特許異議申立
2020-700026
冷凍サイクル装置
- 審判番号
- 2020-700026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-163601
- 登録番号
- 特許第6545337号(P6545337)
- 請求日
- 2020年01月16日
- 審決日
- 2020年12月24日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】松岡 直之
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 林 茂樹
- 審判官 後藤 健志
- 分類
- P1651.121-YAA(F25B) / P1651.537-YAA(F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6545337号発明「冷凍サイクル装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6545337号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6545337号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6545337号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成30年8月31日に出願され、令和1年6月28日にその特許権の設定登録がされ、令和1年7月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年1月16日に特許異議申立人松岡直之(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年5月8日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年7月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和2年9月8日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和2年7月13日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
請求項1に係る「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下であり、」を「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下であり、」に訂正する。
(2)訂正事項2
発明の詳細な説明の段落【0016】の「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下であり、」という記載を「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下であり、」に訂正する。
(3)一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-5〕について請求されたものである。
2 補正の適否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正後の請求項1に係る「且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下」という事項は、冷凍機油の特性に関する事項であるので、訂正前の請求項1「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下であり、」を訂正後に「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下であり、」に変更する訂正事項1に係る訂正は、冷凍機油の特性に関する事項をさらに加えて限定するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
明細書の発明の詳細な説明の段落【0127】に「続いて、冷凍機油と金属触媒を入れたガラス容器を、100Pa以下に減圧して真空引きした後、12gの冷媒を導入して密閉した。そして、このガラス容器を、オートクレーブを用いて、175℃ で504 時間にわたって加熱した。加熱後にガラス容器を開封し、冷凍機油の全酸価と、冷凍機油中のフッ素量を測定した。」と記載され、また、段落【0129】(表1)に、全酸価が0.12mgKOH/g以下である、「試料1-1」、「試料1-3」、「試料1-5」、「試料1-7」が記載されているので、訂正事項1に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1において検討したのと同様に、訂正事項2に係る訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下「本件発明1ないし5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒は、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及びトリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒であり、地球温暖化係数が750以下、且つ、25℃における蒸気圧が1.1MPa以上1.8MPa以下であり、
前記圧縮機は、密閉容器内に、圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動するモータと、を備え、且つ、摺動部を潤滑する冷凍機油が充填されている密閉型電動圧縮機であり、
前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下であり、
前記ポリオールエステル油は、下記化学式(1)で表される化合物、又は、下記化学式(2)で表される化合物、又は、これらの混合物[但し、化学式(1)及び(2)中、R1 は、炭素数4~9のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
である冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記混合冷媒は、ジフルオロメタンが20重量%以上60重量%以下、ペンタフルオロエタンが5重量%以上25重量%以下、且つ、トリフルオロヨードメタンが30重量%以上60重量%以下である冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記冷凍機油は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物を各々0.1重量%以上2.0重量%以下含むことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置において、
前記脂環式エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項3に記載の冷凍サイクル装置において、
前記脂肪族エポキシ化合物は、アルキルグリシジルエステルである冷凍サイクル装置。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、当審が令和2年5月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりであり、これは特許異議申立書に記載された特許異議申立理由と同じである。
(1)(進歩性)請求項1ないし5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)(サポート要件)請求項3に係る特許は、特許請求の範囲の請求項3の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
<甲号証一覧>
甲第1号証:国際公開第2018/022888(訳文として、特表2019-527285号公報参照。)
甲第2号証:特開2017-57278号公報
甲第3号証:特開2014-105984号公報
甲第4号証:国際公開第2018/021533
甲第5号証:特開2002-129177号公報
甲第6号証:特開2010-139171号公報
以下、甲第1号証を甲1のように略記する。
2 甲号証の記載等
(1)甲1の記載及び甲1発明
甲1には、以下の記載がある。なお、()内は、訳文としての特表2019-527285号公報における該当箇所の記載を示す。(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審にて付した。以下同じ。)。
「The present invention relates to compositions, methods and systems having utility in heat exchange systems, including air conditioning and refrigeration applications and in particular aspects to compositions useful in heat transfer systems of the type in which the refrigerant R-41OA would have been used, that is as a replacement of the refrigerant R-41 OA for heating and cooling applications and to retrofitting heat exchange systems, including systems designed for use with R-41OA.」(1頁11行~16行)
(【0002】
本発明は、空調及び冷凍用途を含む熱交換システムにおいて有益性を有する組成物、方法、及びシステムに関し、特定の態様では、冷媒R-410Aが使用されたであろう種類の熱伝達システムにおいて加熱及び冷却用途のための冷媒R-410Aの代替品として有用な組成物、並びにR-410Aとの使用のために設計されたシステムを含む熱交換システムの追加導入に関する。)
「The heat transfer compositions of the invention may include other components for the purpose of enhancing or providing certain functionality to the compositions. Such other components or additives may include one or more of lubricants, dyes, solubilizing agents, compatibilizers, stabilizers, antioxidants, corrosion inhibitors, extreme pressure additives and anti wear additives.」(28頁19行~23行)
(【0092】
本発明の熱伝達組成物は、ある特定の機能性を増強させるか、又はそれを組成物に提供する目的で他の成分を含んでもよい。かかる他の成分又は添加剤には、潤滑剤、染料、可溶化剤、相溶化剤、安定化剤、抗酸化剤、腐食抑制剤、極圧添加剤、及び耐摩耗剤のうちの1つ以上が含まれ得る。)
「A preferred heat transfer composition further comprises a refrigerant according to any one of the refrigerants described here, but preferably those refrigerants consisting essentially of a blend of the following three compounds, with the following percentages being based on the total weight of the following three compounds: from about 48% by weight to about 51 % by weight difluoromethane (HFC-32), from about 9.5% by weight to about 11.5% by weight pentafluoroethane (HFC-125), and from about 36.5% by weight to about 40.5% by weight trifluoroiodomethane (CF3I) and from 10 to 60 wt.% of a polyol ester (POE) lubricant, based on the weight of the heat transfer composition.」(133頁19行~26行)
(【0336】
好ましい本発明の熱伝達組成物は更に、ここに記載される冷媒のうちのいずれか1つによる冷媒であるが、好ましくは、以下の3種の化合物のブレンドから本質的になる冷媒であって、以下の3種の化合物の総重量に基づく以下のパーセンテージで、約48重量%~約51重量%のジフルオロメタン(HFC-32)、約9.5重量%~約11.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)、及び約36.5重量%~約40.5重量%のトリフルオロヨードメタン(CF3I)から本質的になる冷媒と、熱伝達組成物の重量に基づいて10~60重量%のポリオールエステル(POE)潤滑剤と、を含む。)
「・・・In a particularly preferred feature of the invention, the composition of the invention has a Global Warming Potential (GWP) of not greater than about 750. 」(197頁11行~12行)
(【0542】
・・・本発明の特に好ましい特徴では、本発明の組成物は、約750以下の地球温暖化係数(GWP)を有する。)
「For the purposes of this invention, each and any of the heat transfer compositions as described herein can be used in a heat transfer system, such as an air conditioning system, a refrigeration system or a heat pump. The heat transfer system according to the present invention can comprise a compressor, an evaporator, a condenser and an expansion device, in communication with each other.
Examples of commonly used compressors, for the purposes of this invention include reciprocating, rotary (including rolling piston and rotary vane), scroll, screw, and centrifugal compressors. ・・・
Examples of commonly used expansion devices, for the purposes of this invention include a capillary tube, a fixed orifice, a thermal expansion valve and an electronic expansion valve. 」(197頁25行~198頁8行)
(【0547】
本発明の目的では、本明細書に記載される熱伝達組成物は各々いずれも、空調システム、冷凍システム、又はヒートポンプなどの熱伝達システムにおいて使用され得る。本発明による熱伝達システムには、互いに接続した圧縮機、蒸発器、凝縮器、及び拡張デバイスが含まれ得る。
【0548】
一般的に使用される圧縮機の例としては、本発明の目的では、往復動式、回転式(ローリングピストン及び回転弁を含む)、スクロール式、ねじ式、及び遠心式圧縮機が挙げられる。
・・・
【0549】
一般的に使用される拡張デバイスの例としては、本発明の目的では、キャピラリーチューブ、固定オリフィス、温度膨張弁、及び電子膨張弁が挙げられる。)
「Example 7 - Stabilizers for Refrigerant/Lubricant Thermal Stability Example
Description:
The use of additives such as stabilizers ensures that the composition of the refrigerant and lubricant are effectively unchanged through the normal operation of the equipment to which it is charged. Refrigerants and lubricants are typically tested against ASHRAE Standard 97 - "Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems" to simulate accelerated aging. After testing, the level of halides is used to judge refrigerant stability and the total acid number (TAN) is used to judge lubricant stability. In addition, the lubricant should be clear and colorless, the metals should be shiny (unchanged), and there should be no solids present.
The following experiment is carried out to show the effect of the addition of a stabilizer on a refrigerant/lubricant composition.
Sealed Tube Test Conditions:
1. Sealed tubes contain 50% refrigerant and 50% lubricant by weight 2. Refrigerant is as set out in table 9 below
3. Lubricant is an ISO 68 POE
4. Refrigerant and Lubricant have been degassed
5. Refrigerant contains <10 ppm moisture
6. Lubricant contains <30 ppm moisture
7. Sealed tubes contain coupons of steel, copper and aluminum
8. Sealed tubes are placed in oven at 175 °C for 14 days Table 9 -
Table 9 - Composition of refrigerant
Table 10. Summary of desired outcome of experiment
The aim of the experiment is to obtain the following results:
」(280頁10行~281頁9行)
(【0780】
実施例7.冷媒/潤滑剤用の安定化剤の熱安定性の例
説明:
安定化剤などの添加剤の使用は、冷媒及び潤滑剤の組成物が、それが充填される器具の通常動作を通して事実上変わらないことを確実にする。冷媒及び潤滑剤は典型的には、加速劣化をシミュレーションするために、ASHRAE標準97-「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に対して試験される。試験後、ハロゲン化物のレベルを使用して冷媒安定性を判断し、全酸価(total acid number、TAN)を使用して潤滑剤の安定性を判断する。更に、潤滑剤は無色透明であるべきであり、金属は光沢を有する(変わっていない)べきであり、かつ固体は存在しないべきである。
【0781】
冷媒/潤滑剤組成物への安定化剤の添加の効果を示すために、以下の実験を行った。
【0782】
封管試験条件:
1.封管は、50重量%の冷媒及び50重量%の潤滑剤を含有する
2.冷媒は、以下の表9に記載される通りである
3.潤滑剤は、ISO 68 POEである
4.冷媒及び潤滑剤は脱気されている
5.冷媒は、<10ppmの水分を含有する
6.潤滑剤は、<30ppmの水分を含有する
7.封管は、鋼鉄、銅、及びアルミニウムのクーポンを含有する
8.封管を175℃のオーブンに14日間置く
【0783】
【表9】
【0784】
【表10】
」
以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「熱伝達組成物が使用される圧縮機、蒸発器、凝縮器、及び拡張デバイス(例えば、キャピラリーチューブ、固定オリフィス、温度膨張弁、及び電子膨張弁)が含まれる、空調システム、冷凍システムなどの熱伝達システムであって、
熱伝達組成物は、
約48重量%~約51重量%のジフルオロメタン(HFC-32)、約9.5重量%~約11.5重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)、及び約36.5重量%~約40.5重量%のトリフルオロヨードメタン(CF3I)から本質的になる冷媒と、
熱伝達組成物の重量に基づいて10~60重量%のポリオールエステル(POE)潤滑剤と、を含み、
約750以下の地球温暖化係数(GWP)を有する
熱伝達システム。」
(2)甲2~甲6の記載
ア.甲2には、以下の記載がある。
「【0024】
ポリオールエステルは、4価以上のアルコールと、飽和脂肪族モノカルボン酸とのエステルが挙げられ、4~6価のアルコールと、飽和脂肪族モノカルボン酸とのエステルが好ましい。
具体的には、以下の式(4)又は(5)で示される化合物が挙げられる。
【化4】
式(4)において、・・・R11~R14は直鎖又は分岐の炭素数2~20のアルキル基であり、・・・R11~R14の炭素数が3~8であることがさらに好ましい。
・・・R10は、ヒンダードアルコールから水酸基を除いた基であることがより好ましく、ペンタエリスリトールから水酸基を除いた基がさらに好ましい。
【0025】
【化5】
式(5)において、・・・R15~R17、及びR20~R22は、直鎖又は分岐の炭素数2~20のアルキル基であり、・・・R15~R17、及びR20~R22の炭素数が3~8であることがより好ましい。
・・・また、R18、R19の好適な具体例としては、ヒンダードアルコールから水酸基を除いた基であることが好ましく、ペンタエリスリトールから水酸基を除いた基がより好ましい。」
「【0079】
[飽和フッ化炭化水素化合物]
・・・具体的なメタン又はエタンのフッ化物としては、トリフルオロメタン(R23)、ジフルオロメタン(R32)、・・・、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)が挙げられる。
また、飽和フッ化炭化水素化合物としては、上記アルカンのフッ化物を、さらにフッ素以外のハロゲン原子でハロゲン化したものであっても良く、例えば、トリフルオロヨードメタン(CF3I)などが例示できる。
これらの飽和フッ化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、2種以上組み合わせて用いる場合の例として、・・・。具体的には、ジフルオロメタン(R32)と1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)の混合冷媒であるR410A、ジフルオロメタン(R32)と1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)の混合冷媒であるR407C等が挙げられる。」
「【0082】
[圧縮型冷凍機]
上記冷凍機油は、通常、圧縮型冷凍機に使用されるものである。圧縮型冷凍機は、少なくとも圧縮機を備える。また、圧縮型冷凍機は、圧縮機内部にモーターが内蔵されている密閉型冷凍機が好ましい。」
イ.甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、膨張手段、室内熱交換器を配管で接続し、冷媒が循環する空気調和機において、
前記冷媒はR32であり、冷凍機油としてポリオールエステル油を用い、
前記圧縮機と、前記室外熱交換器と、ゼオライトを原料としたドライヤと、前記圧縮機と前記室外熱交換器を仕切る仕切板と、を有する室外機を備え、
前記ドライヤを前記室内熱交換器と前記膨張手段の間に接続し、且つ、前記仕切板の前記室外熱交換器側に配置した空気調和機。
・・・
【請求項5】
前記ポリオールエステル油は式(1)、(2)、(3)、または(4)の単独または混合である(式中のR1は炭素数4~5のアルキル基又は炭素数8~12のアルキル基であり、式中のR1の少なくとも1つは炭素数4~5のアルキル基である)ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和機。
・・・
【化3】
【化4】
」
「【0017】
R32を用いた空気調和機にはR32との相溶性に優れ、かつ電気的特性、潤滑性、熱化学安定性の良好な冷凍機油として、エステル油が挙げられるが、エステル油は構造上水分が多く存在すると加水分解を起こし、エステル成分が分解する。本実施例では、この対応として冷凍サイクル内にゼオライト等を原料としたドライヤ5を取り付けて、冷凍サイクル内の水分を除去している。」
「【0034】
本実施例では、前記した冷凍機油に潤滑性向上剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、消泡剤、金属不活性剤等を添加しても全く問題はない。特にポリオールエステル油は、水分共存下で加水分解に起因する劣化が生じるため、酸化防止剤、酸捕捉剤の配合は必須である。酸化防止剤としてはフェノール系である2、6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(DBPC)が好ましい。酸捕捉剤としては、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等がある。」
ウ.甲4には、以下の記載がある。
「[0103]冷凍機油が式(A)で表される化合物及びエポキシ化合物の両方を含有する場合、当該冷凍機油は、例えば酸性リン酸エステル及びエポキシ化合物を含有する従来の冷凍機油に比べて、耐摩耗性のみならず、安定性にも優れる。エポキシ化合物は、耐摩耗性及び安定性の両立の観点から、好ましくは、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、グリシジルエーテル型エポキシ化合物及びグリシジルエステル型エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である。
[0104]エポキシ化合物の含有量は、安定性の向上の観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。エポキシ化合物の含有量は、潤滑性の向上の観点から、冷凍機油全量基準で、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。」
「[0114]本実施形態に係る冷凍機油は、冷媒と共に用いられる。冷媒としては、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒、・・・3フッ化ヨウ化メタン冷媒、・・・並びに、これらの冷媒の1種又は2種以上を含む混合冷媒が例示される。
[0115]飽和フッ化炭化水素冷媒としては、好ましくは炭素数1,3、より好ましくは1,2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、ジフルオロメタン(R32)、トリフルオロメタン(R23)、ペンタフルオロエタン(R125)、・・・又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。」
エ.甲5には、以下の記載がある。
「【0035】また、本発明のジフルオロメタン冷媒用冷凍機油においては、下記(i)~(viii):
・・・
からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を配合することができる。これらのエポキシ化合物を用いると、冷凍機油の熱・加水分解安定性が向上するとともに、ジフルオロメタン冷媒存在下でのより高い潤滑性が得られる傾向にある。」
「【0044】このような脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、・・・等が例示できる。」
オ.甲6には、以下の記載がある。
「【請求項1】
冷凍機油を貯溜する密閉容器内に回転子と固定子とを有するモータと、
前記回転子に嵌着された回転軸と、
この回転軸を介して前記モータに連結された圧縮部とを収納する冷媒圧縮機において、
この冷媒圧縮機に封入される冷媒がR410A,R407CまたはR404Aであり、
ポリオールエステル油を基油とし、酸捕捉剤としてアルキルグリシジルエステル化合物を含有する冷凍機油
を用いた冷媒圧縮機。」
3 当審の判断
3-1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「熱伝達組成物」、「圧縮機」、「凝縮器」、「拡張デバイス(例えば、キャピラリーチューブ、固定オリフィス、温度膨張弁、及び電子膨張弁)」、「蒸発器」、「熱伝達システム」、「ポリオールエステル(POE)潤滑剤」は、それぞれ、本件発明1の「冷媒」、「圧縮機」、「凝縮器」、「減圧器」、「蒸発器」、「冷凍サイクル装置」、「ポリオールエステル油」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記冷媒は、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及びトリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒であり、地球温暖化係数が750以下であり、
前記冷凍機油は、ポリオールエステル油である冷凍サイクル装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
冷媒について、本件発明1は、「25℃における蒸気圧が1.1MPa以上1.8MPa以下」であるのに対し、甲1発明は、蒸気圧が特定されていない点。
[相違点2]
圧縮機が、本件発明1は、「密閉容器内に、圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動するモータと、を備え、且つ、摺動部を潤滑する冷凍機油が充填されている密閉型電動圧縮機」であるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
[相違点3]
冷凍機油について、本件発明1は、ポリオールエステル油であって、「水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下」であり、「下記化学式(1)で表される化合物、又は、下記化学式(2)で表される化合物、又は、これらの混合物」(化学式の記載は省略する。)であるのに対し、甲1発明は、ポリオールエステル(POE)潤滑剤であるものの、水分量、全酸価及び化学式が本件発明1のように特定されていない点。
イ 判断
事案の関係上、まず上記相違点3について以下検討する。
本件発明1のポリオールエステル油は、相違点3で特定されているように水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価(劣化の度合い)が0.12mgKOH/g以下であるのに対して、甲1発明のポリオールエステル(POE)潤滑剤は、水分量が30ppm以下、混合冷媒(甲1の【0783】参照。)と共に175°Cのオーブンで14日間(336時間)加熱したときのTAN(全酸価)が3.0mgKOH/g以下(甲1の【0782】、【0784】参照。)である。
そして、混合冷媒のトリフルオロヨードメタンが水分や酸素と反応して分解されることで生成されるフッ化水素、ヨウ化水素等の劣化物質が原因で冷凍機油が劣化し、冷凍サイクル装置の性能が低下するという課題を解決するために、本件発明1のポリオールエステル油は、甲1発明のポリオールエステル(POE)潤滑剤と比較して、多くの水分量を含みトリフルオロヨードメタンが多くの劣化物質を生成したとしても、全酸価が非常に小さい(劣化の度合いが小さい)ので、冷凍サイクル装置の性能を低下させる恐れがないものである。
これに対して、甲1発明のポリオールエステル(POE)潤滑剤は、水分量が30ppm以下で、全酸価が3.0mgKOH/g以下と限定されたものであるが、甲1に、ポリオールエステル(POE)潤滑剤に含まれる水分量に応じてトリフルオロヨードメタンが劣化物質を生成し、その劣化物質がポリオールエステル(POE)潤滑剤を劣化させるという記載や示唆もなく、また、周知な事項ともいえない。そうすると、甲1発明の全酸価が175°Cのオーブンで14日間(336時間)加熱したときに3.0mgKOH/g以下という限定を、本件発明1のごとく175℃で504時間加熱したときに0.12mgKOH/g以下まで小さくする動機は存在しないといえる。
以上から、甲1発明のポリオールエステル(POE)潤滑剤のTAN(全酸価)を本件発明1の如く175℃で504時間加熱したときに0.12mgKOH/g以下とすることは、たとえ当業者といえども容易になしうることではない。
したがって、本件発明1は、他の相違点1,2について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2、甲3に示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2と甲1発明を対比すると、本件発明2は本件発明1を引用しているので、両者の一致点は、本件発明1との一致点に加えて、
「前記混合冷媒は、ジフルオロメタンが20重量%以上60重量%以下、ペンタフルオロエタンが5重量%以上25重量%以下、且つ、トリフルオロヨードメタンが30重量%以上60重量%以下である」点で一致し、
上記相違点1ないし3で相違する。
上記相違点3についての判断は、(1)で検討したとおりである。
よって、本件発明1と同様に、他の相違点1,2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2、甲3に示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
本件発明3と甲1発明を対比すると、本件発明3は本件発明1を引用しているので、両者の一致点は、本件発明1との一致点と同様の一致点で一致し、上記相違点1ないし3に加えて、以下の点で相違する。
[相違点4]
本件発明3の冷凍機油は、「脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物を各々0.1重量%以上2.0重量%以下含む」のに対し、甲1発明のポリオールエステル(POE)潤滑剤は、当該化合物を含むものではない点。
上記相違点3についての判断は、上記相違点3についての判断は、(1)で検討したとおりである。
よって、本件発明1と同様に、他の相違点1,2,4について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲2、甲3に示された周知技術、及び甲4に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4について
本件発明4と甲1発明を対比すると、本件発明4は本件発明3を引用しているので、両者の一致点は、本件発明3との一致点と同様の一致点で一致し、上記相違点1ないし4に加えて、以下の点で相違する。
[相違点5]
本件発明4の脂環式エポキシ化合物は、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである」のに対し、甲1発明は、当該化合物を含むものではない点。
上記相違点3についての判断は、上記相違点3についての判断は、(1)で検討したとおりである。
よって、他の相違点1,2,4,5について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲2、甲3に示された周知技術、及び甲4、甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明5について
本件発明5と甲1発明を対比すると、本件発明5は本件発明3を引用しているので、両者の一致点は、本件発明3との一致点と同様の一致点で一致し、上記相違点1ないし4に加えて、以下の点で相違する。
[相違点6]
本件発明4の脂環式エポキシ化合物は、「アルキルグリシジルエステルである」のに対し、甲1発明は、当該化合物を含むものではない点。
上記相違点3についての判断は、上記相違点3についての判断は、(1)で検討したとおりである。
よって、他の相違点1,2,4,6について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明及び甲2、甲3に示された周知技術、及び甲4、甲6に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)まとめ
以上のことから、本件発明1ないし5は、甲1発明、甲2及び3に示された周知技術、及び甲4ないし6に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3-2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)本件発明3について
請求項3には、「冷凍機油は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物を各々0.1重量%以上2.0重量%以下含む」との技術事項が特定されている。
一方、発明の詳細な説明には、「脂環式エポキシ化合物は、ポリオールエステル油に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。」(【0101】)と記載され、さらに、「酸捕捉剤としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物等を用いることができる。」(【0104】)、「酸捕捉剤は、ポリオールエステル油に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。」(【0113】)と記載されているのであるから、請求項3に特定された「脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物を各々0.1重量%以上2.0重量%以下含む」ことは、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2)まとめ
以上のことから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載したものである。
4 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和2年9月8日提出の意見書の「(4)理由3について」において、訂正の請求により追加された「前記冷凍機油は、ポリオールエステル油であって、水分量が300重量ppm以下、且つ、前記混合冷媒と共に175℃で504時間加熱したときの全酸価が0.12mgKOH/g以下であり、」なる事項に関して、概ね以下の旨主張している。
(1)本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0126】、【0127】)に記載された全酸価の測定方法では、ガラス容器の容積が記載されていないので、全酸価が確定できない。したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0129】)に記載された【表1】において、全酸価が0.12mgKOH/g以下の場合、金属触媒の変色がないことが示されているが、それらは油中水分量が全て100ppmの場合であり、油中水分量が300ppmの場合の試験結果が示されていないので、訂正の請求により追加された事項は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
しかしながら、上記主張(1)については、特許異議申立人は上記意見書中で「ガラス容器は72mL以上で220mL未満のいずれかの容積という事になる。」と主張しているところ、その主張のとおり、そのおおよその容積は推測できるのである。さらに、「このような容積の違いは圧力として4倍の差となり、冷凍機油への冷媒の溶け込みは数%(220mL)~概ね60%(72mL)の違いになると予想され、試験結果への影響は甚大である。」と主張しているが、発明の詳細な説明の【0127】に、「続いて、冷凍機油と金属触媒を入れたガラス容器を、100Pa以下に減圧して真空引きした後、12gの冷媒を導入して密閉した。そして、このガラス容器を、オートクレーブを用いて、175℃で504時間にわたって加熱した。」と記載されていることから、ガラス容器は100Pa以下に減圧されており、容積の違いによって圧力が4倍の差になることはないと考えられる。たとえ、特許異議申立人が主張するように、容積の違いによって圧力が4倍の差になるとしても、ガラス容器は72mL以上で220mL未満のいずれかの容積であるのであるから、当業者であればガラス容器の容積を試行錯誤することで、本件発明を実施することができると考えるのが妥当であるので、特許異議申立人の上記主張(1)は理由がない。
また、主張(2)については、発明の詳細な説明の【0089】に、「冷凍機油に含まれる水分量が300重量ppm以下に低減されていると、水分とR13I1やポリオールエステル油との反応量が極めて小さくなるので、R13I1やポリオールエステル油の分解を大きく抑制することができる。その結果、R13I1の分解に伴う劣化物質の生成量も極めて微量になる。そのため、冷凍サイクル装置の運転中、混合冷媒自体の劣化や冷凍機油の劣化の進行を実質的に阻止することができる。冷凍機油の水分量は、より好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは150重量ppm以下、特に好ましくは100重量ppm以下である。」と記載されており、水分量が300重量ppm以下が好ましいことは記載されている。そして、【表1】の「試料1-1」と「試料1-2」を比較すると、水分量が100ppmと600ppmと異なることのみで、全酸価が0.06mgKOH/gと0.18mgKOH/gと異なるのであるから、この場合において水分量を300ppmの場合、全酸化価は0.12mgKOH/g以下になることは、当業者であれば予測できることであるので、特許異議申立人の上記主張(2)についても理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700026