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特許異議申立

2022-700050

電子ビーム生成用カソード部材およびその製造方法

審判番号
2022-700050
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-135113
登録番号
6922054
請求日
2022年01月20日
審決日
2023年06月08日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社コベルコ科研
  • 【権利者代理人】山尾 憲人
  • 【権利者代理人】山田 純子
  • 【異議申立人】株式会社 レクレアル
  • 【異議申立人代理人】松浦 孝
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 野村 伸雄
  • 審判官 波多江 進
分類
P1651.113-YAA(H01J) / P1651.121-YAA(H01J) / P1651.536-YAA(H01J) / P1651.537-YAA(H01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6922054号発明「電子ビーム生成用カソード部材およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6922054号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4、5、7、9〕、〔2、3、6、8〕、10について訂正することを認める。 特許第6922054号の請求項2、3、6、8及び10に係る特許を維持する。 特許第6922054号の請求項1、4、5、7及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6922054号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和元年9月2日に出願した特願2019-159587号の一部を令和2年8月7日に新たな特許出願としたものであって、令和3年7月30日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 4年 1月20日 :特許異議申立人株式会社レクレアル(以下「 申立人」という。)による請求項1~9に係 る特許に対する特許異議の申立て 令和 4年 4月28日付け:取消理由通知書(この通知書による取消理由 を以下「第1次取消理由」という。) 令和 4年 7月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「第1次訂正請求書」という。)の提出 令和 4年 9月30日付け:訂正拒絶理由通知書 令和 4年11月 2日 :特許権者による意見書及び第1次訂正請求書 についての手続補正書(以下、この手続補正 書によって補正された第1次訂正請求書によ る訂正を「第1次訂正」という。)の提出 令和 4年12月16日 :申立人による意見書の提出 令和 5年 2月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)(この通知書 による取消理由を以下「第2次取消理由」と いう。) 令和 5年 4月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下 「第2次訂正請求書」といい、この請求書に よる訂正を以下「本件訂正」という。)の提 出 なお、本件訂正に係る請求によって、第1次訂正に係る請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。 また、当審は、本件訂正に係る請求につき、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、(i)第1次訂正後において存在していた請求項9及び請求項11が存在しなくなり、その余は、(ii)第1次訂正後の請求項と同一となったものである。そして、上記(ii)については、申立人には、既に、意見書を提出する機会が与えられている。したがって、当審は、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 訂正の適否 1 本件訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記イリジウムとセリウムからなる化合物が、Ir2Ce、Ir3Ce、Ir7Ce2、およびIr5Ce2よりなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の電子ビーム生成用カソード部材。」とあるのを、「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 前記単相の結晶構造は一方向凝固であり、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材。」に訂正する。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、6及び8も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「請求項1または2に記載の電子ビーム生成用カソード部材。」とあるのを、「請求項2に記載の電子ビーム生成用カソード部材。」に訂正する。 請求項3の記載を直接引用する請求項8も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「前記イリジウムとセリウムからなる化合物がIr2Ce、Ir3Ce、Ir7Ce2、またはIr5Ce2の単相からなり、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物を含まない、請求項1に記載の電子ビーム生成用カソード部材。」とあるのを、 「前記イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相からなり、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物を含まない、請求項2に記載の電子ビーム生成用カソード部材。」に訂正する。 請求項6の記載を直接引用する請求項8も同様に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (8)訂正事項8 ア 訂正事項8-1 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1~7のいずれかに記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程とを含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。」とあるうち、請求項2、3又は6を引用するものについて、 「請求項2、3または6に記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程と を含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。」に訂正する。 イ 訂正事項8-2 特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1~7のいずれかに記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程と を含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、 「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 前記単相の結晶構造は単結晶であり、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程とを含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。」 と記載し、新たに請求項10とする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1ないし10について請求されている。また、訂正後の請求項2、3、6及び8については、別の訂正単位とする求めがなされており、さらに、訂正後の請求項10についても、別の訂正単位とする求めがなされている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、次の内容からなる。 (i)訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に変更する訂正。 (ii)上記(i)に伴い、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「イリジウムとセリウムからなる化合物の単相または2相」について、当該「イリジウムとセリウムからなる化合物」を「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ce」に限定するとともに、当該「単相または2相」を「単相」に限定する訂正。 (iii)上記(ii)に伴い、訂正前の請求項2の「前記イリジウムとセリウムからなる化合物が、Ir2Ce、Ir3Ce、Ir7Ce2、およびIr5Ce2より群から選択される化合物である」との記載が、上記(ii)における上記化合物が「Ir2Ce」に限定された旨の記載と整合しなくなることから、前者の記載を削除して、両者の記載の不整合を解消する訂正。 (iv)上記(ii)に加えて、上記「単相」について、「前記単相の結晶構造は一方向凝固であ」ることに限定する訂正。 上記(i)の訂正は、引用関係の解消を目的とする訂正であり、上記(ii)及び(iv)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記(iii)の訂正は、明瞭でない記載を釈明するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 上記(i)の訂正について、これは、引用関係を解消するものであるから、新たな技術的事項が導入されることはない。 上記(ii)の訂正について、本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0061】及び【0065】には、実施例として「Ir2Ceの単相」が得られたことが記載されている。 上記(iii)の訂正について、これは、上記(ii)に係る内容と整合しない内容を削除するだけのものであるから、新たな技術的事項が導入されることはない。 上記(iv)の訂正について、本件明細書等の【0032】には「前記単相の結晶構造が一方向凝固」であることが好ましい旨記載されている。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前に引用していた請求項の数を削減するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項3は、訂正前に引用していた請求項の数を削減するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、次の内容からなる。 (i)訂正前の請求項6について、これは請求項1を引用していたところ、当該請求項1が訂正事項1によって削除されて引用できなくなったことに伴い、当該請求項1を引用していた訂正前の請求項2に対応する訂正後の請求項2を引用するように変更する訂正。 (ii)上記(i)に伴い、訂正前の請求項6の「前記イリジウムとセリウムからなる化合物がIr2Ce、Ir3Ce、Ir7Ce2、またはIr5Ce2」であるとの記載が、引用する訂正後の請求項2の「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ce」との記載と整合しなくなることから、前者の記載を後者の記載に一致させるようにして、両者の記載の不整合を解消する訂正。 上記(i)の訂正について、これは、削除された訂正後の請求項1に代えて訂正後の請求項2を引用するものであるところ、当該請求項2は、上記(2)アからみて、訂正前の請求項1の内容を限定しているものといえるから、明瞭でない記載を釈明するものであるとともに、特許請求の範囲を減縮するものである。 上記(ii)の訂正について、これは、明瞭でない記載を釈明するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 上記(i)の訂正は、削除された訂正後の請求項1に代えて訂正後の請求項2を引用するものであるところ、当該訂正後の請求項2に係る訂正事項2が新規事項を追加するものでない以上、新規事項を追加するものではない。 上記(ii)の訂正は、引用する訂正後の請求項2の内容と整合させるものであるから、新規事項を追加するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、次の内容からなる。 (i)訂正前の請求項8は請求項1~7のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項2、3及び6を引用するものに限定する訂正。 (ii)訂正前の請求項8は、上記(i)のとおり、請求項1~7のいずれかを引用していたところ、そのうち請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である訂正後の請求項10を新たに追加する訂正。 (iii)上記(ii)に伴い、当該請求項1に特定されていた「イリジウムとセリウムからなる化合物の単相または2相」について、当該「イリジウムとセリウムからなる化合物」を「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ce」に限定するとともに、当該「単相または2相」を「単相」に限定する訂正。 (iv)上記(iii)に加えて、上記「単相」について、「前記単相の結晶構造は単結晶であ」ることに限定する訂正。 上記(i)及び(ii)の訂正について、訂正前の請求項8は、直接又は間接的に引用する請求項の組合せを多数含むものであるところ、上記(i)により、訂正後の請求項8は請求項2、3及び6を引用するものに、上記(ii)により、訂正後の請求項10は請求項1を引用するものに、それぞれ対応することになり、それ以外の引用関係を有するものは削除されている。そのため、上記(i)及び(ii)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。そして、上記(ii)の訂正は、引用関係を解消するものでもある。 また、上記(iii)及び(iv)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とする訂正である。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 上記(i)及び(ii)の訂正について、これらは、引用関係を解消するとともに、引用する請求項の数を削減するだけのものであるから、これにより新たな技術的事項が導入されることはない。 上記(iii)の訂正については、これは、訂正事項2の(ii)の訂正と同じであるから、上記(2)イと同様の理由が成り立つ。 上記(iv)の訂正について、本件明細書等の【0032】には「前記単相の結晶構造」が「単結晶」であることが好ましい旨記載されている。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、訂正前の請求項9の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項9は、訂正前の請求項9の記載を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて 上記ア及びイにも照らせば、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正を認める。 第3 本件発明 本件訂正後の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明10」といい、これらのうち、削除されていない請求項に係る発明を総称して「本件発明」という。)は、次のとおりである。 「【本件発明1】 (削除) 【本件発明2】 イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 前記単相の結晶構造は一方向凝固であり、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材。 【本件発明3】 前記副成分のサイズが円相当直径で50μm以下である、請求項2に記載の電子ビーム生成用カソード部材。 【本件発明4】 (削除) 【本件発明5】 (削除) 【本件発明6】 前記イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相からなり、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物を含まない、請求項2に記載の電子ビーム生成用カソード部材。 【本件発明7】 (削除) 【本件発明8】 請求項2、3または6に記載の電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程と を含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。 【本件発明9】 (削除) 【本件発明10】 イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 前記単相の結晶構造は単結晶であり、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法であって、 金属セリウム原料と金属イリジウム原料を溶解して溶製材を得る溶解工程と、 前記溶製材を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、 前記溶製材の粉砕物を温度:1400~1600℃、圧力:25~50MPaで焼結して結晶体作製用焼結材を得る焼結工程と、 前記結晶体作製用焼結材を用い、フローティングゾーン法でイリジウムとセリウムからなる化合物の結晶体を作製する結晶体作製工程と を含む、電子ビーム生成用カソード部材の製造方法。」 第4 取消理由及び申立人が提出した証拠の概要 1 第2次取消理由(決定の予告)の概要 第1次訂正後の請求項1~11に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第2次取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 第1次訂正後の請求項9及び11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 第1次取消理由の概要 以下、証拠番号の「第」及び「号証」は略する。 本件特許の登録時の請求項1~9に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第1次取消理由の概要は、次のとおりである。 本件特許の登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項2、4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項1~6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項1~4、6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項1~7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲1に記載された発明及び必要に応じて周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、 本件特許の登録時の請求項1~4、6、7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記の甲2に記載された発明及び必要に応じて周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 申立人が提出した証拠 上記証拠は次のとおりである。 甲1:佐藤大輔,外7名,“SuperKEKB 電子入射器のためのイリジウム・セリウム光陰極の高性能化”Proccedings of the 14th Annual Meeting of PASJ2017,WEP106,2017年,pp.1165-1169 甲2:D.Satoh et al.,“Characterization of binary Ce-Ir alloy photocathodes”Jpn.J.Appl.Phys.58,2019年6月、SIIB10-1~SIIB10-5 甲3:H.Sugawara et al.,“Single Crystal Growth and Electrical Properties of CeRh2 and CeIr2”J.Phys.Soc.Jpn.Vol.63,No.4,1994年4月,pp.1502-1507 甲4:再公表特許WO2014/057570号 甲5:特開2011-124099号公報 甲6:特開2009-107105号公報 甲7:特開平11-354007号公報 甲8:特開平4-272639号公報 甲9: H.Okamoto,“The Ce-Ir(Cerium-Iridium)System”,Jounal of Phase Equilibria,Vol.12,No.5,1991年,pp.563-564 甲10:草道龍彦、外1名、“活性高融点金属のコールドクルーシブル溶解技術”、R&D神戸製鋼技報、神戸製鋼、2004年4月、Vol.54、No.1、pp.108-112 4 なお、第1次取消理由及び第2次取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由はない。 第5 第1次取消理由及び第2次取消理由に対する当審の判断 当審は、本件訂正後の請求項2、3、6、8及び10に係る特許について、上記各取消理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。なお、その余の請求項は、本件訂正により削除された。 その理由は以下のとおりである。 1 第2次取消理由について (1)第2次取消理由は、第1次訂正後の請求項9は、「前記単相の結晶構造は一方向凝固であ」るとともにそうではないという両立しない2つのことを特定しており、また、第1次訂正後の請求項11は、「前記単相の結晶構造は単結晶であ」るとともにそうではないという両立しない2つのことを特定していることから、当該各請求項の記載は、不明確になっているというものである。 これに対し、本件訂正によって、第1次訂正後の請求項9が削除された。また、上記で記載不備を指摘した第1次訂正後の請求項11は、いわゆる増項訂正に係る請求項であったところ、本件訂正ではこのような増項がなされなかったため、本件訂正後の特許請求の範囲には、請求項11がそもそも存在していない。 したがって、上記明確性要件不適合の第2次取消理由は解消した。 (2)小括 よって、第2次取消理由は理由がない。 2 第1次取消理由について (1)実施可能要件不適合、サポート要件不適合及び明確性要件不適合について ア 実施可能要件不適合について 第1次取消理由は、登録時の発明の詳細な説明の記載では、その時点の唯一の独立項である請求項1の記載における「イリジウムとセリウムからなる化合物の単相または2相が95面積%以上を占め、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である」もののうち、化合物がIr2Ceであり、相が単相であり、結晶構造が単結晶であるものを製造できることまでは、当業者にとって理解できるものの、その余の化合物、相及び結晶構造のものを製造できることは、当業者にとって理解できない旨説示し、その上で、従属項である請求項2~9においても同様である旨説示した。 これに対し、本件訂正により、独立項である請求項2及び10(その余の独立項は存在しない。なお、本件訂正により請求項1は削除された。)において、化合物がIr2Ceであるとともに、相が単相であることが特定され、さらに、結晶構造が、それぞれ、一方向凝固及び単結晶であることが特定された。そして、一方向凝固について、本件訂正後の特許請求の範囲、発明の詳細な説明又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の【0066】には、「参考までに、本実施例では、FZ法が高周波方式であること以外は、前記方法と同様にして結晶体を得た。高周波方式では、誘導加熱コイルにおいて、高周波発振機により高周波を発生させ、原料棒を加熱し溶融させて結晶体を作製した。そのSEM観察結果(倍率500倍)を図8に示す。・・・略・・・またこの図8では、結晶粒が延びて柱状晶組織を呈しており、一方向凝固材が得られていることを確認できた。」と記載されていることから、化合物がIr2Ceであるとともに、相が単相であり、さらに、結晶構造が一方向凝固のものも製造できることが、本件訂正明細書等に記載されている。 この点、申立人は、本件訂正後の特許請求の範囲には、化合物がIr2Ceであり、かつ、相が単相である場合(以下「本件場合」という。)につき、結晶構造が一方向凝固に係る本件発明8(独立項に係る本件発明2に従属している。)と結晶構造が単結晶に係る本件発明10(独立項に係るものである。)が特定されているところ、これらの各発明のそれぞれに特定されている粉砕、焼結及び結晶体作製工程からなる製造方法が文言上同一である一方で、本件訂正明細書等には、本件場合において、一方向凝固と単結晶とを、同一の製造方法でどのように作り分けるのかについて、何の記載もない旨主張する。しかしながら、本件訂正明細書等の【0056】・【0066】には、結晶体作製工程において用いられる「フローティングゾーン法」には、(i)キセノンランプを備える集光加熱方式と、(ii)高周波発振機により高周波を発生させる高周波方式があることが記載されているところ、本件場合において、単相の結晶構造が単結晶のもの又は一方向凝固のものを、それぞれ、(i)の方式又は(ii)の方式により得ることができる旨が記載されている。そして、(i)及び(ii)の方式は、いずれも、本件発明8及び10に特定された「結晶体作製工程」に係る文言を満たすものである。このように、本件発明8の製造方法中で特定された「結晶体作製工程」に係る文言と本件発明10の製造方法中で特定された「結晶体作製工程」に係る文言との間には差異がないものの、本件訂正明細書等には、その文言を満たす具体的工程により、本件場合において結晶構造が一方向凝固のものと単結晶のものとを作製できることが記載されているのであり、そうである以上、本件訂正明細書等の記載に、申立人が主張する不備はない。 したがって、上記実施可能要件不適合に係る第1次取消理由は成り立たない。 イ サポート要件不適合及び明確性要件不適合について 第1次取消理由は、上記アと同様の理由で、登録時の請求項1~9に記載された発明は、登録時の発明の詳細な説明に記載したものではない旨説示したが、同様に、当該サポート要件不適合に係る第1次取消理由は成り立たない。 さらに、第1次取消理由は、登録時の請求項2、4及び6に記載されたIr5Ce2が、そもそも存在する物質でない旨説示したが、本件訂正により、Ir5Ce2に係る文言は削除されたので、明確性要件不適合の第1次取消理由は成り立たない。 ウ したがって、本件訂正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、さらに、本件発明2及び6は、明確である。 (2)新規性及び進歩性について 第1次取消理由は、本件特許の登録時の請求項1~6に係る発明は甲1に記載された発明であり、その時点の請求項1~4、6に係る発明は甲2に記載された発明であるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、その時点の請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明及び必要に応じて周知技術に基づいて、又は、その時点の請求項1~4、6、7に係る発明は、甲2に記載された発明及び必要に応じて周知技術に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨説示したところ、本件訂正により、請求項1、4、5及び7が削除されたので、以下、本件発明2、3及び6について検討する。 なお、上記新規性及び進歩性に係る取消理由は、その時点のその余の請求項である請求項8及び9に係る発明についての特許に対しては通知されていないことから、当該請求項8及び9にそれぞれ由来する請求項に係る本件発明8及び9のほか、当該請求項8に由来して増項された請求項に係る本件発明10は、本取消理由の対象外である。 ア 引用文献の記載事項 (ア)甲1には、以下の記載がある。 「 [図:0001401597000001.jpg] 」(1166頁左欄23~35行) 「 [図:0001401597000002.jpg] [図:0001401597000003.jpg] 」 (1166頁右欄下から19行~1167頁左欄2行) 「 [図:0001401597000004.jpg] [図:0001401597000005.jpg] 」(1167頁左欄下から22行~右欄15行) 「 [図:0001401597000006.jpg] [図:0001401597000007.jpg] 」(1167頁右欄16行~1168頁左欄4行) 「 [図:0001401597000008.jpg] [図:0001401597000009.jpg] 」(1168頁左欄5行~右欄4行) 「 [図:0001401597000010.jpg] 」 (1169頁左欄20~30行) したがって、甲1には、「3.3 粉末X線回折法による結晶構造解析」に記載された「Ir2Ceサンプル」に関して、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているとともに、「3.3 粉末X線回折法による結晶構造解析」に記載された「Ir3Ceサンプル」に関して、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 甲1発明1 「粉末X線回折法による結晶構造解析の結果がIr2Ceの結晶構造から推定される回折パターンとすべて一致し、不純物のピークも見られないことから、不純物組成が混入する割合が非常に小さく、良質なIr2Ce多結晶体となる、研磨された電子放出面を有する光陰極。」 甲1発明2 「粉末X線回折法による結晶構造解析によれば、Ir3Ceサンプルに関しては、不純物としてIr2Ceが多く混入し多結晶体となっている、研磨された電子放出面を有する光陰極。」 (イ)甲2には、以下の記載がある。 「 [図:0001401597000011.jpg] 」 (要約: 訳: [図:0001401597000012.jpg] ) 「 [図:0001401597000013.jpg] 」 (第1頁右欄7~14行: 訳: [図:0001401597000014.jpg] ) 「 [図:0001401597000015.jpg] 」 (第1頁右欄15~26行: 訳: [図:0001401597000016.jpg] ) 「 [図:0001401597000017.jpg] [図:0001401597000018.jpg] 」 (第3頁右欄下から11行~第4頁左欄下から4行: 訳: [図:0001401597000019.jpg] ) 「 [図:0001401597000020.jpg] 」 (第5頁左欄17~31行: 訳: [図:0001401597000021.jpg] ) したがって、甲2には、要約、第3頁右欄下から11行~第4頁左欄下から4行に記載されたCe-67at%Ir合金試料について、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「CeIr2粒子から成る単相均質結晶が試料中に成長したCe-67at%Ir合金試料であって、Ce-Ir系の他の相に由来する回折ピークはほとんど検出されなかったCe-67at%Ir合金試料を材料とする光陰極。」 イ 甲1発明1を主引用発明とした場合の本件発明2、3及び6に対する判断 (ア)甲1発明1の「Ir2Ce」は、本件発明2の「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相」に、 甲1発明1の「研磨された電子放出面を有する光陰極」は、本件発明2の「電子ビーム生成用カソード部材」に、 それぞれ相当する。 (イ)本件発明2の「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、」「金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である」の構成について 甲1発明1は「粉末X線回折法による結晶構造解析の結果がIr2Ceの結晶構造から推定される回折パターンと一致し、不純物のピークも見られないことから、不純物組成が混入する割合が非常に小さく、良質なIr2Ce多結晶体となる」と特定されていることから、「Ir2Ce多結晶体」は、Ir2Ce以外の組成を実質的に含まない多結晶体であるといえ、「研磨された電子放出面」に現れる組成は、実質的にIr2Ceの単相だけであるといえる。そして、「研磨された電子放出面」に現れる組成は実質的にIr2Ceの単相だけであることから、Ir2Ceの単相が実質的に100面積%を占めるといえ、したがって、甲1発明1は、イリジウムとセリウムからなる化合物の単相が95面積%以上を占め、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下であるとの構成を備えるといえる。 そうすると、甲1発明1は、上記構成を備えるといえる。 (ウ)以上のことから、本件発明2と甲1発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材。」 【相違点1】 イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相について、本件発明2は、「前記単相の結晶構造は一方向凝固であ」るのに対し、甲1発明1は、当該単相の結晶構造はどのようなものか明らかでない点。 (エ)判断 本件発明2と甲1発明1との間には、相違点1があることから、本件発明2は、甲1発明1ではない。 また、甲2~9をみても、電子ビーム用カソード部材において、化合物がIr2Ceであり、相が単相であり、結晶構造が一方向凝固であるものが記載も示唆もされていないことから、これらの証拠を考慮しても、相違点1に係る本件発明2の構成は、甲1発明1に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 本件発明3及び6についても同様である。 ウ 甲1発明2を主引用発明とした場合の本件発明2、3及び6に対する判断 (ア)甲1発明2の「Ir3Ceサンプルに関しては、不純物としてIr2Ceが多く混入し」た「多結晶体」は、本件発明2の「イリジウムとセリウムからなる化合物」に、 甲1発明2の「研磨された電子放出面を有する光陰極」は、本件発明2の「電子ビーム生成用カソード部材」に、 それぞれ相当する。 (イ)本件発明2の「金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である」の構成について 甲1発明2は、「粉末X線回折法による結晶構造解析によれば、Ir3Ceサンプルに関しては、不純物としてIr2Ceが多く混入し多結晶体となっている」と特定されていることから、「Ir3Ceサンプル」は、Ir3Ce及びIr2Ce以外の組成を実質的に含まない多結晶体であるといえ、「研磨された電子放出面」に現れる組成は、実質的にIr2CeとIr3Ceの2相といえる。このように、「研磨された電子放出面」に現れる組成は実質的にIr2CeとIr3Ceの2相だけであることから、Ir2CeとIr3Ceの2相が実質的に100面積%を占めるといえ、したがって、甲1発明2は、イリジウムとセリウムからなる化合物が95面積%以上を占め、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下であるとの構成を備えるといえる。 (ウ)以上のことから、本件発明2と甲1発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「イリジウムとセリウムからなる化合物であり、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材。」 【相違点2】 イリジウムとセリウムからなる化合物について、本件発明2は、「Ir2Ceの単相が95面積%以上を占め、Ir2Ceの単相の結晶構造は一方向凝固であ」るのに対し、甲1発明2は、Ir3Ceサンプルに関しては、不純物としてIr2Ceが多く混入し多結晶体であり、イリジウムとセリウムからなる化合物の結晶構造はどのようなものか明らかでない点。 (エ)判断 本件発明2と甲1発明2との間には、相違点2があることから、本件発明2は、甲1発明2ではない。 また、甲1発明2に係る光陰極は、イリジウムとセリウムからなる化合物として、Ir3Ceに対してIr2Ceからなる不純物が多く混入されたものが用いられていることから、相違点2を解消すべく、この化合物をIr2Ceの単相が95面積%以上を占めるようなものにすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。さらに、上記イ(エ)と同様の理由により、甲2~9を考慮しても、相違点2に係る本件発明2の構成は、甲1発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 本件発明2に従属する本件発明3及び6についても同様である。 エ 甲2発明を主引用発明とした場合の本件発明2、3及び6に対する判断 (ア)甲2発明の「CeIr2粒子から成る単相均質結晶が試料中に成長したCe-67at%Ir合金試料であって、Ce-Ir系の他の相に由来する回折ピークはほとんど検出されなかったCe-67at%Ir合金試料」は、本件発明2の「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相」に、 甲2発明の「光陰極」は、本件発明2の「電子ビーム生成用カソード部材」に それぞれ相当する。 (イ)本件発明2の「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、」「金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である」の構成について 甲2発明は「CeIr2粒子から成る単相均質結晶が試料中に成長したCe-67at%Ir合金試料であって、Ce-Ir系の他の相に由来する回折ピークはほとんど検出されなかったCe-67at%Ir合金試料」と特定されていることから、「Ce-67at%Ir合金試料」は、CeIr2以外の組成を実質的に含まない結晶であるといえ、「光陰極」の電子放出表面に現れる組成は、CeIr2の実質的に単相だけであるといえる。この点、甲2のTable.1のCe-67at%Ir(Point12とPoint13は、同様の元素比となっており、CeIr2に近い元素比になっている。)及びFig.2(d)(Point12を含む面とPoint13を含む面以外に微小欠陥等の他の面はないことが見て取れる。)からも、Ce-67at%Ir合金試料は単層均質結晶といえる。 このように、甲2発明の「光陰極」の電子放出表面に現れる組成は、CeIr2の実質的に単相だけであることから、当該電子放出表面では、CeIr2の実質的に単相が100面積%を占めるといえ、したがって、甲2発明は、イリジウムとセリウムからなる化合物の単相が95面積%以上を占め(この点は、甲2のFig.2(d)に空隙が見られないことからもうかがわれる。)、金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下であるとの構成を備えるといえる。 そうすると、甲2発明は、上記構成を備えるといえる。 (ウ)以上のことから、本件発明2と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相が95面積%以上を占め、 金属イリジウム、および、イリジウムとセリウムのうちの1以上の元素の酸化物のうちの1以上の副成分の含有量が合計で5面積%以下である、電子ビーム生成用カソード部材。」 【相違点3】 イリジウムとセリウムからなる化合物であるIr2Ceの単相の結晶構造について、本件発明2は、「一方向凝固」であるのに対し、甲2発明は、どのようなものか明らかでない点。 (エ)判断 a 本件発明2と甲2発明との間には、相違点3があることから、本件発明2は、甲2発明ではない。 また、甲3~9には、上記イ(エ)で説示したとおり、電子ビーム用カソード部材において、化合物がIr2Ceであり、相が単相であり、結晶構造が一方向凝固であるものが記載も示唆もされておらず、このことは甲1であっても同様であるから、これらの証拠を考慮しても、相違点3に係る本件発明2の構成は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 b(a)これに対し、申立人は、甲2発明における「Ce-67at%Ir合金試料」の結晶構造が、一方向凝固になっているといえるから、相違点3が実質的なものではない旨主張し、その根拠として、当該「Ce-67at%Ir合金試料」は、プラズマ・アーク融解によって成長させられたものであって、これをより具体的にいえば、水冷銅るつぼを用いてテトラアーク炉中で成長させられたものであるところ、このようなプラズマアーク溶解法かつ水冷銅るつぼを用いる溶解法は、欠陥の少ない一方向凝固鋳塊の製作に適したものであることが、技術常識(以下「申立人主張技術常識」という。)であること、そして、この申立人技術常識が甲10によって立証できることを挙げる。 しかしながら、申立人主張技術常識は、甲10に記載されていない。すなわち、甲10(112頁左欄9行~右欄1行)には、プラズマアーク溶解法において、一方向凝固の鋳塊の作製が、水冷銅るつぼによってなされたのではなく、水冷銅鋳型によってなされたことが記載されている。よって、申立人の主張は、その前提が相当ではない。 さらにいえば、仮に、申立人主張技術常識の存在を認めることができるとしても、甲2発明における「Ce-67at%Ir合金試料」の結晶構造が、一方向凝固になるとは限らない。すなわち、甲2には、当該「Ce-67at%Ir合金試料」の作製が、申立人が主張するとおり、水冷銅るつぼを用いてなされることが記載されている。しかし、水冷銅るつぼは、鋳塊を作製する際に、るつぼを回転・出湯して下方に設けた鋳型内に溶湯を注入することも行われるのであって(甲10の112頁左欄下から4行~右欄1行)、これを取り出す際に、下側から引き抜いて行うとは限らない。そして、一方向凝固はこのような引き抜きを経て作製されると解されることに照らせば、水冷銅るつぼを用いて作製された鋳塊の結晶構造が、一方向凝固になるとも限らない。このように、甲2発明における「Ce-67at%Ir合金試料」の結晶構造が、必然的に一方向凝固になるとはいえないから、申立人主張技術常識の存在を認めることができるとしても、相違点3が実質的でないとはいえない。 (b)申立人は、甲2発明における「Ce-67at%Ir合金試料」の結晶構造が必然的に一方向凝固になるとはいえないとしても、そのようにすることは、当業者が適宜変更し得る設計事項にすぎない旨主張し、その根拠として、一方向凝固鋳塊は、その中心部に引巣欠陥のない健全な鋳塊であるところ、甲2発明に用いられる「Ce-67at%Ir合金試料」であっても、そのような鋳塊であるのが望ましいことが明らかであるから、甲2発明から出発した当業者であれば、当該「Ce-67at%Ir合金試料」が一方向性凝固鋳塊となるように成長条件を調整することは適宜設計し得たことであり、そのようにすることにより、当業者は、相違点3に係る本件発明2の構成に至る旨を挙げる。 しかしながら、甲2発明に接した当業者が、解決しようとする課題として、申立人が指摘するところの引巣欠陥をなくすことを認識するのかは、必ずしも判然としない。すなわち、引巣欠陥とは、鋳物の内部に比較的大きな空洞が発生する現象をいうところ、その原因は、鋳型内における溶湯の温度の低下に伴う液体収縮ないし固体収縮にあるとされているから、大きな鋳物ほど、より大きな引巣欠陥が生じると解される。そして、甲10(110頁左欄下から3行~右欄1行)に記載されている一方向性凝固鋳塊は、Φ210×450Lmmといったサイズのものであることから、甲2発明が対象とする「光陰極」(甲2の第1頁右欄15~26行には、約1.3~1.8gのものをさらに切断したものであることが記載されている。)のサイズよりは相当程度大きいといえる。このようなことからすれば、甲2発明のような小さいサイズの物であっても、そもそも引巣欠陥が生じるのか、仮に、生じるとしても、問題となる程度のものなのかは、必ずしも判然としない。 また、仮に、甲2発明において引巣欠陥が問題となり得るとしても、そのための課題解決手段がただちに一方向凝固鋳塊を得ることであると認めるに足りる証拠もない。そして、本件発明に係るカソード部材は、単相の結晶構造を一方向凝固にすることによって、結晶方位が一方向に揃って結晶構造の均一化が進むことにより、電子放出特性のさらなる向上を図ることができる(本件訂正明細書等の【0032】)という格別の効果を奏するのであり、甲10にこのような技術的事項が開示されているわけでもない。 以上によれば、申立人の主張・立証によっては、甲2発明における「Ce-67at%Ir合金試料」の結晶構造を一方向凝固にすることが、当業者が適宜変更し得る設計事項にすぎないということにはならない。 (c)したがって、申立人の上記主張は失当である。 c 以上については、本件発明2に従属する本件発明3及び6についても同様である。 (3)小括 よって、第1次取消理由は理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、本件訂正後の請求項2、3、6、8及び10に係る特許は、第2次取消理由通知書(決定の予告)及び第1次取消理由通知書に記載された取消理由(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)によっては取り消すことはできない。また、他に本件訂正後の請求項2、3、6、8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項1、4、5、7及び9に係る特許は、本件訂正により削除されたため、当該各請求項に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなり、したがって、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700050

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