特許異議申立
2024-700538
空気調和装置
- 審判番号
- 2024-700538
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-022083
- 登録番号
- 7398582
- 請求日
- 2024年06月05日
- 審決日
- 2025年06月09日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本キヤリア株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人東京国際特許事務所
- 【異議申立人】佐藤 浩子
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1651.537-YAA(F25B) / P1651.121-YAA(F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7398582号発明「空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7398582号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
特許第7398582号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
1.手続の経緯
特許第7398582号の請求項1ないし5の特許(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、令和5年2月16日に特許出願され、令和5年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年6月5日に特許異議申立人佐藤浩子(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、当該特許異議の申立てに対して令和6年7月16日に特許異議申立人より手続補正書が提出され、令和6年8月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和6年10月21日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、当該訂正の請求に対して令和6年12月5日に手続補正書が提出され、当該手続補正書に対してさらに令和7年1月20日に手続補正書が提出されたものである。
なお、令和7年1月20日に提出された手続補正書によって補正された令和6年12月5日に提出された手続補正書により補正された、令和6年10月21日に特許権者がした訂正の請求、及び令和6年10月21日に特許権者が提出した意見書に対し、特許異議申立人からの意見はなかった。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和7年1月20日に提出された手続補正書によって補正された令和6年12月5日に提出された手続補正書により補正された、令和6年10月21日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項3のとおりである(下線は、訂正箇所である。以下同様。)。
ア 訂正事項1
請求項1の「前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」と訂正する。請求項1を引用する請求項3ないし請求項5も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項2の「前記圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」と訂正する。請求項2を引用する請求項3ないし請求項5も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
明細書の段落0006の「前記圧縮機が複数台設置され、」を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」と訂正する。
明細書の段落0007の「前記圧縮機が複数台設置され、」を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1ないし訂正事項3について、一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。
ア 一群の請求項
訂正前の請求項1及び請求項3ないし請求項5について、請求項3ないし請求項5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して請求項3ないし請求項5が訂正されるものであるから、請求項1及び請求項3ないし請求項5は、一群の請求項である。
また、訂正前の請求項2ないし請求項5について、請求項3ないし請求項5は、いずれも請求項2を直接又は間接的に引用し、訂正事項2におyって訂正される請求項2に連動して請求項3ないし請求項5が訂正されるものであるから、請求項2ないし請求項5は、一群の請求項である。
そして、請求項1及び請求項3ないし請求項5からなる一群の請求項と、請求項2ないし請求項5からなる一群の請求項とは、請求項3ないし請求項5が共通するから、請求項1ないし請求項5は、一群の請求項となる。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
イ 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、請求項1に記載された「前記圧縮機が複数台設置され、」との発明特定事項を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める(下線部は当審が引いたものである。以下同様。)。
(イ)新規事項の有無
訂正事項1で訂正された「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」は、願書に添付した明細書の段落【0034】に記載されているといえる事項である。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「複数台設置され」る「圧縮機」について、(ア)で述べたとおりの発明特定事項を直列的に付加することで、請求項1の「圧縮機」を限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、請求項2に記載された「前記圧縮機が複数台設置され、」との発明特定事項を、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)新規事項の有無
訂正事項2で訂正された「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、」は、願書に添付した明細書の段落【0047】に記載されているといえる事項である。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「複数台設置され」る「圧縮機」について、(ア)で述べたとおりの発明特定事項を直列的に付加することで、請求項2の「圧縮機」を限定するものである。
そうすると、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の明細書の段落【0006】及び【0007】の「前記圧縮機が複数台設置され、」との記載について、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正に合わせて「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。
(イ)新規事項の有無
訂正事項3で訂正された段落【0006】の「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」及び【0007】の「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、」は、いずれも願書に添付した明細書の段落【0034】及び【0047】に記載されているといえる事項である。
そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3における段落【0006】の訂正は、請求項1の「圧縮機」に係る発明特定事項を限定する訂正事項1に合わせて段落【0006】の記載を訂正するものである。同様に、訂正事項3における段落【0007】の訂正は、請求項2の「圧縮機」に係る発明特定事項を限定する訂正事項2に合わせて段落【0007】の記載を訂正するものである。
そうすると、訂正事項3は、訂正事項1又は訂正事項2と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)特許請求の範囲との関連
訂正事項3に係る段落【0006】の訂正は、圧縮機の空調能力当たりの弁口径の設定について特定する訂正後の請求項1及び請求項3ないし請求項5に関係する。同様に、訂正事項3に係る段落【0007】の訂正は、圧縮機の空調能力当たりの流量係数Cvの設定について特定する訂正後の請求項2ないし請求項5に関係する。
そして、請求項1ないし請求項5の全てについて訂正の請求がされているから、訂正事項3は、明細書の訂正に係る全ての請求項に対象とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし5〕についての訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
訂正後の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、
前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、
これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの弁口径が(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWに設定されて構成されたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、
前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ、
これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの流量係数Cvが(0.105~0.21)/kWに設定されて構成されたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
複数台の前記圧縮機は、運転周波数が異なって設定されて運転周波数に差が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
複数台の前記圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管は、合流角度が90度以下に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記冷媒は、冷媒種としてのR32が30%未満含有される混合冷媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置。」
(2)取消理由通知の概要
訂正前の請求項1ないし請求項5に係る特許に対する取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
1 本件特許の請求項1~5に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)当審の判断
ア 取消理由に係る当審の判断
訂正後の請求項1は、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され」るものであって、互いに同容量の圧縮機が複数台設置される空気調和装置のみが請求項1に含まれるものとなった。同様に、訂正後の請求項2は、「前記圧縮機として、互いに同容量の圧縮機が複数台設置され」るものであって、互いに同容量の圧縮機が複数台設置される空気調和装置のみが請求項2含まれるものとなった。
そして、訂正後の請求項1及び請求項2は、複数の圧縮機が「互いに同容量の圧縮機」であって、いずれも等しい空調能力であることが特定されるものとなった。
したがって、訂正後の請求項1及び請求項2、並びに訂正後の請求項1又は請求項2を引用する訂正後の請求項3ないし請求項5は特許法第36条第1項に規定する要件を満たすものであるから、上記の取消理由は解消した。
イ 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由に係る当審の判断
本件特許について、特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の取消理由に基づき取り消されるべきである旨主張している。そこで、特許異議申立人の主張について検討する。
(ア)明確性に係る特許異議申立理由
あ 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、訂正前の請求項1及び請求項2について、「圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置」(構成要件1A)及び「複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ」ること(構成要件1B)の技術的意義が第三者に不測の不利益を生じさせる程度に不明確である旨、主張している。
い 当審の判断
訂正後の請求項1及び請求項2に記載された、「圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され」ることは、「圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニット」と「室内ユニット」とが冷媒配管で接続されることと明確に理解できる。
また、「複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ」ることは、複数台の圧縮機を構成するそれぞれの圧縮機には、冷媒配管と異なる配管である吐出配管が接続され、それぞれの吐出配管には、逆止弁が備えられていると明確に理解できる。
そして、圧縮機の吐出配管が、室内ユニットと室外ユニットとを接続する冷媒配管に接続されることは、技術常識である。
そうすると、訂正後の請求項1及び請求項2における、「圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷媒としてR32が循環し、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置」、及び「複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ」ること、との技術的な関係は明確である。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(イ)サポート要件に係る特許異議申立理由
あ 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、訂正前の請求項1及び請求項2は、「圧縮機と逆止弁との間」、「逆止弁と逆止弁との間」がどのような構成になっているかを問わず、技術的範囲に含む記載となっており、発明の詳細な説明に記載されたものでない旨、主張している。
い 当審の判断
本件特許の明細書の段落【0005】の記載から、本件特許において解決しようとする課題は、複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられた逆止弁のチャタリングを抑制することであり、段落【0006】及び【0007】の記載から、課題を解決するための手段は、複数の逆止弁のそれぞれについて、圧縮機の空調能力当たりの弁口径、或いは圧縮機の空調能力当たりの流量係数Cvを特定するものといえる。
そして、段落【0040】、【0041】、【0051】及び【0052】の記載から、本件特許において解決しようとする課題は、圧縮機の空調能力当たりの弁口径、或いは圧縮機の空調能力当たりの流量係数Cvを特定することで解決できるものであって、これに加えてさらに「圧縮機と逆止弁との間」或いは「逆止弁と逆止弁との間」に係る特定の構成が必要といえる格別な事情を見出すことはできない。
そうすると、訂正後の請求項1及び請求項2の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ウ)進歩性に係る特許異議申立理由
あ 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、以下の甲第2号証ないし甲第9号証を提出し、訂正前の請求項1ないし請求項5に係る発明は、甲第2号証ないし甲第9号証に記載された発明に基づき当業者が容易になし得たものである旨主張している。
甲第2号証 :特開2008-151386号公報
甲第3号証 :特開2006-29604号公報
甲第3号証の1:「空気調和装置用の逆止弁のカタログ」,2024年2月,株式会社不二機工
甲第3号証の2:「空気調和装置用の逆止弁のカタログ」,2016年7月,鷺宮製作所
甲第3号証の3:「空気調和装置用の逆止弁のカタログ」,2009年4月,千代田空調器
甲第4号証 :特開2019-78486号公報
甲第5号証 :特開2012-225630号公報
甲第6号証 :特許第3984258号公報
甲第7号証 :特開2000-46418号公報
甲第8号証 :特開2010-139156号公報
甲第9号証 :「安全弁に起因した振動現象」,配管技術,第40巻第5号,日本工業出版株式会社,平成10年4月1日,63-67ページ
(イ)当審の判断
あ 本件発明1ないし本件発明5
本件発明1ないし本件発明5は、(1)で述べたとおりである。
い 甲第2号証ないし甲第9号証(以下、「甲2」ないし「甲9」という。)の記載事項
(あ)甲2
甲2には、「空気調和機」に関し、次の記載事項及び図示事項がある(下線は当審で引いた。以下同様。)。
A 「【0002】
従来のR22冷媒に代えて、HFC冷媒たとえばR407C冷媒やR410A冷媒を使用する空気調和機がある(例えば特許文献1)。このようなHFC冷媒を使用する新しい空気調和機に替える場合、部品の再利用や工事費削減の観点から、それまで使用していた空気調和機の既設配管たとえば室外ユニットと室内ユニットとの間のガス側渡り配管および液側渡り配管を、そのまま再利用することが考えられる。
特開2002―162126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、R22冷媒の代替冷媒であるHFC冷媒たとえばR410A冷媒は、同一温度での飽和圧力がR22冷媒やR407C冷媒に比べて約1.5倍と高く、再利用される既設配管の設計圧力(耐圧)以上に圧力が上昇してしまう可能性がある。
【0004】
この発明は上記の事情を考慮したもので、その目的は、圧力の高い冷媒を使用しながら、しかも既設配管を再利用しながら、圧縮機能力の上昇範囲をできるだけ拡げて運転効率の向上が図れる空気調和機を提供することである。」
B 「【0007】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に冷凍サイクルを示している。
圧縮機1から高圧側配管2にガス冷媒が吐出される。高圧側配管2には、冷媒の逆戻りを防ぐための逆止弁3が設けられている。高圧側配管2に吐出されたガス冷媒は四方弁4およびガス側配管5を通って室外熱交換器6に流れる。室外熱交換器6に流れたガス冷媒は、室外ファン21から供給される室外空気との熱交換により、凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、液側配管7、室外膨張弁8、リキッドタンク9、および配管接続用の液側パックドバルブ10を通り、その液側パックドバルブ10に一端が接続されている液側渡り配管11に流れる。
【0008】
液側渡り配管11に流れた液冷媒は、その液側渡り配管11の他端が接続されている液側パックドバルブ12および室内膨張弁13を通り、室内熱交換器14に流れる。室内熱交換器14に流れた液冷媒は、室内ファン22から供給される室内空気との熱交換により、蒸発してガス冷媒となる。このガス冷媒は、ガス側パックドバルブ15を通り、そのガス側パックドバルブ15に一端が接続されているガス側渡り配管16に流れる。ガス側渡り配管16に流れたガス冷媒は、そのガス側渡り配管16の他端が接続されているガス側パックドバルブ17、ガス側配管18、上記四方弁4、低圧側配管19、およびアキュームレータ20を通り、圧縮機1に吸込まれる。
【0009】
この冷媒の流れは冷房時のもので、暖房時は四方弁4が切換わることにより、冷媒の流れが反対となって、室内熱交換器14が凝縮器、室外熱交換器6が蒸発器として機能する。なお、この冷凍サイクルに封入される冷媒として、従来のR22冷媒に代わり、同一温度での飽和圧力が高いHFC冷媒たとえばR410A冷媒が使用されている。液側渡り配管11およびガス側渡り配管16は、従来のR22冷媒が使用されているときの既設配管であり、再利用されている。
【0010】
上記圧縮機1の吐出側から室外熱交換器6を含む液側パックドバルブ10までの配管構成、ガス側パックドバルブ17から圧縮機1の吸込み側までの配管構成、および室外ファン21などにより、室外ユニットAが構成されている。また、上記液側パックドバルブ12から室内熱交換器14を含むガス側パックドバルブ15までの配管構成、および室内ファン22などにより、室内ユニットBが構成されている。」
C 「【0012】
また、室外ユニットAの液側管7において、室外膨張弁8とリキッドタンク9との間に温度センサTLが設けられ、液側パックドバルブ10の近傍(液側渡り配管11の接続部手前)に高圧スイッチSW2が設けられている。温度センサTLは、液冷媒の温度を検知する。高圧スイッチSW2は、室外ユニットAから液側渡り配管11に流出する液冷媒の圧力が液側渡り配管11の設計圧力よりも上昇した場合に圧縮機1の運転を停止させるためのもので、その液冷媒の圧力が上昇して所定値3.3Mpa以上になると作動する。ガス側管18には、ガス側パックドバルブ17の近傍(ガス側渡り配管16の接続部手前)に高圧スイッチSW3が設けられている。高圧スイッチSW3は、室外ユニットAからガス側渡り配管16に流出するガス冷媒(暖房時)の圧力がガス側渡り配管16の設計圧力よりも上昇した場合に圧縮機1の運転を停止させるためのもので、そのガス冷媒の圧力が上昇して所定値3.3Mpa以上になると作動する。さらに、室外熱交換器6に熱交換器温度センサTEが設けられているとともに、室外ファン21の吸込み風路に室外温度検知用の室外温度センサTOが設けられている。
【0013】
室内ユニットBでは、室内熱交換器14に熱交換器温度センサTCが設けられ、室内ファン22の吸い込み風路に室内温度検知用の室外温度センサTIが設けられている。」
D 「【0024】
なお、上記実施形態では、1台の圧縮機1を有する冷凍サイクルを例に説明したが、図4に示すように、2台の圧縮機1a,1bを有する冷凍サイクルの場合にも、同様に実施可能である。2台の圧縮機1a,1bの採用に伴い、高圧側配管2a,2b、逆止弁3a,3b、高圧スイッチSW1a,SW1b、温度センサTDa,TDbが設けられている。この場合、圧力損失推定式の検知温度Tdとして、圧縮機1aまたは圧縮機1bのどちらか1台が運転している場合は、運転中の圧縮機の温度センサTDの検知温度Tdを使用し、圧縮機1a,1bの両方が運転している場合は、温度センサTDa,TDbの検知温度Tda,Tdbのどちらか高い方の値が使用される。」
E 「【図4】
[図:0001426813000001.jpg]
」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「 圧縮機1aと1b、室外熱交換器6及び室外膨張弁8を備えた室外ユニットAと、室内熱交換器14を備えた室内ユニットBとが液側渡り配管11及びガス側渡り配管16により接続され、冷媒としてR410A冷媒が使用され、冷房及び暖房を行う空気調和機において、
前記圧縮機1aと1bとして、2台の圧縮機1aと1bを有し、これら2台の圧縮機1aと1bに接続される高圧側配管2aと2bには逆止弁3aと3bが設けられる空気調和機。」
(い)甲3
甲3には、「空気調和機」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
A 「【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の1実施例の冷凍サイクルを示す図であり、冷房運転時の冷媒の流れの順に構成を説明すると圧縮機1,1aで圧縮された冷媒はそれぞれ吐出管にもうけられた逆止弁3,3aを通過しそれぞれの吐出管の合流部4で合流しオイルセパレータ5に入る。オイルセパレータ5でオイル分離された冷媒は、4方弁6を通って室外熱交換器7には入り凝縮し液冷媒となり膨張弁8で減圧され、接続配管を伝って室内機側にみちびかれ室内熱交換器9で蒸発する。室内熱交換器9で蒸発した気体冷媒は接続配管により室外側に導かれ、4方弁6を通ってサブアキュームレータ10にはいって気液分離され、分岐部11でそれぞれの圧縮機1,1aのアキュームレータ2,2aに接続されている吸入管の途中にもうけられた逆止弁12,12aを通って圧縮機1,1aに帰っていく。オイルセパレータ5で分離されたオイルは4方弁6とサブアキュームレータ10の間の配管に戻される。
【0013】
上記のように構成された冷凍サイクルにおいて2台始動時の動作を説明すると、2台の圧縮機が停止し圧力がバランスしている状態から圧縮機1のみが運転すると、逆止弁3,12はそれぞれ流通方向なので開状態となり冷媒が吸入側から吐出側に送られ吐出側の合流部4の圧力は上がり、吸入側の分岐部11の圧力は下がる。一方まだ停止状態の圧縮機1aの側では逆止弁3aの前後で合流部4の圧力が圧縮機1aの圧力より高くなる差圧が生じ逆止弁3aは閉じた状態になる。また、逆止弁12aの前後で分岐部11の圧力がアキュームレータ2aの圧力より低くなり逆止弁12aも閉じた状態になる。すなわち圧縮機1aの吐出口、吸入口は圧縮機1の始動前の状態が維持され、圧力はバランスされており始動可能状態が保持される。次に圧縮機1が確実に始動して始動電流が重ならないタイミングで圧縮機1aを始動する。このとき圧縮機1aの吐出側、吸入側は圧力バランス状態が保持されているので確実に始動することができる。
【0014】
さらに逆止弁3,3a,12,12aをスプリング内蔵で通常閉じられるタイプのものとすると、停止室の圧力バランス維持が確実に出来るようになるとともに、圧縮機がすべて停止しているシステムが停止しているときに冷媒が圧縮機内部のオイルに溶け込むのを防ぐことが出来、オイルが冷媒で薄められ潤滑性能を低下することを防ぐことが出来る。」
B 「【図1】
[図:0001426813000002.jpg]
」
(う)甲3の1
甲3の1には、YCV5・YCV8形チェックバルブの弁口径及びCv値についての記載がある。
当該記載によれば、YCV5形チェックバルブの弁口径は5mmでCv値は0.49以上であり、YCV8形チェックバルブの弁口径は8mmでCv値は1.6以上といえる。
また、2ページ目の右下欄の「2024.02」との記載から、甲3の1は、本件特許に係る出願の出願日である令和5年2月16日より後に公開された刊行物といえる。
(え)甲3の2
甲3の2には、ACV形及びBCV形逆止弁の弁口径及びCv値についての記載がある。
当該記載によれば、ACV形逆止弁の弁口径は4.8mm~16mmでCv値は0.55~6であり、BCV形逆止弁の弁口径は3mm~18mmでCv値は0.33~8といえる。
(お)甲3の3
甲3の3には、LCVBタイプ、LCVタイプ及びLCVPタイプの逆止弁の弁口径及びCv値についての記載がある。
当該記載によれば、LCVBタイプ及びLCVタイプの逆止弁の弁口径は5.2mm~18mmでCv値は0.6~10であり、LCVPタイプの逆止弁の弁口径は11mm~21mmでCv値は4.4~16以上といえる。
(か)甲4
甲4には、「空気調和装置」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
A 「【0018】
(1)空気調和装置の全体構成
図1には、本開示の実施形態に係る空気調和装置10の構成の概略を示す冷媒回路が示されている。この空気調和装置10は、冷媒を用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって空気調和を行う。空気調和装置10は、熱源ユニットである室外ユニット30A(または室外ユニット30B)と、複数(ここでは、4台)の室内ユニット20a,20b,20c,20dとが接続されることによって構成されている。図2には、室外ユニット30Aと互換性のある室外ユニット30Bが示されている。ここで、室外ユニット30A(または室外ユニット30B)と複数の室内ユニット20a~20dとは、冷媒連絡管6,7を介して接続されている。冷媒としては、例えば不燃性の冷媒である410A冷媒または微燃性冷媒であるR32冷媒を用いることができる。ここで微燃性とは、燃焼下限濃度(LFL)が比較的大きく、最小着火エネルギーが大きく、よって着火確率が非常に小さい性質をいう。」
B 「【0024】
室外ユニット30Aの圧縮機31,32は、例えば密閉容器内に圧縮機モータ(図示せず)が収容された密閉型圧縮機である。圧縮機モータには、図示しないインバータ装置を介して電力が供給されるようになっており、インバータ装置の周波数(すなわち、回転数)を変化させることによって、運転容量を変化させることが可能になっている。圧縮機31,32の吐出側には、油分離器35,36が取り付けられている。圧縮機31から吐出されて油分離器35で潤滑油が分離された後の冷媒は、逆止弁37を通って室外熱交換器33のガス側に流入する。同様に、圧縮機32から吐出されて油分離器36で潤滑油が分離された後の冷媒は、逆止弁38を通って室外熱交換器33のガス側に流入する。逆止弁37,38を通ってきた冷媒は合流して室外熱交換器33のガス側に流入する。油分離器35で分離された潤滑油は、キャピラリチューブ41を通って吸入管40の分岐点と圧縮機32の吸入側との間に戻される。また、油分離器36で分離された潤滑油は、キャピラリチューブ42を通って吸入管40の分岐点と圧縮機31の吸入側との間に戻される。」
C 「【図1】
[図:0001426813000003.jpg]
」
(き)甲5
甲5には、「熱源側ユニット及び冷凍サイクル装置」に関し、次の記載事項がある。
A 「【0005】
ここで、圧力差は冷媒回路を循環する冷媒によって異なり、例えばR410A冷媒の場合、例えば吐出側圧力3.733MPa(飽和温度60℃)と吸入側圧力0.037MPa(飽和温度-45℃)との差は約3.7MPaとなる。従来、冷媒として採用していたR404A冷媒の吐出側圧力2.770MPa(飽和温度60℃)と吸入側圧力0.004MPa(飽和温度-45℃)との差が約2.7MPaであることと比較すると、R410A冷媒の場合の変化幅が大きくなっている。したがって、R410A冷媒においては、起動前にバイパス電磁弁を開いた場合に圧力が低下した状態と起動後に圧縮機の運転を開始して圧力が上昇した状態との圧力変化は、R22冷媒やR404A冷媒よりも大きくなる。」
B 「【0019】
低圧側に冷媒が漏れると圧縮機1の発停が多くなり、圧縮機1の信頼性を損ねることとなる。逆止弁14は、圧縮機1の停止時に冷媒が逆流し、圧縮機1の吐出弁漏れにより低圧側に漏れる冷媒を最小限とするために設けている。ここで、オイルセパレータ2はマフラーも兼ねており、圧縮機1の吐出脈動を低減している。このため、オイルセパレータ2の下流側に逆止弁14を配置することで、吐出脈動による逆止弁14から発せられる騒音(チャタリング音)を低減できる。凝縮器3は、圧縮機1において圧縮された冷媒と例えば屋外の空気(外気)との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させる。また、凝縮器用ファン9は、凝縮器3に外気を送り込み、凝縮器3を流れる冷媒との熱交換を促す。受液器15は余剰冷媒を溜めておくものである。」
(く)甲6
甲6には、「空気調和機」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
A 「【0013】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1にシステム構成を示すように、空気調和機1は、室外機2と、室内機3とから構成されている。室外機3は、第1の圧縮機である低段側圧縮機4と、第2の圧縮機である高段側圧縮機5との2つの圧縮機を備えている。高段側圧縮機5は、低段側圧縮機4に比べて容量は小さいが、その容量を変化させることができる容量可変型の圧縮機である。
各圧縮機4,5の吸入側には、吸入配管6が接続されている。吸入配管6は、分岐点7で第1吸入分岐管8と、第2吸入分岐管9とに分岐している。第1吸入分岐管8は、低段側圧縮機4の吸入側に接続されており、第2吸入分岐管9は、高段側圧縮機5の吸入側に接続されている。第2吸入分岐管9中には、吸入側逆止弁10が設けられている。この吸入側逆止弁10は、高段側圧縮機5に向かう方向には、冷媒の通流を許容するが、その逆の方向には、冷媒を通流させないように設定されている。」
B 「【図1】
[図:0001426813000004.jpg]
」
(け)甲7
甲7には、「インバータ式空気調和機」に関し次の記載事項及び図示事項がある。
A 「【0011】図1において、1aは親圧縮機で、容量は冷房定格容量程度であり、日本の一般家庭の6~8畳の一室用では1馬力程度、8~12畳では1.5馬力程度である。押除け容量としては、冷媒の種類にもよるがHCFC系(R-22)の場合一般的には10~13cc程度であり、HFC系冷媒(例えばR-410AやR-407C)やHC系冷媒(例えばプロパンやブタン)の場合はこれより若干小さくなる。1bはこの親圧縮機1aより容量の小さな子圧縮機である。この2台圧縮機の合計容量を暖房定格容量程度、即ち日本の一般家庭の一室用では親圧縮機1aの1.4-1.8倍程度で構成されている。従って、子圧縮機1bの容量は親圧縮機1aの0.4-0.8倍程度である。この容量の異なる2台の圧縮機1a、1bを並列に接続して構成している。2は四方弁で冷房運転時と暖房運転時で冷媒の流れを切替える。3は室内熱交換器で、4は減圧器であり、5は室外熱交換器で、これらを連結してヒートポンプ回路を構成しいる。6はインバータで、室内熱交換器3の近辺に設けた空調負荷検知手段7によって検出した空調負荷に応じて2台の圧縮機1a、1bを同一の周波数で効率よくインバータ運転制御するべく構成されている。2台の圧縮機1a、1bをそれぞれ別のインバータを設けて別々の周波数で制御しても良い。8は2台の圧縮機1a,1b内の潤滑油(図示せず)のレベルをあわせるためそれぞれの潤滑油に連通した均油管であり、9は開閉弁である。2台の圧縮機1a,1bは例えば高圧式のロータリタイプでも良いし、高圧式のスクロールタイプでも良いが、本実施例の場合共に高圧式スクロール圧縮機で構成しており、どちらの圧縮機も高圧式である必要がある。10a,10bはそれぞれの圧縮機1a,1bの吐出管11a,11bに設けられた逆止弁であり、高圧冷媒の逆流を防ぎ、12a,12bはそれぞれ吸入管13a,13bに設けられた逆止弁である。」
B 「【図1】
[図:0001426813000005.jpg]
」
(こ)甲8
甲8には、「冷凍装置およびその制御方法」に関し次の記載事項及び図示事項がある。
A 「【0024】
第1圧縮機110の冷媒吐出管110aは、オイルセパレータ111および逆止弁112を介して吐出側ガス配管13に接続され、また、第2圧縮機120の冷媒吐出管120aは、オイルセパレータ121および逆止弁122を介して吐出側ガス配管13に接続される。」
B「【図1】
[図:0001426813000006.jpg]
」
C 「【図2】
[図:0001426813000007.jpg]
」
(さ)甲9
甲9には、以下の記載事項がある。
A 「(5) 安全弁上流にアキュムレータを設置し液柱共鳴を避ける(14)。」(65ページ右欄14-15行)
う 対比及び判断
(あ)本件発明1
A 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
後者の「圧縮機1aと1b」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「圧縮機」に相当する。同様に、後者の「室外熱交換器6」は前者の「室外熱交換器」に、後者の「室外膨張弁8」は前者の「膨張機構」に、後者の「室外ユニットA」は前者の「室外ユニット」に、後者の「室内熱交換器4」は前者の「室内熱交換器」に、後者の「室内ユニットB」は前者の「室内ユニット」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「液側渡り配管11及びガス側渡り配管16」は、冷媒に係る配管であるから、前者の「冷媒配管」に相当する。
そうすると、後者の「圧縮機1aと1b、室外熱交換器6及び室外膨張弁8を備えた室外ユニットAと、室内熱交換器4を備えた室内ユニットBとが液側渡り配管11及びガス側渡り配管16により接続され」ることは、前者の「圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され」ることに相当する。
後者の「空気調和機」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「空気調和装置」に相当する。また、後者の「冷房及び暖房を行う」ことは、空気調和機で冷房及び暖房を含む空調運転を実施することであるから、前者の「冷房及び暖房を含む空調運転を実施する」ことに相当する。
そうすると、後者の「冷房及び暖房を行う空気調和機」は、前者の「冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置」に相当する。
後者の「2台の圧縮機1aと1bを有」することは、2台すなわち複数台の圧縮機が設置されることであるから、前者の「互いに同容量の圧縮機が複数台設置され」ることとは、「圧縮機が複数台設置され」ることという限りで一致する。また、前者の「これら2台の圧縮機1aと1bの高圧側配管2aと2bには逆止弁3aと3bが設けられ」ることは、2台の圧縮機1aと1bのそれぞれが備える高圧側配管2aと2bに逆止弁3aと3bが設けられることであるから、後者の「これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられ」ることに相当する。
そうすると、両者は、
「 圧縮機、室外熱交換器及び膨張機構を備えた室外ユニットと、室内熱交換器を備えた室内ユニットとが冷媒配管により接続され、冷房及び暖房を含む空調運転を実施する空気調和装置において、
前記圧縮機として、圧縮機が複数台設置され、これら複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に逆止弁が設けられた空気調和装置。」
で一致し、以下の2点で相違する。
[相違点1]
前者は、「冷媒としてR32が循環」するのに対し、後者は、「冷媒としてR410A冷媒が使用され」る点。
[相違点2]
「圧縮機」及び「逆止弁」に関し、前者は、「互いに同容量の圧縮機が複数台設置」され、「これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの弁口径が(Φ0.21~Φ0.42)mm/kWに設定されて構成され」るのに対し、後者は、かかる事項を備えていない点。
B 判断
事例に鑑み、はじめに相違点2について検討する。
互いに同容量である複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられる逆止弁に対し、そのチャタリングを抑制するために、それぞれの逆止弁を相違点2に係る本件発明1の発明特定事項で特定される弁口径とすることは、甲3ないし甲9には開示されていない。
そうすると、仮に、甲2発明に甲3ないし甲9に開示される事項を適用できたとしても、適用したものは、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とはならない。
そして、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、甲2発明および甲3ないし甲9に開示される事項から予測される範囲を超える格別な効果を奏するといえる。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲3ないし甲9に開示される事項に基いて、当業者が容易に発明できるものとはいえない。
(い)本件発明2
A 対比
本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、(あ)で述べた一致点で一致する。また、(あ)で述べた相違点1及び次に述べる相違点3の2点で相違する。
[相違点3]
「圧縮機」及び「逆止弁」に関し、前者は、「互いに同容量の圧縮機が複数台設置」され、「これら複数の逆止弁のそれぞれは、前記圧縮機の空調能力当りの流量係数Cvが(0.105~0.21)/kWに設定されて構成され」るのに対し、後者は、かかる事項を備えていない点。
B 判断
事例に鑑み、はじめに相違点3について検討する。
互いに同容量である複数台の圧縮機のそれぞれに接続される吐出配管に設けられる逆止弁に対し、そのチャタリングを抑制するために、それぞれの逆止弁を相違点3に係る本件発明2の発明特定事項で特定される流量係数Cvとすることは、甲3ないし甲9には開示されていない。
そうすると、仮に、甲2発明に甲3ないし甲9に開示される事項を適用できたとしても、適用したものは、相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とはならない。
そして、相違点3に係る本件発明2の発明特定事項により、本件発明2は、甲2発明および甲3ないし甲9に開示される事項から予測される範囲を超える格別な効果を奏するといえる。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明及び甲3ないし甲9に開示される事項に基いて、当業者が容易に発明できるものとはいえない。
(う)本件発明3ないし本件発明5について
本件発明3ないし本件発明5は、本件発明1または本件発明2を請求項3ないし請求項5に記載される発明特定事項により特定したものである。そうすると、本件発明3ないし本件発明5も、本件発明1の上記相違点2又は本件発明2の相違点3を有する。
そして、(あ)及び(い)で述べたとおり、甲2発明に甲3ないし甲9に開示される事項を適用できたとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項又は相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とはならないのであるから、本件発明3ないし本件発明5についても、本件発明1又は本件発明2と同様の理由により、甲2発明及び甲3ないし甲9に開示される事項に基いて、当業者が容易に発明できるものとはいえない。
(え)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、甲3について、「ここで甲3は、逆止弁3、3bについてそれらの弁口径としてどのようなものを使用するかについては記載していないものの、閉鎖されているべきである停止室の圧力バランス維持を確実にし、圧縮機内部のオイルへの溶け込みを防いでいるのだから、甲3においてもチャタリングが抑制されているといえる。」(特許異議申立書14ページ10行~15行)と主張する。
しかしながら、特許異議申立人の主張の根拠と推察される甲3の段落【0012】ないし【0014】の記載事項から、甲3における「停止室の圧力バランス維持」は、始動前或いは始動時において圧縮機1が確実に始動した場合における圧縮機1aの吐出側、吸入側の圧力バランス状態の保持であり、「圧縮機内部のオイルへの溶け込みを防」ぐことは、「圧縮機がすべて停止しているシステムが停止しているとき」に冷媒が圧縮機内部のオイルに溶け込むのを防ぐものであるから、空気調和装置の空調運転時、すなわち圧縮機の運転時におけるチャタリングを抑制することを開示するものではない。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、「ここで甲2及び甲3の発明の詳細な説明のいずれにおいてもチャタリングの弊害を記載していないことからして、本件発明1の特許出願の日以前において、圧縮機の空調能力に応じて常套的に使用される径の配管に、その径に適合する弁口径の逆止弁を使用してチャタリングを防止することは周知慣用手段であったといえる。」(特許異議申立書16ページ下から2行~17ページ上から3行)と主張する。
しかしながら、「甲2及び甲3の発明の詳細な説明のいずれにおいてもチャタリングの弊害を記載していないこと」が、「圧縮機の空調能力に応じて常套的に使用される径の配管に、その径に適合する弁口径の逆止弁を使用してチャタリングを防止することは周知慣用手段であった」といえるための具体的な理由についての主張はない。また、「圧縮機の空調能力に応じて常套的に使用される径の配管に、その径に適合する弁口径の逆止弁を使用してチャタリングを防止することは周知慣用手段であった」ことを示す具体的な根拠を見出すこともできない。
したがって、特許異議申立人のかかる主張も採用できない。
(エ)小括
以上のとおり、特許異議申立書における特許異議申立人の主張には理由がない。
4.むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし請求項5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし請求項5に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700538