特許異議申立
2024-700113
積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
- 審判番号
- 2024-700113
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-186075
- 登録番号
- 7324987
- 請求日
- 2024年02月08日
- 審決日
- 2024年10月22日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】岡本 正義
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 岩谷 一臣
- 審判官 筑波 茂樹
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7324987号発明「積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7324987号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7324987号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7324987号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に出願され、令和5年8月3日にその特許権の設定登録がなされ、同年8月14日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和6年2月8日に岡本正義(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てが行われたものである。
その後の経緯は、以下のとおり。
令和6年3月 4日 :異議申立書に対する手続補正(申立人)
令和6年5月31日付け:取消理由通知
令和6年8月 5日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和6年9月 4日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和6年8月5日の訂正請求書によりなされた訂正の内容(以下、「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1における「前記ヒートシール層が、前記基材側の面にさらに蒸着膜を備える」という記載を「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、」という記載の後ろに移動しつつ、「前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ、前記ヒートシール層が多層構造を有し(但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く)、前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられており、」に訂正するものである(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件特許請求の範囲の請求項2~9に係る発明は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これら請求項〔1~9〕は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、これら一群の請求項に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
本件訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「ヒートシール層」について、「多層構造を有し」ていること、蒸着膜は当該ヒートシール層の基材側の「表面上」に設けられることを特定しつつ、「但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く」ことをさらに特定するものである。してみれば、本件訂正は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
また、本件訂正は、願書に添付した明細書の段落【0054】の記載等に基づくものであって、新たな技術的事項を導入するものではなく、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を訂正の目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、特許第7324987号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ、
前記ヒートシール層が多層構造を有し(但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く)、
前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられており、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され、
前記基材が、延伸フィルム(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを含む前記延伸フィルムを除く)からなり、
前記基材に印刷が施されており、
前記基材における印刷が施される層が、密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンおよび密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンのうち少なくとも1つを含むが、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず、
前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である、ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と、前記ヒートシール層との間に、接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が、中密度ポリエチレン層を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材が、高密度ポリエチレン層と中密度ポリエチレン層と高密度ポリエチレン層の三層共押延伸フィルムからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
包装材料用途に用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製された包装材料。
【請求項8】
包装袋であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項9】
スタンドパウチであって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とする、スタンドパウチ。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~9に係る発明に対して令和6年5月31日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、甲第1、2号証に記載の事項、及び周知技術に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特表2018-511504号公報(異議申立の甲第1号証)
甲第2号証:特開2018-16012号公報(同甲第2号証)
引用例1 :特開2004-142238号公報(当審で引用)
引用例2 :国際公開第2018/021478号(同上)
なお、各証拠は、以下それぞれ「甲1」等、「引用例1」等という。
第5 当審の判断
1 甲1に記載の発明
(1)甲1の特許請求の範囲の請求項1、3、6と【0009】の記載からみて、甲1には以下の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されている。
<甲1A発明(ただし、カッコは引用箇所を示すために付したものである。)>
「ポリマー材料から作成される積層構造体であって、前記積層構造体が、
A)
HDPE組成物を含む第1-A層;並びに
LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層
を含む外側ウェブ、
B)
LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第1-B層;
HDPE組成物を含む第2-B層;並びに
シーラント組成物を含む第3-B層
を含む内側ウェブ、
を含み、
前記外側ウェブが、前記内側ウェブに積層され(ここまで特に請求項1)、
前記外側ウェブが、2:1から10:1のドローダウン比を有する縦方向配向に供され、(請求項2)、
前記外側ウェブの内側表面上が印刷され(特に【0009】)
前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成し(特に請求項1)、
バリア層が、前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置するとき、前記内側ウェブが、前記バリア層を更に含む(特に請求項6)、
積層構造体。」
(2)また、甲1の実施例であるサンプル4.1(特に、【表1】~【表5】及び関連する記載を参照)として記載されている積層体として、以下の発明(以下、「甲1B発明」という。)が認定できる(当審注:同一の表に対して、本文の表番号と、表に付されている表番号が相違するところ、本文に記載される表番号で引用箇所を示した。)。
<甲1B発明(カッコ内の段落等は上と同趣旨)>
「印刷(又は外側)ウェブを内側ウェブに積層することによって得られた積層体であり、
前記印刷(又は外側)ウェブは、印刷:ZN-1(nuc) /ZN-2の構造であり、縦方向に配向され、前記内側ウェブは、内側:ZN-2/SSC-1 (nuc) /ZN-3の構造であり(特に【表5】)、
該内側ウェブにおけるZN-3層はシーラント層であり(特に【0041】)、
ZN-1 (nuc) は、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であり、SSC-1 (nuc) は、密度が0.967g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-3は、密度が0.912g/ccのコモノマーがオクテンであるポリエチレン樹脂である(特に【表1】)、
積層体。」
2 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1A発明との対比・判断
ア 本件発明1と甲1A発明との対比
(ア)甲1A発明の「外側ウェブ」、「シーラント組成物を含む第3-B層」は、それぞれ本件発明1の「基材」、「ヒートシール層」に相当する。また、甲1発明の「積層構造体」は、当該「外側ウェブ」、「シーラント組成物を含む第3-B層」を備えた積層体であるから、本件発明1における「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」に相当する。
(イ)甲1A発明の「内側ウェブ」は、「LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第1-B層;HDPE組成物を含む第2-B層;並びにシーラント組成物を含む第3-B層」からなるところ、これは、本件発明1の「前記ヒートシール層が多層構造を有し」ていることに相当する。
(ウ)甲1A発明の「外側ウェブ」は、「HDPE組成物を含む第1-A層;並びに LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層を含む」ものであり、また、同「内側ウェブ」は「LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第1-B層;HDPE組成物を含む第2-B層;並びにシーラント組成物を含む第3-B層」からなるものであるところ、ここで「第3-B層」における「シーラント組成物」は「シーラントポリエチレン」であるから、これは、本件発明1における「前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され」ている事項に相当する。
(エ)甲1A発明の「外側ウェブ」は、「2:1から10:1のドローダウン比を有する縦方向配向に供され」ているから、これは、本件発明1における「前記基材が、延伸フィルム」からなることに相当する。また、甲1発明における「前記外側ウェブの内側表面上が印刷され」は、本件発明1における「前記基材に印刷が施されており」という事項に相当する。
(オ)甲1A発明の「前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成し」は、本件発明1の「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1A発明との一致点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記ヒートシール層が多層構造を有し、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され、
前記基材が、延伸フィルムからなり、
前記基材に印刷が施されており、
前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である、積層体。」
一方、両発明は、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1では、「前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ、前記ヒートシール層が多層構造を有し(但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く)、前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられて」いるのに対し、甲1A発明では、多層構造のヒートシール層である内側ウェブに「バリア層」が設けられてはいるものの、「前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置する」ものであって、ヒートシール層の基材側の表面上に設けられたものではなく、また、蒸着膜であるか不明であり、さらに、本件発明1の「多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く」という事項を満足しない点。
<相違点1-2>
本件発明1の「基材」は、「ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを含む前記延伸フィルムを除く」としているのに対し、甲1A発明の「外側ウェブ」は、「HDPE組成物を含む第1-A層;並びに LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層を含む」とされ、ポリエチレンを含むものではあるものの、その他のポリマーを含まないか不明である点。
<相違点1-3>
印刷が施される層に関し、本件発明1は、「基材における印刷が施される層が、密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンおよび密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンのうち少なくとも1つを含むが、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず」と特定するのに対し、甲1A発明は、「HDPE組成物を含む第1-A層;並びにLLDPE、MDPE及びHDPEを含む第2-A層を含む外側ウェブ」の「内側表面上に印刷され」る点は特定されているが、各密度まで特定されていない点。
イ 相違点に対する判断
相違点1-1について検討するに、甲1A発明の「バリア層」は、「前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置する」ものである。そして、バリア層として蒸着膜を用いることが周知技術(例えば、甲2の特許請求の範囲の請求項8、【0002】、【0034】~【0037】の記載、引用例1の【0057】、【0058】の記載、引用例2の[0033]~[0037]の記載を参照)であり、また、蒸着膜を用いる場合、層の表面に設けることが技術上当然であったとしても、甲1にはバリア層として蒸着膜を用いることは記載も示唆もなく、加えて、甲1 では、「内側ウェブ」におけるコア層のHDPE組成物、すなわち「HDPE組成物を含む第2-B層」に用いる「ブレンド成分」に関し、「成分a)のMw/Mn値が低い(2から4)と、本発明に従って調製されるインフレーションフィルム及びウェブ構造体の結晶化速度及び全体的なバリア性能を向上させることができると考えられている。」(段落【0024】)との記載や、「一実施形態では、上記のHDPEブレンド組成物は、有機核形成剤(前記のような)と、HDPEブレンド組成物の重量に基づいて、約300から3000重量ppmの量にて混合される。(前記の)1-2シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩、カルシウム塩(CAS491589-22-1)の使用が、特に適している。HDPE組成物が核形成剤を含有する場合、IV族遷移金属(特にTi)を用いて調製されるHDPE組成物を使用することが好ましい。
このタイプの「核形成」コア層は、優れたバリア特性(即ち、水、ガス、及びグリースの透過率の低下)をもたらすことが観察されており、それは、多くの包装容器の用途に対して望ましい。」(段落【0029】)との記載に鑑みれば、当該成分により形成した「バリア層」をあえて廃した上で、蒸着膜を採用する動機付けは見いだせない。
してみれば、甲1A発明において、当該相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたものではない。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(2)本件発明1と甲1B発明との対比・判断
ア 本件発明1と甲1B発明との対比
(ア)甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」は、本件発明1の「基材」に相当する。また、同「内側ウェブ」は、「シーラント層」を有するものであるから、本件発明1の「ヒートシール層」に相当する。さらに、甲1B発明の「積層体」は、これらの層を積層することによって得られたものであるから、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体」に相当する。
(イ)甲1B発明の「内側ウェブ」は、「内側:ZN-2/SSC-1 (nuc) /ZN-3の構造であ」るから、これは、本件発明1の「前記ヒートシール層が多層構造を有し」に相当する。
(ウ)甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」は、「前記印刷(又は外側)ウェブは、印刷:ZN-1(nuc) /ZN-2の構造であり、縦方向に配向され」たものであり、また、「ZN-1 (nuc) は、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であ」るから、本件発明1における「前記基材が、延伸フィルム(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを含む前記延伸フィルムを除く)からなり、前記基材に印刷が施されており、 前記基材における印刷が施される層が、密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンおよび密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンのうち少なくとも1つを含むが、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず」という事項に相当する。
(エ)甲1B発明の「前記内側ウェブ」は、「内側:ZN-2/SSC-1 (nuc) /ZN-3の構造であ」り、また、「ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であり、SSC-1 (nuc) は、密度が0.967g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-3は、密度が0.912g/ccのコモノマーがオクテンであるポリエチレン樹脂である」から、上述(ウ)と合わせて、本件発明1の「前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲B1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記ヒートシール層が多層構造を有し、
前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され、
前記基材が、延伸フィルム(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを含む前記延伸フィルムを除く)からなり、
前記基材に印刷が施されており、
前記基材における印刷が施される層が、密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンおよび密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンのうち少なくとも1つを含むが、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まない、積層体。」
一方、両発明は以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1では、「前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ」ており、また、多層構造であるヒートシール層に関し、「但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く」とされ、さらに「前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられて」いるものであるのに対し、甲1B発明は、そのような蒸着膜に関する特定がなされていない点。
<相違点2-2>
本件発明1では、「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である」のに対して、甲1B発明ではこの点が明確ではない点。
イ 相違点に対する判断
相違点2-1について検討するに、上述(1)イと同様、バリア層として蒸着膜を用いることが周知技術であり、また、蒸着膜を用いる場合、層の表面に設けることが技術上当然であったとしても、甲1にはバリア層として蒸着膜を用いることは記載も示唆もなく、むしろ甲1では、「内側ウェブ」におけるコア層のHDPE組成物によってバリア層を形成することが記載されているところである。そうすると、あえてコア層のHDPE組成物によるバリア層を廃した上で蒸着膜を採用する動機付けは見いだせない。
してみれば、甲1B発明において、当該相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたものではない。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
3 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるところ、本件発明1が上述2のとおり甲1A発明、甲1B発明のいずれに基づいても当業者が容易に発明をすることはできない以上、個別に検討するまでもなく、同様に当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由に採用しなかった異議申立理由について
申立人は、本件発明1~9に関し、甲2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張しているので、その点について検討する。
1 甲2に記載の発明
甲2には、以下の発明が記載されている(以下、甲2発明という。)。
「基材層、接着剤層、バリア層、シーラント層を少なくとも有する積層体であって(【請求項1】)、
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し(段落【0055】)、
シーラント層は、厚さ25μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(2703、東レフィルム加工(株)製)を使用し、CPPフィルムの片面をコロナ処理、次いで、コロナ処理面にアルミ蒸着(膜厚40nm)して、バリア層を形成したアルミ蒸着CPPフィルム(バリア層を備えたシーラント層)であり(段落【0058】)、
バリアコート層を備えた透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、バリア層を備えたアルミ蒸着CPPフィルムのバリア層面とを、酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)を介してドライラミネートし(段落【0059】)、
基材層に印刷層を設けた(段落【0054】)、積層体。」
ここで、申立人は、甲2の段落【0018】を引用し、当該基材層が「中密度ポリエチレンからなる一軸又は二軸延伸フィルム」であることを主張する。しかし、当該段落に記載されている事項は、非常に多数の選択肢の一例として中密度ポリエチレンが挙げられているだけである。その上で、甲2は「なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの一軸または二軸延伸ポリアミドフィルム、そして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムOPP等を好適に使用することができる。」(【0019】)としている。そして、実際、甲2における実施例は、基材層としてすべてPETを採用しており、ポリエチレンを採用したものはない。
これらの記載に立脚すれば、甲2発明における基材層として、申立人の主張を採用することはできない。
2 本件発明1と甲2発明との対比・判断
(1)本件発明1と甲2発明との対比
ア 本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「基材」、「シーラント層」は、本件発明1の「基材」、「ヒートシール層」に相当する。
イ 甲2発明では、「シーラント層」に「アルミ蒸着」がなされ、「バリア層」を形成しているから、これは、本件発明1の「前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ」という事項、及び「前記ヒートシール層が多層構造を有し(但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く)」という事項に相当する。
ウ 甲2発明における「透明蒸着PETフィルムのバリアコート層面と、バリア層を備えたアルミ蒸着CPPフィルムのバリア層面とを、酸素バリア性を有する接着剤(PASLIM VM001/VM102CP、DIC(株)製)を介してドライラミネートし」た事項は、その構造からみて、本件発明1における「前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられて」いる事項に相当する。
エ 甲2発明における「基材層に印刷層を設けた」事項は、本件発明1の「前記基材に印刷が施されて」いる事項に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「基材と、ヒートシール層とを備えた積層体であって、
前記ヒートシール層には蒸着膜が備えられ、
前記ヒートシール層が多層構造を有し(但し、多層構造の層間に蒸着膜又はガスバリア性樹脂が設けられているヒートシール層を除く)、
前記蒸着膜は、前記ヒートシール層の前記基材側の表面上に設けられており、
前記基材に印刷が施されている、積層体。」
一方、両発明は以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件発明1では、「前記基材および前記ヒートシール層のいずれもが、ポリエチレンにより構成され」ているのに対して、甲2発明の「基材」、「シーラント層」は、いずれもポリエチレンにより構成されていない点。
<相違点3-2>
本件発明1では、「前記基材が、延伸フィルム(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを含む前記延伸フィルムを除く)」ものであるの対して、甲2発明の「基材」について、この点が明確でない点。
<相違点3-3>
本件発明1では、「前記基材における印刷が施される層が、密度が0.945g/cm3以上である高密度ポリエチレンおよび密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレンのうち少なくとも1つを含むが、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず」とされているのに対して、甲2発明の「基材」は材質が異なる点。
(2)相違点に対する判断
当該相違点3-1ついて検討するに、甲2発明の「基材」と「シーラント層」は、共にポリエチレンから構成されているものではない。この点、上述1でも記載したとおり、甲2の段落【0018】に多数の選択肢の一つとしてポリエチレンが挙げられているものの、同【0019】の記載からみて、むしろポリエチレン以外の材質が適していることが記載され、実施例においてもポリエチレンを用いたものはない。また、その他、甲2発明における「基材」と「シーラント層」としてポリエチレンを採用することの動機づけとなるものは見いだせない。
そうすると、例えば甲1の段落【0003】において記載されるように、リサイクルのためにポリエチレンを用いることが周知技術であったとしても、甲2発明の「基材」と「シーラント層」をポリエチレンに置き換えることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるということはできない。
してみれば、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、又は甲2発明に甲1に記載の技術的事項を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1~9については、その特許を取り消すことはできない。そして、他に本件発明1~9を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700113