特許異議申立
2021-701168
放電ランプおよびオゾン生成方法
- 審判番号
- 2021-701168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-063805
- 登録番号
- 6885765
- 請求日
- 2021年12月10日
- 審決日
- 2023年06月30日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社オーク製作所
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【異議申立人】佐々木 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 波多江 進
- 分類
- P1651.113-YAA(H01J) / P1651.121-YAA(H01J) / P1651.536-YAA(H01J) / P1651.537-YAA(H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6885765号発明「放電ランプおよびオゾン生成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6885765号の特許請求の範囲の請求項1~9を、令和5年4月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9について訂正することを認める。
特許第6885765号の請求項5、6に係る特許を維持する。
特許第6885765号の請求項1~4、7~9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6885765号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成29年3月28日に出願され、令和3年5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年12月10日 :特許異議申立人佐々木毅(以下「申立人」と
いう。)による請求項1~9に係る特許に対
する特許異議の申立て
令和 4年 3月31日付け:取消理由通知書(以下、この通知書を「第1
次取消理由通知書」といい、これに係る取消
理由を以下「第1次取消理由」という。)
令和 4年 6月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下
「第1次訂正請求書」という。)の提出
令和 4年 9月26日付け:訂正拒絶理由通知書
令和 4年10月28日 :特許権者による意見書及び手続補正書(以下
、この手続補正書に係る補正後の第1次訂正
請求書による訂正を「第1次訂正」という。
)の提出
令和 4年12月20日 :申立人による意見書の提出
令和 5年 3月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)(以下、この
通知書を「第2次取消理由通知書」といい、
これに係る取消理由を以下「第2次取消理由
」という。)
令和 5年 4月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下
「第2次訂正請求書」といい、この請求書に
よる訂正を「本件訂正」という。)いう。)
の提出
なお、本件訂正に係る請求によって、第1次訂正に係る請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
また、当審は、本件訂正に係る請求について、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、第1次訂正後の同記載と比べて、(i)請求項1、2、4及び9が削除されたこと、(ii)請求項6の記載が、第1次訂正後では削除されたのを、そうすることなく変更されるようにしたこと、においてのみ相違し、その余の請求項の記載に相違はない。そして、(ii)については、本件訂正後の請求項6は、後記第2の1(9)によれば、申立人に意見書を提出する機会を既に与えた第1次訂正後の請求項5(本件訂正後の同請求項の記載と文言上差異がない。)に係るオゾン生成装置を、実質的には、オゾン生成方法として表現しなおしたにすぎないものである。このように、本件訂正に係る請求の内容は、実質的に、第1次訂正に係る請求の内容に包含されているといえることから、当審は、申立人に改めて意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正事項1(請求項1)
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2(請求項2)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3(請求項3)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4(請求項4)
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5(請求項8)
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(6)訂正事項6(請求項9)
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(7)訂正事項7(請求項5)
特許請求の範囲の請求項5に、
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備え、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって生じる、偏った放電によって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高いことを特徴とするオゾン生成装置。」
と記載されているのを、
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えたエキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置であって、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって生じる、偏った放電状態となる誘電体バリア放電によって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く、前記偏った放電状態が、前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であり、各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られることを特徴とするオゾン生成装置。」
と訂正する。
(8)訂正事項8(請求項7)
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(9)訂正事項9(請求項6)
特許請求の範囲の請求項6に、
「放電ガスが封入された筒状の放電容器の外周面に沿ってそれぞれ軸方向に延びる一対の電極を、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向するように、配置し、前記一対の電極の間に高周波電圧を印加することによって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高くなるように、偏った放電を生じさせることを特徴とするオゾン生成方法。」
と記載されているのを、
「エキシマランプにおいて、放電ガスが封入された筒状の放電容器の外周面に沿ってそれぞれ軸方向に延びる一対の電極を、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向するように、配置し、前記一対の電極の間に高周波電圧を印加することによって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高くなるように、偏った放電状態となる誘電体バリア放電を生じさせ、前記偏った放電状態が、前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であり、前記誘電体バリア放電によって、オゾンを生成する波長の紫外線を前記放電容器外部に向けて放射させ、各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部を、該各電極によって遮ることを特徴とする、エキシマランプを用いたオゾン生成方法。」
と訂正する。
なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~4、8及び9、一群の請求項である訂正後の請求項5及び7、並びに、訂正後の請求項6について請求されている。その上で、訂正後の請求項2、3、4、7、8、9については、それぞれ別の訂正単位とする求めがなされている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項4は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項5は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項6は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、下記の内容からなる。
(i)訂正前の請求項5の「オゾン生成装置」が、「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備え」たものであったのを、「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えたエキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」であることに限定する訂正。
(ii)上記(i)に伴って、訂正前の請求項5の「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備え」という事項が、上記(i)で限定された内容に完全に包含されることになるため、重複を排除すべく上記事項を削除する訂正。
(iii)訂正前の請求項5の「偏った放電」を、「偏った放電状態となる誘電体バリア放電」に限定する訂正。
(iv)上記(iii)に加えて、「前記偏った放電状態」を、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」ることに限定する訂正。
(v)訂正前の請求項5の「オゾン生成装置」が「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」ものであることを限定する訂正。
上記(i)、(iii)、(iv)及び(v)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、上記(ii)の訂正は、明瞭でない記載を釈明するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(i)の訂正について、本件特許の登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0001】には、「本発明は、エキシマランプなどの放電ランプに関」するものであることが記載されており、【0002】には、「エキシマランプでは、・・・放電容器からランプ外に向けて紫外線を放射する。紫外線照射によって生じるオゾンは、・・・」と記載されている。
上記(ii)の訂正について、重複を排除するためだけのものであるから、新たな技術的事項が導入されることはない。
上記(iii)の訂正について、本件明細書等の【0021】には、「一対の電極30、40に対して高周波電圧を印加すると、放電容器20内において誘電体バリア放電が生じ」ると記載されている。
上記(iv)の訂正について、本件明細書等の【0023】には、「図3に示すように、放電容器20の中央部付近においては、細い領域(放電容器の中心軸付近のみ)で微弱な放電CCが生じる。一方、一対の電極30、40で覆われている空間領域では、太い領域(放電容器の径方向全体)で強い放電CCが生じる。」と記載されている。
上記(v)の訂正について、本件明細書等の【0008】には、「本発明の放電ランプでは、放電容器内において局所的に生じた放電から放射された紫外線が、少なくとも一方の電極により遮られる。」と記載されており、【0024】にも、「一方、放電容器20の両端部側では、太い領域で強い放電CCが生じて、放射される紫外線の照度は高いが、一対の電極30、40が放電容器の外周面20Sを覆う位置に対向配置されて、放電から放射される紫外線を遮る遮光部となるため、強い放電CCから放射された紫外線の一部が一対の電極30、40によって遮光される。」と記載されている。
したがって、訂正事項7は、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項8は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されることはなく、よって、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、下記の内容からなる。
(i)訂正前の請求項6の「オゾン生成方法」が「エキシマランプを用いた」ものであることに限定する訂正。
(ii)訂正前の請求項6の「放電ガスが封入された筒状の放電容器の外周面に沿ってそれぞれ軸方向に延びる一対の電極を、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向するように、配置」するものが、「エキシマランプにおいて」のものであることに限定する訂正。
(iii)訂正前の請求項6の「偏った放電」を、「偏った放電状態となる誘電体バリア放電」に限定する訂正。
(iv)上記(iii)に加えて、「前記偏った放電状態」を、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」ることに限定する訂正。
(v)上記(i)及び(iii)に加えて、「誘電体バリア放電を生じさせ」る「エキシマランプを用いたオゾン生成方法」を、「前記誘電体バリア放電によって、オゾンを生成する波長の紫外線を前記放電容器外部に向けて放射させ」るものであることに限定する訂正。
(vi)上記(i)に加えて、「エキシマランプを用いたオゾン生成方法」を、「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部を、該各電極によって遮る」ものであることを限定する訂正。
上記(i)~(vi)の訂正は、特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記(i)・(ii)の訂正について、訂正事項7の(i)で説示したのと同様の議論が成り立つ。
上記(iii)の訂正について、訂正事項7の(iii)で説示したのと同様の議論が成り立つ。
上記(iv)の訂正について、訂正事項7の(iv)で説示したのと同様の議論が成り立つ。
上記(v)の訂正について、本件明細書等の【0025】には、「その結果、放電容器20の中央部付近から、局所的に紫外線が放電容器20外へ放射される。これにより、中央部付近においてのみオゾンが生成し、不要なオゾンが生成されず、局所的にオゾンが生成される。」と記載されている。
上記(vi)の訂正について、訂正事項7の(v)で説示したのと同様の議論が成り立つ。
したがって、訂正事項7は、新規事項を追加するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないか否かについて
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、訂正後の請求項1~9は、特許異議申立てがなされた請求項であることから、当該各請求項についての訂正には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
そして、本件訂正は、上記1で説示したとおり、一群の請求項である訂正後の請求項1~4、8及び9、一群の請求項である訂正後の請求項5及び7、並びに、訂正後の請求項6について請求された上で、訂正後の請求項2、3、4、7、8、9については、それぞれ別の訂正単位とする求めがなされている。
よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~9を、第2次訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9について訂正することを認める。
第3 本件発明の認定
本件訂正後の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、削除された請求項以外の請求項に係る発明を総称して「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【本件発明1】
(削除)
【本件発明2】
(削除)
【本件発明3】
(削除)
【本件発明4】
(削除)
【本件発明5】
放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えたエキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置であって、
前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって生じる、偏った放電状態となる誘電体バリア放電によって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く、
前記偏った放電状態が、前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であり、
各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られることを特徴とするオゾン生成装置。
【本件発明6】
エキシマランプにおいて、放電ガスが封入された筒状の放電容器の外周面に沿ってそれぞれ軸方向に延びる一対の電極を、前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向するように、配置し、
前記一対の電極の間に高周波電圧を印加することによって、前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高くなるように、偏った放電状態となる誘電体バリア放電を生じさせ、
前記偏った放電状態が、前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であり、
前記誘電体バリア放電によって、オゾンを生成する波長の紫外線を前記放電容器外部に向けて放射させ、
各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部を、該各電極によって遮ることを特徴とする、エキシマランプを用いたオゾン生成方法。
【本件発明7】
(削除)
【本件発明8】
(削除)
【本件発明9】
(削除)」
第4 取消理由の概要及び当事者が提出した証拠
1 第2次取消理由(決定の予告)の概要
第1次訂正後の請求項1、2、4、5及び9に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第2次取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
第1次訂正後の請求項1、2、4、5及び9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
2 第1次取消理由の概要
本件特許登録時の請求項1~9に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した第1次取消理由(第2次取消理由で説示したものを除く。)の概要は、次のとおりである。
本件特許登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件特許登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件特許登録時の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
本件特許登録時の請求項1~3、5,6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証~甲第3号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許登録時の請求項1~9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証~甲第4号証のいずれかに記載された発明及び必要に応じて周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 当事者が提出した証拠
以下、「第」及び「号証」を略して表記する。
(1)申立人が提出した証拠
甲1:特開2000-77031号公報
甲2:特開平5-82102号公報
甲3:特開2008-146906号公報
甲4:特開平9-17582号公報
甲5:特開2002-216704号公報
甲6:国際公開第2016/125708号
甲7:特開平1-226701号公報
甲8:特開平11-339730号公報
甲9:特開平8-329888号公報
(2)特許権者が提出した証拠
乙1:五十嵐龍志,“誘電体バリア放電エキシマランプの原理と応用”,レーザー研究,平成7年12月,第23巻,第12号,pp.1051-1055
乙2:コンパクト版照明ハンドブック,株式会社オーム社,平成18年11月20日,第1版第1刷,p.129及びp.133
乙3:特開2004-281423号公報
乙4:特開2018-164622号公報
乙5:松見豊,“光資源を活用し、創造する科学技術の振興-持続可能な「光の世紀」に向けて- 第1章 光と地球環境”,文部科学省科学学術・学術審議会・資源調査分科会報告書,文部科学省,平成19年9月5日
乙6:Holger Claus,“Special Issue Invited Review Ozone Generation by Ultraviolet Lamps”, Photochemistry and Photobiology,2021,97,pp.471-476
乙7:“エキシマランプ”,ウシオ電機ホームページ 光技術用語解説
乙8:特開2014-78460号公報
乙9:特開2010-20979号公報
乙10:特許第3596812号公報
乙11:特許第4385731号公報
乙12:特許第5167980号公報
乙13:特許第5856380号公報
乙14:特許第6331884号公報
乙15:特許第4501830号公報
乙16:特開2004-95441号公報
乙17:米国特許出願公開第2005/0035711号明細書
乙18:特開2015-201299号公報
乙19:特開2016-126934号公報
乙20:特開平10-123298号公報
乙21:特開2015-149260号公報
乙22:朝山淳哉,“誘電体上補助電極によるバリア放電の発光効率の向上”,卒業研究報告,高知工科大学,平成15年1月27日、p.3
乙23:特許第3539284号公報
乙24:特許第5223443号公報
乙25:特開2002-93243号公報
乙26:特開2012-28052号公報
乙27:菱沼宣是,“表面処理技術ハンドブック 第2編 応用編/第1章 処理方法より エキシマUV”,光技術情報誌「ライトエッジ」,2000年3月,No.18
乙28:朽久保文嘉,“大気圧プラズマの生成と応用-2 大気圧プラズマの基礎”,電学誌,2006年,126巻,12号,pp.781-783
乙29:小田昭紀,外2名,“小特集 非平衡大気圧プラズマのシミュレーションの現状と展望 2.非平衡大気圧プラズマのシミュレーション”,J.Plasma Fusion Res.,2016,Vol.92,No.9,pp.682-687
乙30:改訂新版 放電ハンドブック,社団法人電気学会,平成3年10月30日,再版8刷,pp.263-264
乙31:国際公開第2020/100733号
乙32:特許第6729820号公報
第5 第1次取消理由、第2次取消理由及び特許異議申立理由に対する当審の判断
当審は、本件訂正後の請求項5及び6に係る特許について、上記各取消理由及び特許異議申立理由によっては、これらを取り消すことはできないと判断する。なお、その余の請求項は、本件訂正により削除された。
その理由は以下のとおりである。
1 第2次取消理由(決定の予告)について
(1)明確性要件不適合について
第2次取消理由通知書は、第1次訂正後の請求項1、2、4、5及び9(その余の請求項は削除されている。)に記載された「誘電体バリア放電」の意味が明確でない旨、当該請求項1、2、4及び9に記載された「相対的に弱い放電」及び「相対的に強い放電」の意味が不明である旨、当該請求項5に記載された「偏った放電状態」の意味が不明である旨説示した。
これに対し、まず、本件訂正によって、上記の「相対的に弱い放電」及び「相対的に強い放電」の文言が記載された上記各請求項が削除された。
他方、本件訂正後のその余の請求項に係る請求項5及び6には、「偏った放電状態となる誘電体バリア放電」の文言が記載されているところ、このうち「誘電体バリア放電」とは、その文言のとおり、「誘電体」が「バリア」として介在する放電形態、つまり、電極と放電領域との間に「誘電体」が「バリア」として介在する放電形態を広く含むものと解すれば足りる。そして、当該各請求項には、「誘電体バリア放電」に位置づけられる「偏った放電状態」が、「一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態」であることが特定されているところ、当該放電状態は、その放電の強弱ではなく、その放電が存在する空間領域をもって特定されていることから、おのずから明確である。
したがって、上記明確性要件不適合の第2次取消理由は解消した。
(2)小括
よって、第2次取消理由は理由がない。
2 第1次取消理由(第2次取消理由に係るもの以外)について
(1)明確性要件不適合、サポート要件不適合及び実施可能要件不適合に係る取消理由について
ア 明確性要件不適合
(ア)第1次取消理由通知書は、登録時の請求項4に記載された「希ガス」の測定温度が不明であること、同請求項7に記載された「非導電性部材」が放電容器の外周面のどの部分を覆うのか不明であること、同請求項8に記載された「電圧」が最大値なのか、実効値なのか、平均値なのかが不明であることから、当該各請求項の記載が不明確である旨説示した。
これに対し、本件訂正により、上記各請求項が削除された。
(イ)したがって、上記明確性不適合の第1次取消理由は解消した。
イ サポート要件不適合
(ア)第1次取消理由通知書は、登録時の請求項1~9に記載された発明が、従来のエキシマランプでは、必要以上に高濃度(多量)のオゾンが生成されるので、少量のオゾンを生成するために複雑なランプ点灯制御回路が必要であったり、このような構成では装置故障により高濃度のオゾンが流出するおそれがあったりするという課題(以下「本件課題」という。)を当業者が解決できると認識できる範囲を超えている旨説示し、その根拠として、当該各請求項には、電極が紫外線を遮蔽する材質から構成されている旨の特定がないことを挙げた。
これに対し、本件訂正により、独立項である請求項5において「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」ことが特定されるとともに、同じく独立項である請求項6においても同様の内容が特定された。その余の請求項は削除された。
(イ)第1次取消理由通知書は、さらに、登録時の請求項1~4、8及び9には、オゾンが生成されることが特定されていないから、当該各請求項に記載された発明が本件課題が生じるための前提を欠いている旨説示したところ、本件訂正により、当該各請求項が削除された。
また、第1次取消理由通知書は、さらに、登録時の請求項5~7には、オゾンが生成されることが特定されているものの、オゾンの生成と発生される紫外線との関係が特定されていないから、当該紫外線がオゾンが生成されないものであることを排除しておらず、よって、その意味において、当該各請求項に記載された発明は、本件課題が生じるための前提を欠いている旨説示した。
これに対し、本件訂正により、独立項である請求項5において「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成する」ことが特定されるとともに、同じく独立項である請求項6において「オゾンを生成する波長の紫外線を前記放電容器外部に向けて放射させ」ることが特定されたため、紫外線放射とオゾンの関係が明らかとなった。請求項7は削除された。
(ウ)第1次取消理由通知書は、登録時の請求項7には、紫外線を遮る非導電性部材が放電容器の外周面のどの部分を覆っているのか特定されていないことから、文言上、紫外線が全て遮られてしまうような態様も含まれてしまっており、よって、当該請求項に記載された発明は、当業者にとって、本件課題が本件課題解決手段により解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない旨説示した。
これに対し、本件訂正により、請求項7が削除された。
(エ)したがって、上記サポート要件不適合の第1次取消理由は解消した。
ウ 実施可能要件不適合
第1次取消理由通知書は、上記イと同様の理由で、登録時の発明の詳細な説明が、登録時の請求項1~9に記載された発明につき実施可能要件不適合である旨説示したが、同様に、当該実施可能要件不適合の第1次取消理由は解消した。
(2)新規性欠如及び進歩性欠如に係る取消理由について
第1次取消理由通知書は、本件特許の登録時の請求項1~3、5及び6に係る発明は、甲1~3のいずれか一つに記載された発明であり、請求項1及び2に係る発明は、甲4に記載された発明であるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、同じく請求項1~9に係る発明は、甲1~4のいずれか一つに記載された発明及び必要に応じて周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨説示したところ、本件発明5及び6については、後記第6のとおり、上記取消理由は成り立たない。その余の請求項は、本件訂正により削除された。
3 第1次取消理由及び第2次取消理由で採用しなかった異議申立理由について
(1)申立人は、本件発明、つまり本件発明5及び6(その余の発明に係る請求項は本件訂正により削除された。)につき、本件訂正明細書等の記載に実施可能要件違反がある旨主張し、その根拠として、(i)本件発明には「放電ガス」の種類や成分比が特定されていないことから、本件発明の前提となるオゾンを生成するために必要なピーク波長が200nm以下の紫外線が発生しない態様も含まれていること、(ii)この場合、本件訂正明細書等には「キセノンガス」を用いた例の記載しかないこと、を挙げる。しかしながら、本件発明には、エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成する旨が特定されており、そのようなエキシマランプの具体的構成が本件訂正明細書等の【0019】に記載されているから、本件訂正明細書等の記載に実施可能要件違反はない。
申立人は、関連して、本件発明の構成が明確でない旨も主張するが、同様に明確性要件違反はない。
(2)申立人は、本件発明につき、本件訂正明細書等の記載に実施可能要件違反がある旨主張し、その根拠として、本件発明には「放電容器の外周面を覆う一対の電極」と記載されているにとどまるため、当該記載では、覆い方として「外周面の全面」と「外周面の一部」が含まれているにもかかわらず、後者について本件訂正明細書等では説明されていないことを挙げる。
しかしながら、本件発明には、紫外線が放電容器外部に向けて放射されることが特定されつつ、「一対の電極」が、このような「放電容器」の「外周面」に存在することが特定されているのであるから、当業者であれば、このような特定事項に基づいて、「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部」を「該各電極」により遮るような構造を製造できることが明らかである。そして、当業者は、本件訂正明細書等の記載及び技術常識に基づいて本件発明を実施することができると認められる。よって、本件訂正明細書等の発明の詳細な説明は実施可能要件に適合している。
申立人は、関連して、本件発明の構成が明確でない旨も主張するが、同様に明確性要件違反はない。
(3)小括
よって、上記異議申立理由は理由がない。
第6 新規性欠如及び進歩性欠如に係る第1次取消理由について
1 引用文献の記載事項
(1)甲1には、図1に係る紫外線発生装置及びそれを用いた紫外線発生方法について、以下の発明(それぞれ、「甲1発明1」及び「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる(参考のために、括弧内に段落番号等を記載する。以下同じ。)。
甲1発明1
「放電ガスで満たされた誘電体によって放電空間が構成され、前記放電空間内に、電圧の印加により放電する導電電極が配置された紫外線発生装置において、(請求項1及び【0023】)
放電容器を構成する誘電体を、管状の誘電体とし、(請求項1及び図1)
放電容器の両端部の外周には、軸方向に延びる一対の導電電極が設けられ、(【0023】及び図1)
誘電体である放電容器の外周に導電電極が配置され、(【0024】)
導電電極には、パルス電圧を発生させるパルス電源が接続される(【0023】)
紫外線発生装置。(請求項1)」
甲1発明2
「甲1発明1を用いた紫外線発生方法。(請求項18)」
(2)甲2には、図1に係る紫外線放射用外部電極放電灯及びそれを用いた放電方法について、以下の発明(それぞれ、「甲2発明1」及び「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。
甲2発明1
「透光性のバルブ内に紫外線を発する物質を封入するとともに、この紫外線発光物質に電磁エネルギーを供給して発光させる手段を備えた紫外線放射用放電灯において、
上記電磁エネルギーを供給する手段は、バルブの外部に設けられて高周波電力を供給する外部電極である、
紫外線放射用放電灯であって、(請求項1)
上記バルブに封入された紫外線を発する物質は、アルゴンとキセノンの混合ガスであり、(請求項3)
発光管バルブ1は直管形をなしており、(【0014】)
バルブ1の両端部には、チューブを取り巻くようにして外部電極2、2が取着されており、(【0015】)
外部電極2、2は軸方向に延びており、(図1)
外部電極2、2は、ニッケル板に銀メッキを施したものである、(【0016】)
紫外線放射用放電灯。」
甲2発明2
「甲2発明1を用いた放電方法。」
(3)甲3には、図1に係る紫外線発生装置であって交流電圧(請求項1、【0020】)を印加するもの及びそれを用いた紫外線発生方法について、以下の発明(それぞれ、「甲3発明1」及び「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。
甲3発明1
「紫外線を透過可能な誘電体による容器と、
この容器の周囲に互いに離間して配置された一対の電極と、
前記一対の電極間に交流電圧を印加する電源と、
前記誘電体容器内部に充填された、エキシマ分子を形成するヘリウム、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのいずれか一つ以上の希ガスと、フッ素、ヨウ素、塩素及び臭素のいずれか一つ以上のハロゲンとの混合気体を主成分とする放電ガスとを備え、
前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に放電を起こさせて紫外線光を発生させる、
紫外線発生装置であって(請求項1)
容器が円筒状に形成されている、(【0020】)
紫外線発生装置。」
甲3発明2
「甲3発明1を用いた紫外線発生方法。」
(4)甲4には、図1に係る紫外線を放射するための(【0001】)放電装置であって、負グローが形成されているもの(図7(a)~(c))及びそれを用いた紫外線放射方法について、以下の発明(それぞれ、「甲4発明1」及び「甲4発明2」という。)が記載されていると認められる。
甲4発明1
「1対の電極が設けられている放電装置であって、
該電極の少なくとも一方に第1の周波数を有する第1の電圧を印加し、上記第1の周波数より高い第2の周波数を有する第2の電圧を上記第1の電圧に重畳するようになっている、
放電装置であり、(請求項1)
前記放電装置は、
放電管と、(【0009】)
放電管の外面に設け軸周りに覆わずに軸方向に延びる、前記1対の電極とを備え、(【0009】・図1)
前記1対の電極である電極21および22の近傍には負グロー31および32が形成されるとともに、負グローの上部、および電極間には陽光柱33が形成され、(【0014】・【0017】・【0018】・図7(a)~(c))
前記放電装置は、紫外線を放射するものである、(【0001】)
放電装置。」
甲4発明2
「甲4発明1を用いた紫外線放射方法。」
2 対比・判断
(1)甲1を主引用例とした場合
ア 本件発明5について
(ア)対比
a 甲1発明1の「放電ガスで満たされた」「管状の」「放電容器」は、本件発明5の「放電ガスが封入された筒状の放電容器」に、
甲1発明1の「放電容器の両端部の外周に」「設けられ」た「軸方向に延びる一対の導電電極」は、本件発明5の「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極」に、
それぞれ相当する。
b 甲1発明1の「放電ガスで満たされた誘電体によって放電空間が構成され、前記放電空間内に、電圧の印加により放電する電極が配置された紫外線発生装置」と本件発明5の「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」とは、紫外線放射をする装置である点で一致する。
c 甲1発明1の「放電容器を構成する誘電体を、管状の誘電体とし、放電容器の両端部の外周には、軸方向に延びる一対の導電電極が設けられ、誘電体である放電容器の外周に導電電極が配置され、導電電極には、パルス電圧を発生させるパルス電源が接続される」と、本件発明5の「前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって生じる、偏った放電状態となる誘電体バリア放電」が生じるとは、「前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して」「電圧が印加されることによって」「誘電体バリア放電」が生じる点で一致する。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件発明5と甲1発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えた紫外線放射をする装置であって、
前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して電圧が印加されることによって誘電体バリア放電が生じる、紫外線放射をする装置。」
【相違点1】
「紫外線放射をする装置」が、本件発明5は「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」であるのに対し、甲1発明1は「紫外線発生装置」である点。
【相違点2】
「前記一対の電極に対して」「印加される」「電圧」が、本件発明5は「高周波電圧」であるのに対し、甲1発明1は「パルス電圧」である点。
【相違点3】
「誘電体バリア放電」が、本件発明5は「偏った放電状態」となるものであって、その「偏った放電状態」によって、「前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く」なっており、さらに、その「偏った放電状態」が、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」るのに対し、甲1発明1は、「放電容器を構成する誘電体」が「管状」であり、「導電電極」が「放電容器の両端部の外周に」「設けられ」た「軸方向に延びる一対の」ものであり、「放電空間」が「放電ガスで満たされた誘電体」によって構成されており、導電電極に印加される「電圧」が「パルス電圧」であり、紫外線が発生するものであるものの、放電状態及び紫外線照度の空間分布は不明である点。
【相違点4】
本件発明5は、「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」のに対し、甲1発明1は、「導電電極」が発生する「紫外線」の一部を遮るものであるのか明らかでない点。
(ウ)相違点の判断
a 事案に鑑み、「偏った放電状態」に係る相違点3が実質的でないかどうかをまず検討する。
(a)甲1発明1では、上記(ア)cのとおり誘電体バリア放電が生じるが、その放電状態がどのような領域を占める放電であるのかは特定されておらず、甲1の全体をみても、そのことは不明である。もっとも、甲1発明1は、「放電容器を構成する誘電体」が「管状」であり、「導電電極」が「放電容器の両端部の外周に」「設けられ」た「軸方向に延びる一対の」ものであり、「放電空間」が「放電ガスで満たされた誘電体」によって構成されており、導電電極に印加される「電圧」が「パルス電圧」であり、紫外線が発生するものであるところ、このような「放電容器」の形状及び「導電電極」の配置は、誘電体バリア放電の放電状態を決める要因の一つと解されることから、仮に、当該形状及び配置が、上記要因として支配的であるなどの事情があれば、甲1発明1も、本件発明5と同様の形状及び配置をしている以上、相違点3に係る本件発明5の構成を満たしていると評価する余地が生じることになる。
そこで検討すると、誘電体バリア放電の放電状態は、放電容器の形状及び導電電極の配置だけによって定まるものではなく、その他に、放電容器内の放電ガスの種類及び圧力、並びに、一対の導電電極に印加される電圧及び周波数といった各要因にも依存して定まることが、出願時点の技術常識(例えば、甲4の【0008】・【0015】~【0019】や特開2003-198010号公報の【0018】を参照。)であると認められる。そのため、他の要因についてみると、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の【0019】には、放電ガスの種類をキセノンガスとすること、その圧力を1~225Toor(0.1~30kPa)とすること、一対の電極間に印加する電圧を5~10kVとすること、その周波数を1~500kHzの高周波とするといった設定条件が例示されている。他方で、甲1には、放電ガスが希ガス単体を用いてもよいと記載されている(【0047】)ものの、希ガス単体として何を選択するか、また、その際の圧力をどうするのかについての具体的な記載はないし、さらに、パルス電圧の大きさや周波数及び幅を制御することが記載されている(【0009】)ものの、放電ガスとして特定の種類かつ圧力を選択したときに、上記電圧を具体的にどうするかについての記載はない。
このように、甲1発明1では、その放電状態がどのような領域を占める放電であるのかが甲1の全体の記載をみても不明である上、放電容器の形状及び導電電極の配置が誘電体バリア放電の放電状態を決める要因として支配的であるなどの事情があるとはいえず、しかも、甲1に記載された他の要因に係る設定条件が、本件訂正明細書等に記載された設定条件に一致しているともいえないことから、甲1発明1の放電状態が、相違点3に係る本件発明5の構成を満たしているとはいえない。
(b)これに対し、申立人は、相違点3が実質的なものではない旨主張し、その根拠として、本件発明5に係るオゾン生成装置の物理的な構成は、甲1発明1の紫外線発生装置の物理的な構成と同一であり、そうである以上、甲1発明1においても、当然に、「偏った放電状態」についての相違点3に係る本件発明5の構成を満たしていることを挙げる。しかしながら、申立人が主張する「物理的な構成」は、放電容器の形状、電極の配置及び放電ガスの種類といったところにとどまり、その他の要因についての考慮がなされていないから、失当である。
申立人は、物理的な構成が同一であるにもかかわらず、相違点3に係る本件発明5の構成が満たされないとすれば技術常識に反する旨主張するが、上記のとおりである。
(c)したがって、相違点3は実質的である。
b 上記のとおり、相違点3は実質的であるところ、この相違点3に係る本件発明5の構成は、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
(a)すなわち、甲1発明1は、パルス電圧の通電により、所望の波長の紫外線光を容易に得る(【0008】)というものであって、その放電状態がどのような領域を占める放電となるのかを想定しているものではない。よって、仮に、相違点3に係る本件発明5の偏った放電状態自体が公知であるとしても、甲1発明1から出発した当業者がそのような放電状態となるように、あえて、放電ガスの種類及び圧力、並びに、一対の導電電極に印加される電圧及び周波数といった各要因に係る条件を設定するとはいえない。
そして、本件発明5は、相違点3に係る構成を採用することにより、不要なオゾンを生成させないように、局所的に紫外線を照射して、局所的にオゾンを生成することで、高濃度のオゾンが生成されて流出することを防ぐことができる(本件訂正明細書等の【0013】)という格別の効果を奏するものである。
(b)これに対し、申立人は、放電状態の設定条件につき、本件訂正明細書等に記載された条件が技術常識である旨主張するようであり、その根拠として、(i)放電ガスとして希ガスを用いることは甲1(【0047】)のほか、甲2(【0025】)及び甲5(【0005】)にも記載されていること、(ii)印加電圧として2500V、25kHzといった高周波、高電圧を印加することは甲5(【0005】・【0054】)に記載されていること、を挙げる。しかしながら、放電状態は、それに影響する各要因の設定条件の組み合わせにより定まるから、それぞれの設定条件が個別でみると周知であるとしても、それを立証するだけでは足りず、少なくとも、その組合せ自体が周知であることを立証する必要があるというべきである。しかるところ、そのような証拠があるとは言い難い。そして、上記(a)で説示したとおり、甲1発明1から出発した当業者が、相違点3に係る本件発明5の偏った放電状態自体となるように条件を設定するという動機はないし、本件発明5はそのように構成したことにより格別の効果を奏するものである。
さらに、申立人は、相違点3に係る本件発明5の構成が周知の構成では当然に生じないとすれば、周知の構成と異なる構成が必要となるはずにもかかわらず、本件訂正明細書等にはその旨の開示がない旨主張する。しかしながら、相違点3に係る本件発明5の構成が生じるための放電状態の設定条件として、本件訂正明細書等【0019】に放電ガスの圧力等が開示されている。
(c)したがって、相違点3に係る本件発明5の構成は、甲1発明1から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~9のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ)小括
よって、本件発明5は、甲1発明1その他の甲1に記載された発明ではないし、甲1発明1その他の甲1に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明6について
本件発明5の「オゾン生成装置」と本件発明6と「オゾン生成方法」は、カテゴリーが相違するものの、それ以外は実質的に同様な構成であると認められる。
そうすると、上記アと同様の理由により、甲1発明2その他の甲1に記載された発明ではないし、甲1発明2その他の甲1に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
したがって、本件発明5及び6が甲1に記載された発明に基づいて新規性欠如及び進歩性欠如であるとの第1次取消理由は、理由がない。
(2)甲2を主引用例とした場合
ア 本件発明5について
(ア)対比
a 甲2発明1の「透光性のバルブ」は、「上記バルブに封入された紫外線を発する物質」である「アルゴンとキセノンの混合ガス」が「封入」されており、「直管形をなして」いるから、本件発明5の「放電ガスが封入された筒状の放電容器」に相当する。
甲2発明1の「外部電極2、2」は、「バルブ1の両端部には、チューブを取り巻くようにして」「取着されて」いるとともに「軸方向に延びて」いるから、当該「外部電極2、2」は、本件発明5の「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極」に相当する。
甲2発明1の「外部電極2、2」には、「高周波電力」が「供給」されると解されるから、甲2発明1は、本件発明5でいう「前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加される」ものといえる。
b 甲2発明1の「紫外線放射用放電灯」は、「上記バルブに封入された紫外線を発する物質」として「アルゴンとキセノンの混合ガス」を用いるものであるから、本件発明5でいう「エキシマランプ」を構成しているといえる。そして、甲2発明1の「紫外線放射用放電灯」と本件発明5の「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」とは、エキシマランプからの紫外線放射をする装置である点で一致する。
また、甲2発明1においては、「高周波電力」が「供給」されると解される電極が「外部電極」であり、「透光性のバルブ」が誘電体であることは明らかであるから、甲2発明1で生じる「放電」は、本件発明5でいう「誘電体バリア放電」であるといえる。そして、この「誘電体バリア放電」は「前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって生じる」ものといえる。
c 甲2発明1は、「紫外線」を放射するものであるとともに、「外部電極2、2は、ニッケル板に銀メッキを施したものであ」り、しかも、当該「外部電極2、2」は「バルブ1の両端部」に存在するから、甲2発明1は、本件発明5でいう「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」ものといえる。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件発明5と甲2発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えたエキシマランプからの紫外線放射をする装置であって、
前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して高周波電圧が印加されることによって誘電体バリア放電が生じ、
各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる、
紫外線放射をする装置。」
【相違点5】
「紫外線放射をする装置」が、本件発明5は「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」であるのに対し、甲2発明1は「紫外線放射用放電灯」である点。
【相違点6】
「誘電体バリア放電」が、本件発明5は「偏った放電状態」となるものであって、その「偏った放電状態」によって、「前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く」なっており、さらに、その「偏った放電状態」が、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」るのに対し、甲2発明1は、「発光管バルブ1」が「直管形」であり、「外部電極2、2」が「発光管バルブ1の両端部に」「取着され」るとともに「軸方向に延び」るものであり、発光物質が「アルゴンとキセノンの混合ガス」であり、「外部電極2、2」は、高周波電力が供給されると解されるものであり、紫外線を発するものであるものの、放電状態及び紫外線照度の空間分布は不明である点。
(ウ)相違点の判断
相違点6は、甲1発明1において検討した相違点3と同様であるところ、甲2に記載された放電容器の形状及び導電電極の配置以外の要因に係る設定条件についても、甲1に記載されたものと同様に、本件訂正明細書等に記載された設定条件に一致しているとはいえない。したがって、相違点6は、相違点3(上記(1)ア(ウ))で説示したのと同様な議論が成り立つ。
(エ)小括
よって、本件発明5は、甲2発明1その他の甲2に記載された発明ではないし、甲2発明1その他の甲2に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明6について
本件発明5の「オゾン生成装置」と本件発明6と「オゾン生成方法」は、カテゴリーが相違するものの、それ以外は実質的に同様な構成であると認められる。
そうすると、上記アと同様の理由により、甲2発明2その他の甲2に記載された発明ではないし、甲2発明2その他の甲2に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
したがって、本件発明5及び6が甲2に記載された発明に基づいて新規性欠如及び進歩性欠如であるとの第1次取消理由は、理由がない。
(3)甲3を主引用例とした場合
ア 本件発明5について
(ア)対比
a 甲3発明1の「紫外線を透過可能な誘電体による容器」は、「前記誘電体容器内部に」「放電ガス」が「充填され」ており、「円筒状に形成されている」から、本件発明5の「放電ガスが封入された筒状の放電容器」に相当する。
甲3発明1の「一対の電極」は、「この容器の周囲に互いに離間して配置された」ものであるから、本件発明5の「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極」に相当する。そして、甲3発明1の「一対の電極」には、「交流電圧」が「印加」されているから、本件発明5と甲3発明1とは、「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極に対して」交流電圧が「印加される」点で一致する。
b 甲3発明1の「紫外線を透過可能な誘電体による容器」は、「放電ガス」として「エキシマ分子を形成する」ものを用いるから、本件発明5の「エキシマランプ」を構成しているといえる。
また、甲3発明1においては、「一対の電極」が「容器の周囲」に配置されており、当該「容器」は「誘電体」であるから、甲3発明1で「前記一対の電極間に交流電圧を印加することにより、前記誘電体容器内部に」生じる「放電」は、本件発明5でいう「誘電体バリア放電」であるといえる。そして、この「誘電体バイリア放電」は、上記aによれば、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極に対して」交流電圧が「印加されることによって生じる」ものといえる。
c 甲3発明1の「紫外線発生装置」と、本件発明5の「紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」とは、「紫外線放射をする装置」である点で一致する。
(イ)一致点及び相違点の認定
上記(ア)によれば、本件発明5と甲3発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えたエキシマランプからの紫外線放射をする装置であって、
前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して交流電圧が印加されることによって誘電体バリアが生じる、
紫外線放射をする装置。」
【相違点7】
「紫外線放射をする装置」が、本件発明5は「紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」であるのに対し、甲3発明1は「紫外線発生装置」である点。
【相違点8】
「前記一対の電極に対して」「印加される」「電圧」が、本件発明5は「高周波電圧」であるのに対し、甲3発明1は「交流電圧」である点。
【相違点9】
「誘電体バリア放電」が、本件発明5は、「偏った放電状態」となるものであって、その「偏った放電状態」によって、「前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く」なっており、さらに、その「偏った放電状態」が、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」るのに対し、甲3発明1は、(放電のための)「容器」が「円筒状」であり、「一対の電極」が「この容器の周囲に互いに離間して配置され」ているであり、「放電ガス」が「エキシマ分子を形成するヘリウム、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのいずれか一つ以上の希ガスと、フッ素、ヨウ素、塩素及び臭素のいずれか一つ以上のハロゲンとの混合気体を主成分とする」ものであり、「一対の電極に交流電圧を印加」するものであり、紫外線を発生させるものであるものの、放電状態及び紫外線照度の空間分布は不明である点。
【相違点10】
本件発明5は、「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」のに対し、甲3発明1は、そのようなものか明らかでない点。
(ウ)相違点の判断
相違点9は、甲1発明1において検討した相違点3と同様であるところ、甲3に記載された放電容器の形状及び導電電極の配置以外の要因に係る設定条件についても、甲1に記載されたものと同様に、本件訂正明細書等に記載された設定条件に一致しているとはいえない。したがって、相違点9については、相違点3(上記(1)ア(ウ))で説示したのと同様な議論が成り立つ。
(エ)小括
よって、本件発明5は、甲3発明1その他の甲3に記載された発明ではないし、甲3発明1その他の甲3に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明6について
本件発明5の「オゾン生成装置」と本件発明6と「オゾン生成方法」は、カテゴリーが相違するものの、それ以外は実質的に同様な構成であると認められる。
そうすると、上記アと同様の理由により、甲3発明2その他の甲3に記載された発明ではないし、甲3発明2その他の甲3に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
したがって、本件発明5及び6が甲3に記載された発明に基づいて新規性欠如及び進歩性欠如であるとの第1次取消理由は、理由がない。
(4)甲4を主引用例とした場合
ア 本件発明5について
(ア)対比
a 甲4発明1の「放電管」は、放電するために放電ガスが封入されているといえるとともに、「管」の形状であることから、本件発明5の「放電ガスが封入された筒状の放電容器」に相当する。
甲4発明1の「1対の電極」は、「放電管の外面に設け」ており、「軸方向に延びる」から、当該「1対の電極」は、本件発明5の「それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極」に相当する。
b 甲4発明1の「紫外線を放射するものである」「放電装置」と、本件発明5の「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」とは、紫外線放射をする装置である点で一致する。
c 甲4発明1においては、「1対の電極」は、「放電管の外面に設け」「軸方向に延び」ており、「第1の電圧」及び「第1の電圧に重畳する」「第2の電圧」が「印加」されると解される電極が「1対の電極」であり、「放電管」が誘電体であることは明らかであるから、甲4発明1で生じる「放電」は、本件発明5でいう「誘電体バリア放電」であるといえる。そして、この甲4発明1で生じる「放電」は「前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して」「電圧が印加されることによって生じる」ものといえる。
(イ)一致点及び相違点の認定
以上のことから、本件発明5と甲4発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「放電ガスが封入された筒状の放電容器と、それぞれ、前記放電容器の外周面に沿って軸方向に延び、前記放電容器の外周面を覆う一対の電極とを備えた紫外線放射をする装置であって、
前記放電容器中央部を挟んで軸方向に沿って対向する前記一対の電極に対して電圧が印加されることによって誘電体バリア放電が生じる装置。」
【相違点11】
装置が、本件発明5は「エキシマランプからの紫外線放射によってオゾンを生成するオゾン生成装置」であるのに対し、甲4発明1は、「放電装置」である点。
【相違点12】
「前記一対の電極に対して」「印加」される「電圧」が、本件発明5は「高周波電圧」であるのに対し、甲4発明1は「第1の周波数を有する第1の電圧」及び「第1の電圧に重畳するようになっている」「第1の周波数より高い第2の周波数を有する第2の電圧」である点。
【相違点13】
「誘電体バリア放電」が、本件発明5は「偏った放電」となるものであって、その「偏った放電状態」によって、「前記一対の電極の間の空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に低く、各電極で覆われる空間領域から前記放電容器外部へ向けて放射される紫外線照度が相対的に高く」なっており、さらに、その「偏った放電状態」が、「前記一対の電極の間の空間領域では、軸付近の空間領域で放電が生じ、各電極で覆われる空間領域では、容器径方向全体の空間領域で放電が生じる放電状態であ」るのに対し、甲4発明1は、「放電管」であり、「電極」が「放電管の外面に設け軸周りを覆わずに軸方向に延びる」「1対」のものであり、放電状態が「前記1対の電極である電極21および22の近傍には負グロー31および32が形成されるとともに、負グローの上部、および電極間には陽光柱33が形成され」るものである点。
【相違点14】
本件発明5は「各電極で覆われる空間領域から放射される紫外線の一部が、該各電極により遮られる」ものであるに対し、甲4発明1は、「放電装置」である点。
(ウ)判断
a 事案に鑑み、「偏った放電状態」に係る相違点13が実質的でないかどうかをまず検討する。
(a)相違点13が実質的でないというためには、少なくとも、甲4発明1において「1対の電極である電極21および22」で覆われる空間領域において「放電」が「形成され」る場所が「放電管」の径方向全体の空間領域である必要がある。そして、甲4発明1においては、放電管内の径方向で最も大きいところの「放電」に係る領域には負グローが存在すると解されることから、上記をいうためには、負グローが「放電管」の径方向全体の空間領域に存在する必要があるといえる。
しかるところ、甲4発明1の「1対の電極」は、「放電管の外面に設け軸周りに覆わ」ないものであるから、負グローが形成される場所が、放電管の径方向全体の空間領域であるとはいえない。また、甲4発明1を開示する甲4の図7は、放電管内の放電状態の模式図であるが、特定方向からみたものと解されるから、当該図からも、負グローが形成される場所が、放電管の径方向全体の空間領域であるとはいえない。そして、甲4の他の記載をみても、負グローが形成される場所が、放電管の径方向全体の空間領域である態様を読み取れない。
よって、甲4発明1において、「1対の電極である電極21および22」で覆われる空間領域において「放電」が「形成され」る場所が「放電管」の径方向全体の空間領域であるとはいえない。
(b)これに対し、申立人は、相違点13が実質的なものではない旨主張し、その根拠として、甲4の図6(c)及び(d)から、各電極で覆われる空間領域において放電が形成される場所が放電管の径方向全体の空間領域が見て取れることを挙げている。しかしながら、当該図6も、上記(a)で説示した図7と同様に、特定方向からみた放電状態を意味していると解されるから、この図からも、放電が形成される場所が放電管の径方向全体の空間領域であることを見て取れない。
(c)したがって、相違点13は実質的である。
b 上記のとおり、相違点13は実質的であるところ、この相違点13に係る本件発明5の構成は、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
(a)すなわち、甲4発明1から出発した当業者が相違点13に係る本件発明5の構成に至るためには、少なくとも、「各電極で覆われる空間領域」において「放電」が「生じる」場所が、放電管の「径方向全体の空間領域」であるようにする必要がある。しかるところ、そのように構成することは、以下に示すとおり、当業者が容易になし得たこととはいえない。
甲4発明1の技術的意義は、消費電力が増えるという課題を解決する(甲4の【0004】)ために、負グローを小さくする(同【0008】)ということにあるといえる。そのため、相違点13に係る本件発明5の構成に至るべく、放電管の径方向全体の空間領域で負グローが生じる放電状態とすると、負グローが大きくなって、消費電力が増えることになりかねない。そうすると、甲4発明1から出発した当業者が、相違点13に係る本件発明5の構成に至るようにすることは、甲4発明1の課題を解決することに反するといえることから、当業者が相違点13に係る本件発明5の構成に至ることには阻害要因がある。
(b)したがって、相違点13に係る本件発明5に係る構成は、甲4発明1から出発した当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そして、甲1~9のその余の記載をみても、上記判断が左右されることはない。
(エ)小括
よって、本件発明5は、甲4発明1その他の甲4に記載された発明ではないし、甲4発明1その他の甲4に記載された発明並びに甲1~9に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明6について
本件発明5の「オゾン生成装置」と本件発明6と「オゾン生成方法」は、カテゴリーが相違するものの、それ以外は実質的に同様な構成であると認められる。
そうすると、上記アと同様の理由により、甲4発明2その他の甲4に記載された発明及び甲1~9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 小括
したがって、本件発明5及び6が甲4に記載された発明に基づいて進歩性欠如であるとの第1次取消理由は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明5及び6に係る特許は、第1次取消理由通知書及び第2次取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1~4、7~9は、本件訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701168