特許訂正審判
2021-390173
発光素子、発光装置、照明装置および電子機器
- 審判番号
- 2021-390173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2019-096456
- 登録番号
- 6780058
- 請求日
- 2021年10月29日
- 審決日
- 2022年01月12日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 半導体エネルギー研究所
- 審判長/審判官
- 審判長 榎本 吉孝
- 審判官 下村 一石
- 審判官 河原 正
- 分類
- P141 .841-Y (H05B) / P141 .853-Y (H05B) / P141 .854-Y (H05B) / P141 .855-Y (H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第44条第1項、特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6780058号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6780058号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6780058号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願の特許出願までの経緯は次のとおりである。
平成24年 2月14日:特願2012-29033号(優先日:平成23年 2月16日)の特許出願(以下「原出願」という。)
平成25年11月20日:原出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2013-239435号、以下「第1世代分割出願」という。)
平成28年 6月15日:第1世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2016-118504号、以下「第2世代分割出願」という。)
平成29年 7月20日:第2世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2017-140956号、以下「第3世代分割出願」という。)
令和 元年 5月23日:第3世代分割出願の一部の特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2019-96456号、以下「本件出願」という。)
その後、本件出願の請求項1~6に係る発明について、令和2年10月16日に特許権の設定登録がなされ、令和2年11月4日に特許掲載公報が発行された。
本件特許に対し、令和3年10月29日に特許権者株式会社半導体エネルギー研究所(以下「審判請求人」という。)より、本件訂正審判が請求された。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第6780058号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
そして、審判請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線部分は訂正箇所であり、審判請求人が訂正特許請求の範囲において示したとおりである。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記励起錯体の発光スペクトルのエネルギー値と、前記燐光性化合物の吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.2eV以内であり、」
とあるのを、
「前記励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値と、前記燐光性化合物の吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.2eV以内であり、」
に訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記励起錯体の発光スペクトルのエネルギー値と、前記燐光性化合物の吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.1eV以内であり、」
とあるのを、
「前記励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値と、前記燐光性化合物の吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.1eV以内であり、」
に訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否について
(1)訂正事項1
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「前記励起錯体の発光スペクトルのエネルギー値」との記載では、「前記励起錯体の発光スペクトル」におけるどの部分のエネルギー値を意味するものであるのか必ずしも明らかでなかったところ、「前記励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値」と訂正することで、「エネルギー値」が「前記励起錯体の発光スペクトルのピーク」におけるエネルギー値であることを明確化したものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
(2)訂正事項2
訂正事項2による訂正は、実質的に訂正事項1と同様に、「エネルギー値」が「励起錯体の発光スペクトルのピーク」におけるエネルギー値であることを明確化したものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
2 新規事項の追加の有無について
(1)訂正事項1
ア 本件特許明細書には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付した。
(ア)「【0071】
なお、励起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収スペクトルの十分に重ねるためには、発光スペクトルのピークのエネルギー値と、吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.3eV以内であることが好ましい。より好ましくは0.2eV以内であり、最も好ましいのは0.1eV以内である。」
(イ)「【0405】
発光素子11及び発光素子12は、実施例13に示したDPA2SF又はNPBと、2mDBTPDBq-IIと、[Ir(tBuppm)2(acac)]と、を発光層に用いた。実施例13より、2mDBTPDBq-IIとDPA2SF又はNPBとの混合材料の発光スペクトル(励起錯体の発光スペクトル)は、[Ir(tBuppm)2(acac)]の吸収スペクトルにおいて発光に強く寄与すると考えられる吸収帯との重なりが大きい。発光素子11及び発光素子12は、該重なりを利用してエネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高く、外部量子効率が高いと考えられる。特に、2mDBTPDBq-IIとNPBの混合材料の発光スペクトルは、2mDBTPDBq-IIとDPA2SFの混合材料の発光スペクトルに比べて、該吸収帯との重なりが大きい。したがって、発光素子12は、該大きな重なりを利用してエネルギー移動をするため、発光素子11に比べてエネルギー移動効率が高く、外部量子効率が高いと考えられる。また、実施例13の結果を合わせて参照することで、励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値と、吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差は、0.3eV以内であると好ましいことがわかる。」
(ウ)「【0443】
発光素子13及び発光素子14は、実施例15に示した2mDBTPDBq-II又はDBTBIm-IIと、1’-TNATAと、[Ir(mppr-Me)2(dpm)]と、を発光層に用いた。実施例15より、2mDBTPDBq-II又はDBTBIm-IIと、1’-TNATAとの混合材料の発光スペクトル(励起錯体の発光スペクトル)は、[Ir(mppr-Me)2(dpm)]の吸収スペクトルにおいて発光に強く寄与すると考えられる吸収帯との重なりが大きい。発光素子13及び発光素子14は、該重なりを利用してエネルギー移動をするため、エネルギー移動効率が高く、外部量子効率が高いと考えられる。特に、DBTBIm-IIと1’-TNATAの混合材料の発光スペクトルは、2mDBTPDBq-IIと1’-TNATAの混合材料の発光スペクトルに比べて、該吸収帯との重なりが大きい。したがって、発光素子14は、該大きな重なりを利用してエネルギー移動をするため、発光素子13に比べてエネルギー移動効率が高く、外部量子効率が高いと考えられる。また、実施例15の結果を合わせて参照することで、励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値と、吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差は、0.3eV以内であると好ましいことがわかる。」
イ 上記(ア)~(ウ)の記載からみて、本件特許明細書には、「発光素子」における「前記励起錯体の発光スペクトルのピークのエネルギー値と、前記燐光性化合物の吸収スペクトルの最も低エネルギー側の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.2eV以内であ」ることが記載されていたといえるから、訂正事項1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2による訂正は、実質的に訂正事項1と同様の訂正をしたものであるから、訂正事項2による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
3 特許請求の範囲の拡張、又は変更の存否について
(1)訂正事項1
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1において「エネルギー値」が「前記励起錯体の発光スペクトルのピーク」におけるエネルギー値であることを明確にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2による訂正は、訂正事項1と同様の訂正をしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件について
訂正事項1~2は、上記1で検討したとおり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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