特許異議申立
2024-701190
SMDタイプのマイクロブレーカ
- 審判番号
- 2024-701190
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-072463
- 登録番号
- 7500036
- 請求日
- 2024年12月12日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大塚テクノ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人豊栖特許事務所
- 【異議申立人】ボーンズ 株式会社
- 【異議申立人代理人】住友 慎太郎
- 【異議申立人代理人】浦 重剛
- 【異議申立人代理人】苗村 潤
- 【異議申立人代理人】石原 幸信
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-Y (H01H) / P1651.537-Y (H01H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7500036号発明「SMDタイプのマイクロブレーカ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7500036号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7500036号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和6年4月26日の出願であって、令和6年6月7日にその特許権の設定登録がされ、令和6年6月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年12月12日に特許異議申立人 ボーンズ株式会社(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7500036号の請求項1~6に係る特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
固定接点を有する固定接点金属板と、
前記固定接点の対向位置に配置してなる可動接点を有する可動接点金属板と、
前記固定接点金属板と前記可動接点金属板を定位置に配置してなるケースとを備え、
さらに以下の(a)ないし(l)の全ての構成を備えるSMDタイプのマイクロブレーカ。
(a)前記ケースは、
前記固定接点金属板に設けているハンダ端子と、
前記可動接点金属板に設けているハンダ端子を底面の四隅部に配置している。
(b)前記ケースは内部に閉鎖構造の中空部を設けている。
(c)前記可動接点金属板は、先端部に前記可動接点を設けている弾性アーム板を備え、
前記弾性アーム板は、前記ケースの前記中空部に変形自在に配置されている。
(d)前記固定接点と前記可動接点は前記ケースの前記中空部に配置されている。
(e)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部を備える。
(f)前記埋設金属プレート部は、
前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部と、
前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部とからなる。
(g)前記埋設金属プレート部は、
平面部と垂直部と前記ハンダ端子とからなる金属板で、
前記平面部の両側に前記垂直部を介して前記ハンダ端子を連結している。
(h)前記埋設金属プレート部は、
前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、
前記垂直部と前記ハンダ端子との間に外部折曲ラインを設けて、
前記内部折曲ラインと前記外部折曲ラインを平行姿勢に配置している。
(i)前記埋設金属プレート部は、
前記垂直部を前記ケースに埋設して、
前記平面部を前記ケースの前記中空部に配置して、
前記ハンダ端子を前記ケースの前記底面に配置している。
(j)前記固定接点の埋設金属プレート部の前記平面部は、
両側の対向位置に配置している前記内部折曲ラインの間に前記固定接点を配置している。
(k)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記固定接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインと、
前記可動接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインからなる4つの前記内部折曲ラインを、
前記ケースの前記四隅部に配置している。
(l)前記内部折曲ラインは、
前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の中心点に向かう方向に傾斜して、
前記固定接点の両側に配置されてなる一対の前記内部折曲ラインは、
中央の垂線の交点が前記固定接点の中心から変位している。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロブレーカであって、
前記固定接点金属板と前記可動接点金属板に設けている4つの前記外部折曲ラインが、
前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の前記中心点に向かう方向に傾斜して、
前記ハンダ端子の先端縁を、
前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の前記中心点に向かう方向に傾斜してなるSMDタイプのマイクロブレーカ。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロブレーカであって、
前記ケースの前記底面の対角位置に配置されてなるふたつの前記ハンダ端子の前記外部折曲ラインは、互いに平行で、
前記ケースのX軸方向の両端部に配置されてなるふたつの前記ハンダ端子の前記外部折曲ラインは、互いに交差して配置されてなるSMDタイプのマイクロブレーカ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のマイクロブレーカであって、
前記ケースの前記底面に配置してなる前記ハンダ端子が、側縁を非直線状としてなるSMDタイプのマイクロブレーカ。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロブレーカであって、
前記ケースの前記底面に配置してなる前記ハンダ端子が、平面形状において折曲形状であるSMDタイプのマイクロブレーカ。
【請求項6】
請求項1に記載のマイクロブレーカであって、
前記ケースの前記底面に配置してなる前記ハンダ端子が、両側の側縁をアンダーカット形状として前記ケースに埋設してなるSMDタイプのマイクロブレーカ。
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する申立理由は、概略、以下のとおりである。
1.申立理由1(進歩性)
本件発明1~6は、甲第1号証記載の発明又は甲2号証記載の発明、及び甲第1~7号証記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきでものある。
(証拠方法)
甲第1号証:特表2023-548020号公報
甲第2号証:特許6967878号公報
甲第3号証:国際公開2018/142752号
甲第4号証:特開2019-75354号公報
甲第5号証:実願昭46-32765号(実開昭47-29362号)のマイクロフィルム
甲第6号証:「SMTハンドブック」、株式会社工業調査会、1990年9月14日初版第1刷発行、第297ページ
甲第7号証:特開2019-149285号公報
※ 以下、甲第1~7号証をそれぞれ「甲1」~「甲7」という。
2.申立理由2(サポート要件)
本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3.申立理由3(明確性)
本件発明1~6は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 甲各号証の記載
1.甲1
(1)甲1には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「【発明を実施するための形態】
【0023】
表面実装リフロープロセスに適したサーマルカットオフ(TCO)デバイスを開示する。本TCOデバイスは、既存のリード線取り付けTCOデバイス構造体の後にモデル化されているが、表面実装リフロー操作に適したコンパクトで小型化された構造体に改善されている。アーム及びベース端子は、表面実装リフローのためのパッドを含む。ベースモールドは、PTCデバイス、バイメタルデバイス、及びアーム端子機構を受容するように設計されており、単一のベース端子又は複数部品のベース端子のいずれかを用いて動作する場合がある。複数のカバーの設計は、ベース端子に対してTCOデバイスの上部プレートの熱容量を下げるために開示されている。統合されたアーム及びバイメタルデバイス端子を特徴とするTCOデバイスもまた、統合端子を支持するように更新されたベース部と共に開示されている。」
「【0025】
ベース部102は、ベースモールド104及びベース端子106からなる。例示的な一実施形態において、ベース端子106及びベースモールド104は、1つのコンポーネント、ベース部102として共にモールドされる。ベース部にはバイメタルディスク108が配置され、次にベースモールド104にはアーム端子110がモールドされる。その組立体の上にカバー112が配置され、次に第2のモールド114がコンポーネントを包囲して、図示のようなTCOデバイス100をもたらす。例示的な一実施形態において、ベース端子106及びアーム端子110の両方は、銅で作られている。例示的な実施形態において、導電路の一部ではないカバー112は、絶縁材料のカバーリングを伴わないステンレス鋼又は銅で作られ、又はエポキシコーティング又はプラスチックモールディング材料のような、絶縁材料のカバーリングを伴うステンレス鋼又は銅で作られている。」
「【0028】
コンポーネントをプリント回路基板(printed circuit board:PCB)に取り付けるために用いられる従来のはんだ付け技法とは対照的に、リフローはんだ付けは、コンポーネントの配置をはんだ付けプロセスから分離することにより、大量生産及び速さを可能にする最近の技法である。従来のはんだ付けでは、コンポーネントは、PCBの上に位置付けられはんだ付けされる。第2のコンポーネントなどが配置されはんだ付けされることが、PCBのすべてのコンポーネントが定位置にはんだ付けされるまでこれに続く。リフローはんだ付けの場合、通常は銅であるPCBのパッドは、はんだペーストで覆われる。小型化により、パッドは、旧式のPCBに対して、非常に小さく互いに近接したものであり得る。したがって、はんだペーストをパッドに正確に塗布することを確実にするために、しばしばステンシルが用いられる。次にコンポーネントは、粘着性のあるはんだペーストの上に1つずつ配置され、はんだペーストの粘着性によって、コンポーネントが確実に定位置に留まる。最後にPCBは、265℃などはんだペーストの融解温度と等しい温度まで加熱される。はんだペーストを加熱/融解するための様々な技法があるが、1つの一般的な技法は、この目的のための特殊な炉にPCBを配置することである。融解したはんだペーストは次に、その上に配置されていたコンポーネントの端子の上に「リフロー」し、その後にPCBは冷却されることができる。このように、PCB上のすべてのコンポーネントは、表面実装リフロープロセスを用いて同時に組み立てられる。」
「【0050】
図8は、例示的な実施形態による、SMD技術として使用可能なTCOデバイス800の分解斜視図を表している。TCOデバイス800は、カバープレート810、統合されたバイメタル及びアーム端子808(本明細書では統合端子808としても知られる)、及びベース部802を特徴とする。前のとおり、ベース部802は、ベースモールド804及びベース端子806を含む。統合されたバイメタル及びアーム端子808は、本明細書で示し説明する他の実施形態に対してTCOデバイス800の構造体を簡略化する。例示的な一実施形態において、統合端子808のバイメタル材料は、1)通常動作中に電流を伝えるために抵抗率が低い材料から作られており、2)過温度又は過電流の状況などの異常状態の間、端子が作動する(例えば、構造体を「持ち上げる」ように凸状状態に変形する)ように、異なる熱特性をもつ2つの金属から作られている。このように統合端子808は、少なくとも3つの金属材料、作動動作のための2つの金属、及びTCOデバイス800を通して電流を導電するために抵抗率が低い第3の金属を用いて作られている。統合端子808は、より詳細に図11に示され以下で説明されている。図9~図11は、TCOデバイス800の一部のコンポーネントのさらなる詳細を提供する。
【0051】
例示的な一実施形態において、ベース部802は、より詳細に図10に示され以下で説明されている統合端子808を受け取るための構造とされている。統合端子808は接触部812を含む;同様に、ベース部802のベース端子806は接触部814を含む。PTCデバイスがベース部802の中に挿入されている又はいない場合のいずれでも、接触部812及び814は、統合端子808及びベース端子806の間に接続が作られることを確実にする。過温度の状態などにより統合端子808の変形が生じると、接触部812及び814は分離する。
【0052】
図9は、例示的な実施形態による、図8のTCOデバイス800のカバープレート810の代表的な分解斜視図である。カバープレート810は、プラスチック又は他の非導電性材料であり得るカバー部904、及びステンレス鋼、真鍮、又は他の材料で形成され得るプレート部902を含む。
【0053】
図10は、例示的な実施形態による、図8のTCOデバイス800のベース部802の代表的な分解斜視図である。ベース部の上面802A及び802Bの両方が示されている。以前の実施形態とは対照的に、ベース端子806は2つの別個の部分、806A及び806Bからなる。ベースモールド804は、任意選択のPTCデバイスを収容するための第1の受容開口部1002、及び統合端子808を受容するための第2の受容開口部1004を含む。バイメタルディスク及びアーム端子が共に統合されているので、ベース部802は、3つの受容開口部を必要としないが代わりに2つを有する。ベース端子部分806Aは統合端子808の接触部812(図8)と接続するための接触部814を含む。
【0055】
さらに、TCOデバイス100と同様に、TCOデバイス800のベース部802は、4つのパッド1008、1010、1012及び1014を含む。ベース端子の第1の部分806Aは、パッド1010及び1008を含み、一方でベース端子の第2の部分806Bはパッド1014及び1012を含む。例示的な一実施形態において、パッド1008、1010、1012及び1014は、表面実装リフロープロセスを用いてTCOデバイス800をPCBなどの基板に取り付けることを容易にする。
【0055】
このように、TCOデバイス800は、アーム端子及びバイメタルデバイスを単一の構造体へと統合して、デバイスを簡略化する。さらにベース端子806は、TCOデバイス100、400及び700のベース端子とは対照的に、2つの別個の部分へと分離している。
【0056】
図11は、例示的な実施形態による、図8のTCOデバイス800の断面図である。ベース端子806Aは、接触部1006(図10)によってデバイス800の中に包囲されており、一方で統合端子808は、接触部812(図8)によってデバイスの中に包囲されている。また、任意選択のPTCデバイスを収容するための第1の受容開口部1002、及び統合端子808を収容するための第2の受容開口部1004が図示されている。例示的な一実施形態において、統合端子808は、ベースモールド804の中でベース端子806に溶接されている。
【0057】
図12は、例示的な実施形態による、SMD技術として使用可能なTCOデバイス1200の分解斜視図を表している。TCOデバイス1200は、ベースモールド1204及びベース端子1206を含むベース部1202、任意選択のPTCデバイス1208、バイメタルディスク1210。アーム端子1212、上部プレート1214、及びオーバーモールド1216を特徴とする。例示的な実施形態において、ベースモールド1204及びオーバーモールド1216は、液晶ポリマー(liquid crystal polymer:LCP)を用いて作られており、ベース端子1206及びアーム端子1212は銅及び銀で作られており、上部プレート1214はステンレス鋼で作られている。本明細書に開示されている他のTCOデバイスのように、TCOデバイス1200は、過電流及び過温度の保護を他の回路コンポーネントに提供する。」
「【図8】
[図:0001422465000001.jpg]
」
「【図10】 ※ 特許異議申立書第25ページから抜粋
[図:0001422465000002.jpg]
」
「【図11】
[図:0001422465000003.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、甲1には次の事項が記載されていると認められる。
ア.表面実装リフロープロセスに適したサーマルカットオフ(TCO)デバイス(以下「TCOデバイス」という。)800は、接触部分814(1006)を有するベース端子部分806Aを備えている(段落【0053】、図8、10、11)。
また、段落【0025】の「例示的な一実施形態において、ベース端子106及びアーム端子110の両方は、銅で作られている。」との記載や段落【0057】の「ベース端子1206及びアーム端子1212は銅及び銀で作られており」との記載、及びマクロ電子デバイスに係る技術常識にかんがみれば、ベース端子部分806Aも金属材料からなることは、当業者にとって自明である。図8、10及び11からみて、ベース端子部分806Aは板状といえる。
イ.TCOデバイス800は、接触部分812を先端部に有するバイメタル材料からなる統合端子808を備えている(段落【0050】、図8、11)。図11から、接触部分812は、接触部分814(1006)と対向して配置される点が看て取れる。
段落【0056】の「例示的な一実施形態において、統合端子808は、ベースモールド804の中でベース端子806に溶接されている。」との記載、並びに図8及び10から、統合端子808とベース端子部分806Bとは溶接されるものといえる。ベース端子部分806Bは、ベース端子部分806Aと同様に(上記ア.参照)、金属材料からなるといえる。
また、図8、10及び11からみて、統合端子808もベース端子部分806Bも、板状といえる。
ウ.TCOデバイス800は、カバープレート810とベースモールド804を備えている(段落【0050】、図10)。ベースモールド804が、ベース端子部分806Aと、統合端子808が溶接されたベース端子部分806Bとを定位置に配置していることは、明らかである。
エ.さらに、TCOデバイス800について、以下の事項がいえる。
(ア)図10から、ベースモールド804は、ベース端子部分806Aに設けたパッド1008と1010、及びベース端子部分806Bに設けたパッド1012と1014とを底面の四隅に配置している点が看て取れる。
(イ)ベースモールド804は、PTCデバイスを収容するための第1の受容開口部1002、及び統合端子808を受容するための第2の受容開口部1004を有している(段落【0053】)。図11から、第1の受容開口部1002及び第2の受容開口部1004が、カバープレート810とベース端子部分806Aとで閉鎖される点が看て取れる。
(ウ)統合端子808は、過温度の状態などにより変形するバイメタル材料であり(段落【0050】、【0051】)、これが弾性を有することは当業者には明らかである。また、統合端子808は、第2の受容開口部1004に変形自在に受容される(段落【0053】、図11)。
(エ)図10及び11から、接触部分814(1006)は第2の受容開口部1004に露出するように配置される点が看て取れる。また、図11から、接触部分812は第2の受容開口部1004に配置される点が看て取れる。
(オ)ベース端子部分806Aは、接触部814(1006)を保持する部分(以下「接触部保持部」という。)とPTCデバイスを収容するための第1の受容開口部1002を閉塞する部分とからなるということができる(図10)。図10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部にはその両側にパッド1008と1010が設けられる点、ベース端子部分806Bにはその両側にパッド1012と1014が設けられる点が、それぞれ看て取れる。また、図8、10及び11に示されているベース端子部分806Aの接触部保持部とベース端子部分806Bとのべースモールド804に対する露出状況、ベースモールド804の「モールド」という名称、及びマクロ電子デバイスに係る技術常識にかんがみれば、ベース端子部分806Aの接触部保持部とベース端子部分806Bとが、ベースモールド804をモールド成形することによりベースモールド804に埋設されることは、当業者にとって自明である。
(カ)図10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部は、平面部、垂直部、及びパッド1008と1010を備え、当該平面部の両側に垂直部を介してパッド1008と1010を連結している点が看て取れる。
図10から、ベース端子部分806Bについても同様の構成が看て取れる。
ベース端子部分806Aの接触部保持部及びベース端子部分806Bは板状の金属材料からなる(上記ア.及びイ.参照)。
(キ)図10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部は、平面部、垂直部、及びパッド1008と1010とがクランク状に折れ曲がって繋がった形状を有しており、平面部と垂直部との間の折り曲げ線(以下、この折り曲げ線を申立人が図10で示すとおり「内部折曲ライン」という。)を、垂直部とパッド1008又は1010との間の折り曲げ線(同様に「外部折曲ライン」という。)を有している。そして、図10から、内部折曲ラインと外部折曲ラインが平行である点が看て取れる。
図10から、ベース端子部分806Bについても同様の構成が看て取れる。
(ク)図8、10及び11に示されているベース端子部分806Aの接触部保持部のべースモールド804に対する露出状況にかんがみれば、ベース端子部分806Aの接触部保持部は、垂直部をベースモールド804に埋設させているといえる。図8、10及び11から、ベース端子部分806Aの接触部保持部は、平面部をベースモールド804の第2の受容開口部1004に露出させて配置し、パッド1008と1010をベースモールドの底面に配置する点が看て取れる。
図8、10及び11から、ベース端子部分806Bについても同様の構成が看て取れる。
(ケ)図10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部の平面部は、TCOデバイス800の短辺に沿う方向でみた場合、両側の対向位置に配置している内部折曲ラインの間に接点部分8014を配置している点が看て取れる。
(コ)図8及び10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部の2つの内部折曲ラインとベース端子部分806Bの2つの内部折曲ラインと計4つの内部折曲ラインがベースモールド804の四隅の近傍に配置されている点が看て取れる。
(サ)図10からみて、TCOデバイス800が製造された状態において、ベース端子部分806Aの接触部保持部の2つの内部折曲ラインと、ベース端子部分806Bの2つの内部折曲ラインは、ベースモールド804の長辺に対して平行になるものと理解できる。
また、図10から、ベース端子部分806Aの接触部保持部はモールベース804の長辺方向に延びる中心線に対して対称な形状であると認められる。したがって、接触部分814(1006)の両側に配置されている一対の内部折曲ラインについて、その中央の垂線を考えた場合、一対の内部折曲ラインの中央の垂線は互いにほぼ重なることとなる。また、図10から、その内部折曲ラインの中央の垂線は、接触部分814(1006)の中心から変位した位置を通ることが理解できる。
以上を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
接触部分814(1006)を有する金属材料からなる板状のベース端子部分806Aと、
接触部分814(1006)と対向して配置される接触部分812を先端部に有する、バイメタル材料からなる板状の統合端子808と、当該統合端子808が溶接された金属材料からなる板状のベース端子部分806Bと、
カバープレート810と、ベースモールド804であって、前記ベース端子部分806Aと、前記統合端子808が溶接された前記ベース端子部分806Bとを定位置に配置してなるベースモールド804とを備えた、表面実装リフロープロセスに適したTCOデバイス800であって、
以下の構成を備えるTCOデバイス800。
(ア)前記ベースモールド804は、前記ベース端子部分806Aに設けたパッド1008と1010、及び前記ベース端子部分806Bに設けたパッド1012と1014とを底面の四隅に配置している。
(イ)前記ベースモールド804は、第1の受容開口部1002及び第2の受容開口部1004を備え、当該第1の受容開口部1002及び第2の受容開口部1004が前記カバープレート810と前記ベース端子部分806Aとで閉鎖される。
(ウ)前記統合端子808は、弾性を有し、前記第2の受容開口部1004に変形自在に受容される。
(エ)前記接触部分814(1006)は前記第2の受容開口部1004に露出するように配置され、前記接触部分812は前記第2の受容開口部1004内に配置されている。
(オ)前記ベース端子部分806Aは、接触部保持部を備えており、当該接触部保持部にはその両側にパッド1008と1010が設けられ、前記ベース端子部分806Bにはその両側にパッド1012と1014が設けられており、前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部とベース端子部分806Bとはベースモールド804に埋設される。
(カ)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部が平面部、垂直部、及び前記パッド1008~1014を備え、板状の金属材料からなり、当該平面部の両側に垂直部を介して前記パッド1008と1010を連結し、
前記ベース端子部分806Bが平面部、垂直部、及び前記パッド1012と1014を備え、板状の金属材料からなり、当該平面部の両側に垂直部を介して前記パッド1012と1014を連結している。
(キ)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部は、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、垂直部とパッド1008又は1010との間に外部折曲ラインをそれぞれ有し、当該内部折曲ラインと外部折曲ラインとが平行であり、
前記ベース端子部分806Bは、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、垂直部とパッド1012又は1014との間に外部折曲ラインをそれぞれ有し、当該内部折曲ラインと外部折曲ラインとが平行である。
(ク)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部は、前記垂直部を前記ベースモールド804に埋設して、前記平面部を前記ベースモールド804の前記第2の受容開口部1004に露出させて配置し、前記パッド1008と1010を前記ベースモールドの前記底面に配置し、
前記ベース端子部分806Bは、前記垂直部を前記ベースモールド804に埋設して、前記平面部を前記ベースモールド804の前記第2の受容開口部1004に露出させて配置し、前記パッド1012と1014を前記ベースモールド804の前記底面に配置している。
(ケ)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部の前記平面部は、TCOデバイス800の短辺に沿う方向でみた場合、両側の対向位置に配置している内部折曲ラインの間に接点部分814(1006)を配置している。
(コ)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持の2つの内部折曲ラインと、ベース端子部分806Bの2つの内部折曲ラインとの、計4つの内部折曲ラインがベースモールド804の四隅の近傍に配置されている。
(サ)前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持の2つの前記内部折曲ラインと、前記ベース端子部分806Bの2つの前記内部折曲ラインは、前記ベースモールド804の長辺に対して平行であり、
前記接触部分814(1006)の両側に配置されている、一対の前記内部折曲ラインは、その中央の垂線が互いにほぼ重なって、接触部分814(1006)の中心から変位している。
2.甲2
(1)甲2には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の2次電池パック等に内蔵される小型のブレーカー等に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。」
「【0010】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記ケースは、前記可動片及び前記熱応動素子を収容するための内部空間を有し、前記第1部は、前記底面とは反対側の第1面で前記内部空間に露出し、前記第2部は、前記第1面で前記内部空間に露出することなく、前記ケースに埋設されていることが望ましい。」
「【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図4は、ブレーカーの構成を示している。ブレーカー1は、一部がケース7から外部に露出する一対の端子片2,3を備える。端子片2,3が外部回路(図示せず)と電気的に接続されることにより、ブレーカー1は、電気機器の安全回路の主要部を構成する。
【0019】
ブレーカー1は、固定接点20と、端子片2,3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、端子片2,3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7等によって構成されている。ケース7は、ケース本体(第1ケース)71とケース本体71の上面に装着される蓋部材(第2ケース)81等によって構成されている。
【0020】
固定接点20は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により、形成されている。固定接点20は、端子片2の可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体71の内部に形成されている開口73aの一部からケース本体71の収容凹部73に露出されている。
【0021】
端子片2,3は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体71にインサート成形により埋め込まれている。
【0022】
端子片2は、ケース本体71の底面から第1高さh21の第1部21と、ケース本体71の底面から第2高さh22で外部回路と接続される第2部22とを有している。第1部21及び第2部22は、ケース本体71の底面と平行に配されている。第2高さh22は、第1高さh21よりも低く、本実施形態では、第2部22の底面は、ケース本体71の底面と一致している。
【0023】
固定接点20は、第1部21に形成されている。端子片2は、階段状(側面視でクランク状)に曲げられた段曲げ部25と、PTCサーミスター6を支持する支持部26とを有する。段曲げ部25は、第1部21と支持部26とを繋ぎ、第1部21と支持部26とを高さ違いに配置する。PTCサーミスター6は、支持部26に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)26aの上に載置されて、突起26aに支持される。」
「【0025】
第2部22は、第2面2Lでケース7の外部に露出している。これにより、第2部22と外部回路とが電気的に接続可能となる。第2部22と外部回路との接続には、例えば、はんだ付けの手法が適用される。第2部22と外部回路のランドとは、第2部22の第2面2Lを含む領域ではんだ付けされる。従って、ケース7から突出する第2部22の側面及び第1面2Uに、はんだが回り込んでいてもよい。
【0026】
端子片3は、ケース本体71の底面から第1高さh31の第1部31と、ケース本体71の底面から第2高さh32で外部回路と接続される第2部32とを有している。第1部31及び第2部32は、ケース本体71の底面と平行に配されている。第2高さh32は、第1高さh31よりも低く、本実施形態では、第2部32の底面は、ケース本体71の底面と一致している。
【0027】
端子片3の第1部31は、第1面3Uで可動片4と電気的に接続される。第1部31の第1面3Uは、ケース本体71の内部に設けられた開口73bからケース本体71の収容凹部73に露出し、可動片4と電気的に接続される。
【0028】
第2部32は、第2面3Lでケース7の外部に露出している。これにより、端子片2と同様に、第2部32と外部回路とが電気的に接続可能となる。
【0029】
可動片4は、銅等を主成分とする板状の金属材料をプレス加工することにより形成されている。可動片4は、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0030】
可動片4の一端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点20と同等の材料によって可動片4の第2面に形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0031】
可動片4の他端部には、端子片3の第1部31と電気的に接続される接続部42が形成されている。端子片3の第1部31と可動片4の接続部42とは、レーザー溶接によって固着されている。レーザー溶接とは、レーザー光をワーク(本実施形態では、端子片3及び可動片4が相当)に照射し、ワークを局部的に溶融及び凝固させることによってワーク同士を接合する溶接手法である。レーザー光が照射されたワークの表面には、他の溶接手法(例えば、ジュール熱を利用する抵抗溶接)による溶接痕とは異なる形態のレーザー溶接痕が形成される。」
「【0033】
接続部42において端子片3の第1部31と固着されることにより可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点20の側に押圧されて接触し、端子片2と可動片4とが通電可能となる。可動片4と端子片3とは、第1部31及び接続部42において電気的に接続されているので、端子片2と端子片3とが通電可能となる。」
「【0038】
ケース本体71には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0039】
蓋部材81には、カバー片9がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片9は、上述した銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片9は、図2及び図3に示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材81のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。カバー片9の外面側には、樹脂が配されている。
【0040】
図1に示すように、端子片2,3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体71の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材81が、ケース本体71に装着される。ケース本体71と蓋部材81とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体71と蓋部材81とは、それぞれの外縁部の全周に亘って連続的に接合され、ケース7の気密性が向上する。これにより、収容凹部73がもたらすケース7の内部空間は密閉され、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等の部品がケース7の外部の雰囲気から遮断され、保護されうる。」
「【0044】
図4は、端子片2,3を示している。以下、端子片2,3の構成について、詳細に説明する。
【0045】
端子片2は、上述した第1部21及び第2部22と、第1部21と第2部22とを繋ぐ第3部23と、第1部21と第3部23とが交差する領域に形成された第1曲げ部23aと、第2部22と第3部23とが交差する領域に形成された第2曲げ部23bとを有する。
【0046】
第2部22は、一対設けられている。各第2部22は、第1部21を挟んで、第2方向D2の両側に位置されている。第1曲げ部23aにおいて端子片2は、第1面2Uが突出するように第1曲げ方向(峰状)に曲がっている。第2曲げ部23bにおいて端子片2は、第2面2Lが突出するように第2曲げ方向(谷状)に曲がっている。すなわち、第1曲げ部23aと第2曲げ部23bとは、反対の曲げ方向に曲がっている。これにより、第1部21、及び第2部22が、第3部23を挟んで高さ違いの階段状に形成される。
【0047】
第1曲げ部23a及び第2曲げ部23bは、第1方向D1と平行にのびている。これにより、第2部22が第1部21から第1方向D1とは垂直な第2方向D2にのびる。従って、端子片2の第1方向D1の長さ寸法を容易に小さくすることが可能となり、ひいてはブレーカー1の小型化を図ることができる。
【0048】
同様に、端子片3は、上述した第1部31及び第2部32と、第1部31と第2部32とを繋ぐ第3部33と、第1部31と第3部33とが交差する領域に形成された第1曲げ部33aと、第2部32と第3部33とが交差する領域に形成された第2曲げ部33bとを有する。
【0049】
第2部32は、一対設けられている。各第2部32は、第1部31を挟んで、第2方向D2の両側に位置されている。第1曲げ部33aにおいて端子片3は、第1面3Uが突出するように第1曲げ方向(峰状)に曲がっている。第2曲げ部33bにおいて端子片3は、第2面3Lが突出する第2曲げ方向(谷状)に曲がっている。すなわち、第1曲げ部33aと第2曲げ部33bとは、逆の曲げ方向に曲がっている。これにより、第1部31、及び第2部32が、第3部33を挟んで高さ違いの階段状に形成される。
【0050】
第1曲げ部33a及び第2曲げ部33bは、第1方向D1と平行にのびている。これにより、第2部32が第1部31から第1方向D1とは垂直な第2方向D2にのびる。従って、端子片3の第1方向D1の長さ寸法を容易に小さくすることが可能となり、ひいてはブレーカー1の小型化を図ることができる。」
「【0052】
端子片2は、第3部23から第2部22に亘って、第1面2Uで収容凹部73に露出することなく、ケース本体71に埋設されている。これにより、端子片2がケース本体71に強固に固定されると共に、収容凹部73の気密性が高められる。
【0053】
同様に、端子片3は、第3部33から第2部32に亘って、第1面3Uで収容凹部73に露出することなく、ケース本体71に埋設されている。これにより、端子片3がケース本体71に強固に固定されると共に、収容凹部73の気密性が高められる。」
「【図1】
[図:0001422465000004.jpg]
」
「
[図:0001422465000005.jpg]
」
「【図4】 ※ 点線四角、矢印、用語は当審が付した。
[図:0001422465000006.jpg]
」
「【図6】
[図:0001422465000007.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、甲2には次の事項が記載されていると認められる。
ア.段落【0001】及び【0005】の記載から、ブレーカー1は小型のブレーカー1といえる。そして、段落【0005】の「携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカー」との記載及び段落【0025】の記載から、ブレーカー1が表面実装可能なブレーカーであることは当業者には明らかである。
ブレーカー1は、固定接点20を有する端子片2を備えている(段落【0019】、【0020】)。また、端子片2は金属板からなる(段落【0021】)。
イ.ブレーカー1は、可動接点41を先端部に有する可動片4を備えている(段落【0019】)。可動接点41は、固定接点20に対向する位置に配置される(段落【0020】、図2、3)。段落【0031】並びに図2及び3から、可動片4と端子片3とは溶接されるものといえる。また、可動片4と端子片3は金属板からなる(段落【0021】、【0029】)。
ウ.ブレーカー1は、ケース7を備えている(段落【0019】)。ケース7が端子片2、可動片4が溶接された端子片3を定位置に配置していることは、自明である。
エ.さらに、ブレーカー1について、以下の事項がいえる。
(ア)図6から、端子片2に設けた外部回路と接続される第2部22と、端子片3に設けた外部回路と接続される第2部32とをケースの底面の四隅に配置している点が看て取れる。段落【0025】、【0028】の記載から、第2部22と第2部32は、はんだ付けにより外部回路に接続されるものといえる。
(イ)ケース7は、密閉される内部空間を有している(段落【0040】、図2)。
(ウ)可動片4は、先端部に可動接点41を有し(段落【0019】)、弾性変形する弾性部43を備えている(段落【0033】)。可動片4は、ケース7の内部空間に変形自在に収容される(段落【0038】、【0040】、図2、3)。
(エ)図1から、固定接点20は内部空間に露出するように配置される点が看て取れる。また、図2及び3から、可動接点41が内部空間に配置される点が看て取れる。
(オ)図4から、端子片2は、第1部21と第2部22を含む固定接点20を保持する部分(以下「固定接点保持部」という。)とPTCサーミスター6を支持する支持部26とからなるということができる。図4から、端子片2の固定接点保持部には、両側に第2部22が設けられる点が看てとれる。
図4及び段落【0026】から、端子片3には、両側に第2部32が設けられているといえる。
段落【0021】及び図1から、端子片2の固定接点保持部と端子片3は、インサート成形によりケース7に埋め込まれるといえる。
(カ)段落【0045】及び図4から、端子片2の固定接点保持部は、第1部21と垂直方向に延びる第3部23と前記第2部22を備えているといえる。また、端子片2の固定接点保持部は金属板からなる(上記ア.参照)。さらに、第1部分21の両側に第3部23を介して第2部22が連結されている(図4)。
また、端子片3についても、端子片2の固定接点保持部と同様のことがいえる(段落【0048】、図4、上記イ.)。
(キ)段落【0046】及び図4から、端子片2の固定接点保持部は、第1部21と第3部23との間に第1曲げ部23aを設け、第3部23と前記第2部22との間に第2曲げ部23bを設けている点が看て取れる。また、前記第1曲げ部23aと第2曲げ部23bは平行である(段落【0047】、図4)。
また、端子片3についても、端子片2の固定接点保持部と同様のことがいえる(段落【0049】、図4、段落【0050】)。
(ク)端子片2の固定接点保持部は、その第3部23をケース7に埋設し(段落【0052】)、その第1部21を内部空間に露出させ(段落【0010】、図1)、第2部分22をケース7の底面に配置している(図6)。
端子片3についても同様のことがいえる(段落【0053】、【0010】、図1、図6)。
(ケ)図4から、端子片2の固定接点保持部の第1部21は、両側の対向位置に配置している第1曲げ部23aの間に固定接点20を配置している点が看て取れる。
(コ)図1、4及び6から、端子片2の固定接点保部の2つの第1曲げ部23aと、端子片3の2つの第1曲げ部33aとの、計4つの第1曲げ部がケース7の四隅の近傍に配置されるものといえる。
(サ)図4からみて、ケース7をモールド成形した状態において、端子片2の固定接点保部の2つの第1曲げ部23aと端子片3の2つの第1曲げ部33aは、ケース7の長手方向であるD1方向に対して平行となることが理解できる。
また、図4から、端子片2の固定接点保部は、ケース7の長手方向に延びる中心線に対して対称な形状であると認められる。したがって、固定接点20の両側に配置されている一対の第1曲げ部23aについて、その中央の垂線を考えた場合、一対の第1曲げ部23aの中央の垂線は互いにほぼ重なることとなる。
また、図4から、その第1曲げ部23の中央の垂線は、固定接点20のほぼ中央を通ることが理解できる。
以上を総合すると、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
固定接点20を有する金属板からなる端子片2と、
前記固定接点と対向して配置される可動接点41を先端部に有する金属板からなる可動片4と、当該可動片4が溶接された金属板からなる端子片3と、
前記端子片2と、前記可動片4が溶接された前記端子片3とを定位置に配置してなるケース7とを備えた、表面実装可能な小型のブレーカー1であって、
以下の構成を備える小型のブレーカー1。
(ア)前記ケース7は、前記端子片2に設けたはんだ付けにより外部回路と接続される第2部22と、前記端子片に設けたはんだ付けにより外部回路と接続される第2部32とを底面の四隅に配置している。
(イ)前記ケース7は密閉された内部空間を有している。
(ウ)前記可動片4は、先端部に前記可動接点41を有し、弾性変形する弾性部43を備え、前記ケース7の収容空間に変形自在に収容されている。
(エ)前記固定接点20は前記内部空間に露出するように配置され、前記可動接点41は前記内部空間に配置されている。
(オ)前記端子片2は固定接点保持部を備えており、当該固定端子保持部にはその両側に第2部22が設けられ、前記端子片3にはその両側に第2部32が設けられ、前記端子片2の前記固定端子保持部と前記端子片3はインサート成形によりケースに埋め込まれる。
(カ)前記端子片2の前記固定接点保持部は、第1部21と垂直方向に延びる第3部23と前記第2部22を備え、金属板からなり、前記第1部21の両側に前記第3部23を介して前記第2部22を連結しており、
前記端子片3は、第1部31と垂直方向に延びる第3部33と前記第2部32を備え、金属板からなり、前記第1部31の両側に前記第3部33を介して第2部32を連結している。
(キ)前記端子片2の前記固定接点保持部は、前記第1部21と前記第3部23との間に第1曲げ部23aを、前記第3部23と前記第2部22との間に第2曲げ部23bを設けて、前記第1曲げ部23aと第2曲げ部23bとが平行であり、
前記端子片3は、前記第1部31と前記第3部33との間に第1曲げ部33aを、前記第3部33と前記第2部22との間に第2曲げ部33bを設けて、前記第1曲げ部33aと第2曲げ部33bとが平行である。
(ク)前記端子片2の前記固定接点保持部は、前記第3部23を前記ケース7に埋設し、前記第1部21を前記ケース7の前記内部空間に露出させて配置し、前記第2部22を前記ケース7の前記底面に配置し、
前記端子片3は、前記第3部33を前記ケース7に埋設し、前記第1部31を前記ケース7の前記内部空間に露出させて配置し、前記第2部32を前記ケース7の前記底面に配置している。
(ケ)前記端子片2の前記固定接点保持部の前記第1部21は、両側の対向位置に配置している前記第1曲げ部23aの間に固定接点20を配置している。
(コ)前記端子片2の前記固定接点保持部の2つの前記第1曲げ部23aと、前記端子片3の2つの前記第1曲げ部33aとの、計4つの第1曲げ部がケース7の四隅の近傍に配置されている。
(サ)前記端子片2の前記固定接点保持部の2つの前記第1曲げ部23aと前記端子片3の2つの前記第1曲げ部33aは、前記ケース7の長辺方向であるD1方向に対して平行であり、
前記固定接点20の両側に配置されている一対の前記第1曲げ部23aは、その中央の垂線が互いにほぼ重なって、前記固定接点のほぼ中央を通る。
3.甲3
(1)甲3には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「【0002】 近年、電子機器の小型化が進んでおり、これらの電子機器には、電子機器における入力操作を行うためのプッシュスイッチ等が設けられているが、これらのプッシュスイッチも小型化や薄型化が求められている。」
「【0004】 このようなプッシュスイッチのケースはインサート成形により形成されており、例えば、2つの固定接点部を上下より金型で押さえた状態で、溶融した樹脂材料を流し込み硬化させることにより形成されている。具体的には、2つの固定接点部の下側が、ピンにより下方から支持され、2つの固定接点部の上側は、上側の金型により押さえられた状態で、樹脂材料が供給されることにより形成される。このためインサート成形により形成されたケースの樹脂部材には、2つの固定接点部の下側に、下方から支持していたピンの形状に対応した形状の貫通穴が形成される。尚、2つの固定接点部の上側は、上側の金型により押さえられた部分が露出している。
【0005】 このように作製されたプッシュスイッチは、ケースから露出している固定接点部の外部端子を電子機器等の電極端子等にハンダ付けすることにより取り付けることができる。」
「【0007】 ところで、インサート成形により形成されたケースでは、様々な理由により、固定接点部と樹脂部材との間に僅かな隙間が生じる場合がある。一方、プッシュスイッチをハンダ付けする際にはフラックスが用いられるが、このフラックスは加熱されると、粘性が低くなり流動性が高くなる。このため、ハンダ付けの際に、フラックスが、ケースの裏側から、貫通穴を通り、固定接点部の表側まで濡れ広がる場合がある。ハンダ付けをした後は、加熱されなくなるため、フラックスは樹脂状に固まるが、このように固まったフラックスは絶縁性が高い。従って、固まったフラックスにより固定接点部の表面が覆われてしまうと、固定接点部と可動接点とが電気的に接続されなくなり、スイッチとして機能しないため不良となる場合がある。
【0008】 このため、ハンダ付けする際に、フラックスが固定接点部の表面まで回り込まない構造のプッシュスイッチが求められている。
【0009】 本実施の形態の一観点によれば、金属により形成された変形可能な可動接点と、中央固定接点部及び周辺固定接点部と樹脂部材とが一体化され、前記可動接点が入る凹部が形成されたケースと、を有し、前記ケースの前記凹部の底面では、前記中央固定接点部及び前記周辺固定接点部の表面が露出しており、前記中央固定接点部は中央接点が設けられており、前記中央接点の周囲には延設部が設けられており、前記中央固定接点部の前記延設部の裏面側には、前記樹脂部材に貫通孔が形成されていることを特徴とする。」
「【0023】 次に、図5及び図6に示されるように、周辺固定接点部60について説明する。周辺固定接点部60も、中央固定接点部50と同様に、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ等の加工をすることにより形成されている。周辺固定接点部60は、中央固定接点部50の中央部分50aよりも、X1方向の側には第1の周辺接点61が設けられており、X2方向の側には第2の周辺接点62が設けられている。具体的には、周辺固定接点部60は、延設支持部55よりも、X1方向の側には第1の周辺接点61が設けられており、延設支持部56よりも、X2方向の側には第2の周辺接点62が設けられている。周辺固定接点部60の長手方向、即ち、X1-X2方向の両端には端子部63及び64が設けられている。第1の周辺接点61及び第2の周辺接点62は、上側(Z1方向の側)に凸状に加工することにより形成されており、第1の周辺接点61、第2の周辺接点62、端子部63及び64は、接続部分65により接続されている。」
「【0028】 ところで、ケース30は、インサート成形により形成されており、具体的には、中央固定接点部50及び周辺固定接点部60が表面側を金型等により、裏面側をピンにより支持されている状態で溶融した樹脂材料を流し込むことにより形成されている。このため、図10に示されるように、ケース30の裏面32には、中央固定接点部50及び周辺固定接点部60を裏面側より支持していたピンにより貫通孔81~84、開口部85~88が形成される。即ち、中央固定接点部50及び周辺固定接点部60の裏面側の樹脂部材70には、貫通孔81~84、開口部85~88が形成される。図11は、インサート成形により形成されたケース30より、中央固定接点部50及び周辺固定接点部60を取り除いた状態の樹脂部材70を表面側から見た斜視図である。尚、貫通孔81、82は、中央固定接点部50の裏面側に形成され、貫通孔83、84は、周辺固定接点部60の裏面側に形成されている。」
「【0036】 このため、もし、貫通孔81にフラックスが進入したとしても、フラックスは、図15の破線矢印Bに示されるように、貫通孔81より中央固定接点部50の裏側と樹脂部材70との間の隙間を左側に回り込んだ後、端部55aを回り込み、更に、中央固定接点部50の表側と樹脂部材70との間の隙間を右側に回り込まなければ、第1の中央接点51や第2の中央接点52には到達しない。同様に、貫通孔82にフラックスが進入したとしても、フラックスは、図15の破線矢印Cに示されるように、貫通孔82より中央固定接点部50の裏側と樹脂部材70との間の隙間を右側に回り込んだ後、端部56aを回り込み、更に、中央固定接点部50の表側と樹脂部材70との間の隙間を左側に回り込まなければ、第1の中央接点51や第2の中央接点52には到達しない。
【0037】 本実施の形態においては、延設支持部55は、中央固定接点部50の中央部分50aの他の部分よりも、第1の中央接点51や第2の中央接点52から端部55aまでの距離が長く形成されている。このため、フラックスが進入しても進入経路が長く、フラックスが第1の中央接点51や第2の中央接点52に容易に到達することができない。同様に、延設支持部56は、中央固定接点部50の中央部分50aの他の部分よりも、第1の中央接点51や第2の中央接点52から端部56aまでの距離が長く形成されている。このため、フラックスが進入しても進入経路が長く、フラックスが第1の中央接点51や第2の中央接点52に容易に到達することができない。
【0038】 また、本実施の形態においては、延設支持部55の端部55aの近傍には、折り曲げ部55bが形成されている。折り曲げ部55bは、金属板を折り曲げることにより形成されているため、平らではなく曲げられている面を有している。このように、曲げられた面では、平らな面よりもフラックスの濡れ広がりが抑制されるため、フラックスが第1の中央接点51や第2の中央接点52に到達することを防ぐことができる。また、延設支持部56の端部56aの近傍には、折り曲げ部56bが形成されている。折り曲げ部56bは、金属板を折り曲げることにより形成されているため、平らではなく曲げられている面を有している。このように、曲げられた面では、平らな面よりもフラックスの濡れ広がりが抑制されるため、フラックスが第1の中央接点51や第2の中央接点52に到達することを防ぐことができる。」
「【図6】 ※点線四角、引出線、用語は当審が付した。
[図:0001422465000008.jpg]
「【図15】
[図:0001422465000009.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から、甲3には次の事項が記載されていると認められる。
・プッシュスイッチの周辺固定接点部60は金属板を打ち抜き、折り曲げ加工して形成される(段落【0023】)、また、このプッシュスイッチの周辺固定接点部60は、ケース30をインサート成形することでケースに埋設されるものである(段落【0028】)。
・周辺固定接点部60は、2つの端子部63及び64間を接続するようにケース30の長辺に沿って延びる接続部分65を有し(段落【0023】、図6)、その接続部分の中央付近と第1の周辺接点61(又は第2の周辺接点62)が配置された平面部とを連結するようにケース30の長辺に対して傾斜して延びる部分(以下「連結部」という。)を有している(図6)。また、段落【0005】の記載及び電子デバイスに係る技術常識にかんがみれば、2つの端子部63及び64がハンダ付けされることは明らかである。
・図6からは、第1の周辺接点61(又は第2の周辺接点62)が配置された平面部と連結部の間に垂直部がある点、この平面部と垂直部との間の第1の折り曲げ線と、垂直部と連結分との間の第2の折り曲げ線とを有する点、第1の周辺接点61(又は第2の周辺接点62)が配置された平面部と垂直部との間の第1の折り曲げ線が、ケース30の中心に向かうよう、ケース30の長辺に対して傾斜して配置されている点が、それぞれ看て取れる。
以上を総合すると、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲3記載の技術的事項]
金属板を打ち抜き、折り曲げ加工して形成されて、ケース30に埋設されるプッシュスイッチの周辺固定接点部60であって、
はんだ付けされる2つの端子部63及び64の間を接続するように前記ケース30の長辺に沿って延びる接続部分65を有し、当該接続部分の中央付近と第1の周辺接点61、又は第2の周辺接点62が配置された平面部とを連結するように前記ケース30の長辺に対して傾斜して延びる連結部を有する形状をし、
前記第1の周辺接点61、又は第2の周辺接点62が配置された前記平面部と前記連結部の間に垂直部があり、前記平面部と前記垂直部との間の第1の折り曲げ線と、前記垂直部と前記連結部との間の第2の折り曲げ線とを有し、前記平面部と前記垂直部との間の前記第1の折り曲げ線が、ケース30の長辺に対して傾斜して配置されている、プッシュスイッチの周辺固定接点部60。
4.甲4
甲4には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「【0020】
図2乃至図4は、ブレーカー1の構成を示している。ブレーカー1は、固定接点21及び端子22を有する固定片2と、端子32を有する端子片3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター(第2正特性サーミスター)6と、固定片2、端子片3と、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0021】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。」
「【0024】
端子片3は、固定片2と同様に、銅等を主成分とする金属板をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。端子片3の一端には外部回路と電気的に接続される端子32が形成され、他端側には、可動片4と電気的に接続される接続部33が形成されている。端子32はケース本体7の端縁から外側に突き出されている。接続部33は、ケース本体7の内部に設けられた開口73bから露出し、可動片4と電気的に接続される。」
「【0036】
図2に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。これにより、リフロー方式によるはんだ付け工程で、ケース10の内部にフラックスが侵入することが防止され、熱応動素子5等を構成する金属の化学的安定性を高めることが可能となる。」
「【図2】
[図:0001422465000010.jpg]
」
5.甲5
甲5には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「ハンダフラックスは電気絶峠物であるため、ここに接点、導電部の電気的接続に支障を来す原因となるものであり、この現象は接点間接触圧力の小さい、電圧の低いこの種の小型開閉器1にあって最も端的に現れ、通電時にフラックスにより絶縁膜を破壊できず接触不良を起こしていたのである。
本考案は従来のこの種の欠点を改善しよりとするものであり、ハンダ付け端子板4の端子部bの板面に筺体2内に達することのないセレーシヨン8を形成したものである。」(第3ページ第16行~第4ページ第6行)
6.甲6
端子の形状やその折り曲げ部について記載したものではないので、甲6の摘記は割愛する。
7.甲7
甲7には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。)。
「【0021】
図1に示されるように、ブレーカー1は、固定接点21及び端子22を有する第1端子片(固定片)2と、端子32を有する第2端子片3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、第1端子片2、第2端子片3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1樹脂ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2樹脂ケース)8等によって構成されている。
【0022】
第1端子片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。
【0023】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により、形成されている。固定接点21は、第1端子片2の可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部からケース本体7の収容凹部73に露出されている。固定接点21と、端子22とは、ケース本体7に埋設された段曲げ部(図示せず)によって高さ違いに配置されている。」
「【図7】
[図:0001422465000011.jpg]
」
第5 当審の判断
1.申立理由1(進歩性)について
(1)甲1発明と主引例とした進歩性について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a.甲1発明の「接触部分814(1006)」は、本件発明1の「固定接点」に相当する。甲1発明の「金属材料からなる板状のベース端子部分806A」は、本件発明1の「固定接点金属板」に相当する。
b.甲1発明の「接触部分814(1006)と対向して配置される」こと及び「接触部分812」は、本件発明1の「前記固定接点の対向位置に配置してなる」こと及び「可動接点」に相当する。甲1発明の「バイメタル材料からなる板状の統合端子808」とそれが溶接された「金属材料からなる板状のベース端子部分806B」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当する。
c.甲1発明の「カバープレート810」と「ベースモールド804」とを合わせたものが、本件発明1「ケース」に相当する。甲1発明の「ベースモールド804」が「前記統合端子808が溶接された前記ベース端子部分806Bとを定位置に配置してなる」ことが、本件発明1の「ケース」が「前記固定接点金属板と前記可動接点金属板を定位置に配置してなる」ことに相当する。
甲1発明の「表面実装リフロープロセスに適したTCOデバイス800」が、本件発明1の「SMDタイプのマイクロブレーカ」に相当する。
d.甲1発明のTCOデバイス800のさらに詳細な特定事項と本件発明1のSMDタイプのマイクロブレーカの発明特定事項との間に、以下の相当関係がいえる。
(a)甲1発明のパッド1008~1014は、甲1の段落【0028】及び【0055】から基板にはんだ付けされる部分であるといえる。そうすると、甲1発明の「前記ベース端子部分806Aに設けたパッド1008と1010」及び「前記ベース端子部分806Bに設けたパッド1012と1014」は、本件発明1の「前記固定接点金属板に設けているハンダ端子」及び「前記可動接点金属板に設けているハンダ端子」に相当する。
そして、甲1発明の「前記ベースモールド804」がバッド1008~1014を「底面の四隅に配置している」ことは、本件発明1の「前記ケース」がハンダ端子を「底面の四隅部に配置している」ことに相当する。
(b)甲1発明の「第1の受容開口部1002」と「第2の受容開口部1004」とからなる空間が、本件発明1の「中空部」に相当し、甲1発明の「前記ベースモールド804は、第1の受容開口部1002及び第2の受容開口部1004を備え」ることが、本件発明1の「前記ケースは内部に」「中空部を設けている」ことに相当する。甲1発明の「当該第1の受容開口部1002及び第2の受容開口部1004が前記カバープレート810と前記ベース端子部分806Aとで閉鎖される」ことは、本件発明1の「中空部」が「閉鎖構造」であることに相当する。
(c)甲1発明の「弾性を有する」「前記統合端子808」は、「接触部分814(1006)と対向して配置される接触部分812を先端部に有する」から、本件発明1の「先端部に前記可動接点を設けている弾性アーム板」に相当する。また、上記b.のとおり、甲1発明の「統合端子808」とそれが溶接された「ベース端子部分806B」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当するから、本件発明1の「前記統合端子808」は、本件発明1の「可動接点金属板」に「備え」られた「弾性アーム板」に相当する。
甲1発明の「前記統合端子808」が「前記第2の受容開口部1004に変形自在に受容される」ことは、本件発明1の「前記弾性アーム板は、前記ケースの前記中空部に変形自在に配置されている」ことに相当する。
(d)甲1発明の「前記接触部分814(1006)は前記第2の受容開口部1004に露出するように配置され」ることは、本件発明1の「前記固定接点」が「前記ケースの前記中空部に配置されている」ことに相当し、甲1発明の「前記接触部分812は前記第2の受容開口部1004内に配置されている」ことは、本件発明1の「前記可動接点は前記ケースの前記中空部に配置されている」ことに相当する。
(e)甲1発明の「前記ベース端子部分806A」が「備え」る「接触部保持部」は、「その両側にパッド1008と1010が設けられ」るともに、「ベースモールド804に埋設される」ものである。したがって、甲1発明の「その両側にパッド1008と1010が設けられ」、「ベースモールド804に埋設される」、「前記ベース端子部分806A」が備える「接触部保持部」は、本件発明1の「固定接点金属板」が「備える」「前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部」に相当する。
また、甲1発明の「その両側にパッド1012と1014が設けられ」、「ベースモールド804に埋設される」、「前記ベース端子部分806B」も、本件発明1の「前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部」に相当する。そして、上記b.のとおり、甲1発明の「統合端子808」とそれが溶接された「ベース端子部分806B」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当するから、甲1発明の「ベース端子部分806B」は、本件発明1の「可動接点金属板」が「備える」「埋設金属プレート部」に相当する。
(f)上記(e)とおり甲1発明の「前記ベース端子部分806A」が備える「接触部保持部」は、本件発明1の「固定接点金属板」が備える「埋設金属プレート部」に相当するから、これは同時に本件発明1の「前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部」に相当する。同様に、甲1発明の「前記ベース端子部分806B」は、本件発明1の「可動接点金属板」が備える「埋設金属プレート部」に相当するから、これは同時に本件発明1の「前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部」に相当する。
そうすると、甲1発明が、「前記ベース端子部分806A」が備える「接触部保持部」と「ベース端子部分806B」とを備えるという構成は、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部と、前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部とからなる」という構成に相当する。
(g)甲1発明の「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部が平面部、垂直部、及び前記パッド1008~1014を備え、板状の金属材料からなり、当該平面部の両側に垂直部を介して前記パッド1008と1010を連結」していること、及び「前記ベース端子部分806Bが平面部、垂直部、及び前記パッド1012と1014を備え、板状の金属材料からなり、当該平面部の両側に垂直部を介し前記パッド1012と1014を連結している」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、平面部と垂直部と前記ハンダ端子とからなる金属板からなり、前記平面部の両側に前記垂直部を介して前記ハンダ端子を連結している」ことに相当する。
(h)甲1発明の「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部とは、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、垂直部とパッド1010又は1012との間に外部折曲ラインをそれぞれ有し、当該内部折曲ラインと外部折曲ラインとが平行であ」ること、及び「前記ベース端子部分806Bは、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、垂直部とパッド1012又は1014との間に外部折曲ラインをそれぞれ有し、当該内部折曲ラインと外部折曲ラインとが平行である」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、前記垂直部と前記ハンダ端子との間に外部折曲ラインを設けて、前記内部折曲ラインと前記外部折曲ラインを平行姿勢に配置している」ことに相当する。
(i)甲1発明の「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部は、前記垂直部を前記ベースモールド804に埋設して、前記平面部を前記ベースモールド804の前記第2の受容開口部1004に露出させて配置し、前記パッド1008と1010を前記ベースモールドの前記底面に配置し」ていること、及び「前記ベース端子部分806Bは、前記垂直部を前記ベースモールド804に埋設して、前記平面部を前記ベースモールド804の前記第2の受容開口部1004に露出させて配置し、前記パッド1012と1014を前記ベースモールドの前記底面に配置している」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記垂直部を前記ケースに埋設して、前記平面部を前記ケースの前記中空部に配置して、前記ハンダ端子を前記ケースの前記底面に配置している」ことに相当する。
(j)上記(f)のとおり、甲1発明の「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部」が、本件発明1の「前記固定接点の埋設金属プレート部」に相当する。そして、甲1発明の「前記平面部は、TCOデバイス800の短辺に沿う方向でみた場合、両側の対向位置に配置している内部折曲ラインの間に接点部分814(1006)を配置している」ことは、本件発明1の「前記平面部は、両側の対向位置に配置している前記内部折曲ラインの間に前記固定接点を配置している」ことに相当する。
(k)甲1発明の「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部の2つの内部折曲ラインと、ベース端子部分806Bの2つの内部折曲ラインとの、計4つの内部折曲ラインがベースモールド804の四隅の近傍に配置されている」ことは、本件発明1の「前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、前記固定接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインと、前記可動接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインからなる4つの前記内部折曲ラインを、前記ケースの前記四隅部に配置している」ことに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とを対比すると両者は次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
固定接点を有する固定接点金属板と、
前記固定接点の対向位置に配置してなる可動接点を有する可動接点金属板と、
前記固定接点金属板と前記可動接点金属板を定位置に配置してなるケースとを備え、
さらに以下の(a)ないし(k)の全ての構成を備えるSMDタイプのマイクロブレーカ。
(a)前記ケースは、
前記固定接点金属板に設けているハンダ端子と、
前記可動接点金属板に設けているハンダ端子を底面の四隅部に配置している。
(b)前記ケースは内部に閉鎖構造の中空部を設けている。
(c)前記可動接点金属板は、先端部に前記可動接点を設けている弾性アーム板を備え、
前記弾性アーム板は、前記ケースの前記中空部に変形自在に配置されている。
(d)前記固定接点と前記可動接点は前記ケースの前記中空部に配置されている。
(e)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部を備える。
(f)前記埋設金属プレート部は、
前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部と、
前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部とからなる。
(g)前記埋設金属プレート部は、
平面部と垂直部と前記ハンダ端子とからなる金属板で、
前記平面部の両側に前記垂直部を介して前記ハンダ端子を連結している。
(h)前記埋設金属プレート部は、
前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、
前記垂直部と前記ハンダ端子との間に外部折曲ラインを設けて、
前記内部折曲ラインと前記外部折曲ラインを平行姿勢に配置している。
(i)前記埋設金属プレート部は、
前記垂直部を前記ケースに埋設して、
前記平面部を前記ケースの前記中空部に配置して、
前記ハンダ端子を前記ケースの前記底面に配置している。
(j)前記固定接点の埋設金属プレート部の前記平面部は、
両側の対向位置に配置している前記内部折曲ラインの間に前記固定接点を配置している。
(k)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記固定接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインと、
前記可動接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインからなる4つの前記内部折曲ラインを、
前記ケースの前記四隅部に配置している。
[相違点]
本件発明1は、「前記内部折曲ラインは、
前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の中心点に向かう方向に傾斜して、
前記固定接点の両側に配置されてなる一対の前記内部折曲ラインは、
中央の垂線の交点が前記固定接点の中心から変位している」のに対し、
甲1発明は、「前記ベース端子部分806Aの前記接触部保持部の2つの前記内部折曲ラインと、前記ベース端子部分806Bの2つの前記内部折曲ラインは、前記ベースモールド804の長辺に対して平行であり、
前記接触部分814(1006)の両側に配置されている、一対の前記内部折曲ラインは、その中央の垂線が互いにほぼ重なって、接触部分814(1006)の中心から変位している」点。
(イ)判断
a.相違点に対する検討
上記相違点について検討する。
甲3には、上記「第4」3.(2)のとおりの技術的事項が記載されている。
ここで、甲1発明の「ベース端子部分806A」と甲3記載の技術的事項における「周辺固定接点部60」とは、電子デバイスのケースに埋設される金属板から端子部品である点で共通しており、甲1発明の「内部折曲ライン」と甲3記載の技術的事項における「第1の折り曲げ線」とは、そのような金属板からなる端子部分の平面部と垂直部との間に設けられた折り曲げ線という点においては共通する。しかしながら、甲3記載の技術的事項において「第1の折り曲げ線」がケース30の長辺に対して傾斜した配置となっているのは、周辺固定接点部60においてその連結部がケース30の長辺に対して傾斜して延びる形状となっているからである。甲1発明のベース端子部分806Aの接触部保持部は、平面部に垂直部を介してはんだ付けされるパッド1008と1010が接続される形状であるのに対し、甲3記載の技術的事項の周辺固定接点部60は、第1の周辺接点61(又は及び第2の周辺接点62)が配置された平面部に垂直部を介して連結部が接続され、さらにその連結部が接続部分65の中央付近と接続され、またさらにその接続部分の端部にハンダ付けされる端子部63(又は端子部64)が接続される形状であり、甲1発明のベース端子部分806Aの接触部保持部の形状は、甲3記載の技術的事項の周辺固定接点部60の形状と基本的に異なっている。このような端子部品としての基本的な形状の違いにかんがみれば、甲1発明のベース端子部分806Aの接触部保持部の「内部曲折ライン」の配置に、甲3記載の技術的事項における周辺固定接点部60の「第1の折り曲げ線」の配置を適用する動機づけがあるとはいえない。
また甲2、4~7には、平面部と垂直部とハンダ端子とで構成される形状の金属板からなる端子部品において、平面部と垂直部との間の折り曲げ線がケースの中心に向かうよう、ケースの長辺又は短辺に対して傾斜させる点は記載されていなし、この点が、表面実装される電子デバイスの技術分野における周知技術であるとも認められない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を採用することにより、「内部折曲ラインL1をX軸方向に対し傾斜する非平行姿勢に配置することで、この方向に侵入するフラックスは、接点に向かう方向から接点に向かわない方向(図4、図5の矢印Xの方向)に向きを変えて、中空部20に侵入させることで、フラックス残渣が接点に付着する弊害を防止でき、フラックス残渣が接点に付着しないマイクロブレーカ100は、フラックス残渣に起因する信頼性の低下を防止できる」(本件特許明細書の段落【0037】)という、甲1発明及び甲2~7記載の技術的事項からは予測し得ない効果を奏する。
b.申立人の主張について
申立人は、「インサート成形では、金属端子と樹脂ケースとの間に、僅かな隙間が生じている場合があり、このような隙間からケースの内部空間(中空部)に侵入したフラックスが接点の腐食や接触不良の原因となる問題が指摘されている(必要であれば、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証参照)。」(特許異議申立書第84ページ第16~19行)と述べた上で、「してみると、甲1発明において、インサート成形の際に生ずる隙間からフラックスが侵入する課題に直面した当業者は、甲1発明に甲第3号証の記載事項を適用し、「(l-1)前記内部折曲ラインを、前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の中心点に向かう方向に傾斜」させるのは、容易に想到できたと考えるのが相当である。」と述べている。
上記申立人の主張について検討する。
フラックスが侵入するという課題に対応するために甲3記載のプッシュスイッチが採用している課題解決手段は、「中央固定接点部50の中央部分50aの他の部分よりも、第1の中央接点51や第2の中央接点52から端部55aまでの距離が長く形成」されるように「延設支持部55」を設けること(段落【0037】)や、「延設支持部55の端部55aの近傍に」「折り曲げ部55b」を形成すること(段落【0038】)である。甲3記載の第1の周辺接点61(又は第2の周辺接点62)が配置された平面部と連結部の間に垂直部や、その平面部と垂直部との間の第1の折り曲げ線に関し、これらとフラックスの侵入という課題の関係について、甲3には何ら記載がない。
そうすると、申立人が主張するように、甲3~6記載のようにケースの内部空間に侵入するフラックスの問題を当業者が認識していれば、甲1発明に甲3記載の「延設支持部55」を設けたり、それを折り曲げたりするという技術的事項を適用することは想起するかもしれないが、甲1発明の「内部曲折ライン」の配置に、甲3記載の「第1の折り曲げ線」の配置に係る技術的事項を適用するということを想起するとは認められない。
よって、申立人の主張は採用できない。
c.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~7記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ.本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1にさらに限定を付加したものであるから、上記ア.で検討したとおり、甲1発明及び甲2~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲2発明と主引例とした進歩性について
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a.甲2発明の「固定接点20」は、本件発明1の「固定接点」に相当する。甲2発明の「金属板からなる端子片2」は、本件発明1の「固定接点金属板」に相当する。
b.甲2発明の「前記固定接点と対向して配置される」こと及び「可動接点41」は、本件発明1の「前記固定接点の対向位置に配置してなる」こと及び「可動接点」に相当する。甲2発明の「金属板からなる可動片4」とそれが溶接された「金属板からなる端子片3」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当する。
c.甲2発明の「ケース7」が、本件発明1「ケース」に相当する。甲2発明の「前記端子片2と、前記可動片4が溶接された前記端子片3とを定位置に配置してなる」こと及び「ケース7」が、本件発明1の「前記固定接点金属板と前記可動接点金属板を定位置に配置してなる」こと及び「ケース」に相当する。
甲2発明の「表面実装可能な小型のブレーカー1」が、本件発明1の「SMDタイプのマイクロブレーカ」に相当する。
d.甲2発明の小型のブレーカー1のさらに詳細な特定事項と本件発明1のSMDタイプのマイクロブレーカの発明特定事項との間に以下の、相当関係が言える。
(a)甲2発明の「前記端子片2に設けたはんだ付けにより外部回路と接続される第2部22」及び「前記端子片3に設けたはんだ付けにより外部回路と接続される第2部32」はそれぞれ、本件発明1の「前記固定接点金属板に設けているハンダ端子」及び「前記可動接点金属板に設けているハンダ端子」に相当する。
そして、甲2発明の「前記ケース7」が第2部分22と第2部分32とを「底面の四隅に配置している」ことは、本件発明1の「前記ケース」がハンダ端子を「底面の四隅部に配置している」ことに相当する。
(b)甲2発明の「密閉された内部空間」は、本件発明1の「閉鎖構造の中空部」に相当する。甲2発明の「前記ケース7は密閉された内部空間を有している」ことが、本件発明1の「前記ケースは内部に閉鎖構造の中空部を設けている」ことに相当する。
(c)甲2発明の「先端部に前記可動接点41を有」することは、本件発明1の「先端部に前記可動接点を設けている」ことに相当し、甲2発明の「弾性変形する弾性部43を備え」た「可動片4」は、本件発明1の「弾性アーム板」に相当する。
また、上記b.のとおり、甲2発明の「可動片4」とそれが溶接された「端子片3」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当するから、甲2発明の「可動片4」は、本件発明1の「可動接点金属板」に「備え」られた「弾性アーム板」に相当する。
甲2発明の「前記可能片4」が「前記ケース7の収容空間に変形自在に収容されている」ことは、本件発明1の「前記弾性アーム板は、前記ケースの前記中空部に変形自在に配置されている」ことに相当する。
(d)甲2発明の「前記固定接点20は前記内部空間に露出するように配置され」ることは、本件発明1の「前記固定接点」が「前記ケースの前記中空部に配置されている」ことに相当し、甲2発明の「前記可動接点41は前記内部空間に配置されている」ことは、本件発明1の「前記可動接点は前記ケースの前記中空部に配置されている」ことに相当する。
(e)甲2発明の「前記端子片2」が「備え」る「固定接点保持部」は、「その両側に第2部22が設けられ」るともに、「インサート成形によりケースに埋め込まれる」ものである。したがって、甲2発明の「その両側に第2部22が設けられ」、「インサート成形によりケースに埋め込まれる」、「前記端子片2」が備える「固定接点保持部」は、本件発明1の「固定接点金属版」が「備える」「前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部」に相当する。
また、甲2発明の「その両側に第2部32が設けられ」、「インサート成形によりケースに埋め込まれる」、「前記端子片3」も、「前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部」に相当する。そして、上記b.のとおり。甲2発明の「可動片4」とそれが溶接された「端子片3」とを合わせたものが、本件発明1「可動接点金属板」に相当するから、甲2発明の「前記端子片3」は、本件発明1の「可動接点金属板」が「備える」「埋設金属プレート部」に相当する。
(f)上記(e)のとおり、甲2発明の「前記端子片2」が備える「固定接点保持部」は、本件発明1の「固定接点金属板」が備える「埋設金属プレート部」に相当するから、これは同時に本件発明1の「前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部」に相当する。同様に、本件発明1の「前記端子片3」は、本件発明1の「可動接点金属板」が備える「埋設金属プレート部」に相当するから、これは同時に本件発明1の「前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部」に相当する。
そうすると、甲2発明が、「前記端子片2」が備える「固定接点保持部」と「前記端子片3」とを備えるという構成は、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部と、前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部とからなる」という構成に相当する。
(g)甲2発明の「前記端子片2の前記固定接点保持部は、第1部21と垂直方向に延びる第3部23と前記第2部22を備え、金属板からなり、前記第1部21の両側に前記第3部23を介して前記第2部22を連結して」いること、及び「前記端子片3は、第1部31と垂直方向に延びる第3部33と前記第2部32を備え、金属板からなり、前記第1部31の両側に前記第3部33を介して第2部32を連結している」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、平面部と垂直部と前記ハンダ端子とからなる金属板からなり、前記平面部の両側に前記垂直部を介して前記ハンダ端子を連結している」ことに相当する。
(h)甲2発明の端子片2の「第1曲げ部23a」及び「第2曲げ部23b」とはそれぞれ、本件発明1の「内部折曲ライン」及び「外部折曲ライン」に相当する。同様に甲2発明の端子片3の「第1曲げ部33a」及び「第2曲げ部33b」とはそれぞれ、本件発明1の「内部折曲ライン」及び「外部折曲ライン」に相当する。
そうすると、甲2発明の「前記端子片2の前記固定接点保持部は、前記第1部21と前記第3部23との間に第1曲げ部23aを、前記第3部23と前記第2部22との間に第2曲げ部23bを設けて、前記第1曲げ部23aと第2曲げ部23bとが平行であ」ること、及び「前記端子片3は、前記第1部31と前記第3部33との間に第1曲げ部33aを、前記第3部33と前記第2部22との間に第2曲げ部33bを設けて、前記第1曲げ部33aと第2曲げ部33bとが平行である」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、前記垂直部と前記ハンダ端子との間に外部折曲ラインを設けて、前記内部折曲ラインと前記外部折曲ラインを平行姿勢に配置している」ことに相当する。
(i)甲2発明の「前記端子片2の前記固定接点保持部は、前記第3部23を前記ケース7に埋設し、前記第1部21を前記ケース7の前記内部空間に露出させて配置し、前記第2部22を前記ケース7の前記底面に配置し」ていること、及び「前記端子片3は、前記第3部33を前記ケース7に埋設し、前記第1部31を前記ケース7の前記内部空間に露出させて配置し、前記第2部32を前記ケース7の前記底面に配置している」ことは双方とも、本件発明1の「前記埋設金属プレート部は、前記垂直部を前記ケースに埋設して、前記平面部を前記ケースの前記中空部に配置して、前記ハンダ端子を前記ケースの前記底面に配置している」ことに相当する。
(j)上記(f)のとおり、甲2発明の「前記端子片2の前記固定接点保持部」が、本件発明1の「前記固定接点の埋設金属プレート部」に相当する。そして、甲2発明の「前記第1部21は、両側の対向位置に配置している前記第1曲げ部23の間に固定接点20を配置している」ことは、本件発明1の「前記平面部は、両側の対向位置に配置している前記内部折曲ラインの間に前記固定接点を配置している」ことに相当する。
(k)甲2発明の「記端子片2の前記固定接点保持部の2つの前記第1曲げ部23aと、前記端子片3の2つの前記第1曲げ部33aとの、計4つの第1曲げ部がケース7の四隅の近傍に配置されている」ことは、本件発明1の「前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、前記固定接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインと、前記可動接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインからなる4つの前記内部折曲ラインを、前記ケースの前記四隅部に配置している」ことに相当する。
以上のことから、本件発明2と甲1発明とを対比すると両者は次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
固定接点を有する固定接点金属板と、
前記固定接点の対向位置に配置してなる可動接点を有する可動接点金属板と、
前記固定接点金属板と前記可動接点金属板を定位置に配置してなるケースとを備え、
さらに以下の(a)ないし(k)の全ての構成を備えるSMDタイプのマイクロブレーカ。
(a)前記ケースは、
前記固定接点金属板に設けているハンダ端子と、
前記可動接点金属板に設けているハンダ端子を底面の四隅部に配置している。
(b)前記ケースは内部に閉鎖構造の中空部を設けている。
(c)前記可動接点金属板は、先端部に前記可動接点を設けている弾性アーム板を備え、
前記弾性アーム板は、前記ケースの前記中空部に変形自在に配置されている。
(d)前記固定接点と前記可動接点は前記ケースの前記中空部に配置されている。
(e)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記ハンダ端子を両側に設けてなる埋設金属プレート部を備える。
(f)前記埋設金属プレート部は、
前記固定接点金属板に設けている固定接点の埋設金属プレート部と、
前記可動接点金属板に設けている可動接点の埋設金属プレート部とからなる。
(g)前記埋設金属プレート部は、
平面部と垂直部と前記ハンダ端子とからなる金属板で、
前記平面部の両側に前記垂直部を介して前記ハンダ端子を連結している。
(h)前記埋設金属プレート部は、
前記平面部と前記垂直部との間に内部折曲ラインを、
前記垂直部と前記ハンダ端子との間に外部折曲ラインを設けて、
前記内部折曲ラインと前記外部折曲ラインを平行姿勢に配置している。
(i)前記埋設金属プレート部は、
前記垂直部を前記ケースに埋設して、
前記平面部を前記ケースの前記中空部に配置して、
前記ハンダ端子を前記ケースの前記底面に配置している。
(j)前記固定接点の埋設金属プレート部の前記平面部は、
両側の対向位置に配置している前記内部折曲ラインの間に前記固定接点を配置している。
(k)前記固定接点金属板と前記可動接点金属板は、
前記固定接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインと、
前記可動接点の埋設金属プレート部の前記内部折曲ラインからなる4つの前記内部折曲ラインを、
前記ケースの前記四隅部に配置している。
[相違点]
本件発明1は、「前記内部折曲ラインは、
前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の中心点に向かう方向に傾斜して、
前記固定接点の両側に配置されてなる一対の前記内部折曲ラインは、
中央の垂線の交点が前記固定接点の中心から変位している」のに対し、
甲2発明は、「前記端子片2の前記固定接点保部の2つの前記第1曲げ部23aと前記端子片3の2つの前記第1曲げ部33aは、前記ケース7の長辺方向であるD1方向に対して平行であり、
前記固定接点20の両側に配置されている一対の前記第1曲げ部23aは、その中央の垂線が互いにほぼ重なって、前記固定接点のほぼ中央を通る」点。
(イ)判断
上記相違点について検討するに、上記(1)ア.(イ)と同様の理由により、甲2発明の「第1曲げ部23a」の配置に、甲3記載の技術的事項における「第1の折り曲げ線」の配置を適用する動機づけがあるとはいえない。
また甲1、4~7には、平面部と垂直部とハンダ端子とで構成される形状の金属板からなる端子部品において、平面部と垂直部との間の折り曲げ線がケースの中心に向かうよう、ケースの長辺又は短辺に対して傾斜させる点は記載されていなし、この点が、表面実装される電子デバイスの技術分野における周知技術であるとも認められない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を採用することにより、「内部折曲ラインL1をX軸方向に対し傾斜する非平行姿勢に配置することで、この方向に侵入するフラックスは、接点に向かう方向から接点に向かわない方向(図4、図5の矢印Xの方向)に向きを変えて、中空部20に侵入させることで、フラックス残渣が接点に付着する弊害を防止でき、フラックス残渣が接点に付着しないマイクロブレーカ100は、フラックス残渣に起因する信頼性の低下を防止できる」(本件特許明細書の段落【0037】)という、甲2発明及び甲1、3~7記載の技術的事項からは予測し得ない効果を奏する。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3~7記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ.本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1にさらに限定を付加したものであるから、上記ア.で検討したとおり、甲2発明及び甲1、3~7記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2.申立理由2(サポート要件)について
本件発明が解決しようとする課題は、「連結部はプラスチックのケースに埋設されるが、多量生産される全てのマイクロブレーカにおいて連結部とプラスチックのケースとの間の完全な気密状態は実現できない。この隙間は、例えばプラスチックと金属との熱膨張率の相違や、極めて小さい金属板を金型の定位置に保持してインサート成形する工程における相対的な位置ずれなどが原因で発生する。微細な隙間はリフローハンダ工程において、フラックスがケース中空部に侵入する経路となって、中空部に侵入したフラックス残渣がブレーカの信頼性を低下させる課題となっている。」(段落【0006】)という状況にかんがみ、「フラックス残渣による信頼性の低下を防止できるSMDタイプのマイクロブレーカを提供すること」(段落【0007】)である。
この課題を解決するための手段として、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものは、「固定接点5を設けている平面部2Fの両側に連結している一対の内部折曲ラインL1」を、「ケース1のX軸方向からケース1の底面1Fの中心点1C(対角線の交点)に向かう方向に傾斜する方向として、両側の内部折曲ラインL1の各中央における垂線の交点Mを固定接点5の中心からケース1のX軸方向(縦方向)に変位した位置と」すること(段落【0036】)であると認められる。
そして、本件発明1は上記「第2」のとおりであり、「(l)前記内部折曲ラインは、前記ケースのX軸方向から前記ケースの前記底面の中心点に向かう方向に傾斜して、前記固定接点の両側に配置されてなる一対の前記内部折曲ラインは、中央の垂線の交点が前記固定接点の中心から変位している」という発明特定事項を備えるものである。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載において本件発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
また、本件特許の請求項2~6は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用している。したがって、本件発明2~6についても、同様に発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
よって、本件発明1~6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
申立人の主張について検討する。
申立人は特許異議申立書において次のとおり主張している。(下線は当審が付したもの。)
(1)本件特許発明1のように「内部折曲ラインを、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」ように構成したとしても、内部折曲ラインの中央以外、特に埋設金属プレートの側縁近傍に存在する「微細な隙間」からのフラックスの侵入(上記図中矢印Z1参照)を阻止することができない。(特許異議申立書第95ページ下から2~5行)
(2)「微細な隙間」が形成される方向は、内部折曲ラインの垂線方向に限られないことから、内部折曲ラインを越えて侵入したフラックスの進行方向は、内部折曲ラインの垂線方向に限定されないというのが技術常識である。そうすると、垂線の交点と固定接点の中心との位置関係を特定するのみでは、フラックスの侵入方向を制御できない。(特許異議申立書第95ページ下から1行目~第96ページ4行)
(3)本件特許発明1では、「中空部」と「内部折曲ラインの中央における垂線」との関係が特定されていない。従って、内部折曲ラインの中央から垂線に沿ってフラックスが侵入すると仮定したとしても、内部折曲ラインの中央から垂線に沿って「中空部」にフラックスが侵入(上記図中矢印Z2参照)することを阻止することができない。なお、ひとたび「中空部」に侵入したフラックスは、その流動性の高さから(必要であれば、甲第3号証の段落「0007」参照)容易に固定接点に達するというのが技術常識である。
上記申立人の主張について検討する。
・上記(1)及び(2)について
本件発明1は、「したがって、内部折曲ラインL1をX軸方向に対し傾斜する非平行姿勢に配置することで、この方向に侵入するフラックスは、接点に向かう方向から接点に向かわない方向(図4、図5の矢印Xの方向)に向きを変えて、中空部20に侵入させることで、フラックス残渣が接点に付着する弊害を防止」(本件特許明細書段落【0037】)するものである。
申立人が主張するように、たとえ「内部折曲ラインを、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」という構成を採用したとしても、特許異議申立書第95ページの図中の矢印Z1のように、埋設金属プレートの側縁から侵入するフラックスも想定されるし、侵入したフラックスの進行方向も制御できるとは限らない。
しかしながら、本件発明1において、仮に、フラックスの侵入経路の一部が固定接点に向かう方向の経路であり、そこから侵入したフラックスの進行方向が制御できないとしても、本件特許の図面の図13に示される従来例のように、フラックスの侵入経路が全てが固定接点に向かう方向の経路であるものと比較すれば、「内部折曲ラインを、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」という構成を採用した本件発明の方が、侵入したフラックスが固定接点に向かいにくくなっている。
すなわち、本件発明1において、仮に、矢印Z1のように埋設金属プレートの側縁から侵入するフラックスの進行方向が制御できない場合があったとしても、本件発明1は、「内部折曲ラインを、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」という構成を採用することで、内部折曲ラインの垂線方向のフラックスの進行方向が制御されておりフラックス残渣による信頼性の低下を防止するという課題の解決できることを当業者が認識することができるといえる。
・上記(3)について
本件発明1は、本件特許明細書段落【0037】の記載からも明らかとおり、中空部に侵入したとしても、その侵入したフラックスが固定接点に向かわないようにするというものである。すなわち本件発明は、中空部へのフラックスが侵入する可能性を前提としており、中空部へのフラックスの侵入を完全に阻止することを課題解決手段とするものではない。
したがって、本件発明1が「中空部」と「内部折曲ラインの中央における垂線」との関係が特定されていないことにより、「内部折曲ラインの中央における垂線」に沿って「中空部」にフラックスが侵入することを阻止できないものとなっていたとしても、そのことが、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないという理由にはならない。
以上のとおり、上記(1)~(3)の申立人の主張はいずれも採用できない。
したがって、上記当審の判断のとおり、本件発明1~6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
3.申立理由3(明確性)について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「内部折曲ラインは、ケースのX軸方向からケースの底面の中心点に向かう方向に傾斜して、固定接点の両側に配置されてなる一対の内部折曲ラインは、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」(以下「発明特定事項A」という。)との記載がある。
当該記載から、「内部折曲ライン」が「ケースのX軸方向からケースの底面の中心点に向かう方向に傾斜」するという事項は明確であるし、その事項によって、「一対の内部折曲ライン」の「中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」ということも明確である。そして、本件特許明細書段落【0037】にも記載されているとおり、その発明特定事項Aは、中空部にフラックスが侵入したとしても、その侵入したフラックスが固定接点に向かわないようにするためのものあることが理解でき、その技術的な意味においても不明確な点はない。
したがって、本件発明1は明確である。
また、本件特許の請求項2~6は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているが、本件発明2~6についても、同様に明確である。
よって、本件発明1~6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
申立人の主張について検討する。
申立人は、特許異議申立書において、次の3点を根拠として挙げた上で、「本件特許発明1-6は、発明特定事項の技術的意味を理解することができず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかである」(特許異議申立書第98ページ第4~6行)として、本件発明1~6が明確でないと主張している。(下線は当審が付したもの。)
(1)本件特許発明1のように「内部折曲ラインを、中央の垂線の交点が固定接点の中心から変位している」ように構成したとしても、内部折曲ラインの中央以外、特に埋設金属プレートの側縁近傍に存在する「微細な隙間」からのフラックスの侵入を阻止することができない。(特許異議申立書第97ページ16~19行)
(2)「微細な隙間」が形成される方向は、内部折曲ラインの垂線方向に限られないことから、内部折曲ラインを越えて侵入したフラックスの進行方向は、内部折曲ラインの垂線方向に限定されないというのが技術常識である。そうすると、垂線の交点と固定接点の中心との位置関係を特定するのみでは、フラックスの侵入方向を制御できない。(特許異議申立書第97ページ20~24行)
(3)本件特許発明1では、「中空部」と「内部折曲ラインの中央における垂線」との関係が特定されていない。従って、内部折曲ラインの中央から垂線に沿ってフラックスが侵入すると仮定したとしても、内部折曲ラインの中央か垂線に沿って「中空部」にフラックスが侵入することを阻止することができない。なお、ひとたび「中空部」に侵入したフラックスは、その流動性の高さから(必要であれば、甲第3号証の段落「0007」参照)容易に固定接点に達するというのが技術常識である。
申立人が主張の根拠としてあげた上記3点について検討する。
・上記(1)について
申立人が指摘するように、内部折曲ラインの中央以外、特に埋設金属プレートの側縁近傍に存在する「微細な隙間」からのフラックスの侵入があるとしても、上記2.で述べたとおり、発明特定事項Aを採用した本件発明1であれば、本件特許の図面の図13に示された従来例のようなものとの比較すれば、侵入したフラックスが固定接点に向かいにくくなっているということができ、発明特定事項Aの技術的な意味は十分理解できる。したがって、「内部折曲ラインの中央以外」の侵入を防ぐことに係る発明特定事項がなくても、発明特定事項A及びそれを含む本件発明1は明確である。
・上記(2)について
申立人が指摘するように、侵入してきたフラックスが進行する方向が制御できないとしても、上記2.で述べたとおり、発明特定事項Aを採用した本件発明であれば、本件特許の図面の図13に示された従来例のようなものとの比較すれば、侵入したフラックスが固定接点に向かいにくくなっているということができ、発明特定事項Aの技術的な意味は十分理解できる。したがって、フラックスの進行方向を制御することに係る発明特定事項がなくても、発明特定事項A及びそれを含む本件発明1は明確である。
・上記(3)について
本件発明1は、本件特許明細書段落【0037】の記載からも明らかなとおり、中空部に侵入したとしても、その侵入したフラックスが固定接点に向かわないようにするというものであり、中空部へのフラックスの侵入を完全に阻止する構成がなくても、本件発明1は明確である。したがって、内部折曲ラインの中央の垂線に沿った中空部へのフラックスの侵入するための発明特定事項として、「中空部」と「内部折曲ラインの中央における垂線」との関係を特定せずとも、本件発明1は明確である。
よって、上記申立人が主張の根拠としてあげた3点はいずれも失当であり、本件発明1~6は、発明特定事項の技術的意味を理解することはでき、明確である。
したがって、上記当審の判断のとおり、本件発明1~6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701190