特許異議申立
2024-700130
フレーク状銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト
- 審判番号
- 2024-700130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-027369
- 登録番号
- 7326514
- 請求日
- 2024年02月14日
- 審決日
- 2024年05月24日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】DOWAエレクトロニクス株式会社
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【権利者代理人】廣田 浩一
- 【権利者代理人】流 良広
- 【権利者代理人】松田 奈緒子
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 猛
- 審判官 佐藤 陽一
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1652.121-Y (B22F) / P1652.537-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7326514号発明「フレーク状銀粉およびその製造方法、ならびに導電性ペースト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7326514号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7326514号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和 4年 2月25日(優先権主張 令和 3年 3月 8日)の出願(特願2022-27369号。以下、「本願」という。)であって、令和 5年 8月 4日にその特許権の設定登録がなされ、同年 8月15日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 6年 2月14日に、請求項1、2、5に係る特許に対し、特許異議申立人である山崎 浩一郎(崎は立崎。以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~5に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)。
「【請求項1】
タップ密度が0.8g/mL~1.9g/mLであり、レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)が2μm~7μmであり、
前記積算50%粒子径(D50)に対する、レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算10%粒子径(D10)と積算90%粒子径(D90)との差の比[(D90-D10)/D50]が、1.35以下であることを特徴とするフレーク状銀粉。
【請求項2】
前記タップ密度が0.8g/mL~1.6g/mLである請求項1に記載のフレーク状銀粉。
【請求項3】
メディアを衝突させることにより球状銀粉をフレーク化してフレーク状銀粉を得るフレーク化工程を含み、
前記フレーク化工程が、前記球状銀粉の走査型電子顕微鏡により測定した平均一次粒子径(Dsem)を用いて下記式1により算出した平均体積をV1とし、前記フレーク状銀粉の累積平均長径(L)および累積平均厚み(T)を用いて下記式2により算出した平均体積をV2としたときに、前記平均体積V1に対する前記平均体積V2の比(V2/V1)が1.0~1.5を満たすように行われ、
前記フレーク状銀粉のタップ密度が0.8g/mL~1.9g/mLであり、
前記フレーク状銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)が2μm~7μmであることを特徴とするフレーク状銀粉の製造方法。
V1=4/3×π×(Dsem/2)3 (式1)
V2=T×π×(L/2)2 (式2)
【請求項4】
前記球状銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)が0.75μm~3μmである請求項3に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載のフレーク状銀粉を含み、
前記フレーク状銀粉の含有量が30質量%~80質量%であることを特徴とする導電性ペースト。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第6号証を提出し、以下の申立理由1、2により、本件特許の請求項1、2、5に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
(1)申立理由1-1
本件発明1、2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2
本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(明確性要件)
本件発明1、2、5は、フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の上限だけを示す数値範囲限定が行われており、その下限は技術常識や本願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の記載に照らしても明らかでないため、発明の範囲が不明確である。
よって、本件発明1、2、5については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
・甲第1号証:特開2014-80558号公報
・甲第2号証:特開2011-52300号公報
・甲第3号証:特開2015-10256号公報
・甲第4号証:特開2004-111057号公報
・甲第5号証:特表2012-509965号公報
・甲第6号証:特開2015-178597号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1-1(進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「導電性組成物」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1、2の記載を前提に、導電性組成物に含まれる金属フレーク、特に、段落【0126】に記載された銀フレーク4、段落【0128】に記載された銀フレーク6に着目すると、次の2つの発明(以下「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、以下では、「D10」、「D50」、「D90」を、それぞれ、「D10」、「D50」、「D90」と表記する。
<甲1発明1>
平均粒径(D50)が5.1μm、BET比表面積が1.5m2/g、タップ密度が1.6g/cm3である銀フレーク。
<甲1発明2>
平均粒径(D50)が4.0μm、BET比表面積が2.7m2/g、タップ密度が0.8g/cm3である銀フレーク。
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明1との対比・判断
(ア)対比
a 甲1発明1における、「タップ密度」と、本件発明1における、「タップ密度」とは、同一の測定方法により測定されるものであるから(甲第1号証の段落【0134】、本件明細書の段落【0052】)、甲1発明1における、「タップ密度が1.6g/cm3」であることは、本件発明1における、「タップ密度が0.8g/mL~1.9g/mL」であることに相当する。
b 甲1発明1における、「銀フレーク」と、本件発明1における、「フレーク状銀粉」とは、「銀粉」である限りにおいて共通する。
c 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明1とは、「タップ密度が0.8g/mL~1.9g/mLである銀粉。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、「レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)が2μm~7μmであ」るのに対し、甲1発明1では、「平均粒径(D50)が5.1μm」である点。
<相違点2>
銀粉が、本件発明1では、「フレーク状」銀粉であるのに対し、甲1発明1では、銀「フレーク」である点。
<相違点3>
本件発明1では、「前記積算50%粒子径(D50)に対する、レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算10%粒子径(D10)と積算90%粒子径(D90)との差の比[(D90-D10)/D50]が、1.35以下」であるのに対し、甲1発明1では、上記比が、そのような値となるのか不明である点。
(イ)判断
a 相違点1について
(a)甲1発明1において、「平均粒径(D50)が5.1μm」であることは、「レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装製、「マイクロトラック」)を用いて、測定された体積基準中心粒径」(甲第1号証の段落【0132】)が「5.1μm」であることを意味するものである。ここで、甲1発明1の銀フレークは、単一組成の銀粒子群であると解されるから、それぞれの粒子の密度は同一の値であると認められる。そうすると、「体積基準」で得られる中心粒径と、体積と密度との積である「質量」を基準として得られる中心粒径は等しい値となるといえる。そうすると、甲1発明1における、「体積基準中心粒径」は、「質量基準中心粒径」と言い換えることもできる。また、甲第1号証における「中心粒径」が「積算50%粒子径」を意味することは、技術常識である。
(b)一方、本件発明1における、「レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)」は、本件明細書の段落【0018】では、「レーザー回折散乱式粒度分布測定による」と説明されており、段落【0050】では、「体積基準の」「積算50%粒子径(D50)」を測定したと記載されている。上記(a)のとおり、本件発明1においても、体積基準の粒子径と、質量基準の粒子径とは等しい値となるから、段落【0018】の記載と、段落【0050】の記載とは矛盾せず、本件発明1の「積算50%粒子径(D50)」は、体積基準、質量基準のどちらかであると認められる。
(c)そうすると、甲1発明1において、「平均粒径(D50)が5.1μm」であることは、本件発明1において、「レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算50%粒子径(D50)が2μm~7μmであ」ることに相当する。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
b 相違点3について
(a)甲第1号証には、銀フレークの粒度分布について、「平均粒径(D50)」(体積基準の中心粒径)以外の値が記載されていないから、甲1発明1の銀フレークにおける、D10、D90の値は不明であり、同様に、[(D90-D10)/D50]の値も不明である。また、技術常識を考慮しても、甲1発明1の銀フレークの[(D90-D10)/D50]の値が「1.35以下」であるかどうかは不明である。
よって、相違点3は、実質的な相違点である。
(b)そこで、相違点3の容易想到性について検討する。
本願の優先日前に公知となった甲第3号証には、「フレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト」(発明の名称)に関する記載があり、当該フレーク状銀粉の表面にリシノール酸を有することにより、樹脂を含むビヒクルとの相溶性が向上し、高充填することができるために銀粉同士の接触性が高まって導電性が大幅に向上することが記載されている(段落【0008】)。
また、「フレーク状銀粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積50質量%粒径(D50)である平均粒径としては、1μm~8μmが好ましい」ことも記載されている(段落【0011】)。
そして、実施例においては、平均粒径の測定について、「作製した各銀粉0.3gをイソプロピルアルコール30mLに入れ、45W超音波洗浄器にて5分間処理後、処理液に対しマイクロトラック9320-X100(ハネウエル-日機装社製)を用いて粒径を測定した。その際の累積50質量%粒径(D50)を銀粉の平均粒径とし、累積10質量%粒径(D10)、累積90質量%粒径(D90)の値も求めた」ことも記載されている(段落【0042】)。なお、「マイクロトラック9320-X100」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置であるから、甲第3号証における粒径は、本件発明1、甲1発明1と同様のものである。
これら実施例の値から、[(D90-D10)/D50]の値を計算すると、その値は1.25となる(段落【0042】、段落【0050】の実施例1:[(2.9-0.9)/1.6]=1.25、実施例2:[(3.4-0.9)/2.0]=1.25)。
しかしながら、甲第3号証においては、単に、フレーク状銀粉のD10、D50、D90の値が記載されるにとどまり、その技術的意義については何ら記載されておらず、また、フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の値を「1.35以下」とすることについても記載されていないから、甲第3号証におけるフレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の計算値が1.25であるからといって、甲1発明1の銀フレークの[(D90-D10)/D50]の値を1.25とすることが、動機付けられるとはいえない。
(c)i また、本願の優先日前に公知となった甲第2号証には、「フレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト」(発明の名称)に関する記載があり、当該フレーク状銀粉の粒径の測定方法について、実施例では、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、MICROTRAC HRA)を用いて行っており(段落【0029】)、甲第2号証における粒径は、本件発明1、甲1発明1と同様のものである。
また、甲第2号証には、導電性ペースト中のフレーク状銀粉のうち、粒径の比較的大きい銀粉が、時間とともに容器中の下方に多く存在するようになって、導電性ペーストに含まれるフレーク状銀粉の粒度分布が変動することで、導電膜の品質が変動することがあるが、フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の値を、1.15~1.33とすることで、導電膜の品質の変動を抑制できることが記載されている(段落【0006】、【0008】、【0022】、【0023】、【0028】の実施例1~5)。
一方、甲第1号証において、平均粒径の上限値を定める理由は、「大きすぎると接触面積を大きくできるものの経時的にフレークが沈降して導電性組成物中において不均一になって基材に塗布した際に濃度勾配が生じやすくなるためか、かえって十分な導電性や熱伝導性が得られない場合がある」ためである(段落【0028】)。また、タップ密度の上限値を定める理由は、「大きすぎると、導電性組成物における沈降速度が速くなってしまい、経時的にフレークが沈降して導電性組成物中において不均一になって基材に塗布した際に濃度勾配が生じやすくなるためか、かえって十分な導電性や熱伝導性が得られない場合がある」ためである(段落【0034】)。
そして、甲1発明1の銀フレークは、「平均粒径(D50)が5.1μm」であり、甲第1号証における、さらに好ましい範囲である「0.9~6μm(例えば、1~5.5μm)」(段落【0028】)に包含される平均粒径(D50)を有するものであり、「タップ密度が1.6g/cm3」であり、甲第1号証における、さらに好ましい範囲である「0.8~4g/cm3」(段落【0034】)に包含されるタップ密度を有するものであるから、上記のような、「経時的にフレークが沈降して」「十分な導電性や熱伝導性が得られない」銀フレークであるとはいえない。
そうすると、上記のとおり、甲第2号証に、フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の値を適正化することで、粒径の比較的大きい銀粉が、時間とともに容器中の下方に多く存在することによる、導電膜の品質の変動を抑制できることが記載されているとしても、甲1発明1の銀フレークは、すでに、銀フレークが沈降することが抑制されているから、甲1発明1の銀フレークにおいて、さらに[(D90-D10)/D50]の値を適正化することが動機付けられるとはいえない。
ii 次に、甲1発明1の銀フレークにおいて、甲第2号証に記載の[(D90-D10)/D50]の値を適正化することが動機付けられると仮定した場合について検討すると、本件発明の効果は、幅500μmの回路を印刷した際の平均線幅が455~528μm、体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下、連続印刷性について、2回目の導電膜において断線や抵抗値の大幅な上昇が生じないというものである(表3)。
一方、甲第1~3号証には、導電性ペーストにおける体積抵抗率に係る記載はあるものの、回路を印刷した際の平均線幅の均質性や連続印刷性に係る記載はないから、本件発明の平均線幅の均質性や連続印刷性の効果は、当業者が予測し得ない顕著な効果であると認められる。
そうすると、本件発明の効果が当業者が予測し得ない顕著な効果であることを踏まえると、甲1発明1の銀フレークにおいて、[(D90-D10)/D50]の値を適正化することは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。
(d)よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明1と甲1発明2との対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲1発明2とを対比すると、上記ア(ア)と同様に、本件発明1と甲1発明2とは、「タップ密度が0.8g/mL~1.9g/mLである銀粉。」である点で一致し、上記相違点1~3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1~3と同様の相違点について検討すると、上記相違点1~3については、上記ア(イ)で検討したとおりであるから、同様の理由により、本件発明1は、甲1発明2及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明1、甲1発明2との対比・判断
(ア)対比
本件発明2と甲1発明1、甲1発明2とを対比すると、上記(2)ア(ア)と同様に、本件発明2と甲1発明1、甲1発明2とは、「タップ密度が0.8g/mL~1.6g/mLである銀粉。」である点で一致し、上記相違点1~3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1~3と同様の相違点について検討すると、上記相違点1~3については、上記(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、同様の理由により、本件発明2は、甲1発明1又は甲1発明2及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立理由1-1(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由1-1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2(進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲第1号証には、「導電性組成物」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1、2の記載を前提に、導電性組成物に含まれる金属フレーク、特に、段落【0126】に記載された銀フレーク4を用いた実施例6(段落【0144】)、段落【0128】に記載された銀フレーク6を用いた実施例8(段落【0146】)に着目すると、次の2つの発明(以下「甲1発明3」、「甲1発明4」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明3>
平均粒径(D50)が5.1μm、BET比表面積が1.5m2/g、タップ密度が1.6g/cm3である銀フレークを100重量部、多官能型エポキシ樹脂成分Aを10重量部、溶媒としてのブチルカルビトールを20重量部、含む導電性組成物。
<甲1発明4>
平均粒径(D50)が4.0μm、BET比表面積が2.7m2/g、タップ密度が0.8g/cm3である銀フレークを100重量部、多官能型エポキシ樹脂成分Aを10重量部、溶媒としてのブチルカルビトールを20重量部、含む導電性組成物。
(2)本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明3、甲1発明4との対比・判断
(ア)対比
本件発明5と甲1発明3、甲1発明4とを対比すると、上記1(2)ア(ア)と同様に、本件発明5と甲1発明3、甲1発明4とは、少なくとも、上記相違点1~3と同様の相違点で相違する。
(イ)判断
上記相違点1~3と同様の相違点について検討すると、上記相違点1~3については、上記1(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、同様の理由により、本件発明5は、甲1発明3又は甲1発明4及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
この点、甲第4号証に、「薄片状銀粉Aと薄片状銀粉Bとの合計を導電性ペーストの固形分に対して35~85重量%となるように含有する導電性ペースト組成物」(請求項1)が記載され、甲第5号証に、「(a)少なくとも3ミクロンの平均粒度を有し、粒子の少なくとも10%が7ミクロンより大きく、ステアリン酸界面活性剤を有する50%~85重量%の銀フレークと、(b)i.16~25重量%のビニルコポリマー樹脂と、ii.75~84重量%の有機溶剤とを含む15~50重量%の有機媒体とを含む、ポリマー厚膜組成物」(請求項1)が記載され、甲第6号証に、「導電性組成物中における銀粉の含有率は、例えば導電性組成物中に含まれる全固形分量を基準として好ましくは50~80質量%」(段落【0041】)であることが記載されていても変わるものではない。
イ 小括
以上のとおり、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)申立理由1-2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由1-2(進歩性)によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2(明確性要件)について
(1)ア 申立人は、特許異議申立書の第18~19ページの3(4)エにおいて、本件発明1、2、5は、「フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の上限だけを示す数値範囲限定が行われており、その下限は技術常識や本件明細書の記載に照らしても明らかでないため、発明の範囲が不明確である」と主張する。
イ ここで、D10は、レーザー回折散乱式粒度分布測定による積算10%粒子径であり、同様に、D50は積算50%粒子径、D90は積算90%粒子径であるから、技術常識に照らして、D10、D50、D90の間には、D10≦D50≦D90の関係が成り立つと認められる。
そうすると、[(D90-D10)/D50]の下限値は、D10=D50=D90の場合に0となるから、フレーク状銀粉の[(D90-D10)/D50]の下限値は明確である。
よって、本件発明1、2、5について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
ウ 以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
(2)申立理由2(明確性要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由2(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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