特許異議申立
2023-700387
放電ランプおよびオゾン生成方法
- 審判番号
- 2023-700387
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-081080
- 登録番号
- 7155481
- 請求日
- 2023年04月17日
- 審決日
- 2024年08月02日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社オーク製作所
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【異議申立人】佐々木 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 波多江 進
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1651.113-YAA(H01J) / P1651.121-YAA(H01J) / P1651.536-YAA(H01J) / P1651.537-YAA(H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7155481号発明「放電ランプおよびオゾン生成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7155481号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13について訂正することを認める。
特許第7155481号の請求項2、5~6、8、12~13に係る特許を維持する。
特許第7155481号の請求項1、3~4、7、9~11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7155481号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成29年3月28日に出願した特願2017-63805号の一部を令和3年5月12日に新たな特許出願としたものであって、令和4年10月11日にその特許権の設定登録がされ、令和4年10月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 4月17日付け:特許異議申立人佐々木毅(以下「申立人」
という。)による請求項1~13に係る特
許に対する特許異議の申立て
同年 7月21日付け:取消理由通知書(以下、これに係る取消理
由を「第1次取消理由」という。)
同年 9月21日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下、この訂正請求書を「第1次訂正請求書
」といい、第1次訂正請求書による訂正を
「第1次訂正」という。)の提出
同年11月 6日付け:訂正拒絶理由通知書
同年12月 7日付け:特許権者による意見書の提出
令和 6年 1月17日付け:申立人による意見書の提出
同年 3月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下、こ
れに係る取消理由を「第2次取消理由」と
いう。)
同年 5月17日付け:特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
同年 6月13日付け:令和6年5月17日付け訂正請求書に対す
る手続補正指令書(方式)
同月19日付け:手続補正書(方式)(以下、この手続補正
書(方式)により補正された訂正請求書を
「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求
書による訂正を「本件訂正」という。)
なお、本件訂正に係る請求によって、第1次訂正に係る請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
また、当合議体は、本件訂正に係る請求について、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、第1次訂正後の同記載と比べて、請求項1、3、7、9~10が削除された点においてのみ相違し、その余の請求項の記載に相違はなく、本件訂正に係る請求の内容は、実質的に、申立人に意見書を提出する機会を与えた第1次訂正に係る請求の内容に包含されているといえることから、当合議体は、申立人に改めて意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の内容について
(1) 訂正事項1(請求項1)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2(請求項2)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項2に、
「前記放電容器が、保持部材によって保持されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、
発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれておらず、
前記放電容器が、保持部材によって保持されていることを特徴とするエキシマランプ。」と訂正する。
(3) 訂正事項3(請求項3)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4) 訂正事項4(請求項4)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5) 訂正事項5(請求項5)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプを備えたことを特徴とする紫外線照射装置。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
前記エキシマランプが、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置であることを特徴とする紫外線照射装置。」と訂正する。
(6) 訂正事項6(請求項6)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1乃至4のいずれかに記載のエキシマランプを備えたことを特徴とするオゾン発生装置。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えたオゾン発生装置であって、
前記エキシマランプが、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じることを特徴とするオゾン発生装置。」と訂正する。
(7) 訂正事項7(請求項7)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8) 訂正事項8(請求項8)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項8に、
「前記放電容器の外周面が、前記放電容器から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る遮光部材によって覆われていることを特徴とする請求項7に記載のエキシマランプ。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面が、前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る非導電性の遮光部材によって覆われていることを特徴とするエキシマランプ。」と訂正する。
(9) 訂正事項9(請求項9)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(10) 訂正事項10(請求項10)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(11) 訂正事項11(請求項11)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(12) 訂正事項12(請求項12)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項7乃至11のいずれかに記載のエキシマランプを備えたことを特徴とする紫外線照射装置。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置であることを特徴とする紫外線照射装置。」と訂正する。
(13) 訂正事項13(請求項13)
本件特許登録時の特許請求の範囲の請求項13に、
「請求項7乃至11のいずれかに記載のエキシマランプを備えたことを特徴とするオゾン発生装置。」
と記載されているのを、
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えたオゾン発生装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じることを特徴とするオゾン発生装置。」と訂正する。
(14) 一群の請求項及び別の訂正単位としての求めについて
本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~6について請求されているところ、特許権者は、訂正後の請求項2、3、4、5及び6について、当該各請求項に係る訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
また、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項7~13についても請求されているところ、特許権者は、訂正後の請求項8、9、10、11、12及び13について、当該各請求項に係る訂正が認められるときに請求項7とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 本件訂正の適否について
(1) 訂正事項1、3~4、7、9~11
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1、3~4、7、9~11は、それぞれ本件訂正前の請求項1、3~4、7、9~11を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1、3~4、7、9~11は、本件訂正前の請求項1、3~4、7、9~11を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項1、3~4、7、9~11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項1、3~4、7、9~11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は以下の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項2は、請求項1の記載を引用していたところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項とする訂正。
(ii) 前記(i)に伴い、当該請求項1に特定されていた「紫外線」について、「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
(iii) 前記(i)に伴い、当該請求項1に特定されていた「放電ガスが封入された筒状の放電容器」について、「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」ことを限定する訂正。
前記(i)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(ii)及び(iii)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)の訂正に係る事項によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(ii)の訂正に係る事項は、本件特許の設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の「エキシマランプで、・・・放電容器からランプ外に向けて紫外線を放射する。紫外線照射によって生じるオゾンは、・・・」(【0002】)、「・・・放電容器20の中央部付近から、局所的に紫外線が放電容器20外へ放射される。これにより、中央部付近においてのみオゾンが生成し、・・・」(【0025】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
前記(iii)の訂正に係る事項について、本件明細書等には、「・・・例えば、放電容器の外径は、3mm~10mmの範囲であり、放電容器の軸方向長さが、10mm~30mmの範囲であり、放電ガスが、0.1kPa~30kPaの範囲内に定められた希ガスで構成することが可能である。・・・」(【0011】)、「放電容器20の放電空間Sには、キセノンガス1Torr~225Torr(0.1kPa~30kPa、更に好ましくは7kPa~20kPa)が封入されている。・・・」(【0019】)と記載されており、発光物質としての臭素が放電容器内に含まれていることは記載されていない。そして、放電容器の技術分野において、放電容器内に発光物質としての臭素が含まれていることが技術常識であるとも認められない。このように、本件明細書等の記載及び技術常識に照らしては、放電容器内に発光物質としての臭素が含まれていることが想定し難いことから、前記(iii)の訂正のように、「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」ことを記載しても、このことによって、新たな技術的事項が導入されることはない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3) 訂正事項5
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、次の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項5は請求項1~4のいずれかの記載を引用していたところ、そのうち請求項1の記載を引用するものに限定する訂正。
(ii) 前記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である本件訂正後の請求項5とする訂正。
(iii) 前記(ii)に伴い、当該請求項1に特定されていた「紫外線」について「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
(iv) 本件訂正前の請求項5に特定されていた「紫外線照射装置」について、「前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置である」ことを限定する訂正。
前記(i)の訂正について、引用する請求項数を削減するものであることから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記(ii)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(iii)及び(iv)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)及び(ii)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(iii)の訂正に係る事項は、前記(2)イ(ii)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
前記(iv)の訂正に係る事項は、本件明細書等の「放電ランプ10は、内部に放電空間Sを形成し、石英ガラスなどで成形される筒状の放電容器20を備える。」(【0017】)、「一対の電極30、40に覆われていない放電容器20の中央部付近では、細い領域で微弱な放電が生じて、放射される紫外線の照度が低い。一方、放電容器20の両端部側では、太い領域で強い放電CCが生じて、放射される紫外線の照度は高いが、一対の電極30、40が放電容器の外周面20Sを覆う位置に対向配置されて、放電から放射される紫外線を遮る遮光部となるため、強い放電CCから放射された紫外線の一部が一対の電極30、40によって遮光される。電極以外の非導電性部材により紫外線を遮る遮光部として、放電容器の外周面を覆っても良い。」(【0024】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4) 訂正事項6
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、次の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項6は請求項1~4のいずれかの記載を引用していたところ、そのうち請求項1の記載を引用するものに限定する訂正。
(ii) 前記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である本件訂正後の請求項6とする訂正。
(iii) 前記(ii)に伴い、当該請求項1に特定されていた「紫外線」について「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
前記(i)の訂正について、引用する請求項数を削減するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記(ii)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(iii)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)及び(ii)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(iii)の訂正に係る事項は、前記(2)イ(ii)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5) 訂正事項8
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は、次の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項8は、請求項7の記載を引用していたところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項とする訂正。
(ii) 前記(i)に伴い、当該請求項7に特定されていた「紫外線」について「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
(iii) 本件訂正前の請求項8に「前記放電容器から局所的に紫外線が放射される」と特定されていたところ、局所的に紫外線が放射される放電容器の位置について、放電容器の「外周面」であることを限定する訂正。
(iv) 本件訂正前の請求項8に特定されていた「遮光部材」について、「非導電性」であることを限定する訂正。
前記(i)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(ii)、(iii)及び(iv)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(ii)の訂正に係る事項は、前記(2)イ(ii)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
前記(iii)の訂正に係る事項は、前記(3)イ(iv)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
前記(iv)の訂正に係る事項は、本件明細書等の「電極以外の非導電性部材により紫外線を遮る遮光部として、放電容器の外周面を覆っても良い。」(【0024】)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(6) 訂正事項12
ア 訂正の目的の適否
訂正事項12は、次の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項12は請求項7~11のいずれかの記載を引用していたところ、そのうち請求項7の記載を引用するものに限定する訂正。
(ii) 前記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である本件訂正後の請求項12とする訂正。
(iii) 前記(ii)に伴い、当該請求項7に特定されていた「紫外線」について「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
(iv) 本件訂正前の請求項12に特定されていた「紫外線照射装置」について、「前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置である」ことを限定する訂正。
前記(i)の訂正について、引用する請求項数を削減するものであることから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記(ii)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(iii)及び(iv)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)及び(ii)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(iii)の訂正に係る事項は、前記(2)イ(ii)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
前記(iv)の訂正に係る事項は、前記(3)イ(iv)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(7) 訂正事項13
ア 訂正の目的の適否
訂正事項13は、次の内容からなる。
(i) 本件訂正前の請求項13は請求項7~11のいずれかの記載を引用していたところ、そのうち請求項7の記載を引用するものに限定する訂正。
(ii) 前記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である本件訂正後の請求項13とする訂正。
(iii) 前記(ii)に伴い、当該請求項7に特定されていた「紫外線」について「オゾンを生成する波長を有する」ことを限定する訂正。
前記(i)の訂正について、引用する請求項数を削減するものであることから、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
前記(ii)の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。
前記(iii)の訂正は、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
前記(i)及び(ii)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。
前記(iii)の訂正に係る事項は、前記(2)イ(ii)と同様の理由で、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 小括
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(8) 訂正の適否についての判断の小括
以上のとおり、訂正事項1~13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。また、当該訂正事項1~13に係る訂正後の請求項1~13は、特許異議の申立てがされている請求項であるので、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項所定の独立特許要件は課されない。そして、前記1(14)のとおり、特許権者は、訂正後の請求項2、3、4、5、6、8、9、10、11、12及び13について、当該各請求項に係る訂正が認められるときに、請求項1又は請求項7とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13について訂正することを認める。
第3 本件発明の認定
本件訂正の適否については前記第2の2のとおりであることから、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、次に示す本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【本件発明1】
(削除)
【本件発明2】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、 放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、
発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれておらず、
前記放電容器が、保持部材によって保持されていることを特徴とするエキシマランプ。
【本件発明3】
(削除)
【本件発明4】
(削除)
【本件発明5】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
前記エキシマランプが、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置であることを特徴とする紫外線照射装置。
【本件発明6】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えたオゾン発生装置であって、
前記エキシマランプが、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じることを特徴とするオゾン発生装置。
【本件発明7】
(削除)
【本件発明8】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面が、前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る非導電性の遮光部材によって覆われていることを特徴とするエキシマランプ。
【本件発明9】
(削除)
【本件発明10】
(削除)
【本件発明11】
(削除)
【本件発明12】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置であることを特徴とする紫外線照射装置。
【本件発明13】
オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えたオゾン発生装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じることを特徴とするオゾン発生装置。」
第4 取消理由の概要及び当事者が提出した証拠
1 第2次取消理由の概要
本件特許登録時の請求項1(なお、第1次訂正における請求項1に係る訂正は認められなかった。)及び第1次訂正後の請求項3、7、9~10に係る特許に対して、当審において特許権者に通知した第2次取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許登録時の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許登録時の請求項1に係る発明及び第1次訂正後の請求項3、7、9~10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証に記載された発明及び必要に応じて甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 第1次取消理由の概要
本件特許登録時の請求項1~13に係る特許に対して、当審において特許権者に通知した第1次取消理由(第2次取消理由に係るものを除く。)の概要は、次のとおりである。
本件特許登録時の請求項4~6、11~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件特許登録時の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件特許登録時の請求項4~5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許登録時の請求項2、4~5、8、11~12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証に記載された発明及び必要に応じて甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 当事者が提出した証拠
以下、「第」及び「号証」を略して表記する。
(1) 申立人が提出した証拠
甲1:特開2003-198010号公報
甲2:特開2008-146906号公報
甲3:IDW/AD’16において発表された技術論文の内容が記載されている書面(”Development of the Flexible Surface Light Source using Luminous Array Film Technology”, Kenji Awamoto, et. al.)
甲4:特開平9-17582号公報
甲5:特開2003-36703号公報
甲6:特開2005-327569号公報
甲7:特開2001-76682号公報
甲8:国際公開第2016/125708号
甲9:特開平5-82102号公報
甲10:特開2012-64382号公報
甲11:特開平1-226701号公報
参考文献1:特開平10-69886号公報
参考文献2:特開2006-92800号公報
参考文献3:特開2016-207553号公報
(2) 特許権者が提出した証拠
乙1:特開2015-201300号公報
乙2:特開2002-151013号公報
乙3:特開2002-151761号公報
乙4:特開2003-331793号公報
乙5:特開2004-31059号公報
乙6:広辞苑第七版(た-ん 2550頁)
乙7:特開平7-288110号公報
乙8:広辞苑第七版(た-ん 2897頁)
乙9:特開2010-27268号公報
乙10:特開2003-331782号公報
乙11:広辞苑第七版(あ-そ 1732頁)
第5 第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由についての判断
1 判断の概要
当合議体は、本件発明2、5~6、8、12~13に係る特許について、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。なお、本件発明1、3~4、7、9~11は、本件訂正により削除された。
2 第2次取消理由について
第2次取消理由を通知した請求項1、3、7、9~10は、本件訂正により削除されたから、第2次取消理由は解消している。
3 第1次取消理由(第2次取消理由に係るものを除く。)について
(1) 明確性要件違反について
第1次取消理由における明確性要件違反は、本件特許登録時の請求項4、11の「前記一対の電極に対し、1kHz~500kHzの範囲の周波数で5kV~10kVの範囲の電圧が印加される」という記載が不明確であるというものであるが、当該各請求項は本件訂正により削除されたから、当該明確性要件違反は解消している。
(2) サポート要件違反について
第1次取消理由におけるサポート要件違反は、本件特許登録時の請求項1~13に係る発明は、エキシマランプから放射される紫外線の波長がオゾンを生じさせる旨の特定がないため、本件明細書等の記載及び技術常識に基づいて当業者が課題を解決できることを認識できる範囲のものであるとはいえないというものである。
これに対して、本件訂正により、請求項2、5、6、8、12~13の各々において、エキシマランプが放射する紫外線が「オゾンを生成する波長を有する」ことが特定されたから、当該サポート要件違反は解消している。
(3) 新規性欠如及び進歩性欠如について
第1次取消理由における第2次取消理由に係るもの以外の新規性欠如は、本件特許登録時の4~5に係る発明は、甲1に記載された発明であるというものであり、同進歩性欠如は、本件特許登録時の請求項2、4~5、8、11~12に係る発明は、甲1に記載された発明及び必要に応じて甲1に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。これらの請求項のうち、請求項4、11は本件訂正により削除された。そこで以下では、本件発明5の甲1に記載された発明に基づく新規性欠如、並びに本件発明2、5、8、12の甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術事項に基づく進歩性欠如について検討する。
ア 甲1の記載事項及び甲1発明の認定
(ア) 甲1の記載事項
甲1(特開2003-198010号公報)には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】フッ素レーザ装置より出射されるレーザ光の波長に近い発光スペクトルを有し、この発光スペクトル線を利用してフッ素レーザ装置からのレーザ光の発振波長を安定化させるためのフッ素レーザ用基準光源において、
前記基準光源は、概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有するとともに、容器内には発光物質として臭素を有し、
この放電容器の外面には、一対の電極が互いに離間して配置しており、かつ、前記臭素の封入量D(μmol/cc)と前記電極の端部と前記窓部材との距離L(mm)との積D・Lが0.25以下であることを特徴とするからフッ素レーザ用基準光源。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しようとする課題は、波長157nmの光を放出するフッ素レーザ装置用の基準光源であって、ステッパーやスキャン露光等の投影露光装置の光源として実用的意味において使用できる基準光源を提供することである。」
「【0012】このように本願発明は、フッ素レーザ装置を半導体製造のための露光装置用光源として使う場合に、実用的観点から十分に効果を有するという意味において、臭素を発光原子とすることが最適であることを見出し、かつ、臭素を封入した場合の最適な構造として電極と窓部材の距離の関係を規定したものである。また、臭素原子はフッ素レーザの発振波長である157.6299nmに極めて近い、157.484nmと157.639nmの二つの発光ラインを持ち、臭素原子はその他の原子に比べて、このフッ素レーザの発振波長に近い波長に高い光強度を有するもので実用的意味において効果的である。
【0013】ここで、臭素を封入するランプの場合、臭素原子を発光種とするため、ある濃度以上になると発光線に関与する二つのエネルギー準位のうち、低い方の準位に位置する原子は、放出された光を吸収することで高い準位に励起される、いわゆる自己吸収を生じる。一般にスペクトル線は、濃度や温度の上昇に伴う波長的な広がりや中心波長のシフトを生じる。ランプ内部に封入するBr量は、より低濃度である方が、波長の広がりや波長のシフトを小さく抑えることができ、基準光源としてより好適なものとなる。そして、放電プラズマと光取出窓との間に距離を有すると、この領域にも臭素原子が多量に存在しており、ここで生じる自己吸収がランプから放射される光を減衰させていることが考えられる。このため、本願発明では自己吸収が生じる領域を小さくすることに着目してその数値範囲を見出したのである。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明のフッ素レーザ装置の発振レーザ光を制御するための基準光源を示す。放電容器1は本体ケース2と窓部材3から構成される。本体ケース2は概略円筒形状をしており、例えば、ホウケイ酸ガラスから形成される。窓部材3は容器内部で生成した真空紫外光を取出すためのもので合成石英ガラスからなる概略円盤状部材が本体ケース2の一端を塞ぐように取付けられる。ここで、本体ケース2の一端は、窓部材3との接着を容易にするために、熱膨張係数を少しずつ変化させたガラスを段継ぎに接続しており、電極と窓部材までの距離Lを形成する。なお、本体ケース2は合成石英ガラスにより形成することが可能であり、この場合には窓部材3と同一材料であるため、段継ぎ構造を採用することなく直接接着することで気密封止構造を形成できる。さらに、窓部材3は合成石英ガラス以外にフッ化マグネシウムを採用することができる。数値例をあげると、放電容器は、長さ150mm、外径20mmである。
【0015】本体ケース2の外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられており、この電極4(4a、4b)からの接続線が交流電源に接続される。電極4は、例えば、銅、アルミニウムからなるもので薄膜状のものが本体ケース2に密着する形で巻き付けられる。数値例をあげると、電極4の幅は10mmであり、電極4aと放電容器の端部との距離20mm、電極4bと窓部材3との距離50mmである。なお、電源からの供給は、正弦波、矩形波、フライバックによるパルス点灯、あるいはバースト点灯なども可能である。
【0016】放電容器1の内部には、発光成分として臭素原子、点灯始動用バッファガスとしてのキセノンが封入される。後述するが発光成分としての臭素原子は5.0×10-5~9.0×10-3μmol/ccの範囲で封入される。一3方、希ガスはキセノン、アルゴン、クリプトンから選ばれた少なくとも1種のガスが採用され、0.3kPa~10kPa(常温において)の範囲で封入される。」
「【0018】図2~図4は基準光源の他の形態を示すものである。図2は放電容器2が電極4a、4b間で細管形状となっており、放電プラズマは部分的に狭窄するのではなく、細管部において全域に発生する。図3は基準光源1の構成としては、図1に示すものと同一であるが、封入ガス圧力や高周波電圧の選択によって、放電プラズマの形態が変化している状態を示す。図4は放電容器の形状は図1,3と同じであるが、電極の構成が異なっており、放電容器の長手方向に一対の電極が配置する。
【0019】本発明は、放電容器の放電プラズマが生じる領域と光透過窓までの距離L(mm)と放電容器内の臭素原子の封入量D(μmol/cc)との積が放電ランプからの放射強度及び輝線形状に大きく影響することを見出し、この点を下記実験によって検証した。図5は波長157.639nm近辺のスペクトルを示し、図6は波長157.484nm近辺のスペクトルを示す。横軸は波長を表し、縦軸はD・L=0の時の強度を100としたときの相対値を示す。図では、D・Lの値が、0、0.09、0.15、0.21、0.25、0.30における波形を示している。
【0020】図5を見ると、D・Lの値が、0、0.09、0.15の場合は、スペクトル波形は頂点が一つの形状をしており、この頂点部分が波長157.639nmであることが分かる。それに比べて、D・Lの値が、0.21、0.25、0.3の場合は、頂点に相当する波長157.639nmに窪みを形成していることがわかる。すなわち、この場合は自己吸収によって波長157.639nmが減衰していることを示す。
【0021】また、図6を見ると、D・Lの値が、0、0.09、0.15、0.21、0.25の場合は、スペクトル波形は頂点が一つの形状をしており、この頂点部分が波長157.484nmであることが分かる。それに比べて、D・Lの値が、0.30の場合は、頂点に相当する波長157.484nmに窪みを形成していることがわかる。すなわち、この場合も自己吸収によって波長157.484nmが減衰していることを示す。
【0022】以上、図5、図6に示す実験結果から、放電容器内の臭素原子の封入量D(μmol/cc)と放電容器の放電プラズマが生じる領域と光透過窓までの距離L(mm)の積が、0~0.25であれば、157.639nm、157.484nmの内、少なくとも一方は、自己吸収による影響を受けることなく、基準光源に適した放電ランプを構成することができる。また、0~0.15であれば臭素原子の発光波長が2つとも自己吸収の影響を受けないことが示される。」
「【0028】以上説明したように、この発明のフッ素レーザ装置用基準光源は、臭素を発光原子とするとともに、最適な構造として電極と窓部材の距離の関係を規定することで、臭素の自己吸収による影響を受けることなく放射強度の十分な光源を提供することができる。」
「【図1】
[図:0001415265000001.jpg]
【図2】
[図:0001415265000002.jpg]
【図3】
[図:0001415265000003.jpg]
【図4】
[図:0001415265000004.jpg]
」
(イ) 甲1の記載事項から把握できる事項の認定
前記(ア)の甲1の記載事項から、図1に係るフッ素レーザ装置用基準光源(以下「図1基準光源」という。)について、以下の技術的事項を把握することができると認められる。
a 図1基準光源においては、放電容器1内に放電プラズマが存在するところ、その放電プラズマの形態は、当該図1及び【0018】の「図2~図4は基準光源の他の形態を示すものである。図2は放電容器2が電極4a、4b間で細管形状となっており、放電プラズマは部分的に狭窄するのではなく、細管部において全域に発生する。」の記載によれば、部分的に狭窄するものであるといえる。そして、当該図1からは、図1基準光源において、このように部分的に狭窄している放電プラズマが、リング状の電極4a及び4bの間を跨がって生じており、リング状の電極4a及び4bの間においては放電プラズマが狭窄する一方、リング状の電極4a及び4bのそれぞれの径方向内側においては放電プラズマが狭窄していない部分があることが見て取れる。
b 図1基準光源において、当該図1及び【0014】の「電極と窓部材までの距離L」の記載によれば、距離Lは、電極4bと窓部材3までの距離であるといえる。そして、【0022】には、当該距離Lが放電容器の放電プラズマが生じる領域と光透過窓までの距離L(mm)であって、これと放電容器内の臭素原子の封入量D(μmol/cc)との積が、0~0.25であれば、臭素原子の二つの発光ラインの波長の内、少なくとも一方は、自己吸収による影響を受けることなく、基準光源に適した放電ランプを構成することができることが記載されており、【0013】には、放電プラズマと光取出窓との間に距離(距離Lと解される。)を有すると、この領域にも臭素原子が多量に存在することから自己吸収が生じ、ここで生じる自己吸収がランプから放射させる光を減衰させていることが考えられることが記載されている。このように、図1基準光源において、放電容器内の臭素原子の封入量Dと電極4bと窓部材3までの距離Lとの積D・Lが0~0.25であれば、当該臭素原子の二つの発光ラインの波長の内、少なくとも一方は自己吸収による影響を受けることがなく、しかも、Lを有すると自己吸収が生じることが記載されていることから、甲1の記載に接した当業者であれば、電極4bと窓部材3までの距離Lを0にできることを想定できるといえる。
c 図1からは、放電容器内において、電極4a及び電極4b間には、放電プラズマ4が発生するのみであり、導電体等の部材は配置されない様子が見て取れる。また、甲1には、他に、放電容器内において、電極4a及び電極4b間に導電体を配置することは記載されていない。そうすると、図1基準光源では、放電容器内において、電極4a及び電極4b間に導電体が配置されていないものといえる。
d 図1からは、電極4aは筒状の放電容器1の一端面の近傍に存在することが見て取れる。
(ウ) 甲1発明の認定
前記(ア)及び(イ)によれば、甲1には、図1に係るフッ素レーザ用基準光源(図1基準光源)について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに引用発明等の認定に用いた段落等の記載を括弧内に付してある。以下同じ。)。
<甲1発明>
「フッ素レーザ装置より出射されるレーザ光の波長に近い発光スペクトルを有し、この発光スペクトル線を利用してフッ素レーザ装置からのレーザ光の発振波長を安定化させるためのフッ素レーザ用基準光源において、
前記基準光源は、概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有するとともに、容器内には発光物質として臭素を有し、
この放電容器の外面には、一対の電極が互いに離間して配置しており、かつ、前記臭素の封入量D(μmol/cc)と前記電極の端部と前記窓部材との距離L(mm)との積D・Lが0.25以下であるフッ素レーザ用基準光源であって、(【請求項1】)
臭素原子はフッ素レーザの発振波長である157.6299nmに極めて近い、157.484nmと157.639nmの二つの発光ラインを持ち、(【0012】)
放電容器1は概略円筒形状の本体ケース2と窓部材3から構成されており、(【0014】)
窓部材3は容器内部で生成した真空紫外光を取出すためのもので合成石英ガラスからなる概略円盤状部材が本体ケース2の一端を塞ぐように取付けられ、(【0014】)
本体ケース2は合成石英ガラスにより形成されており、(【0014】)
本体ケース2の外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられており、(【0015】)
電極4は、例えば、銅、アルミニウムからなるもので薄膜状のものが本体ケース2に密着する形で巻き付けられており、この電極4(4a、4b)からの接続線が交流電源に接続され、(【0015】)
放電容器内において、電極4a及び電極4b間に導電体が配置されておらず、(前記(イ)c)
電極4aは筒状の放電容器1の一端面の近傍に存在し、(前記(イ)d)
電極4bと窓部材3までの距離Lを0にでき、(前記(イ)b)
放電容器1の内部には、発光成分として臭素原子、点灯始動用バッファガスとしてのキセノンが封入され、(【0016】)
封入ガス圧力や高周波電圧の選択によって、放電プラズマの形態が変化するものであって、(【0018】)
放電プラズマが、リング状の電極4a及び4bの間を跨がって生じており、リング状の電極4a及び4bの間においては放電プラズマが狭窄する一方、リング状の電極4a及び4bのそれぞれの径方向内側においては放電プラズマが狭窄していない部分がある、(前記(イ)a)
フッ素レーザ用基準光源。」
イ 本件発明2について
(ア) 対比
本件発明2と甲1発明を対比する。
a 本件発明2の「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、」との特定事項について
(a) 甲1発明の「フッ素レーザ用基準光源」は、本件発明2の「エキシマランプ」に相当する。すなわち、まず、当該「フッ素レーザ用基準光源」においては、「合成石英ガラスから形成され」た「本体ケース2」の「外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられており」、「この電極4(4a、4b)からの接続線が交流電源に接続されており」、「高周波電圧の選択」がなされるものであって、「放電プラズマ」を生じるものであるから、誘電体バリア放電が生じているといえる。そして、当該「フッ素レーザ用基準光源」において「放電容器1の内部には、発光成分として臭素原子、点灯始動用バッファガスとしてのキセノンが封入されて」いることから、技術常識に照らせば、当該「フッ素レーザ用基準光源」は、前記の誘電体バリア放電を利用して、希ガス原子である「キセノン」とハロゲン原子である「臭素原子」によって形成されるエキシマからの光を放射するものであるといえる。
したがって、当該「フッ素レーザ用基準光源」は、本件発明2の「エキシマランプ」に相当する。
(b) 甲1発明の「真空紫外光」は、その波長が「157.484nmと157.639nm」であって、これらの真空紫外光の波長がオゾンを生成する波長であることは技術常識であるから、甲1発明の「真空紫外光」は、本件発明2の「オゾンを生成する波長を有する紫外線」に相当する。そして、甲1発明の「フッ素レーザ用基準光源」は、本件発明2でいう「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射する」ものといえる。
(c) したがって、甲1発明は、本件発明2の前記特定事項を満たしている。
b 本件発明2の「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、」との特定事項について
(a) 甲1発明における「臭素原子」及び「キセノン」は、いずれも、本件発明2における「放電ガス」に相当する。また、甲1発明における「概略円筒状の放電容器」は、本件発明2における「筒状の放電容器」に相当する。そして、甲1発明は、「放電容器1の内部には、発光成分として臭素原子、点灯始動用バッファガスとしてのキセノンが封入され」ていることから、甲1発明の「概略円筒状の放電容器」は、本件発明2でいう「放電ガスが封入された」ものといえる。
(b) したがって、甲1発明は、本件発明2の前記特定事項を満たしている。
c 本件発明2の「それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、」との特定事項について
(a) 甲1発明の「電極4a」及び「電極4b」は、本件発明2の「一対の電極」に相当する。
(b) 甲1発明は、「放電容器1は概略円筒形状の本体ケース2と窓部材3から構成されており」、「本体ケース2の外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられて」いるものである。ここで、甲1発明は、「概略リング状」の電極が「概略円筒形状」の本体ケースに巻き付けられているのであるから、「概略リング状」のリングの幅方向が「概略円筒形状」の円筒の軸方向に一致していると解される。そうすると、甲1発明の電極4a及び電極4bは、それぞれ放電容器の外周面に沿って軸方向に延びているといえる。
したがって、甲1発明は、本件発明2でいう「一対の電極」が「それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び」るものといえる。
(c) 甲1発明の「電極4a」及び「電極4b」について、「この放電容器の外面には、一対の電極が互いに離間して配置して」いるものであるから、放電容器の軸方向に沿って対向配置されているといえる。そして、甲1発明の「電極4a」及び「電極4b」は、放電容器の外面に「互いに離間して」配置されているから、放電容器の中央部を挟んで配置されるものといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明2でいう「一対の電極」が「前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される」ものといえる。
(d) したがって、甲1発明は、本件発明2の前記特定事項を満たしている。
d 本件発明2の「前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、」との特定事項について
(a) 甲1発明は、「放電容器内において、電極4a及び電極4b間に導電体が配置されて」いないものであるから、本件発明2でいう「前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されて」いないものである。
(b) したがって、甲1発明は、本件発明2の前記特定事項を満たしている。
e 本件発明2の「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、」との特定事項について
(a) 甲1発明は、「合成石英ガラスにより形成され」た「本体ケース2」の「外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられており」、「電極4(4a、4b)からの接続線が交流電源に接続され」、「高周波電圧の選択」がなされるものであって、「放電プラズマ」を生じるものであるから、本件発明2でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で」、「誘電体バリア放電が生じ[る]」ものといえる。
また、甲1発明において、「放電プラズマが、リング状の電極4a及び4bの間を跨がって生じており、リング状の電極4a及び4bの間においては放電プラズマが狭窄する一方、リング状の電極4a及び4bのそれぞれの径方向内側においては放電プラズマが狭窄していない部分がある」ことは、本件発明2でいう「前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ[る]」ことに相当する。
(b) したがって、甲1発明は、本件発明2の前記特定事項を満たしている。
f 本件発明2の「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれておらず、」との特定事項について
甲1発明は、「発光物質として臭素を有」するものであるから、前記特定事項において本件発明2と相違する。
g 本件発明2の「前記放電容器が、保持部材によって保持されている」との特定事項について
甲1発明は、放電容器が保持部材によって保持されているかどうかは不明であるから、前記特定事項において本件発明2と相違する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明2と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点1>
「 オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じるエキシマランプ」である点。
<相違点1>
本件発明2は、「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」のに対して、甲1発明は、「容器内には発光物質として臭素を有[する]」点。
<相違点2>
本件発明2は、「前記放電容器が、保持部材によって保持されている」のに対して、甲1発明は、放電容器1が保持部材によって保持されているかどうかは不明である点。
(ウ) 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
a 甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」の発明であるところ、「波長157nmの光を放出するフッ素レーザ装置用の基準光源であって、ステッパーやスキャン露光等の投影露光装置の光源として実用的意味において使用できる基準光源を提供すること」(【0011】)を発明が解決しようとする課題として、「フッ素レーザ装置を半導体製造のための露光装置用光源として使う場合に、実用的観点から十分に効果を有するという意味において、臭素を発光原子とすることが最適であることを見出し[た]」(【0012】)ことに基づいて、「フッ素レーザの発振波長である157.6299nmに極めて近い」発光ラインを得るために、「157.484nmと157.639nmの二つの発光ラインを持[つ]」「臭素原子」を必須の構成とする発明である。そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明2のように「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」構成とすれば、甲1発明の前記課題を解決できないこととなるから、甲1発明において相違点1に係る本件発明2の構成とすることには阻害要因がある。そして、甲1~甲11の他の記載をみても、上記判断を左右するものはない。
したがって、甲1に記載された発明において、相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
b 申立人は、「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」ことは、甲2、甲8、甲9、甲10に記載されているように周知技術である旨を主張しているが、甲2、甲8、甲9、甲10はいずれもフッ素レーザ用基準光源に関するものではないし、「発光物質としての臭素が、前記放電容器内に含まれて[いない]」ことが周知技術であるとしても、甲1に記載された発明に当該周知技術を適用することには前記aのとおり阻害要因があるから、申立人の主張は前記aの説示を左右するものではない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明5について
(ア) 対比
本件発明5と甲1発明を対比する。
a 本件発明5の「エキシマランプを備えた紫外線照射装置」との特定事項について
(a) 前記イ(ア)aのとおり、甲1発明の「フッ素レーザ用基準光源」は、本件発明2の「エキシマランプ」に相当するところ、「真空紫外光を放射する」ものであるから、「エキシマランプを備えた紫外線照射装置」にも相当するといえる。
(b) したがって、甲1発明は、本件発明5の前記特定事項を満たしている。
b 本件発明5の「前記放電容器の外周面から紫外線照射する装置である」との特定事項について
(a) 甲1発明は、「概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有する」ものであるから、本件発明5と甲1発明は、「前記放電容器」「から紫外線照射する装置である」点で共通する。
(b) しかし、甲1発明のフッ素レーザ用基準光源は、「真空紫外光を放射する窓部材」が概略円筒形状の本体ケース2の一端を塞ぐように取付けられているものであり、その他の位置に窓部材を有するものとはいえない以上、放電容器の「外周面から」紫外線照射する装置であるとはいえない。したがって、本件発明5は、放電容器の「外周面」から紫外線照射する装置であるのに対して、甲1発明は、放電容器1の外周面から紫外線照射する装置であるとはいえない点で両者は相違する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)に加えて、前記イ(ア)の本件発明2と甲1発明の対比を踏まえると、本件発明5と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点2>
「 オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器から紫外線照射する装置である紫外線照射装置」である点。
<相違点3>
本件発明5は、前記放電容器の「外周面から」紫外線照射する装置であるのに対して、甲1発明は、「概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有する」点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点3について検討する。
a 甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」の発明であって、「概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有する」ことを前提として、「前記臭素の封入量D(μmol/cc)と前記電極の端部と前記窓部材との距離L(mm)との積D・Lが0.25以下」とすることにより、「最適な構造として電極と窓部材の距離の関係を規定することで、臭素の自己吸収による影響を受けることなく放射強度の十分な光源を提供することができる」(【0028】)ものである。そして、甲1発明のフッ素レーザ用基準光源が、相違点3に係る本件発明5のように、前記放電容器の「外周面から」紫外線照射する装置であるとはいえないことは前記(ア)b(b)で説示したとおりであるところ、甲1発明が「フッ素レーザ用基準光源」の発明であることを勘案すれば、当業者は、甲1発明において窓部材から真空紫外光を放射することに代えて、レーザの放射形態とは大きく異なる放電容器の「外周面から」紫外線照射するように変更する動機は存在しないというべきである。そして、甲1~甲11の他の記載をみても、上記判断を左右するものはない。
したがって、甲1に記載された発明において、相違点3に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たことはいえない。
b 申立人は、「前記放電容器の外周面から紫外線照射する」ことは、甲2、甲8、甲10に記載されているように周知技術である旨を主張しているが、甲2、甲8、甲10はいずれもレーザ用基準光源に関するものではないし、「前記放電容器の外周面から紫外線照射する」ことが周知技術であるとしても、甲1に記載された発明に当該周知技術を適用する動機は存在しないことは前記aのとおりであるから、申立人の主張は前記aの説示を左右するものではない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明5は、甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明8について
(ア) 対比
本件発明8と甲1発明を対比する。
a 本件発明8の「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の両端部付近において前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え」る「エキシマランプ」との特定事項について
(a) 前記イ(ア)a~cと同様の理由により、本件発明8と甲1発明は、「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、」「前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え」る「エキシマランプ」である点で共通する。
(b) しかし、「一対の電極」が「前記放電容器の外周面に沿って配置される」位置が、本件発明8は、「前記放電容器の両端部付近」であるのに対し、甲1発明は、「電極4a」は「筒状の放電容器1の一端面の近傍」であり、「電極4b」は「放電容器の一端」に存在する「窓部材3までの距離Lを0にでき」るようなものである点で両者は一応相違する。
b 本件発明8の「前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され」との特定事項について
(a) 甲1発明の「電極4a」及び「電極4b」は、本件発明8の「一対の電極」に相当する。そして、甲1発明は、「放電容器1は概略円筒形状の本体ケース2と窓部材3から構成されており」、「本体ケース2の外表面には概略リング状の電極4(4a、4b)が2つ巻き付けられており」、「電極4は、」「薄膜状のものが本体ケース2に密着する形で巻き付けられ」たものであるから、本件発明8でいう「前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され」るものといえる。
(b) したがって、甲1発明は、本件発明8の前記特定事項を満たしている。
c 本件発明8の「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、」との特定事項について
(a) 前記イ(ア)e(a)と同様の理由により、甲1発明は、本件発明8でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において」、「放電が生じる誘電体バリア放電」が生じるものといえる。また、甲1発明は、「放電プラズマが、リング状の電極4a及び4bの間を跨がって生じており、リング状の電極4a及び4bの間においては放電プラズマが狭窄する一方、リング状の電極4a及び4bのそれぞれの径方向内側においては放電プラズマが狭窄していない部分がある」ものであるから、本件発明8でいう「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ[る]」ものといえる。
(b) したがって、本件発明8と甲1発明は、「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において」「放電が生じる誘電体バリア放電であって」、「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電が生じる」点で共通する。
(c) しかし、「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電」が、本件発明8は、「一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであり、「前記放電容器内の両端部側に」放電が偏っているのに対し、甲1発明は、そのようであるか不明である点で両者は一応相違する。
d 本件発明8の「前記放電容器の外周面が、前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る非導電性の遮光部材によって覆われている」との特定事項について
前記ウ(ア)b(b)で説示したとおり、甲1発明のフッ素レーザ用基準光源は、放電容器の「外周面から」紫外線照射する装置であるとはいえない。そうすると、甲1発明の放電容器の外面に設けられた「電極4」は、銅、アルミニウムからなるものであるところ、これらの素材それ自体が紫外線を遮ることが技術常識であるとしても、甲1発明の「電極4」が、本件発明8でいう「前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る」「遮光部材」に相当するということはできない。したがって、本件発明8は、「前記放電容器の外周面が、前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る非導電性の遮光部材によって覆われている」のに対して、甲1発明は、放電容器の外周面が、当該遮光部材によって覆われていない点で相違する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明8と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点3>
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して放電が偏っている誘電体バリア放電が生じるエキシマランプ」である点。
<相違点4>
「一対の電極」が「前記放電容器の外周面に沿って配置される」位置が、本件発明8は、「前記放電容器の両端部付近」であるのに対し、甲1発明は、「電極4a」は「筒状の放電容器1の一端面の近傍」であり、「電極4b」は「放電容器の一端」に存在する「窓部材3までの距離Lを0にでき」るようなものである点。
<相違点5>
「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電」が、本件発明8は、「一方の電極により覆われる一方の放電容器端部付近から他方の電極により覆われる他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであり、「前記放電容器内の両端部側に」放電が偏っているのに対し、甲1発明は、そのようであるか不明である点。
<相違点6>
本件発明8は、「前記放電容器の外周面が、前記放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるように、紫外線を遮る非導電性の遮光部材によって覆われている」のに対して、甲1発明は、放電容器の外周面が、当該遮光部材によって覆われていない点。
(ウ) 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点6について検討する。
a 前記ウ(ウ)aでも説示したとおり、甲1発明において窓部材から真空紫外光を放射することに代えて、レーザの放射形態とは大きく異なる放電容器の「外周面から」紫外線照射するように変更する動機は存在しない。そうすると、甲1発明においては、放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるようにする動機が存在するとはいえず、そのための遮光部材を設ける動機も存在しないというべきである。そして、甲1~11の他の記載をみても、上記判断を左右するものはない。
したがって、甲1に記載された発明において、相違点6に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
b 申立人は、参考文献2には、バルブ11の外表面に254nmを透過し、185nmを吸収する酸化ジルコニウム膜13を形成した部分としない部分を形成することが記載されており、参考文献3に見られるように酸化ジルコニウムは一般的に非導電性であるから、本件発明8は当業者が容易になし得たことである旨を主張しているが、参考文献2はフッ素レーザ用基準光源に関するものではないし、甲1に記載された発明において、放電容器の外周面から局所的に紫外線が放射されるようにする動機が存在するとはいえないことは前記aのとおりであるから、申立人の主張は前記aの説示を左右するものではない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明8は、甲1に記載された発明、他の甲号証及び参考文献2、3に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 本件発明12について
(ア) 対比並びに一致点及び相違点の認定
前記ウ(ア)の本件発明5と甲1発明の対比及び前記エ(ア)a~cの本件発明8と甲1発明の対比を踏まえて本件発明12と甲1発明とを対比すると、本件発明12と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点4>
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた紫外線照射装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して放電が偏っている誘電体バリア放電が生じ、
前記放電容器から紫外線照射する装置である紫外線照射装置」である点。
<相違点7>
「一対の電極」が「前記放電容器の外周面に沿って配置される」位置が、本件発明12は、「前記放電容器の両端部付近」であるのに対し、甲1発明は、「電極4a」は「筒状の放電容器1の一端面の近傍」であり、「電極4b」は「放電容器の一端」に存在する「窓部材3までの距離Lを0にでき」るようなものである点。
<相違点8>
「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電」が、本件発明12は、「一方の電極により覆われる一方の放電容器端部付近から他方の電極により覆われる他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであり、「前記放電容器内の両端部側に」放電が偏っているのに対し、甲1発明は、そのようであるか不明である点。
<相違点9>
本件発明12は、前記放電容器の「外周面から」紫外線照射する装置であるのに対して、甲1発明は、「概略円筒状の放電容器の一端に真空紫外光を放射する窓部材を有する」点。
(ウ) 相違点についての判断
事案に鑑み相違点9について検討すると、前記ウ(ウ)aで相違点3について検討したのと同様の理由により、甲1発明において相違点9に係る本件発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
申立人の主張についても前記ウ(ウ)bで検討したとおりである。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明12は、甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 第2次取消理由及び第1次取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 甲1発明を主引用発明とした本件発明6、13に対する進歩性欠如について
ア 甲1発明の認定
甲1発明の認定は、前記3(3)ア(ウ)に記載したとおりである。
イ 本件発明6について
(ア) 対比
本件発明6と甲1発明を対比する。
a 本件発明6の「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えたオゾン発生装置」との特定事項について
(a) 前記3(3)イ(ア)aのとおり、甲1発明の「フッ素レーザ用基準光源」は、本件発明6の「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプ」に相当するところ、当該エキシマランプを備えた装置であるともいえる。したがって、本件発明6と甲1発明は、「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた」「装置」である点で共通する。
(b) しかし、本件発明6は、「オゾン発生装置」であるのに対して、甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」であり、オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射する装置ではあるものの、オゾン発生装置とはいえない点で両者は相違する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)に加えて、前記3(3)イ(ア)の本件発明2と甲1発明の対比を踏まえると、本件発明6と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点5>
「 オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた装置であって、前記エキシマランプが、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極とを備え、
前記放電容器内において、前記一対の電極間に導電体が配置されておらず、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨って一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる、誘電体バリア放電が生じる装置」である点。
<相違点10>
本件発明6は、「オゾン発生装置」であるのに対して、甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」であり、オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射する装置ではあるものの、オゾン発生装置とはいえない点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点10について検討する。
a 甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」の発明であって、「波長157nmの光を放出するフッ素レーザ装置用の基準光源であって、ステッパーやスキャン露光等の投影露光装置の光源として実用的意味において使用できる基準光源を提供すること」(【0011】)を発明が解決しようとする課題とするのであるところ、当業者は、甲1発明はフッ素レーザ用基準光源に適した特有の構成を採用したものであると理解するのであって、これをオゾン発生装置とする動機は存在しない。そして、甲1~11の他の記載をみても、上記判断を左右するものはない。
したがって、甲1に記載された発明において、相違点10に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
b 申立人は、甲11に低圧水銀ランプである紫外線ランプを備えたオゾン製造装置が記載されていることや、甲2に紫外線光源として水銀ランプに代えてエキシマランプを用いることが記載されている旨を主張しているが、甲1に記載された発明をオゾン発生装置とする動機は存在しないことは前記aのとおりであるから、申立人の主張は前記aの説示を左右するものではない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明13について
(ア) 対比並びに一致点及び相違点の認定
前記イ(ア)の本件発明6と甲1発明の対比及び前記3(3)エ(ア)a~cの本件発明8と甲1発明の対比を踏まえて本件発明12と甲1発明とを対比すると、本件発明12と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点6>
「オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射するエキシマランプを備えた装置であって、
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、
それぞれ前記放電容器の中央部を挟んで軸方向に沿って対向配置される一対の電極であって、前記放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極とを備え、
前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され、
前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、放電が生じる誘電体バリア放電であって、前記放電容器の軸方向に関して放電が偏っている誘電体バリア放電が生じる装置」である点。
<相違点11>
「一対の電極」が「前記放電容器の外周面に沿って配置される」位置が、本件発明12は、「前記放電容器の両端部付近」であるのに対し、甲1発明は、「電極4a」は「筒状の放電容器1の一端面の近傍」であり、「電極4b」は「放電容器の一端」に存在する「窓部材3までの距離Lを0にでき」るようなものである点。
<相違点12>
「前記放電容器の軸方向に関して」「放電が偏っている誘電体バリア放電」が、本件発明12は、「一方の電極により覆われる一方の放電容器端部付近から他方の電極により覆われる他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであり、「前記放電容器内の両端部側に」放電が偏っているのに対し、甲1発明は、そのようであるか不明である点。
<相違点13>
本件発明6は、「オゾン発生装置」であるのに対して、甲1発明は、「フッ素レーザ用基準光源」であり、オゾンを生成する波長を有する紫外線を放射する装置ではあるものの、オゾン発生装置とはいえない点。
(ウ) 相違点についての判断
事案に鑑み相違点13について検討すると、前記イ(ウ)aで相違点10について検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明において相違点13に係る本件発明13の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
申立人の主張についても前記イ(ウ)bで検討したとおりである。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明13は、甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 甲2に記載された発明を主引用発明とした本件発明1~13に対する新規性欠如又は進歩性欠如について
請求項1、3~4、7、9~11は、本件訂正によって削除されたから、以下、甲2に記載された発明を主引用発明とした本件発明2、5~6、8、12~13に対する新規性欠如及び進歩性欠如について検討する(後記(3)、(4)においても同様に、本件発明2、5~6、8、12~13に対する新規性欠如及び進歩性欠如について検討する。)。
ア 甲2発明の認定
甲2(特開2008-146906号公報)には、図1に係る紫外線発生装置であって交流電圧(請求項1、【0020】)を印加するものについて、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「紫外線を透過可能な誘電体による容器と、
この容器の周囲に互いに離間して配置された一対の電極と、
前記一対の電極間に交流電圧を印加する電源と、
前記誘電体容器内部に充填された、エキシマ分子を形成するヘリウム、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのいずれか一つ以上の希ガスと、フッ素、ヨウ素、塩素及び臭素のいずれか一つ以上のハロゲンとの混合気体を主成分とする放電ガスとを備え、
前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせて紫外線光を発生させる紫外線発生装置であって(請求項1)
容器が円筒状に形成されている、(【0020】)
紫外線発生装置。」
イ 本件発明2、5~6について
(ア) 対比
本件発明2、5~6と甲2発明を対比する。
a 甲2発明は、「紫外線を透過可能な誘電体による容器」と、「この容器の周囲に互いに離間して配置された一対の電極」と、「前記一対の電極間に交流電圧を印加する電源」と、「前記誘電体容器内部に充填された、エキシマ分子を形成するヘリウム、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのいずれか一つ以上の希ガスと、フッ素、ヨウ素、塩素及び臭素のいずれか一つ以上のハロゲンとの混合気体を主成分とする放電ガス」とを備え、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるから、本件発明2、5~6でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨がって一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電」「が生じ[る]」ものといえる。
b しかし、誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲2発明は、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるが、放電状態は不明である点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明2、5~6と甲2発明は、少なくとも次の相違点14において相違する。
<相違点14>
誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲2発明は、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるが、放電状態は不明である点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点14について検討する。
a まず、相違点14が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
(a) 甲2発明では、前記(ア)aのとおり誘電体バリア放電が生じるが、その放電状態がどのような領域での放電であるのかは特定されておらず、甲2の他の記載をみても、そのことは不明である。もっとも、甲2発明は、「容器」が「円筒状」であり、「一対の電極」が「容器の周囲に互いに離間して配置された」ものであり、「誘電体容器内部」に「エキシマ分子を形成する」「希ガスと」「ハロゲンとの混合気体を主成分とする放電ガス」を備えており、一対の電極間に印加されるのが「交流電圧」であるところ、このような「誘電体による容器」の形状及び「一対の電極」の配置は、誘電体バリア放電の放電状態を決める要因の一つと解されることから、仮に、当該形状及び配置が、上記要因として支配的であるなどの事情があれば、甲2発明も、本件発明2、5~6と同様の形状及び配置をしている以上、相違点14に係る本件発明2、5~6の構成を満たしていると評価する余地が生じることになる。
そこで検討すると、誘電体バリア放電の放電状態は、容器の形状及び一対の電極の配置だけによって定まるものではなく、その他に、容器内の放電ガスの種類及び圧力、並びに、一対の導電電極に印加される電圧及び周波数といった各要因にも依存して定まることが、出願時点の技術常識(例えば、甲1の【0018】や、甲4の【0008】・【0015】~【0019】を参照。)であると認められる。そこで他の要因についてみると、本件明細書等の【0019】には、放電ガスの種類をキセノンガスとすること、その圧力を1~225Toor(0.1~30kPa)とすること、一対の電極間に印加する電圧を5~10kVとすること、その周波数を1~500kHzの高周波とするといった設定条件が例示されている。他方で、甲2には、放電ガスが希ガスとハロゲンとの混合気体である点で本件明細書等の記載とは相違しており、また、その際の圧力をどうするのかについてや、交流電圧の大きさや周波数についての具体的な記載はない。
このように、甲2発明では、その放電状態がどのような領域での放電であるのかは甲2の全体の記載をみても不明である上、容器の形状及び一対の電極の配置が誘電体バリア放電の放電状態を決める要因として支配的であるなどの事情があるとはいえず、しかも、甲2に記載された他の要因に係る設定条件が、本件明細書等に記載された設定条件に一致しているともいえないことから、甲2発明の放電状態が、相違点14に係る本件発明2、5~6の構成を満たしているとはいえない。
(b) これに対し、申立人は、本件発明2、5~6で特定されるエキシマランプの物理的な構成は、甲2発明の紫外線発生装置の物理的な構成と同じであり、そうである以上、甲2発明においても、相違点14に係る本件発明2、5~6の放電形態となるのは自明である旨、また、甲2発明の紫外線発生装置の物理的な構成は、甲1発明のフッ素レーザ基準用光源や、甲3、4に記載された発明の物理的な構成とも同じであるから、甲2発明においても、甲1発明と同様に相違点14に係る本件発明2、5~6の放電形態となることは明白である旨を主張している。
しかしながら、申立人が主張する「物理的な構成」は、本件発明2、5~6や甲1発明については容器の形状、一対の電極の配置といったところにとどまり、その他の要因についての考慮がなされていないから、失当である。
(c) したがって、相違点14は実質的である。
b(a) 前記aのとおり、相違点14は実質的であるところ、以下に示すとおり、この相違点14に係る本件発明2、5~6の構成は、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
すなわち、甲2発明は、高効率で紫外線を発生できる紫外線発生装置を提供する(【0005】)というものであることから、電極によって紫外線が遮られない領域の紫外線の発生が抑制される、相違点14に係る本件発明2、5~6のような放電状態を採用することには阻害要因がある。したがって、仮に、相違点14に係る本件発明2、5~6の放電状態自体が公知であるとしても、甲2から出発した当業者がそのような放電状態となるように、あえて、放電ガスの種類及び圧力、並びに、一対の電極に印加される電圧及び周波数といった各要因に係る条件を設定するとはいえない。
(b) したがって、相違点14に係る本件発明2、5~6の構成は、甲2発明から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~11のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明2、5~6は、甲2に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明8、12~13について
(ア) 対比
本件発明8、12~13と甲2発明を対比する。
a 甲2発明は、「紫外線を透過可能な誘電体による容器」と、「この容器の周囲に互いに離間して配置された一対の電極」と、「前記一対の電極間に交流電圧を印加する電源」と、「前記誘電体容器内部に充填された、エキシマ分子を形成するヘリウム、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのいずれか一つ以上の希ガスと、フッ素、ヨウ素、塩素及び臭素のいずれか一つ以上のハロゲンとの混合気体を主成分とする放電ガス」とを備え、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるから、本件発明8、12~13でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって、前記放電容器内において、」「放電が生じる誘電体バリア放電」「が生じ[る]」ものといえる。
b しかし、誘電体バリア放電について、本件発明8、12~13は、「一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであって、「前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている」ものであるのに対して、甲2発明は、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるが、放電状態は不明である点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明8、12~13と甲2発明は、少なくとも次の相違点15において相違する。
<相違点15>
誘電体バリア放電について、本件発明8、12~13は、「一方の放電容器端部付近から他方の放電容器端部付近にまで渡って」放電が生じるものであって、「前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている」ものであるのに対して、甲2発明は、「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせ[る]」ものであるが、放電状態は不明である点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点15について検討する。
a まず、相違点15が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
(a) 前記イ(ウ)aで検討したのと同様の理由により、甲2発明では、その放電状態がどのような領域での放電であるのかは甲2の全体の記載をみても不明である上、容器の形状及び一対の電極の配置が誘電体バリア放電の放電状態を決める要因として支配的であるなどの事情があるとはいえず、しかも、甲2に記載された他の要因に係る設定条件が、本件明細書等に記載された設定条件に一致しているともいえないことから、甲2発明の放電状態が、相違点15に係る本件発明8、12~13の「前記放電容器の軸方向に関して前記放電容器内の両端部側に放電が偏っている」との構成を満たしているとはいえない。
(b) これに対し、申立人は、本件発明8、12~13で特定されるエキシマランプの物理的な構成は、甲2発明の紫外線発生装置の物理的な構成と同じであり、そうである以上、甲2発明においても、相違点15に係る本件発明8、12~13の放電形態となるのは自明である旨、また、甲2発明の紫外線発生装置の物理的な構成は、甲1発明のフッ素レーザ基準用光源や、甲3、4に記載された発明の物理的な構成とも同じであるから、甲2発明においても、甲1発明と同様に相違点15に係る本件発明7、12~13の放電形態となることは明白である旨を主張しているが、当該主張は前記イ(ウ)a(b)で説示したのと同様の理由により失当である。
(c) したがって、相違点15は実質的である。
b 前記aのとおり、相違点15は実質的であるところ、この相違点15に係る本件発明8、12~13の構成は、前記イ(ウ)bで説示したのと同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明8、12~13は、甲2に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 甲3に記載された発明を主引用発明とした本件発明1~13に対する新規性欠如又は進歩性欠如について
ア 甲3発明の認定
甲3(IDW/AD’16において発表された技術論文の内容が記載されている書面(”Development of the Flexible Surface Light Source using Luminous Array Film Technology”, Kenji Awamoto, et. al.))には、深紫外発光アレイフィルムについて、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「深紫外発光アレイフィルムであって、(甲3の3 5頁)
ガラス管と、ガラス管内の放電ガスと、背面電極基板上に設けられ、ガラス管の長手方向に対向する一対の電極と、ガラス管の内面の背面側に設けられた蛍光体層を備え、(甲3の3 5頁)
背面電極はガラス管内の放電ガスに交流電場を印加し、深紫外光は前面側にのみ放射され、(甲3の3 5頁)
一対の電極間に交流駆動パルスが印加され、交流駆動パルスは、管内に安定で均一な放電を提供し、(甲3の3 5頁)
発光管の上面図で、放電は発光管の両端部側で幅広く、中央部で幅狭い、(甲3の3 11頁)
発光アレイフィルム」
イ 本件発明2、5~6について
(ア) 対比
本件発明2、5~6と甲3発明を対比する。
a 甲3発明は、「ガラス管と、ガラス管内の放電ガスと、背面電極基板上に設けられ、ガラス管の長手方向に対向する一対の電極と」を備え、「一対の電極間に交流駆動パルスが印加され、交流駆動パルスは、管内に安定で均一な放電を提供[する]」ものであるから、本件発明2、5~6でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨がって一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電」「が生じ[る]」ものといえる。
b しかし、誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲3発明は、「発光管の上面図で、放電は発光管の両端部側で幅広く、中央部で幅狭い」ものであるが、ガラス容器中央部と、ガラス容器内の一対の電極がガラス容器の外周面と接触する部分とにおける、放電の空間領域の径方向の相対的な細さ又は太さは不明である点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明2、5~6とは、少なくとも次の相違点16において相違する。
<相違点16>
誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲3発明は、「発光管の上面図で、放電は発光管の両端部側で幅広く、中央部で幅狭い」ものであるが、ガラス容器中央部と、ガラス容器内の一対の電極がガラス容器の外周面と接触する部分とにおける、放電の空間領域の径方向の相対的な細さ又は太さは不明である点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点16について検討する。
a まず、相違点16が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
(a) 甲3発明は、発光管の上面図で、放電は発光管の両端部側で幅広く、中央部で幅狭いものであるが、その側面図においては、発光管の両端部と中央部で放電の太さに特段の差異は認められない(甲3の3 11頁)。このように、発光管の上面図と側面図で放電の形態が異なることは、甲3の発光アレイフィルムにおいては、一対の電極がガラス管の背面側に設けられていることに起因するものと考えられる。
そして、相違点16に係る本件発明2、5~6における、放電の空間領域が「径方向に相対的に細い」又は「径方向に相対的に太い」との特定は、いずれかの平面視における放電の幅を特定するものではなく、放電の空間領域における全ての径方向の相対的な太さ又は細さを特定するものと解するのが相当であるから、その側面図において発光管の両端部側と中央部で放電の太さに特段の差異は認められない甲3発明の放電状態は、相違点16に係る本件発明2、5~6の構成を満たしているとはいえない。
(b) これに対し、申立人は、甲3の3の11頁の発光管内の放電の側面図から読み取れる放電形態が相違点16に係る本件発明2、5~6の構成に相当する旨を主張している。
しかしながら、当該側面図からは発光管の両端部側と中央部で放電の太さに特段の差異は認められないことは前記(a)で説示したとおりであり、失当である。なお、当該側面図における「Narrow discharge pass」とともに記載されている矢印は、上面図中の「Driving condition (A)」における放電の幅が狭い領域が側面図においてどこに対応しているのかを示すものであり、当該側面図中の「Strong discharge」とともに記載されている矢印は、上面図中の「Driving condition (C)」における放電の幅が狭い領域が側面図においてどこに対応しているのかを示すものである、すなわち、「Narrow discharge pass」及び「Strong discharge」は、いずれも上面図における放電形態を説明するものであって、側面図における放電の太さ又は細さを示すものではない。
(c) したがって、相違点16は実質的である。
b(a) 前記aのとおり、相違点16は実質的であるところ、甲3発明において相違点16に係る本件発明2、5~6のような放電状態とする動機はなく、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
さらにいえば、甲3発明において当業者が相違点16に係る本件発明2、5~6の構成に至るには、前記a(a)で説示したように、甲3発明において、上面図のみならず、少なくとも側面図においても放電が発光管の両端部側で幅広く、中央部で幅狭いものとする必要があるところ、そのようにするためには、甲3発明における一対の電極を発光管の側面にも設ける必要があると認められる。しかしながら、甲3発明は背面電極基板上に設けられた一対の電極の上に発光管の底面を載置して設けることを前提とするものであり、当該前提においては発光管の側面に電極を設けることはできないし、当該前提を変更すべき動機も存在しない。
(b) したがって、相違点16に係る本件発明2、5~6の構成は、甲3発明から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~11のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明2、5~6は、甲3に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明8、12~13について
(ア) 対比
本件発明8、12~13と甲3発明を対比すると、甲3発明の「一対の電極」は、本件発明8、12~13の「一対の電極」に相当するが、当該一対の電極について、本件発明8、12~13は、「前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され[る]」のに対して、甲3発明は、「背面電極基板上に設けられ[た]」ものである点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明8、12~13と甲3発明は、少なくとも次の相違点17において相違する。
<相違点17>
一対の電極について、本件発明8、12~13は、「前記一対の電極が、それぞれ、前記放電容器の外周面と面接触する筒状電極で構成され[る]」のに対して、甲3発明は、「背面電極基板上に設けられ[た]」ものである点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点17について検討する。
a 前記イ(ウ)b(a)で検討したように、甲3発明は、背面電極基板上に設けられた一対の電極の上に発光管の底面を載置して設けることを前提とするものであり、当該前提においては発光管の外周面と面接触する筒状電極を設けることはできないし、当該前提を変更すべき動機も存在しない。
b これに対し、申立人は、筒状電極は甲1、甲2に記載されており、本件明細書等には、電極を筒状にすることについての顕著な効果は記載されていないから、電極を筒状にすることは設計事項にすぎない旨を主張しているが、甲3発明が前提とする構成においては発光管の外周面と面接触する筒状電極を設けることはできないし、当該前提を変更すべき動機も存在しないことは前記aで検討したとおりである。
c したがって、相違点17に係る本件発明8、12~13の構成は、甲3発明から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~11のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明8、12~13は、甲3に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 甲4に記載された発明を主引用発明とした本件発明1~13に対する新規性欠如又は進歩性欠如について
ア 甲4発明の認定
甲4(特開平9-17582号公報)には、図1に係る紫外光を放射するための(【0001】)放電装置であって、負グローが形成されているもの(図7(a)~(c))について、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「1対の電極が設けられている放電装置であって、該電極の少なくとも一方に第1の周波数を有する第1の電圧を印加し、上記第1の周波数より高い第2の周波数を有する第2の電圧を上記第1の電圧に重畳する放電装置であり、(請求項1)
紫外光を放射し、(【0001】)
放電管と、放電管の外面に設け軸周りに覆わずに軸方向に延びる、前記1対の電極を備え、(【0009】・図1)
前記1対の電極である電極21および22の近傍には負グロー31および32が形成されるとともに、負グローの上部、および電極間には陽光柱33が形成される、(【0014】・【0017】・【0018】・図7(a)~(c))
放電装置。」
イ 本件発明2、5~6について
(ア) 対比
本件発明2、5~6と甲4発明を対比する。
a 甲4発明は、「放電管」と、「放電管の外面に設け軸周りに覆わずに軸方向に延びる、前記1対の電極」を備え、「該電極の少なくとも一方に第1の周波数を有する第1の電圧を印加し、上記第1の周波数より高い第2の周波数を有する第2の電圧を上記第1の電圧に重畳する」ものであるから、本件発明2、5~6でいう「前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されると、前記放電容器内で、前記一対の電極の間を跨がって一方の電極から他方の電極にまで渡って放電が生じる誘電体バリア放電」「が生じ[る]」ものといえる。
b しかし、誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲4発明は、「前記1対の電極である電極21および22の近傍には負グロー31および32が形成されるとともに、負グローの上部、および電極間には陽光柱33が形成される」ものであるが、放電管の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、放電管内の1対の電極が放電管の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電とはなっていない点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明2、5~6と甲4発明は、少なくとも次の相違点11において相違する。
<相違点18>
誘電体バリア放電について、本件発明2、5~6は、「前記放電容器内の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、前記放電容器内の前記一対の電極が前記放電容器の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となる」であるのに対して、甲4発明は、「前記1対の電極である電極21および22の近傍には負グロー31および32が形成されるとともに、負グローの上部、および電極間には陽光柱33が形成される」ものであるが、放電管の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、放電管内の1対の電極が放電管の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電とはなっていない点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点18について検討する。
a 甲4発明から出発した当業者が相違点18に係る本件発明2、5~6の構成に至るためには、少なくとも、「放電管内の1対の電極が放電管の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電」であるようにする必要がある。しかるところ、そのように構成することは、以下に示すとおり、当業者が容易になし得たこととはいえない。
甲4発明の技術的意義は、消費電力が増えるという課題を解決する(【0004】)ために、負グローを小さくする(【0008】)ということにあるといえる。そのため、相違点18に係る本件発明2、5~6の構成に至るべく、放電管内の1対の電極が放電管の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電とすると、負グローが大きくなって、消費電力が増えることになりかねない。そうすると、甲4発明から出発した当業者が、相違点18に係る本件発明2、5~6の構成に至るようにすることは、甲4発明の課題を解決することに反するといえることから、阻害要因がある。
b これに対し、申立人は、相違点18に係る本件発明2、5~6の放電状態は、甲4の図6に記載されている旨を主張している。
しかしながら、甲4の図6においては、例えば(a)では放電管の軸方向の全体にわたって放電領域の上面視の幅は略一様であり、(d)では1対の電極が放電管の外周面と接触する部分ではその大半で放電が生じていないことが読み取れるものの、放電管の中央部で、径方向に相対的に細い空間領域での放電となり、放電管内の1対の電極が放電管の外周面と接触する部分で、径方向に相対的に太い空間領域での放電となっていることは読み取れないから、申立人の主張は失当である。
c したがって、相違点18に係る本件発明2、5~6の構成は、甲4発明から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~11のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明2、5~6は、甲4に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明8、12~13について
(ア) 対比
本件発明8、12~13と甲4発明を対比する。
a 甲4発明の「放電管の外面に設け[られ]」、「軸方向に延びる」「1対の電極」は、本件発明8、12~13の「放電容器の外周面に沿って配置される一対の電極」に相当する。
b しかし、「一対の電極」について、本件発明8、12~13は、「筒状電極で構成され[る]」ものであるのに対して、甲4発明は、「軸周りに覆わ[ない]」ものである点で両者は相違する。
(イ) 相違点の認定
前記(ア)によれば、本件発明8、12~13と甲4発明は、少なくとも次の相違点19において相違する。
<相違点19>
「一対の電極」について、本件発明8、12~13は、「筒状電極で構成され[る]」ものであるのに対して、甲4発明は、「軸周りに覆わ[ない]」ものである点。
(ウ) 相違点についての判断
相違点19について検討する。
a 甲4発明から出発した当業者が相違点19に係る本件発明8、12~13の構成に至るためには、少なくとも、「1対の放電電極」を「筒状電極」とする必要がある。しかるところ、そのようにすることは、以下に示すとおり、当業者が容易になし得たこととはいえない。
前記イ(ウ)aで説示したとおり、甲4発明の技術的意義は、消費電力が増えるという課題を解決する(【0004】)ために、負グローを小さくする(【0008】)ということにあるといえるところ、甲4の【0014】には、「電極21および22の近傍には、負グロー31および32が形成される。」と記載されている。また、図5にも電極21及び22の近傍に負グロー31及び32が形成されることが示されるとともに、電極21及び22が形成されていない側部側や上部側には負グローが形成されていないことが理解できる。そのため、相違点19に係る本件発明8、12~13の構成に至るべく、「1対の電極」を「筒状電極」とすると、負グローが側部側から上部側にも形成される結果、その大きさも大きくなって、消費電力が増えることになりかねない。そうすると、甲4発明から出発した当業者が、相違点19に係る本件発明8、12~13の構成に至るようにすることは、甲4発明の課題を解決することに反するといえることから、阻害要因がある。
b これに対し、申立人は、甲1及び甲2には筒状電極が記載されており、本件明細書等には筒状電極とすることについての顕著な効果が記載されていないため、電極の形態は設計事項にすぎない旨を主張している。
しかしながら、甲4発明において1対の電極を筒状電極とすることには阻害要因があることは前記aで説示したとおりであるから、筒状電極とすることが甲1及び甲2に記載されていたとしても、前記aの説示を左右するものではない。
c したがって、相違点19に係る本件発明8、12~13の構成は、甲4発明から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~11のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ) 小括
以上のとおり、本件発明8、12~13は、甲4に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5) 実施可能要件違反について
申立人は、本件発明8の非導電性の遮光部材について、発明の詳細な説明には当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されてない旨を主張している。
しかしながら、本件明細書等の発明の詳細な説明【0024】には、「電極以外の非導電性部材により紫外線を遮る遮光部として、放電容器の外周面を覆っても良い」と記載されており、当業者は、例えば非導電性部材による遮光部を放電容器と電極の間に設ける構成を理解することができるから、本件明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明8についての実施可能要件に適合している。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明2、5~6、8、12~13に係る特許は、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明2、5~6、8、12~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1、3~4、7、9~11は、本件訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700387