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特許拒絶査定不服審判

2024-010941

セパレータおよびこれを備える非水電解液二次電池

審判番号
2024-010941
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-184689外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年07月02日
審決日
2025年06月02日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-184689「セパレータおよびこれを備える非水電解液二次電池」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月24日出願公開、特開2023- 72260〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年11月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 6年 1月11日付け:拒絶理由通知 令和 6年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 4月 4日付け:拒絶査定(原査定) 令和 6年 7月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年7月2日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和6年7月2日の手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 令和6年7月2日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 正極と、負極と、これらを絶縁するセパレータと、を含む電極体と、 非水電解液と、 前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、 を備える、非水電解液二次電池であって、 前記非水電解液二次電池は、車両駆動用電源に用いられるものであり、 前記電極体は、捲回電極体であり、 前記捲回電極体の捲回軸方向の寸法は、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大きく、 前記電極体の捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と平行であり、 前記セパレータは、多孔質樹脂製の基材層と、その少なくとも一方の面上に、無機粒子を含有するセラミック層と、を備え、 前記セパレータは、長尺状であり、 前記セパレータの主面は、一対の長辺を有し、 前記一対の長辺は、前記電極体の捲回軸方向に直交しており、 前記セパレータは、その少なくとも一方の前記主面上に、ストライプパターンが形成されるように所定のピッチで設けられた接着層をさらに備え、 前記接着層は、前記セパレータの主面の一方の長辺から他方の長辺まで一方向に延びる凸部として形成された部分を有し、 前記接着層と、前記セパレータの主面の長辺との角度が、20°以上70°以下である、非水電解液二次電池。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和6年3月12日にされた手続補正によりされた次のとおりである。 「【請求項1】 正極と、負極と、これらを絶縁するセパレータと、を含む電極体と、 非水電解液と、 を備える、非水電解液二次電池であって、 前記非水電解液二次電池は、車両駆動用電源に用いられるものであり、 前記電極体は、捲回電極体であり、 前記セパレータは、多孔質樹脂製の基材層と、その少なくとも一方の面上に、無機粒子を含有するセラミック層と、を備え、 前記セパレータは、長尺状であり、 前記セパレータの主面は、一対の長辺を有し、 前記セパレータは、その少なくとも一方の前記主面上に、ストライプパターンが形成されるように所定のピッチで設けられた接着層をさらに備え、 前記接着層は、前記セパレータの主面の一方の長辺から他方の長辺まで一方向に延びる凸部として形成された部分を有し、 前記接着層と、前記セパレータの主面の長辺との角度が、20°以上70°以下である、非水電解液二次電池。」 2.補正の適否 (1)補正の目的について 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「非水電解液二次電池」について、「前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケース」を備えることの限定を付加し、同じく発明を特定するために必要な事項である捲回電極体である「電極体」について、「前記捲回電極体の捲回軸方向の寸法は、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大きく、前記電極体の捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と平行」であることの限定を付加し、さらに、電極体が含む「セパレータ」について、「前記一対の長辺は、前記電極体の捲回軸方向に直交して」いるとの限定を付加するものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、上記補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。 (2)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1.(1)」の【請求項1】に記載したとおりのものである。 (3)引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特表2021-517725号公報(以下、「引用例」という。)には、「リチウム二次電池」について、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【0006】 リチウム二次電池の種類には、正極及び負極を丸く巻き取った巻取型(ゼリーロール型);正極、負極及び分離膜を順次積層したスタック型;そして、これらの混合形態として、正極、負極及び分離膜で構成された単位セル(unit cell)を長いシート状の連続的な折り畳みフィルム(folding film)(例えば、分離膜)を用いて折り曲げ/巻き取った構造の積層・折り畳み型;のリチウム二次電池などが挙げられる。 【0007】 このうち、スタック型または積層・折り畳み型リチウム二次電池は、製造が容易であり、空間を効率的に活用できる構造を有し、電極活物質の含量を極大化することができるため、高い集積度の電池を具現することができる。このような積層型または積層・折り畳み型リチウム二次電池の場合には、分離膜の上に備えられた電極接着層が乾燥した状態で電極との接着力が具現されればこそ、定位置で積層型または積層・折り畳み型の構造に製作可能である。ところが、電極組立体が電池ケースに収納された後に電解液が注液された場合、接着された電極では電解液が含浸する空隙が閉塞してしまい、電極への電解液の含浸に時間が長くかかり、その結果、二次電池のエージング(aging)に過度な時間を要するという問題がある。 【0008】 巻取り型リチウム二次電池は、積層・折り畳み型リチウム二次電池に比べて電極と分離膜との接着力に対する必要度が低い方であるが、電極組立体の捻れ防止のために接着力を有する機能性層を分離膜の上に備え得る。この場合にも、電極は電解液の含浸に過度な時間が必要となるという問題がある。」 イ.「【0011】 また、本発明は、電極組立体に捻れを生じさせないながらも、パターン化した電極接着層を分離膜に形成する方法を提供することをさらに他の目的とする。」 ウ.「【0030】 本明細書において、「単位セル」とは、正極、分離膜、負極が順次積層されてなったものであって、電気化学素子を構成する要素として理解される。本明細書において、前記「単位セル」は、「電極組立体」と併用して使われ得る。 【0031】 本発明の一実施様態において、前記分離膜は、対向する二つの辺の長さが同一であり、相互隣接する二辺のいずれか一辺の長さが、他辺の長さよりも長い長方形であり得る。分離膜がこのような形態の長方形である場合、前記非形成部は、長辺から短辺へ延び得る。前記、「長辺」とは、長方形の分離膜を構成する四辺のうち長さが相対的に長い二辺を指すことにする。また、本願の明細書において分離膜の「短辺」とは、長方形の分離膜を構成する四辺のうち長さが相対的に短い二辺を指すこととして理解する。 【0032】 本明細書において、「電極接着層ユニット」または「ユニット」とは、直線または曲線からなるか、もしくは直線と曲線とが混合してなり、一定の面積を有する二次元(two-dimensional)閉曲線形態の、実質的にバインダー高分子を含む部分を指す。例えば、図1~図3の各々の電極接着層は5個のユニットからなり、図4の電極接着層は3個のユニットからなる。前記ユニットは、その平面形状が、長方形、正方形、上辺が長い台形、下辺が長い台形、半円形、三角形のような形状を有し、パターン化電極接着層を構成し得る。しかし、ユニットの形状が前記形状に限定されることではない。 【0033】 前記ユニットの間には、電極接着層が塗布されていない「電極接着層非形成部」が存在する。本明細書において、「電極接着層非形成部」とは、分離膜の表面において電極接着層が塗布されていない部分を指称する。前記電極接着層非形成部には、電極接着層または他の機能性層が実質的に形成されておらず、最終完成したリチウム二次電池において実質的に電解液のみが存在するようになる。電極接着層非形成部を確保するためには、電極接着層の形成のためのバインダー溶液が多孔性高分子基材あるいは有機/無機多孔性コーティング層の表面に適用されるとき、前記バインダー溶液の広がりを防止することが望ましく、このために、バインダー溶液の粘度を30センチポイズ以上にすることが望ましい。」 エ.「【0036】 これは、電極が電解液に含浸される場合、電極の縁部よりも電極の中央部が電解液で含浸されるのに時間がかかるためである。電池の製造工程で電池の組立て及び電解液の注液後、電極組立体200が電解液によって充分含浸されるように電池を所定時間放置する工程(エージング工程)を行う。このようなエージング工程において、電池は通常、電極組立体のいずれか一長辺が下方または上方に位置するように立てられた状態で放置される。これによって、電解液は、長辺側から含浸が始まるため、非形成部が短辺から短辺へ延びる電極接着層パターンを有すると、電解液が中央部まで到達する含浸距離が長くなるので、望ましくない。したがって、本発明の一実施様態においては、分離膜が長辺から短辺へ延びる線状の非形成部のみを含むように構成された電極接着層を備えるように準備し、前記分離膜が含まれた電池に対するエージング工程を行うとき、分離膜の長辺が下端に位置するように立ててエージング工程を開始する場合、電解液の含浸効率が改善される。」 オ.「【0038】 図1は、長辺から短辺まで延びる直線から形成された複数個のユニット110(陰影表示部分)から構成されたパターン化電極接着層130であって、前記電極接着層ユニットの間には接着層が形成されていない電極接着層非形成部120(白色表示部分)が存在する。前記電極接着層は、六角形、上辺が長い台形、下辺が長い台形、三角形のユニットからなっており、分離膜の4個の角全てにユニットが位置している。パターン化電極接着層のユニットの全体面積は、電極接着層非形成部の全体面積よりも顕著に大きいことを確認することができる。前記電極接着層非形成部は、電極が電解液により迅速かつ容易に含浸されるようにするために形成されたものであり、各々同じ幅で形成され得る。」 カ.「【0041】 一方、分離膜の一長辺から他長辺へ延びる線のみから形成されたユニット、あるいは分離膜の一短辺から他短辺へ延びる線のみからなるユニットは、本発明のパターン化電極接着層に含まれない。分離膜の一長辺から他長辺へ延びる線のみからなるユニット、または分離膜の一短辺から他短辺へ延びる線のみからなるユニットがパターン化電極接着層に含まれる場合には、長辺あるいは短辺の縁部に電極接着層が全く塗布されない場合が発生し得、このような一様態が図4に示されている。図4を見れば、分離膜の短辺の縁部には、電極接着層が形成されていないので、分離膜と電極との接着が適切に行われない。」 キ.「【0058】 本発明の具体的な一実施様態において、前記パターン化電極接着層の厚さは、約0.1μm~3μm、望ましくは、約0.5μm~1μmであり得る。電極接着層の厚さが前述の範囲に属する場合、多孔性分離膜と電極との優秀な密着力/結合力が得られると共に、分離膜の気孔度を最適の状態に維持することができる。 【0059】 また、本発明は、前述の方法によって製造されたパターン化電極接着層を含む二次電池用の分離膜を提供する。本発明の具体的な一実施様態によれば、前記分離膜は、多孔性高分子基材と、前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に形成されたパターン化電極接着層と、を含み得る。」 ク.「【0078】 実施例1 水を溶媒にし、無機粒子としてアルミナ(Sumitomo社、AES11)と、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(ジエルケム社、SG-L02)とを99:1重量比で混合した後、バスケットミルで2時間分散させた。分散したスラリーの固形分は40wt%であった。ここに、結着剤としてアクリル系共重合体(Toyo社、CSB130)1重量部を加えて有機/無機多孔性コーティング層の形成のためのスラリーを完成した。基材としてポリエチレン系多孔性高分子基材(上海エネルギー社、ND12、通気時間188秒/100cc)に、有機/無機多孔性コーティング層の形成のためのスラリーをコーティングして乾燥することで、断面が2μm厚さである有機/無機多孔性コーティング層を形成した。 【0079】 ここに、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒にし、バインダー高分子としてPVDF-HFP(Solvay社、Solef 21510)を固形分10wt%の溶液で準備した後、マイクログラビアコーティングで長辺から短辺へ延びる斜線方向へ電極接着層のパターンを塗布した。ロールの表面には、4mmの塗布領域及び1mmの未塗布領域が生ずるように凹凸を設けた。コーティング後、バインダー溶液の広がり性によって、最終コーティングされた領域の幅は4.2mm、コーティングされていない領域の幅は0.8mmであり、全面におけるコーティング領域の割合は84%であった。コーティング直後、水に40秒間浸漬して相分離して乾燥することで、両面にパターンコーティング層を完成した。完成した分離膜の通気時間は215秒/100ccで良好であった。電極接着層が形成された分離膜を100℃で張り合わせた後に剥離したときの剥離力は、75.6gf/mmで良好であった。完成した分離膜は、コバルト酸リチウム(Lithium cobalt oxide,LCO)系正極と人造黒鉛系負極を用いて、全面加圧によって単位セルを製作した。単位セルを製作して剥離した後、負極の表面を確認すれば、図5のようにパターン化した接着層の痕跡を確認することができた。」 ケ.「【0089】 評価例:電解液の濡れ性の測定 実施例1~5、比較例1~5で製造した単位セルを電解液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7、LiPF6 1.0M)に単位セルの長辺部分が浸漬されるようにし、短辺の下端から約1mmの深さで浸漬して10分間電解液が含浸する高さの最小値を測定した。図7は、電極組立体200の含浸テストを概略的に図式化して示した図であり、容器300に電解液400を入れて、ここに電極組立体を立てられた状態で放置する。また、この単位セルを20層の積層構造にしてリチウム二次電池を完成した。当該電池を1C/1C条件で50回充放電した後、厚さ分布を確認することで単位セルの捻れ有無を非接触式の厚さ測定機を使って確認した。単位セルの中心部に対して端部の厚さが3%以上厚く測定される場合、捻れが発生したと判断した。」 コ.「【図1】 [図:0001425489000001.jpg] 」 サ.「【図4】 [図:0001425489000002.jpg] 」 シ.「【図5】 [図:0001425489000003.jpg] 」 ス.「【図7】 [図:0001425489000004.jpg] 」 上記「ア.」ないし「ス.」の記載及び図面から、引用例には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (ア)上記「ケ.」の段落【0089】の記載によれば、「電解液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7、LiPF6 1.0M)」は非水電解液であるので、引用例に記載の「リチウム二次電池」は、非水電解液を備えるものである。 (イ)上記「ウ.」の段落【0030】の記載によれば、分離膜は正極と負極を絶縁しているので、正極、正極と負極を絶縁する分離膜、負極が順次積層されてなる単位セルを有するものである。 (ウ)上記「ア.」の段落【0007】、上記「ウ.」の段落【0030】、上記「ケ.」の段落【0089】の記載によれば、完成したリチウム二次電池は、単位セルが電池ケースに収納された後に電解液が注液されたものである。 (エ)上記「ア.」の段落【0006】、【0008】、上記「ウ.」の段落【0030】の記載によれば、巻取型(ゼリーロール型)リチウム二次電池は、正極、分離膜、負極を丸く巻き取った単位セルを含むものである。 (オ)上記「ア.」の段落【0006】、【0008】、上記「ウ.」の段落【0030】、上記「エ.」の段落【0036】の記載によれば、巻取型(ゼリーロール型)リチウム二次電池は、単位セルのいずれか一長辺が下方または上方に位置するように立てられた状態で放置され、電解液が長辺側から含浸されるものである。 (カ)上記「ク.」の段落【0078】の記載によれば、分離膜は、ポリエチレン系多孔性高分子基材の一方の面上に、無機粒子としてアルミナを含有する無機多孔性コーティング層を有するものである。また、上記「ウ.」の段落【0031】の記載によれば、分離膜は、長方形のものである。 (キ)上記「イ.」の段落【0011】、上記「オ.」の段落【0038】、上記「キ.」の段落【0058】~【0059】、上記「コ.」の【図1】の記載によれば、分離膜の少なくとも一方の主面上に形成されたパターン化電極接着層は、所定の厚さを有する電極接着層ユニットの間に接着層が形成されていない電極接着層非形成部が存在するものである。ここで、上記「ク.」の段落【0079】、上記「シ.」の【図5】の記載によれば、負極の表面のパターン化した接着層の痕跡は、負極の主面の一方の長辺から他方の長辺まで直線から形成されていることが見てとれる。そして、上記「ケ.」の段落【0089】、上記「ス.」の【図7】の記載によれば、分離膜の形状、大きさは、負極と略同一であることが見てとれる。したがって、分離膜の少なくとも一方の主面上に形成されたパターン化電極接着層は、分離膜の主面の一方の長辺から他方の長辺まで直線で所定の厚さにより形成されている電極接着層ユニットの間に、接着層が形成されていない電極接着層非形成部が存在するものである。 (ケ)上記「ク.」の段落【0079】、上記「シ.」の【図5】の記載によれば、負極の表面のパターン化した接着層の痕跡は、長辺との角度が、およそ45°である点が見てとれる。ここで、上記「ケ.」の段落【0089】、上記「ス.」の【図7】の記載によれば、分離膜の形状、大きさは、負極と略同一であることが見てとれる。したがって、電極接着層ユニットと、分離膜の主面の長辺との角度が、およそ45°であるといえる。 (コ)上記「エ.」の段落【0036】、上記「カ.」の段落【0041】、上記「サ.」の【図4】の記載によれば、電極接着層非形成部が短辺から短辺へ延びる電極接着層パターンを有すると、電解液が中央部まで到達する含浸距離が長くなり、分離膜の一長辺から他長辺へ長辺に対して垂直に延びる線のみから形成されたユニットは、短辺の縁部に電極接着層が全く塗布されない場合が発生し得、分離膜と電極との接着が適切に行われないとの課題を有するものである。 以上のことから、特に実施例1に着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「正極と、負極と、これらを絶縁する分離膜と、を含む単位セルと、 非水電解液と、 単位セルおよび非水電解液を収容する電池ケースと、 を備える、リチウム二次電池であって、 正極、分離膜、負極を丸く巻き取った単位セルを備える巻取型(ゼリーロール型)であり、 巻取型(ゼリーロール型)のリチウム二次電池は、単位セルのいずれか一長辺が下方または上方に位置するように立てられた状態で放置され、電解液が長辺側から含浸されるものであり、 分離膜は、ポリエチレン系多孔性高分子基材と、その面上に、無機粒子としてアルミナを含有する無機多孔性コーティング層と、を備え、 分離膜は、長方形であり、 分離膜の少なくとも一方の主面上に形成されたパターン化電極接着層は、分離膜の主面の一方の長辺から他方の長辺まで直線で所定の厚さにより形成されている電極接着層ユニットの間に、接着層が形成されていない電極接着層非形成部が存在するものであり、 電極接着層ユニットと、分離膜の主面の長辺との角度が、およそ45°である、 リチウム二次電池。」 (4)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における、「正極」、「負極」、これらを絶縁する「分離膜」、これらを含む「単位セル」は、それぞれ本願補正発明でいう「正極」、「負極」、これらを絶縁する「セパレータ」、これらを含む「電極体」に相当する。してみれば、引用発明における正極、分離膜、負極を丸く巻き取った「単位セル」、単位セルおよび非水電解液を収容する「電池ケース」は、それぞれ本願補正発明でいう「捲回電極体」、電極体および非水電解液を収容する「電池ケース」に相当する。そして、これら単位セル、非水電解液、および電池ケースを備える引用発明における「リチウム二次電池」は、本願補正発明でいう電極体と、非水電解液と、電極体および非水電解液を収容する電池ケースと、を備える「非水電解液二次電池」に相当する。 ここで、引用発明の「巻取型(ゼリーロール型)のリチウム二次電池は、単位セルのいずれか一長辺が下方または上方に位置するように立てられた状態で放置され、電解液が長辺側から含浸されるもの」であるので、「単位セル」の捲回軸方向は、電池ケースの底に溜まる非水電解液の液面と垂直であるといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「正極と、負極と、これらを絶縁するセパレータと、を含む電極体と、 非水電解液と、 前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、 を備える、非水電解液二次電池であって」、「前記電極体は、捲回電極体」である点で一致する。 ただし、非水電解液二次電池について、本願補正発明は、「車両駆動用電源に用いられるもの」であることを特定するのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。 さらに、本願補正発明は、「捲回電極体の捲回軸方向の寸法は、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大き」く、「電極体の捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と平行」であることを特定するのに対して、引用発明は電極体の捲回軸方向の寸法について特定がなく、捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と垂直である点で相違する。 イ.引用発明における、長方形であり、正極、分離膜、負極を丸く巻き取った「単位セル」を構成できる程度の長さを有している「分離膜」は、本願補正発明の、「長尺状」の「セパレータ」に相当する。また、引用発明における分離膜が備える「ポリエチレン系多孔性高分子基材」は、「ポリエチレン系多孔性高分子」が樹脂であるので、本願補正発明でいう「多孔質樹脂製の基材層」に相当する。さらに、引用発明における「無機粒子としてアルミナを含有する無機多孔性コーティング層」は、本願補正発明でいう「無機粒子を含有するセラミック層」に相当する。そして、引用発明における「分離膜」においても、長尺状であり、主面は、一対の長辺を有し、一対の長辺は、単位セルの捲回軸方向に直交するものである。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「セパレータは、多孔質樹脂製の基材層と、その少なくとも一方の面上に、無機粒子を含有するセラミック層と、を備え、 前記セパレータは、長尺状であり、 前記セパレータの主面は、一対の長辺を有し、 前記一対の長辺は、前記電極体の捲回軸方向に直交」している点で一致する。 ウ.引用発明における分離膜の少なくとも一方の主面上に形成されたパターン化電極接着層は、分離膜の主面の一方の長辺から他方の長辺まで直線で所定の厚さにより形成されている電極接着層ユニットの間に、接着層が形成されていない電極接着層非形成部が存在するものであるので、分離膜の少なくとも一方の主面上に、ストライプパターンが形成されるように、電極接着層非形成部による所定ピッチで設けられるとともに、分離膜の主面の一方の長辺から他方の長辺まで、所定の厚み分、電極接着層非形成部より突出した凸部として形成される電極接着層ユニットを備えているといえる。してみれば、引用発明における、「電極接着層ユニット」は、本願補正発明でいう「接着層」に相当する。そして、引用発明における電極接着層ユニットと、分離膜の主面の長辺との角度が、およそ45°であることは、本願補正発明で特定する「20°以上70°以下」の範囲に含まれる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「セパレータは、その少なくとも一方の前記主面上に、ストライプパターンが形成されるように所定のピッチで設けられた接着層をさらに備え、 前記接着層は、前記セパレータの主面の一方の長辺から他方の長辺まで一方向に延びる凸部として形成された部分を有し、 前記接着層と、前記セパレータの主面の長辺との角度が、20°以上70°以下である」点で一致する。 よって、上記「ア.」ないし「ウ.」によれば、本願補正発明と引用発明とは、 「正極と、負極と、これらを絶縁するセパレータと、を含む電極体と、 非水電解液と、 前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、 を備える、非水電解液二次電池であって、 前記電極体は、捲回電極体であり、 前記セパレータは、多孔質樹脂製の基材層と、その少なくとも一方の面上に、無機粒子を含有するセラミック層と、を備え、 前記セパレータは、長尺状であり、 前記セパレータの主面は、一対の長辺を有し、 前記一対の長辺は、前記電極体の捲回軸方向に直交しており、 前記セパレータは、その少なくとも一方の前記主面上に、ストライプパターンが形成されるように所定のピッチで設けられた接着層をさらに備え、 前記接着層は、前記セパレータの主面の一方の長辺から他方の長辺まで一方向に延びる凸部として形成された部分を有し、 前記接着層と、前記セパレータの主面の長辺との角度が、20°以上70°以下である、非水電解液二次電池。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、「車両駆動用電源に用いられるもの」であることを特定するのに対して、引用発明はそのような特定がない点。 [相違点2] 本願補正発明は、「捲回電極体の捲回軸方向の寸法は、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大き」く、「電極体の捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と平行」であることを特定するのに対して、引用発明は電極体の捲回軸方向の寸法について特定がなく、捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と垂直である点。 (5)判断 上記各相違点について検討する。 ア.相違点1について 例えば原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2002-352863号公報(特に、段落【0034】を参照)、更には、特開2011-243527号公報(特に、段落【0045】、【0093】~【0094】を参照)、特開2021-177453号公報(特に、段落【0002】を参照)に記載されているように、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池を車両駆動用電源に用いることは周知の技術事項であり、引用発明においても、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ.相違点2について 引用発明において、捲回電極体の捲回軸方向の寸法と捲回軸方向に垂直な方向の寸法との相対関係をどのようなものとするかは、所望の電池ケースの大きさ等を考慮して当業者が適宜選択すべき構成である。そして、例えば、特開2011-243527号公報(特に、【図1】~【図2】を参照)、特開2021-177453号公報(特に、【図1】~【図2】を参照)、特開2018-49681号公報(特に、【図3】を参照)に記載されているように、捲回電極体の捲回軸方向の寸法を、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大きくすることは周知の構成にすぎず、引用発明においても、捲回電極体の捲回軸方向の寸法を、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大きくする構成とすることは、当業者が適宜採用し得たことである。 さらに、電極体の捲回軸方向を、電池ケース内の非水電解液の液面と平行となるようにするか、垂直となるようにするかは、所望の端子やリードの取り出し方を考慮して当業者が適宜選択すべきことは、リチウム二次電池において一般的な事項であり、例えば、上記特開2011-243527号公報(特に、段落【0038】~【0040】、【0045】、【図1】を参照)、上記特開2021-177453号公報(特に、段落【0015】~【0018】、【図1】~【図2】を参照)、上記特開2018-49681号公報(特に、段落【0013】~【0015】、【0018】、【0025】、【図1】~【図3】を参照)に記載されているように、電極体の捲回軸方向を、電池ケース内の非水電解液の液面と平行することは周知の構成にすぎない。そして、引用発明においても、電極体の捲回軸方向を、電池ケース内の非水電解液の液面と平行とすることに阻害要因があるわけでもなく、適宜採用し得たことである。 したがって、相違点2は当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 よって、上記「ア.」及び「イ.」に検討したように、本件補正発明は引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)審判請求人の主張について 審判請求人は審判請求書において、引用発明の、電極接着層が形成されていない線状の非形成部が、分離膜の長辺から長辺に延びている(電極接着層のユニットが長辺から長辺に延びる線(辺)のみからなる)領域は、引用発明の請求項1の規定を満たさない部分になるため、セパレータをかなりの長さの長尺状として、電極接着層が形成されていない線状の非形成部が、分離膜の長辺から長辺に延びている領域がほとんどを占める構成とするには阻害要因があるとともに、引用発明の巻取型のリチウム二次電池において、捲回電極体は、捲回軸方向が非水電解液の液面に垂直となるように設置される場合は、開口端部の一方は、非水電解液に完全に浸漬しているために、本願補正発明のように、捲回電極体を、捲回軸方向が非水電解液の液面に平行となるように設置する場合と比べて、非水電解液の含浸性において有利であるので、捲回電極体を、捲回軸方向が非水電解液の液面に平行となるように設置するには阻害要因がある旨主張している。 しかし、そもそも本願補正発明は、単に「セパレータは、長尺状」である点を特定しているにすぎず、セパレータの縦横比や捲回数を何ら特定していないところ、引用発明の分離膜にあっても、長方形であり、正極、分離膜、負極を丸く巻き取った「単位セル」を構成できる程度の「長尺状」の構成を有しているものである。さらに、引用発明は、電極接着層非形成部が少なくとも長辺から短辺へ延びる部分を有していればよく、長辺から長辺へ延びる部分も含むことを排除するものではない。より具体的には、引用発明は、電極接着層非形成部が短辺から短辺へ延びる電極接着層パターンを有すると、電解液の含浸が始まる長辺側に電極接着層非形成部がなくなり、電解液が中央部まで到達する含浸距離が長くなり、分離膜の一長辺から他長辺へ長辺に対して垂直に延びる線のみから形成されたユニットは、短辺の縁部に電極接着層が全く塗布されない場合が発生し得、分離膜と電極との接着が適切に行われないとの課題(上記「(3)(コ)」参照)を有する発明であるところ、電極接着層ユニットと、分離膜の主面の長辺との角度が、およそ45°である引用発明においては、短辺の縁部に電極接着層が全く塗布されない場合が発生しない。そして、電極接着層が形成されていない線状の非形成部が、電解液の含浸が始まる長辺側に電極接着層非形成部のある、分離膜の長辺から長辺に延びている領域は、電解液の含浸性においては良好な領域でもあるので、引用発明の分離膜をかなりの長さの長尺状として、電極接着層が形成されていない線状の非形成部が、分離膜の長辺から長辺に延びている領域がほとんどを占める構成とすることに阻害要因があるとは認められない。 また、捲回電極体を、捲回軸方向が非水電解液の液面に平行となるように設置する場合、開口端部の両方から非水電解液が含浸することができるため、捲回電極体の、捲回軸方向が非水電解液の液面に垂直となるように設置される場合は、捲回電極体を、捲回軸方向が非水電解液の液面に平行となるように設置する場合と比べて、非水電解液の含浸性において必ずしも有利であるとまでは言えず、引用発明の捲回電極体を、捲回軸方向が非水電解液の液面に平行となるように設置することに阻害要因があるとまではいえない。 よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 3.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和6年7月2日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和6年3月12日にされた手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由]1.(2)」の【請求項1】に記載したとおりのものである。 2.原査定の概要 本願の請求項1に対する原査定(令和6年4年4日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特表2021-517725号公報 引用文献2:特開2002-352863号公報(周知技術を示す文献) 3.引用例、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用した引用例(引用文献1)の記載事項及び引用発明は、上記「第2 [理由]2.(3)」に記載したとおりである。 4.対比 本願発明は、上記「第2 [理由]2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、「非水電解液二次電池」について、「前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、」を備えることの限定を省き、さらに、「電極体」について、「前記捲回電極体の捲回軸方向の寸法は、捲回軸方向に垂直な方向の寸法よりも大きく」、「前記電極体の捲回軸方向は、前記電池ケース内の前記非水電解液の液面と平行」であることの限定を省いたものに相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の[相違点1]において相違し、その余の点で一致するといえる。 [相違点1] 本願発明は、「前記非水電解液二次電池は、車両駆動用電源に用いられるもの」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点。 5.判断 上記「第2 [理由]2.(5)ア.」で検討したとおり、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池を車両駆動用電源に用いることは周知の技術事項であり、引用発明においても、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-010941

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