特許異議申立
2023-700357
多層基材、積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
- 審判番号
- 2023-700357
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-186164
- 登録番号
- 7151342
- 請求日
- 2023年04月10日
- 審決日
- 2024年06月12日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】岡本 正義
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 森藤 淳志
- 分類
- P1651.121-ZAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7151342号発明「多層基材、積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7151342号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
特許第7151342号の請求項1~15に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7151342号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成30年9月28日の出願であって、令和4年10月3日にその特許権の設定登録がされ、同年10月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月10日 :特許異議申立人岡本正義(以下「申立人」という。)による請求項1~15に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 6月30日付け:取消理由通知書
同年 9月 4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月12日 :申立人による意見書の提出
同年11月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 1月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 2月22日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年9月4日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年1月5日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第7151342号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の冒頭に、
「多層基材とヒートシール層とを少なくとも備える積層体に用いる多層基材であって、
前記積層体は全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であり、
前記積層体に用いる多層基材は、」を追加する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「中密度ポリエチレンを含む層」と記載されているのを、「中密度ポリエチレン(但し、密度が0.926~0.950g/cm3の双峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)を除く)を含む層」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「この順に備える五層共押延伸フィルムからなることを特徴とする」と記載されているのを、「この順に備える五層共押延伸フィルムからなり、
前記高密度ポリエチレンを含む層の厚さは、前記低密度ポリエチレンを含む層、前記直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または前記超低密度ポリエチレンを含む層の厚さと同じか、それより厚いことを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「特徴とする、多層基材。」と記載されているのを、「特徴とする、
全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上である積層体用の多層基材。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~15も同様に訂正する。)。
(5)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~15は、請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は一群の請求項に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び4について
訂正事項1及び4は、特許明細書の【0049】、【0054】及び【0062】の記載に基づき、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、取消理由通知において甲1A発明、甲1B発明として認定したコア層に係る事項を除くとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許明細書の【0031】の記載に基づき、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~15に記載された以下のものである。
【請求項1】
多層基材とヒートシール層とを少なくとも備える積層体に用いる多層基材であって、
前記積層体は全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であり、
前記積層体に用いる多層基材は、
密度が0.945g/cm3以上の高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満の中密度ポリエチレン(但し、密度が0.926~0.950g/cm3の双峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)を除く)を含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレンを含む層、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満の中密度ポリエチレン(但し、密度が0.926~0.950g/cm3の双峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)を除く)を含む層と、
密度が0.945g/cm3以上の高密度ポリエチレンを含む層と、
をこの順に備える五層共押延伸フィルムからなり、
前記高密度ポリエチレンを含む層の厚さは、前記低密度ポリエチレンを含む層、前記直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または前記超低密度ポリエチレンを含む層の厚さと同じか、それより厚いことを特徴とする、
全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上である積層体用の多層基材。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレンを含む層の厚さが、1μm以上、20μm以下である、請求項1に記載の多層基材。
【請求項3】
前記中密度ポリエチレンを含む層の厚さが、1μm以上、30μm以下である、請求項1または2に記載の多層基材。
【請求項4】
前記低密度ポリエチレンを含む層、前記直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または前記超低密度ポリエチレンを含む層の厚さが、1μm以上、10μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層基材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多層基材と、ヒートシール層とを備えることを特徴とする、積層体。
【請求項6】
前記多層基材と、前記ヒートシール層との間に蒸着膜を備える、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記多層基材と、前記蒸着膜との間に接着層を備え、
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記多層基材と、前記ヒートシール層との間に、中間層を備え、
前記中間層が、一方の面に蒸着膜を備える延伸ポリエチレンフィルムからなる、請求項5~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記多層基材と、前記中間層との間および前記中間層と、前記ヒートシール層との間に、接着層を備える、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記蒸着膜と隣接する前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である、請求項5~10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
包装材料用途に用いられる、請求項5~11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
請求項5~12のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。
【請求項14】
包装袋であって、
請求項5~12のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項15】
スタンドパウチであって、
請求項5~12のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とするスタンドパウチ。
第4 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1~15に係る特許に対して、令和5年11月7日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。以下、甲各号証を、「甲1」等という。
2(新規性)本件特許の請求項1~5、11~15に係る発明は、甲1B発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲1B発明に基いて、請求項6~7に係る発明は、甲1B発明及び甲4記載事項に基いて、請求項8~15に係る発明は、甲1B発明、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、取消理由通知書(決定の予告)の「第6 むすび」における「請求項1~11、14~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたもの」との記載は、同通知の「第5 当審の判断」における「6 本件発明11~15について」の説示及びその余の説示の内容に照らして、「請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたもの」の誤記と認める。
記
甲1:国際公開第2016/135213号
甲3:Dow、「AFFINITYTM EG8100G Polyolefin Plastomer」、2016年1月12日
甲4:特開2018-16012号公報
甲5:特開2008-265854号公報
甲6:国際公開第2015/075081号
第5 当審の判断
・理由3(進歩性)について
1 本件発明1
(1)甲1の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲1には、以下に示す事項が記載されている。()内は、当審訳である。なお、申立人が提出した甲1の翻訳文を参照した。
ア 第1ページ第11行~第12行
Laminates are widely used in the packaging industry to form all manner of articles from food containers, like vacuum-formed packages, to stand up pouches and product labels.
(積層体は、真空成形された包装体のような食品容器から、スタンドアップパウチや製品ラベルに至る物品の全ての態様を形成するための包装産業において幅広く使用される。)
イ 第2ページ第4行~第6行
Nowadays there is a trend to provide "100% PE" solutions, i.e laminates consisting of a PE film laminated to a further PE film structure, since such laminates based on a single class of resin can be more easily recycled.
(近年、"100%PE"解決策、すなわち、さらなるPEフィルム構造に積層されたPEフィルムとからなる積層体を提供する傾向がある。それは、1種の樹脂に基づいたこのような積層体はより容易にリサイクルすることができるためである。)
ウ 第2ページ第16行~第25行
A further "100% PE" solution is promoted by Borealis. This solution comprises a BorLite- based MDO film (25 μm), which is laminated to a BorSape LLDPE blown film substrate (60 μm). A suitable BorLite grade for such an application is for example BorLite OPE795, which is a multimodal LLDPE with a density (ISO 1183) of 931 kg/m3, MFR (190℃, 2.16 kg; ISO 1133) of 0.2 g/10 min and a melting temperature (DSC, ISO 11357-3) of 127℃.
This MDO film of this full PE laminate structure is made of a blocked multilayer film of the structure A/B/B/B/C/C/B/B/B/A, wherein C is the blocking layer comprising BorLite and a plastomer (Queo 8201), B is a BorLite layer and A is a layer being composed of a high density polyethylene (HDPE). The primary film thickness is 125 μm (2 × 62.5 μm) before stretching and 25 μm after stretching.
(さらなる"100%PE"解決策は、Borealisによって促進される。この解決策は、BorLite系MDOフィルム(25 μm)を含み、そのBorLite系MDOフィルムは、BorSape LLDPEインフレーションフィルム基材(60 μm)に積層されている。このような用途に適したBorLiteグレードは、例えばBorLite OPE795があり、このBorLite OPE795は、密度(ISO 1183)が931kg/m3であり、MFR(190℃, 2.16 kg; ISO 1133)が0.2g/10分であり、融解温度(DSC, ISO 11357-3)が127℃である多峰性LLDPEである。
この全PE積層構造のMDOフィルムは、A/B/B/B/C/C/B/B/B/Aの構造のブロックされた多層フィルムであり、CはBorLite及びプラストマー(Queo 8201)を含むブロック層であり、BはBorLite層であり、Aは高密度ポリエチレン(HDPE)から構成される層である。延伸前の当初のフィルム厚は、125μm(2 × 62.5 μm)であり、延伸後は25μmである。)
エ 第12ページ第5行~第17行
The film preparation process steps of the invention are known and may be carried out in one film line in a manner known in the art. Such film lines are commercially available, for example from Windmoller & Holscher, Reifenhauser, Hosokawa Alpine, etc.
Typically the three-layer structure (O/CO) is produced on a 3-layer coextrusion line, but in some embodiments it may be appreciated that the used coextruder is a 5 or 7 layer coextrusion line. In such a set up the central dies may all extrude C-layer material to form an 0-1/C/C/C/0-2 or 0-1/C/C/C/C/C/0-2 type film or each of the two, respectively three outer dies may extrude outer layer-layer material to form an 0-1/0-1/C/0-2/0-2 or 0-1/0-1/0-1/C/O-2/O-2/O-2 type film or as a combination of the before described possibilities an O-1/O-1/C/C/C/O-2/O-2 type film could be produced, too. As all these outer- respectively C-layers are identical, the films produced are effectively still O-1/C/O-2 films. Preferably 7-layer coextrusion lines would be used if desired, with O-1/C/C/C/C/C/O-2 being the preferred type of film structure.
(本発明のフィルム調整工程は公知であり、当技術分野で公知の方法で1つのフィルムラインで実行してよい。このようなフィルムラインは、Windmoller & Holscher、Reifenhauser、Hosokawa Alpineなどから市販されている。
典型的には、3層構造(O/CO) は、3層共押出しラインで製造されるが、いくつかの実施形態では、使用される共押出機は、5層または7層共押出しラインであることが理解され得る。このような構成では、中央ダイはC層材料をすべて押出して、0-1/C/C/C/0-2若しくは0-1/C/C/C/C/C/0-2タイプのフィルム、又は、その2つのそれぞれを形成してもよく、3つの外側ダイそれぞれは、外層-層材料を押出して、0-1/0-1/C/0-2/0-2又は0-1/0-1/0-1/C/O-2/O-2/O-2タイプのフィルムを形成してもよく、又は、前述した可能性の組み合わせとしてO-1/O-1/C/C/C/O-2/O-2タイプのフィルムを形成してもよい。これからの外側、C層がそれぞれすべて同じであるので、製造されたフィルムは、実質的にO-1/C/O-2フィルムである。必要に応じて、7層の共押出ラインが、好ましいタイプのフィルム構造であるO-1/C/C/C/C/C/O-2で好適に使用される。)
オ 第12ページ第20行~第31行
For the blocked film an O/C/B type structure is used, where O is one of the outer layers (O-1 or O-2), C is the core layer and layer B is the blocking layer. As the three layer coextruded film exits the die in the form of a bubble, the bubble is optionally cut and then two halves forced together to effectively form an O-1/C/B/B/C/O-2 type structure (i.e. the formed bubble is collapsed e.g. at the nip rolls to form said film). In this way, the film thickness is effectively doubled and the desired initial film thickness achieved. This is called film blocking in the art.
Thus, the O-1/C/B/B/C/O-2 film is formed from two identical O/C/B films laminated together via their (B) layers.
For the O-1/C/C/C/B/B/C/C/C/O-2 film two identical O/C/C/C/B films were produced on a 5- layer coextrusion line and the resulting bubble is collapsed to form the corresponding blocked film structure.
(前記ブロックされたフィルムとして、O/C/Bタイプの構造が使用され、Oは外層(O-1又はO-2)のうちの1つであり、Cはコア層であり、層Bはブロック層である。前記3層の共押し出しフィルムは、バブル形状でダイを出て、該バブルは任意でカットされ、その後2つの半体を一緒にしてO-1/C/B/B/C/O-2タイプの構造を形成する(つまり、形成されたバブルは、例えばニップロールで潰され、前記フィルムを形成する)。このようにして、フィルム厚が効果的に2倍になり、所望の初期フィルム厚になる。このことを、当技術分野でフィルムブロッキングと呼ばれている。
このように、O-1/C/B/B/C/O-2フィルムは、B層を介して互いに積層された2つの同じO/C/Bフィルムから形成されている。
O-1/C/C/C/B/B/C/C/C/O-2フィルムとして、2つの同じO/C/C/C/Bフィルムが五層共押出しラインで製造され、得られたバブルを潰すことで対応するブロックされたフィルム構造を形成する。)
カ 第14ページ第13行~第19行
For the blocked film structure 0-1/C/C/C/B/B/C/C/C/0-2 the individual layers can contribute to the total film thickness of the first film like for example:
10 to 30%, preferably 15-25% for each of the outer layers (0-1 and 0-2)
5 to 30%, preferably 8 to 20% for each of the blocking layers (B) and
10 to 40%, preferably 15 to 35% for each of the core layers (C).
The two outer layers and the two blocking layers are preferably each of equal thickness.
(ブロックされたフィルム構造O-1/C/C/C/B/B/C/C/C/O-2として、個々の層は、前記第一のフィルムの合計フィルム厚に、例えば、以下の厚さのように寄与する、
それぞれの外層(O-1及びO-2)は10%~30%、好ましくは15%~25%として、
それぞれのブロック層(B)は5%~30%、好ましくは8%~25%として、
それぞれのコア層(C)は10%~40%、好ましくは15%~35%として。
2つの外層及び2つのブロック層は、それぞれ等しい厚さが好ましい。」
キ 第21ページ第18行~第25行
Ad laminated structure
The laminated film structure comprising the first film and the second film is obtained by laminating the first film to the sealing layer of the second film.
The lamination step of the first film and the second film may be effected in any conventional lamination device using conventional lamination methods, such as adhesive lamination including both solvent based and "solvent less" adhesive lamination using any conventional, e.g. commercially available, adhesive, or sandwich lamination with or without a melt web which can be pressed between the substrates.
(積層構造
第一のフィルムと第二のフィルムとを含む積層構造は、第二のフィルムのシール層に第一のフィルムを積層することで得られる。
前記第一のフィルムと第二のフィルムの積層工程は、任意の従来の積層装置で、従来の積層法を使用して、実行されてもよい。従来の積層法として、例えば、市販等の従来の接着剤を使用した溶媒系及び無溶媒系接着積層の両方を含む接着積層、基材間でプレスすることができる溶融ウェブを使用又は不使用であるサンドイッチ積層がある。)
ク 第23ページ第2~第3行
ALCUDIA R4806HT: unimodal Ziegler Natta produced high density polyethylene (HDPE) grade (provided by Repsol); MFR2 of 0.65 g/10 min and density of 948 kg/m3
(ALCUDIA R4806HT:単峰性のチーグラーナッタで製造された高密度ポリエチレン(HDPE)グレード(Repsol製);MFR2は0.65g/10分で、密度は948kg/m3である。)
ケ 第23ページ第18行~第20行
OPE795: bimodal Ziegler Natta produced linear low density polyethylene (C2/C4) Grade BorLite (provided by Borealis AG). OPE795 has MFR5 of 0.85 g/10 min, density of 931 kg/m3.
(OPE795:双峰性のチーグラーナッタで製造された線状(直鎖状)低密度ポリエチレン(C2/C4)グレードであるBorLite (Borealis AG製)。OPE795は、MFR5が0.85g/10分で、密度が931kg/m3である。)
コ 第23ページ第22行~第24行
Queo 8201: Queo 8201 is a unimodal ethylene based octene plastomer (provided by Borealis AG), with MFR2 (190/2.16) of 1 .1 g/10 min and density of 0.882 g/cm3, produced in a solution polymerization process using a metallocene catalyst.
(Queo 8201: Queo 8201は、単峰性のエチレン系オクテンプラストマーであり(Borealis社製)、MFR2(190/2.16)が1.1g/10分で、密度が0.882g/cm3の密度であり、メタロセン触媒を用いて溶液重合法で製造される。)
サ 第24ページ第25行~末行
As second film the following two structures were used:
Second film - Variant A: 3-layer structure b3/b2/b12
Layer b3: FT5236 (25%thickness)
Layer b2: FX1001 (50% thickness)
Sealing layer b1,: blend of 80wt% of Exceed 1018CA and 20 wt% of FT5236(25%thickness)
Second film - Variant B: 5-layer structure b6/b5/b4/b2/b1
Layer b6: blend of 60wt% FX1001 and 40wt% Exceed 1018CA (10%thickness)
Layer b5: FX1002 (17.5% thickness)
Layer b4: FX1001 (45% thickness)
Layer b2: FX1002 (17.5% thickness)
Sealing layer b1,: blend of 70wt% of Queo 0201 FX and 30 wt% of FT5236 (10%thickness)
(第二のフィルムとして、以下の2つの構造を使用した:
第二のフィルム 変形例A: 3層構造b3/b2/b12
…
シール層b1,: 80重量%のExceed(商標) 1018CA と 20重量%のFT5236とのブレンド(25%厚)
第二のフィルム 変形例B: 5層構造b6/b5/b4/b2/b1
…
シール層b1,: 70重量%のQueo 0201 FX と 30重量%のFT5236とのブレンド(10%厚))
シ 第25ページ第8行~第15行
Comparative Example 2 (CE2)
First film
blocked film structure O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2
Outer layers 0-1 and 0-2: HDPE grade R4806HT (20% thickness)
C1: terpolymer OPE795 (17% thickness)
C2: terpolymer OPE795 (31% thickness)
C3: terpolymer OPE795 (17% thickness)
B1: terpolymer 80wt% OPE795 + 20wt% Queo 8201 (15% thickness)
(比較例2(CE2)
第一のフィルム
ブロックされたフィルム構造O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2
外層0-1および0-2:HDPEグレードR4806HT(20%厚)
C1:ターポリマー OPE795(17%厚)
C2:ターポリマー OPE795(31%厚)
C3:ターポリマー OPE795(17%厚)
B1:ターポリマー 80重量% OPE795 + 20重量% Queo8201(15%厚))
ス 第25ページ第30行~第35行
First film of IE4 and CE2 was coextruded on a 5-layer Alpine coextrusion line.
The temperature settings on all extruders were A=230℃ / B=260℃ / C=260℃ / D= 260℃/ E=220℃ and the temperature setting on the extruder die was 230℃.
The formed films had a thickness of 125 μm (blocked film 2×62.5 μm).
Stretching was carried out using a monodirectional stretching machine manufactured by Hosokawa Alpine AG in Augsburg/Germany.
(IE4及びCE2の第一のフィルムは、5層Alpine共押出ライン上で共押出成形した。
全ての押出機の温度設定は、A=230℃ / B=260℃ / C=260℃ / D=260℃ / E=220℃であり、押出ダイの設定温度は230℃であった。
形成されたフィルムは、厚さ125μm(ブロックされたフィルム2×62.5μm)であった。
延伸は、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて実施した。)
セ 第26ページ 表1
[図:0001416437000001.jpg]
(MDOフィルムの特性も、表1に示す
表1:
[図:0001416437000002.jpg]
)
ソ 第28ページ第1行~第18行
Claims
1. Laminated film structure comprising one first film being laminated to one second film and whereby the laminated film structures are based on polyethylene only, whereby
a) the first film comprises at least one core layer (C) and two outer layers (0-1, 0-2) sandwiching the core layer, wherein
a1) the core layer (C) comprises a bimodal ethylene/1-butene/C6-C12-alpha-olefin terpolymer, with a density between 926 kg/m3 to 950 kg/m3 and
a2) the two outer layers comprising unimodal HDPE with a density of more than 940 kg/m3 up to 970 kg/m3,
the first film being uniaxial oriented in the machine direction (MD) in a draw ratio of 1:4 to 1:12.and having a film thickness after orientation of 10 to 27 μm and
b) the second film comprises at least one sealing layer, wherein
b1) the sealing layer comprises a blend of a metallocene produced linear low density polyethylene (mLLDPE) or an ethylene-based plastomer with a low density polyethylene (LDPE),
the second film having a film thickness of 50 to 100 μm,
wherein in the laminated film structures other polymers than ethylene based polymers are substantially absent.
(請求項
1. 1つの第二のフィルムに積層された1つの第一のフィルムを含む積層フィルム構造であって、該積層フィルム構造体はポリエチレンのみを基にしており、
a) 前記第一のフィルムは、少なくとも1つのコア層(C)と、該コア層を挟む2つの外層(0-1, 0-2)とを含み、
a1)前記コア層(C)は、密度が926kg/m3~950kg/m3である、双峰性のエチレン/1-ブテン/C6-C12-α-オレフィンターポリマーを含み、
a2)前記2つの外層は、密度が940kg/m3~970kg/m3である、単峰性のHDPEを含み、
前記第一のフィルムは、機械方向(MD)に1:4~1:12の延伸比で、一軸延伸され、延伸後の厚さは10~27μmであり、
b)前記第二のフィルムは、少なくとも1つのシール層を含む、
b1)前記シール層は、メタロセンで製造された直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)又はエチレン系プラストマーと、低密度ポリエチレン(LDPE)との混合物を含み、
前記第二のフィルムは、50~100μmの膜厚を有し、
前記積層フィルム構造には、エチレン系ポリマー以外のポリマーが実質的に存在しない、
積層フィルム構造。)
(2)引用文献1(プラスチック読本、1992年8月15日、編集:大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会、発行者:浅山英一、発行所:(株)プラスチック・エージ)の記載(当審で新たに提示した文献)
ア 第141ページ 表2
[図:0001416437000003.jpg]
(3)甲1に記載された発明
ア 「ターポリマー OPE795」について
甲1の比較例2のC1~C3に係る「ターポリマー OPE795」((1)シ)は、甲1の(1)ケによると、密度が931kg/m3(0.931g/cm3)の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)でありターポリマーではない。この理解は、甲6の第22ページの表1においても、「OPE795」の密度は「931」kg/m3であり、「LLDPE C2/C4」と記載されていることとも整合する。
以上から、甲1((1)シ)における比較例2のC1~C3に係る「ターポリマー OPE795」(原文「terpolymer OPE795」)の記載は「OPE795」の誤記と認める。
イ 外層(「O-1」及び「O-2」)とブロック層B1の厚さについて
甲1の比較例2の積層フィルムの厚さは25μmである((1)セ参照)。
そして、甲1の比較例2の積層フィルムを構成する層の厚さ((1)セ)について、各層の割合((1)シ)を踏まえて計算すると、外層(O-1及びO-2)は(25μm×20%/2=)2.5μm、ブロック層B1は(25μm×15%=)3.8μmである。
ウ 甲1が開示する層構造((1)キ、サ、ソ)を踏まえると、比較例2においても、第二のフィルムを備えると理解できる。
エ そうすると、甲1((1)キ、ケ、サ、シ、ス、セ、ソ)には、特に比較例2に着目すると、次の発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されている。
「第一のフィルムはO-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2の構造であり、
外層O-1、O-2はHDPEグレードR4806HT(20%厚)であり、
コア層C1はOPE795(17%厚)であり、
コア層C2はOPE795(31%厚)であり、
コア層C3はOPE795(17%厚)であり、
ブロック層B1は80重量% OPE795 + 20重量% Queo 8201(15%厚)であり、
第一のフィルムは5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行い、
外層O-1、O-2の厚さは、ブロック層B1より薄く、
第二のフィルムは、少なくともシール層を含む、
積層フィルム。」
(4)対比
本件発明1と甲1B発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
ア 甲1B発明の「HDPEグレードR4806HT」は、(1)クによると、密度が948kg/m3(0.948g/cm3)の高密度ポリエチレンであることから、甲1B発明の「O-1」層及び「O-2」層は、本件発明1の「密度が0.945g/cm3以上の高密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
イ 甲1B発明の「OPE795」は、(1)ケによると、密度が931kg/m3(0.931g/cm3)の線状(直鎖状)低密度ポリエチレンである。そうすると、甲1B発明の「OPE795」の密度は、本件発明1の「中密度」のポリエチレンの密度範囲(0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満)に含まれることから、甲1B発明の「OPE795」と本件発明1の「中密度ポリエチレン」は、ポリエチレンの密度範囲の点で一致する。
そして、甲1B発明の「C1」層、「C2」層及び「C3」層と、本件発明1の「密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満の中密度ポリエチレン(但し、密度が0.926~0.950g/cm3の双峰性エチレン/1-ブテン/C6~C12-α-オレフィンターポリマー、および密度が0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)を除く)を含む層」は、中密度ポリエチレンを含む層という点で一致する。
ウ 甲1B発明の「Queo 8201」は、甲1の(1)コによると、密度0.882g/cm3の単峰性のエチレン系オクテンプラストマーである。
本件特許明細書の段落【0139】には、実施例1-1の超低密度ポリエチレンとして、「Dowchemical社製、商品名:Affinity EG8100G」を用いることが記載されている。また、甲3には、「AFFINITYTM EG 8100G」はポリオレフィンプラストマーであることが記載されている。すなわち、本件特許明細書の実施例1-1では、ポリオレフィン「プラストマー」を「ポリエチレン」として採用していることから、甲1B発明におけるエチレン系のオクテンプラストマーは、本件発明1の「ポリエチレン」に相当するものである。
また、甲1B発明の「B1」層は、「80重量% OPE795 + 20重量% Queo 8201」で構成されていることから、その密度を計算すると(0.931g/cm3×0.8 + 0.882g/cm3×0.2 =)0.921g/cm3となり、その密度は、本件発明1における「低密度ポリエチレン」の密度範囲(0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満)に含まれる。
したがって、甲1B発明の「B1」層は、本件発明1の「密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレンを含む層、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層」に相当する。
エ 甲1B発明は、「O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2」の構造をしており、この順に積層されていることから、甲1B発明の「第一のフィルム」は、本件発明1の「高密度ポリエチレンを含む層」、「中密度ポリエチレンを含む層」、「「低密度ポリエチレンを含む層」、「直鎖状低密度ポリエチレンを含む層」または「超低密度ポリエチレンを含む層」」、「中密度ポリエチレンを含む層」、「高密度ポリエチレンを含む層」を「この順に備える」態様といえる。
オ 甲1B発明における「5層Alpine共押出ライン上に押出し、アウグスブルク/ドイツのHosokawa Alpine AG製の一軸延伸装置を用いて延伸を行う」「第一のフィルム」は、本件発明1の「五層共押延伸フィルム」と「共押延伸フィルム」である限りで一致する。
カ 甲1B発明における「第一のフィルム」及び「シール層を含む」「第二のフィルム」」は、本件発明1の「多層基材」及び「ヒートシール層」に相当する。
そして、甲1B発明の「第一のフィルム」及び「シール層を含む」「第二のフィルム」が積層体をなすことは明らかであり、甲1B発明は、本件発明1の「多層基材とヒートシール層とを少なくとも備える積層体」の態様を有している。
キ 甲1は、積層フィルムはポリエチレンしか含まない(実質的にポリエチレン以外を含まない)態様を主題としているところ((1)イ、ソ参照)、甲1B発明のポリエチレンの含有量は、略100%といえるものであり、かかる態様は、本件発明1の「全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「 多層基材とヒートシール層とを少なくとも備える積層体に用いる多層基材であって、
前記積層体は全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であり、
前記積層体に用いる多層基材は、
密度が0.945g/cm3以上の高密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満の中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の低密度ポリエチレンを含む層、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満の直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または密度が0.900g/cm3未満の超低密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満の中密度ポリエチレンを含む層と、
密度が0.945g/cm3以上の高密度ポリエチレンを含む層と、
をこの順に備える共押延伸フィルムからなる、
全体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上である積層体用の多層基材。」
[相違点1B(1)]
多層基材に関し、本件発明1は「五層共押延伸フィルム」からなるのに対し、甲1B発明では、第一のフィルムが「O-1/C1/C2/C3/B1/B1/C3/C2/C1/O-2」の構造からなる共押延伸フィルムである点。
[相違点1B(2)]
中密度ポリエチレンに関し、本件発明1の層は、密度が0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4)を除いたものであるのに対して、甲1B発明の「C1」層、「C2」層及び「C3」層は、OPE795(0.931g/cm3の線状低密度ポリエチレン(C2/C4))からなるものである点。
[相違点1B(3)]
本件発明1は、「高密度ポリエチレンを含む層の厚さは、前記低密度ポリエチレンを含む層、前記直鎖状低密度ポリエチレンを含む層または前記超低密度ポリエチレンを含む層の厚さと同じか、それより厚い」のに対し、甲1B発明は、「前記外層O-1、O-2の厚さは、前記ブロック層B1より薄」い点。
(5)判断
ア 相違点1B(1)について
甲1((1)エ)には、O-1/C/C/C/O-2構造のフィルムにおいて、3つのコア層(C層)は同じであるので、製造されたフィルムは、実質的にO-1/C/O-2構造のフィルムである点が記載されている。つまり、「C/C/C」構造の3層は、実質的に「C」の1層といえる。
また、甲1((1)オ)には、2つの五層共押出しフィルム(O/C/C/C/B)を積層することでO-1/C/C/C/B/B/C/C/C/O-2構造とすることが記載されている。ここで、「C/C/C」構造は実質的に「C」の1層といえ、同様に「B/B」構造も実質的に「B」の1層といえるから、O-1/C/C/C/B/B/C/C/C/O-2構造は、実質的にO-1/C/B/C/O-2構造といえる。
すると、甲1B発明における「第一のフィルム」は、本件発明1における「五層共押延伸フィルム」に相当するものであり、相違点1B(1)は実質的な相違点ではない。
なお、「C/C/C」構造の3層を実質的に「C」の1層ということや「B/B」構造の2層を実質的に「B」の1層ということができなかったとしても、同一の樹脂からなる層を1層にまとめる点に困難性や不自然さは認められないから、甲1B発明において、それぞれ同一の樹脂である「C/C/C」構造のコア層や「B/B」構造のブロック層を、1つのコア層「C」や1つのブロック層「B」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
イ 相違点1B(2)について
甲1((1)セ)には、比較例2の第一のフィルムの引張弾性率、相対引裂抵抗及び光学特性が示されている。
また、甲1の従来技術には、比較例2に相当する全PE積層構造のMDOフィルムについて開示されており((1)ウ参照)、MDOフィルムのコア層に用いるポリエチレンの一例として、0.931g/cm3のOPE795が示されているに留まることから、比較例2において、コア層にOPE795を用いることは必須でないといえる。
ここで、多層基材において、所望の物性を得るために、多層基材のコア層を構成するポリエチレンの種類を適宜選択することは周知技術である(例えば、甲6の第22ページの表1、第24ページの表2、第26ページ第1行には、層構造がABCCBAからなる多層のフィルムにおいて、B層として、実施例1(CE1)ではOPE795を選択し、実施例2(CE2)ではFX1001を選択し、実施例3(CE3)ではOPE797(密度935kg/m3)を選択し、各実施例のフィルムの物性を比較している点が記載されている。)。
そうすると、甲1B発明において、特定の用途で比較例2の第一のフィルムの特性では不十分である場合など、第一のフィルムの所望の特性を得るべく、「C1」層、「C2」層及び「C3」層に用いる中密度ポリエチレンとして、OPE795に換えて、OPE795と同程度の密度の他の中密度ポリエチレン(例えば、OPE797)を用いることは、均等物による置換にすぎないから、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 相違点1B(3)について
甲1((1)カ)には、外層及びブロック層として採用しうる厚さの範囲について記載されており、外層をブロック層よりも厚くする態様、又は、その逆も示されている。
また、ポリエチレン層のみからなるフィルムについて、強度や耐熱性が不足することは自明な課題であり、高密度ポリエチレンが低密度ポリエチレンより強度や耐熱性が高いことは技術常識である(例えば、引用文献1((2)ア)参照)ことに照らしても、甲1B発明において、特に強度を司る外層O-1、O-2の厚さは、用途に応じて当業者が適宜選択するものである。
以上を踏まえると、甲1B発明において、外層及びブロック層の厚さの関係は、当業者が適宜最適化又は好適化するものであるから、甲1B発明において、外層O-1、O-2の厚さを、ブロック層B1の厚さと同じか、それより厚くすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
なお、外層及びブロック層の厚さが適宜決定し得るとの判断は、相違点1B(3)の訂正の根拠とされる本件特許明細書の【0031】においても、高密度ポリエチレン層の厚さと多層基材中間層との厚さの比は、多層基材中間層の方が厚い対応を含め様々取り得ることが記載されていることとも整合する。
したがって、本件発明1は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)及び技術常識(引用文献1)に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
2 本件発明2~4について
前記(3)イのとおり、外層は2.5μm、ブロック層は3.8μmである。また、甲1B発明におけるコア層の厚さについても計算すると((1)シ、セ参照)、コア層は(25μm×(17%+31%+17%)/2=)8.1μmである。
そうすると、甲1B発明において、外層、コア層及びブロック層は、本件発明2~4で特定される厚さの範囲に含まれる。
したがって、本件発明2~4は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)及び技術常識(引用文献1)に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
3 本件発明5について
甲1B発明は、「第一のフィルム」及び「シール層を含む」「第二のフィルム」が積層体をなすものである。
したがって、本件発明5は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)及び技術常識(引用文献1)に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
4 本件発明6~7について
甲1((1)キ)には、第一のフィルムと第二のフィルムの間に接着剤層を設けることが記載されている。
甲4には、包装材料が基材層とシーラント層の間に、接着剤層とバリア層を備えること(【要約】参照)、接着剤層として主骨格がポリエステル系で、イソシアネート化合物(B)とリン酸変性化合物(C)を含有すること(段落【0032】参照)、バリア層はアルミニウム蒸着膜を用いること(段落【0033】参照)が記載されている。
甲1B発明はスタンドアップパウチ等の包装材料に用いるものであり((1)ア参照)、包装材料において、バリア性は通常求められる性能であることを踏まえると、甲1B発明において、甲4に記載された事項のように、第一のフィルムと第二のフィルム(シール層)の間に、バリア層を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、甲1B発明において、第一のフィルムと第二のフィルム(シール層)の間に用いる接着剤として、甲4に記載された化合物を有する接着剤を用いるようにすることは、公知材料の中からの最適材料の選択にすぎないから、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明6~7は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)、技術常識(引用文献1)及び甲4記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
5 本件発明8~10について
甲5には、自立性袋状の容器において、透明プラスチック基材10、ヒートシール層50の間にガスバリア性積層フィルム40を積層すること(【要約】参照)、ガスバリア性積層フィルム40に用いる基材フィルム層として、ポリエチレン系樹脂からなる延伸したフィルムを使用すること(段落【0039】~【0041】参照)が記載されている。
甲1B発明において、包装容器の強度やバリア性を高めるために、甲5に記載された事項のようにポリエチレン系樹脂からなる延伸フィルムを、第一のフィルムと第二のフィルム(シール層)の間に設けるようにすることは、技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用にすぎないから、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明8~10は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)、技術常識(引用文献1)、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
6 本件発明11~15について
甲1((1)イ)には、積層フィルムはポリエチレンしか含まない点が記載されている。
また、甲1B発明((1)ア)は、スタンドアップパウチ等の包装材料に用いるものである。
そして、甲1((1)ソ)には、第二のフィルムの厚さを50~100μmとすることが記載されており、第二のフィルムの一部であるシート層の厚さの数値範囲についても、当業者が最適化又は好適化し得るものである。
したがって、本件発明11~15は、甲1B発明、周知技術(甲6記載事項)、技術常識(引用文献1)、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700357