特許訂正審判
2024-390154
リチウムイオン二次電池
- 審判番号
- 2024-390154
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-067604
- 登録番号
- 6736242
- 請求日
- 2024年12月13日
- 審決日
- 2025年02月05日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 半導体エネルギー研究所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 ▲高▼橋 徳浩
- 審判官 篠原 功一
- 分類
- P141 .851-Y (H01M) / P141 .857-Y (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項4号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6736242号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6736242号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、3、21、42〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6736242号は、平成29年11月6日(優先権主張 平成28年11月18日)の出願である特願2017-213417号の一部を令和2年4月3日に新たな特許出願としたものであって、令和2年7月17日に特許権の設定登録がなされたものである。その後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。
令和 3年 2月 4日 :特許異議の申立て
(異議2021-700128)
令和 3年 5月17日付け:取消理由通知
令和 3年 7月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の
提出
令和 4年 2月 7日付け:特許異議の決定
令和 6年12月13日 :訂正審判の請求(本件訂正審判)
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6736242号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、21及び42について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判に係る訂正の内容は、以下のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。
1.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記正極活物質は、前記マグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、」とあるのを、「前記正極活物質は、酸素及びフッ素と結合しているマグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し、前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し、」に訂正する。
2.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記正極活物質は、前記マグネシウム及び前記フッ素が前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、」とあるのを、「前記正極活物質は、前記マグネシウム及び前記フッ素が前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し、前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し、」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項21も同様に訂正する。)
3.訂正事項3
(1)訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項21に「請求項2乃至20のいずれか一において、前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。」とあるのを、「請求項3乃至20のいずれか一において、前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。」に訂正する。
(2)訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項21に「請求項2乃至20のいずれか一において、前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「正極活物質と、導電助剤と、を有する正極を備え、前記正極活物質は、リチウム及びコバルトを含む複合酸化物を有し、前記正極活物質は、前記コバルト、アルミニウム、マグネシウム及びフッ素を前記正極活物質の表面から50nmまでの領域に有し、前記正極活物質は、前記マグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、前記導電助剤は、炭素繊維を有し、前記炭素繊維は、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブである、リチウムイオン二次電池。」とした上で、「前記正極活物質は、前記マグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、」とあるのを、「前記正極活物質は、酸素及びフッ素と結合しているマグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し、」に訂正し、新たに請求項42とする。
第4 当審の判断
1.訂正事項1
(1)訂正の目的について
訂正前の請求項2に係る発明では、正極活物質が有する「マグネシウム」について、他の元素との結合関係に関する特定はなかった。
これに対して、訂正後の請求項2に係る発明では、「酸素及びフッ素と結合している」との特定を加えることにより、正極活物質が有するマグネシウムの他の元素との結合関係を限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
なお、訂正事項1は、訂正前の請求項2において、「前記正極活物質は、『前記』マグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し」とあったのを、訂正後の請求項2において、「前記正極活物質は、酸素及びフッ素と結合しているマグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に存在する領域を有し」とする訂正、すなわち、「前記」を削除する訂正を含むものである。しかしながら、訂正前及び訂正後の請求項2において、「前記正極活物質は、前記コバルト、アルミニウム、マグネシウム及びフッ素を前記正極活物質の表面から50nmまでの領域に有し」とあるところ、訂正前の請求項2における「前記マグネシウム」及び「前記アルミニウム」は、いずれも、正極活物質の表面から50nmまでの領域に有するものを意味しており、訂正後の請求項2における「前記アルミニウム」も、正極活物質の表面から50nmまでの領域に有するものを意味しており、そうすると、訂正後の請求項2における、酸素及びフッ素と結合している「マグネシウム」は、「前記アルミニウム」より正極活物質の表面側に存在するのだから、正極活物質の表面から50nmまでの領域に有するものでもあり、上記の訂正は、訂正前の請求項2における「前記マグネシウム」に相当するものを実質的に限定する訂正であると解される。
また、訂正前の請求項2に係る発明では、「正極活物質」について、結晶構造に関する特定はなかった。
これに対して、訂正後の請求項2に係る発明では、「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定を加えることにより、正極活物質が有する領域における結晶構造を限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
更に、訂正前の請求項2に係る発明では、「正極活物質」について、「前記正極活物質は、前記コバルト、アルミニウム、マグネシウム及びフッ素を前記正極活物質の表面から50nmまでの領域に有し」と記載され、正極活物質においてコバルトが存在する領域の範囲は特定されているものの、コバルトが表面に存在するか否かを特定していなかった。
これに対して、訂正後の請求項2に係る発明では、「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定を加えることにより、コバルトが少なくとも表面に存在することを限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
訂正事項1のマグネシウムに対する「酸素及びフッ素と結合している」との特定について、本件特許明細書の段落【0051】には、「第3の領域103がフッ素を有する場合、酸化マグネシウムの酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。」との記載がある。当該記載から、マグネシウムは、酸素及びフッ素と結合しているといえる。
また、訂正事項1の「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定について、本件特許明細書の段落【0030】には、「正極活物質100は、第1の領域101と、第2の領域102と、第3の領域103を有する。」との記載がある。更に、本件特許明細書の段落【0053】には、「第3の領域103は、岩塩型の結晶構造を有すると、第2の領域102と結晶の配向が一致しやすく、安定した被覆層として機能しやすいため好ましい。」との記載がある。これらの記載から、正極活物質100は、岩塩型の結晶構造を有する第3の領域103を有するといえる。
加えて、訂正事項1の「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定について、本件特許明細書の段落【0349】、【図26】(C)を参照すると、コバルトは、正極活物質の少なくとも表面に存在しているといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で指摘したとおり、請求項2に係る発明において、マグネシウムに対して「酸素及びフッ素と結合している」との特定を加えることにより、正極活物質が有するマグネシウムの他の元素との結合関係を限定し、「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定を加えることにより、正極活物質が有する領域における結晶構造を限定し、更に、「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定を加えることにより、コバルトが少なくとも表面に存在することを限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
2.訂正事項2
(1)訂正の目的について
訂正前の請求項3に係る発明では、「正極活物質」について、結晶構造に関する特定はなかった。
これに対して、訂正後の請求項3に係る発明では、「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定を加えることにより、正極活物質が有する領域における結晶構造を限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
また、訂正前の請求項3に係る発明では、「正極活物質」について、「前記正極活物質は、前記コバルト、アルミニウム、マグネシウム及びフッ素を前記正極活物質の表面から50nmまでの領域に有し」と記載され、正極活物質においてコバルトが存在する領域の範囲は特定されているものの、コバルトが表面に存在するか否かを特定していなかった。
これに対して、訂正後の請求項3に係る発明では、「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定を加えることにより、コバルトが少なくとも表面に存在することを限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
更に、訂正後の請求項21に係る発明では、訂正後の請求項3の記載を引用することにより、訂正後の請求項21に係る発明を訂正後の請求項3に係る発明と同様に限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
訂正事項2の「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定について、本件特許明細書の段落【0030】には、「正極活物質100は、第1の領域101と、第2の領域102と、第3の領域103を有する。」との記載がある。また、本件特許明細書の段落【0053】には、「第3の領域103は、岩塩型の結晶構造を有すると、第2の領域102と結晶の配向が一致しやすく、安定した被覆層として機能しやすいため好ましい。」との記載がある。これらの記載から、正極活物質100は、岩塩型の結晶構造を有する第3の領域103を有するといえる。
更に、訂正事項2の「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定について、本件特許明細書の段落【0349】、【図26】(C)を参照すると、コバルトは、正極活物質の少なくとも表面に存在しているといえる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2に係る訂正は、上記(1)で指摘したとおり、請求項3に係る発明において、「前記正極活物質は、岩塩型の結晶構造の領域を有し」との特定を加えることにより、正極活物質が有する領域における結晶構造を限定し、「前記コバルトは、前記正極活物質の少なくとも表面に存在し」との特定を加えることにより、コバルトが少なくとも表面に存在することを限定し、更に、請求項3の記載を引用する請求項21に係る発明において、請求項3に係る発明と同様に限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
3.訂正事項3
(1)訂正事項3-1
ア.訂正の目的について
訂正事項3-1の訂正は、訂正前の請求項21が請求項2ないし20のいずれか一を引用するものであったのを、請求項2の引用を削除して、請求項3ないし20のいずれか一を引用するようにしようとするものである。
したがって、訂正事項3-1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ.新規事項の有無について
訂正事項3-1の訂正は、請求項21における請求項2の引用を削除するものであって、訂正後の請求項21に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項21に記載されているものであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3-1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
ウ.実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3-1の訂正は、請求項21における請求項2の引用を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
したがって、訂正事項3-1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項3-2
ア.訂正の目的について
訂正事項3-2の訂正は、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項21を、独立形式の請求項として、新たに訂正後の請求項42とする訂正を含むものである。
また、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項21に係る発明では、正極活物質が有する「マグネシウム」について、他の元素との結合関係に関する特定はなかった。
これに対して、訂正後の請求項42に係る発明では、「酸素及びフッ素と結合している」との特定を加えることにより、正極活物質が有するマグネシウムの他の元素との結合関係を限定し、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
なお、訂正事項3-2は、「前記」マグネシウムから「前記」を削除する訂正を含むものである点については、上記「1.(1)」において記載したとおりである。
したがって、訂正事項3-2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ.新規事項の有無について
訂正事項3-2の訂正のうち、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項21を、独立形式の請求項として、新たに訂正後の請求項42とする訂正については、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるための訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
また、訂正事項3-2のマグネシウムに対する「酸素及びフッ素と結合している」との特定について、本件特許明細書の段落【0051】には、「第3の領域103がフッ素を有する場合、酸化マグネシウムの酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。」との記載がある。当該記載から、マグネシウムは、酸素及びフッ素と結合しているといえる。
したがって、訂正事項3-2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
ウ.実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3-2に係る訂正は、上記「ア.」で指摘したとおり、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項21を、独立形式の請求項として、新たに訂正後の請求項42とし、更に、マグネシウムに対して「酸素及びフッ素と結合している」との特定を加えることにより、正極活物質が有するマグネシウムの他の元素との結合関係を限定し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
したがって、訂正事項3-2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4.独立特許要件について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2、3、21及び42に記載されている事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項1ないし3は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求により請求人が求めている訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、この訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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