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特許異議申立

2023-700556

固形粉末化粧料

審判番号
2023-700556
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-232662
登録番号
7180351
請求日
2023年05月30日
審決日
2024年01月30日
公報発行日
2024年05月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本メナード化粧品株式会社
  • 【異議申立人】郡司 理
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 宮崎 大輔
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.853-YAA(A61K) / P1651.857-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
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事件の表示

特許第7180351号発明「固形粉末化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7180351号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、〔3~7〕について訂正することを認める。 特許第7180351号の請求項1及び2に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。 特許第7180351号の請求項3~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7180351号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年12月12日の出願であって、令和4年11月21日に特許権が設定登録され、同年11月30日にその特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許に対して、令和5年5月30日に特許異議申立人 郡司 理から、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。 令和5年 8月21日付け 取消理由通知 同年10月16日 応対記録 同年 同月20日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年11月 6日付け 訂正請求があった旨の通知 同年12月 6日 意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の可否 1.訂正の内容 令和5年10月20日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第7180351号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~6からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に 「油剤に下記成分(B)を含有する請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。 (B)25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」 と記載されているのを、 「下記成分(A)を含有する粉末と下記成分(B)を含有する油剤とを混合することにより調製される化粧料基材と、溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することを特徴とするマイクロプラスチックビーズを含有しない固形粉末化粧料。 (A)BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ (B)25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」 に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「前記固形粉末化粧料がファンデーションである請求項1~4のいずれか一項記載の固形粉末化粧料。」と記載されているのを、「前記固形粉末化粧料がファンデーションである請求項3又は4記載の固形粉末化粧料。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「溶剤が水性溶剤である請求項1~5のいずれか一項記載の固形粉末化粧料。」と記載されているのを、「溶剤が水性溶剤である請求項3~5のいずれか一項記載の固形粉末化粧料。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項記載の固形粉末化粧料の製造方法。」と記載されているのを、「請求項3~6のいずれか一項記載の固形粉末化粧料の製造方法。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項4~7は、請求項3を直接又は間接的に引用するものである。 そして、上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して請求項4~7が訂正されるものであるところ、特許権者は、訂正後の請求項3~7についての訂正が認められる場合には、これらの請求項について、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項〔1~2〕及び〔3~7〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2.本件訂正による訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1又は2を引用する訂正前の請求項3について、請求項2を引用するものを削除して減縮するとともに、引用形式の記載から独立形式の記載に改め(訂正事項1-1)、かつ、訂正前の請求項1に記載された「球状無孔質シリカ」について、「無孔質」の意味を明確にするために、本件特許明細書の【0012】の「本発明に用いられる成分(A)球状無孔質シリカは、BET法により測定するBET比表面積が0.2~50m2/gであり」との記載に基いて、「BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ」と訂正するものである(訂正事項1-2)。 訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当し、訂正事項1-2は、同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2及び3について 訂正事項2は、訂正前の請求項1を削除するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2及び3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項4~6について 訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載された「請求項1~4のいずれか一項記載の固形粉末化粧料」のうち、請求項1~2を引用するものを削除して「請求項3又は4記載の固形粉末化粧料」に限定するものであり、訂正事項5は、訂正前の請求項6に記載された「請求項1~5のいずれか一項記載の固形粉末化粧料」のうち、請求項1~2を引用するものを削除して「請求項3~5のいずれか一項記載の固形粉末化粧料」に限定するものであり、訂正事項6は、訂正前の請求項7に記載された「請求項1~6のいずれか一項記載の固形粉末化粧料」のうち、請求項1~2を引用するものを削除して「請求項3~6のいずれか一項記載の固形粉末化粧料」に限定するものであるから、いずれも「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3.まとめ 上記2のとおり、訂正事項1~6による本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、訂正後の請求項3~7に係る訂正事項1及び4~6は、上記2のとおり、いずれも認められるものであるところ、特許権者による別の訂正単位とする求めを踏まえ、結論のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、〔3~7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 下記成分(A)を含有する粉末と下記成分(B)を含有する油剤とを混合することにより調製される化粧料基材と、溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することを特徴とするマイクロプラスチックビーズを含有しない固形粉末化粧料。 (A)BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ (B)25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油 【請求項4】 前記成分(B)の油剤が、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンであることを特徴とする請求項3記載の固形粉末化粧料。 【請求項5】 前記固形粉末化粧料がファンデーションである請求項3又は4記載の固形粉末化粧料。 【請求項6】 溶剤が水性溶剤である請求項3~5のいずれか一項記載の固形粉末化粧料。 【請求項7】 請求項3~6のいずれか一項記載の固形粉末化粧料の製造方法。」 第4 取消理由通知の概要 令和5年8月21日付けの取消理由通知で通知された取消理由は、次の理由1~3からなるものである。 〔理由1〕本件特許の請求項1及び5~7に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された、以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2018-168130号公報 よって、本件特許の請求項1及び5~7に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由2〕本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された、以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2018-168130号公報 甲第5号証:特開2015-101555号公報 甲第6号証:特表2012-530711号公報 甲第7号証:特開2017-109967号公報 甲第8号証:特開2013-129622号公報 甲第9号証:特開2005-60283号公報 よって、本件特許の請求項1~7に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 ・請求項1の「球状無孔質シリカ」の「無孔質」の範囲が不明確。 よって、本件特許の請求項1~7に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.取消理由通知で示した取消理由について (1)理由2(進歩性)について 先の取消理由通知では、請求項3に対して、理由1(新規性)についての取消理由が通知されていないことから、事案に鑑み、まず理由2(進歩性)について判断する。 ア 甲第1~9号証及び乙第1号証並びにその記載事項 甲第1号証:特開2018-168130号公報 甲第2号証:“高機能性化粧品原料”パンフレット,日揮触媒化成株式会社,2011年4月1日 甲第3号証:特開2022-161876号公報(公開日:令和4年10月21日) 甲第4号証:特開2021-187781号公報(公開日:令和3年12月13日) 甲第5号証:特開2015-101555号公報 甲第6号証:特表2012-530711号公報 甲第7号証:特開2017-109967号公報 甲第8号証:特開2013-129622号公報 甲第9号証:特開2005-60283号公報 乙第1号証:田村 博明 他5名編,新 化粧品ハンドブック,日光ケミカルズ株式会社 他4名,p.61-62,平成18年10月30日 (ア)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、以下の記載がある(下線及び枠線は、当審合議体による。以下同じ。)。 摘記1a: 「【請求項1】 次の成分(A)、(B)を含有する化粧料基材と、水及び水性溶剤から選ばれる単独又は2種以上の混合溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料。 (A)下記の表面被覆処理剤(a)及び(b)により表面被覆された粉体 (a)下記一般式(1)で示される両末端反応性ジオルガノポリシロキサン(a) R1R22SiO-(R22SiO)L-SiR1R22 (1) (式中、各R1は水酸基を表し、各R2はそれぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基を表し、Lは3~10,000のいずれかの整数を表す) (b)下記一般式(2)で示されるアミノ基含有シラン化合物(b) R3R4mSiX(3-m) (2) (式中、R3は少なくとも1つのアミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基を表し、R4は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは炭素数1~4のアルコキシ基を表し、mは0または1である) (B)25℃で液状の油性成分」 摘記1b: 「【0035】 本発明に使用される成分(B)としては、化粧料に使用される、25℃で液状の油剤であれば、特に限定されず用いることができる。例えば、動物油、植物油、合成油等の起源、を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、等が挙げられる。 【0036】 具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等のエステル油、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコノール等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油などが挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。」 摘記1c: 「【0041】 また、本発明の固形粉末化粧料には、上記必須成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、成分(B)以外の油性成分、成分(A)以外の粉体、、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有する事ができる。 ・・・ 【0043】 粉体としては、前記表面被覆されうる粉体で挙げた粉体を本発明の効果を損なわない範囲で、未処理で使用することもでき、また、油剤やシリコーン、フッ素化合物等で表面被覆したものを使用することもできる。本発明における成分(A)を含む粉体の含有量は、特に限定されないが、80~99.9%が好ましい。」 摘記1d: 「【0071】 実施例1~16及び比較例1~10:ファンデーション(固形) 表1及び2に示すファンデーションを調製し、溶剤の除去効率、落下強度、表面のムラの無さ、しっとり感、なめらかな伸びについて下記の評価を実施し、下記判定基準により判定した。その結果も併せて表1及び2に示す。【0072】 【表1】 [図:0001410212000001.jpg] 【0073】 【表2】 [図:0001410212000002.jpg] 【0074】 (製造方法) A.成分(1)~(24)を均一に混合する。 B.Aに、成分(25)~(28)を均一に混合したものを加えて、均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。 C.前記化粧料基材100部に表中記載の溶剤を100部添加して混合し、スラリー状の混合物を得た。、 D.前記混合物を丸型の金皿容器(直径5.5cm)に11.0g乗せ、プレス圧2.0kgf/cm2、プレス時間4秒、紙6枚の条件で4回圧縮し、水性溶剤を一部除去した。その後、室温で一昼夜乾燥させ、精製水を除去し、ファンデーション(固形)を得た。」 (イ)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の記載がある。 摘記2a: 「 [図:0001410212000003.jpg] 」 (ウ)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の記載がある。 摘記3a: 「【0073】 表1~表6で用いた成分の詳細を以下に示す。 ・・・ *4 シリカ2:CHIFFONSIL P-3R、日揮触媒化成社製、比表面積2m2/g、平均粒子径5μm ・・・」 (エ)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下の記載がある。 摘記4a: 「【0012】 本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれるシリカの比表面積は、100m2/g以下であるが、50m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以下であることがより好ましい。比表面積は77Kにおける粉末への窒素吸着量を測定して、BET法で解析して比表面積を算出することができる。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれるシリカとしては、100m2/g以下であれば特に限定されるものではないが、市販品としては、例えば、シフォンシルP-3R(日揮触媒化成株式会社製)が挙げられる。」 摘記4b: 「【0066】 [図:0001410212000004.jpg] 」 (オ)甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、以下の記載がある。 摘記5a: 「【請求項1】 次の成分(a)~(e); (a)シリコーン処理粉末 30質量%以上 (b)窒化ホウ素 1~20質量% (c)球状粉末 1~20質量% (d)25℃において固形のロウ 0.05~5質量% (e)フェニル変性シリコーン 1~15質量% を含有することを特徴とする固形粉末化粧料。」 摘記5b: 「【0009】 以下本願発明を詳細に説明する。 本願発明に用いられる(a)シリコーン処理粉末におけるシリコーン処理は、シリコーンを表面に有することができる処理であれば特に限定されず、化粧品分野で公知の各種方法による処理を適用することができる。例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン樹脂等による表面処理等が挙げられるが、好ましくはメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、トリエトキシカプリリルシランによる処理であり、より好ましくはメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンによる処理である。また、異なる処理方法でシリコーン処理した粉末を組み合わせて使用してもよい。」 (カ)甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、以下の記載がある。 摘記6a: 「【請求項1】 少なくとも1つの表面処理された化粧用粉体物質を含み、該化粧用粉体物質は、その表面に結合した少なくとも1つの有機紫外線活性物質を有する、化粧品調合物。 ・・・ 【請求項10】 前記化粧用粉体は、シリケート、表面修飾シリケート、有機ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化粧品調合物。 ・・・ 【請求項12】 前記表面修飾されたシリケートは、 トリエトキシカプリリルシラン、ミリスチン酸アルミニウム、およびステアロイルグルタミン酸二ナトリウムで被覆されたシリカ、・・・ からなる群から選ばれる、請求項10に記載の化粧品調合物。」 (キ)甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、以下の記載がある。 摘記7a: 「【0009】 (1)本発明のオイルゲル化粧料の必須成分である疎水化処理顔料について疎水化処理された顔料は、化粧料の分野において用いられる通常の方法で製造することもできるし、市販品を使用することもできる。例えば、シリコーン処理顔料、脂肪酸処理顔料、ラウロイルリジン処理顔料、界面活性剤処理顔料、金属石鹸処理顔料、フッ素処理顔料等が含まれ、中でも、シリコーン処理顔料、脂肪酸処理顔料およびフッ素処理顔料が好ましい。具体的には、シリコーン処理顔料としては、例えば、メチコン、ジメチコン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン樹脂等による処理顔料;脂肪酸処理顔料としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸等による処理顔料;フッ素処理顔料としては、例えば、パールフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン等による処理顔料などが挙げられる。最も好ましい原料として、トリエトキシカプリリルシラン処理顔料があげられる。市販品としては、OTS処理顔料(大東化成工業(株))などが例示できる。これらの原料を配合しない場合、発色とその持続性が不十分なものとなる。配合量としては、0.1~20質量%であり、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%が最も好ましい。」 (ク)甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、以下の記載がある。 摘記8a: 「【請求項4】 粉末成分と油性成分とを含む化粧料基剤に、溶剤を添加してスラリーとし、該スラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去することにより得られることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の固形粉末化粧料。」 摘記8b: 「【0015】 ・・・前記本発明に用いられる油性成分としては、一般に化粧料に用いられ得るものであれば特に限定されるものではなく、1種又は2種以上を配合することができる。これら油性成分としては、例えば、・・・トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン・・・等の合成エステル油・・・などが好ましく例示できる。」 (ケ)甲第9号証の記載事項 甲第9号証には、以下の記載がある。 摘記9a: 「【請求項5】 請求項1~4に記載の粉末固型化粧料において、化粧料基剤に溶剤を添加してスラリーとし、次いでそのスラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去して製造することを特徴とする粉末固型化粧料。」 摘記9b: 「【0028】 本発明においては、油剤が配合されることが好ましい。配合され得る油剤としては、従来化粧用粉体として用いられる油剤であれば特に限定されず、エステル、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油等が挙げられる。前記エステルからなる油剤の例を挙げれば、例えば、・・・トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパンエステル・・・である。・・・」 (コ)乙第1号証の記載事項 乙第1号証には、以下の記載がある。 摘記1’a: 「エステルはつぎのように分類することができる. ・・・ (7)分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル:2-エチルヘキサン酸,イソステアリン酸などの分岐脂肪酸とグリセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとのフルエステル.加水分解安定性,酸化安定性,微生物に対する安定性に優れている.」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記ア(ア)の摘記1aの【請求項1】には、「次の成分(A)、(B)を含有する化粧料基材と、水及び水性溶剤から選ばれる単独又は2種以上の混合溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去することにより得られる固形粉末化粧料。 (A)下記の表面被覆処理剤(a)及び(b)により表面被覆された粉体・・・ (B)25℃で液状の油性成分」と記載されている。 また、同摘記1dの【0071】には、実施例12が「ファンデーション(固形)」であることが記載されており、また、同摘記1dの【0072】には、実施例12が、成分(1)として「製造例1記載の表面処理被覆マイカ」、成分(15)として「マイカ」、成分(16)として「球状シリカ粉体*5」、成分(17)として「酸化チタン被覆セリサイト」、成分(18)として「酸化チタン被覆合成金雲母」、成分(19)として「赤酸化鉄」、成分(20)として「黄色酸化鉄」、成分(21)として「黒酸化鉄」、成分(22)として「タルク(補正)」、成分(23)として「酸化亜鉛」、成分(24)として「ケイ酸アルミニウムマグネシウム*6」、成分(27)として「2-エチルヘキサン酸セチル」、成分(29)として「水」を含むこと、成分(16)の「球状シリカ粉体*5」は「CHIFFONSIL P-3R(日揮触媒化成社製)」であること、成分(24)の「ケイ酸アルミニウムマグネシウム*6」は「スメクトンSA-2(クニミネ工業社製)」であること、成分(1)~(24)は「粉体」であること、成分(27)は「油剤」であること、成分(29)は「溶剤」であること、が記載されている。 さらに、同摘記1dの【0074】には、実施例12を含む実施例の製造方法として 「A.成分(1)~(24)を均一に混合する。 B.Aに、成分(25)~(28)を均一に混合したものを加えて、均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得た。 C.前記化粧料基材100部に表中記載の溶剤を100部添加して混合し、スラリー状の混合物を得た。、 D.前記混合物を丸型の金皿容器(直径5.5cm)に11.0g乗せ、プレス圧2.0kgf/cm2、プレス時間4秒、紙6枚の条件で4回圧縮し、水性溶剤を一部除去した。その後、室温で一昼夜乾燥させ、精製水を除去し、ファンデーション(固形)を得た。」 と記載されている。 加えて、同摘記1aの【請求項1】及び同摘記1bの【0035】には、油剤成分が「25℃で液状」であることが記載されている。 以上の記載を考慮すると、甲第1号証には、 「(1)製造例1記載の表面処理被覆マイカ20質量%、(15)マイカ20質量%、(16)球状シリカ粉体「CHIFFONSIL P-3R(日揮触媒化成社製)」5質量%、(17)酸化チタン被覆セリサイト20質量%、(18)酸化チタン被覆合成金雲母5質量%、(19)赤酸化鉄0.3質量%、(20)黄色酸化鉄1質量%、(21)黒酸化鉄0.1質量%、(22)タルク(補正)残量、(23)酸化亜鉛2質量%、及び(24)ケイ酸アルミニウムマグネシウム「スメクトンSA-2(クニミネ工業社製)」1質量%からなる粉体の成分(A)を均一に混合したものに、(27)2-エチルヘキサン酸セチル5質量%を25℃で液状の油性成分(B)として加えて均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得て、前記化粧料基材100部に(29)水100部を溶剤として添加して混合し、スラリー状の混合物を得て、前記混合物を丸型の金皿容器に乗せ、4回圧縮し、水性溶剤を一部除去し、その後、室温で一昼夜乾燥させ、精製水を除去して得た、固形粉末化粧料としてのファンデーション。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 ウ 本件発明3と甲1発明との対比・判断 (ア)対比 本件発明3と、甲1発明とを対比する。 甲1発明の粉体中の1成分である「CHIFFONSIL P-3R(日揮触媒化成社製)」について、参考として提示する甲第2号証には、「CHIFFONSIL P-3R」が「無孔質の真球状シリカ」であることが記載されている(上記ア(イ)の摘記2a)。 また、参考として提示する本願出願時において非公知の文献である甲第3号証には、「CHIFFONSIL P-3R、日揮触媒化成社製」が「比表面積2m2/g」であると記載されており(上記ア(ウ)の摘記3a)、参考として提示する本願出願時において非公知の文献である甲第4号証には、「シリカ(シフォンシルP-3R)」が「比表面積(m2/g):3」であると記載されている(上記ア(エ)の摘記4b)。 してみると、甲1発明の「CHIFFONSIL P-3R(日揮触媒化成社製)」は、本件発明3の「BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ」に相当する。 甲1発明の「粉体の成分(A)を均一に混合したものに、(27)2-エチルヘキサン酸5質量%を25℃で液状の油性成分(B)として加えて均一に分散し、粉砕後、化粧料基材を得て、前記化粧料基材100部に(29)水100部を溶剤として添加して混合し、スラリー状の混合物を得」ることは、本件発明3の「粉末と油剤とを混合することにより調製される化粧料基材と溶剤とを混合してスラリー状と」することに相当する。 甲1発明の「丸型の金皿容器に乗せ、4回圧縮」することは、本件発明3の「容器に充填」することに相当する。 甲1発明の「水性溶剤を一部除去し、その後、室温で一昼夜乾燥させ、精製水を除去」することは、本件発明3の「該溶剤を除去すること」に相当する。 甲1発明の「固形粉末化粧料としてのファンデーション」は、本件発明3の「固形粉末化粧料」に相当し、また、甲1発明のファンデーションは、「マイクロプラスチックビーズ」に相当する成分を含有していない。 してみると、本件発明3と甲1発明は、 「下記成分(A)を含有する粉末と油剤とを混合することにより調製される化粧料基材と、溶剤とを混合してスラリー状とし、容器に充填した後、該溶剤を除去する、マイクロプラスチックビーズを含有しない固形粉末化粧料。(A)BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ」 という点において一致し、次の点において相違する。 相違点1:本件発明3では、油剤が「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」を含有するのに対して、甲1発明では、油剤が「25℃で液状の油剤」である「2-エチルヘキサン酸セチル」であり、25℃のとき液状ではあるものの、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油ではない点。 (イ)判断 上記相違点1について、甲第1号証(上記ア(ア)の摘記1b)の【0035】の「本発明に使用される成分(B)としては、化粧料に使用される、25℃で液状の油剤であれば、特に限定されず用いることができる。」との記載にあるように、甲第1号証に記載された発明は、本件発明3の「成分(B)を含有する油剤」に相当する油剤について、化粧料に使用される25℃で液状の油剤であれば「特に限定されず用いることができる」としているものである。 そして、甲第1号証の【0036】の「具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等のエステル油、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコノール等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油などが挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。」との記載において、本件発明3の「(B)25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」に該当するものとして、分岐脂肪酸であるイソステアリン酸と、多価アルコールであるペンタエリスリトールとのエステルであって、かつ、ペンタエリスリトールの4つの水酸基がすべてエステル化された化合物である「テトライソステアリン酸ペンタエリスチリル」が例示されている。 しかし、甲第1号証において「特に限定されず用いることができる」とされる油剤として、特に「テトライソステアリン酸ペンタエリスチリル」を選択する動機付けは、甲第1号証の記載に見当たらない。 また、甲第8号証には、「粉末成分と油性成分とを含む化粧料基剤に、溶剤を添加してスラリーとし、該スラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去することにより得られる・・・固形粉末化粧料」に用いられる油剤として、「トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン」が挙げられていること(上記ア(ク)の摘記8a及び8b)、及び、甲第9号証には、「化粧料基剤に溶剤を添加してスラリーとし、次いでそのスラリーを容器に充填した後、前記溶剤を除去して製造する・・・粉末固型化粧料」に用いられる油剤として、「トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン」が挙げられていること(上記ア(ケ)の摘記9a及び9b)からみて、本願出願時において、本件発明3と同様の方法で製造される固形粉末化粧料に用いられる油剤として、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンを用いることは、周知技術であったと認められる。そして、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンは、分岐脂肪酸であるイソステアリン酸と、多価アルコールであるトリメチロールプロパンとのエステルであって、かつ、トリメチロールプロパンの3つの水酸基がすべてエステル化された化合物であるから、本件発明3の「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」に相当する。 しかし、甲1発明において、油剤として、2-エチルヘキサン酸セチルにかえて、あるいは2-エチルヘキサン酸セチルに加えて、甲第8号証及び甲第9号証に記載された周知の油剤であるトリイソステアリン酸トリメチロールプロパンを選択して用いることについて、積極的な動機付けはない。 してみると、上記相違点1に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易想到であるとはいえない。 次に、油剤として「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」を用いることによる本件発明の効果について確認する。 本件特許明細書の実施例では、【0030】の【表1】において、油剤として、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(実施例1)又はテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(実施例8)を用いた場合に、イソノナン酸イソトリデシル(実施例9)又はトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(実施例10)を用いた場合よりも、耐衝撃性に優れることが示されており、【0034】には「分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル液状油を含有することでより優れた使用感と耐衝撃性が得られることが明らかとなった」と記載されている。 また、一般に、エステルを、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステルであること、さらにそのフルエステルであることを共通点として分類することは当業者に知られていたところ(上記ア(コ)の摘記1’a)、本件特許明細書の実施例において耐衝撃性に優れることが示された油剤であるトリイソステアリン酸トリメチロールプロパン及びテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルはいずれも分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油であるのに対して、耐衝撃性が相対的に劣ることが示された油剤であるイソノナン酸イソトリデシル及びトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2はいずれも分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油でない。 以上のことを考慮すると、本件特許明細書の記載から、油剤として「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」を用いることで、その他の油剤を用いる場合と比較して、耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料が得られるという効果を奏することが把握される。 してみると、本件発明3は、上記相違点1に係る構成を具備することで、格別の効果を奏するに至ったものといえるから、上記相違点1が技術的に無意味な構成の付加にすぎないとはいえない。 したがって、本件発明3は、甲第1号証並びに甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、令和5年8月21日付けの取消理由通知で通知された〔理由2〕の取消理由に理由はない。 (ウ)特許異議申立人の主張について a 相違点1が実質的な相違点であるか否かについて 特許異議申立人は、特許異議申立書の第31~34頁(特に第34頁)において、甲第1号証の実施例の記載から発明を認定した上で、甲第1号証の【0036】には、油剤として、「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」に該当する「テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル」が挙げられていることを根拠に、油剤として「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」を含有する点も、本件発明3と甲第1号証に記載された発明との相違点ではないと主張している。 上記主張について検討すると、甲第1号証に、油剤としてテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルが列挙されているとしても、その記載と、甲第1号証の実施例の記載とを組み合わせることが、甲第1号証に実質的に記載されているに等しいとまでいえる合理的な理由は見当たらない。また、本件発明3は、上記相違点1に係る構成を具備することで格別の効果を奏するに至ったといえるから、上記相違点1は技術的に無意味な構成要件の付加に相当するものではない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 b 相違点1の容易性について 特許異議申立人は、令和5年12月6日付け意見書の第3~4頁において、甲第1号証に油剤として記載された材料のうちエステルは11種類であるが、固形粉末化粧料で用いられる油剤は他にも多数存在する(例えば、甲第8号証にはエステル油が46種類記載されている)のだから、甲1発明において、油剤を、甲第1号証に具体的に記載された材料であるテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルに置き換える動機付けはあると主張している。 また、特許異議申立人は、同意見書の第4~7頁において、甲1発明と同様の固形粉末化粧料において、油剤として、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油を用いることは、例えば、甲第8号証に記載されているように広く知られているから、甲1発明において、油剤として、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油を用いることは当業者が容易になし得ると主張している。 上記主張について検討すると、まず、甲第1号証に記載された以外の油剤も多数存在することは、甲1発明において、油剤をテトライソステアリン酸ペンタエリスリチルに置き換えることが容易であることの根拠にはならないし、甲第1号証には、エステル以外にも動物油、植物油等の広範な油剤が記載されていて、その中から、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチルに着目して採用する動機付けがない。 また、甲1発明と同様の固形粉末化粧料において、油剤として分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油を用いることが知られていたとしても、甲1発明においてそれを用いる積極的な動機付けはないこと、及び、油剤として分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油を用いることで耐衝撃性に優れる固形粉末化粧料が得られるという効果が予測できないことについて、上記(イ)で説示したとおりである。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 c 本件発明3の効果について 特許異議申立人は、令和5年12月6日付け意見書の第7~9頁において、以下の主張をしている。 本件特許明細書の実施例では、油剤として、本件発明3を満たすトリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(実施例1)又はテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(実施例8)を用いた場合に、本件発明3を満たさないトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(実施例10)を用いた場合よりも、耐衝撃性に優れることが示されている。 一方、特許権者が令和5年10月20日付け意見書において挙げる乙第1号証では、エステルを9種類に分類しており、そのうちの1つが「(7)分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル」であるところ、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2も、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステルではある。 また、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン又はテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルと、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2とでは、エステルを構成する多価アルコール自体の構造も異なる。 してみると、本件特許明細書の実施例で示された上記結果から、耐衝撃性の向上という効果を、油剤として「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」を用いることによる効果であると把握することはできない。 上記主張について検討すると、乙第1号証から、一般に、エステルを、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステルであること、さらにそのフルエステルであることを共通点として分類することは当業者に知られていたことが理解できるところ、本件特許明細書の実施例では、分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステルに該当する油剤を用いた場合(実施例1及び8)に、そうでない場合(実施例9及び10)よりも耐衝撃性に優れることが示されているのだから、本件特許明細書の記載から、油剤として特に「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」を用いることによる効果を把握することができる点について、上記(イ)で説示したとおりである。 本件特許明細書の実施例10の「トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2」が、(フルエステルではないが)分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステルではあることは、油剤として特に「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」を用いることによる効果が把握できないとする根拠にはならない。 また、本件特許明細書の実施例1及び8~10で用いられた油剤は、多価アルコールの構造も異なっているが、「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」に該当する複数の油剤と「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」に該当しない複数の油剤とを比較して耐衝撃性の差を確認しているのであって、このことと、エステルを「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」という共通点で分類することは一般に知られていることを考慮すれば、本件特許明細書の記載から、油剤として特に「分岐脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル」を用いることによる効果を十分把握することができる。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 エ 本件発明4~7について 本件発明4~6は、本件発明3を引用し、さらに限定したものであるから、本件発明3の進歩性が甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証及び甲第9号証)によって否定できない以上、その進歩性を否定することはできない。 本件発明7は、本件発明3の固形粉末化粧料の製造方法の発明であり、本件発明3の固形粉末化粧料の進歩性が、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証及び甲第9号証)によって否定できない以上、本件発明3の固形粉末化粧料の製造方法の発明である本件発明7についても、その進歩性を否定することはできない。 したがって、本件発明4~7は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第8号証及び甲第9号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、令和5年8月21日付けの取消理由通知で通知された〔理由2〕の取消理由に理由はない。 (2)理由1(新規性)について 本件発明5及び6は、本件発明3を引用し、さらに限定したものであり、上記(1)ウ(イ)で示した相違点1と同様な相違点があるから、本件発明5及び6が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。 また、本件発明7は、本件発明3の固形粉末化粧料の製造方法の発明であり、上記(1)ウ(イ)で示した相違点1と同様な相違点があるから、本件発明7が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。 したがって、令和5年8月21日付けの取消理由通知で通知された〔理由1〕の取消理由に理由はない。 (3)理由3(明確性)について 上記第4の〔理由3〕の記載不備として指摘した点は、具体的には、 「「無孔質」という用語について、本件特許明細書【0013】には「本発明でいう「無孔質」とは、一般的に化粧料に用いられるシリカである多孔質シリカに比較してはるかに孔が少ないことを意味しており、シリカの表面に孔がまったく存在しないことを要求するものではない。」と記載されているから、本件特許においては、「無孔質」とは「一般的に化粧料に用いられるシリカである多孔質シリカに比較してはるかに孔が少ない」ことであると定義されているものと認められるが、「一般的に化粧料に用いられるシリカである多孔質シリカに比較してはるかに孔が少ない」か否かの判断基準が示されていないから、シリカが「球状無孔質シリカ」であるか否かの判断基準が不明確である。」 というものであるところ、本件訂正により、訂正後の請求項3では、「球状無孔質シリカ」の「BET比表面積が0.2~50m2/gである」ことが特定された(「無孔質」とは「BET比表面積が0.2~50m2/gである」ことを意味することが明確になった)ので、当該〔理由3〕は解消した。 したがって、令和5年8月21日付けの取消理由通知で通知された〔理由3〕の取消理由に理由はない。 2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1(新規性) 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する「特許法第29条第1項第3号(請求項1、請求項3、請求項5-7)」の申立理由(以下、「申立理由1」という。)の要旨は、本件特許の請求項1、3、及び5~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)に違反するというものである。 このうち、請求項1及び5~7に係る発明については、上記第4の〔理由1〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由に該当しない。 一方、請求項3に係る発明について、上記1(1)ウの(ア)及び(ウ)aで説示したとおり、本件発明3と甲1発明は相違点1で相違するから、本件発明3は甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、本件発明3についての申立理由1に理由はない。 (2)申立理由2(進歩性) 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する「特許法第29条第2項(請求項1-7)」の申立理由(以下、「申立理由2」という。)の要旨は、本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第5~9号証)から容易になし得るものであるから、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)に違反するというものである。 そして、申立理由2は、上記第4の〔理由2〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。 (3)申立理由3(拡大先願) 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する「特許法第29条の2(請求項1、7)」の申立理由(以下、「申立理由3」という。)は、訂正前の請求項1及び7に係る発明のみに申し立てられており、訂正前の請求項3に係る発明には申し立てられていないところ、本件訂正後は、請求項3及び同請求項を直接又は間接的に引用する請求項に係る発明のみとなっているから、訂正後の本件発明については、申立理由3は実質的に申し立てられていない。 また、令和5年12月6日付け意見書でも、特許異議申立人はこの点について特に何も主張していない。 よって、訂正後の本件発明については、申立理由3に理由はない。 (4)申立理由4(サポート要件) 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する「特許法第36条第6項第1号(請求項1-7)」の申立理由(以下、「申立理由4」という。)の要旨は、本件発明の課題は「マイクロプラスチックビーズを含有しなくとも、使用感に優れ、かつ耐衝撃性に優れた湿式成型固形粉末化粧料を提供すること」であるところ(本件特許明細書【0008】)、本件特許明細書の実施例において効果が確認されているのは、球状無孔質シリカの含有量が3~20質量%であり、油剤の含有量が3~15質量%であり、油剤が特定の材料である場合のみであるから、球状無孔質シリカ及び油剤の含有量を特定せず、また、実施例で用いられた油剤とは化学構造が全く異なる油剤を用いる場合をも含む本件発明は、課題を解決できると認識できる範囲を超える、というものである。 上記理由について検討する。 本件特許明細書【0008】の記載からみて、本願発明の課題は、「マイクロプラスチックビーズを含有しなくとも、使用感に優れ、かつ耐衝撃性に優れた湿式成型固形粉末化粧料を提供すること」であるところ、固形粉末化粧料の構成成分の種類や求める物性等に応じて、球状無孔質シリカ及び油剤の最適な含有量はあるとしても、本件特許明細書の実施例で示された具体例から、その具体例における含有量の範囲内でなければ本件発明の課題が解決できないと考える具体的理由はなく、本件特許明細書の記載から、球状無孔質シリカ及び油剤として通常採用される含有量の範囲内において、使用感及び耐衝撃性についてある程度の効果を奏するであろうことが合理的に推測できる。 また、訂正後の本件特許では、油剤の種類が「25℃のとき液状であり、分岐脂肪酸と多価アルコールからなるフルエステル油」に限定されており、もはや、実施例で用いられた油剤とは化学構造が全く異なる油剤を用いる場合は含まれない。 よって、本件発明が、課題を解決できると認識できる範囲を超えるとはいえず、本件発明についての申立理由4に理由はない。 なお、特許異議申立人は、令和5年12月6日付け意見書において、本件訂正に付随して生じた事項として、「サポート要件違反について」の理由(以下、「申立理由4’」という。)を主張しており、その要旨は、以下のとおりである。 本件特許明細書の実施例において効果が確認されているのは、球状無孔質シリカのBET比表面積が0.7~4.8m2/gの範囲にあるもののみであるから、球状無孔質シリカのBET比表面積の上限を50m2/gであるとする本件発明は、課題を解決できると認識できる範囲を超える。 上記理由について検討する。 本件特許明細書の実施例においては、BET比表面積が0.7~4.8m2/gの範囲にある球状無孔質シリカを用いた場合と、BET比表面積が50m2/gを超える多孔質シリカ(「P-1500(日揮触媒化成社製)」)を用いた場合とを比較し、前者で優れた効果を奏することが示されており、その結果から、シリカのBET比表面積がある程度小さければ本件発明の課題を解決できること、具体的には、シリカのBET比表面積が0.2~50m2/gであれば本件発明の課題を解決できることを、当業者は認識できる。 よって、本件発明についての申立理由4’にも理由はない。 (「P-1500(日揮触媒化成社製)」のBET比表面積が50m2/gを超える点について、例えば、 特開2022-77107号公報の【0017】 https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2008/0/2008_0_650/_pdf を参照。) (5)申立理由5(明確性) 特許異議申立書で特許異議申立人が主張する「特許法第36条第6項第2号(請求項1-7)」の申立理由(以下、「申立理由5」という。)の要旨は、以下の3点である。 (理由5-1)BET比表面積は、同じ細孔容積(密度)であれば、粒子の粒子径が大きいほど小さくなるものであるから、BET比表面積は、粒子の平均粒子径を考慮することなく無孔質を規定する物性として適切でない。 (理由5-2)多孔質シリカであっても、粒子の表面処理を行った場合にBET比表面積50m2/g以下となれば、無孔質シリカとなるようにも解釈され、多孔質と無孔質の差が明確でない。 (理由5-3)本件明細書の実施例及び比較例では、「ジメチコン7質量%処理多孔質シリカ」の併用を必須としており、BET比表面積が0.2~50m2/gの定義が、全シリカの平均であるか否かが明確でない。 上記理由について検討する。 理由5-1について、本件発明において、粒子の平均粒子径にかかわらずBET比表面積は明確に定義される。 理由5-2について、本件特許明細書には、BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカが記載され(【0012】~【0013】)、それを表面処理してもよいと記載されているのであるから(【0016】)、本件発明においては、表面処理を行う場合は、表面処理前のシリカが「BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカ」であると解釈される。 理由5-3について、本件特許明細書では、BET比表面積が0.2~50m2/gである球状無孔質シリカとは別に、多孔質シリカ等も含んでよいと記載されているのであるから(【0021】)、多孔質シリカも含めた全シリカの平均のBET比表面積が本件発明と関係ないことは明らかである。 よって、本件発明は明確であり、本件発明についての申立理由5に理由はない。 第6 まとめ 以上のとおり、請求項3~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、他に請求項3~7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 また、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700556

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