特許異議申立
2024-700112
積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
- 審判番号
- 2024-700112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-186073
- 登録番号
- 7324986
- 請求日
- 2024年02月08日
- 審決日
- 2025年06月26日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】岡本 正義
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 岩谷 一臣
- 審判官 木原 裕二
- 分類
- P1651.537-YAA(B32B) / P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7324986号発明「積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7324986号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7324986号の請求項1、2、5~10に係る特許を維持する。
特許第7324986号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7324986号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に、特願2018-186073号として出願されたものであり、令和5年8月3日に特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月 8日 :特許異議申立人 岡本正義(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 6月25日付け:取消理由通知書
同年 8月27日 :特許権者による訂正の請求及び意見書の提出
同年10月10日付け:訂正拒絶理由通知書
同年11月14日 :特許権者による手続補正書及び意見書の提出
同年12月17日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和7年 2月20日 :特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出
同年 3月21日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年8月27日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第7324986号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「基材と、ヒートシール層とを備え、」との記載を、「基材と、ヒートシール層とを備える積層体であって、」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~10も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1における「前記基材が、ポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであり、」との記載を、「前記基材が、ポリエチレンから構成される単層の一軸延伸樹脂フィルムであり、」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~10も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1における「前記基材における印刷が施される層が、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)を含むが、」との記載を、「前記基材における印刷が施される層が、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)から構成される層であり、」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2、5~10も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2における「前記基材と、ヒートシール層との間に接着層を備える、」との記載を、「前記基材と、前記ヒートシール層との間に接着層を備える、」に訂正する。(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5~10も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5における「請求項1~4のいずれか一項」との記載を、「請求項1または2」と訂正する。(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6における「請求項1~4のいずれか一項」との記載を、「請求項1または2」と訂正する。(請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1~6のいずれか一項」との記載を、「請求項1、2および5~6のいずれか一項」と訂正する。(請求項7を引用する請求項8~10も同様に訂正する。)
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8における「請求項1~7のいずれか一項」との記載を、「請求項1、2および5~7のいずれか一項」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項9における「請求項1~7のいずれか一項」との記載を、「請求項1、2および5~7のいずれか一項」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10における「請求項1~7のいずれか一項」との記載を、「請求項1、2および5~7のいずれか一項」と訂正する。
(13)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~10は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正後の請求項〔1~10〕は、一群の請求項である。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1で規定する「基材と、ヒートシール層とを備え」るのが、「積層体」であることを明確にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
この訂正は、本件明細書の【0020】に「図1に示すように、積層体10は、基材11と、ヒートシール層12とを備える。」と記載されるように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1で規定する一軸延伸樹脂フィルムの「基材」が、「単層」であると限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
この訂正は、本件明細書の【0138】に「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。」と、「単層の」一軸延伸されたポリエチレンフィルムが記載されているから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1で規定する「前記基材における印刷が施される層」が、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)」の層であることを明確にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
この訂正は、本件明細書の【0138】~【0139】に、中密度ポリエチレンの単層の一軸延伸樹脂フィルムの一方の面に印刷が施すことが記載されているように、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項2で規定する、基材との間に接着層を備える「ヒートシール層」が、請求項1に記載された「ヒートシール層」であることを明確にする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
この訂正は、本件明細書の【0022】に「図3に示すように、積層体10は、基材11と、ヒートシール層12または蒸着膜13との間に、接着層14を備えることができる。」と記載され、【図3】に、基材11とヒートシール層12を備える積層体10が、ヒートシール層12と基材11との間に接着層14を備えることが示されており、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5、6について
訂正事項5は請求項3を削除するものであり、訂正事項6は請求項4を削除するものであるから、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
これらの訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項7~12について
訂正事項7~12は、いずれも、本件訂正前の請求項3、4について、訂正事項5、6によって請求項3、4が削除されたことに伴い、請求項5~10が引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項5、6によって削除された請求項3、4を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
これらの訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.本件訂正請求についてのまとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~10〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、2、5~10に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、5~10に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材が、ポリエチレンから構成される単層の一軸延伸樹脂フィルムであり、
前記基材に印刷が施されており、
前記基材における印刷が施される層が、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)から構成される層であり、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず、
前記積層体において、ポリエチレンの含有量が、90質量%以上である
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と、前記ヒートシール層との間に接着層を備える、請求項1に記載の積層体。」
「【請求項5】
前記基材の長手方向(MD)の延伸倍率が、2倍以上10倍以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材の横手方向(TD)の延伸倍率が、2倍以上10倍以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
包装材料用途に用いられる、請求項1、2および5~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1、2および5~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。
【請求項9】
包装袋であって、
請求項1、2および5~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項10】
スタンドパウチであって、
請求項1、2および5~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とするスタンドパウチ。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由の要旨
(1)取消理由1(明確性要件)
本件請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
本件請求項1~10に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)取消理由3(新規性)
本件特許の請求項1、3、5、7~10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(4)取消理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)引用刊行物
甲第1号証:特表2018-511504号公報
甲第2号証:特開2018-16012号公報
以下、甲第1号証、甲第2号証を、それぞれ「甲1」、「甲2」という。
2.取消理由1(明確性要件)及び取消理由2(サポート要件)対する当審の判断
(1)取消理由1及び取消理由2の具体的内容
ア 請求項1の「前記積層体において」との記載
請求項1の「前記積層体において」との記載の前に「積層体」の記載はないため、「前記積層体」なるものが明確でない。
請求項2~10も同様である。
イ 請求項1の「前記基材における印刷が施される層が、」「中密度ポリエチレン」「を含む」との記載
請求項1の「前記基材における印刷が施される層が、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)を含む」との記載は、(一層ないし複数層から構成される)「基材」のうちの「印刷が施される層」が、所定条件の「中密度ポリエチレン」からなる層であることを意味するのか、あるいは、当該「印刷が施される層」が、高密度ポリエチレンや低密度のポリエチレンと所定条件の「中密度ポリエチレン」を混合した層といった、材料として所定条件の「中密度ポリエチレン」を含むことを意味するのかなど、いかなる技術的事項を特定しようとしているのかが明確でない。
また、後者を意味するのであれば、発明の詳細な説明に対応する記載はないため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
請求項2~10も同様である。
ウ 請求項3の「前記基材が、中密度ポリエチレン層を備える」との記載
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3に、「前記基材が、中密度ポリエチレン層を備える」との記載があるが、請求項3における「中密度ポリエチレン層」が、請求項1における「印刷が施される層」の「中密度ポリエチレン」のことであるのか否か、両者の対応関係が不明確である。
請求項4~10も同様である。
エ 請求項4の「前記基材が、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する」との記載
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4に「前記基材が、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する」との記載があるが、請求項4における「中密度ポリエチレン層」が、請求項1における「印刷が施される層」の「中密度ポリエチレン」のことであるのか否か、両者の対応関係が不明確である。
また、請求項3における「中密度ポリエチレン層」が「基材における印刷が施される層」であるとした場合、3層構造のうちの中間層である「中密度ポリエチレン層」に印刷が施されることになるため、技術的に明確でなく、発明の詳細な説明に記載される当該3層構造のものは、高密度ポリエチレン層に印刷されるため、請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
請求項5~10も同様である。
(2)判断
ア 上記(1)アの取消理由について
本件訂正により、「前記積層体」の記載の前に、「基材と、ヒートシール層とを備える積層体であって、」と特定されたため、取消理由は解消した。
イ 上記(1)イの取消理由について
本件訂正により、「基材」が「単層」であり、「前記基材における印刷が施される層」が、「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン(ただし、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く)から構成される層であり、」と訂正されたため、「印刷が施される層」が「中密度ポリエチレン」からなる層を意味することが明確となり、取消理由は解消した。
ウ 上記(1)ウ、エの取消理由について
本件訂正により、請求項3及び請求項4は削除されたため、取消理由は存在しないものとなった。
(3)取消理由1及び取消理由2についてのまとめ
以上より、取消理由1及び取消理由2には、いずれも理由がない。
3.取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)に対する当審の判断
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1には、次の事項が記載されている。(「・・・」は省略を示す。)
(ア)「【請求項1】
ポリマー材料から作製される積層構造体であって、前記積層構造体が、
A)
A.1) HDPE組成物を含む第1-A層;並びに
A.2) LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層
を含む外側ウェブ、
B)
B.1) 前記外側ウェブと接触する第1-B層であって、前記第1-B層が、LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む層;
B.2) HDPE組成物を含む第2-B層;並びに
B.3) シーラント組成物を含む第3-B層
を含む内側ウェブ、
但し、
I) 前記外側ウェブが、前記内側ウェブに積層され、
II) 前記積層構造体が、前記外側層と前記内側層との境界面にて印刷され、
III) 前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成すること
を含む、構造体。」
「【請求項3】
前記外側ウェブが、2:1から10:1のドローダウン比を有する縦方向配向に供される、請求項1に記載の構造体。」
「【請求項8】
2つの結合層が、第1結合層が、前記バリア層の一方の側に位置し、第2結合層が、前記バリア層の他方の側に位置するように含まれる、請求項7に記載の構造体。
【請求項9】
請求項1に記載の構造体から調製されるスタンドアップパウチ。」
(イ)「【0005】
従って、積層構造体は、ポリマー材料から作製される。
一実施形態では、ポリマー材料は、異なるタイプのポリエチレンから本質的になる-この実施形態のSUPを作製するのに用いられる唯一のポリマー材料は、ポリエチレンである。好適なタイプのポリエチレンには、
1)高密度ポリエチレン(HDPE)-密度約0.95から約0.97g/ccを有するポリエチレンホモポリマー又はコポリマー;
2)中密度ポリエチレン(MDPE)-密度約0.93から約0.95g/ccを有するポリエチレンコポリマー;
3)線状低密度ポリエチレン(LLDPE)-密度約0.915から約0.93g/ccを有するポリエチレンコポリマー;及び
4)シーラントポリエチレン-熱成形シールの調製に適したポリエチレン材料、特に、1)密度約0.88から0.915g/ccを有するポリエチレンコポリマー(「VLDPE」);及び2)高圧低密度ポリエチレン(LD)-高圧法にてフリーラジカル開始剤を用いて調製され、密度約0.91から約0.93g/ccを有するポリエチレンホモポリマー、からなる群から選択されるポリエチレン
が含まれる。
【0006】
本発明の積層構造体は、一緒に積層される2つの異なるウェブを用いて調製される。
各ウェブは、少なくとも1層のHDPEを含む。HDPE層は、SUPに、硬性/剛性(rigidity/stiffness)をもたらす。これらのHDPE層は、少なくとも1層のより低密度のポリエチレン(例えばLLDPE)によって分離されており、このより低密度のポリエチレンは、耐衝撃性及び耐穿刺性をもたらす。更に、硬質HDPEの層を分離することによって、SUPの全体的な硬性及びねじれ強さが、単一層に等しい量/厚さのHDPEを含有する構造体と比べて改善される-これは、「Iビーム」効果と称されることもある(建物の建設に広く使用(sue)されている鋼Iビームに類似しているので、)。
本発明の積層構造体は、スタンドアップパウチ(「SUP」)の調製に特に適している。」
(ウ)「【0009】
本発明を実施するための最良の形態
本発明の積層構造体は、2つのウェブを用いて調製されるが、その各々が、少なくとも1層のHDPEを含有していなければならない。第1ウェブの少なくとも1層のHDPE層は、より低密度のポリエチレンの層によって第2ウェブの少なくとも1層のHDPE層から分離され、それにより所定量のHDPEに対するSUPの硬性(rigidity)を最適化する。
2つのウェブを、一緒に積層する。
一実施形態では、積層構造体は、2つのウェブの間の境界面に、-即ち、第1ウェブの内側表面上又は第2ウェブの外側表面上のいずれかに印刷される。
続いて、第1(外側)ウェブ;第2(内側)ウェブ;接着剤、及び印刷を詳細に説明する。」
(エ)「【0010】
1.第1(外側)ウェブ、又は“A”ウェブ
第1(外側)ウェブは、積層構造体の外壁を形成する。
一実施形態では、本発明の積層構造体は、第1ウェブと第2(内部)ウェブとの間の境界面に印刷される。
従って、これは、印刷を見るために、外側ウェブ「を介して見る」ことが必要であることを意味する。従って、外側ウェブのヘイズ値が低いことが望ましい。加えて、「光沢」については、多くの消費者が、高光沢仕上げを高品質の指標であると認識しているので、高いのが望ましい。
更に、積層構造体から作製されたSUPが自立するように、外側層により、積層構造体に剛性/硬性(stiffness/rigidity)がもたらされることが望ましい。
従って、良好な光学的特性と剛性とのバランスが、外側ウェブに求められる。HDPEは、所望の剛性をもたらすことが知られているが、HDPEは、光学的特性が低いこともまた知られている。本発明は、この問題を以下のように解決する。
一実施形態では、HDPEの非常に薄い層が、外側ウェブにて、より低密度のポリエチレンの層と共に使用される;
別の実施形態では、外側ウェブには、ウェブのモジュラス(剛性(stiffness))及び光学的特性を改善するのに十分な量にて、縦方向配向(MDO)が施される。・・・」
「【0017】
外側ウェブの縦方向配向(MDO:Machine Direction Orientation)
別の実施形態では、外側ウェブは、少なくとも1層のHDPEと、少なくとも1層のより低密度のポリエチレン、例えば、MDPE又はLLDPEとを含む同時押出フィルムである多層である。この構造体を、縦方向配向(又は、MDO)に供する。・・・」
(オ)「【0020】
B.内側ウェブ
内側ウェブは、積層構造体から調製されたSUPの内側を形成する。
内側ウェブは、少なくとも3つの層を含む同時押出フィルムである、即ち、
B.1) LLDPE及びMDPEからなる群から選択される少なくとも1種のポリエチレンから調製される第1層(又は境界面スキン層);
B.2) HDPE組成物を含むコア層;及び
B.3) シーラントポリエチレンから調製されるシーラント層(又は内側スキン層)。・・・」
「【0031】
B.3 シーラント層
内側ウェブは、2つの外側層、又は「スキン」層、即ち、境界面スキン層(上のB.1の層)及び内側スキン層(本明細書では、シーラント層とも称される)を有する。シーラント層は、「シーラント」ポリエチレン-即ち、シーリング条件に供された場合、容易に融解してシールを形成する、あるタイプのポリエチレン、から調製される。当業者には、シーラントとして使用するのに2つのタイプのポリエチレンが、好ましいことが分かるであろう、即ち:
1)密度約0.88から0.915g/ccを有するポリエチレンコポリマー;及び
2)LDポリエチレン(前記のような)。
より低密度のポリエチレンコポリマーを使用するのが好ましい。・・・」
(カ)「【0037】
パート1 既存SUP構造体の分析
食品を含有している2つのSUPを食料品店で購入した。これらのSUPの両方は、従来のPET/PE構造を用いて調製されていた。これらの包装容器の硬性を、硬性試験を使用して測定したところ、MD及びTDの両方向で約5.5g/cmであることがわかった。この値を、本発明のSUP設計の基準として設定した。
パート2 材料リスト
以下のポリエチレン樹脂を、実施例にて使用した。
【表1】
[図:0001427916000001.jpg]
・・・
【0038】
外側ウェブ(非配向)
5つのインフレーションフィルムを、スタンドアップパウチの外側ウェブの候補として調製した。これらのフィルムは、従来のインフレーションフィルムラインで調製した。全てのフィルムの全厚さは、1.15ミル(0.29mm)であった。フィルム1.1及び1.4は、1種類のみの樹脂から作製された。フィルム1.2、1.3及び1.5は、HDPEと、MDPE又はLLDPEのいずれかとを含有する多層構造であった。これらのフィルムの各々について、縦方向(MD)及び横方向(TD)の剛性値(g/cmで表す)を表1に示す。多層フィルムにおけるZN-1層の厚さは1.15ミルであった。
【表2】(当審注:表番号について、【】の表番号と表上段の下線の表番号がずれているが、【】の表番号を採用する。以下同様である。)
[図:0001427916000002.jpg]
【0039】
外側ウェブ(縦方向配向)
16のフィルムを、従来のインフレーションフィルムラインで調製した。これらのフィルムの元の厚さは、表2に示すように、約6から7ミルであった。その後、フィルムに、縦方向配向プロセスにて延伸を施した。延伸の程度の目標点を表2に示す。例えば、フィルム2.1は、厚さ6ミルで開始し、MDO係数6で延伸されて、その結果、最終的なインフレーションフィルム厚さは、1ミルとなった。
2層のフィルム(即ち、2種類以上のポリマーを有するものとして示されるフィルム、例えば2.3)を、ZN-1とZN-2との間の厚さ比が0.75/0.4であるように、即ち、最終的な厚さが1.15ミルの延伸フィルムは、0.75ミルのZN-1層と0.40ミルのZN-2層とを有するように、調製した。フィルム構造2.1;2.2;2.8;2.12;2.13は、単層構造であるため、比較例である。更に、これらの比較例のフィルムの光学的特性は、本発明のフィルムに比べて、明らかに劣っていた。最も顕著には、構造2.15の層は、わずか8%(92%の透明度)であり、構造2.17のヘイズは、わずか3%(97%の透明度)であった。
【0040】
更に、単層構造は、非常に「引裂き易い」ことが観察された、即ち、この構造体を縦方向に引裂くのは非常に容易である。
【表3】
[図:0001427916000003.jpg]
」
「【0042】
最終的な積層構造体
最終的な積層構造体は、第1(外側)ウェブを第2(内側)ウェブに積層することによって調製される。 表4は、2つの最終的な構造体の代表的なデータを示している。
【表5】
[図:0001427916000004.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
(ア)甲1の、特に特許請求の範囲の請求項1、3と【0009】の後段の記載に着目すると、甲1には、次の「甲1A発明」が記載されていると認められる。
<甲1A発明>
「ポリマー材料から作成される積層構造体であって、前記積層構造体が、
A)
HDPE組成物を含む第1-A層;並びに
LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層
を含む
外側ウェブ、
B)
前記外側ウェブと接触する第1-B層であって、前記第1-B層が、LLDPE及びMDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第1-B層;
HDPE組成物を含む第2-B層;並びに
シーラント組成物を含む第3-B層を含む
内側ウェブ、
を含み、
前記外側ウェブが、前記内側ウェブに積層され、
前記外側ウェブが、2:1から10:1のドローダウン比を有する縦方向配向に供され、
前記外側ウェブの内側表面上に印刷され、
前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成している、
積層構造体。」
(イ)また、甲1の、【0037】~【0042】、特にサンプル4.1として記載されている積層構造体に着目すると、以下の点が理解できる。
・サンプル4.1の積層構造体は、印刷ウェブ「ZN-1(nuc)/ZN-2」と、内側ウェブ「ZN-2/SSC-1(nuc)/ZN-3」を積層したものであること
・甲1の請求項1には、「外側層と内側層の境界面にて印刷され」と記載されていること、また、その実施例としてのサンプル4.1について「印刷(又は外側)ウェブ」と記載(【表5】の欄外、「注:a)」)されることからみて、「印刷(又は外側)ウェブの内側表面上に印刷がなされていること
・甲1の請求項1には、「前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成している」と記載されていることからみて、その実施例としてのサンプル4.1は、印刷(又は外側)ウェブ及び内側ウェブを構成するポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成しているといえること
・甲1において、ZN-3は、密度が0.912(g/cc)(【表1】)であり、シーラントポリエチレンであるから(【0005】)、ZN-3層はシーラント層であるといえること
そうすると、甲1には次の「甲1B発明」が記載されていると認められる。
<甲1B発明>
「印刷(又は外側)ウェブを内側ウェブに積層することによって得られた積層構造体であり、
前記印刷(又は外側)ウェブは、ZN-1(nuc)/ZN-2の構造であり、縦方向に配向され、MDO係数は6.5Xであり、内側表面上に印刷がなされており、
前記内側ウェブは、ZN-2/SSC-1(nuc)/ZN-3の構造であり、該内側ウェブにおけるZN-3層はシーラント層であり、
ZN-1(nuc)は、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であり、SSC-1(nuc)は、密度が0.967g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-3は、密度が0.912g/ccのコモノマーがオクテンであるポリエチレン樹脂であり、
前記印刷(又は外側)ウェブ及び内側ウェブを構成するポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成している、
積層構造体。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1A発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲1A発明とを対比する。
a 甲1A発明の「外側ウェブ」は、本件発明1の「基材」に相当する。また、甲1A発明の「外側ウェブ」は、「2:1から10:1のドローダウン比を有する縦方向配向に供され」るとともに、「HDPE組成物を含む第1-A層;並びにLLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層を含む」ものであるから、本件発明1の「基材が、ポリエチレンから構成される単層の一軸延伸樹脂フィルムであ」ることと、「基材が、ポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであ」るという限りで一致する。
b 甲1A発明は、「外側ウェブの内側表面上に印刷され」ているから、本件発明1の「前記基材に印刷が施されており」ということを満たしている。
c 甲1A発明の「シーラント組成物を含む第3-B層」が、本件発明1の「ヒートシール層」に相当し、また、当該第3-B層の「シーラント組成物」は、「シーラントポリエチレン」であるから、上記aと合わせれば、甲1A発明は、本件発明1の「前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され」ることを満たしている。
d 甲1A発明の「外側ウェブ」と「シーラント組成物を含む第3-B層」を備える「積層構造体」は、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備える積層体」に相当する。
e 甲1A発明の「積層構造体」は、「前記HDPE、MDPE、LLDPE及びシーラントポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成し」ているから、本件発明1の「前記積層体において、ポリエチレンの含有量が、90質量%以上である」ことを満たしている。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1A発明は、
「基材と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材が、ポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであり、
前記基材に印刷が施されており、
前記積層体において、ポリエチレンの含有量が、90質量%以上である
積層体。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点A1>
基材がポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであることに関し、本件発明1が「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン」による「単層」であるのに対し、甲1A発明における「外側ウェブ」は、「HDPE組成物を含む第1-A層」と「LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層」を含むものであり、当該中密度ポリエチレンによる単層ではない点。
<相違点A2>
本件発明1は、「前記基材における印刷が施される層」が、「密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く」ものであり、さらに「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含ま」ないものであるのに対し、甲1A発明において印刷が施されている「外側ウェブ」は、「HDPE組成物を含む第1-A層;並びにLLDPE、MDPE及びHDPEを含む第2-A層を含む外側ウェブ」であって、2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー及び当該直鎖状低密度ポリエチレンを含まないものであるか否か不明である点。
(ウ)上記相違点A1について検討する。
甲1A発明の外側ウェブは、「HDPE組成物を含む第1-A層」と「LLDPE、MDPE及びHDPEからなる群から選択されるポリエチレンを含む第2-A層」を含むもので、中密度ポリエチレンによる単層ではないから、当該相違点A1は実質的なものである。
また、甲1A発明の外側ウェブが上記「第1-A層」と「第2-A層」を備えることに関し、甲1には、「良好な光学的特性と剛性とのバランスが、外側ウェブに求められる。HDPEは、所望の剛性をもたらすことが知られているが、HDPEは、光学的特性が低いこともまた知られている。本発明は、この問題を以下のように解決する。一実施形態では、HDPEの非常に薄い層が、外側ウェブにて、より低密度のポリエチレンの層と共に使用される」(【0010】)と記載されている。すなわち、剛性と光学特性の面から、HDPEの層である「第1-A層」を非常に薄く設けつつ、これに加え「第2-A層」を備えたものであることが理解できる。
してみれば、甲1A発明において、「外側ウェブ」として中密度ポリエチレンを選択し、これを単層とすることについての動機付けはない。また、この点について、他に証拠はない。
よって、本件発明1の相違点A1に係る構成は、甲1A発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
(エ)以上より、上記相違点A2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明ではなく、また、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明1と甲1B発明との対比・判断
(ア)本件発明1と甲1B発明とを対比する。
a 甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」は、本件発明1の「基材」に相当する。また、甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」は、「ZN-1(nuc)/ZN-2の構造であり、縦方向に配向され、MDO係数は6.5Xであ」るとともに、「ZN-1(nuc)は、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であ」るから、本件発明1の「前記基材が、ポリエチレンから構成される単層の一軸延伸樹脂フィルムであ」ることと、「基材が、ポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであ」るという限りで一致する。
b 甲1B発明は、印刷(又は外側)ウェブの「内側表面上に印刷がなされ」ているから、本件発明1の「前記基材に印刷が施されており」ということを満たしている。
c 甲1B発明の「ZN-1(nuc)は、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂であり、ZN-2は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であ」ることは、本件発明1の「前記基材における印刷が施される層が、」「密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除く」ことに相当し、また、「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず」ということも満たしている。
d 甲1B発明の「シーラント層であ」る「内側ウェブにおけるZN-3層」は、本件発明1の「ヒートシール層」に相当し、また、「ZN-3は、密度が0.912g/ccのコモノマーがオクテンであるポリエチレン樹脂である」から、上記aと合わせれば、甲1B発明は、本件発明1の「前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され」ることを満たしている。
e 甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」と「シーラント層であ」る「内側ウェブにおけるZN-3層」を備える「積層構造体」は、本件発明1の「基材と、ヒートシール層とを備える積層体」に相当する。
f 甲1B発明の「前記印刷(又は外側)ウェブ及び内側ウェブを構成するポリエチレンが、全体として、前記積層構造体を調製するのに用いられる前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成している」ことは、本件発明1の「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である」ことを満たすものといえる。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1B発明とは、
「基材と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材が、ポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであり、
前記基材に印刷が施されており、
前記基材における印刷が施される層が、密度が926~950kg/m3の2峰性エチレン/ 1-ブテン/ C6~C12-α-オレフィンターポリマーを除くものであり、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満である直鎖状低密度ポリエチレンは含まず、
前記積層体において、ポリエチレンの含有量が、90質量%以上である
積層体。」で一致し、次の点で相違する。
<相違点B1>
基材がポリエチレンから構成される一軸延伸樹脂フィルムであることに関し、本件発明1が「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満である中密度ポリエチレン」による「単層」であるのに対し、甲1B発明は、「ZN-1(nuc)/ZN-2の構造であ」り、当該中密度ポリエチレンによる単層ではない点。
(ウ)上記相違点B1について検討する。
甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」は、「ZN-1(nuc)/ZN-2の構造」、すなわち、密度が0.958g/ccのポリエチレン樹脂の「ZN-1(nuc)」の層と、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂の「ZN-2」の層の「2層」からなるから、本件発明1の「基材」が中密度ポリエチレンによる単層であることと実質的に相違している。
また、甲1B発明の「印刷(又は外側)ウェブ」が「ZN-1(nuc)/ZN-2の構造」であるのは、上記ア(ウ)で述べたように、密度が0.958g/ccのZN-1(nuc)の層を非常に薄く設けつつ、これに加えZN-2の層を備えることが剛性と光学的特性の面から必須の構成であるから、「印刷(又は外側)ウェブ」として中密度ポリエチレンを選択し、これを単層とすることについての動機付けはなく、他に証拠もない。
よって、本件発明1の相違点B1に係る構成は、甲1B発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
(エ)以上より、本件発明1は、甲1B発明ではなく、また、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和7年3月21日の意見書(「(3)新規性に関する取消理由(取消理由3)及び進歩性に関する取消理由(取消理由4)」)において、甲1には、ZN-2から構成された印刷ウェブフィルムが記載(甲1の【表2】の1.4)され、それを縦方向延伸したフィルムが例示(【表3】の2.1、2.2、2.8等)されていることに基づき、甲1には次の「甲1C発明」も記載されており、本件発明1は、この「甲1C発明」であり、「甲1C発明」に基づき当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
「<甲1C発明>
第1(外側)ウェブを第2(内側)ウェブに積層することによって調製された積層構造体であり(甲1の【0042】)、
前記外側ウェブは、ZN-2から構成された印刷ウェブフィルムを、MDO係数6Xで縦方向に配向したウェブであり(甲1の【0038】~【0042】)、
前記内側ウェブは、ZN-2/SSC-1(nuc)/ZN-3の構造であり(甲1の【0041】~【0042】)、
該内側ウェブにおけるZN-3層はシーラント層であり(甲1の【0041】)、
「ZN-2」は、密度が0.934g/ccのコモノマーがヘキセンであるポリエチレン樹脂であり、「SSC-1(nuc)」は、密度が0.967g/ccのポリエチレン樹脂であり、「ZN-3」は、密度が0.912g/ccのコモノマーがオクテンであるポリエチレン樹脂である(甲1の【表1】)、
積層構造体。」
(イ)確かに、甲1の【表3】には、印刷ウェブフィルムを縦方向延伸したフィルムの例として、中密度ポリエチレンに該当する「ZN-2」の単層で形成したフィルムが記載されており、当該フィルム単体での評価についての記載はあるが、具体的に当該フィルムに内側ウェブを積層した積層構造体を作成したことが記載されているとまでは認められない。すなわち、当該主張の「甲1C発明」が記載されているものとは認められない。
そして、当該フィルムは、比較例であり、性能が劣るものと評価されているのであるから、当該フィルムに内側ウェブを積層した積層構造体を得ることについての動機付けもない。
そうすると、申立人の上記主張は採用できない。
(3)本件発明2、5~10について
本件発明2、5~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、上記(2)で述べたように、本件発明1は、甲1A発明又は甲1B発明ではなく、また、甲1A発明又は甲1B発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、5~10も、甲1A発明又は甲1B発明ではなく、また、甲1A発明又は甲1B発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない
(4)取消理由3及び取消理由4についてのまとめ
以上より、取消理由3及び取消理由4には、いずれも理由がない。
第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由
申立人は、取消理由通知(決定の予告)で採用した取消理由のほか、甲2を主引用例とする申立理由を主張する。
(2)申立理由の判断
ア 甲2には、特に請求項1の記載に基づき、次の発明が記載されているといえる。
「基材層、接着剤層、バリア層、シーラント層を少なくとも有する積層体であって、前記接着剤層が酸素バリア性を有することを特徴とする積層体。」
イ 本件発明1と甲2に記載された発明を対比すると、次の点で少なくとも相違する。
<相違点1>
本件発明1の基材およびヒートシール層がポリエチレンから構成されるのに対し、甲2に記載された発明は、そうであるか特定されていない点。
ウ 上記相違点1について検討する。
甲2には、基材に使用されるフィルムについて、「紙、アルミ箔、セロファン、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、酸変性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、アセタール系樹脂フィルム、これらを一軸または二軸延伸したフィルム、Kコートフィルム、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・等からなる樹脂フィルム、Kコート延伸ポリプロピレンフィルム、Kコート延伸ナイロンフィルム、これらの2以上のフィルムを積層した複合フィルム等が挙げられる。」(【0018】)と、多数、例示される中、「なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの一軸または二軸延伸ポリアミドフィルム、そして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムOPP等を好適に使用することができる。」(【0019】)と記載されている。
また、同じく甲2には、シーラント層について、「具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂のフィルムないしシートあるいはその他塗布膜等を使用することができる。」(【0039】)と記載されている。
本件発明1は、基材およびヒートシール層をポリエチレンで構成するものであるところ、甲2には、基材とシーラント層を構成する材料について、それぞれ多数の選択肢が挙げられ、特に基材については、ポリエチレンとは異なる、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム、一軸または二軸延伸ポリアミドフィルム及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好適である旨記載されていることからすると、基材、シーラント層ともポリエチレンで構成することを記載ないし示唆しているとは認められない。
また、甲2の【発明の解決しようとする課題】は、「酸素バリア性に優れ、耐屈曲性にも優れた積層体および該積層体からなる包装材料を提供すること」(【0008】)であり、基材、シーラント層ともポリエチレンのモノマテリアルとする動機付けがあるとはいえず、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
エ よって、申立人の甲2を主引用例とする申立理由には、理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、2、5~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、5~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項3、4は削除されたため、請求項3、4に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700112