特許異議申立
2023-700360
冷蔵システム、冷蔵庫、及びプログラム
- 審判番号
- 2023-700360
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-107193
- 登録番号
- 7159404
- 請求日
- 2023年04月10日
- 審決日
- 2024年08月22日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】シャープ株式会社
- 【権利者代理人】井上 知哉
- 【権利者代理人】加藤 浩二
- 【異議申立人】澤津 光男
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 間中 耕治
- 審判官 村山 美保
- 分類
- P1651.113-YAA(F25D) / P1651.121-YAA(F25D) / P1651.537-YAA(F25D) / P1651.55 -YAA(F25D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7159404号発明「冷蔵システム、冷蔵庫、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7159404号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]、[6~10]、11について訂正することを認める。
特許第7159404号の請求項1、3~6、8~11に係る特許を維持する。
特許第7159404号の請求項2、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7159404号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成29年5月15日の出願である特願2017-96697号の一部を令和3年6月29日に新たな特許出願としたものであって、令和4年10月14日にその特許権の設定登録がされ、同年10月24日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月10日 :特許異議申立人 澤津光男(以下、「申立人」という。) による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 6月26日付け:取消理由通知
同年 8月25日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年10月16日 :申立人による意見書の提出
同年12月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和6年 3月 1日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
同年 4月12日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年8月25日に特許権者がした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1.一群の請求項1~5の訂正
(1)本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
ア 訂正事項1
請求項1において、
「移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備える、
冷蔵システム。」と記載されているのを、
「 移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、
冷蔵システム。」との記載に訂正する(請求項1を直接的または間接的に引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
請求項3において、
「請求項1又は2に記載の冷蔵システム。」と記載されているのを、
「請求項1に記載の冷蔵システム。」との記載に訂正する(請求項3を直接的または間接的に引用する請求項4、5も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項4
請求項4において、
「請求項1~3のいずれか1項に記載の冷蔵システム。」と記載されているのを、
「請求項1又は3のいずれか1項に記載の冷蔵システム。」との記載に訂正する(請求項4を引用する請求項5も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項5
請求項5において、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵システム。」と記載されているのを、
「請求項1、3~4のいずれか1項に記載の冷蔵システム。」との記載に訂正する。
カ 一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、「冷蔵庫に予冷処理を開始させる」条件について、「予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」であることを直列的に追加するとともに、「前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」という発明特定事項を直列的に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0021】に「予冷判定部202は、位置情報取得部201が取得したユーザの位置、および判定テーブル211を用いて、冷蔵庫1に予冷を開始させるか否かの判定、および予冷を開始させる場合の開始のタイミングの決定を行う。」と記載され、段落【0067】に「予冷判定部202は、判定テーブル211を用いて、ユーザの帰宅時間(投入時間)を予測する(S1102、投入時間導出ステップ)。」、「予測帰宅時間は、以下の式で求められる。
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」と記載され、さらに段落【0069】に「予冷判定部202は、予測したユーザの帰宅時間が30分以内(第1所定時間以内)の場合(S1103でYES)、冷蔵庫1に対し予冷開始指示を送信する(S1104、予冷指示送信ステップ)」と記載されている。
また、願書に添付した明細書の段落【0040】には、「判定テーブル211には、場所(位置情報)、時間距離(平均、最短)、食料以外の購入の有無、買物頻度、帰宅後5分以内に食品冷却する確率(冷凍食品、冷蔵食品)、平均滞在時間、帰宅後の扉開放時間の平均(冷凍室扉、冷蔵室扉)、帰宅後の扉開後の温度検出器の温度上昇値(冷凍室、冷蔵室)が対応付けられている。時間距離(時間情報)とは、距離を時間で表したものであり、ここでは、判定テーブル211に示す場所(A百貨店等)と自宅までの移動にユーザが要した時間を示している。」と記載され、段落【0048】には、「また、冷凍食品を購入する場所と冷蔵庫のある自宅までの時間距離、および滞在時間は、位置情報のデータ数を計数することにより算出することができる。」と記載されている。
以上の記載から、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてする訂正であるといえる。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、「冷蔵庫に予定処理を開始させる」条件を直列的に追加するとともに、「予測帰宅時間」に係る発明特定事項を直列的に追加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項3が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項3が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項3が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項4が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項4が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項4は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項4が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項5が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項5が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項5は、請求項2が削除されたことに伴い、請求項5が択一的に引用する請求項から請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合する。
2.一群の請求項6~10の訂正
(1)本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
ア 訂正事項6
請求項6において、
「冷凍室と、
圧縮機と、
前記圧縮機の回転数を上げることにより、前記冷凍室の温度を低下させる予冷処理を実行する予冷処理部と、を備え、
前記予冷処理は、冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と移動体通信端末の位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに実行される、
冷蔵庫。」と記載されているのを、
「冷凍室と、
圧縮機と、
前記予冷処理は、冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と移動体通信端末の位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に実行され、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、
冷蔵庫。」との記載に訂正する(請求項6を直接的または間接的に引用する請求項8~10も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項7
請求項7を削除する。
ウ 訂正事項8
請求項8において、
「請求項6又は7に記載の冷蔵庫。」と記載されているのを、
「請求項6に記載の冷蔵庫。」との記載に訂正する(請求項8を直接的または間接的に引用する請求項9、10も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項9
請求項9において、
「請求項6~8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」と記載されているのを、
「請求項6又は8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」との記載に訂正する(請求項9を引用する請求項10も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項10
請求項10において、
「請求項6~9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」と記載されているのを、
「請求項6、8~9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。」との記載に訂正する。
カ 一群の請求項について
訂正前の請求項6~10について、請求項7~10は、請求項6を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項6によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項6~10に対応する訂正後の請求項6~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正事項6について
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、「冷蔵庫に予冷処理を開始させる」条件について、「予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」であることを直列的に追加するとともに、「前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」という発明特定事項を直列的に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0021】に「予冷判定部202は、位置情報取得部201が取得したユーザの位置、および判定テーブル211を用いて、冷蔵庫1に予冷を開始させるか否かの判定、および予冷を開始させる場合の開始のタイミングの決定を行う。」と記載され、段落【0067】に「予冷判定部202は、判定テーブル211を用いて、ユーザの帰宅時間(投入時間)を予測する(S1102、投入時間導出ステップ)。」、「予測帰宅時間は、以下の式で求められる。
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」と記載され、さらに段落【0069】に「予冷判定部202は、予測したユーザの帰宅時間が30分以内(第1所定時間以内)の場合(S1103でYES)、冷蔵庫1に対し予冷開始指示を送信する(S1104、予冷指示送信ステップ)」と記載されている。
また、願書に添付した明細書の段落【0040】には、「判定テーブル211には、場所(位置情報)、時間距離(平均、最短)、食料以外の購入の有無、買物頻度、帰宅後5分以内に食品冷却する確率(冷凍食品、冷蔵食品)、平均滞在時間、帰宅後の扉開放時間の平均(冷凍室扉、冷蔵室扉)、帰宅後の扉開後の温度検出器の温度上昇値(冷凍室、冷蔵室)が対応付けられている。時間距離(時間情報)とは、距離を時間で表したものであり、ここでは、判定テーブル211に示す場所(A百貨店等)と自宅までの移動にユーザが要した時間を示している。」と記載され、段落【0048】には、「また、冷凍食品を購入する場所と冷蔵庫のある自宅までの時間距離、および滞在時間は、位置情報のデータ数を計数することにより算出することができる。」と記載されている。
以上の記載から、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてする訂正であるといえる。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、「冷蔵庫に予定処理を開始させる」条件を直列的に追加するとともに、「予測帰宅時間」に係る発明特定事項を直列的に追加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7は、請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。
ウ 訂正事項8について
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項8が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項8が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項8は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項8が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項9について
(ア)訂正の目的
訂正事項9は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項9が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項9が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項9は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項9が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項10について
(ア)訂正の目的
訂正事項10は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項10が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項10が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項10は、請求項7が削除されたことに伴い、請求項10が択一的に引用する請求項から請求項7を削除するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、訂正事項6~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合する。
3.請求項11の訂正
(1)本件訂正の内容
訂正事項11の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
請求項11において、
「コンピュータに、
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記移動体通信端末の前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているかを判定する予冷判定部と、
前記予冷判定部の判定結果に基づいて前記移動体通信端末へ前記冷蔵庫の予冷処理の開始確認を送信する送信部と、
を実現させるためのプログラム。」と記載されているのを、
「コンピュータに、
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記移動体通信端末の前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内であるかを判定する予冷判定部と、
前記予冷判定部が、前記移動体通通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が前記第1所定時間以内であると判定した場合に、前記移動体通信端末へ前記冷蔵庫の予冷処理の開始確認を送信する送信部と、
を実現させるためのプログラムであって、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、プログラム。」との記載に訂正する。
(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正の目的
訂正事項11は、「予冷判定部」における判定条件について「予測帰宅時間が第1所定時間以内である」ことを直列的に追加し、予冷判定部の判定結果に基づくことが「前記移動体通通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が前記第1所定時間以内であると判定した場合」であることを特定し、さらに「前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」という発明特定事項を直列的に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の段落【0069】には、「予冷判定部202は、予測したユーザの帰宅時間が30分以内(第1所定時間以内)の場合(S1103でYES)、冷蔵庫1に対し予冷開始指示を送信する(S1104、予冷指示送信ステップ)」と記載されている。そして、願書に添付した明細書の段落【0021】に「予冷判定部202は、位置情報取得部201が取得したユーザの位置、および判定テーブル211を用いて、冷蔵庫1に予冷を開始させるか否かの判定、および予冷を開始させる場合の開始のタイミングの決定を行う。」と記載され、段落【0067】に「予冷判定部202は、判定テーブル211を用いて、ユーザの帰宅時間(投入時間)を予測する(S1102、投入時間導出ステップ)。」、「予測帰宅時間は、以下の式で求められる。
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」と記載されている。
また、願書に添付した明細書の段落【0040】には、「判定テーブル211には、場所(位置情報)、時間距離(平均、最短)、食料以外の購入の有無、買物頻度、帰宅後5分以内に食品冷却する確率(冷凍食品、冷蔵食品)、平均滞在時間、帰宅後の扉開放時間の平均(冷凍室扉、冷蔵室扉)、帰宅後の扉開後の温度検出器の温度上昇値(冷凍室、冷蔵室)が対応付けられている。時間距離(時間情報)とは、距離を時間で表したものであり、ここでは、判定テーブル211に示す場所(A百貨店等)と自宅までの移動にユーザが要した時間を示している。」と記載され、段落【0048】には、「また、冷凍食品を購入する場所と冷蔵庫のある自宅までの時間距離、および滞在時間は、位置情報のデータ数を計数することにより算出することができる。」と記載されている。
以上の記載から、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてする訂正であるといえる。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項11は、「予冷判定部」における判定条件について「予測帰宅時間が第1所定時間以内である」ことを直列的に追加し、予冷判定部の判定結果に基づくことが「前記移動体通通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が前記第1所定時間以内であると判定した場合」であることを特定するとともに、「予測帰宅時間」に係る発明特定事項を直列的に追加するものであって、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合する。
4.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合するから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]、[6~10]、11について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、
冷蔵システム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記制御部は、更に前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに前記移動体通信端末に通知される前記予冷処理の開始確認に対して前記移動体通信端末から送信される確認結果に基づいて、前記冷蔵庫に前記予冷処理を開始させる、
請求項1に記載の冷蔵システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記予冷処理の経過時間に基づいて、前記冷蔵庫に前記予冷処理を停止させる、
請求項1又は3のいずれか1項に記載の冷蔵システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記予冷処理が実行中である場合、前記冷蔵庫に報知を行わせる、
請求項1、3~4のいずれか1項に記載の冷蔵システム。
【請求項6】
冷凍室と、
圧縮機と、
前記圧縮機の回転数を上げることにより、前記冷凍室の温度を低下させる予冷処理を実行する予冷処理部と、を備え、
前記予冷処理は、冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と移動体通信端末の位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に実行され、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、
冷蔵庫。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに、前記予冷処理の開始確認が前記移動体通信端末に通知され、
前記予冷処理は、更に前記予冷処理の前記開始確認に対して前記移動体通信端末から送信される確認結果に基づいて実行される、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記予冷処理は、前記予冷処理の経過時間が上限時間を超えた場合に停止される、
請求項6又は8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記予冷処理の実行中に報知を行う報知部を更に備える、
請求項6、8~9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
コンピュータに、
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記移動体通信端末の前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内であるかを判定する予冷判定部と、
前記予冷判定部が、前記移動体通通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が前記第1所定時間以内であると判定した場合に、前記移動体通信端末へ前記冷蔵庫の予冷処理の開始確認を送信する送信部と、
を実現させるためのプログラムであって、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である、プログラム。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
当審が令和5年12月28日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(新規事項)
本件特許は、令和4年6月10日に提出した手続補正書でした補正が、以下の点で、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
当初明細書等には、購入予想条件(ユーザが登録位置に存在すること)を満たし、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間(例えば、30分)以内の場合に、冷蔵庫に対し予冷開始指示を送信することが記載されているものの、予想帰宅時間と無関係に「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している滞在時間とに基づいて」、「前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる」ことは、当初明細書等には記載も示唆もされていない。また、予想帰宅時間と無関係に冷蔵庫に予冷処理を開始させることが、当初明細書等の記載から自明であるとは認められない。
理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
訂正後の請求項1には、「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している滞在時間とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部」と記載されるに過ぎず、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間以内であるか否かについて、なんら特定していない。
訂正後の請求項1を引用する請求項3~5、訂正後の請求項6、請求項6を引用する請求項8~10、請求項11についても同様である。
よって、訂正後の請求項1、3~6、8~11は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。
第5 当審の判断
1.理由1(新規事項)について
本件訂正により、訂正後の請求項1は、
「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」ことが特定された。
してみると、訂正後の請求項1は、購入予想条件(ユーザが登録位置に存在すること)を満たし、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間(例えば、30分)以内の場合に、冷蔵庫に対し予冷開始指示を送信することを発明特定事項に含むものであるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
訂正後の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項3~5、訂正後の請求項6、訂正後の請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、訂正後の請求項11についても同様である。
よって、訂正後の本件特許は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
2.理由2(サポート要件)について
本件訂正により、訂正後の請求項1は、
「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」ことが特定された。
してみると、訂正後の請求項1は、購入予想条件(ユーザが登録位置に存在すること)を満たし、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間(例えば、30分)以内の場合に、冷蔵庫に対し予冷開始指示を送信することを発明特定事項に含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されているものであって、発明の詳細な説明に記載した事項の範囲を超えるものではない。
訂正後の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項3~5、訂正後の請求項6、訂正後の請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、訂正後の請求項11についても同様である。
よって、訂正後の本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1.特許法第36条第6項第2号(明確性)違反について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1の「前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在しているときに」との発明特定事項について、「予冷処理を開始させるタイミングは、帰宅までが例えば1時間以上を予定される登録位置に入った直後や、帰宅までが15分程度を予定される登録位置から出る直前、等のタイミングも含んでおり、出願当初明細書の記載のように、帰宅の30分程度前からの予冷開始以外の、発明の目的を達しない予冷開始も含んでいて、発明の外延が不明確である」、「予冷開始のタイミングを決定するための、上述した必須となるべき判定処理などの構成要件が欠けており、発明の外延が不明確となっている」と主張する。
しかしながら、本件訂正により、訂正後の請求項1は、「前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」ことが特定された。
よって、本件訂正後の請求項1は、明確である。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~5、請求項6及び請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、請求項11についても同様である。
2.特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同条第2項(進歩性)違反について
2-1.特許法第29条第1項第3号(新規性)違反について
(1)本件特許に係る出願の出願日について
第5の1.で論じたとおり、本件訂正により、訂正後の請求項1は、購入予想条件(ユーザが登録位置に存在すること)を満たし、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間(時間距離)」の式で計算される予想帰宅時間が第1所定時間(例えば、30分)以内の場合に、冷蔵庫に対し予冷開始指示を送信することを発明特定事項に含むものであるから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
訂正後の請求項1を直接的または間接的に引用する請求項3~5、訂正後の請求項6、訂正後の請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項8~10、訂正後の請求項11についても同様である。
よって、本件特許に係る出願の出願日は、原出願の出願日である平成29年5月15日と認める。
(2)当審の判断
申立人は、本件特許に係る出願の原出願の公開公報である甲第7号証(特開2018-194209号公報)を提出して、「本件特許は、分割の実体的要件を満たさず、分割出願が原出願のときにしたものとみなされない」から「本件特許の原出願は、平成30年12月6日に出願公開がなされており、本件特許の出願時には、原出願の内容は公知となって」いることを理由に、「新規性を有さず、特許法第29条第1項第3号に該当する」と主張する。
しかしながら、上記(1)で論じたとおり、訂正後の請求項1、3~6、8~11は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許に係る出願は、分割の実体的要件を満たす出願と認められるので、本件特許に係る出願の出願日は、原出願の出願日である平成29年5月15日と認められ、申立人の主張を採用することはできない。
よって、請求項1、3~6、8~11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
2-2.特許法第29条第2項(進歩性)違反について
(1)甲号証に記載された事項
新規性・進歩性に関して、申立人が主な証拠として提出した甲号証は、以下のとおりである。
<甲号証>
甲第1号証:特開2017-20730号公報
甲第2号証:特開2014-3391号公報
甲第3号証:特開2012-201220号公報
甲第4号証:特開2014-222127号公報
(以下、甲第1号証~甲第4号証をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。)
ア 甲第1号証
甲1には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫制御システムの構成例を示す図である。冷蔵庫制御システム100は、冷蔵庫1と、制御装置2と、オートロック装置3と、POS端末6と、情報サーバ7とで構成される。冷蔵庫1は、庫内の温度をユーザによって入力された第一の設定温度に保つ。制御装置2は、冷蔵庫1に庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度に変更させる制御命令を送信して庫内の温度を制御する。オートロック装置3は、例えば、ユーザが住む建物(マンションなど)の出入口にあって、出入口の施錠および解錠を制御する。オートロック装置3は、解錠された場合に解錠されたことを示す解錠情報を制御装置2に送信する。制御装置2は、ルータ4を介して外部のネットワーク5に接続する。」
(イ)「【0024】
ユーザが購入した物品の保存温度が冷蔵の場合は、冷蔵室の予冷要求信号を生成し、ユーザが購入した物品の保存温度が冷凍の場合は、冷凍室の予冷要求信号を生成するといったように、冷蔵室と冷凍室の予冷要求信号を分けてもよい。・・・」
(ウ)「【0046】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫制御システムの構成例を示す図である。実施の形態2の冷蔵庫制御システム200は、実施の形態1の冷蔵庫制御システム100のPOS端末6に代えて、ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8を備える。位置検出機能は、例えば、GPS(Global Positioning System)でもよいし、無線LANによる位置検出でもよい。また、冷蔵庫制御システム200では、オートロック装置3を備えず、オートロック装置3からの解錠情報に代えて、情報端末8からの位置情報に基づいて、ユーザの推定位置が自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する。情報端末8は、例えばユーザが所持するスマートフォンであり、冷蔵庫制御システム200の専用アプリケーションをインストールすることで、情報端末8として機能する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。」
(エ)「【0053】
位置情報受信部27は、情報端末8から位置情報を受信する。位置情報受信部27は、受信した位置情報を、位置判定部28に送る。位置判定部28は、位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が、自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する。自宅から限られた範囲内である場合、位置判定部28は、制御命令生成部24に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知する。制御命令生成部24は、位置判定部28から情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する。本実施の形態における位置情報受信部27は、本発明の位置推定受信部である。
【0054】
制御命令生成部24は、生成した制御命令を制御命令送信部26に送ると、予冷運転を開始したことを通知する開始通知信号を生成し、開始通知送信部29に送る。開始通知送信部29は、制御命令生成部24から受け取った開始通知信号を情報端末8に送信する。その他の構成は、実施の形態1の制御装置2と同様である。」
(オ)「【0061】
制御装置2の位置情報受信部27は、情報端末8から位置情報を受信しない場合(ステップS71;NO)、ステップS71を繰り返して、位置情報の受信を待機する。位置情報受信部27は、位置情報を受信すると(ステップS71;YES)、位置判定部28に送る。位置判定部28は、位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が、自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する(ステップS72)。
【0062】
位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内でない場合(ステップS72;NO)、位置情報受信部27および位置判定部28は、位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内になるまでステップS71およびステップS72を繰り返す。位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内である場合(ステップS72;YES)、位置判定部28は、制御命令生成部24に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知する。
【0063】
制御命令生成部24は、位置判定部28から情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成し(ステップS73)、制御命令送信部26に送る。制御命令送信部26は、制御命令生成部24から受け取った制御命令を冷蔵庫1に送信する(ステップS74)。制御命令生成部24は、予冷運転を開始したことを通知する開始通知信号を生成し(ステップS75)、開始通知送信部29に送る。開始通知送信部29は、制御命令生成部24から受け取った開始通知信号を情報端末8に送信し(ステップS76)、処理を終了する。」
(カ)「【0067】
図14は、本発明の実施の形態に係る各装置を制御するハードウェア構成の一例を示す図である。冷蔵庫制御システム100および冷蔵庫制御システム200を構成する冷蔵庫1、制御装置2、オートロック装置3、POS端末6、情報サーバ7および情報端末8は、それぞれの装置を制御するハードウェア構成としてプロセッサ101、メモリ102、インターフェース103を備える。これらの装置の各機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。インターフェース103は各装置を接続し、通信を確立させるためのものであり、必要に応じて複数の種類のインターフェース103から構成されてもよい。図14では、プロセッサ101およびメモリ102をそれぞれ1つで構成する例を示しているが、複数のプロセッサ101および複数のメモリ102が連携して各機能を実行してもよい。」
(キ)「【0073】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。例えば、制御装置2は、時間帯別電気料金情報を記憶し、ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部を備え、帰宅時刻に該当する時間帯の電気料金が前の時間帯に比べて高くなる場合に、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を冷蔵庫1に送信するようにしてもよい。これにより、より経済的に予冷運転を行うことができる。電気料金が一定の時間を時間帯といい、電気料金は時間帯ごとに変化するものとする。」
(ク)「【図11】
[図:0001416438000001.jpg]
」
(ケ)「【図13】
[図:0001416438000002.jpg]
」
(コ)上記(ア)~(ケ)から、甲1には、以下の発明が記載されている。
[引用発明1]
「ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8から位置情報を受信する位置情報受信部27と、
位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内であると判定されたことが通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する制御命令生成部24と、を備え、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する、
冷蔵庫制御システム200。」(以下、「引用発明1」という。)
[引用発明2]
「冷凍室と、
冷凍室の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度に変更させる制御命令を送信して庫内の温度を制御する制御命令生成部24と、を備え、
ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8から位置情報を受信し、
受信した位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内であると判定されたことが通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成され、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する冷蔵庫制御システム200を有する、冷蔵庫1。」(以下、「引用発明2」という。)
[引用発明3]
「プロセッサ101に、
ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8から位置情報を受信する位置情報受信部27と、
位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が、自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する位置判定部28と、
位置判定部28が自宅から限られた範囲内であると判定した場合、位置判定部28は、制御命令生成部24に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知し、制御命令生成部24は、位置判定部28から情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成するように実現され、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する、
プログラム。」(以下、「引用発明3」という。)
イ 甲第2号証
甲2には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が携帯する移動体機器を用いて住宅で使用する冷暖房機器を制御するために用いる機器制御装置、この機器制御装置を用いて冷暖房機器を制御する機器制御システム、およびコンピュータを上記機器制御装置として動作させるためのプログラムに関するものである。」
(イ)「【0048】
以下では、典型例として、図3に示すように、職場や学校から自身の住宅Hmに帰る場合であって、かつ電車と徒歩との組合せ、または電車とバスと徒歩との組合せが移動手段として利用される場合を想定して説明する。電車の乗車時間は10~60分、バスの乗車時間は5~30分、徒歩は5~20分程度であり、電車の駅周辺には利用者が立ち寄る可能性のある商店や飲食店(以下、「立寄場所St」という)が存在していると仮定する。また、冷暖房機器30の立上時間は、10~20分である場合を想定する。図3には立寄場所Stに立ちよらずに帰宅する場合の帰宅経路Rtを破線で示している。
【0049】
上述した典型例では、冷暖房機器30の運転開始のタイミングは、電車に乗車している期間内、徒歩で移動している期間内、バスに乗車している期間内、電車から降車し立寄場所Stに滞在している期間内の4種類が考えられる。電車またはバスに乗車している状態、徒歩で移動している状態、立寄場所Stに滞在している状態は、それぞれ位置管理部12から出力される位置情報を用いることにより判断される。
【0050】
つまり、利用者が使用する移動手段ごとの位置情報と立寄場所Stの位置情報とが、ルールの条件としてルール記憶部142に格納されていると、推定処理部141は、位置情報に基づいて移動手段の種類の推定、または立寄場所Stでの滞在の推定が可能になる。」
(ウ)「【0069】
ところで、利用者が立寄場所Stに滞在する時間は一定ではないが、立寄場所Stごとの滞在時間の範囲は利用者の習慣によって、比較的小さい誤差範囲に収まると考えられる。たとえば、ある利用者について、立寄場所Stが飲食店であれば滞在時間は30~120分程度、立寄場所Stが本屋であれば滞在時間は10~60分程度などと考えられる。したがって、動作決定部14は、利用者による立寄場所Stでの滞在時間に習慣性があることを利用し、立寄場所Stごとの利用者の滞在時間を学習しておけば、立寄場所Stごとに利用者が滞在する時間を推定して帰宅時刻の予測に用いることができる。利用者が立寄場所Stに滞在する時間を学習しておけば、立寄場所Stを出る時刻を推定することができるから、動作決定部14は、立寄場所Stから住宅Hmまでの時間を考慮して、帰宅時刻を推定することが可能になる。ただし、このようにして推定した帰宅時刻には、比較的大きい誤差が含まれるから、推定した帰宅時刻の範囲のうち最早の時刻を帰宅時刻とみなすことが望ましい。」
(エ)「【図4】
[図:0001416438000003.jpg]
」
(オ) 上記(ア)~(エ)から、甲2には、以下の事項が記載されている(以下、「甲2記載の技術事項」という。)。
「利用者が携帯する移動体機器を用いて住宅で使用する冷暖房機器を制御するために用いる機器制御装置、機器制御システム、およびプログラムに関して、
利用者が使用する移動手段ごとの位置情報と立寄場所Stの位置情報とがルールの条件としてルール記憶部142に格納され、推定処理部141は、位置情報に基づいて移動手段の種類の推定または立寄場所Stでの滞在の推定し、
動作決定部14は、立寄場所Stごとに利用者が滞在する時間を推定して帰宅時刻の予測に用いること。」
ウ 甲第3号証
甲3には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、運転者が車両に乗車する前に車室内の空調を予め実行する空調制御装置と、運転者が所有する携帯端末と、これら空調制御装置および携帯端末と通信可能に構成された情報センターと、を備える空調システムに関する。」
(イ)「【0045】
次に、本実施形態における空調システム10の動作について図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
即ち、情報センター13の制御装置41は、空調制御装置11が空調要信号を送信したと判定(ステップC2:YES)し、且つ、携帯端末12から通知された当該携帯端末12の現在位置が所定条件を満たしていると判定(ステップC3:YES)した場合には、プレ空調実行指示信号を送信(ステップC4)する前に、確認通知Cを携帯端末12に送信する(ステップD1)。
【0046】
一方、携帯端末12の制御装置31は、情報センター13から確認通知Cを受信すると(ステップE1)、その確認通知Cを表示部に表示する(ステップE2)。次に、制御装置31は、運転者によって確認通知Cの操作内容が確定されたか否かを判断する(ステップE3)。そして、制御装置31は、運転者によって確認通知Cの操作内容が確定されると(ステップE3:YES)、その操作内容に応じてプレ空調要否確定信号(空調要確定信号、或いは、空調否確定信号)を通信部34を介して情報センター13に返信する(ステップE4)。
【0047】
情報センター13の制御装置41は、携帯端末12からプレ空調要否確定信号を受信すると(ステップD2)、受信した信号が空調要確定信号であるか否かを判定する(ステップD3)。制御装置41は、空調要確定信号を受信したと判定した場合(ステップD3:YES)には、空調制御装置11に空調種類特定情報を含むプレ空調実行指示信号を送信し(ステップC4)、この処理を終了する。一方、制御装置41は、空調要確定信号を受信していないと判定した場合、つまり、空調否確定信号を受信したと判定した場合(ステップD3:NO)には、空調制御装置11にプレ空調実行指示信号を送信することなく、この処理を終了する。
以上に説明したように本実施形態によれば、空調制御装置11は、車両14の車室内の空調が必要であることが返信(確認)された場合に、車室内のプレ空調を実行するようになる。従って、プレ空調を必要に応じて実施することを一層精度良く行うことができる。」
(ウ)「【0050】
プレ空調要否判定処理部26を情報センター13に設けてもよい。この場合、空調制御装置11は、環境状態監視処理部25による監視結果を情報センター13に送信する監視結果送信処理部を備える。そして、情報センター13は、受信した監視結果に基づいて、プレ空調要否判定処理部26によりプレ空調の要否を判定する。
プレ空調実施要否判定処理(ステップA4)における判定基準値(上限値、下限値、基準値など)は、ユーザが任意に設定可能である。また、この判定基準値を、例えば季節や天候などに応じて自動的に変更するように構成してもよい。
携帯端末12の制御装置31は、例えば、携帯端末12が所定場所(例えば、テーマパークの出入口ゲートなど)を通過した場合にセンター通知条件が成立したと判定するように構成してもよい。なお、携帯端末12が所定場所を通過したか否かの判断は、現在位置検出処理部35が検出する携帯端末12の現在位置と携帯端末12が備える地図データにおける所定場所の位置とを照合することにより判断することができる。また、所定場所は、ユーザが任意に設定することが可能である。
また、携帯端末12の制御装置31は、例えば、所定時刻(例えば、テーマパークなどから帰る時刻として通常想定される時刻など)になるとセンター通知条件が成立したと判定するように構成してもよい。なお、所定時刻は、ユーザが任意に設定することが可能である。」
(エ)「【図7】
[図:0001416438000004.jpg]
」
(オ) 上記(ア)~(エ)から、甲3には、以下の事項が記載されている(以下、「甲3記載の技術事項」という。)。
「運転者が車両に乗車する前に車室内の空調を予め実行する空調制御装置と、運転者が所有する携帯端末と、これら空調制御装置および携帯端末と通信可能に構成された情報センターと、を備える空調システムに関して、
情報センター13の制御装置41は、空調制御装置11が空調要信号を送信したと判定(ステップC2:YES)し、且つ、携帯端末12から通知された当該携帯端末12の現在位置が所定条件を満たしていると判定(ステップC3:YES)した場合に、空調制御装置11に空調種類特定情報を含むプレ空調実行指示信号を送信し(ステップC4)、空調制御装置11は、車両14の車室内の空調が必要であることが返信(確認)された場合に、車室内のプレ空調を実行するものであって、
携帯端末12が所定場所を通過したか否かの判断は、現在位置検出処理部35が検出する携帯端末12の現在位置と携帯端末12が備える地図データにおける所定場所の位置とを照合することにより判断すること。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1、3~5について
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8」は、本件発明1の「移動体通信端末」に相当し、引用発明1の「ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8から位置情報を受信する位置情報受信部27」は、本件発明1の「移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部」に相当する。
引用発明1の「位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置」は、本件発明1の「位置情報取得部が取得した前記位置情報」に相当する。
また、引用発明1の「自宅から限られた範囲内であること」は、そのように判定するに当たり、予め「自宅」又は「自宅から限られた範囲」が登録されていることが技術的に必要であることが明らかであるから、本件発明1の「予め登録された登録位置」に相当する。
引用発明1において、「庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する」ことは、本件発明1の「前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる」ことに相当する。
そうすると、引用発明1の「位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内であると判定されたことが通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する制御命令生成部24と、を備え」ることと、本件発明1の「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え」ることとは、「予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え」ることの限りにおいて一致する。
引用発明1の「冷蔵庫制御システム200」は、本件発明1の「冷蔵システム」に相当する。
してみると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
[一致点1]
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備えた、冷蔵システム。
[相違点1]
冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部に関して、
本件発明1は、「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記位置情報取得部が取得した前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に、前記冷蔵庫に予冷処理を開始させる制御部と、を備え、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」のに対して、
引用発明1は、「位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内であると判定されたことが通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成する制御命令生成部24と、を備え、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する」点。
上記相違点1について検討すると、甲2記載の技術事項又は甲3記載の技術事項は、いずれも自宅または車両の空調装置に関する技術であって、冷蔵システムに関する技術分野とは異なるものである。
そして、甲2記載の技術事項は、「位置情報に基づいて移動手段の種類の推定または立寄場所Stでの滞在の推定」するものであって、「移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」に予冷処理を行うものではなく、また、「立寄場所Stごとに利用者が滞在する時間を推定して帰宅時刻の予測に用いる」ものであるが、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間」まで開示するものではない。
また、甲3記載の技術事項は、「空調制御装置11が空調要信号を送信したと判定(ステップC2:YES)し、且つ、携帯端末12から通知された当該携帯端末12の現在位置が所定条件を満たしていると判定(ステップC3:YES)した場合」にプレ空調を行うものであって、「移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」に予冷処理を行うものではなく、「現在位置検出処理部35が検出する携帯端末12の現在位置と携帯端末12が備える地図データにおける所定場所の位置とを照合する」ことで携帯端末12の現在位置を判定するものであるが、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間」まで開示するものではない。
してみると、当業者であっても、引用発明1に甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項を組み合わせて、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることが容易に想到し得たということはできない。
なお、甲4は、予冷処理が実行中である場合に冷蔵庫から報知を行うことを立証する証拠であって、上記相違点1に関する事項を開示、示唆するものではない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明1、甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明3~5について同様である。
イ 本件発明6、8~10について
本件発明6と引用発明2とを対比すると、次の一致点2で一致し、相違点2、3で相違する。
[一致点2]
冷凍室と、
前記冷凍室の温度を低下させる予冷処理を実行する予冷処理部と、を備え、
前記予冷処理は、予め登録された登録位置と移動体通信端末の位置情報とに基づいて実行される、
冷蔵庫。
[相違点2]
本件発明6は、「圧縮機」を有し、「前記圧縮機の回転数を上げることにより」冷凍室の温度を低下させるのに対して、引用発明2は、「圧縮機」を有するか否か不明な点。
[相違点3]
予冷処理に関して、
本件発明6は、「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と移動体通信端末の位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合に実行され、
前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」のに対して、
引用発明2は、「ユーザが所持する位置検出機能を搭載した情報端末8から位置情報を受信し、
受信した位置情報が示す位置が自宅から限られた範囲内であると判定されたことが通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成され、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する冷蔵庫制御システム200を有する」ものである点。
事案に鑑み、上記相違点3について検討すると、本件発明6は、本件発明1と同様に「前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」に予冷処理が実行されるものであり、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間」であることを発明特定事項に含むものである。
よって、相違点2について論じるまでもなく、本件発明6は、本件発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明2に甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項を組み合わせて、上記相違点3に係る本件発明6の発明特定事項とすることが容易に想到し得たということはできない。
なお、甲4は、予冷処理が実行中である場合に冷蔵庫から報知を行うことを立証する証拠であって、上記相違点3に関する事項を開示、示唆するものではない。
以上のとおりであるから、本件発明6は、引用発明2、甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
本件発明6を直接的又は間接的に引用する本件発明8~10について同様である。
ウ 本件発明11について
本件発明11と引用発明3とを対比すると、次の一致点3で一致し、相違点4で相違する。
[一致点3]
コンピュータに、
移動体通信端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
予め登録された登録位置と前記移動体通信端末の前記位置情報とに基づいて、所定の判定する予冷判定部と、
前記予冷判定部が、所定の判定した場合に、前記移動体通信端末へ前記冷蔵庫の予冷処理の開始確認を送信する送信部と、
を実現させるためのプログラム。
[相違点4]
予冷判定部に関して、
本件発明11は、「冷蔵庫とは異なる位置であり且つ予め登録された登録位置と前記移動体通信端末の前記位置情報とに基づいて、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内であるかを判定する」ものであって、
「前記予冷判定部が、前記移動体通通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が前記第1所定時間以内であると判定した場合に、前記移動体通信端末へ前記冷蔵庫の予冷処理の開始確認を送信」し、
「前記予測帰宅時間は、下記式(1)を満たし、
予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間・・・(1)
前記滞在時間は、前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在している時間であり、
前記平均滞在時間は、前記滞在時間の平均であり、
前記帰宅経路の所要時間は、前記登録位置から自宅までの移動に要する時間である」のに対して、
引用発明3は、
「位置情報受信部27から受け取った位置情報が示す位置が、自宅から限られた範囲内であるか否かを判定する」ものであって、
「位置判定部28が自宅から限られた範囲内であると判定した場合、位置判定部28は、制御命令生成部24に、情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知し、制御命令生成部24は、位置判定部28から情報端末8の位置が自宅から限られた範囲内であることを通知されると、記憶部22が記憶する設定温度情報を参照し、庫内の温度を第一の設定温度よりも低い第二の設定温度にする制御命令を生成するように実現され、
ユーザの推定位置から帰宅時刻を計算する帰宅時刻推定部と、帰宅時刻に該当する時間帯の開始時刻から、庫内の温度を前記第一の設定温度から第二の設定温度へ変化させるのに必要な時間分遡った時刻に、庫内の温度を第二の設定温度に変更する制御命令を送信する」ものである点。
上記相違点4について検討すると、本件発明11は、本件発明1と同様に「前記移動体通信端末が前記登録位置に滞在し、かつ予測帰宅時間が第1所定時間以内の場合」に予冷処理が実行されるものであり、「予測帰宅時間=平均滞在時間-滞在時間+帰宅経路の所要時間」であることを発明特定事項に含むものである。
よって、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、当業者であっても、引用発明3に甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項を組み合わせて、上記相違点4に係る本件発明11の発明特定事項とすることが容易に想到し得たということはできない。
なお、甲4は、予冷処理が実行中である場合に冷蔵庫から報知を行うことを立証する証拠であって、上記相違点4に関する事項を開示、示唆するものではない。
以上のとおりであるから、本件発明11は、引用発明3、甲2記載の技術事項及び甲3記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
第7 むすび
したがって、請求項1、3~6、8~11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1、3~6、8~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、7に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700360