特許訂正審判
2023-390048
特定のユーザの体臭成分を分析する方法
- 審判番号
- 2023-390048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2019-000922
- 登録番号
- 6721893
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2023年09月22日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ベネフィット-イオン
- 【請求人代理人】北川 泰隆
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 渡戸 正義
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P141 .851-Y (G01N) / P141 .121-Y (G01N) / P141 .536-Y (G01N) / P141 .537-Y (G01N) / P141 .841-Y (G01N) / P141 .853-Y (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6721893号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6721893号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6721893号(以下「本件特許」という。)は、平成27年9月24日に出願された特願2015-187378号の一部を平成31年1月8日に新たな特許出願とした特願2019-922号に係る特許であって、その請求項1ないし5に係る発明について、令和2年6月23日に特許権の設定登録がされた。
その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年5月15日 訂正審判の請求:訂正2021-390079号(以下「訂正審判1」という。)
同年7月1日付け 訂正審判1について、訂正拒絶理由通知
同月21日受付 訂正審判1について、審判請求取下
同月20日 訂正審判の請求:訂正2021-390104号(以下「訂正審判2」という。)
同年9月27日付け 訂正審判2について、明細書及び特許請求の範囲の訂正(訂正後の請求項数6)を認める審決
同年10月8日 同審決の確定
令和5年4月24日 本件訂正審判の請求
同年6月2日 上申書の提出
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6721893号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるというものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、」と記載されているのを、「自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、」と記載されているのを、「自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、」に訂正する。
3 訂正事項3
願書に添付した明細書の【発明の名称】及び段落【0001】、【0008】~【0011】、【0014】及び【0046】にそれぞれ「特定のユーザ」と記載されているのを、「自身の体臭を気にする特定のユーザ」に訂正する。
第4 当審の判断
1 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、
前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記提供工程では、前記試料を密封するパッケージとして提供用のパッケージを使用し、
前記回収工程では、前記試料を密封するパッケージとして前記提供用のパッケージとは異なる回収用のパッケージを使用し、
前記提供工程は、前記提供用のパッケージに密封された前記試料と、前記回収用のパッケージと、を前記ユーザに提供する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回収工程は、前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析工程では、前記試料が官能評価される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分析工程では、前記ユーザの体臭成分を含むガスがガスクロマトグラフ分析される、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、
前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料から前記ユーザにおける体臭の発生が集中している部位を特定することによって特定された前記部位に対応する前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料の部分に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程と、を含み、
前記回収工程は、前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程である、方法。」
2 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1において、体臭成分を分析する方法の対象者である「特定のユーザ」について、「自身の体臭を気にする特定のユーザ」とより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
請求項1を引用する訂正後の請求項2ないし5についても同様である。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
ア 本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付加した。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
個人の清潔志向の高まりと共に、自身又は他人の体臭を気にする者が多くなっている。例えば、体臭は、家庭内又は職場若しくは学校等の家庭外の複数人が集合する環境下において、他人に配慮すべき、重要な要素となっている。そのため、体臭を抑制することができる消臭製品が多く開発され販売されている。これに対して、現在、流通している消臭製品は、万人を対象とした汎用的な製品である。従って、発明者は、その効果に満足していない者もいると考えた。発明者は、体臭の原因となる体臭成分は、複数の物質が組み合わされた組成物であり、複数の物質の配合は、個人によって異なっていることを、経験的に知っている。」
「【0014】
<消臭製品の製造方法及び評価装置>
消臭製品の製造方法は、特定のユーザの体臭成分に対して消臭効果を有する消臭成分を含む、このユーザ専用の消臭製品を製造する方法である。消臭製品は、消臭成分を含む組成物である。消臭製品としては、洗濯洗剤、洗濯柔軟剤、洗濯漂白剤、芳香剤、消臭剤、洗口剤、石鹸、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナーが例示される。この他、消臭製品には、ユーザの皮膚又は頭髪に塗られるデオドラント剤と制汗剤が含まれる。また、消臭製品には、香水及びフレグランス剤のような化粧品が含まれる。更に、消臭製品は、飲料、食品又は菓子であってもよい。消臭製品には、嗜好品が含まれる。例えば、消臭製品には、ガム又は飴が含まれる。即ち、消臭製品には、体臭に対する消臭効果を有する消臭成分を含む組成物による各種の製品が含まれる。例えば、消臭製品が洗濯洗剤であるとする。この製造方法によれば、特定のユーザの体臭成分に対して消臭効果が得られる消臭成分を含む、この個人ユーザに特化した洗濯洗剤が製造される。」
「【0045】
(1)製造方法では、提供工程(S1)と回収工程(S2)と特定工程(S3)と生成工程(S4)が実施される(図1左側のフローチャート参照)。提供工程(S1)と回収工程(S2)では、衣服がパッケージに密封された状態で、製造者とユーザとの間を受け渡しされる。特定工程(S3)では、回収工程(S2)で回収された衣服を試料として、衣服に付着した体臭成分に対して消臭効果を有する消臭成分が特定され(S36)、生成工程(S4)では、この消臭成分を含む消臭製品が生成される。」
イ 本件明細書等には、「自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法」という直接の記載はない。
しかしながら、本件明細書等の上記記載から、個人の清潔志向の高まりと共に体臭は他人に配慮すべき重要な要素となっており、自身の体臭を気にする者が多くなっているところ、体臭の原因となる体臭成分は個人によって異なっていることから、万人を対象とした汎用的な消臭製品ではその効果に満足できない者がおり、そのような者の体臭成分に対して消臭効果を有する消臭成分を含む、その者専用の消臭製品を製造するために、その者の体臭成分を分析する必要があることが読み取れる。
そうすると、本件明細書等の記載から、体臭成分を分析する方法の対象者である「特定のユーザ」に、「自身の体臭を気にする者」が含まれることは明らかであるから、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
ウ したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無について
上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る「特定のユーザ」について、「自身の体臭を気にする」との限定を付加するものであるから、発明を特定するための事項を入れ替えるものではなく、発明の対象や目的の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
請求項1を引用する訂正後の請求項2ないし5についても同様である。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件
上記(1)に記載したとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されている事項により特定される発明は、特許法第126条第7項に規定する、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
これについては、後記5で判断する。
3 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2は、請求項6において、体臭成分を分析する方法の対象者である「特定のユーザ」について、「自身の体臭を気にする特定のユーザ」とより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
訂正事項2は、訂正事項1と同じく、体臭成分を分析する方法の対象者である「特定のユーザ」について「自身の体臭を気にする特定のユーザ」と訂正するものであるから、訂正事項1と同じ理由により、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無について
上記(1)で述べたとおり、訂正事項2は、本件訂正前の請求項6に係る「特定のユーザ」について、「自身の体臭を気にする」との限定を付加するものであるから、発明を特定するための事項を入替えるものではなく、発明の対象や目的の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件
上記(1)に記載したとおり、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項6に記載されている事項により特定される発明は、特許法第126条第7項に規定する、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
これについては、後記5で判断する。
4 訂正事項3について
(1)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項1及び2により特許請求の範囲に記載された「特定のユーザ」が「自身の体臭を気にする特定のユーザ」と訂正されることに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
訂正事項3は、訂正事項1及び2と同じく、体臭成分を分析する方法の対象者である「特定のユーザ」について「自身の体臭を気にする特定のユーザ」と訂正するものであるから、訂正事項1及び2と同じ理由により、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無について
上記(1)で述べたとおり、訂正事項3は、明細書の記載を訂正事項1及び2により訂正される特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、訂正事項1及び2と同じ理由により、発明を特定するための事項を入れ替えるものではなく、発明の対象や目的の変更、発明のカテゴリーの変更を行うものでもない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件
上記(1)に記載したとおり、訂正事項3は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第7項に規定する要件は課されない。
5 独立特許要件について
(1)訂正後の発明
本件訂正後の請求項1及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明6」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、
前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程と、を含む方法。」
「【請求項6】
自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法であって、
前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料から前記ユーザにおける体臭の発生が集中している部位を特定することによって特定された前記部位に対応する前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料の部分に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程と、を含み、
前記回収工程は、前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程である、方法。」
(2)特許無効の抗弁
本件特許に関し、東京地方裁判所における特許権侵害差止等請求事件(令和3年(ワ)第31482号)(以下「別件侵害訴訟」という。)において特許無効の抗弁がされ、令和5年2月24日に本件特許の請求項1に係る特許は下記無効の抗弁1の理由により無効審判により無効にされるべきものと認められる旨判示する判決が言渡され、知的財産高等裁判所において控訴審が係属中である。
審判請求人が令和5年6月2日に提出した上申書に添付された別件侵害訴訟の判決によれば、別件侵害訴訟で争点となった本件特許に係る特許無効の抗弁を整理すると、概略次のとおりである。
ア 無効の抗弁1:特許法第29条第2項違反
乙第7号証を主引用例とする請求項1に係る発明の進歩性欠如
イ 無効の抗弁2:特許法第29条第2項違反
乙第18号証を主引用例とする請求項1及び6に係る発明の進歩性欠如
ウ 無効の抗弁3:特許法第36条第4項第1号不備
請求項1及び6に係る発明の実施可能要件不備
エ 無効の抗弁4:特許法第36条第6項第2号不備
請求項6に係る発明の明確性要件不備
乙第7号証:Devendra Singh and P. Matthew Bronstad,“Female body odour is a potential cue to ovulation”, Proceedings: Biological Sciences,Royal Society,2001年4月22日,Vol. 268, No. 1469,p. 797-801
乙第18号証:米国特許出願公開第2007/0196831号明細書
そこで、別件侵害訴訟における無効の抗弁1ないし4の理由によって、本件訂正発明1及び6が独立特許要件を満たさないこととなるか否かを、以下に判断する。
(3)引用文献の記載事項及び引用発明
別件侵害訴訟における乙第7号証及び乙第18号証を、以下、それぞれ「引用文献1」及び「引用文献2」という。
ア 本件特許の原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、次の事項が記載されている(登録商標を表す○囲い付きRは、表記上の制約から「(R)」と記す。下線は当審において付加した。引用文献の記載について以下同じ。)。
(引1-ア)797頁左欄下から14行~右欄6行
「A negative relationship between body odour and degree of FA was not observed when men rated female body odour (Thornhill & Gangestad 1999), although Rikowski & Grammer (1999) reported that men judge the body odours of facially attractive women as more pleasant and sexy than less facially attractive women. However, Thornhill & Gangestad (1999) found that men do not differentially rate the pleasantness of women's body odour at the most fertile phase of their menstrual cycle from women at the least fertile phase of their menstrual cycle. Thus, it appears that neither the degree of FA nor variations in menstrual cycle phase reliably make women's body odour attractive to men. ・・・Nevertheless, it still may be important for males to detect when ovulation occurs as such a capability will enhance their reproductive success.」
(当審訳:男性が女性の体臭を評価した場合、体臭とFA(ゆらぎ非対称性)度の間に負の関係は観察されなかったが(Thornhill & Gangestad 1999)、Rikowski & Grammer(1999)は、男性は顔立ちの魅力的な女性の体臭を、顔立ちの魅力的ではない女性よりも心地よくセクシーだと判断することを報告している。しかし、 Thornhill & Gangestad (1999)は、男性は月経周期の最も妊娠しやすい時期の女性の体臭の快感を、月経周期の最も妊娠しにくい時期の女性の体臭と区別して評価しないことを明らかにしている。このように、FAの程度や月経周期の変動は、女性の体臭を男性にとって魅力的なものにしていないようである。・・・しかし,排卵がいつ起こるかを察知することは、男性にとって繁殖成功率を高めるために重要であると考えられる。)
(引1-イ)797頁右欄19行~798頁左欄6行
「Given these signals, it would be surprising if body odour is not linked to menstrual cycle phases and does not play any role in men's preferences. ・・・This notion is supported by the finding that males who are pair bonded with a woman judge her body odours (collected from saliva and the vagina, underarms and loin) from her ovulatory phase more pleasant and longer lasting than body odours collected from other phases of her menstrual cycle (Poran 1994).
It is quite possible that the use of a between-subjects design in which the body odours of groups of ovulating women are compared with a group of non-ovulating women, as reported in Thornhill & Gangestad's (1999) study, does not allow weak yet reliable odour cues to be detected. We controlled for this potential confound of individual odour profiles by using a within-subjects design in which menstrual cycle phase (follicular and luteal phase) odours were collected from the same women.」
(当審訳:これらのシグナルを考えると、体臭が月経周期の位相と関連せず、男性の嗜好に何の役割も果たさないとすれば、それは驚くべきことである。・・・この考えは、ペアボンドの関係にある男性が、女性の排卵期の体臭(唾液、膣、脇の下、腰から採取)を、他の月経周期の体臭よりも快適で長く続くと判断するという発見によって支持されている(Poran 1994)。
Thornhill & Gangestad(1999)の研究で報告されたように、排卵期の女性グループと非排卵期の女性グループの体臭を比較する被験者間デザインの使用は、弱いながらも信頼できるにおいの手がかりを検出することができない可能性が十分にある。そこで、同じ女性から月経周期(卵胞期と黄体期)の匂いを採取する被験者内比較法を用いて、個人の匂いプロファイルの交絡の可能性をコントロールした。)
(引1-ウ)798頁左欄7行~右欄下から23行
「2. METHOD
(a) Participants
・・・After listening to a brief description of the research objective, women in the class were asked to volunteer for the study if they were not currently using a hormonal birth control method, had had regular menstrual cycles (28士3 days) during the previous six months and were willing to adhere to behavioural and dietary restrictions for the monthlong study. ・・・
Thus, the reported data are based on 17 Caucasian women (mean age= 22.4土4.5 years).
(b) Odour collection procedure
As in previous studies (e.g. Wedekind et al. 1995; Gangestad & Thornhill 1998; Rikowski & Grammer 1999; Thornhill & Gangestad 1999) cotton T-shirts were used for collecting body odour. Each participant was given a bag containing two unworn, white, 100% cotton T-shirts, a box of unscented detergent for washing clothes and bed sheets, bars of unscented body soap (Ivory(R)) and a bottle of unscented hair shampoo. The T-shirts were washed with unscented detergent and, after drying, each was placed in a large plastic freezer bag (Ziplock(R)).Each participant was asked to make up a five-digit personal code and write her code on the freezer bags with a permanent ink pen. The T-shirt bags had this code and a prefix (For L) in order to distinguish the T-shirt to be worn during the follicular and luteal phases of the woman's menstrual cycle. ・・・Each participant wore the T-shirt from the bag marked F in direct contact with the skin at night while sleeping. Each morning, the participant placed it in the plastic box(当審注:前後の文脈から「box」は「bag」の誤記と認める。) and then wore the same T-shirt for consecutive nights (days 13-15 of her menstrual cycle). At the end of this session, each participant folded the T-shirt, placed it in the plastic bag and placed the sealed bag in the freezer. Each participant wore the T-shirt marked L for three consecutive nights during her luteal phase (days 20-22 of her menstrual cycle) following the same procedure as for the follicular phase. Experimenters collected both frozen bags from the participants and stored them in a freezer until the odour ratings could be made.
(c) Odour attractiveness rating procedure
Fifty-two Caucasian males (mean age= 23.3士4.9 years) volunteered to act as raters. ・・・The raters were not told that they would be rating T-shirts worn by ovulating and non-ovulating women.; they were informed that the T-shirts were worn by women differing in attractiveness and that the purpose of the study was to determine whether differences in physical attractiveness could be associated with the intensity and pleasantness of body odours.
・・・Before the ratings took place, the freezer bags were thawed by leaving them at room temperature for ca. 3 h. ・・・The raters were instructed to pick one plastic bag, open it and smell it without touching the T-shirt and rate the odour for intensity (1 = not intense at all to 10 = very intense), pleasantness (1 = very unpleasant to 10 = very pleasant) and sexiness (1 = very unsexy to 10 = very sexy). The raters recorded their ratings of the T-shirts using the T-shirt codes on the rating sheet. Then the rater sealed the plastic bag, placed it back in the box and rated the other T-shirt with an identical code to the previous T-shirt except for the prefix L or F.」
(当審訳:2. 方法
(a)参加者
・・・研究目的の簡単な説明を聞いた後、クラスの女性は、現在ホルモン避妊法を使用しておらず、過去6ヶ月間に定期的な月経周期(28士3日)があり、1ヶ月間の研究のために行動と食事の制限を守る意思がある場合、研究への志願を求められた。・・・
したがって、報告されたデータは17人の白人女性(平均年齢22.4土4.5歳)に基づくものである。
(b)臭気回収工程
これまでの研究(Wedekin et al. 1995; Gangestad & Thornhill 1998; Rikowski & Grammer 1999; Thornhill & Gangestad 1999など)と同様に、体臭の採取には綿のTシャツを使用した。各参加者は、着用していない白い綿100%のTシャツ2枚、衣類やシーツを洗濯するための無香料の洗剤1箱、無香料のボディソープ(Ivory(R))、無香料のヘアシャンプー1本が入った袋を渡された。Tシャツは無香料の洗剤で洗濯され、乾燥後、それぞれ大きなプラスチック製フリーザーバッグ(Ziplock(R)) に収納された。参加者は5桁のパーソナルコードを作成し、フリーザーバッグに油性ペンでコードを書き込むよう指示された。Tシャツ袋には、このコードと、女性の月経周期の卵胞期と黄体期に着用するTシャツを区別するための接頭辞(F又はL)が書かれていた。・・・各参加者は、夜、Fと書かれた袋からTシャツを取り出し、肌に直接触れるように着て寝た。毎朝、参加者はそれをプラスチック製の箱(当審注:前後の文脈から「箱」は「袋」の誤記と認める。)に入れ、同じTシャツを連夜(月経周期の13日目から15日目)着用した。このセッションの終わりに、各参加者はTシャツをたたみ、プラスチック製の袋に入れ、密封した袋を冷凍庫に入れた。黄体期(月経周期の20日目から22日目)には、卵胞期と同じ手順で、Lと書かれたTシャツを3晩連続で着用した。実験者は参加者から凍った袋を回収し、臭気評価ができるまで冷凍庫で保管した。
(c)匂い魅力度評価手順
52人の白人男性(平均年齢23.3±4.9歳)が、評価者として志願した。・・・評価者は、排卵期の女性と非排卵期の女性が着用するTシャツを評価することは告げられなかったが、Tシャツは魅力の異なる女性が着用すること、研究の目的は身体的魅力の違いが体臭の強さや心地よさに関連するかどうかを調べることであることは告げられた。・・・評価前に、フリーザーバッグは室温で約3時間放置して解凍した。・・・評価者は、Tシャツを触らずにプラスチック製の袋を1つ選び、開封して匂いを嗅ぎ、匂いの強さ(1=全く強くない~10=非常に強い)、快感(1=非常に不快~10=非常に快感)、セクシーさ(1=非常にセクシーではない~10=非常にセクシー)に関して評価するよう指示された。評価者は、評価シートのTシャツコードを用いて、Tシャツの評価を記録した。そして、評価者はプラスチック製の袋を封印し、箱に戻し、LまたはFという接頭語を除いて前のTシャツと同じコードをつけたもう一枚のTシャツを評価した。)
(引1-エ) 798頁右欄下から9行~799頁左欄15行
「3. RESULTS
As the raters were required to rate each T-shirt for intensity, pleasantness and sexiness of odour, the ratings of each T-shirt were analysed within raters. Inter-rater reliability was assessed as the average, intraclass consistency correlation across the 52 raters and 18 T-shirts in the initial study. ・・・These intraclass correlations for ratings of intensity, pleasantness and sexiness were 0.945, 0.942 and 0.948, respectively.
The critical issue was whether there would be menstrual cycle phase-dependent (follicular versus luteal phase) differences in the rated intensity, sexiness and pleasantness of the T-shirts. Linear regression analysis revealed that menstrual cycle phase (luteal phase= 0 and follicular phase= 1) significantly predicted the rated magnitude of sexiness (β=0.073, t= 3.10 and p = 0.002) and pleasantness (β=0.091, t=3.87 and p < 0.001) but not intensity (β=-0.012, t = -0.50 and p = 0.616) of the T-shirts. The ratings of sexiness and pleasantness were strongly associated for the T-shirts worn during both the follicular and luteal phases (table 1).」
(当審訳:3. 結果
評価者は、それぞれのTシャツの匂いの強さ、心地よさ、セクシーさについて評価する必要があるため、1枚のTシャツの評価について評価者間で分析を行った。評価者間の信頼性は、最初の研究における52人の評価者と18枚のTシャツの平均的なクラス内一貫性相関として評価された。・・・強さ、快さ、セクシーさの評価に対するこれらのクラス内相関は、それぞれ0.945、0.942、0.948であった。
重要な問題は、月経周期(卵胞期と黄体期)に依存して、Tシャツの強さ、セクシーさ、快感の評価に差が出るかどうかであった。線形回帰分析の結果、月経周期(黄体期=0、卵胞期=1)は、Tシャツのセクシーさ(β=0. 073, t= 3.10, p=0.002) と快感 (β= 0.091, t= 3.87, p < 0.001) の評価の大きさを有意に予測したが、強度 (β=-0.012, t=-0.50, p = 0.616) とは無関係であることが明らかになった。また、セクシーさと快感の評価は、卵胞期と黄体期で着用したTシャツの両方で、強く関連していた(表1)。)
イ 上記(引1-ア)ないし(引1-エ)の記載から、引用文献1には、
「月経周期の位相の違いによる女性の体臭が男性の嗜好に関係するかを調べる方法であって、
女性の各参加者に、無香料の洗剤で洗濯され、乾燥後、それぞれ大きなプラスチック製フリーザーバッグ(Ziplock(R)) (以下「Tシャツ袋」という。)に収納された着用していない白い綿100%のTシャツ2枚、衣類やシーツを洗濯するための無香料の洗剤1箱、無香料のボディソープ(Ivory(R))、無香料のヘアシャンプー1本が入った袋を渡し、
Tシャツ袋には、参加者のパーソナルコードと女性の月経周期の卵胞期と黄体期に着用するTシャツを区別するための接頭辞であるF又はLが書かれており、各参加者は、月経周期の13日目の夜、Fと書かれた袋からTシャツを取り出し、肌に直接触れるように着て寝、朝、それをTシャツ袋に入れ、月経周期の15日目まで同じTシャツを連夜着用し、毎朝それをTシャツ袋に入れ、このセッションの終わりに、各参加者はTシャツをたたみ、Tシャツ袋に入れ、密封した袋を冷凍庫に入れ、黄体期(月経周期の20日目から22日目)には、卵胞期と同じ手順で、Lと書かれたTシャツを3晩連続で着用し、Tシャツをたたみ、Tシャツ袋に入れ、密閉した袋を冷凍庫に入れ、
実験者は参加者から凍った袋を回収し、臭気評価ができるまで冷凍庫で保管し、評価前に、Tシャツ袋を室温で約3時間放置して解凍し、
男性評価者は、Tシャツを触らずにTシャツ袋を1つ選び、開封して匂いを嗅ぎ、匂いの強さ(1=全く強くない~10=非常に強い)、快感(1=非常に不快~10=非常に快感)、セクシーさ(1=非常にセクシーではない~10=非常にセクシー)に関して評価し、Tシャツ袋を封印し、LまたはFという接頭語を除いて前のTシャツと同じコードをつけたもう一枚のTシャツを評価して、月経周期(卵胞期と黄体期)に依存して、Tシャツの強さ、セクシーさ、快感の評価に差が出るかどうか調べる、
方法。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
ウ 本件特許の原出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、次の事項が記載されている。
(引2-ア)「[0004] Men and women detect others’ MHC genes through their body odors. There are a number of peptides that are derived from particular regions of the MHC. These peptides are detected as odors. They strongly affect a woman’s responsivity to a particular partner, as discussed in the cited literature, and to both men’s and women’s mutual attractiveness.」
(当審訳:[0004] 男女は体臭で他人のMHC遺伝子を察知する。MHCの特定の領域に由来するペプチドが多数存在する。これらのペプチドはにおいとして検出される。これらは、引用文献にあるように、女性の特定の相手に対する反応や、男女の相互の魅力に強く影響する。)
(引2-イ)「[0007] Technology has advanced to the point that individual MHC-derived peptides, and thus odors, can be accurately detected artificially using gas chromatography and/or mass spectrometry (an “e-nose”). ・・・This implies that a personal odor profile can be constructed for each individual, and that the degree of MHC sharing of two individuals can be derived by comparing those measurements, even if they are strangers and geographically distant from one another.」
(当審訳:[0007] 技術の進歩により、MHC由来の個々のペプチド、ひいては臭いを、ガスクロマトグラフィーや質量分析計(「e-nose」)を用いて人為的に正確に検出することができるようになった。・・・このことは、各個人について個人の臭気プロファイルを構築できること、そして、たとえ見知らぬ者同士であっても、地理的に離れていても、それらの測定値を比較することで2人のMHC共有度合いを導き出すことができることを意味している。)
(引2-ウ)「[0010] The present invention provides a method and apparatus for taking a human sample, analyzing the sample and then determining a match with a member of the opposite sex. In one embodiment, a customer purchases an AromaMatchTM Test Kit, which comprises a bottle of cleaning solution, a sample patch, a sample bag and a mailing envelope. The user opens the kit, cleans a patch of skin somewhere on his or her body, and then applies the patch. After wearing the patch for an appropriate time period, the patch is removed, and placed in the sample bag. The user writes his or her password on the sample bag, and then mails it to a laboratory in the return envelope. The laboratory analyzes the sample patch and determines a set of genetic attributes that are associated with the sample. The user receives an analysis report by mail, or views the results of the analysis on a website, such as www.AromaMatch.com.」
(当審訳:[0010] 本発明は、人間の試料を採取し、その試料を分析し、異性との適合性を判定する方法及び装置を提供するものである。一実施形態では、顧客は、洗浄液のボトル、サンプルパッチ、サンプルバッグ、および郵送用封筒からなるAromaMatchTMテストキットを購入する。ユーザは、キットを開封し、体のどこかの皮膚を洗浄した後、パッチを貼る。適当な期間貼付した後、パッチを剥がし、サンプル袋に入れる。サンプル袋にパスワードを記入し、返信用封筒で研究所に郵送する。研究所では、サンプルパッチを分析し、そのサンプルに関連する一連の遺伝的属性を決定する。ユーザは、分析レポートを郵送で受け取るか、分析結果をウェブサイト(www.AromaMatch.com)などで閲覧する。)
(引2-エ)「[0013] In yet another embodiment, the customer may purchase a custom-formulated perfume, cologne, salve or other cosmetic or preparation that contains enhanced aromas that match his or her genetic attributes.」
(当審訳:[0013] さらに別の実施形態では、顧客は、自分の遺伝的属性に合った強化された香りを含む、カスタムメイドの香水、コロン、軟膏、その他の化粧品または調剤を購入することができる。)
(引2-オ)「[0036] FIG. 1 offers a view of a woman 10 in a retail store 12, where she purchases an AromaMatchTM Test Kit 14. As an alternative, the woman 10 may purchase the same AromaMatchTM Test Kit 14 by visiting a website.www.AromaMatch.com, using her personal computer, as shown in FIG. 2. “AromaMatch” is a Trade & Service Mark owned by the Assignee of the Present Patent Application. The website “www.aromamatch.com” is also owned by the Assignee of the Present Patent Application. In this Specification and in the Claims that follow, the term “aroma” encompasses any scent, smell, odor or olfactory component that may or may not be actively or consciously detected, sensed or smelled by a person.
[0037] The woman opens the Test Kit 14 and removes the contents in FIG. 3. In one embodiment of the invention, the Test Kit 14 comprises:
[0038] skin cleaner 20;
[0039] a cleaningmedium22;
[0040] a sample patch 24;
[0041] a sealable enclosure 28; and
[0042] a mailing envelope 30.」
(当審訳:[0036] 図1 は、小売店12 にいる女性10 がAromaMatchTMテストキット14 を購入する様子である。テストキット14を購入する。代替案として、女性10は、図2に示すように、パーソナルコンピュータを使用して、ウェブサイトwww.AromaMatch.com、同じAromaMatchTMテストキット14を購入することができる。"AromaMatch "は、本特許出願の譲受人が所有するトレード&サービスマークである。また、ウェブサイト「www.aromamatch.com」は、本特許出願の譲受人が所有するものである。本明細書および以下の特許請求の範囲において、「アロマ」という用語は、人が積極的または意識的に検出、感知または嗅ぐことができるかどうかにかかわらず、あらゆる香り、匂い、臭気または嗅覚成分を包含しています。
[0037] 女性は、図3において、Test Kit 14を開封し、内容物を取り出す。本発明の一実施形態では、テストキット14は、以下のように構成されている。
[0038] 皮膚洗浄剤20;
[0039] 洗浄媒体22;
[0040] サンプルパッチ24;
[0041] 密閉可能なエンクロージャー28;及び
[0042] 郵送用封筒30。)
(引2-カ)「[0045] FIG. 4 furnishes an illustration of the sample patch 24, which comprises a small central area 24Cwith two outwardly extending strips 24S. The central area 24C is coated with a portion of plaster 25 which, in turn, has been coated with an antibiotic 26 or some other suitable agent that prevents bacterial growth which might modify the aroma. The strips 24S on either side of the plaster 25 are coated with an adhesive 27 that is suitable for adhering to the skin for a short period often.
[0046] In one embodiment, the patch 24 resembles a conventional “Band-Aid(R) Brand” Adhesive Bandage, such as that manufactured and sold by Johnson & Johnson of New Brunswick, N.J. The patch 24 may be fabricated from plastic, cloth, paper or any other material that will maintain the plaster 25 in generally continuous contact with the skin. The plaster 25 is generally any material that will absorb and then hold an aroma which has been secreted by the skin. The plaster 25 may be composed of any substance that collects and stores an aroma. In one embodiment of the invention, the plaster 25 is manufactured from any material that may be used as an odor-absorbing poultice.
[0047] The plaster 25 is designed so that it will collect enough aromas to provide a sample which may be reliably analyzed. The aromas captured by the plaster 25 must be able to survive for a duration of the that is required for the patch 24 to be mailed to a laboratory.
[0048] After the Test Kit 14 is opened, the woman 10 cleans a patch of skin on her arm in preparation for applying the sample patch 24, as shown in FIG. 5. In FIG. 6, patch 24 has been attached to her forearm. The patch 24 may be worn on any portion of the body which allows direct and intimate contact with the skin. In some instances, selecting a patch of skin on or near the armpits may be produce optimal results.
[0049] The woman wears the patch 24 all day, as shown in FIG. 7. The time that is required for the patch 24 to remain in place varies with the effectiveness of the plaster 25 and the sensitivity of the equipment used to analyze the patch 24. In one embodiment of the invention, the user is instructed to leave the patch 24 in place on the skin for at least eight hours. In some instances, the time that is required to wear to patch to obtain a good sample may take longer. One alternative method that may be used to collect a sample is using a simply wearing a shirt or some other article of clothing for an extended time, and then analyzing this worn article of clothing.
[0050] After wearing the patch 24 all day, the woman 10 removes the patch 24 later that evening, as shown in FIG. 8. After the patch 24 is removed, she then immediately places the patch 24 in the enclosure 28, as illustrated in FIG. 9. The enclosure is sealed 28 to prevent any degradation of the aromas stored in the plaster 25.
[0051] She then writes her username, password, code or some their identifying information on the bag 28, as shown in FIG. 10. This enclosure 28 is large enough to hold the sample patch 24, may be easily sealed against the intrusion of outside air by the user, and is generally an impermeable container or barrier that preserves the aromas imparted to the plaster 25 on the patch 24. In one embodiment of the invention, the enclosure 28 is a plastic bag with a compression seal, which is commonly known as a “zip-lock” or “slide-lock” closure. In one implementation, the bag 28 bears a pre-printed authorization code.
[0052] The patch 24 which stores the sample S which has been sealed in the bag 28 is then placed in the mailing envelope, as shown In FIG. 11.
[0053] FIG. 12 portrays the customer posting the preaddressed mailing envelope 30 which contains the worn patch 24 in the bag 28. This envelope 30will convey the patch 24 to a laboratory where the plaster 25will be analyzed. As an alternative, the patch 24 may be shipped to a laboratory using a courier. The patch 24may also be delivered to a local lab, doctor’s office or pharmacy for analysis. In a more advanced embodiment of the invention, the user may analyze the patch 24 using a home analysis kit.
[0054] FIG. 13 shows a laboratory technician 32 using an analyzer 34 to determine the genetic attributes of the tissue sample that has been received from the customer 10. In one embodiment, a probe from an analyzer 34 may be inserted into the bag 28, which will convey the aromas to a chamber where a chemical analysis is conducted.
[0055] Several devices and systems for analyzing a sample are currently available which may be used to implement the present invention. One device called an “Electronic Nose” has been described by The Lewis Group of the California Institute of Technology, and is based on readily fabricated, chemically sensitive conducting polymer films. According to information presented on their website.
[0056] “An array of sensors that individually respond to vapors can produce a distinguishable response pattern for each separate type of analyte or mixture. Pattern recognition algorithms and or neural network hardware are used on the output signals arising from the electronic nose to classify, identify, and where necessary quantify, the vapor or odors of concern. This response is much like the way the mammalian olfactory sense produces diagnostic patterns and then transmits them to the brain for processing and analysis.」
(当審訳:[0045] 図4は、サンプルパッチ24の説明図であり、これは、2つの外側に伸びるストリップ24Sを有する小さな中央領域24Cから構成される。中央領域24Cは、プラスター25の小片で被覆され、次に、抗生物質26または香りを改変する可能性のある細菌の成長を防止する他の適切な薬剤でコーティングされている。プラスター25の両側のストリップ24Sは、短時間よく皮膚に付着させるのに適した接着剤27で被覆されている。
[0046] 実施形態では、パッチ24は、ニュージャージー州ニューブランズウィックのジョンソン&ジョンソンが製造及び販売するような従来の「バンドエイド(R)ブランド」粘着包帯に類似している。パッチ24は、プラスチック、布、紙、又は皮膚と概ね連続して接触してプラスター25を維持する他の任意の材料から作製される。プラスター25は、一般に、皮膚から分泌された香りを吸収し、その後保持するような任意の材料である。プラスター25は、香りを集めて保持する任意の物質で構成されてもよい。本発明の一実施形態では、プラスター25は、臭気吸収湿布として使用され得る任意の材料から製造される。
[0047] プラスター25は、確実に分析できるサンプルを提供するために十分なアロマを収集するように設計されている。プラスター25によって捕獲された香りは、パッチ24が実験室に郵送されるために必要な期間、保存できなければならない。
[0048] テストキット14を開封した後、女性10は、図5に示すように、サンプルパッチ24を貼付する準備として、腕の皮膚の部位を洗浄する。図6では、パッチ24は彼女の前腕に貼り付けられている。パッチ24は、皮膚との直接的かつ親密な接触を可能にする身体のどの部分にも装着することができる。場合によっては、脇の下又はその付近の皮膚の部位を選択することが、最適な結果をもたらすことがある。
[0049] 女性は、図7に示すように、パッチ24を一日中装着している。パッチ24が所定位置に留まるのに必要な時間は、プラスター25の効果やパッチ24を分析するために使用する機器の感度によって異なる。本発明の一実施形態では、ユーザは、少なくとも8時間、パッチ24を皮膚上の所定の位置に残すように指示される。いくつかの実施形態では、良好なサンプルを得るために部位に装着するのに必要な時間は、より長くかかる場合がある。サンプルを収集するために使用され得る1つの代替方法は、単に長時間着用したシャツ又は他の衣類を使用し、次にこの着用した衣類を分析することである。
[0050] パッチ24を一日中装着した後、女性10は、その日の夕方に、図8に示すように、パッチ24を取り外す。パッチ24を取り外した後、次に、彼女は、図9に示されるように、パッチ24を直ちにエンクロージャー28に入れる。エンクロージャー28は、プラスター25に蓄えられたアロマが劣化しないように密閉される。
[0051] そして、彼女は、図10に示すように、ユーザ名、パスワード、コード、または何らかのそれらの識別情報を袋28に書き込む。このエンクロージャー28は、サンプルパッチ24を保持するのに十分な大きさであり、外気の侵入に対してユーザにより容易に密封することができ、一般に、パッチ24上のプラスター25に付与された香りを保存する不透過性の容器または障壁である。本発明の一実施態様では、エンクロージャー28は、一般に「ジップロック」または「スライドロック」クロージャーとして知られている圧縮シールを有するプラスチックバッグである。一実施態様では、袋28には、予め印刷された認証コードが付されている。
[0052] そして袋28に封入されたサンプルSを蓄積したパッチ24は、図11に示すように郵送用封筒に入れられる。
[0053] 図12は、顧客が、袋28内の着用パッチ24を含むプレアドレス付き郵送用封筒30を投函する様子を描いている。この封筒30は、プラスター25が分析される実験室にパッチ24を搬送する。代替案として、パッチ24は、宅配便を使用して実験室に輸送されてもよい。また、パッチ24は、分析のために地元の研究室、医師のオフィスまたは薬局に配達されてもよい。本発明のより高度な実施形態では、ユーザは、家庭用分析キットを用いてパッチ24を分析してもよい。
[0054] 図13は、顧客10から受け取った組織サンプルの遺伝的属性を決定するために分析器34を使用する検査技師32を示す。実施形態では、分析器34からのプローブが袋28に挿入されてもよく、これにより、化学分析が行われるチャンバーに香りが伝達される。
[0055] 現在、本発明を実施するために使用できる、サンプルを分析するためのいくつかの装置およびシステムが利用可能である。「臭覚センサー」と呼ばれる1つのデバイスは、カリフォルニア工科大学のルイスグループによって記述されており、容易に製造された、化学的に感度の高い導電性ポリマーフィルムをベースにしている。彼らのウェブサイトに提示された情報による。
[0056] 蒸気に対して個別に反応するセンサーの配列は、分析物や混合物の種類ごとに識別可能な反応パターンを生成することができる。臭覚センサーから出力される信号に対して、パターン認識アルゴリズムやニューラルネットワークハードウェアが使用され、懸念される蒸気や臭気を分類、特定し、必要に応じて定量化する。この反応は、哺乳類の嗅覚が診断パターンを生成し、それを脳へ伝達して処理・分析するのとよく似ている。)
(引2-キ)「[0064] In FIG. 14, the customer 10 uses her computer 16 to visit a website 18 to obtain the results of the laboratory analysis. In one embodiment, the analysis includes a listing of MHC alleles, MHC-determined peptides, MHC-odors or some other MHC-dependent profile. In an alternative embodiment, the results may be dispatched to the customer by regular mail or by e-mail.」
(当審訳:[0064] 図14において、顧客10は、彼女のコンピュータ16を使用してウェブサイト18を訪問し、実験室分析の結果を取得する。一実施形態では、分析は、MHC-対立遺伝子、MHC-決定ペプチド、MHC-匂い又は他の何らかのMHC-依存プロファイルのリストを含む。代替の実施形態では、結果は、普通郵便又は電子メールによって顧客に発送され得る。)
(引2-ク)「[0070] In FIG. 18, a customer whose tissue sample has already been analyzed receives a custom-formulated perfume 44, “MyAromaTM” or “MyCologneTM”, which contains olfactory reagents that correspond to her genetic attributes, and specifically, which correspond to his or her MHC-derived peptide profile.」
(当審訳:[0070] 図18において、組織サンプルが既に分析されている顧客は、自分の遺伝子属性に対応する嗅覚試薬、特に、自分のMHC由来ペプチドプロファイルに対応する嗅覚試薬を含むカスタム調合香水44、「My AromaTM」または「My CologneTM」を受け取る。)
エ 上記(引2-ア)ないし(引2-ク)の記載から、引用文献2には、
「人間の試料を採取し、その試料を分析し、異性との適合性を判定する方法であって、
ユーザは小売店12で又はウェブサイトからテストキット14を購入し、
テストキット14は、皮膚洗浄剤20、洗浄媒体22、サンプルパッチ24、密閉可能なプラスチックバッグ28(以下「袋28」という。)及び郵送用封筒30で構成されており、サンプルパッチ24は、2つの外側に伸びるストリップ24Sを有する小さな中央領域24Cから構成され、中央領域24Cは、プラスター25の小片で被覆され、次に、抗生物質26または香りを改変する可能性のある細菌の成長を防止する他の適切な薬剤でコーティングされており、プラスター25の両側のストリップ24Sは、短時間よく皮膚に付着させるのに適した接着剤27で被覆されており、
テストキット14を開封した後、ユーザはサンプルパッチ24を貼付する準備として、腕の皮膚の部位を洗浄し、パッチ24をユーザの前腕に貼り付け、少なくとも8時間、パッチ24を皮膚上の所定の位置に装着した後、パッチ24を取り外し、パッチ24を取り外した後、パッチ24を直ちに袋28に入れ、袋28はプラスター25に蓄えられたアロマが劣化しないように密閉され、そして袋28に封入されたサンプルSを蓄積したパッチ24を郵送用封筒30に入れて投函し、
封筒30は、プラスター25が分析される実験室にパッチ24を搬送し、
分析器34を使用する検査技師32は、分析器34からのプローブを袋28に挿入し、化学分析が行われるチャンバーに香りが伝達され、臭覚センサーから出力される信号に対して、パターン認識アルゴリズムやニューラルネットワークハードウェアが使用され、懸念される蒸気や臭気を分類、特定し、必要に応じて定量化し、MHC-匂いプロファイルのリストを作成する、
方法。」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
(4)引用文献1を主引用例とする進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
a(a)引用発明1の「女性の各参加者」と、本件訂正発明1の「自身の体臭を気にする特定のユーザ」とは、「特定の個人」の点で共通する。
(b)引用発明1の「月経周期の位相の違いによる女性の体臭が男性の嗜好に関係するかを調べる」ことと、本件訂正発明1の「体臭成分を分析する」こととは、「体臭を分析する」ことの点で共通する。
(c)引用発明1は、「男性評価者は、Tシャツを触らずにTシャツ袋を1つ選び、開封して匂いを嗅ぎ、匂いの強さ(1=全く強くない~10=非常に強い)、快感(1=非常に不快~10=非常に快感)、セクシーさ(1=非常にセクシーではない~10=非常にセクシー)に関して評価し、Tシャツ袋を封印し、LまたはFという接頭語を除いて前のTシャツと同じコードをつけたもう一枚のTシャツを評価して、月経周期(卵胞期と黄体期)に依存して、Tシャツの強さ、セクシーさ、快感の評価に差が出るかどうか調べる」ものであるところ、ここでの「コード」は「参加者のパーソナルコード」を意味していると解されるから、引用発明1は、女性の各参加者それぞれについて、体臭を調べているといえる。
(d)上記(c)を踏まえると、上記(a)及び(b)の対比から、引用発明1の「女性の各参加者」それぞれについて「月経周期の位相の違いによる女性の体臭が男性の嗜好に関係するかを調べる方法」と、本件訂正発明1の「自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法」とは、「特定の個人の体臭を分析する方法」の点で共通する。
b(a)引用発明1の「Tシャツ」は、本件訂正発明1の「試料」に相当する。
(b)引用発明1の「肌に直接触れるように着」ることは、本件訂正発明1の「肌に直接触れた状態で使用」することに相当する。
(c)引用発明1の「プラスチック製フリーザーバッグ(Tシャツ袋)」は、本件訂正発明1の「パッケージ」に相当する。
(d)引用発明1の「収納され」ていることと、本件訂正発明1の「密封された状態」であることとは、「入れた状態」であることの点で共通する。
(e)引用発明1の「渡」すことは、本件訂正発明1の「提供する」ことに相当する。
(f)上記(a)ないし(e)の対比から、引用発明1の「女性の各参加者に」「それぞれ大きなプラスチック製フリーザーバッグ(Ziplock(R)) (以下「Tシャツ袋」という。)に収納された」「肌に直接触れるように着」るための「着用していない白い綿100%のTシャツ2枚」「を渡」すことと、本件訂正発明1の「前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程」とは、「前記個人の肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに入れた状態で前記個人に提供する提供工程」の点で共通する。
c(a)引用発明1の「3晩連続で着用」することは、本件訂正発明1の「所定期間使用」することに相当する。
(b)上記bの対比を踏まえると、上記(a)の対比から、引用発明1の「各参加者」が「袋からTシャツを取り出し、肌に直接触れるように着て」「3晩連続で着用し、」「Tシャツ袋に入れ、密封した袋を」「参加者から」「回収」することは、本件訂正発明1の「前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程」に相当する。
d 上記a及びcの対比を踏まえると、引用発明1の「Tシャツ袋を1つ選び、開封して匂いを嗅ぎ、匂いの強さ(1=全く強くない~10=非常に強い)、快感(1=非常に不快~10=非常に快感)、セクシーさ(1=非常にセクシーではない~10=非常にセクシー)に関して評価し、Tシャツ袋を封印し、LまたはFという接頭語を除いて前のTシャツと同じコードをつけたもう一枚のTシャツを評価して、月経周期(卵胞期と黄体期)に依存して、Tシャツの強さ、セクシーさ、快感の評価に差が出るかどうか調べる」ことと、本件訂正発明1の「前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程」とは、「前記回収工程で回収された前記個人の肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記個人の体臭を分析する分析工程」の点で共通する。
(イ)そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは、
「特定の個人の体臭を分析する方法であって、
前記個人の肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに入れた状態で前記個人に提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記個人の肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記個人から回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記個人の肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記個人の体臭を分析する分析工程と、を含む方法。」
の発明である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点1A)
特定の個人が、本件訂正発明1においては、自身の体臭を気にするユーザであるのに対し、引用発明1においては、女性の参加者である点。
(相違点2A)
体臭を分析することについて、本件訂正発明1においては、体臭成分を分析するのに対し、引用発明1においては、匂いの強さ、快感、セクシーさに関して評価し、月経周期の位相の違いによる女性の体臭が男性の嗜好に関係するかを調べる点。
(相違点3A)
提供工程におけるパッケージに試料を入れた状態について、本件訂正発明1においては、密封された状態であるのに対し、引用発明1においては、密封された状態であることは特定されていない点。
(ウ)判断
a 上記相違点1Aについて検討する。
上記(引1-ウ)の「(a)参加者 ・・・研究目的の簡単な説明を聞いた後、クラスの女性は、現在ホルモン避妊法を使用しておらず、過去6ヶ月間に定期的な月経周期(28士3日)があり、1ヶ月間の研究のために行動と食事の制限を守る意思がある場合、研究への志願を求められた。・・・したがって、報告されたデータは17人の白人女性(平均年齢22.4土4.5歳)に基づくものである。」との記載によれば、引用発明1において参加者となる女性に求められた条件は、現在ホルモン避妊法を使用していないこと、過去6ヶ月間において定期的な月経周期(28士3日)であったこと、及び1ヶ月間の研究のために行動と食事の制限を守る意思があることの3つだけであり、自身の体臭をどのように感じているかについての条件は付されていないから、引用発明1の参加者は、自身の体臭を気にする者に限定されていない。
したがって、引用発明1の参加者は、本件訂正発明1の「自身の体臭を気にする特定ユーザ」に該当しない。
加えて、引用発明1は、月経周期の位相の違いによる女性の体臭が男性の嗜好に関係するかを調べる方法であるところ、被評価者となる女性参加者の選定は、体臭に関して非恣意的であることが有効であるといえるから、参加者を自身の体臭を気にする者に限定又は変更することを動機づける事情もない。
b そうすると、上記相違点2A及び3Aについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明1に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
イ 本件訂正発明6について
(ア)本件訂正発明6は、本件訂正発明1に対して、以下のa及びbの特定事項を追加したものに相当する。
a 回収工程について、前記回収工程は、前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程であること。
b 分析工程について、前記試料から前記ユーザにおける体臭の発生が集中している部位を特定することによって特定された前記部位に対応する前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料の部分に付着した前記ユーザの体臭成分を分析すること。
(イ)そうすると、本件訂正発明6と引用発明1とは、少なくとも上記相違点1Aで相違するから、本件訂正発明6は、本件訂正発明1と同じ理由により、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(5)引用文献2を主引用例とする進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明2とを対比する。
a(a)引用発明2の「人間」である「ユーザ」は、「異性との適合性を判定」したい者であるといえるから、引用発明2の「ユーザ」と、本件訂正発明1の「自身の体臭を気にする特定のユーザ」とは、「特定のユーザ」の点で共通する。
(b)引用発明2の「試料を分析し、異性との適合性を判定する」ことは、「ユーザの前腕に貼り付け」た「パッチ24」の「プラスター25」の「香り」を「化学分析」する「臭覚センサーから出力される信号」から「MHC-匂いプロファイルのリストを作成」して行うことから、ユーザのMHC-匂い成分を分析することを含んでいる。
そうすると、引用発明2の「試料を分析し、異性との適合性を判定する」ことと、本件訂正発明1の「体臭成分を分析する」こととは、「香り成分を分析する」ことの点で共通するといえる。
(c)上記(a)及び(b)の対比から、引用発明2の「人間」である「ユーザ」「の試料を採取し、その試料を分析し、異性との適合性を判定する方法」と、本件訂正発明1の「自身の体臭を気にする特定のユーザの体臭成分を分析する方法」とは、「特定のユーザの香り成分を分析する方法」の点で共通するといえる。
b(a)引用発明2の「サンプルパッチ24」は、本件訂正発明1の「試料」に相当する。
(b)引用発明2の「前腕に貼り付け」ることは、本件訂正発明1の「肌に直接触れた状態で使用」することに相当する。
(c)引用発明2の「プラスチックバッグ28(袋28)」は、本件訂正発明1の「パッケージ」に相当する。
(d)引用発明2の「ユーザ」が「購入」することは、本件訂正発明1の「ユーザに提供する」ことに相当する。
(e)上記(a)ないし(d)の対比から、引用発明2の「ユーザの前腕に貼り付け」る「サンプルパッチ24」と「密閉可能なプラスチックバッグ28(以下「袋28」という。)」を含む「テストキット14」を「ユーザ」が「購入」することと、本件訂正発明1の「前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザに提供する提供工程」とは、「前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージとともに前記ユーザに提供する提供工程」の点で共通する。
c(a)引用発明2の「少なくとも8時間」は、本件訂正発明1の「所定期間」に相当する。
(b)引用発明2の「ユーザ」が「郵送用封筒30に入れて投函」することは、本件訂正発明1の「ユーザから回収する」ことに相当する。
(c)上記bの対比を踏まえると、上記(a)及び(b)の対比から、引用発明2の「ユーザ」が「テストキット14を開封した後、」「パッチ24をユーザの前腕に貼り付け、少なくとも8時間、パッチ24を皮膚上の所定の位置に装着した後、パッチ24を取り外し、パッチ24を取り外した後、パッチ24を直ちに袋28に入れ、袋28はプラスター25に蓄えられたアロマが劣化しないように密閉され、そして袋28に封入されたサンプルSを蓄積したパッチ24を郵送用封筒30に入れて投函」することは、本件訂正発明1の「前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程」に相当する。
d 上記a及びcの対比を踏まえると、引用発明2の「分析器34からのプローブを袋28に挿入し、化学分析が行われるチャンバーに香りが伝達され、臭覚センサーから出力される信号」から「MHC-匂いプロファイルのリストを作成」することと、本件訂正発明1の「前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの体臭成分を分析する分析工程」とは、「前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの香り成分を分析する分析工程」の点で共通する。
(イ)そうすると、本件訂正発明1と引用発明2とは、
「特定のユーザの香り成分を分析する方法であって、
前記ユーザの肌に直接触れた状態で使用される試料を、パッケージとともに前記ユーザに提供する提供工程と、
前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、パッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する回収工程と、
前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料に付着した前記ユーザの香り成分を分析する分析工程と、を含む方法。」
の発明である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点1B)
特定のユーザが、本件訂正発明1においては、自身の体臭を気にするユーザであるのに対し、引用発明2においては、異性との適合性を判定したいユーザである点。
(相違点2B)
香り成分を分析することについて、本件訂正発明1においては、体臭成分を分析するのに対し、引用発明2においては、MHC-匂いプロファイルのリストを作成する点。
(相違点3B)
提供工程における試料をパッケージとともに前記ユーザに提供することについて、本件訂正発明1においては、試料をパッケージに密封された状態で提供するのに対し、引用発明2においては、袋28は密閉可能なものであるものの、サンプルパッチ24が袋28に密封された状態であるか不明な点。
(ウ)判断
a 上記相違点1Bについて検討する。
引用発明2は、異性との適合性を判定する方法であるところ、その判定はユーザの「MHC-匂いプロファイル」に基づいていると解されるが、引用発明2の「ユーザ」が、自身の「MHC-匂いプロファイル」そのものを気にするユーザであるとはいえない。
加えて、仮に、引用発明2の「ユーザ」が、自身の「MHC-匂いプロファイル」そのものを気にするユーザであるとしても、上記第4の1(2)アに摘記した本件明細書等の【0007】及び【0014】の記載によれば、本件訂正発明1における「自身の体臭を気にする特定のユーザ」は、他人への配慮から自己の体臭を抑制しようとする者であると解されることから、引用発明2の「ユーザ」が本件訂正発明1における「自身の体臭を気にする特定のユーザ」に該当するとはいえない。
そして、引用発明2の「ユーザ」を「自身の体臭を気にする特定のユーザ」に限定又は変更することを動機づける事情もない。
b そうすると、上記相違点2B及び3Bについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
イ 本件訂正発明6について
(ア)本件訂正発明6は、本件訂正発明1に対して、以下のa及びbの特定事項を追加したものに相当する。
a 回収工程について、前記回収工程は、前記提供工程で提供された前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程であること。
b 分析工程について、前記試料から前記ユーザにおける体臭の発生が集中している部位を特定することによって特定された前記部位に対応する前記回収工程で回収された前記ユーザの肌に所定期間直接触れた前記試料の部分に付着した前記ユーザの体臭成分を分析すること。
(イ)そうすると、本件訂正発明6と引用発明2とは、少なくとも上記相違点1Bで相違するから、本件訂正発明6は、本件訂正発明1と同じ理由により、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(6)実施可能要件
ア 別件侵害訴訟に係る上記(2)ウの無効の抗弁3に係る被告の主張は、以下のとおりである。
(ア)「本件明細書には「発明者は、体臭の原因となる体臭成分は、複数の物質が組み合わされた組成物であり、複数の物質の配合は、個人によって異なっていることを、経験的に知っている。」(【0007】)と記載された上で、「本発明は、特定のユーザの体臭成分を分析する方法を提供する」ことを発明が解決しようとする課題としている(【0008】)。
本件発明1(当審注:請求項1に係る発明)の構成要件C記載の「分析工程」は従来技術に対して何らかの技術的特徴を有するものではない。また、構成要件A記載の「提供工程」及び構成要件B記載の「回収工程」によって、本件発明1がどのような作用・効果を有するのかについて具体的な記載が本件明細書には一切ないため、どのような作用・効果を有するのかが不明である。それゆえ本件発明1は、発明が解決しようとする課題を解決して、従来技術からは得られない特有の作用・効果を奏する発明として実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされておらず、実施可能要件を満たさないといえる。」
(イ)「本件明細書には、本件発明2(当審注:請求項6に係る発明)が本件発明1に比べて分析対象を絞り込んだことによる、本件発明2の作用・効果についての具体的な記載が一切なく、本件発明2が、どのような作用・効果を有するのかが不明である。そうすると、本件発明2は、従来技術からは得られない特有の作用・効果を奏する発明として実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされておらず、特許法36条4項1号(実施可能要件)の規定に適合しておらず、本件発明2に係る特許は無効とすべきものである。」
イ 当審の判断
訂正明細書の発明の詳細な説明には、提供工程については【0018】及び【0019】に、回収工程については【0020】及び【0021】に、分析工程については【0023】ないし【0026】に、それぞれ具体的に説明する記載があり、当業者であれば、これらの記載に基づいて本件訂正発明1及び本件訂正発明6を実施することができるといえる。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
(7)明確性
ア 別件侵害訴訟に係る上記(2)エの無効の抗弁4に係る被告の主張は、以下のとおりである。
「構成要件Gの「そのままの状態」という用語の技術的意味を理解することができず、本件発明2は発明の外延を明確に把握することができないため、本件発明2は特許法36条6項2号(明確性要件)の規定に適合しておらず、本件発明2に係る特許は、無効とすべきものである。」
イ 当審の判断
「そのまま」という語は、「その状態のとおりで変化のないこと。もとのまま。今のまま。あるがまま。」(デジタル大辞泉 小学館)という意味であるから、本件訂正発明6の「前記ユーザの肌に直接触れた状態で所定期間使用された前記試料を、前記試料がそのままの状態でパッケージに密封された状態で前記ユーザから回収する工程」における「そのままの状態」とは、所定期間の使用が終了した時の状態と同じ状態を意味すると解される。
そうすると、本件訂正発明6は明確である。
したがって、訂正特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(8)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1及び本件訂正発明6は、引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、訂正明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件に適合し、訂正特許請求の範囲は明確性要件に適合する。
そして、他に、本件訂正発明1及び本件訂正発明6が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。
よって、本件訂正発明1及び本件訂正発明6が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、訂正事項1及び訂正事項2による訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-390048