特許異議申立
2025-700531
構造体および水素吸蔵構造体
- 審判番号
- 2025-700531
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-110582
- 登録番号
- 7590378
- 請求日
- 2025年05月15日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キヤノンアネルバ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【権利者】キヤノン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】高橋 恒
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 審判官 原 賢一
- 分類
- P1651.121-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7590378号発明「構造体および水素吸蔵構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7590378号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、5〕、3、〔4、6〕について訂正することを認める。
特許第7590378号の請求項1、3~6に係る特許を維持する。
特許第7590378号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7590378号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)11月6日を国際出願日とする特願2018-562143号の一部を新たな特許出願として平成31年2月7日に出願された特願2019-20829号の一部をさらに新たな特許出願として令和4年7月8日に出願されたものであり、令和6年11月18日にその特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年5月15日に、その請求項1~6に係る特許を対象として特許異議申立人高橋恒(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年7月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月25日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、それに対し、異議申立人からは意見書の提出がなかったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
本件訂正は、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、」とあるのを、「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、」とあるのを、「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、」とあるのを、「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。
(請求項4を引用する請求項6も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項2に記載の構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させることを特徴とする熱発生方法。」とあるのを、「構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、
前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、
前記複数の粒子の間の距離が1nm以上かつ10nm以下の範囲であるように前記膜が構成されている、
という構造を有し、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させることを特徴とする熱発生方法。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、3、4について
訂正事項1、3、4は、「固定部材」に対し、「融点が1400℃以上の材料で構成され」るとの限定を加え、「固定部材」の範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
次に、訂正事項1、3、4が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて検討する。
訂正前の請求項1に記載されるように、「固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含」むところ、例えば、本件明細書の【0008】で「【図1】本発明の第1実施形態の構造体の模式的な断面図。」とされる以下の【図1】
「
[図:0001434171000001.jpg]
」
には、固定部材10が、膜4と下地2の2者からなることが示されている。
ここで、膜4に関する同【0013】の「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。膜4は、複数の微結晶を含みうるが、非晶質であってもよい。膜4は、例えば、酸化物(例えば、MgO、ZrO2、ZrO2・Y2O3、CaO、SiO2およびAl2O3の少なくとも1つ)および窒化物(例えば、Si3N4およびAlNの少なくとも1つ)の少なくとも1つを含みうる。」、及び下地2に関する同【0014】の「下地2は、例えば、Si基板、または、Si基板の上にSiO2膜が形成された下地でありうるが、他の材料(例えば、金属または絶縁体)で構成されてもよい。下地2は、例えば、1400℃以上の融点を有する材料で構成されることが好ましい。下地2は、膜4と同一の材料で構成された膜等の部材であってもよいし、膜4とは異なる材料で構成された膜等の部材であってもよい。下地2は、自立した部材であってもよいし、他の部材によって支持された部材であってもよい。」には、膜4及び下地2は、融点1400℃以上の材料であることが記載されている。
そして、上述のように、上記【図1】等には、固定部材10が、膜4と下地2の2者からなることが記載され、膜4と下地2の両者は、融点が1400℃以上の材料であるから、「固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」ることになる。
そうすると、訂正事項1、3、4は、本件明細書等に記載した事項から導くことができるものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項2を引用する請求項5の引用関係を解消し、請求項5を書き下したものに、訂正事項1、3、4と同様に、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」との記載を付加し、「固定部材」に対し、「融点が1400℃以上の材料で構成され」るとの限定を加え、「固定部材」の範囲を狭めるものである。
ここで、前半の、請求項2を引用する請求項5の引用関係を解消し、請求項5を書き下すことは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、この訂正では、訂正前後で、請求項の内容は実質的に変わらないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、後半の「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」との記載を付加する訂正は、上記(1)で述べたように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上によれば、訂正事項5は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、請求項1、3、及び一群の請求項を構成する請求項〔2、5〕、〔4、6〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項1、〔2、5〕、3、〔4、6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、特許異議申立ての対象となる本件訂正後の請求項1、3~6に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。なお、「本件発明」については、本件訂正前のものに対しても区別せずに用いることがある。)は、次のとおり特定されるものである。
「【請求項1】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置され、
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、
前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、
前記膜は前記複数の粒子の各々の表面の全体と接している、
という構造を有し、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。」
「【請求項3】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置され、
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、
前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、
前記複数の粒子が、400℃、10時間の熱処理を受けた後においても相互に離隔されている、
という構造を有し、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項4】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された水素吸蔵構造体であって、
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、
前記膜は複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々は、前記膜の前記複数の微結晶の少なくとも1つに接している、
という構造を有することを特徴とする水素吸蔵構造体。
【請求項5】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造体であって、
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、
前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記固定部材は、下地と、前記下地の表面の上に配置された膜とを含み、
前記複数の粒子は、前記下地の前記表面の上に配置され前記下地の前記表面からの距離が互いに異なる2以上の粒子を含み、
前記複数の粒子の間の距離が1nm以上かつ10nm以下の範囲であるように前記膜が構成されている、
という構造を有し、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させることを特徴とする熱発生方法。
【請求項6】
請求項4に記載の水素吸蔵構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記複数の粒子が相互に離隔されるように前記固定部材の中に配置されていることによって前記複数の粒子の凝集を抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させることを特徴とする熱発生方法。」
第4 令和7年7月30日付けで通知した取消理由、及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和7年7月30日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「取消理由1」という。)
設定登録時の請求項2に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特開平5-117844号公報
(2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「取消理由2」という。)
本件特許は、設定登録時の請求項1~6の記載が下記(3)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)取消理由2の概略
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明の課題を解決するには、少なくとも、膜及び下地を含む固定部材が、「構造体の発熱時に溶融しない程度の耐熱性」を有することが必要であるといえる。
これに対し、設定登録時の請求項1~6に係る発明における特定、例えば、「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み」といった特定では、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、「構造体の発熱時に溶融しない程度の耐熱性」を有していない場合を含むものとなっている。
そうすると、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、本件発明の課題を解決することができない場合を含んでいることになるから、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
以上によれば、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、サポート要件を満たしていない。
2 異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由」という。)
本件特許は、設定登録時の請求項1~6の記載が下記(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由の概略
本件明細書の発明を実施するための形態の記載によれば、水素吸蔵金属元素を含む粒子の凝集を防止するためには、「固定部材」が、発明を実施するための形態に記載された高融点材料の膜のように、耐熱性を有する膜である必要があると認められる。
設定登録時の請求項1~6に係る発明は、「前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含み、」という構成を有するが、具体的な「固定部材」の材料が特定されておらず、「固定部材」が水素吸蔵金属元素を含む粒子が水素を吸蔵して発熱した際の温度における耐熱性を有していない場合を含んでおり、水素吸蔵金属元素を含む粒子の凝集を防止するという課題を解決できない場合を含んでいる。
よって、設定登録時の請求項1~6に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる(特許異議申立書13頁19行~15頁9行)。
なお、特許異議の申立てでは、請求項2のみを対象として、甲第1号証を証拠とし、特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)の理由が申立てられていたが、上記第2の1(2)に記載した訂正事項2によって、請求項2は削除された。これにより、請求項2に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下されることになるから、請求項2のみを対象とする上記の理由は、特許異議の申立理由にないものとなった。
第5 当審の判断
当審は、上記取消理由1、2及び申立理由のいずれの理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 進歩性欠如に関する取消理由1について
取消理由1は、設定登録時の請求項2を対象とするものであるところ、上記第2の1(2)に記載した訂正事項2によって、請求項2は削除されたため、取消理由1には、理由がない。
2 サポート要件違反に関する取消理由2及び申立理由について
上記第4の1(3)取消理由2の概略、及び同2(2)申立理由の概略によれば、取消理由2及び申立理由は同旨であるところ、両理由とも、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、固定部材が「構造体の発熱時に溶融しない程度の耐熱性」を有していない場合を含むため、サポート要件を充足していない、というものである。
これに対し、本件訂正によって、本件発明1、3~6では、「固定部材」が、「融点が1400℃以上の材料で構成さ」れることが特定された。
そして、本件明細書の、例えば【0015】の「複数の粒子3を相互に離隔させる高融点材料の膜4が存在しない場合、粒子3が水素を吸蔵して発熱する際に、その熱によって近傍に位置する2以上の粒子3が凝集しうる。これにより個々の粒子の寸法が大きくなり、水素吸蔵能力を低下させうる。複数の粒子3を相互に離隔させる高融点材料の膜4の存在は、粒子3が水素を吸蔵する際に発生する熱によって近傍に位置する2以上の粒子3が凝集することを抑制する。また、高融点材料の膜4の存在は、粒子3が水素を吸蔵する際に発生する熱に起因して粒子3と膜4の構成物質との合金が形成されることも抑制する。膜4に必要とされる耐熱性は、構造体1の発熱時に溶融しない程度の耐熱性である。構造体1の発熱時の温度は、粒子3の材料や粒子3の構造体1における密度、水素同位体ガス圧力等に依存するため、一律に規定することはできない。それゆえ、膜4の材料は、使用環境に応じて適宜選択することが望ましいが、例えば1400℃以上の融点を有する材料である。」との記載によれば、粒子3が水素を吸蔵する際に発生する熱によって近傍に位置する2以上の粒子3が凝集することを抑制する高融点材料の膜4に必要とされる耐熱性は、構造体1の発熱時に溶融しない程度の耐熱性であって、その耐熱性を有する材料は、1400℃以上の融点を有するものであるとされている。
また、同【0014】の「下地2は、例えば、Si基板、または、Si基板の上にSiO2膜が形成された下地でありうるが、他の材料(例えば、金属または絶縁体)で構成されてもよい。下地2は、例えば、1400℃以上の融点を有する材料で構成されることが好ましい。下地2は、膜4と同一の材料で構成された膜等の部材であってもよいし、膜4とは異なる材料で構成された膜等の部材であってもよい。下地2は、自立した部材であってもよいし、他の部材によって支持された部材であってもよい。」との記載によれば、下地2についても、膜4と同様に、例えば1400℃以上の融点を有する材料であればよいとされ、上記【0013】の記載も考慮すると、この材料も、構造体1の発熱時に溶融しない程度の耐熱性を有するものであるといえる。
そうすると、本件訂正によって、本件発明1、3~6で、「固定部材」が、「融点が1400℃以上の材料で構成さ」れることが特定されることによって、固定部材が「構造体の発熱時に溶融しない程度の耐熱性」を有していない場合を含むことはないため、本件発明1、3~6は、サポート要件を充足しているといえる。
以上によれば、取消理由2及び申立理由には、理由がない。
第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件特許1、3~6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、上記取消理由2及び上記申立理由では、本件特許1、3~6を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、3~6を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許2は、本件訂正により削除され、本件特許2に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700531