特許異議申立
2024-700289
電極組立体の変形を抑制するリチウム二次電池用の電池ケース
- 審判番号
- 2024-700289
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-535958
- 登録番号
- 7362988
- 請求日
- 2024年04月01日
- 審決日
- 2025年02月26日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
- 【異議申立人】鈴木 愛子
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 ▲高▼橋 徳浩
- 審判官 井上 信一
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7362988号発明「電極組立体の変形を抑制するリチウム二次電池用の電池ケース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7362988号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。
特許第7362988号の請求項1、3ないし5、7、8に係る特許を維持する。
特許第7362988号の請求項2、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7362988号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2020年10月19日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2019年10月23日 韓国(KR))を国際出願日として出願され、令和5年10月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月18日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以降の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
令和6年 4月 1日 特許異議申立人 鈴木 愛子による請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 6月26日付け 取消理由通知
令和6年 9月27日 特許権者による訂正請求書、意見書の提出
令和6年12月20日 特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1. 訂正の内容
令和6年9月27日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第7362988号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む」との記載を、「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、」に訂正し、訂正後の「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、」との記載の後に、「前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、
前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され、
前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」という記載を追加する。
(2)訂正事項2
請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4における「請求項2に記載の」との記載を「請求項1に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1から6のいずれか一項に記載の電池ケースに電極組立体を収容して電解液を注入する段階、及び
前記電池ケースをシーリングまたは仮シーリングした状態において活性化工程を行う段階を含む」との記載を「電池ケースに電極組立体を収容して電解液を注入する段階、及び
前記電池ケースをシーリングまたは仮シーリングした状態において活性化工程を行う段階を含み、
前記電池ケースは、
外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む」に訂正する。
2. 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし8について、請求項2ないし8は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1ないし8に対応する訂正後の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係る発明において、「電池ケース」について「電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され」たものであることの限定を付加し、さらに電池ケースが含む「第1領域」における「ラミネートシート」について「内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことの限定を付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「電池ケース」についての上記限定、及び電池ケースが含む「第1領域」における「ラミネートシート」についての上記限定を付加することに関して、訂正前の請求項2には「前記電池ケースは、電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成された、請求項1に記載の電池ケース。」と記載され、訂正前の請求項6には「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない、請求項1に記載の電池ケース。」と記載されており、さらに、特に本件特許明細書の段落【0031】、【0044】~【0045】の記載、及び図11、図12によれば、電池ケースは、電極組立体が収容される受容部(110)、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部(120)を含み、第1領域(121)はガスポケット部(120)に形成され、第3実施形態に係るものとして、第1領域(121)を構成するラミネートシートにはバリア層のみにスリットが形成されており、内層及び外層にはスリットが形成されていないものが記載されていると理解することができる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1は上述のとおり、請求項1に係る発明において、「電池ケース」について「電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され」たものであることの限定を付加し、さらに電池ケースが含む「第1領域」における「ラミネートシート」について「内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことの限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項2を引用する記載であったものを、上記訂正事項1による訂正によって請求項2に記載の発明特定事項が請求項1に付加されるとともに、上記訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、削除された請求項2を引用しているという不明瞭な状態を解消するために請求項2の引用に代えて当該請求項2がさらに引用していた請求項1を引用する記載としたものであるといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項3は上述のとおり、削除された請求項2の引用という不明瞭な状態を正すものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項4について
訂正事項4は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
オ.訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項7が請求項1から6のいずれか一項を引用する記載であったのを、請求項2ないし6の引用を削除し、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して請求項1を引用しないものとして独立形式の請求項の記載に改めたものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項5は上述のとおり、引用する請求項の一部を削除し、独立形式の請求項の記載に改めるだけであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
訂正事項1、2、4、5については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項1ないし8の全請求項について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1ないし8に係る訂正事項1、2、4、5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正後の請求項7及び8については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがされていることから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕について一群の請求項ごとに訂正することを認める。
第3 当審の判断
1. 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(下線は訂正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、
前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、
前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され、
前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない、電池ケース。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記バリア層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項4】
前記第1領域は、
前記ガスポケット部の前記受容部側の端部から、前記ガスポケット部のシーリング部側の端部までの間に形成される、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項5】
前記内層は、ポリプロピレンまたはポリエチレンいである、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
電池ケースに電極組立体を収容して電解液を注入する段階、及び
前記電池ケースをシーリングまたは仮シーリングした状態において活性化工程を行う段階を含み、
前記電池ケースは、
外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む、二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記活性化工程の後、前記電池ケースに含まれるガスポケット部に1つ以上の貫通ホールを穿孔して内部のガスを排出する脱気工程を行う段階をさらに含む、請求項7に記載の二次電池の製造方法。」
2. 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 取消理由の概要
令和6年6月26日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1-1)理由1-1(新規性、引用例1を主引例とする場合)
請求項1ないし5に係る発明は、下記の引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-2)理由1-2(新規性、引用例2を主引例とする場合)
請求項1、3、5に係る発明は、下記の引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-3)理由1-3(新規性、引用例3を主引例とする場合)
請求項1、3、5、6に係る発明は、下記の引用例3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、3、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
記
引用例1:特開2015-88324号公報(甲第1号証)
引用例2:特開2017-220285号公報(甲第3号証)
引用例3:特開平11-162436号公報(甲第4号証)
(2) 引用例の記載事項
(2-1)引用例1
取消理由通知において引用した引用例1(特開2015-88324号公報、甲第1号証)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0012】
薄く軽量な外装用フィルムは、例えば三層構造を有する高分子-金属複合ラミネートフィルムであり、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する。金属層は、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属箔から構成される。高分子樹脂層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテート等の熱溶着性樹脂フィルムから構成される。外装用フィルムは、熱溶着や超音波溶着により容易に接着できるとともに、気密性、水分非透過性に優れたものであることが望ましい。
【0013】
外装用フィルムは、図1に示すように、二次電池の発電要素2を収容した状態で、その周縁3カ所の融着部Aを「コの字状」に熱溶着により接合して袋状に形成し、袋状の内部に電解液を注液した状態で、袋状の開口部Bを熱溶着によって接合して外装体1を構成している。開口部Bの熱溶着による接合は、後述するように、第1封止工程による第1封止部C、第2封止工程及び本封止工程による第2封止部D及び本封止部Eの3段階でそれぞれ実施される。
【0014】
二次電池の発電要素2として、リチウムイオン二次電池を例として、その概略を説明する。リチウムイオン二次電池の発電要素2は、正極及び負極を、セパレータを介して重畳したものである。即ち、発電要素2は、正極活物質層が塗布された集電体からなる正極板と、負極活物質層が塗布された集電体からなる負極板とを、セパレータを介して積層することで、形成されている。リチウムイオン二次電池は、非水電池であり製造時に混入した水分が反応することでガスが発生する。また、電解液中に含まれる有機溶媒の蒸発や、電池製造後のコンディショニングにおける電極反応でガスが発生する。」
イ.「【0020】
図2は、本実施形態に係る二次電池の製造方法を説明するための工程図である。本実施形態の二次電池の製造方法においては、封止工程と、コンディショニング工程と、ガス抜き・第2封止工程と、本封止・トリミング工程と、必要に応じてなされるその他の工程とを有する。以下、図2に基づいて、本実施形態の二次電池の製造方法を説明する。
【0021】
封止工程では、まず、2枚の略矩形形状の外装用フィルム若しくは二つ折りの外装用フィルムの間に、矩形形状の発電要素2が配置される。発電要素2の正極端子3A及び負極端子3Bは、外装用フィルムから露出するように、位置決めされる。その後、外装用フィルムの周縁が、図1に示すように、1辺を残して「コの字状」に熱融着により接合され、当該1辺が開口部Bとなる袋体が形成される。
【0022】
電解液注入工程においては、開口部Bを経由し、袋体の内側に、電解液が注入される。電解液の注入方法は、特に限定されず、チューブやノズルを開口部Bに差し込んで直接注入したり、電解質へ浸漬することで注入したり、することも可能である。
【0023】
第1封止工程においては、電解液を注入するために使用した開口部Bを接合して、第1封止部Cを形成することで、外装体1が封止される。この第1封止部Cは、図1に示すように、外装体1の周縁側に寄せた位置で接合される。即ち、発電要素2との距離が遠ざかった位置で接合されて、当該接合部と発電要素2との間に、発電要素2に連通したガス抜き部4を形成している。
【0024】
コンディショニング工程では、初充電工程、及び、電池特性を安定化させるためのエージング工程が実施される。初充電工程により、発電要素2から初期ガスが発生される。また、エージング工程でも、発電要素2から更にガスが発生される。なお、コンディショニング工程は、用途に応じて初充電工程、エージング工程の一方だけでよい場合がある。
【0025】
初充電工程においては、発電要素2の有する電池容量の所定割合、例えば満充電まで充電した場合に得られる電池電圧を、発電要素2が発生させるまで、充電される。なお、初充電の温度は、45℃よりも低い場合には、ガスの発生が不十分となり、70℃よりも高い場合には、電池特性が劣化する虞があるため、45~70℃が好ましい。また、電池容量の所定割合は、必要に応じて選択される。また、エージング工程においては、発電要素2に充電した状態で、保持される。
【0026】
ガス抜き・第2封止工程では、大気圧のドライエア又は不活性ガス等のドライガスの雰囲気中において開孔工程が実施され、次いで、減圧した雰囲気中においてガス抜き工程と第2封止工程が実施される。
【0027】
開孔工程では、第1封止部Cのガス抜き部4に、図1に示すように、切り込みによるスリット状のガス抜き穴5を形成して、ガス抜き部4を外部に連通させる。
【0028】
ガス抜き工程では、ガス抜き部4がガス抜き穴5により開かれた二次電池に対して、雰囲気を減圧状態とすることにより、電解液中に溶け込んでいるガスを電解液から分離させて、外部に排出させる。このガス抜き工程は、予め設定した所定の時間が経過するまで実行される。
【0029】
次いで、真空雰囲気中において、第1封止部Cよりも発電要素2に近接した部分に、図1に示すように、熱融着による接合を行って第2封止部Dを形成する(第2封止工程)。」
ウ.「【図1】
[図:0001423483000001.jpg]
」
エ.「【図6】
[図:0001423483000002.jpg]
」
上記「ア.」ないし「エ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」の記載、「ウ.」の図1によれば、引用例1には、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する三層構造の高分子-金属複合ラミネートフィルムからなり、二次電池の発電要素2を収容してなる外装体1が記載され、二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池である。
・上記「イ.」の記載、「ウ.」の図1、「エ.」の図6によれば、外装体1は周縁側に寄せた位置で接合され、その接合部と発電要素との間に、発電要素に連通したガス抜き部4が形成されている。そして、ガス抜き部4には、コンディショニング工程(初充電工程及びエージング工程)で発生するガスを外部に排出するための切り込みによるスリット状のガス抜き穴5が形成され、当該ガス抜き部4を外部に連通させてなるものである。
以上のことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する三層構造の高分子-金属複合ラミネートフィルムからなり、発電要素を収容してなるリチウムイオン二次電池における外装体であって、
当該外装体は周縁側に寄せた位置で接合され、その接合部と前記発電要素との間に、前記発電要素に連通したガス抜き部が形成されており、前記ガス抜き部には、コンディショニング工程(初充電工程及びエージング工程)で発生するガスを外部に排出するための切り込みによるスリット状のガス抜き穴が形成され、前記ガス抜き部を外部に連通させてなる、外装体。」
(2-2)引用例2
取消理由通知において引用した引用例2(特開2017-220285号公報、甲第3号証)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容し、前記蓄電素子側の第1の主面と、前記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、前記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、前記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも前記外部樹脂層にスリットが形成された外装フィルムパッケージと
を具備する蓄電セル。
・・・・(中 略)・・・・
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電セルであって、
前記スリットは、前記外部樹脂層から前記金属層にかけて、前記金属層において前記スリットの先端から前記第2の主面までの距離が0μm以上5μm以下となる深さに形成されている 蓄電セル。」
イ.「【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る蓄電セルは、蓄電素子と、外装フィルムパッケージとを具備する。
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子を収容し、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面と反対側の第2の主面とを有する金属層と、上記第1の主面に積層された合成樹脂からなる内部樹脂層と、上記第2の主面に積層された合成樹脂からなる外部樹脂層とを有し、少なくとも上記外部樹脂層にスリットが形成されている。
【0008】
この構成によれば、蓄電セルの異常によって内部圧力が上昇すると、スリットが形成されている箇所において金属層と外部樹脂層が断裂し、その裂け目から内部樹脂層が膨張する。内部樹脂層は内部圧力がさらに上昇すると破裂し、内部圧力が開放される。即ち、スリットの形成箇所において内部圧力が開放されるため、スリット以外の部分からの圧力開放を防止することができる。また、通常時(蓄電セルに異常が生じていない時)には金属層によって水分の収容空間への透過が防止されており、蓄電セルの信頼性を確保することが可能である。
・・・・(中 略)・・・・
【0011】
上記スリットは、上記外部樹脂層から上記金属層にかけて、上記金属層において上記スリットの先端から上記第2の主面までの距離が0μm以上5μm以下となる深さに形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、スリットが金属層において、第1の主面と第2の主面の間までの深さを有していてもよい。つまり、外部樹脂層だけではなく金属層にも切れ込みが形成されていてもよい構成となる。これにより、金属層がより断裂しやすいものとなり、蓄電セルの異常時における内部圧力の過剰な上昇を抑制することが可能となる。
【0013】
上記外装フィルムパッケージは、上記蓄電素子の周縁において上記内部樹脂層が互いに接触している接触領域を有し、上記接触領域は、上記内部樹脂層同士が熱融着することによって形成されたシール領域と、上記シール領域より上記蓄電素子側に形成され、上記スリットが形成されている非シール領域とを有してもよい。」
ウ.「【0037】
蓄電素子30の種類は特に限定されず、リチウムイオンキャパシタやリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等とすることができる。収容空間Rには、蓄電素子30と共に電解液が収容される。この電解液は、例えばSBP・BF4(spirobipyyrolydinium tetrafuloroborate)等を溶質とする溶液であり、蓄電素子30の種類に応じて選択することができる。」
エ.「【0044】
[外装フィルムの構成]
図4は、外装フィルム20の断面図である。同図に示すように、外装フィルム20は、金属層25、内部樹脂層26及び外部樹脂層27から構成されている。」
オ.「【0055】
また、本実施形態に係るスリットSは、図6に示すように、金属層25において第1の主面25aと第2の主面25bの間までの深さを有するものであってもよい。
【0056】
具体的には、スリットSは、外部樹脂層27から金属層25にかけて、金属層25においてスリットSの先端Pから第2の主面25bまでの距離D2が0μm以上5μm以下となる深さとすることができる。これにより、蓄電セル10の異常時における内部圧力の過剰な上昇を抑制することが可能となる。
【0057】
[スリットの形成位置について]
本実施形態に係るスリットSは、図3及び図7に示すように、外装フィルム20のうち、非シール領域E2に設けられる。」
カ.「【0063】
一方、蓄電セル10の使用時において蓄電素子30に異常が生じ、内部圧力が上昇すると、外装フィルム20が膨張する。これにより、金属層25及び外部樹脂層27は、スリットSが形成されている部分において断裂する。次いで、断裂した金属層25及び外部樹脂層27の裂け目から内部樹脂層26が部分的に外装フィルム20の外部に突出し、膨張する。そして、内部圧力が一定以上となると、外部へ突出した内部樹脂層26が破裂し、収容空間Rの内部圧力が開放される。」
キ.「【図3】
[図:0001423483000003.jpg]
」
ク.「【図6】
[図:0001423483000004.jpg]
」
上記「ア.」ないし「ク.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」の【請求項1】、「イ.」、「エ.」の記載、及び「キ.」の図3によれば、引用例2には、第1の主面と第2の主面とを有する金属層と、前記第1の主面に積層された内部樹脂層と、前記第2の主面に積層された外部樹脂層とを有する外装フィルム20からなり、蓄電素子30を収容してなる外装フィルムパッケージが記載されている。
・上記「ウ.」の記載によれば、蓄電素子30の種類としては、リチウムイオン電池とすることができるものである。
・上記「イ.」の段落【0013】、「オ.」の段落【0057】の記載、及び「キ.」の図3によれば、外装フィルムパッケージは、蓄電素子30の周縁において内部樹脂層が互いに接触している接触領域を有し、当該接触領域のうち、内部樹脂層同士が熱融着することによって形成されたシール領域E1より蓄電素子30側に形成された非シール領域E2にスリットSが形成されてなるものである。
・上記「イ.」、「オ.」、「カ.」の記載、及び「ク.」の図6によれば、スリットSは、蓄電セルの使用時において蓄電素子30に異常が生じ内部圧力が一定以上となると、スリットSの形成箇所において内部圧力が開放されるように、外装樹脂層27から金属層25の第1の主面と第2の主面の間までの深さにかけて形成されてなるものである。
以上のことから、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「第1の主面と第2の主面とを有する金属層と、前記第1の主面に積層された内部樹脂層と、前記第2の主面に積層された外部樹脂層とを有する外装フィルムからなり、蓄電素子を収容してなるリチウムイオン電池における外装フィルムパッケージであって、
前記蓄電素子の周縁において前記内部樹脂層が互いに接触している接触領域を有し、当該接触領域のうち、前記内部樹脂層同士が熱融着することによって形成されたシール領域より前記蓄電素子側に形成された非シール領域にスリットが形成され、
前記スリットは、蓄電セルの使用時において前記蓄電素子に異常が生じ内部圧力が一定以上となると、当該スリットの形成箇所において内部圧力が開放されるように、前記外装樹脂層から前記金属層の第1の主面と第2の主面の間までの深さにかけて形成されている、外装フィルムパッケージ。」
(2-3)引用例3
取消理由通知において引用した引用例3(特開平11-162436号公報、甲第4号証)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 内面側から熱融着性樹脂フィルム、金属箔および剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなる外装材内に正極、セパレータおよび負極を有する薄形発電要素を前記正負極にそれぞれ電気的に接続された外部端子が前記外装材の開口縁部から延出するように収納し、かつ前記開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着して前記発電要素を前記外装材内に密封した薄形二次電池において、
切り込み部は、前記外装材の金属箔に設けられていることを特徴とする薄形二次電池。」
イ.「【0002】
【従来の技術】近年、例えばポリマーリチウムイオン二次電池のような0.5mm程度の厚さを有する薄形二次電池は、小型、軽量を重視する携帯パソコンのようなコードレス機器の電源として注目され、その開発が活発に進められている。」
ウ.「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる薄形二次電池、例えば薄形ポリマー電解質二次電池を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係わる薄形ポリマー電解質二次電池を示す斜視図、図2は図1の二次電池の展開斜視図、図3は図1のIII-III 線に沿う断面図、図4は図1のIV-IV線に沿う断面図である。内面側から熱融着性樹脂フィルム1、金属箔2および剛性を有する樹脂フィルム3を少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなる外装材4内には、薄形発電要素5が収納され、前記外装材4の例えば3側辺でその内面の熱融着性樹脂フィルム1を互いに熱融着したシール部6a,6b,6cにより前記発電要素5を密封している。前記発電要素5は、図3に示すように正極7、セパレータであるポリマー電解質層8および負極9がこの順序で積層した構造を有する。」
エ.「【0011】切り込み部、例えば直線状切り込み部18は、前記発電要素5の表面に対応する前記外装材4の金属箔2に設けられている。このような薄形ポリマー電解質二次電池は、例えば次のような方法により製造される。まず、図2に示すように金属箔の所定部分に例えばカッター等により直線状の切り込み部18を形成し、この金属箔を熱融着性樹脂フィルムに熱融着する。つづいて、前記金属箔に剛性を有する樹脂フィルムをドライラミネートにより接着して帯状積層フィルム19を作製する。ひきつづき、正負極の外部端子13,17が取付けられた薄形発電要素5を短辺に平行な中央部に位置する折り曲げ線20を境にして切り込み部18が形成されていない前記積層フィルム19部分に前記外部端子13,17が前記積層フィルム19の短辺の端面から延出するように載せた後、前記積層フィルム19を前記折り曲げ線20で前記発電要素5を包むように折り曲げる。その後、前記折り曲げ部を除く3つの側辺を熱シールして前記発電要素5を密封することにより図1に示す二次電池を製造する。」
オ.「【0031】以上説明した本発明によれば、薄形発電要素5が収納された外装材4の金属箔2に例えば直線状の切り込み部18を設けることによって、過充電等により前記発電要素5からガスが発生して内圧が上昇しても、外装材4の金属箔2の切り込み部18が位置する箇所で破断されて外装材4全体が破裂する前にガスを逃散することができる。
【0032】すなわち、外装材4の内部にガスが発生して外装材4が膨張すると、その膨脹力は外装材4の機械的な強度を低下させた金属箔2の切り込み部18に集中する。その結果、前記外装材4がさらに膨脹すると、前記金属箔2の切り込み部18が外側に開き、最後には前記金属箔2上下面の熱融着フィルム1および剛性を有する樹脂フィルム3が破断されて図6に示すように外装材4に穴21が開口され、この穴21からガスを逃散させることができる。」
カ.「【0040】次いで、厚さ10μmのAl箔に幅8mmの切り込み部をカッターにより形成し、このAl箔を厚さ50μmのアイオノマー樹脂フィルムに熱融着し、さらに前記Al箔に厚さ12μmのPETフィルムをドライラミすることにより厚さ0.1mm、外形寸法70mm×153mmの3層からなる帯状積層フィルムを用意し、正負極の外部端子が取付けられた前記電解液未含浸発電要素を前記外部端子が前記積層フィルムの短辺から延出するように載せた後、前記積層フィルムを中央でその短辺と平行に前記電解液未含浸発電要素を包むように折り曲げた。ひきつづき、前記折り曲げ部を除く幅10mmの3つの側辺を熱シールした。ただし、前記外部端子が延出される側辺を除く2側辺のうちの一方の側辺の一部を未シール部として残した。その後、前記未シール部を通して前記非水電解液を内部に注入し、未シールを再度、熱融着することにより前述した図1に示す前記積層フィルムからなる外装材4内に薄形発電要素5が密封して収納され、前記発電要素4の表面に対応する前記外装材4のAl箔の箇所に直線状切り込み部15が設けられた外部端子を除く外形寸法70mm×75mm、電気容量100mAhの100個の薄形ポリマー電解質二次電池を製造した。」
キ.「【図1】
[図:0001423483000005.jpg]
」
上記「ア.」ないし「キ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」、「ウ.」の記載によれば、引用例3には、内面側から熱融着性樹脂フィルム、金属箔および剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなり、薄形発電要素を収納してなる薄形二次電池における外装材が記載されている。
・上記「イ.」の記載によれば、薄形二次電池は、例えばポリマーリチウムイオン二次電池である。
・上記「エ.」、「オ.」、「カ.」の記載、及び「キ.」の図1によれば、外装材は、発電要素の表面に対応する当該外装材の金属箔に直線状の切り込み部18を形成し、この金属箔を熱融着性樹脂フィルムに熱融着し、さらに当該金属箔に剛性を有する樹脂フィルムをドライラミネートにより接着して作製されてなり、過充電等により発電要素からガスが発生して内圧が上昇しても、切り込み部18が位置する箇所で穴が開口され、ガスを逃散させることができるようにしたものである。
以上のことから、引用例3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「内面側から熱融着性樹脂フィルム、金属箔および剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層した積層フィルムからなり、薄形発電要素を収納してなる薄形ポリマーリチウムイオン二次電池における外装材であって、
当髄外装材は、前記薄形発電要素の表面に対応する当該外装材の前記金属箔に直線状の切り込み部を形成し、この金属箔を前記熱融着性樹脂フィルムに熱融着し、さらに当該金属箔に前記剛性を有する樹脂フィルムをドライラミネートにより接着して作製されてなり、過充電等により前記薄形発電要素からガスが発生して内圧が上昇しても、前記切り込み部が位置する箇所で穴が開口され、ガスを逃散させることができるようにした、外装材。」
(3) 取消理由についての当審の判断
(3-1)理由1-1(新規性、引用例1を主引例とする場合)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a.引用発明1における高分子-金属複合ラミネートフィルムは、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する三層構造であるところ、金属層の一方の面に配置される「高分子樹脂層」、「金属層」、金属層の他方の面に配置される「高分子樹脂層」が、それぞれ本件発明1でいう「内層」、「バリア層」、「外層」に相当し、よって、引用発明1における「高分子-金属複合ラミネートフィルム」は、本件発明1でいう「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシート」に相当するものである。
そして、引用発明1における「外装体」は、発電要素を収容してなるリチウムイオン二次電池におけるものであって、高分子-金属複合ラミネートフィルムからなるものであることから、本件発明1でいうリチウム二次電池用の「電池ケース」に相当するということができる。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケース」である点で一致する。
b.引用発明1における外装体において、発電要素すなわち本件発明1でいう「電極組立体」を収容してなる部分が、本件発明1でいう「受容部」に相当し、また、接合部と発電要素との間に形成された「ガス抜き部」は、コンディショニング工程すなわち本件発明1でいう「活性化工程」で発生したガスが捕集される部分であるといえ、本件発明1でいう「ガスポケット部」に相当する。そして、当該ガス抜き部に形成された「切り込みによるスリット状のガス抜き穴」部分が、本件発明1でいう「第1領域」に相当し、「切り込みによるスリット状のガス抜き穴」部分以外の部分が、本件発明1でいう「第2領域」に相当するとみることができ、「切り込みによるスリット状のガス抜き穴」部分は、そのようなガス抜き穴が形成されていない当該部分以外の部分と比較してガスの透過度や膨張性に優れることは明らかである。
ここで、引用発明1における「切り込みによるスリット状のガス抜き穴」は、外装体に形成されたスリット状の穴であり、ガス抜き部を外部に連通させてなるものであることから、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層のすべてに貫通してスリット状の切り込みが形成されているといえ、引用発明1においても、本件発明1でいう「スリットが形成されたバリア層」を含むものである。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、前記電池ケースは、電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され」てなるものである点で一致するといえる。
そして、本件発明1では「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、引用発明1では金属層の両面に配置される高分子樹脂層にもスリット状の切り込みが形成されているといえるものである点で相違する。
よって上記a.及びb.によれば、本件発明1と引用発明1とは、
「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、
前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、
前記第1領域が前記ガスポケット部に形成された、電池ケース。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1では「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、引用発明1では金属層の両面に配置される高分子樹脂層にもスリット状の切り込みが形成されているといえるものである点。
(イ) 判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、引用例1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
イ.本件発明3ないし5について
請求項3ないし5は請求項1を引用するものであり、本件発明3ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明3ないし5は、引用例1に記載された発明ではない。
ウ.まとめ
以上のとおり、本件発明1、3ないし5は、引用例1に記載された発明ではなく、本件請求項1、3ないし5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-2)理由1-2(新規性、引用例2を主引例とする場合)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
a.引用発明2における外装フィルムは、第1の主面と第2の主面とを有する金属層と、第1の主面に積層された内部樹脂層と、第2の主面に積層された外部樹脂層とを有することから、外部樹脂層、金属層、内部樹脂層の順に積層された構造であるといえ、これら「外部樹脂層」、「金属層」、「内部樹脂層」が、それぞれ本件発明1でいう「外層」、「バリア層」、「内層」に相当し、よって、引用発明2における「外装フィルム」は、本件発明1でいう外層/バリア層/内層の構造を含む「ラミネートシート」に相当するものである。
そして、引用発明2における「外装フィルムパッケージ」は、蓄電要素を収容してなるリチウムイオン電池におけるものであって、上記外装フィルムからなるものであることから、本件発明1でいうリチウム二次電池用の「電池ケース」に相当するということができる。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケース」である点で一致する。
b.引用発明2における「スリット」は、外部樹脂層から金属層の第1の主面と第2の主面の間までの深さにかけて形成されてなるものであり、外部樹脂層だけでなく金属層にも形成されていることから、引用発明2においても、本件発明1でいう「スリットが形成されたバリア層」を含むものである。そして、かかる「スリット」が形成された部分が、本件発明1でいう「第1領域」に相当し、「スリット」が形成された部分以外の部分が、本件発明1でいう「第2領域」に相当するとみることができ、「スリット」が形成された部分は、その以外のスリットが形成されていない部分と比較してガスの透過度や膨張性に優れることは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、「第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含」むものである点で一致するといえる。
そして、本件発明1では「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、引用発明2ではスリットが外部樹脂層から金属層の第1の主面と第2の主面の間までの深さにかけて形成されてなるものであり、少なくとも外部樹脂層にはスリットが形成される点で相違する。
c.引用発明2における「外装フィルムパッケージにおいても、蓄電素子すなわち本件発明1でいう「電極組立体」を収容してなるものであり、本件発明1でいう「受容部」を含むものである。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、「前記電池ケースは、電極組立体が収容される受容部を含」むものである点では共通する。
そして、引用発明2では、内部樹脂層が互いに接触している接触領域のうちの非シール領域に、蓄電セルの使用時において蓄電素子に異常が生じ内部圧力が一定以上となるとその形成箇所において内部圧力が開放されるようにスリットが形成されてなるものであるところ、かかる「非シール領域」が、本件発明1でいう「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部」として機能し得るのかは不明であり、引用発明2にはこのようなガスポケット部を含むことの特定はないといえる。
したがって、本件発明1では「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成」されてなることを特定するのに対し、引用発明2ではそのようなガスポケット部を含むことの特定はなく、スリットは内部樹脂層が互いに接触している接触領域のうちの非シール領域に形成されてなるものである点で相違する。
よって上記a.ないしc.によれば、本件発明1と引用発明2とは、
「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、
前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部を含む、電池ケース。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点2]
本件発明1では「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成」されてなることを特定するのに対し、引用発明2ではそのようなガスポケット部を含むことの特定はなく、スリットは内部樹脂層が互いに接触している接触領域のうちの非シール領域に形成されてなるものである点。
[相違点3]
本件発明1では「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、引用発明2ではスリットが外部樹脂層から金属層の第1の主面と第2の主面の間までの深さにかけて形成されてなるものであり、少なくとも外部樹脂層にはスリットが形成される点。
(イ)判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、引用例2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
イ.本件発明3、5について
請求項3、5は請求項1を引用するものであり、本件発明3、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明3、5は、引用例2に記載された発明ではない。
ウ.まとめ
以上のとおり、本件発明1、3、5は、引用例2に記載された発明ではなく、本件請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-3)理由1-3(新規性、引用例3を主引例とする場合)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3とを対比する。
a.引用発明3における積層フィルムは、内面側から熱融着性樹脂フィルム、金属箔および剛性を有する樹脂フィルムを少なくともこの順序で積層してなる構造を有するといえるものであり、これら「剛性を有する樹脂フィルム」、「金属箔」、「熱融着性樹脂フィルム」が、それぞれ本件発明1でいう「外層」、「バリア層」、「内層」に相当し、よって、引用発明3における「積層フィルム」は、本件発明1でいう「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシート」に相当するものである。
そして、引用発明3における「外装材」は、薄形発電要素を収納してなる薄形ポリマーリチウムイオン二次電池におけるものであって、上記積層フィルムからなるものであることから、本件発明1でいうリチウム二次電池用の「電池ケース」に相当するということができる。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケース」である点で一致する。
b.引用発明3における「直線状の切り込み部」は、金属箔に形成されてなるものであるから、引用発明3においても、本願発明1でいう「スリットが形成されたバリア層」を含むものである。そして、かかる「直線状切り込み部」が設けられた部分が、本件発明1でいう「第1領域」に相当し、「直線状切り込み部」が設けられた部分以外の部分が、本件発明1でいう「第2領域」に相当するとみることができ、「直線状切り込み部」が設けられた部分は、それ以外の部分すなわち直線状切り込み部が設けられていない部分と比較してガスの透過度や膨張性に優れることは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、「第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む」ものである点で一致するといえる。
ここで、 引用発明3における「外装材」は、金属箔に直線状の切り込み部を形成し、この金属箔を熱融着性樹脂フィルムに熱融着し、さらに当該金属箔に剛性を有する樹脂フィルムをドライラミネートにより接着して作製されるものてあることから、直線状の切り込み部は、金属箔のみに形成され、熱融着性樹脂フィルムや剛性を有する樹脂フィルムには形成されていないといえる。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」点でも一致する。
c.引用発明3における「外装材」においても、薄形発電要素すなわち本件発明1でいう「電極組立体」を収納してなるものであり、本件発明1でいう「受容部」を含むものである。
したがって、本件発明1と引用発明3とは、「前記電池ケースは、電極組立体が収容される受容部を含」むものである点では共通する。
そして、引用発明3では、直線状の切り込み部は薄形発電要素の表面に対応する外装材の金属箔に形成されてなり、過充電等により薄形発電要素からガスが発生して内圧が上昇しても、当該切り込み部が位置する箇所で穴が開口されてガスが逃散させることができるようにしたものであり、本件発明1でいう「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部」を含むことの特定はない。
したがって、本件発明1では「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成」されてなることを特定するのに対し、引用発明3ではそのようなガスポケット部を含むことの特定はなく、直線状の切り込み部は薄形発電要素の表面に対応する外装材の金属箔に形成されてなるものである点で相違する。
よって上記a.ないしc.によれば、本件発明1と引用発明3とは、
「外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含み、
前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部を含み、
前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない、電池ケース。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点4]
本件発明1では「活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成」されてなることを特定するのに対し、引用発明3ではそのようなガスポケット部を含むことの特定はなく、直線状の切り込み部は薄形発電要素の表面に対応する外装材の金属箔に形成されてなるものである点。
(イ)判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、引用例3に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
イ.本件発明3、5について
請求項3、5は請求項1を引用するものであり、本件発明3、5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明3、5は、引用例3に記載された発明ではない。
ウ.まとめ
以上のとおり、本件発明1、3、5は、引用例3に記載された発明ではなく、本件請求項1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
3. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1-1)申立理由1(新規性、甲第1号証を主引例とする場合)
請求項7に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-2)申立理由2(新規性、甲第5号証を主引例とする場合)
請求項1に係る発明は、下記の甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(1-3)申立理由3(進歩性)
請求項1ないし5、7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、または甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし5、7、8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開2015-88324号公報
甲第2号証:特開2019-145267号公報
甲第5号証:特開2010-86753号公報
(1-4)申立理由4(サポート要件)
請求項1ないし8に係る特許は、特許請求の範囲が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1-5)申立理由5(明確性要件)
請求項1ないし8に係る特許は、特許請求の範囲が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)甲各号証の記載事項
(2-1)甲第1号証
甲第1号証(特開2015-88324号公報)の記載事項は、上記「2.(2-1)引用例1」に記載したとおりであり、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)は、上記引用発明1と同じである。
また、甲第1号証の上記記載中、特に製造方法に関する段落【0020】~【0029】の記載、さらには【請求項1】の「外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体の内部に発電要素を格納し封止する工程であって、前記発電要素が前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程と、前記外装体の周囲辺と前記発電要素との間にガス抜き穴を開ける開孔工程と、前記ガス抜き穴を通して前記外装体内のガスを排出するガス抜き工程と、前記ガス抜き穴を封止する第2封止工程と、を有する電池の製造方法において・・」なる記載に着目すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明’」という。)も記載されている。
「外装体の内部に発電要素を格納し、電解液を注入して封止する第1封止工程と、
コンディショニング工程(初充電工程、及び電池特性を安定化させるためのエージング工程)と、
前記外装体に、切り込みによるスリット状のガス抜き穴を形成する開孔工程と、
前記ガス抜き穴を通して前記外装体内のガスを外部に排出するガス抜き工程と、
前記ガス抜き穴を封止する第2封止工程と、をこの順で有し、
前記外装体は、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する三層構造の高分子-金属複合ラミネートフィルムからなり、前記発電要素を収容してなるリチウムイオン二次電池における外装体であって、
当該外装体は周縁部に寄せた位置で接合され、その接合部と前記発電要素との間に、前記発電要素に連通したガス抜き部が形成されており、前記ガス抜き部に、前記切り込みによるスリット状のガス抜き穴が形成されてなる、リチウムイオン二次電池の製造方法。」
(2-2)甲第2号証
甲第2号証(特開2019-145267号公報)には、以下の各記載がある。
ア.「【0099】
[注液、含浸、封止工程]
組立工程の終了後に、外装体の中に収納された電極積層体又は電極捲回体に、非水系電解液を注液する。注液工程の終了後に、更に、含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に非水系電解液が浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。上記含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極積層体又は電極捲回体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸工程終了後、ラミネート包材を用いる場合は、外装体が開口した状態の電極積層体又は電極捲回体を減圧しながら封止することで密閉する。金属缶を用いる場合は、溶接、カシメ等の封口手段を用いる。
【0100】
[リチウムドープ工程]
リチウムドープ工程において、好ましくは、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して前記リチウム化合物を分解することにより、正極前駆体中のリチウム化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより負極活物質層にリオチウムイオンがプレドープされる。 このリチウムドープ工程において、正極前駆体中のリチウム化合物の酸化分解に伴い、CO2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;前記外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
・・・・(中 略)・・・・
【0102】
[エージング工程]
リチウムドープ工程の終了後に、電極積層体又は電極捲回体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程において非水系電解液中の溶媒が電極-電解液界面で分解し、電極にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
上記エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば、高温環境下で非水系電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
【0103】
[ガス抜き工程]
エージング工程の終了後に、更にガス抜きを行い、非水系電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。非水系電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
上記ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、前記外装体を開口した状態で電極積層体又は電極捲回体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。 」
(2-3)甲第5号証
甲第5号証(特開2010-86753号公報)には、図面とともに以下の各記載がある。
ア.「【請求項1】
ラミネートフィルムからなる収納部に、集電体の両面に正極が形成された正極板と集電体の両面に負極が形成された負極板とが、セパレータを間に介して複数組積層されるとともに電解液が注液されてなる電極部が組み込まれ、上記集電体に接続された正極および負極の端子が外方に延出された状態で上記収納部の外周が全周にわたって形成された封止部により封じられた蓄電デバイスにおいて、
上記収納部と上記端子の延出部を除く上記封止部との間に、上記ラミネートフィルムが積層されてなるバッファ部を形成し、このバッファ部に、積層された上記ラミネートフィルム同士が上記封止部よりも弱い剥離強度で密着された第2の封止部を少なくとも一部に含んで環状に閉じられたガス排出部を設け、このガス排出部内の上記ラミネートフィルムにガス排出孔を穿設したことを特徴とする蓄電デバイス。」
イ.「【0029】
(第1の実施形態)
図1~図3は、本発明に係る蓄電デバイスを、リチウムイオンキャパシタに適用した第1の実施形態およびその変形例を示すもので、図6および図7に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してある。また、収納部13内の電極部12の構成も、図7に示したものと同一である。
・・・・(中 略)・・・・
【0032】
これにより、ラミネート外装20の内部には、電極部12を収納した収納部13と、上記1辺21bと対向する1辺21c側の封止部22との間に、ラミネートフィルム21が単に積層されて互いに接着されていないバッファ部23が形成されている。
【0033】
そして、このバッファ部23の収納部13から離間した位置に、積層されたラミネートフィルム21同士が円環状に熱融着によって接着されてなる第2の封止部24が形成されている。ここで、第2の封止部24は、その幅寸法W1が封止部22の幅寸法W0よりも小さくなるように形成されている。これにより、第2の封止部24は、封止部22よりも弱い剥離強度に形成されるとともに、この第2の封止部24内に、ガス排出部25が形成されている。
【0034】
さらに、この円環状に閉じられたガス排出部25の中心部には、図2に示すように、一対のラミネートフィルム21を貫通するガス排出孔26が穿設されている。
【0035】
なお、上記ガス排出孔26は、貫通孔によって形成したが、これに限るものはなく、上記ガス排出孔26に代えて、図3に示す変形例のように、ガス排出部25の中心部の円形部分を、他の部分におけるラミネートフィルム21の厚さよりも薄肉に形成することにより、上記他の部分よりも耐圧強度の小さいラミネートフィルム21a(膜材)によって塞がれたガス排出孔27を形成することもできる。
【0036】
以上の構成からなるリチウムイオンキャパシタによれば、ラミネート外装20内の収納部13と封止部22との間に、単にラミネートフィルム21が積層された状態であって互いに接着されていないバッファ部23を形成しているために、電極部12においてガスが発生して収納部13の内圧が高まった際に、先ずガスを一対のラミネートフィルム21の間28(図2、図3参照)を通してバッファ部23内へと流入させることができる。
【0037】
そして、バッファ部23に、封止部22よりも弱い剥離強度でラミネートフィルム21が熱融着された円環状の第2の封止部24を形成し、この第2の封止部24内にガス排出部25を設けて、このガス排出部25の中心部にガス排出孔26(27)を形成しているために、上記ガスの発生が続いてバッファ部23内の流入ガスの圧力が増加した際に、はじめて上記ガス圧によって封止部22よりも弱い剥離強度で密着された第2の封止部24のラミネートフィルム21同士を剥離させて、上記ガスをガス排出部25内へと流入させ、ガス排出孔26(27)から外部へと排出させることができる。 」
ウ.「【0049】
なお、上記実施の形態においては、本発明に係る蓄電デバイスを、リチウムイオンキャパシタに適用した場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、セパレータを介して対向配置された複数層の正極板と負極板との間に、リチウム塩を含む電解液が注液されて封止されたラミネート外装によるリチウムイオン二次電池等の他の蓄電デバイスに対しても、同様に適用することができる。」
エ.「【図1】
[図:0001423483000006.jpg]
」
上記「ア.」ないし「エ.」から以下のことがいえる。
・上記「ア.」、「イ.」の記載、「エ.」の図1によれば、甲第5号証には、ラミネートフィルム21からなり、電極部12を収納してなる蓄電デバイスにおけるラミネート外装20が記載され、ラミネート外装20には、電極部を収納した収納部13と、収納部13と電極部の端子の延出部を除く封止部との間にラミネートフィルム21が単に積層されて互いに接着されていないバッファ部23とが形成されてなるものである。
・上記「ア.」、「イ.」の記載、「エ.」の図1によれば、バッファ部23には、封止部22よりも弱い剥離強度でラミネートフィルム21同士が円環状に熱融着された第2の封止部24が形成され、この第2の封止部24内に環状に閉じられたガス排出部25を設け、このガス排出部25の中心部にガス排出孔26(27)を形成してなるものである。そしてこれにより、電極部12においてガスが発生して収納部13の内圧が高まった際に、先ずガスをバッファ部23内へと流入させ、ガスの発生が続いてバッファ部23内の流入ガスの圧力が増加した際に、第2の封止部24のラミネートフィルム21同士を剥離させて、上記ガスをガス排出部25内へと流入させ、ガス排出孔26(27)から外部へと排出させることができるものである。
・上記「ウ.」の記載によれば、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池も適用できるものである。
以上のことから、特に蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合に着目すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「ラミネートフィルムからなり、電極部を収納してなるリチウムイオン二次電池におけるラミネート外装であって、
当該ラミネート外装には、前記電極部を収納した収納部と、当該収納部と前記電極部の端子の延出部を除く封止部との間に前記ラミネートフィルムが単に積層されて互いに接着されていないバッファ部とが形成され、
前記バッファ部には、前記封止部よりも弱い剥離強度で前記ラミネートフィルム同士が円環状に熱融着された第2の封止部が形成され、この第2の封止部内に環状に閉じられたガス排出部を設け、このガス排出部の中心部にガス排出孔を形成してなり、これにより、前記電極部においてガスが発生して前記収納部の内圧が高まった際に、先ずガスを前記バッファ部内へと流入させ、ガスの発生が続いて前記バッファ部内の流入ガスの圧力が増加した際に、前記第2の封止部の前記ラミネートフィルム同士を剥離させて、上記ガスを前記ガス排出部内へと流入させ、前記ガス排出孔から外部へと排出させることができるようにした、ラミネート外装。」
(3)申立理由についての当審の判断
(3-1)申立理由1(新規性)について
ア.対比
本件発明7と甲1発明’とを対比する。
本件発明7において、「前記電池ケースは、外層/バリア層/内層の構造を含むラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、・・前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む」との記載における「前記電池ケース」は、「電池ケースに電極組立体を収容して電解液を注入する段階」における「電池ケース」を指すものと解される。したがって、本件発明7においては、第1領域を構成するラミネートシートにおけるバリア層にすでにスリットが形成された状態の電池ケースに対して、電極組立体の収容、電解液の注入、及び活性化工程が行われるものと理解できる。
これに対して、甲1発明’においては、外装体の内部に発電要素を格納し、電解液を注入して封止し、さらにコンディショニング工程を行った後に、外装体に対して切り込みによるスリット状のガス抜き穴が形成されるものである。
よって、本件発明7と甲1発明’とは、少なくとも以下の点で相違するといえる。
[相違点5]
本件発明7では、第1領域を構成するラミネートシートにおけるバリア層にすでにスリットが形成された状態の電池ケースに対して、電極組立体の収容、電解液の注入、及び活性化工程が行われることを特定しているといえるものであるのに対し、甲1発明’では、外装体の内部に発電要素を格納し、電解液を注入して封止し、さらにコンディショニング工程を行った後に、外装体に対して切り込みによるスリット状のガス抜き穴が形成されるものである点。
イ.判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
よって、本件請求項7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-2)申立理由2(新規性)について
ア.対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)甲5発明における「ラミネートフィルム」は、本件発明1でいう「ラミネートシート」に相当する。そして、甲5発明における「ラミネート外装」は、電極部を収容してなるリチウムイオン二次電池におけるものであって、ラミネートフィルムからなるものであることから、本件発明1でいうリチウム二次電池用の「電池ケース」に相当するということができる。
したがって、本件発明1と甲5発明とは、「ラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケース」である点では共通する。
ただし、本件発明1ではラミネートシートが「外層/バリア層/内層の構造を含む」ことを特定するのに対して、甲5発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
(イ)甲5発明におけるラミネート外装において、電極部すなわち本件発明1でいう「電極組立体」を収納した「収納部」が、本件発明1でいう「受容部」に相当し、また、収納部と電極部の端子の延出部を除く封止部との間に形成された「バッファ部」は、電極部においてガスが発生して収納部の内圧が高まった際にガスが流入する部分であり、本件発明1でいう「活性化工程」でガスが発生した際には、そのガスが捕集される部分であるということができ、本件発明1でいう「ガスポケット部」に相当する。そして、当該バッファ部に形成された、円環状に熱融着された第2の封止部内の環状に閉じられたガス排出部の中心部に形成された「ガス排出孔」部分が、本件発明1でいう「第1領域」に相当し、「ガス排出孔」部分以外の部分が、本件発明1でいう「第2領域」に相当するとみることができ、「ガス排出孔」部分は、そのようなガス排出孔が形成されていない当該部分以外の部分と比較して少なくともガスの透過度に優れることは明らかである。
したがって、本件発明1と甲5発明とは、「第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れ」るものである点で共通し、「前記電池ケースは、電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、前記第1領域が前記ガスポケット部に形成され」てなるものである点で共通するといえる。
ただし、本件発明1では「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含」むこと、及び「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、甲5発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
よって上記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1と甲5発明とは、
「ラミネートシートからなるリチウム二次電池用の電池ケースであって、
第1領域と、前記第1領域を除いた残りの領域である第2領域とを含み、前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ、
前記電池ケースは、
電極組立体が収容される受容部、及び活性化工程中に発生されるガスが捕集されるガスポケット部を含み、
前記第1領域が前記ガスポケット部に形成された、電池ケース。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点6]
本件発明1では、ラミネートシートが「外層/バリア層/内層の構造を含」み、「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含」むこと、及び「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、甲5発明ではそのような特定を有していない点。
イ.判断
上記のとおり、相違点があるから、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
よって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-3)申立理由3(進歩性)について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記「2.(3-1)ア.(ア)」に記載したとおり、次の相違点1において相違する。
[相違点1]
本件発明1では「前記第1領域のラミネートシートの内層及び外層は、それぞれスリットが形成されない」ことを特定するのに対し、引用発明1では金属層の両面に配置される高分子樹脂層にもスリット状の切り込みが形成されているといえるものである点。
(イ)判断
そこで、上記相違点1について検討する。
甲第1号証の【請求項1】~【請求項2】、段落【0026】~【0029】、【0035】、図3、図6に記載のように、チャンパ内において、切り込みによるスリット状のガス抜き穴を形成する開孔工程、雰囲気を減圧状態とすることによりガス抜き穴を通してガスを外部に排出するガス抜き工程、及びガス抜き穴を封止する第2封止工程が行われることからして、甲1発明における「切り込みによるスリット状のガス抜き穴」は、ガス抜き部を外部と連通させるように、外装体の全ての層を貫通して形成されるスリット状の穴であることを前提とするものであるといえ、上記相違点1に係る構成とすべき動機がなく、たとえ甲第2号証を参照したとしても、上記相違点1に係る構成を導くことはできない。なお、甲第2号証(上記(2-2)を参照)には、そもそも上記相違点1に係る構成について記載も示唆もない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明3ないし5について
請求項3ないし5は請求項1を引用するものであり、本件発明3ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明3ないし5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明7について
(ア)対比
本件発明7と甲1発明’とを対比すると、上記「(3-1)ア.」に記載したとおり、次の相違点5において相違する。
[相違点5]
本件発明7では、第1領域を構成するラミネートシートにおけるバリア層にすでにスリットが形成された状態の電池ケースに対して、電極組立体の収容、電解液の注入、及び活性化工程が行われることを特定しているといえるものであるのに対し、甲1発明’では、外装体の内部に発電要素を格納し、電解液を注入して封止し、さらにコンディショニング工程を行った後に、外装体に対して切り込みによるスリット状のガス抜き穴が形成されるものである点。
(イ)判断
そこで、上記相違点5について検討する。
特許異議申立人は、上記相違点5に関連して、甲第2号証には電解液の注入の前に、予め外装体の一部にガス放出手段を形成しておくことが記載されている旨述べている(特許異議申立書21頁の(イ)を参照)。確かに甲第2号証には、非水電解液を注液後、エージング工程の前に行われるリチウムドープ工程において、外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加することは記載(上記(2-2)を参照)されているものの、甲第1号証には、リチウムドープ工程を行うことの記載はなく、また、そもそも甲第1号証の【請求項1】、段落【0020】~【0028】、【0035】、図2、図3に記載のように、電解液を注入して外装体を封止する封止工程、及びコンディショニング工程の後、チャンパを利用し、当該チャンパ内において、切り込みによるスリット状のガス抜き穴を形成する開孔工程、及び雰囲気を減圧状態とすることによりガス抜き穴を通してガスを外部に排出するガス抜き工程を行うようにしたものであることからして、切り込みによるスリット状のガス抜き穴を形成する開孔工程は、ガス抜き工程とともにチャンパ内で行うようにするたために、電解液を注入して外装体を封止する封止工程、及びコンディショニング工程の後に行われることを前提とするものであるといえ、上記相違点5に係る構成とすべき動機がなく、たとえ甲第2号証の上記記載を参照したとしても、上記相違点5に係る構成を導くことはできない。
よって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.まとめ
以上のとおり、本件請求項1、3ないし5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
(3-4)申立理由4(サポート要件)について
特許異議申立人は、次のようなサポート要件についての理由(記載不備)を主張している。
ア.本件発明1において、「外層及び内層」が「通気性の良い素材」以外の素材である場合、たとえ、バリア層にスリットが形成されているとしても、「活性化工程中に発生したガスが脱気工程の前に電極組立体を変形させる現象を抑制し得る」とはいえないし、「活性化工程中に発生したガスが排出され易くするか或いはガスポケット部を膨張させることによって、移送部材によるピックアップが容易」となるとはいえない。
イ.また、バリア層に形成されるスリットが、例えば第1領域のうちの極めて小範囲にとどまる場合、「活性化工程中に発生したガスが脱気工程の前に電極組立体を変形させる現象を抑制し得る」とはいえないし、「活性化工程中に発生したガスが排出され易くするか或いはガスポケット部を膨張させることによって、移送部材によるピックアップが容易」となるとはいえない。
ウ.本件発明1は、「前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ」を発明特定事項とするものであるが、「前記第1領域を構成するラミネートシートは、スリットが形成されたバリア層を含む」点以外にも、「外層及び内層」の素材、形状、「スリット」の形状が、ガスの透過度、膨張性に大きく寄与するものと考えられ、これらについて規定されていない本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
そこで、上記主張について検討する。
「ア.」の主張について
本件発明1、7において、外層及び内層が、たとえ「通気性の良い素材」以外の素材である場合であったとしても、バリア層にはスリットが形成されているのであるから、その部分ではバリア層がスリット状に取り除かれている分、バリア層にスリットが形成されていない従来のものと比べると、ガスの透過度や膨張性が良くなるはずであり、一定の課題の解決はできるものと解される。
「イ.」の主張について
本件発明1、7においては、「前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ」ることが特定されているのであるから、バリア層に形成されるスリットが、第1領域のガス透過度あるいは膨張性が第2領域と比較して優れているといえず、課題を解決できないような極めて小範囲にとどまるようなものは想定されないものである。
「ウ.」の主張について
本件発明1、7において、外層及び内層の素材やスリットの形状などがガスの透過度、膨張性に影響することはあり得るといえる。しかしながら、上記「「ア.」の主張について」でも述べたとおり、バリア層にはスリットが形成されているのであるから、その部分ではバリア層がスリット状に取り除かれている分、バリア層にスリットが形成されていない従来のものと比べると、ガスの透過度や膨張性が良くなるはずであり、一定の課題の解決はできるものと解され、外層及び内層の素材などやスリットの形状まで特定(限定)する必要まではないとえる。
したがって、本件請求項1、7に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえず、出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1、7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないものではない。
よって、特許異議申立人のサポート要件についての主張はいずれも採用することはできず、本件請求項1、7に係る特許及びこれら請求項を引用する請求項3ないし5、8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
(3-5)申立理由5(明確性要件)について
特許異議申立人は、次のような明確性要件についての理由(記載不備)を主張している。
ア.本件発明1において、外層及び内層の素材や形状、スリットの形状が規定されていないので、第1領域がガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れたものとなるかは不明である。
イ.本件発明8において、電池ケースは「前記第1領域を構成するラミネートシートは、前記第1領域を除いた他の領域である第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れるか、或いは膨張性に優れ」るという発明特定事項を備えるので、第1領域が第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れる場合、活性化工程においてガスが発生したとしても、第1領域を介してガスは外部に排出されると考えられ、「前記電池ケースに含まれるガスポケット部に1つ以上の貫通ホールを穿孔して内部のガスを排出する脱気工程」が果たして必要なのかどうかが不明である。
よって、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2ないし8に係る発明は、明確ではなく、本件請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
そこで、上記主張について検討する。
「ア.」の主張について
上記「(3-4)申立理由4(サポート要件)について」の「「ウ.」の主張について」でも述べたように、本件発明1、7において、外層及び内層の素材やスリットの形状などがガスの透過度、膨張性に影響することはあり得るといえる。しかしながら、バリア層にはスリットが形成されているのであるから、その部分ではバリア層がスリット状に取り除かれている分、バリア層にスリットが形成されていない従来のものと比べると、ガスの透過度や膨張性が良くなるはずであるといえる。
「イ.」の主張について
そもそも本件請求項8の記載自体に不明確なところはなく、また、たとえ第1領域が第2領域を構成するラミネートシートと比較してガスの透過度に優れていたとしても、活性化工程において発生したガスが必ずしも第1領域を介してすべて外部に排出されると限らず、本件発明8において、「前記電池ケースに含まれるガスポケット部に1つ以上の貫通ホールを穿孔して内部のガスを排出する脱気工程を行う段階」をさらに含むようにしたことに何ら不自然なところはない。
したがって、本件請求項1、8に係る発明が明確でないとはいえない。
よって、特許異議申立人の明確性要件についての主張は採用することはできず、本件請求項1、7に係る特許及びこれら請求項を引用する請求項3ないし5、8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第4 むすび
以上のとおり、本件請求項1、3ないし5、7、8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1、3ないし5、7、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項2、6に係る特許については訂正により削除され、本件特許の請求項2、6に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについてはその対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700289