特許異議申立
2024-700118
X線発生装置、X線撮像装置、および、X線発生装置の調整方法
- 審判番号
- 2024-700118
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-546351
- 登録番号
- 7337312
- 請求日
- 2024年02月09日
- 審決日
- 2025年03月24日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キヤノンアネルバ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】寺澤 佳奈美
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P1651.537-YAA(H01J) / P1651.113-YAA(H01J) / P1651.121-YAA(H01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7337312号発明「X線発生装置、X線撮像装置、および、X線発生装置の調整方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7337312号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~17〕、〔18~20〕について訂正することを認める。
特許第7337312号の請求項1~20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7337312号(以下「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願は、令和5年3月17日(優先権主張 令和4年3月31日、以下、この日を「優先日」という。)の出願であって、令和5年8月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年9月1日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月 9日 :特許異議申立人 寺澤佳奈美(以下「申立人
」という。)による全請求項に対しての特許
異議の申立て
令和6年 6月 6日付け:取消理由通知書(以下、同書に係る取消理由
を「第1次取消理由」という。)
令和6年 8月 1日 :特許権者による訂正請求書(以下、同書に係
る訂正を「第1次訂正」という。)及び意見
書の提出
令和6年 9月24日 :申立人による意見書の提出
令和6年11月14日付け:取消理由通知書(以下、同書に係る取消理由
を「第2次取消理由」という。)
令和6年12月25日 :特許権者による訂正請求書(以下、同書に係
る訂正を「本件訂正」という。)及び意見書
の提出
令和7年 2月18日 :申立人による意見書の提出
第1次訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は当審が付したものであって、訂正箇所を示す。)。なお、各訂正事項の内容は、本件訂正に係る請求書に基づいて当審が整理したものである。
ア 訂正事項1
請求項1において、「があるかどうかを判定する、ことを特徴とするX線撮像装置。」であった記載を、「必要性があるかどうかを判定し、前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させていることを特徴とするX線撮像装置。」に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項11において、「前記ターゲットを回動させる回動工程を含む、ことを特徴とするX線発生装置の調整方法。」であった記載を、「前記ターゲットを回動させる回動工程を含み、前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させていることを特徴とするX線発生装置の調整方法。」に訂正する。
請求項11を直接的又は間接的に引用する請求項12~17も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項18において、「前記電子線を偏向させる偏向器と、を備え、」であった記載を、「前記電子線を偏向させる偏向器と、を備えるX線発生装置であって、」に訂正するとともに、「前記X線発生管を支持する、ことを特徴とするX線発生装置。」であった記載を、「前記X線発生管を支持し、前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させていることを特徴とするX線発生装置。」に訂正する。
請求項18を直接的に引用する請求項19及び20も同様に訂正する。
(2)なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~17〕、〔18~20〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「X線撮像装置」が「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0018】には「第1実施形態では、偏向器50が固定された状態でX線発生管XG(ターゲット22)が回動される。したがって、状態ST21と状態ST22とでは、ターゲット22の互いに異なる位置P1、P2に電子線が入射するが、X線検出器から見た位置P1、P2、即ちX線発生装置1が配置された空間における位置P1、P2は、互いに等しい位置である。」と記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1に係る訂正は、前記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項11の「X線発生装置の調整方法」が「前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許明細書等の【0018】には前記(1)イに摘記した事項が記載されている。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2に係る訂正は、前記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3に係る訂正は、次の内容からなるものである。
(i)訂正前の請求項18の「X線発生装置」が「前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ものであることを限定する訂正(以下「訂正事項3-1」という。)。
(ii)前記(i)の訂正に伴って、その記載中に「前記X線発生装置が配置された空間」という記載が存在するところ、それ以前に「X線発生装置」という記載が存在せず、明瞭でなくなることから、X線発生管と支持構造と偏向器と「を備え」るものが「X線発生装置」であることを明瞭にして釈明する訂正(以下「訂正事項3-2」という。)。
訂正事項3-1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項3-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
(ア)訂正事項3-1について
本件特許明細書等の【0018】には前記(1)イに摘記した事項が記載されている。
したがって、訂正事項3-1に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
(イ)訂正事項3-2について
訂正事項3-2に係る訂正によって、新たな技術的事項が導入されるものでないことは明らかである。
(ウ)したがって、訂正事項3に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3に係る訂正は、前記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。また、本件訂正は、訂正後の請求項1~20についてのものであるところ、当該各請求項は、いずれも特許異議申立てがされた請求項であるから、本件訂正には、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正に係る訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~17〕、〔18~20〕について訂正することを認める。
第3 本件発明の認定
本件訂正後の請求項1~20に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明20」といい、また、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、本件訂正後の請求項1~20に記載された事項によって特定されるものであるところ、当該各請求項の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、前記X線発生管を支持する支持構造と、前記電子線を偏向させる偏向器と、を有するX線発生装置と、
前記X線発生装置から放射されたX線を検出するX線検出器と、前記X線発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されることを許すように前記X線発生管を支持し、
前記制御装置は、前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて、前記ターゲットが回動される必要性があるかどうかを判定し、
前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
ことを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で前記X線発生管が回動されることを許すように前記X線発生管を支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記支持構造は、前記電子銃の中心軸と一致した回動軸の周りで前記X線発生管が回動されることを許すように前記X線発生管を支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記電子銃の中心軸は、前記ターゲットの中心を通る、
ことを特徴とする請求項3に記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記偏向器によって前記電子線が偏向されない場合に、前記電子線が前記ターゲットの中心に入射する、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記支持構造は、前記X線発生管を取り囲む収容部を含み、
前記収容部は、前記偏向器が固定された状態で前記X線発生管が回動されることを許すように前記X線発生管を支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記X線発生管と前記収容部との間の空間に絶縁流体が配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載のX線撮像装置。
【請求項8】
Oリングを更に備え、
前記X線発生管および前記収容部は、前記Oリングを介して互いに対面するシール面を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記偏向器は、前記収容部を介して互いに対向するように配置された第1磁石および第2磁石を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のX線撮像装置。
【請求項10】
前記X線発生管は、前記支持構造に対する前記X線発生管の回動角を示すマークを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項11】
電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、前記X線発生管を支持する支持構造と、前記電子線を偏向させる偏向器と、を備えるX線発生装置の調整方法であって、
前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて、前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットを回動させる回動工程を含み、
前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
ことを特徴とするX線発生装置の調整方法。
【請求項12】
前記回動工程では、前記偏向器が固定された状態で前記X線発生管が回動される、ことを特徴とする請求項11に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項13】
前記回動工程では、前記電子銃の中心軸と一致した回動軸の周りで前記X線発生管を回動させる、
ことを特徴とする請求項11に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項14】
前記電子銃の中心軸は、前記ターゲットの中心を通る、
ことを特徴とする請求項13に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項15】
前記偏向器によって前記電子線が偏向されない場合に、前記電子線が前記ターゲットの中心に入射する、
ことを特徴とする請求項11に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項16】
前記支持構造は、前記X線発生管を取り囲む収容部を含み、
前記回動工程では、前記偏向器および前記収容部が固定された状態で前記X線発生管が回動される、
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項17】
前記偏向器は、前記収容部を介して互いに対向するように配置された第1磁石および第2磁石を含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のX線発生装置の調整方法。
【請求項18】
電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、
前記X線発生管を支持する支持構造と、
前記電子線を偏向させる偏向器と、を備えるX線発生装置であって、
前記ターゲットは、円形形状を有し、かつ、単一金属又は単一合金で構成され、
前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で、少なくとも前記ターゲットが、前記電子銃の中心軸と一致した回動軸の周りで回動されることを許すように、前記X線発生管を支持し、
前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項19】
前記電子銃の前記中心軸は、前記ターゲットの中心を通るように配置されている、ことを特徴とする請求項18に記載のX線発生装置。
【請求項20】
前記偏向器によって前記電子線が偏向されない場合に、前記電子線は前記ターゲットの中心に入射する、
ことを特徴とする請求項18に記載のX線発生装置。」
第4 第2次取消理由、第1次取消理由の要旨並びに申立人が提出した証拠
1 第1次訂正後の請求項1~20に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第2次取消理由の要旨は、次のとおりである。
第1次訂正後の請求項1~20に係る発明のサポート要件違反。
2 本件特許の登録時の請求項1~20に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第1次取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、証拠番号の「第」及び「号証」は略して表記する。
(1)理由1(サポート要件)
本件特許の登録時の請求項11~17に係る発明のサポート要件違反。
(2)理由2(新規性欠如)
本件特許の登録時の請求項1、3~5、11、13~15及び18~20に係る発明の甲1に記載された発明に基づく新規性欠如。
(3)理由3(進歩性欠如)
本件特許の登録時の請求項1~20に係る発明の甲1に記載された発明及び周知技術に基づく進歩性欠如。
3 申立人が提出した証拠は、次のとおりである。
甲1:特表平10-503618号公報
甲2:特開2000-277042号公報
甲3:特開2009-301911号公報
甲4:特開2014-154485号公報
甲5:特開2018-190525号公報
甲6:特開平10-12169号公報
甲7:特開平4-138645号公報
甲8:再公表特許第2014/125702号
甲9:特開2017-212054号公報
甲10:特開2017-16921号公報
4 なお、第1次取消理由及び第2次取消理由で採用しなかった特許異議申立理由は存在しない。
第5 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明の認定
1 甲1に記載された事項
図1は次のものである。
[図:0001423464000001.jpg]
2 甲1から当業者が把握できる事項
図1に係る微小焦点X線発生装置1について、甲1からは、当業者は次の事項を把握することができると認められる。
(1)図1からは、当該装置1に含まれるX線管12は、カソード14及びグリッド15からなる部材と、透過ターゲット23をその中に含むことが見てとれる。
(2)甲1の7頁下から3行~8頁2行には、「オフセット制御部34は、機器軸10外への偏向コイル19を用いての前述のビーム偏向により、及び/又は、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられる。」の記載があるところ、当業者であれば、当該記載中の「及び/又は」として、「及び」の選択肢の態様を把握することができる。
(3)当該装置1から励起されたX線ビーム25は、像平面29内のフィルム上に投影される(6頁15~18行)ことから、甲1には、図1に係る微小焦点X線発生装置1を用いたX線撮影装置が記載されているといえる。
3 甲1発明の認定
(1)前記1及び2によれば、甲1には、図1に係る微小焦点X線発生装置1を用いたX線撮影装置について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに、甲1発明の認定に用いた甲1の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。)。
「微小焦点X線発生装置1を用いたX線撮影装置であって、(前記2(3))
前記微小X線発生装置1は、
集束化された電子ビーム16がX線ビーム生成のためターゲット23の制動材料上に当てられ、焦点22にて制動材料は、高い熱負荷により少なくとも液状の集合状態に移行し、ターゲット23上での焦点22の位置が各照射と共に先行の位置に対してずらされているものであって、
前記制動材料は、担体層33上の制動層32内に配置されており、電子ビーム16は、電子ビーム16のほうに配向された制動層32に垂直に当てられ、制御部34が設けられており、該制御部34は、遅くとも担体層33の溶融の際電子ビーム16を中断するように構成されており(請求項1。なお、請求項1に記載された「担体層33上に制動層32」は「担体層33上の制動層32」の明らかな誤記であると認める。)
或1つの照射から次の照射への移行の際ターゲット23の回転が行われるように構成されており、(請求項3)
前記制御部34は、そこにて電子ビーム16により、前記担体層33が溶融される時点をターゲット電流の測定により求めるものである、(請求項5)
微小X線発生装置1であって、
前記微小X線発生装置1は、X線管12及びX線管12に配置された偏向コイル19を含み、(5頁下から7行~6頁4行)
前記X線管12は、概して円形の任意の横断面を有し、
前記X線管12の後方端面を通って、細針状のカソード14に対する電気給電ワイヤ線が突入しており、加熱されるカソード14は、電子源として作用し、該電子源からは、キャップ状のグリッドを用いて、狭幅の発散、分散する電子ビーム16が取出されるものであり、(5頁下から6行~下から2行)
X線ビーム25の一部は、ビーム方向28を有するターゲット23を通過し、そして、発散光ビーム25として、試料26のほうに向かって、管12から出射し、試料26の構造が、像平面29内のフィルム上に投影されるものであり、(6頁13~18行)
前記制御部34はオフセット制御部34であって、機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ、それにより、ターゲット23の消費、消尽されていない、ないし、使用されていない領域のみが順次負荷を受け、而して、ターゲットの破壊が回避されるものであり、(前記2(2))
前記X線管12は、前記カソード14及び前記グリッドからなる部材と、前記透過ターゲット23をその中に含んでいる、(前記2(1))
微小焦点X線発生装置1を用いたX線撮影装置。」
(2)また、甲1には、「甲1発明に係るX線撮影装置の調整方法。」の発明(以下「甲1調整方法発明」という。)及び「甲1発明に係るX線撮影装置に用いられる微小焦点X線発生装置。」の発明(以下「甲1発生装置発明」という。)が記載されていると認められる。
第6 第2次取消理由及び第1次取消理由に対する当審の判断
当審は、本件発明1~20に係る特許は、第2次取消理由及び第1次取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する(なお、前記第4の4のとおり、第1次取消理由及び第2次取消理由で採用しなかった特許異議申立理由は存在しない。)。
その理由は以下のとおりである。
1 サポート要件違反(第2次取消理由)について
(1)第2次取消理由では、第1次訂正後の請求項1~20に係る発明には、回動の前後において偏向器が電子線を偏向させていることが特定されていないことから、回動の前後において、電子線がターゲットの中心に照射され続ける態様が含まれてしまっていることになり、このような態様は、当業者が、当該各発明の課題、つまり、ターゲットあるいはX線発生管の寿命を延ばすために磁石部(偏向器)を移動させる度に、即ち焦点位置を変更する度に、X線発生装置から放射されるX線を検出するためのX線検出器を位置合わせする必要があったという課題(以下「本件課題」という。)を解決できるとは認識できない旨説示したところ、本件訂正により、独立項に係る請求項1、11及び18において、「前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ことが特定されたので、上記取消理由は解消した。
(2)これに対して、申立人は、本件訂正によっても、独立項に係る請求項1、11及び18には、偏向器によって偏向されていない状態において、ターゲットの中心に入射する電子線が、偏向器によって偏向されることによりターゲットの中心に入射しないことが特定されておらず、その結果、これらに係る発明(本件発明)には、回動の前後のいずれにおいても、電子線がターゲットの中心に入射する態様が依然として含まれてしまっている旨主張する。
しかしながら、まず、請求項18には、「前記電子銃の中心軸と一致した回動軸の周りで回動される」ことが特定されていることから、当該請求項では、偏向器によって偏向されると電子線がターゲットの中心に入射しなくなることが担保されている。
次に、請求項1には、「X線発生装置の使用量」や「X線の変化」に応じて「ターゲットが回動される必要性」があるかどうかを判定することが特定されているところ、「ターゲットが回動される必要性」があるということは、「ターゲット」を回動させることにより何らかの変化が生じることを前提としていると解され、そうである以上、「ターゲット」の回動の前後のいずれにおいても、電子線がターゲットの中心に入射する態様が含まれているとは解されないことになる。
そして、請求項11には、「X線発生装置の調整方法」であることが特定されているところ、「調整方法」である以上、「ターゲット」を回動させることにより何らかの変化が生じることを前提としていると解されるのであり、そうである以上、請求項1と同様に、「ターゲット」の回動の前後のいずれにおいても、電子線がターゲットの中心に入射する態様が含まれているとは解されないことになる。
(3)したがって、第2次取消理由により、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
2 サポート要件違反(第1次取消理由)について
第1次取消理由では、登録時の請求項11~17に係る発明には、「偏向器」による「電子線を偏向させる」程度が固定されていないことが特定されていないことから、ターゲットの回動の前後において、焦点位置が変更される態様が含まれてしまっていることになり、このような態様は、当業者が本件課題を解決できるとは認識できない旨説示したところ、本件訂正により、請求項11において、「前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しない」ことが特定されたので、上記取消理由は解消した。
3 新規性欠如及び進歩性欠如(第1次取消理由)について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1の「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、前記X線発生管を支持する支持構造と、前記電子線を偏向させる偏向器と、を有するX線発生装置と、」「を備え、」との発明特定事項について
a 甲1発明の「X線管12」は、本件発明1の「X線発生管」に相当する。そして、当該「X線管12」に含まれる「前記カソード14及び前記グリッドからなる部材」は、「電子ビーム16」によってX線を発生させるものであるから、当該「X線管12」は、本件発明1でいう「電子銃」「を含む」ものといえる。
b 甲1発明の「制動層32」は、「制動材料」をその内部に含むものであり、当該「制動材料」は「X線ビーム生成のため」のものであることから、当該「制動層」は、本件発明1の「ターゲット」に相当する。そして、当該「制動層」は、前記aを踏まえると、本件発明1でいう「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させる」ものといえる。
c 前記a及びbを踏まえると、甲1発明の「X線管12」は、本件発明1でいう「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含む」ものといえる。
d 甲1発明の「偏向コイル19」は、「ビーム偏向」を行うものであるから、本件発明1の「偏向器」に相当し、本件発明1でいう「前記電子線を偏向させる」ものといえる。
e 甲1発明は、「X線管12」を備えるところ、当該「X線管12」が何らかの支持構造によって支持されていることは、明らかである。したがって、甲1発明は、本件発明1でいう「前記X線発生管を支持する支持構造」を備えているといえる。
f 甲1発明の「微小焦点X線発生装置1」は、本件発明1の「X線発生装置」に相当する。
g 以上によれば、甲1発明は、本件発明1の前記発明特定事項を備えている。
(イ)本件発明1の「前記X線発生装置から放射されたX線を検出するX線検出器と、」「を備え、」との発明特定事項について
甲1発明の「像平面29内のフィルム」は、本件発明1の「X線検出器」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の前記発明特定事項を備えている。
(ウ)本件発明1の「前記X線発生装置を制御する制御装置と、を備え、」との発明特定事項について
甲1発明の「制御部34」は、本件発明1の「制御装置」に相当し、本件発明1でいう「前記X線発生装置を制御する」ものといえる。
したがって、甲1発明は、本件発明1の前記発明特定事項を備えている。
(エ)本件発明1の「前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されることを許すように前記X線発生管を支持し、」との発明特定事項について
a 前記発明特定事項は、(a)「前記支持構造」が「前記X線発生管を支持」していること、(b)その「前記支持構造」による支持が「前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されることを許すように」されていること、を特定するものである。そして、(b)については、その文言に照らせば、(i)「支持構造」が「前記X線発生管を支持」した結果初めて、「前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されること」が可能になることを要するという解釈(この場合、「X線発生管」と「ターゲット」は相互に固定されている必要がある。)と、(ii)「支持構造」による「前記X線発生管」の「支持」が、「前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されること」を妨げなければ足りるという解釈(この場合、「X線発生管」と「ターゲット」が相互に固定されている必要はなく、「X線発生管」に対して「ターゲット」が相対的に回動できれば、つまり、「ターゲット」が単に回動できれば足りる。)の2つがあり得る。
そこで本件特許明細書等の記載を参酌すると、本件発明1の技術的意義は、「前記支持構造」による支持が「前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されることを許すように」されていることによって焦点位置を変化させることなくターゲットの寿命を延ばすこと(【0005】・【0018】)にあると認められるところ、とすれば、前記技術的意義を奏するためには、「前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されること」に際して、焦点位置が変更されなければ足りるのであり、そうである以上、「X線発生管」と「ターゲット」が相互に固定されている必要はないと解される。なお、本件訂正により本件発明1には「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しない」ことがさらに特定されたものの、この特定によっては、「X線発生管」と「ターゲット」が相互に固定されていることが限定されたことにはならない。
したがって、前記発明特定事項の(b)は、(ii)の解釈で解釈すべきである。
b これを甲1発明についてみると、甲1発明は、「オフセット制御部34は、機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起される」ものであることから、ビーム偏向及びターゲット移動より、焦点22の位置を移動させるものである。このように、甲1発明は、ビーム偏向及びターゲット移動の双方の作用により、その「焦点22」が「蛇行状に、又はスパイラル状に延びる」ことから、「ターゲット23」は機器軸10に対して回転できるものであって、しかも、「ターゲット23」が機器軸10に対して回転する際には、「偏向コイル19」の位置は固定されていると解するのが自然である。そして、甲1発明は、前記(ア)eのとおり、「X線管12」の支持構造を当然に備えている。
以上のとおり、甲1発明は、支持構造が「X線管12」を支持しており、「ターゲット23」が機器軸10に対して回転できるものであることから、支持構造による「X線管12」の支持が、「ターゲット23」が機器軸10に対して回転できることを妨げていないといえる。そして、「偏向コイル19」の位置は固定されている。
したがって、甲1発明は、本件発明1の前記発明特定事項を備えている。
(オ)本件発明1の「前記制御装置は、前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて、前記ターゲットが回動される必要性があるかどうかを判定する、」との発明特定事項について
甲1発明の「制御部34」は、「遅くとも担体層33の溶融の際電子ビーム16を中断するように構成されて」いるものであり、具体的には、「そこにて電子ビーム16により、前記担体層33が溶融される時点をターゲット電流の測定により求めるものである」。加えて、当該「制御部34」は、「機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、」「順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ」るものであり、それによって、「ターゲット23の消費、消尽されていない、ないし、使用されていない領域のみが順次負荷を受け、而して、ターゲットの破壊が回避されるもの」である。
このように、当該「制御部34」は、ターゲット電流の測定によって担体層33が溶融される時点を求め、そのことによって電子ビーム16を中断するものであるとともに、ターゲット23の破壊を回避するために、ビーム偏向及びターゲット23の移動(ターゲットを回転させること)を行うものであることから、担体層33が溶融されたことが検出されるまでは、ターゲットが破壊されていない以上、ターゲット23を回転させる必要性がないことは明らかであり、逆に、担体層33が溶融されたことが検出されたときは、ターゲットが破壊されたことになる以上、ターゲット23を回転させる必要性があるものといえる。そうすると、当該「制御部34」は、実質的には、担体層33が溶融されたことを検出したか否かによってターゲット23を回転させる必要性があるか否かを判定しているものといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記制御装置は、」「前記ターゲットが回動される必要性があるかどうかを判定する」点で共通するが、その判定が、本件発明1は、「前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて」行うものであるが、甲1発明は、「担体層33の溶融」、具体的には、「電子ビーム16により、前記担体層33が溶融される時点をターゲット電流の測定」により行うものである。
(カ)本件発明1の「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しないとともに、前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」との発明特定事項について
甲1発明は、「機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、」「蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ」るものであることから、本件発明1でいう「前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ものとはいえるが、「焦点22」が順次連続する経路が「蛇行状」又は「スパイラル状」であることから、本件発明1でいう「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しない」ものとはいえない。
(キ)本件発明1の「X線撮像装置」との発明特定事項について
甲1発明の「X線撮影装置」は、本件発明1の「X線撮像装置」に相当する。
(ク)一致点及び相違点
以上によれば、本件発明1と甲1発明は以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、前記X線発生管を支持する支持構造と、前記電子線を偏向させる偏向器と、を有するX線発生装置と、
前記X線発生装置から放射されたX線を検出するX線検出器と、
前記X線発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットが回動されることを許すように前記X線発生管を支持し、
前記制御装置は、前記ターゲットが回動される必要性があるかどうかを判定し、
前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
X線撮像装置。」
<相違点1>
「前記制御装置」による「前記ターゲットが回動される必要性があるかどうか」の「判定」が、本件発明1は、「前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて」行うものであるが、甲1発明は、「担体層33の溶融」、具体的には、「電子ビーム16により、前記担体層33が溶融される時点をターゲット電流の測定」により行うものである点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しない」のに対して、甲1発明は、「ターゲット23上での焦点22の位置が各照射と共に先行の位置に対してずらされているものであって、」「或1つの照射から次の照射への移行の際ターゲット23の回転が行われるように構成されており、」「前記制御部34はオフセット制御部34であって、機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ、それにより、ターゲット23の消費、消尽されていない、ないし、使用されていない領域のみが順次負荷を受け、而して、ターゲットの破壊が回避されるものであ」る点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア)前記ア(カ)のとおり、甲1発明は、「焦点22」(電子ビーム16によりターゲット23において惹起されるものである。)の順次連続する経路が「蛇行状」又は「スパイラル状」であることから、当該経路が機器軸10を中心とした円状ということはなく、そのため、「像平面29内のフィルム」(本件発明1の「X線検出器」に相当。)から見た場合には、ターゲット23の回動の前後において、「焦点22」の位置は変化するといえる。
そのため、甲1発明は相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、甲1の他の記載をみてもこの判断を左右するものはない。
したがって、本件発明1は甲1に記載された発明とはいえない。
(イ)そして、以下のとおり、甲1発明から出発した当業者が、相違点2に係る本件発明1の構成に至るとはいえない。
すなわち、前記当業者が前記構成に至るためには、甲1発明における「焦点22」の順次連続する経路が「蛇行状」又は「スパイラル状」に延びるのに代えて、機器軸10を中心とした円形に延びるように変更する必要があると解される。しかしながら、甲1発明が、「焦点22」の順次連続する経路を「蛇行状」又は「スパイラル状」に延びるようにする技術的意味は、ターゲット23の消費等されていない領域のみが順次負荷を受けることによって、ターゲットの破壊が回避されることにあるところ(8頁2~4行)、その「蛇行状」又は「スパイラル状」という形状からみて、「ターゲット23」の破壊の回避をできるだけ延長することにもあると解される。しかるところ、当該経路を機器軸10を中心とした円形に延びるようにした場合は、「ターゲット23」の破壊の回避の延長の程度が少なくなると言わざるを得ない。そうすると、甲1発明から出発した当業者が、「焦点22」の順次連続する経路を、あえて、機器軸10を中心とした円形に延びるように変更する動機付けがあるとは言い難い。そして、この点は、甲1~10の他の記載をみても、左右されない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて新規性及び進歩性が欠如している旨主張し、その根拠として、甲1には、ターゲットの破壊を回避することを目的として、(i)偏向コイル18を用いてのビーム偏向、又は、(ii)ターゲット23の移動を行うことが開示されており、そのうち、(ii)のみについてみれば、焦点距離を変化させる態様ではないと解され、そのため、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「前記X線検出器から見た場合、前記ターゲットからX線が放射される位置は前記回動の前後において変化しない」ことを満たしていることを挙げる。しかしながら、本件発明1には、「前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」ことも特定されているのであり、これは、(i)に対応する事項であって、甲1発明との一致点であった(前記ア(カ))ことから、上記のような申立人の(ii)のみに基づく主張によれば、本件発明1との間に新たな相違点が生じてしまうことになる。そして、その新たな相違点を当業者が容易に想到し得るとはいえない。
申立人は、甲2及び3には、電子ビーム軸を固定したままターゲットを移動(回動)させることでターゲットのフレッシュな面を電子ビーム軸上にもってくることが記載されていることから、当然に、X線の焦点位置を変更させない構成となる旨主張するが、甲2及び3は、ともに、本件発明1の「偏向器」に相当する構成を備えていないから、偏向器の存在を前提とする甲1発明と組み合わせることが当業者にとって容易想到であるとはいえない。なお、甲1において、(ii)のみについての態様に係る発明を主引用発明として認定しても、甲2及び3には上記のとおり「偏向器」に相当する構成が存在しないから、結局、本件発明1の「前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている」という構成に容易に至らないことに帰する。
エ 本件発明1についての小括
以上によれば、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1をさらに限定した発明であることから、本件発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件発明11について
ア 対比
前記(1)アを踏まえ、本件発明11と甲1調整方法発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、前記X線発生管を支持する支持構造と、前記電子線を偏向させる偏向器と、を備えるX線発生装置の調整方法であって、
前記偏向器が固定された状態で少なくとも前記ターゲットを回動させる回動工程を含み、
前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
X線発生装置の調整方法。」
<相違点3>
「回動工程」が「ターゲットを回動させる」のが、本件発明11は、「前記X線発生装置の使用量、および/または、前記X線発生装置が発生するX線の変化に応じて」行うものであるが、甲1調整方法発明は、「担体層33の溶融」、具体的には、「電子ビーム16により、前記担体層33が溶融される時点をターゲット電流の測定」により行うものである点。
<相違点4>
本件発明11は、「前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しない」のに対して、甲1調整方法発明は、「ターゲット23上での焦点22の位置が各照射と共に先行の位置に対してずらされているものであって、」「或1つの照射から次の照射への移行の際ターゲット23の回転が行われるように構成されており、」「前記制御部34はオフセット制御部34であって、機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ、それにより、ターゲット23の消費、消尽されていない、ないし、使用されていない領域のみが順次負荷を受け、而して、ターゲットの破壊が回避されるものであ」る点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
相違点4に係る本件発明11の構成と相違点2に係る本件発明1の構成は実質的に同じものといえることから、前記(1)イと同様の議論が成り立つ。
申立人の主張については、前記(1)ウで説示したとおりである。
したがって、本件発明11は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明12~17について
本件発明12~17は、本件発明11をさらに限定した発明であることから、本件発明11と同様の理由で、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件発明18について
ア 対比
前記(1)アを踏まえ、本件発明18と甲1発生装置発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「電子銃および前記電子銃から放射される電子線を受けてX線を発生させるターゲットを含むX線発生管と、
前記X線発生管を支持する支持構造と、
前記電子線を偏向させる偏向器と、を備え、
前記支持構造は、前記偏向器が固定された状態で、少なくとも前記ターゲットが、前記電子銃の中心軸と一致した回動軸の周りで回動されることを許すように、前記X線発生管を支持し、
前記回動の前後において前記偏向器が前記電子線を偏向させている
X線発生装置。」
<相違点5>
「ターゲット」が、本件発明18は、「円形形状を有し、かつ、単一金属又は単一合金で構成され」るのに対して、甲1発生装置発明は、「透過ターゲット23」であって、「制動材料」を備え、「制動材料は、担体層33上の制動層32内に配置されて」いるものである点。
<相違点6>
本件発明18は、「前記回動の前後における前記ターゲットに前記電子線が入射する位置は、前記X線発生装置が配置された空間において変化しない」のに対して、甲1発生装置発明は、「ターゲット23上での焦点22の位置が各照射と共に先行の位置に対してずらされているものであって、」「或1つの照射から次の照射への移行の際ターゲット23の回転が行われるように構成されており、」「前記制御部34はオフセット制御部34であって、機器軸10外への偏向コイル19を用いてのビーム偏向により、及び、機器軸10に対して相対的なターゲット23の移動により、次のような作用が生ぜしめられる、即ち、蛇行状に、又はスパイラル状に延びる経路に沿ってのみ順次連続する焦点22が惹起されるような作用が生ぜしめられ、それにより、ターゲット23の消費、消尽されていない、ないし、使用されていない領域のみが順次負荷を受け、而して、ターゲットの破壊が回避されるものであ」る点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点6から検討する。
相違点6に係る本件発明18の構成と相違点2に係る本件発明1の構成は実質的に同じものといえることから、前記(1)イと同様の議論が成り立つ。
申立人の主張については、前記(1)ウで説示したとおりである。
したがって、本件発明18は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)本件発明19、20について
本件発明19、20は、本件発明18をさらに限定した発明であることから、本件発明18と同様の理由で、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~10に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。
4 小括
よって、本件発明1~20に係る特許は、第1次取消理由及び第2次取消理由によっては、取り消すことができない。
なお、前記第4の4のとおり、第2次取消理由及び第1次取消理由で採用しなかった特許異議申立理由はない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由によっては、本件発明1~20についての特許を取り消すことができない。また、他に本件発明1~20についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700118