの裏に配置することで、LED素子及び銀のリフレクタ部品等の周辺部材の腐食を防止することができる。硫化物系ガスの発生する場所で用いる機器、例えば工場内の生産機械を制御するための回路基板、並びに工場内で用いる表示装置及び通信機の付近に本発明の積層体を用いることで、それらが含む金属部材、例えば銀又は銅の端子の腐食を防止することができる。さらに、硫化物系ガスの濃度が高い下水道、排水処理施設等の金属部材やコンクリート材の付近に本発明の積層体を配置することで、それらの腐食を防止することができる。」
以上の記載から、甲第2号証、甲第3号証には次の技術事項(以下、「技術事項A」という。)が記載されていると認められる。。
「リチウム電池として硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池が知られており、前記全固体型リチウム電池では、硫化物系固体電解質が水分と接触すると内部で硫化水素が発生し、硫化物系ガス吸収用積層体が前記内部で発生する硫化水素を吸着すること。」
第5 当審の判断
1.本件発明1について
(1)本件発明1、甲1発明
本件発明1と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a.本件明細書には以下の記載がある。
「【0022】
<バリア層>
バリア層は、水分や水蒸気等のガスの透過、特にラミネートパックの外部から内部への水蒸気の侵入を防止するための層である。
【0023】
バリア層は、特に限定されず、例えば金属箔、及び金属又は金属酸化物の蒸着膜からなる群より選択される少なくとも1つを含んでよい。・・(略)・・バリア層は、・・(略)・・アルミニウム箔を含むことがより好ましい。」
上記記載によれば、本件発明1においてバリア層は水蒸気の侵入を防止するための層でありアルミニウム箔を含むものである。したがって、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明1の「バリア層」に相当する。
b.本件明細書の段落【0030】には以下の記載がある。
「吸湿剤は、例えば、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含んでよい。」
上記記載から明らかなように、ゼオライトは本件発明1の吸湿剤に含まれるから、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」による「層」が、本件発明1の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
c.甲1発明における外装材は、溶着により袋状とされるため、「シーラント層」は内側となる側の層であることは明らかであり、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」は相対的に外面側に位置するといえる。したがって、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、シーラント層に含まれる「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明1の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
d.甲1発明において、「シーラント層」は「ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂、ポリエチレン樹脂の三層」が積層されて構成されていることから、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」による「層」と、当該層を挟んでいる「ポリエチレン樹脂」の層とは、それぞれ本件発明1の「吸収層」と、「その両面」の「スキン層」に相当する。
e.甲1発明の「外装材」は本件発明1の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明1では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層は、その両面にスキン層を有する、
電池用ラミネートシート。」
(相違点1)
本件発明1の電池用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
上記相違点1について検討する。
上記「第4 2.」で検討したように、以下に示す技術事項Aが知られている。
「リチウム電池として硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池が知られており、当該硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池の内部で発生する硫化水素を吸着すること。」(再掲)
技術事項Aによれば、リチウム電池として硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池が知られているから、当該技術事項Aを甲1発明に適用し、本件発明1とすることができるか検討する。
甲1発明の外装材はフッ化リチウム塩を電解液の支持塩として用いた電解液を有するリチウムイオン電池用である。そして、上記「第4 1.a.」で検討したように、甲1発明は当該電解液を有するリチウムイオン電池において、フッ化リチウム塩が水分と反応して生成するフッ化水素が梱包材料に及ぼす悪影響、及びリチウムイオン電池の機能低下や、包装体のデラミネーションによる液漏れ等を改善しようとするものである。加えて、実施例1ないし5についても外装材の電解液耐性を評価している。
そうしてみると、甲1発明は、電解液を有するリチウムイオン電池において生じた課題を解決した発明であり、その課題に、水分が悪影響を及ぼすという硫化物系全固体リチウム電池との共通点があるとはいえ、硫化物系全固体リチウム電池とは、その構造、材料に要求される条件等は大きく異なり、また、水分の影響の機序も全く異なるものである。
してみれば、電解液を有するリチウムイオン電池用の外装材を公知の技術事項Aに見られる硫化物系全固体型リチウム電池用のラミネートシートに転用しようとする動機はないというべきである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものということはできない。
よって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(4)異議申立人の主張について
異議申立人は特許異議申立書(35ページ下から8行ないし36ページ13行)において、以下のように主張している。
「しかしながら、硫化物系全固体電池は、電解質として硫化物系固体電解質を用いた、リチウムイオン電池の一例であり、「リチウムイオン電池」の概念には「硫化物系全固体電池」が包含されることは技術常識である(本件明細書の【0005】,【0118】、甲第2号証の【0003】,【0050】、甲第3号証の【0003】,【0070】参照)。
例えば、本件明細書には、「この問題の対策として、例えば特許文献1では、硫化物系固体電解質材料を用いた全固体リチウムニ次電池であって、少なくとも前記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有することを特徴とする全固体リチウムニ次電池が開示されている。」(【0005】)との記載がある。
甲第1号証には、リチウムイオン電池用外装材から、硫化物系全固体電池用ラミネートシートを排除するような記載はない。
そうすると、硫化物系全固体電池の外装材として、甲第1号証のリチウムイオン電池用外装材を適用する動機付けは当業者には十分にあり、これを阻害する要因はない。
さらに、甲第1号証の実施例1-5のリチウムイオン電池用外装材を硫化物系全固体電池の外装材として適用すれば、吸湿剤を含む混合樹脂層が水分の吸収層として機能し、本件発明の課題(【0008】-【0010】)を解決するといえる。
よって、甲第1号証のリチウムイオン電池用外装材を、「硫化物系全固体電池用ラミネートシート」として使用することは当業者にとって容易である。」
しかしながら、「リチウムイオン電池」の概念に「硫化物系全固体電池」が包含されることが技術常識であったとしても、上記(3)で述べたように甲第1号証に係る発明は、電解液を有するリチウムイオン電池用の外装材であり、これを敢えて硫化物系全固体電池とすべき動機を見いだすことはできない。したがって、上記異議申立人の主張を採用することはできない。
2.本件発明2について
(1)本件発明2、甲1発明
本件発明2と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明2の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明2の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明2の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
b.甲1発明において、「ポリエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂、ポリエチレン樹脂の三層構成の樹脂」の内、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の層に対して、金属箔層とは反対側に位置する「ポリエチレン樹脂」の「層」が、本件発明2の「前記吸収層の、前記バリア層とは反対側の面に」有する「シーラント層」に相当する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明2の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明2では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明2と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸収層の、前記バリア層とは反対側の面に、シーラント層を更に有する、
電池用ラミネートシート。」
(相違点2)
本件発明2の電池用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
相違点2は、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえず、本件請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3.本件発明3について
(1)本件発明3、甲1発明
本件発明3と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明3の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明3の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明3の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
b.甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、ゼオライトを有しているから、甲1発明は、本件発明3の「ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む」「吸湿剤」を有しているといえる。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明3の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明3では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明3と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有し、かつ
前記吸湿剤は、ゼオライト、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、
電池用ラミネートシート。」
(相違点3)
本件発明3の電池用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
相違点3は、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえず、本件請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4.本件発明4について
(1)本件発明4、甲1発明
本件発明4と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明4の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明4の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明4の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
b.本件発明4では「前記吸収層は、硫化物系ガス吸収剤を更に含む」のに対して、甲1発明では当該事項が明らかではない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明4の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明4では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明4と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する、
電池用ラミネートシート。」
(相違点4)
本件発明4の電池用ラミネートシートでは「前記吸収層は、硫化物系ガス吸収剤を更に含む」のに対して、甲1発明では当該事項が明らかではない点。
(相違点5)
本件発明4の電池用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点5から検討する。
相違点5は、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そうしてみると、相違点4について検討するまでもなく、本件請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5.本件発明5について
本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた請求項5に係る発明については、上記「4.」において本件発明4について検討した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
6.本件発明6について
(1)本件発明6、甲1発明
本件発明6と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明6の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明6の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明6の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
b.本件発明6では「前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有する」のに対して、甲1発明は当該構成を有していない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明6の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明6では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明6と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する、
電池用ラミネートシート。」
(相違点6)
本件発明6の電池用ラミネートシートでは「前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、吸湿層及び硫化物系ガス吸収層を有する」のに対して、甲1発明は当該構成を有していない点。
(相違点7)
本件発明6の電池用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点7から検討する。
相違点7は、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そうしてみると、相違点6について検討するまでもなく、本件請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
7.本件発明7について
(1)本件発明7、甲1発明
本件発明7と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明7の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明7の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明7の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
b.本件発明7では「前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有する」のに対して、甲1発明は当該構成を有していない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明7の「電池用ラミネートシート」に相当するが、本件発明7では「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点で相違する。
したがって、本件発明7と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する、
電池用ラミネートシート。」
(相違点8)
本件発明7では「前記吸収層は、前記外部側用面から前記内部側用面に向かって、この順に積層されている、硫化物系ガス吸収層及び吸湿層を有する」のに対して、甲1発明は当該構成を有していない点。
(相違点9)
本件発明7のラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点9から検討する。
相違点9は、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そうしてみると、相違点8について検討するまでもなく、本件請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
8.本件発明8について
本件発明1ないし7のいずれか一項の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた請求項8に係る発明については、上記「1.」ないし「7.」において本件発明1ないし7について検討した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
9.本件発明9について
(1)本件発明9、甲1発明
本件発明9と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明9と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明9の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明9の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明9の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当し、甲1発明の「外装材」が、本件発明9の「1つ具備」された「ラミネートシート」に相当する。
b.本件発明9では「前記ラミネートシートが前記内部側用面を内側にして折り曲げられて、前記内部側用面の周縁部がヒートシールされることによって袋状にされている」のに対して、甲1発明は当該構成を有さない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明9の「ラミネートシート」に相当するが、本件発明9では「硫化物系全固体電池用」といえ、ラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成していない点で相違する。
したがって、本件発明9と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有する、
ラミネートシート。」
(相違点10)
本件発明9では「前記ラミネートシートが前記内部側用面を内側にして折り曲げられて、前記内部側用面の周縁部がヒートシールされることによって袋状にされている」のに対して、甲1発明は当該構成を有さない点。
(相違点11)
本件発明9の「ラミネートシート」は「硫化物系全固体電池用」であって、ラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成していない点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点11から検討する。
相違点11のうち、本件発明9の「ラミネートシート」は「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明では「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点については、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、また、甲第4号証の記載内容を参照しても、当業者が容易になし得たものとはいえない。そうしてみると、本件発明9の「ラミネートシート」がラミネートパックを形成しているのに対して、甲1発明は形成していない点、及び相違点10について検討するまでもなく、本件請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
10.本件発明10について
(1)本件発明10、甲1発明
本件発明10と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明10と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明10の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明10の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。
また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明10の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当し、甲1発明の「外装材」が、本件発明10の「A面用ラミネートシート」に相当する。
b.本件発明10は「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートとを具備しており、かつ前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と、前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層とが互いに対向して、前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている」構成を有するのに対して、甲1発明は当該構成を有さない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明10の「A面用ラミネートシート」に相当するが、本件発明10では、A面用ラミネートシートはB面用ラミネートシートとともに硫化物系全固体電池用ラミネートパックを形成するから、A面用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であり、さらにラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成していない点で相違する。
したがって、本件発明10と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するA面用ラミネートシートである、
ラミネートシート。」
(相違点12)
本件発明10は「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、B面用バリア層及びB面用シーラント層を有するB面用ラミネートシートとを具備しており、かつ前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と、前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層とが互いに対向して、前記A面用ラミネートシートの前記内部側用面と前記B面用ラミネートシートの前記B面用シーラント層との周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている」構成を有するのに対して、甲1発明は当該構成を有さない点
(相違点13)
本件発明10では、A面用ラミネートシートはB面用ラミネートシートとともに硫化物系全固体電池用ラミネートパックを形成するから、A面用ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」であり、さらにラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成していない点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点13から検討する。
相違点13のうち、本件発明10の「A面用ラミネートシート」が「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点については、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、また、甲第5号証を参照しても、当業者が容易になし得たものとはいえない。
そうしてみると、本件発明10の「A面用ラミネートシート」はラミネートパックを形成しているのに対して、甲1発明は形成していない点、及び相違点12について検討するまでもなく、本件請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
11.本件発明11について
(1)本件発明11、甲1発明
本件発明11と甲1発明は、それぞれ前記「第2」と「第4 1.」に記載したとおりのものである。
(2)対比
本件発明11と甲1発明とを対比する。
a.上記「1.(2)a.~c.」で検討したのと同様に、甲1発明の「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」が、本件発明10の「バリア層」に相当し、甲1発明の「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」によりなる「層」が、本件発明11の「吸湿剤を含む吸収層」に相当する。また、甲1発明において、「軟質アルミニウム合金箔」からなる「金属箔層」と、「ポリエチレン樹脂とゼオライトとの混合樹脂」の「層」は、外部側から内部側にこの順に積層されているといえ、本件発明11の「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層」に相当し、甲1発明の「外装材」が、本件発明11の「ラミネートシート」に相当する。
b.本件発明11は「ラミネートシートを、2つ以上、具備しており」、「前記内部側用面同士が互いに対向して、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている」構成を有するのに対して、甲1発明は当該構成を有さない点で相違する。
c.甲1発明の「外装材」は本件発明11の「ラミネートシート」に相当するが、本件発明11では2つのラミネートシートをヒートシールすることにより硫化物系全固体電池用ラミネートパックを形成しているから、ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」といえ、さらにラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成しない点で相違する。
したがって、本件発明11と甲1発明とは以下の点で、一致ないし相違する。
(一致点)
「外部側用面から内部側用面に向かって、この順に積層されている、バリア層、及び吸湿剤を含む吸収層を有するラミネートシートである、
ラミネートパック。」
(相違点14)
本件発明11は「ラミネートシートを、2つ以上、具備しており」、「前記内部側用面同士が互いに対向して、前記内部側用面の周縁部同士がヒートシールされることによって袋状にされている」構成を有するのに対して、甲1発明は当該構成を有さない点。
(相違点15)
本件発明11では2つのラミネートシートをヒートシールすることにより硫化物系全固体電池用ラミネートパックを形成しているから、ラミネートシートは「硫化物系全固体電池用」といえ、さらにラミネートパックを形成するのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」であり、またラミネートパックを形成しない点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点15から検討する。
相違点15のうち、本件発明11の「ラミネートシート」が「硫化物系全固体電池用」であるのに対して、甲1発明は「電解液を有するリチウムイオン電池用」である点については、上記「1.(2)」に記載した相違点1と同様の相違点であるから、上記「1.(3)」で検討したのと同様に、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、また、甲第5号証を参照しても、当業者が容易になし得たものとはいえない。そうしてみると、本件発明11の「ラミネートシート」はラミネートパックを形成しているのに対して、甲1発明は形成していない点、及び相違点14について検討するまでもなく、本件請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
12.本件発明12について
本件発明9ないし11のいずれか一項の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えた請求項12に係る発明については、上記「9.」ないし「11.」において本件発明9ないし11について検討した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、また、甲第4号証、甲第5号証を参照しても、当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
13.まとめ
上記の通り、本件請求項1ないし12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。また、異議申立人が提出した甲第4号証、甲第5号証を参照しても当業者が容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申し立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし12にかかる特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700310