特許異議申立
2023-701095
X線管用の構成部品又は電子捕獲スリーブ及びそのようなデバイスを備えたX線管
- 審判番号
- 2023-701095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-164758
- 登録番号
- 7278041
- 請求日
- 2023年10月12日
- 審決日
- 2025年06月04日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エクスロン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【権利者代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 東松 修太郎
- 審判官 藤田 年彦
- 分類
- P1651.121-YAA(H01J) / P1651.113-YAA(H01J) / P1651.537-YAA(H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7278041号発明「X線管用の構成部品又は電子捕獲スリーブ及びそのようなデバイスを備えたX線管」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7278041号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7278041号の請求項1、3、5、6、8~12に係る特許を維持する。
特許第7278041号の請求項2、4、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7278041号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成30年9月3日(パリ優先権主張平成29年9月4日)の出願であって、令和5年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年10月12日 :特許異議申立人である株式会社レクレアル
(以下「申立人」という。)による請求項1
~12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 3月15日付け:取消理由通知書(以下「第1次取消理由通知
書」という。)
同年 7月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下、この請求書による訂正を「第1次訂正」
という。)の提出
同年 8月15日 :申立人による意見書の提出
同年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下「第2
次取消理由通知書」という。)
令和7年 1月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以
下、この訂正請求書による訂正を「本件訂
正」という。)の提出
なお、本件訂正に係る請求によって、第1次訂正に係る請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
また、当合議体は、申立人に対して、本件訂正に係る請求について、特許法第120条の5第5項の規定に基づき相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~12に対して請求されている。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビーム(13)が導かれる開口(15)を備えており、管状の前記開口(15)を有するビーム管(3)又はコイルのコア(8,9)であり、第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、前記開口(15)の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されている、構成部品。」と記載されているのを、
「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビーム(13)が導かれる開口(15)を備えており、管状の前記開口(15)を有するコイルのコア(8,9)であり、第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、前記開口(15)の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している、構成部品。」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。
(請求項1の記載を引用する請求項3、5、6、8~12についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
請求項3の請求項2との引用関係を解消し、請求項1を引用するよう訂正し、請求項5の請求項2及び請求項4との引用関係を解消し、請求項1又は3を引用するよう訂正し、請求項6の請求項2及び請求項4との引用関係を解消し、請求項1、3及び5のいずれか1項を引用するよう訂正し、請求項8の請求項2、請求項4及び請求項7との引用関係を解消し、請求項1、3、5及び6のいずれか1項を引用するよう訂正し、請求項10の請求項2、請求項4及び請求項7との引用関係を解消し、請求項1、3、5、6、8及び9のいずれか1項を引用するよう訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「X線管の真空領域内における構成部品であって、」「電子ビーム(13)が導かれる開口(15)を備えており、管状の前記開口(15)を有する」「該構成部品」について、「ビーム管(3)又はコイルのコア(8,9)であ」ったものを、「コイルのコア(8,9)であ」ることに限定し、また、本件訂正前の請求項1の発明特定事項である「第2の材料」について、「交換可能な別個の追加本体として形成されて」いることを限定し、さらにこの「追加本体」について、「前記ベース本体の表面全体にわたってベース本体の表面に当接している」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1における「ビーム管(3)又はコイルのコア(8,9)」を、「コイルのコア(8,9)」とすることは、訂正前の請求項1に基づいて導き出される技術的事項である。
また、訂正事項1における「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成され」ていることは、訂正前の請求項2の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されている」ことに基づいて導き出される技術的事項である。
さらに、訂正事項1における「前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」ことは、訂正前の請求項4の「前記追加本体が、その表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」ことに基づいて導き出される技術的事項である。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項1に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2~4
ア 訂正の目的
訂正事項2~4に係る訂正は、訂正前の請求項2、4及び7を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであり、したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2~4に係る訂正は、訂正前の請求項2、4及び7を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項2~4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項2~4に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項2、4及び7に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項2~訂正事項4に係る請求項2、4及び7を削除する訂正に伴い、訂正前の請求項3、5、6、8及び10における請求項2、4及び7との引用関係を解消するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
前記アに照らせば、訂正事項5に係る訂正は、新規事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
前記ア及びイに照らせば、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件の存否
訂正事項5に係る訂正は、特許異議の申立てがされている請求項3、5、6、8及び10に係るものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない。
(4)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、同条第9項で準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1、3、5、6、8~12に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明3」などといい、これらを総称して「本件発明」という。なお、請求項2、4及び7は、前記第2のとおり、本件訂正により削除された。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3、5、6、8~12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その各請求項の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、
電子ビーム(13)が導かれる開口(15)を備えており、
管状の前記開口(15)を有するコイルのコア(8,9)
であり、
第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、
前記開口(15)の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、
前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、
前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している、構成部品。
【請求項3】
前記第2の材料が、管状の追加本体として形成されている、請求項1に記載の構成部品。
【請求項5】
前記追加本体が管状の前記開口(15)を有するビーム管(3)、管状の前記開口(15)を有するコイルのコア(8,9)、又は、環状の前記開口(16)を有する絞り(4)のうち複数を前記電子ビーム(13)に対して覆っている、
請求項1又は3に記載の構成部品。
【請求項6】
前記第1の材料が、モリブデン、鉄、タングステン又はチタンであり、前記第2の材料がアルミニウム、ベリリウム、ケイ素、炭素、ホウ素又はこれらの元素の1つ以上の化合物である、請求項1、3及び5のいずれか1項に記載の構成部品。
【請求項8】
前記第1の材料と前記第2の材料との原子番号の間の差が少なくとも16である、請求項1、3、5及び6のいずれか1項に記載の構成部品。
【請求項9】
前記第1の材料と前記第2の材料との原子番号の間の差が少なくとも36である、請求項8に記載の構成部品。
【請求項10】
電子ビーム(13)を対象物(5)上へ向ける手段と、前記電子ビーム(13)の伝播経路内に配置された請求項1、3、5、6、8及び9のいずれか1項に記載の構成部品とを備えたX線管。
【請求項11】
マイクロフォーカスX線管である、請求項10に記載のX線管。
【請求項12】
陰極から前記対象物(5)までの全経路上の任意の点において、前記電子ビーム(13)が前記第1の材料には衝突し得ないが前記第2の材料のみに衝突し得るように構成されている、請求項10又は11に記載のX線管。」
第4 取消理由及び申立理由の概要
1 第2次取消理由の概要
第1次訂正後の請求項1、3、5、6及び8~12に係る発明について、甲1に記載された発明、並びに、必要に応じて周知技術及び常套手段に基づく進歩性欠如。(証拠は、「第」及び「号証」を略して表記した。以下同様。)
2 第1次取消理由の概要(第2次取消理由以外)
(1)本件特許の登録時の請求項7に係る発明について、「前記第1の材料が、グラファイト形態の炭素を含む」との記載の明確性違反。請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~12に係る発明の明確性違反。
(2)本件特許の登録時の請求項1、2、6~12に係る発明について、甲1に記載された発明に基づく新規性欠如。
(3)本件特許の登録時の請求項2~5に係る発明について、甲1に記載された発明、甲2の1に記載された発明及び甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如。
(4)本件特許の登録時の請求項1~3、5、6に係る発明について、甲2の1又は甲3に記載された発明に基づく新規性欠如。
(5)本件特許の登録時の請求項1~3、5~12に係る発明について、甲2の1に記載された発明及び必要に応じて甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如。
(6)本件特許の登録時の請求項1~3、5~11に係る発明について、甲3に記載された発明及び必要に応じて甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如。
3 申立理由の概要(第2次取消理由及び第1次取消理由以外)
(1)本件特許の登録時の請求項4に係る発明について、「前記追加本体が、その表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」との記載のサポート要件違反。
(2)本件特許の登録時の請求項7に係る発明について、「前記第1の材料が、グラファイト形態の炭素を含む」との記載のサポート要件違反。
(3)本件特許の登録時の請求項2~12に係る発明について、甲1に記載された発明、並びに、必要に応じて甲2の1に記載された発明、周知技術及び甲4に記載されるような技術常識に基づく進歩性欠如。
(4)本件特許の登録時の請求項10に係る発明について、甲2の1に記載された発明に基づく新規性欠如。
(5)本件特許の登録時の請求項2~12に係る発明について、甲2の1に記載された発明、並びに、必要に応じて、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、周知技術及び技術常識に基づく進歩性欠如。
(6)本件特許の登録時の請求項4に係る発明について、甲3に記載された発明に基づく新規性欠如。
(7)本件特許の登録時の請求項7及び9に係る発明について、甲3に記載された発明、並びに、必要に応じて甲1に記載された発明及び周知技術に基づく進歩性欠如。
4 申立人が提出した証拠
甲1 :特開2017-22054号公報
甲2の1:米国特許第4104526号公報明細書
甲2の2:甲2の1の全文和訳
甲3 :特開2009-301908号公報
甲4 :特開昭52-124890号公報
第5 当合議体の判断
1 判断の概要
当合議体は、本件発明1、3、5、6及び8~12に係る特許について、第2次取消理由、第1次取消理由及び特許異議申立理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。
2 第2次取消理由(甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如)について
(1)甲1発明の認定
甲1には、第1実施形態に係るX線発生装置2(図2等)について、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(a等は分説のために付した。また、認定に用いた段落番号を参考までに括弧内に付してある。)
<甲1発明>
「a ハウジング100と、真空チューブ110と、電子銃120と、ターゲット130と、電磁レンズ141,145と、偏向装置142,144と、非点補正装置143と、開口部150と、真空ポンプ160と、を備えるX線発生装置2であって、(【0028】)
b 電磁レンズ141,145、偏向装置142,144及び非点補正装置143がZ方向に沿って真空チューブ110の周囲に配置され、電磁レンズ141、145は、電子線200を集束させるコイルであり、(【0033】)
c 偏向装置142,144は、X方向の磁場を発生させる一対のコイルとY方向の磁場を発生させる一対のコイルとで構成され、偏向装置142は、電磁レンズ141の内側(真空チューブ110と電磁レンズ141の間)に配置され、偏向装置144は、電磁レンズ141と偏向装置144の間に配置され、(【0035】)
d 非点補正装置143は、2組の四極子レンズ(四極一対のコイルを四極子という。)を光軸AXを中心に45度回転させて配置され、非点補正装置143は、電磁レンズ141と偏向装置144の間に配置され、(【0036】)
e ターゲット130の表面での電子線200が照射される領域の寸法がμm単位の大きさであり、(【0034】)
f 電子線200が電子源121からターゲット130に至る(【0044】)進路中の部材の中の部材が重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料で形成され、その部材が、軽元素でかつ導電性を有し、真空状態でガス放出量が少ない材料(アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、炭化ケイ素、パイログラファイトなど)で被覆されて、X線の遮蔽効果が高い重金属などの部材と、X線の発生量が少ない軽元素の材料による被覆とが組み合わせられることにより、X線の発生の低減とX線の遮蔽とを実現することができ、(【0048】)
g 進路中の部材の少なくとも一部は、電子源121からの電子線200が照射される可能性がある箇所、又はターゲット130若しくは部材で反射された反射電子線210が照射される可能性がある箇所とされ、例えば、電子線200,210が通過する進路を形成する真空チューブ110の内面、又は、電子線200,210が通過する進路の途中に配置された開口部(第1絞り)150とされる、(【0050】)
h X線発生装置における真空チューブ110。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)本件発明1の「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有するコイルのコアであり、」との特定事項について
甲1発明における「電子線200,210が通過する進路を形成する真空チューブ110」(c参照)は、X線管の真空領域内における構成部品を形成することは明らかである。そして、「真空チューブ110」は、「電子線200,210が通過する進路を形成する」(c参照)ものであるから、電子ビーム(電子線)が通過するビーム管であり、開口を備えることも明らかである。
そうすると、甲1発明の「電子線200,210が通過する進路を形成する真空チューブ110」は、本件発明1の「X線管の真空領域内における構成部品」に相当し、本件発明1でいう「電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有する」ものといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有する」構成部品である点で共通する
しかしながら、構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲1発明は「真空チューブ110」である点で相違する。
また、甲1発明における「電磁レンズ141,145、偏向装置142,144及び非点補正装置143」は、いずれも「コイル」(b、c、d参照)で構成されるから、本件発明1の「コイル」に相当するものの、甲1発明の「コイル」がコアを備えるかどうか不明である。
(イ)本件発明1の「第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、」との特定事項について
甲1発明における「真空チューブ110」は、その「内面」が「電子源121からの電子線200が照射される可能性がある箇所、又はターゲット130若しくは部材で反射された反射電子線210が照射される可能性がある箇所」である「進路中の部材の少なくとも一部」であり(c参照)、「進路中の部材の中の部材が重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料で形成され、その部材が、軽元素でかつ導電性を有し、真空状態でガス放出量が少ない材料(アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、炭化ケイ素、パイログラファイトなど)で被覆され」(b参照)ることとなる。そうすると、甲1発明の「真空チューブ110」における「重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料で形成され」た「中の部材」は、本件発明1の「第1の材料製のベース本体」に相当し、本件発明1でいう「前記第1の材料が金属であ」るものといえる。
また、甲1発明の「真空チューブ110」の「内面」を「被覆」する「軽元素でかつ導電性を有し、真空状態でガス放出量が少ない材料(アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、炭化ケイ素、パイログラファイトなど)」が、「真空チューブ110」の「中の部材」を「形成」する「重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料」よりも原子番号が小さいことは技術常識から明らかであるとともに、甲1発明の「真空チューブ110」の「内面」が「電子線200,210が通過する」開口を形成することは明らかである。そうすると、甲1発明の「真空チューブ110」の「重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料で形成され」た「中の部材」の「内面」が「軽元素」の「材料」で「被覆」されることは、本件発明1の「前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されている」ことに相当する。
したがって、甲1発明は、前記特定事項を備えている。
(ウ)本件発明1の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」との特定事項について
前記(イ)で検討したように、甲1発明は、「真空チューブ110」における「重金属のようなX線の遮蔽効果の高い材料で形成され」た「中の部材」(本件発明1の「第1の材料製のベース本体」に相当。)の「内面」が「軽元素」の「材料」で「被覆」されることとなるから、「真空チューブ110」における「中の部材」の「内面」に軽元素の材料が当接しているといえる。
そして、甲1発明では、上記の「真空チューブ110」における「中の部材」の「内面」が「電子源121からの電子線200が照射される可能性がある箇所」及び「ターゲット130若しくは部材で反射された反射電子線210が照射される可能性がある箇所」(c参照)とされると解されるところ、電子線200及び反射電子線210は、上記「内面」の全域に及ぶと解されることから、当該各箇所は、技術的にみて、上記「内面」の全体といってよいものである。このことは、甲1発明の「軽元素で」「被覆され」る「進路中の部材」が「真空チューブ110の内面」(b、c参照)とされ、真空チューブ110の内面の少なくとも一部とはされていないこととも整合する。
なお、甲1発明の「進路中の部材の少なくとも一部」との文言は、進路中の部材の一部の場合と進路中の部材の全部の場合のいずれも含むと解されるから、この文言から、「軽元素」の「材料」で「被覆」される対象が、「進路中の部材」である「真空チューブ110」における「中の部材」の「内面」の一部である必要があると解する理由はない。
したがって、本件発明1の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」ことと、甲1発明とは、「前記第2の材料が、」「前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」点で共通する。
しかしながら、ベース本体の表面全体にわたってベース本体の表面に当接している第2の材料について、本件発明1は「交換可能な別個の追加本体として形成されている」のに対し、甲1発明は「被覆」されるものである点で相違する。
イ 一致点及び相違点
前記アによれば、本件発明1と甲1発明とは、
「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、
電子ビームが導かれる開口を備えており、
管状の前記開口を有する構成部品であり、
第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、
前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、
前記第2の材料が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している、構成部品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲1発明は「真空チューブ110」である点。
<相違点2>
ベース本体の表面全体にわたってベース本体の表面に当接している第2の材料が、本件発明1は「交換可能な別個の追加本体として形成されている」のに対し、甲1発明は「被覆」されるものである点。
ウ 判断
(ア)相違点1について
甲1発明における「電磁レンズ141,145、偏向装置142,144及び非点補正装置143」は、いずれも「コイル」(b、c、d参照)で構成されるものの、「コイル」がコアを備えるかどうか不明である。
仮に、甲1発明が「コイル」のコアを備えているか、又はコアを備えるようにすることが当業者にとって容易であったとしても、甲1発明の「コイル」のコアは、「電子線200,210が通過する進路を形成する」(g参照)「真空チューブ110の周囲に配置され」(b参照)ることとなるから、相違点1に係る本件発明1の構成に至るには、甲1発明において、「コイル」のコアが配置されることとなる部分の真空チューブ110を取り除き、代わりに、「コイル」のコアによって、真空を維持するものとしなければならない。しかしながら、そのようにすることについて、甲1には記載も示唆もなく、甲2の1(後述の3(3)アを参照)、甲3(後述の3(4)アを参照)及び甲4(タングステン等が放射線遮蔽部材として用いられることが技術常識であることを示す証拠)にも記載も示唆もなく、周知技術や技術常識を参酌しても、そのようにする動機付けを見出すことができない。
(イ)小括
そして、甲1の他の記載及び甲2の1~4の記載をみても、前記(ア)の判断を左右するものはない。申立人は、本件発明1のように「構成部品」が「コイルのコア」である場合について、特段の主張をしていない。
したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2の1~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3、5、6及び8~12について
本件発明3、5、6及び8~12は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明及び甲2の1~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)第2次取消理由についての小括
したがって、第2次取消理由によって、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
3 第1次取消理由(第2次取消理由以外)について
(1)本件特許の登録時の請求項7及び請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~12に係る発明の明確性違反について
本件特許の登録時の請求項7は本件訂正により削除され、本件訂正後の請求項8~12は、請求項7の記載を引用しないものとなったから、当該明確性違反は解消した。
(2)甲1に記載された発明に基づく新規性欠如について
前記2(2)で検討したように、本件発明1と甲1発明とは、相違点1及び相違点2において相違するから、甲1発明に基づいて新規性が欠如するものとはいえない。
また、本件発明6及び8~12は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲1発明に基づいて新規性が欠如するものとはいえない。
そして、甲1の他の記載をみても上記判断を左右するものはなく、そのため、本件発明1、6、8~12は、甲1に記載された発明とはいえない。
なお、本件特許の登録時の請求項2及び7は、本件訂正により削除された。
(3)甲2の1に記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如について
ア 甲2発明の認定
甲2の1には、好適な実施形態に係るX線管12(図2等)について、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに甲2発明の認定に用いた甲2の1の翻訳である甲2の2の記載箇所を括弧内に記載してある。)。
<甲2発明>
「グリッド-陰極組み合わせを通じて出力を測定し制御できるX線管であって、(1頁2行)
管12の反対側の端部には、銅で形成され、ステンレス鋼管272及びカラー294によってガラスシェル250に対して固定される管状部材270に、アノード18が形成されており、(14頁下から3行~15頁1行)
管12のアノード18をこのように形成する特定の利点は、前端の直径がかなり小さくなっているため、X線源と被照射物質との間のより密接な結合を可能にするプローブ状の構造を形成することであり、これにより、源、検出器、およびサンプルの間の形状がより緊密で効率的になるものであり、また、エンドターゲットプローブ設計のもう1つの利点は、管や銃の構造に到達してX線管の出力のスペクトル純度を低下させる二次X線を生成する散乱電子や光子の影響を軽減できることであり、(15頁1~6行)
ターゲット276は、アノード18のエンドプラグ278に衝突する入射電子ビームに対して45度の角度で配置され、(15頁7~8行)
管状部材270及びステンレス鋼管272は、アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280で覆われており、管部材280は、縮小直径と拡大直径とに平行するように形成され、ポンプアウト空間が、スタンドオフラグ282によって管部材280と管状部材270及びステンレス鋼管272との間に維持される、(15頁10~14行)
X線管における管状部材270及びステンレス鋼管272。」
なお、甲2の1には、「管状部材270及び配管272は、アルミニウム又はターゲット276と同じ材料のような低原子番号材料で形成された管部材280で覆れていることが望ましい」(甲2の2の15頁10~12行)と記載され、管部材280がターゲット276と同じ材料であることを示唆する記載があるが、次の理由で、上記の甲2発明のとおり、「管状部材270及び配管272は、アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280で覆われて」いると認定した。すなわち、X線管のターゲットを低原子番号材料で形成された部材で形成することは技術常識に反するし、管部材280をターゲットと同じ材料で形成すると、管部材280からもターゲットから生成されるX線と同じX線が生成され、「前端の直径がかなり小さくなっているため、X線源と被照射物質との間のより密接な結合を可能にするプローブ状の構造を形成すること」や「管や銃の構造に到達してX線管の出力のスペクトル純度を低下させる二次X線を生成る散乱電子や光子の影響を軽減できる」ことと反することになるから、上記「アルミニウム又はターゲット276と同じ材料のような低原子番号材料」との記載のうち「又はターゲット276と同じ材料」には明らかな誤記があると認められる(「ターゲット276」は「アルミニウムハウジング256」の誤記であると考えられる。)。そのため、上記のとおり、「管状部材270及びステンレス鋼管272は、アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280で覆われて」いると認定した。
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 本件発明1の「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有するコイルのコアであり、」との特定事項について
甲2発明における「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」は、X線管の真空領域内における構成部品を形成することは明らかである。そして、「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」は、ターゲットに照射される電子が通過する構成部品であり、開口を備えることも明らかである。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有する」構成部品である点で共通する。
しかしながら、構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲2発明は「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」である点で相違する。
また、甲2発明は、コイルのコアを備えるかどうか不明である。
b 本件発明1の「第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、」との特定事項について
甲2発明における「銅で形成され」た「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」は、本件発明1の「第1の材料製のベース本体」に相当し、これらが銅又はステンレス鋼であることは、本件発明1の「前記第1の材料が金属であ」ることに相当する。
また、甲2発明の「アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280」は、「銅で形成され」た「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」を覆っており、スタンドオフラグ282によって、「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」の開口の表面上に配置されているといえる。
そして、「管部材280」を形成するアルミニウム(原子番号13)が銅(原子番号29)及びステンレス鋼を構成する鉄(原子番号26)よりも原子番号が小さい材料であることは技術常識である。
そうすると、甲2発明の「アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280」が「銅で形成され」た「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」を「覆」っており、「スタンドオフラグ282によって」「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」の開口の表面上に配置されていることは、本件発明1の「前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されている」ことに相当する。
したがって、甲2発明は、前記特定事項を備えている。
c 本件発明1の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」との特定事項について
甲2発明の「アルミニウムのような低原子番号材料で形成された管部材280」は、「銅で形成され」た「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」とは別個の部材であり、別個に交換可能であると解されるから、本件発明2の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されている」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されて」いる点で共通する。
しかしながら、甲2発明は、「ポンプアウト空間が、スタンドオフラグ282によって管部材280と管状部材270及びステンレス鋼管272との間に維持される」ものであるから、管部材280が、管状部材270及びステンレス鋼管272の表面全体にわたって、管状部材270及びステンレス鋼管272の表面に当接しているものではなく、本件発明1の「前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」との構成を備えるものではない。
(イ)一致点及び相違点
前記(ア)によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、
電子ビームが導かれる開口を備えており、
管状の前記開口を有する構成部品であり、
第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、
前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、
前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されている、構成部品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲2発明は「銅で形成され」た「管状部材270」及び「ステンレス鋼管272」である点。
<相違点2>
本件発明1は「前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」のに対し、甲2発明は、管部材280が、管状部材270及びステンレス鋼管272の表面全体にわたって管状部材270及びステンレス鋼管272の表面に当接しているものではない点。
(ウ)判断
a 新規性欠如について
本件発明1と甲2発明とは相違点1及び2があるから、本件発明1は、甲2発明とはいえない。
そして、甲2の1の他の記載をみても上記判断を左右するものはなく、そのため、本件発明1は、甲2の1に記載された発明とはいえない。
b 進歩性欠如について
(a)相違点1について
甲2発明は、コイルのコアを備えるかどうか不明である。
仮に、甲2発明がコイルのコアを備えているか、又はコアを備えることが容易であったとしても、相違点1に係る本件発明1の構成に至るには、甲2発明において、コイルのコアが配置されることとなる部分の管状部材270及びステンレス鋼管272を取り除き、代わりに、コイルのコアによって、真空を維持するものとしなければならない。しかしながら、そのようにすることについて、甲2の1には記載も示唆もなく、甲1、甲3及び甲4にも記載も示唆もなく、周知技術や技術常識を参酌しても動機付けを見出すことができない。
(b)相違点2について
甲2発明は、「ポンプアウト空間が、スタンドオフラグ282によって管部材280と管状部材270及びステンレス鋼管272との間に維持される」ものであるところ、相違点2に係る本件発明1の構成に至るには、管部材280が、管状部材270及びステンレス鋼管272の表面全体にわたって、管状部材270及びステンレス鋼管272の表面に当接するようにしなければならないが、そのようにすると、ポンプアウト空間を維持できなくなるから、当業者といえども相違点2に係る本件発明1の構成に想到することは困難である。
(c)小括
そして、甲2の1の他の記載及び甲1、3~4の記載をみても、前記(ア)の判断を左右するものはない。申立人は、本件発明1のように「構成部品」が「コイルのコア」である場合について、特段の主張をしていない。
したがって、本件発明1は、甲2の1に記載された発明並びに甲1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明3、5、6及び8~12について
本件発明3、5、6及び8~12は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲2の1に記載された発明とはいえず、また、甲2の1に記載された発明並びに甲1、3及び4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如及び進歩性欠如について
ア 甲3発明の認定
甲3には、第1の実施形態に係るX線発生装置1(図1等)について、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる(なお、参考までに甲3発明の認定に用いた段落番号を括弧内に記載してある。)。
<甲3発明>
「電子銃から出射された電子ビームをターゲットに入射させて、ターゲットからX線を放射させるX線発生装置であって、電子銃から出射された電子ビームが通過する電子通路と、電子通路を通過する電子ビームをターゲットに集束させる電磁コイルと、を備え、電子通路において、第1の部分の内壁面は、第1の部分に対して電子銃側に位置する第2の部分の内壁面よりも粗い凹凸面となっており、(【0005】)
第1の部分は、第2の部分よりも軽元素の材料からなり、電子通路の第2の部分よりもターゲットに近い電子通路の第1の部分で、その部分がより軽元素の材料からなるため、電子の入射によるX線の発生が抑制され、従って、ターゲットにおける電子ビームの集束スポット以外の部分からX線が放射されるのを防止することができ、X線像の解像度をより一層向上させることが可能となるものであって、「より軽元素の材料」とは、原子量がより軽い元素の材料を意味し、(【0012】)
開放部6は、後端部において一体的に接続された内筒部8a及び外筒部8bからなる二重円筒部8と、外筒部8bの前端部に固定ネジ14によって固定された円錐台形状の出射端部13と、を有し、内筒部8a内には、電子ビームEの進行方向に延在するステンレス鋼製のパイプ部材9が挿入されており、内筒部8aと外筒部8bとの間には、アルミニウム製のボビン11にエナメル線を巻き付けてなる電磁コイル12が配置され、二重円筒部8及び出射端部13は、軟鉄等の磁性材料からなり、電磁コイル12によって生じる磁束が通過する磁気回路の一部を構成しており、(【0016】)
パイプ部材9は、電子銃2から出射された電子ビームEが通過する電子通路7の一部を構成しており、電磁コイル12は、電子通路7を通過する電子ビームEをターゲット5に集束させるものであり、(【0017】)
出射端部13の内側には、ステンレス鋼製のアパーチャ部材17が配置されており、アパーチャ部材17は、前側に開口した有底円筒形状の本体部15と、本体部15の前端部に一体的に形成された円板形状のフランジ部16と、を有しており、本体部15は、パイプ部材9の前端部内に挿入されており、フランジ部16は、出射端部13に固定ネジ22によって固定されており、(【0018】)
本体部15の底部は、電子ビームEを絞る電子通過孔18が設けられたアパーチャ部19を含んでおり、電子通過孔18は、電子通路7の中心線L1を中心線としており、電子通過孔18の内壁面18aは、ネジ山及びネジ溝が形成されることにより凹凸面となっており、(【0019】)
本体部15内には、後側に開口した有底円筒形状のアパーチャ部材21が挿入されており、アパーチャ部材21の底部は、電子ビームEを絞る電子通過孔23が設けられたアパーチャ部24を含んでおり、(【0020】)
電子通過孔18が設けられたアパーチャ部19は、ステンレス鋼製のパイプ部材9の内部に位置し、(図2、3)
凹凸面となる部分の材料の例としては、その電子銃2側の部分の材料がステンレス鋼である場合、カーボンやチタン、アルミニウム等が挙げられる、(【0033】)
X線発生装置におけるステンレス鋼製のパイプ部材9。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 本件発明1の「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有するコイルのコアであり、」との特定事項について
甲3発明における「ステンレス鋼製のパイプ部材9」は、X線管の真空領域内における構成部品を形成することは明らかである。そして、「ステンレス鋼製のパイプ部材9」は、電子銃から出射された電子ビームが通過する電子通路を形成するビーム管であり、開口を備えることも明らかである。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、電子ビームが導かれる開口を備えており、管状の前記開口を有する」構成部品である点で共通する。
しかしながら、構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲3発明は「ステンレス鋼製のパイプ部材9」である点で相違する。
また、甲3発明における「電磁コイル12」は、本件発明1の「コイル」に相当するものの、甲3発明の「内筒部8a」がコイルのコアといえるかどうか不明であり、甲3発明はコイルのコアを備えるかどうか不明である。
b 本件発明1の「第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、」との特定事項について
甲3発明における「ステンレス鋼製のパイプ部材9」は、本件発明1の「第1の材料製のベース本体」に相当し、パイプ部材9がステンレス鋼製であることは、本件発明1の「前記第1の材料が金属であ」ることに相当する。
そして、甲3発明においては、X線発生装置において、電子ビームEの進行方向に延在するステンレス鋼製のパイプ部材9の内部に電子通過孔18が設けられたアパーチャ部19が位置しており、当該アパーチャ部19を含むアパーチャ部材17の本体部15は、有底円筒形状であって管状部材であるとともに、本体部15は、パイプ部材9の前端部内に挿入されているから、パイプ部材9の内部の表面上に本体部15が配置されているといえる。そして、当該本体部15における電子通過孔18の内壁面18aは凹凸面であって、当該凹凸面となる部分の材料の例としては、その電子銃2側の部分の材料がステンレス鋼である場合、カーボンやチタン、アルミニウム等が挙げられているところ、カーボン(原子番号6)、チタン(原子番号は22)、アルミニウム(原子番号は13)が、パイプ部材9を形成するテンレス鋼製(鉄の原子番号は26)よりも原子番号が小さい材料であることは技術常識である。
そうすると、甲3発明のアパーチャ部材17の本体部15がパイプ部材9の前端部内に挿入されており、当該本体部15における電子通過孔18の内壁面18aは凹凸面であって、当該凹凸面となる部分の材料の例としては、カーボンやチタン、アルミニウム等が挙げられていることは、本件発明1の「前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されている」ことに相当する。
したがって、甲3発明は、前記特定事項を備えている。
c 本件発明1の「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面全体にわたって前記ベース本体の表面に当接している」との特定事項について
甲3発明の「本体部15」を有する「アパーチャ部材17」は、パイプ部材9とは別個の部材であり、「パイプ部材9の前端部内に挿入されて」いる「本体部15」は、交換可能であると解される。
また、甲3発明の「本体部15」は、「パイプ部材9の前端部内に挿入されて」いるから、パイプ部材9の表面に当接しているものの、パイプ部材9の表面全体にわたってパイプ部材9の表面に当接しているものではない。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、「前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面に当接している」点で共通する。
しかしながら、追加本体がベースの表面に当接していることについて、本件発明1は、「前記ベース本体の表面全体にわたって」当接しているのに対し、甲3発明は、パイプ部材9の前端部内において当接するだけで、パイプ部材9の表面全体にわたって当接しているものではない点で相違する。
(イ)一致点及び相違点
前記(ア)によれば、本件発明1と甲3発明とは、
「X線管の真空領域内における構成部品であって、該構成部品は、
電子ビームが導かれる開口を備えており、
管状の前記開口を有する構成部品であり、
第1の材料製のベース本体を備えており、前記第1の材料が金属であり、
前記開口の表面上に、原子番号が前記第1の材料の原子番号よりも小さい第2の材料が配置されており、
前記第2の材料が、交換可能な別個の追加本体として形成されており、前記追加本体が、前記ベース本体の表面に当接している、構成部品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
構成部品について、本件発明1は「コイルのコアであ」るのに対し、甲3発明は「パイプ部材9」である点。
<相違点2>
追加本体がベースの表面に当接していることについて、本件発明1は、「前記ベース本体の表面全体にわたって」当接しているのに対し、甲3発明は、パイプ部材9の前端部内において当接するだけで、パイプ部材9の表面全体にわたって当接しているものではない点。
(ウ)判断
a 新規性欠如について
本件発明1と甲3発明とは相違点1及び2があるから、本件発明1は、甲3発明とはいえない。
そして、甲3の他の記載をみても上記判断を左右するものはなく、そのため、本件発明1は、甲3に記載された発明とはいえない。
b 進歩性欠如について
(a)相違点1について
甲3発明における「電磁コイル12」は、本件発明1の「コイル」に相当するものの、甲3発明の「内筒部8a」がコイルのコアといえるかどうか不明であり、甲3発明はコイルのコアを備えるかどうか不明である。
仮に、甲3発明の「内筒部8a」がコイルのコアといえるか、又はコアを備えることが容易であったとしても、相違点1に係る本件発明1の構成に至るには、甲3発明において、コイルのコアが配置されることとなる部分のステンレス鋼製のパイプ部材9を取り除き、代わりに、コイルのコアによって、真空を維持するものとしなければならない。しかしながら、そのようにすることについて、甲3には記載も示唆もなく、甲1、甲2の1及び甲4にも記載も示唆もなく、周知技術や技術常識を参酌しても動機付けを見出すことができない。
(b)小括
そして、甲3の他の記載及び甲2の1~4の記載をみても、前記(a)の判断を左右するものはない。
申立人は、甲3に記載された「二重円筒部8」が、本件発明1の「コイルのコア」に相当するとした上で、甲3において、気密封止部材としての複数のOリング41等の配置から、二重円筒部8の内部が真空状態に置かれていることは明らかである旨主張する。しかしながら、本件発明1でいう「真空領域内における」ものというためには、二重円筒部8の内部、つまり、パイプ部材9の内部が真空状態に置かれていることからこれをいうことはできず、むしろ、二重円筒部8自体が真空領域内に配置されるものでなければならないところ、複数のOリング41は、電子ビームEが通過する空間を構成する、本体部3の内部、パイプ部材9の内部及びアパーチャ部材17の内部の真空を保持するために配置されていると解するのが相当であり、そうである以上、電子ビームEが通過するパイプ部材9の外側に配置され、電子ビームEが通過する空間を構成しない二重円筒部8自体が真空状態に置かれていると解することはできない。
したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明3、5、6及び8~12について
本件発明3、5、6及び8~12は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由(第2次取消理由及び第1次取消理由以外)について
(1)本件特許の登録時の請求項4及び7に係る発明についてのサポート要件違反
本件特許の登録時の請求項4及び7は本件訂正により削除されたから、当該申立理由は成り立たない。
(2)本件特許の登録時の請求項10に係る発明について、甲2の1に記載された発明に基づく新規性欠如
本件発明10は、前記3(3)ウのとおり、甲2の1に記載された発明とはいえいない。
(3)本件特許の登録時の請求項2~12に係る発明について、甲1に記載された発明、並びに、必要に応じて甲2の1に記載された発明、周知技術及び甲4に記載されるような技術常識に基づく進歩性欠如
本件発明3、5、6、8~12について、前記3(3)ウのとおり、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許の登録時の請求項4に係る発明について、甲2の1に記載された発明に基づく進歩性欠如
本件特許の登録時の請求項4は本件訂正により削除されたから、当該申立理由は成り立たない。
(5)本件特許の登録時の請求項7及び9に係る発明について、甲3に記載された発明、並びに、必要に応じて甲1に記載された発明及び周知技術に基づく進歩性欠如
本件特許の登録時の請求項7は本件訂正により削除されたから、当該申立理由は成り立たない。
また、本件発明9は、前記3(4)ウのとおり、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、第2次取消理由、第1次取消理由及び申立理由によっては、本件発明1、3、5、6、8~12についての特許を取り消すことができない。そして、他に本件発明1、3、5、6、8~12についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2、4、7は、本件訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、これらの特許についての異議申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701095