特許拒絶査定不服審判
2024-016830
リチウム電池用アルミプラスチックフィルム及びその製造方法
- 審判番号
- 2024-016830
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-005229
- 請求日
- 2024年10月22日
- 審決日
- 2025年09月09日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 行武 哲太郎
- 分類
- P18 .113-Z (H01M) / P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-5229「リチウム電池用アルミプラスチックフィルム及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和6年5月17日出願公開、特開2024-68054〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年1月17日(パリ条約の例による優先権主張 2022年11月4日(TW)台湾)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 2月22日付け 拒絶理由通知書
5月 8日 意見書・手続補正書
8月19日付け 拒絶査定
10月22日 審判請求書・手続補正書
令和 7年 1月23日 前置報告書
1月31日 上申書
以下では、令和6年8月19日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年10月22日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
事案に鑑み、請求項1に係る本件補正を検討する。
本件補正前の請求項1の記載は、以下の(1)に示すとおりであり、本件補正後の請求項1の記載は、以下の(2)に示すとおりである。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は、令和6年5月8日の手続補正書により補正された次のとおりのものである。
【請求項1】
変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤を調製する工程と、
前記ポリオレフィン接着剤をアルミ箔層の片面に塗布する工程と、
内側ポリオレフィン層を前記ポリオレフィン接着剤に設置する工程と、
前記ポリオレフィン接着剤を乾燥することによって、前記アルミ箔層と前記内側ポリオレフィン層との間にポリオレフィン接着剤層を形成する工程と、を含み、
前記変性ポリオレフィン高分子は変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含み、前記変性ポリオレフィン高分子の分子量は150000g/mol~200000g/molであり、前記変性ポリオレフィン高分子の酸価は5.8mgKOH/g~10mgKOH/gであることを特徴とする、リチウム電池用アルミプラスチックフィルムの製造方法。
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものであり、後の参照の便宜のため、請求項1の記載に記号A~Gを付して分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤を調製する工程と、
B 前記ポリオレフィン接着剤をアルミ箔層の片面に塗布する工程と、
C 内側ポリオレフィン層を前記ポリオレフィン接着剤に設置する工程と、
D 前記ポリオレフィン接着剤を乾燥することによって、前記アルミ箔層と前記内側ポリオレフィン層との間にポリオレフィン接着剤層を形成する工程と、を含み、
E1 前記変性ポリオレフィン高分子は変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含み、
E2 前記変性ポリオレフィン高分子の分子量は150000g/mol~200000g/molであり、
E3 前記変性ポリオレフィン高分子の酸価は5.8mgKOH/g~10mgKOH/gであり、
F 前記ポリオレフィン接着剤を調製する工程は、混合溶媒で変性粒子を溶解した後に、前記硬化剤を更に添加して前記ポリオレフィン接着剤を形成することを含み、
F1 前記変性粒子の材料は前記変性ポリオレフィン高分子であり、
F2 前記混合溶媒は、メチルシクロヘキサンである非極性溶媒と、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合物である極性溶媒とを含み、
F3 前記非極性溶媒と前記極性溶媒との質量比(前記非極性溶媒:前記極性溶媒)は4:1~3:2である
G ことを特徴とする、リチウム電池用アルミプラスチックフィルムの製造方法。
2 本件補正の目的
前記1によれば、本件補正は、請求項1に係る発明を特定する「ポリオレフィン接着剤を調整する工程」について、「混合溶媒で変性粒子を溶解した後に、前記硬化剤を更に添加して前記ポリオレフィン接着剤を形成することを含」むとの限定を加え、請求項1に係る発明を特定する「変成粒子の材料」について、「前記変成ポリオレフィン高分子であ」るとの限定を加え、請求項1に係る発明を特定する「混合溶媒」について、「メチルシクロヘキサンである非極性溶媒と、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合物である極性溶媒とを含」むとの限定を加え、さらに、「非極性溶媒」と「極性溶媒」との質量比について「4:1~3:2であ」るとの限定を加えるものである。
そして、本件補正の前後において、請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、同一であると認められる。
そうすると、本件補正は、少なくとも特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」(いわゆる限定的減縮)を目的としていると認められる。
3 補正の適否
本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)に適合するかについて、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に示した記載のとおりのものと認める。
(2)引用文献の記載
原査定の理由(以下の第4を参照)で引用された特開2018-111808号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車載や家庭蓄電などへの用途拡大に伴い、蓄電デバイスは、大容量化、長期の耐久性および安全性が求められている。特に車載用途においては、電解質溶液にさらされた条件でも優れた接着力、耐久性を維持することが求められる。とりわけ、成形加工された包装材においては、成形時にフィルムや接着剤が引き伸ばされるため、電解質溶液に浸漬した際に浮き等が生じてしまわぬよう、より高いレベルの耐久性が必要となる。
【0009】
特許文献1~3に記載される接着剤は、充分な接着強度を発現するが、長期の電解質溶液への浸漬により接着剤の架橋構造が劣化していき、充分な接着強度を維持することができないという課題がある。
また、特許文献4,5に記載される接着剤は、特許文献1~3に比べて架橋構造の耐久性が上がっているため長期の電解質溶液耐性は向上しているものの未だ充分ではない。特に包装材を成形加工した際に、長期間、電解質溶液に浸漬することにより成形部の外観不良や浮きが生じてしまうという課題がある。
【0010】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、電解質溶液に長期間浸漬されても、成形部にて外観不良を生じず、接着強度を高レベルで維持できる積層体を形成できる接着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、従来よりも電解質溶液耐性に優れる蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器および蓄電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、ポリオレフィン樹脂成分と硬化剤(C)とを含有する接着剤組成物であって、
前記ポリオレフィン樹脂成分が、カルボキシル基または酸無水物基を有する、融点が55~100℃、重量平均分子量が4万~40万であるポリオレフィン樹脂(A)と、カルボキシル基または酸無水物基を有する、重量平均分子量が200~13000である重合体(B)とを含み、
前記重合体(B)を、前記ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の合計100重量%中0.2~5.0重量%含み、
硬化剤(C)が、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする接着剤組成物に関する。
【0012】
本発明は、前記重合体(B)の酸価X(mmol/g)が1.2~20であることを特徴とする前記接着剤組成物に関する。
本発明は、前記ポリオレフィン樹脂(A)の酸価P(mmol/g)が0.02~1.2であることを特徴とする前記接着剤組成物に関する。
本発明は、前記ポリオレフィン樹脂(A)をi(g)、前記重合体(B)をj(g)、前記硬化剤の官能基をZ(mmol)とした場合に、Z/(P*i+X*j)が0.3~10であることを特徴とする前記接着剤組成物に関する。」
イ 「【0020】
本実施形態の蓄電デバイス用容器は、本実施形態の蓄電デバイス用包装材を用いて形成されたものであり、その形態は特に制限されない。好適な例として、図2に示すようなトレイ状の蓄電デバイス用容器が挙げられる。図2の例において、トレイの内部、即ち、電極や電解質溶液等を収容するための空間を形成する凹面側に熱融着樹脂フィルム(15)が配置され、トレイの外側、即ち、凸面側に外層側樹脂フィルム(11)が配置される。トレイ状の他、筒状(円筒、四角筒、楕円筒等)の蓄電デバイス用容器も好適である。これらの蓄電デバイス用容器は、通常、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して得られる。
蓄電デバイス用容器の内側、即ち電解質溶液等と接する面は、熱融着樹脂フィルム(15)である。熱融着樹脂フィルム(15)のフランジ部と、別の蓄電デバイス用包装材を構成する熱融着樹脂フィルム(15)のフランジ部、或いは別の蓄電デバイス用容器の熱融着樹脂フィルム(15)のフランジ部とを対向・接触させ、加熱することにより、熱融着樹脂フィルム(15)同士を融着させ、電解質溶液や電極等の蓄電デバイス部材を封入する。
本実施形態の蓄電デバイス用の容器は、トレイ状の他、袋状用の容器(パウチタイプ)も含む。」
ウ 「【0038】
なお、ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、以下のようにして求める。
TSKgel superHZM-Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC-8220GPCシステムにより、カラム温度40℃、溶離液にテトラヒドロフラン、流量毎分0.35mLの条件にて測定した。サンプルは、2mgのポリオレフィン樹脂(A)を、5mLのテトラヒドロフランに溶解して調整した。また、Mwは標準ポリスチレン換算で算出した。
ポリオレフィン樹脂(A)を2種以上併用した場合は、その混合物全体の重量平均分子量を意味する。」
エ 「【0064】
接着剤組成物中に含まれるポリオレフィン樹脂(A)をiグラム(g)、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有する重合体(B)をjグラム(g)、硬化剤(C)の官能基をZミリモル(mmol)とした場合に、Z/(P*i+X*j)(P:ポリオレフィン樹脂(A)の酸価、X:重合体(B)の酸価)が0.3~10となる範囲で硬化剤(C)を含み、0.5~7の範囲で含むことがより好ましい。なお、本明細書において「*」は乗算記号を表す。
0.3~10の範囲内であると、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基由来の活性水素に対するエポキシ基の量が適しているため、架橋構造により凝集力、接着強度、電解質溶液への耐久性が優れる。また、未反応の硬化剤(C)が過量に存在しにくくなることからも電解質溶液への耐久性が良化する。」
オ 「【0074】
本実施形態の接着剤組成物は有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては特に限定されないが、単独もしくは混合溶剤として本接着剤組成物で使用する材料を溶解でき、硬化剤(C)との反応性が不活性であり、接着剤塗工時の乾燥工程における過熱により揮発させて除去できるものが好ましい。これらの溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;
n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族系有機溶剤;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;
エタノール、メタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶剤;
ジイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂(A)の溶液の保存安定性の点から、芳香族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、芳香族系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用、脂環族系有機溶剤とケトン系溶剤の併用、脂環族系有機溶剤とアルコール系溶剤の併用が好ましい。」
カ 「【0078】
<熱融着樹脂フィルム>
熱融着樹脂フィルム(15)は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系フィルムであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムであることが好ましい。熱融着樹脂フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、20~150μmであることが好ましい。」
キ 「【実施例】
【0084】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、%は質量%を、部は質量部を示す。」
ク 「【0088】
<ポリオレフィン樹脂(A)の調製>
<製造例1>
ポリオレフィン重合反応として、窒素置換した内容積500mLのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mL、メチルアルミノキサンをAl原子換算で0.5mg、ジメチルシリル-ビス-(4,5,6,7,8-ペンタヒドロアズレン-2-イル)ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で1.25μg原子を投入し、20℃に昇温した。続いてプロピレンを、100L/hrの一定速度で供給しながら、20℃で1.32MPaの一定圧力を維持するように1-ブテンモノマーを連続供給し、重合を開始した。20℃、8時間、重合を行った後、イソプロパノールを添加して重合を停止した。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、プロピレン/1-ブテン=72/28(モル比)で共重合されたポリオレフィンを得た。
ポリオレフィンへのモノマーグラフト反応として、内容積2Lのガラス製反応容器に得られたポリオレフィン380gと、トルエン600gと、グラフトモノマーとして無水マレイン酸16gを仕込み、窒素気流下、加熱溶解させ、溶液温度を100℃にした。1時間攪拌した後に、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)4gを添加して4時間その温度で反応を続けた。こうして得られたポリマー溶液を多量のメタノール中に攪拌しながら添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過した後に数回メタノールで洗浄し、乾燥させることによりポリオレフィン樹脂(A1)を得た。得られたポリオレフィン樹脂(A1)について、GPC測定からポリオレフィン樹脂(A1)以外の成分が除去できていることを確認した。
ポリオレフィン樹脂(A1)のMw、酸価P、融点、ΔEは、それぞれ186000、0.018mmol/g、76℃、30mJ/mgであった。」
ケ 「【0090】
<製造例3>
ポリオレフィン重合反応の際にプロピレンを150L/hrの流量で供給し、ポリオレフィンへのモノマーグラフト反応の際にポリオレフィン379g、グラフトモノマーとして無水マレイン酸を15g、ラウリルメタクリレートを4g、ラジカル開始剤としてtert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)を2g使用した以外は製造例1と同様の方法で、プロピレン/1-ブテン=86/14(モル比)で共重合されたポリオレフィン樹脂(A3)を得た。
ポリオレフィン樹脂(A3)のMw、酸価P、融点、ΔEは、それぞれ194000、0.12mmol/g、92℃、28mJ/mgであった。」
コ 「【0104】
<主剤の調製>
ガラス容器にポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有率が表1記載の値となるようにポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)を計20g配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒80gで溶解させることで固形分濃度20%の樹脂溶液を調製し、これを主剤溶液として用いた。
【0105】
<硬化剤の調製>
<硬化剤の調製例1>
ガラス容器に、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネートTPA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソシアネート基の官能基量5.2mmol/g)を50g、酢酸エチルを50g加え溶解させることで、固形分濃度が50%の溶液を得た。これを硬化剤(C1)とする。)」
サ 「【0110】
<処理アルミの作製例2>
アミノ化フェノール重合体1部と、フッ化クロム(III)0.5部と、リン酸2部とを蒸留水346.5部に溶解させることで、固形分濃度1%の処理剤2を作製した。
脱脂処理を施したアルミニウム箔(40μm)の一方の面に乾燥塗布量50mg/m2になるように処理液2を塗工し、150℃で乾燥することにより表面処理層にアミノ化フェノール重合体由来の水酸基を有するAL-2を得た。」
シ 「【0113】
<実施例1~23、比較例1~4>
表2に示すZ/(P*i+Z*j)の値となるように、各種主剤溶液と硬化剤溶液を配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒で希釈して固形分濃度15%に調整して接着剤組成物を作製した。但し、実施例23については固形分濃度15%では粘度が高かったため、固形分10%に調整して接着剤組成物を作製した。
後述する方法に従って、表2記載の金属箔と未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体を作製し、初期接着強度、電解質溶液浸漬後の接着強度、電解質溶液浸漬後の成形部外観変化の有無について評価した。」
(当審注:【0008】~【0012】及び【0064】の下線部に着目すると、【0113】の「Z/(P*i+Z*j)」は、「Z/(P*i+X*j)」の誤記と認められる。)
ス 「【0114】
【表1】
[図:0001431836000001.jpg]
」
セ 「【0115】
【表2】
[図:0001431836000002.jpg]
」
(当審注:【0008】~【0012】及び【0064】の下線部に着目すると、【表2】の第1行右から2列目の「Z/(P*i+Z*j)」は、「Z/(P*i+X*j)」の誤記と認められる。)
ソ 「【0117】
<性能試験>
(ナイロン/処理アルミラミネートフィルムの作製)
処理アルミの非処理面に対して、ウレタン系ドライラミネート接着剤(東洋モートン株式会社製「AD502/CAT10」を乾燥塗布量4g/m2となるように塗工し、100℃で1分間乾燥した後、厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムを貼りあわせた。その後、得られた積層体を60℃で7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を充分に硬化させた。こうして得られたナイロン/処理アルミラミネートフィルムを、以下「ONY/AL積層フィルム」と呼ぶ。
【0118】
(ナイロン/処理アルミ/未延伸ポリプロピレンラミネートフィルムの作製)
ONY/AL積層フィルムのアルミ処理面に対して、実施例および比較例の各接着剤を乾燥塗布量2g/m2となるように塗工し、100℃で1分間乾燥した後、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を貼りあわせた。その後、得られた積層体を40℃で7日間のエージングを行い、接着剤を充分に硬化させた。こうして得られたナイロン/処理アルミ/CPPラミネートフィルムを、以下「ONY/AL/CPP積層フィルム」と呼ぶ。」
タ 「【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明に係る接着剤組成物は、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの容器を形成するための包装材用(積層体)に好適に使用できる。
その他、本発明に係る接着剤組成物は、蓄電デバイスの容器を形成するための包装材の他、建築、化学、医療、自動車などのように高接着強度、耐薬品性が求められる各種産業分野における積層体の形成に好適に使用できる。」
(3)引用発明の認定
引用文献に記載された発明(以下「引用発明」という。)として、実施例8の接着剤組成物を使用したものを認定する。
ア 実施例8の接着剤組成物
以下、実施例8の接着剤組成物の組成を明らかにする。
(ア)実施例8の接着剤組成物は、【表2】によれば、主剤3を含み、主剤3は、ポリオレフィン樹脂(A)としてポリオレフィン樹脂A3を、重合体(B)として重合体B1を用いるものと解される。
(イ)【表1】(以下に要部を再掲)によれば、主剤3は、ポリオレフィン樹脂A3と重合体B1との和に対する重合体B1の含有率が0.3重量%である(最下行)と解される。
引用文献では、「ポリオレフィン樹脂(A)をiグラム(g)」、「重合体(B)をjグラム(g)」(【0064】)としているから、ポリオレフィン樹脂A3の重量をi、重合体B1の重量をjで表すと、j/(i+j)=0.003となる。すなわち、j=0.003(i+j)が成立する。
【表1】(要部)
[図:0001431836000003.jpg]
(ウ)【表2】によれば、実施例8について、
Z/(P*i+X*j)=0.8 (式1)
が成立する。
【表2】によれば、実施例8では硬化剤C1を使用する。硬化剤C1に用いられるヘキサメチレンジイソシアネートの三量体の酸価は、5.2mmol/gである(【0105】)。Zは、硬化剤の官能基のミリモル数であるから、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体の重量をkとすると、Z=5.2kである。
そして、【表1】によれば、P=0.12mmol/g、X=3.9mmol/gである。
式1に上記数値を代入することにより、
5.2k/(0.12i+3.9j)=0.8
5.2k=0.8(0.12i+3.9j)
5.2k=0.8(0.12i+(0.12+3.78)j)
5.2k=0.8(0.12(i+j)+3.78j)
6.5k=0.12(i+j)+3.78j
となり、前記(イ)によれば、j=0.003(i+j)であるから、
6.5k=0.12(i+j)+3.78×0.003(i+j)
6.5k=0.12(i+j)+0.01134(i+j)
6.5k=0.13134(i+j)
k=0.02020615(i+j)
となる。
すなわち、実施例8では、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1の合計(i+j)を100部とすると、硬化剤C1のヘキサメチレンジイソシアネートの三量体は約2部の量となる。
(エ)実施例8における主剤3は、ポリオレフィン樹脂A3と重合体B1とを計20g配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒80gで溶解させることで固形分濃度20%の樹脂溶液を調整して用いる(【0104】)から、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1の合計(i+j)を100部とすると、混合溶媒は400部となり、メチルシクロヘキサンは280部、メチルエチルケトンは120部となる。ここで、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1は固形分であると解される。
すなわち、主剤3は、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1からなる固形分100部を、メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる混合溶媒で溶解させて調整すると解される。
(オ)実施例8における硬化剤C1は、ガラス容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を50g、酢酸エチルを50g加え溶解させることで、固形分濃度が50%の溶液として得る(【0105】)。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体は固形分であると解される。
そして、前記(ウ)に示したように、実施例8では、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1合計100部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部を使用する。
そうすると、実施例8で用いる硬化剤C1は、固形分であるヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部を、酢酸エチル2部に溶解させて得ると解される。
(カ)実施例8の接着剤組成物は、主剤3と硬化剤C1を配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒で希釈して固形分濃度15%に調整して作成する(【0113】)ものである。
このとき希釈に用いる混合溶媒の重量部をs部とする。
固形分は、前記(エ)及び(オ)で触れたように、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1合計100部と、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部との、計102部である。
また、主剤3には混合溶媒400部が、硬化剤C1には溶媒として酢酸エチル2部が含まれている。これらの合計は402部である。
混合溶媒s部で希釈して固形分濃度が15%となるためには、
102/(102+402+s)=0.15
102=0.15(504+s)
0.15s=102-0.15×504
s=680-504=176
である。
希釈に用いる混合溶媒は、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3の重量比であるから、メチルシクロヘキサン123.2部、メチルエチルケトン52.8部である。
以上によれば、実施例8の接着剤組成物は、主剤3と硬化剤C1を配合し、メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈して調整すると解され、該接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1合計100部と、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部とを固形分として含み、メチルシクロヘキサン403.2部(280+123.2部)と、メチルエチルケトン172.8部(120+52.8部)と、酢酸エチル2部とを溶媒として含むと解される。
(キ)ポリオレフィン樹脂A3は、【0090】の記載を参照すると、製造例1(【0088】)と同様の方法で得られるものである。
【0088】及び【0089】を参照すると、ポリオレフィン樹脂A3は、ポリオレフィンへのモノマーグラフト反応として、ポリオレフィンと、グラフトモノマーとして無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートを仕込み、反応を続けて得られたポリマー溶液を多量のメタノール中に攪拌しながら添加し、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをろ過した後に乾燥させることにより得ると解される。
イ 実施例8の金属箔
【表2】によれば、実施例8の金属箔はAL2であり、これは、「AL-2」(【0110】)のことであると解される。
すなわち、実施例8の金属箔は、【0110】の記載によれば、一方の面に水酸基を有する処理アルミニウム箔(処理アルミ)であると解される。
ウ 引用発明
前記(2)に示す記載並びに前記ア及びイによれば、引用文献には、以下に示す引用発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa1~iに分説し、「構成a1」のようにして参照する。
〈引用発明〉
a1 一方の面に水酸基を有する処理アルミニウム箔(処理アルミ)の非処理面にナイロンフィルムを貼りあわせてONY/AL積層フィルムを得、(前記イ、【0117】)
a2 ONY/AL積層フィルムのアルミ処理面に対して、接着剤を塗工し、100℃で1分間乾燥した後、未延伸ポリプロピレンフィルムを貼りあわせ、その後、接着剤を充分に硬化させて得られたONY/AL/CPP積層フィルムであって、(【0118】)
b 接着剤組成物は、リチウムイオン電池に好適に使用でき、(【0130】)
c1 接着剤組成物は、主剤3と硬化剤C1を配合し、メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈して調整し、(前記ア(カ))
c2 接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1合計100部と、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部とを固形分として含み、メチルシクロヘキサン403.2部と、メチルエチルケトン172.8部と、酢酸エチル2部とを溶媒として含み、(前記ア(カ))
d 主剤3は、ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1からなる固形分100部を、メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる混合溶媒で溶解させて調整し、(前記ア(エ))
e 硬化剤C1は、固形分であるヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部を、酢酸エチル2部に溶解させて得、(前記ア(オ))
f ポリオレフィン樹脂A3は、
f1 ポリオレフィンへのモノマーグラフト反応として、ポリオレフィンと、グラフトモノマーとして無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートを仕込み、反応を続けて得られたポリマー溶液を多量のメタノール中に攪拌しながら添加し、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをろ過した後に乾燥させることにより得、(前記ア(キ))
f2 重量平均分子量Mw、酸価Pは、それぞれ194000、0.12mmol/gであり、(【0038】、【0090】)
g 熱融着樹脂フィルム(15)はポリプロピレンの未延伸フィルムであり、(【0078】)
h 蓄電デバイス用容器の内側は、熱融着樹脂フィルム(15)である、(【0020】)
i ONY/AL/CPP積層フィルム。
(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは「変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤を調製する工程と、」というものである。
(ア)引用発明の「接着剤組成物」は、「主剤3と硬化剤C1を配合し、メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈して調整」すること(構成c1)により得られるものであるから、引用発明の構成c1は、接着剤組成物を調整する工程であると解され、引用発明の「接着剤組成物」及び「硬化剤C1」は、本件補正発明の「接着剤」及び「硬化剤」に相当する。
(イ)引用発明の「接着剤組成物」の「主剤3」に含まれる「ポリオレフィン樹脂A3」(構成d)は、「ポリオレフィンと、グラフトモノマーとして無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートを仕込み、反応を続けて得られた」もの(構成f、f1)であるから、無水マレイン酸によって変性した変性基の構造が無水マレイン酸を含むポリオレフィン高分子であると解され、本件補正発明の「変性ポリオレフィン高分子」に相当する。
(ウ)引用発明の「接着剤組成物」は、「ポリオレフィン樹脂A3」と「硬化剤C1」を含むから、本件補正発明の「変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤」に相当する。
(エ)以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤を調製する工程」を含む点で一致する。
イ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは「前記ポリオレフィン接着剤をアルミ箔層の片面に塗布する工程と、」というものである。
引用発明では、「一方の面に水酸基を有する処理アルミニウム箔(処理アルミ)の非処理面にナイロンフィルムを貼りあわせてONY/AL積層フィルムを得」(構成a1)、「ONY/AL積層フィルムのアルミ処理面に対して、接着剤を塗工」する(構成a2)から、引用発明の「接着剤を塗工」することは、接着剤を処理アルミニウム箔の処理面に塗布する工程であると解され、引用発明の「処理アルミニウム箔」及び「アルミ処理面」は、それぞれ本件補正発明の「アルミ箔層」及び「片面」に相当する。
引用発明でアルミ処理面に対して塗工される「接着剤」(構成a2)は、「接着剤組成物」(構成c1)であると解され、前記ア(ウ)によれば、本件補正発明の「ポリオレフィン接着剤」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記ポリオレフィン接着剤をアルミ箔層の片面に塗布する工程」を含む点で一致する。
ウ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは「内側ポリオレフィン層を前記ポリオレフィン接着剤に設置する工程と、」というものである。
(ア)引用発明における「ONY/AL積層フィルムのアルミ処理面に対して、接着剤を塗工し」、「未延伸ポリプロピレンフィルムを貼りあわせ」ること(構成a2)は、処理アルミニウム箔のアルミ処理面に塗布された接着剤に、「未延伸ポリプロピレンフィルム」を設置する工程であると解され、引用発明の「未延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件補正発明の「ポリオレフィン層」に相当する。
(イ)引用発明の「未延伸ポリプロピレンフィルム」は、「ポリプロピレンの未延伸フィルム」(構成g)と同一のものを指していると解されるから、「熱融着樹脂フィルム(15)」(構成g)であると解される。
そして、「熱融着樹脂フィルム(15)」は、「蓄電デバイス用容器の内側」である(構成h)。
そうすると、引用発明の「未延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件補正発明の「内側ポリオレフィン層」に相当する。
(ウ)以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、「内側ポリオレフィン層を前記ポリオレフィン接着剤に設置する工程」を含む点で一致する。
エ 発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは「前記ポリオレフィン接着剤を乾燥することによって、前記アルミ箔層と前記内側ポリオレフィン層との間にポリオレフィン接着剤層を形成する工程と、を含み、」というものである。
引用発明は、「アルミ処理面に対して、接着剤を塗工し、100℃で1分間乾燥」する(構成a2)であるから、引用発明の「100℃で1分間乾燥」することは、本件補正発明の「前記ポリオレフィン接着剤を乾燥すること」に相当する。
引用発明の「100℃で1分間乾燥」することによって、処理アルミニウム箔と未延伸ポリプロピレンフィルムとの間に位置する「接着剤」が、乾燥した層を形成することは明らかであり、当該乾燥した層は、本件補正発明の「ポリオレフィン接着剤層」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記ポリオレフィン接着剤を乾燥することによって、前記アルミ箔層と前記内側ポリオレフィン層との間にポリオレフィン接着剤層を形成する工程と、を含」む点で一致する。
オ 発明特定事項E1について
発明特定事項E1は「前記変性ポリオレフィン高分子は変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含み、」というものである。
前記ア(イ)で触れたように、引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」は、変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含むと解される。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記変性ポリオレフィン高分子は変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含」む点で一致する。
カ 発明特定事項E2について
発明特定事項E2は「前記変性ポリオレフィン高分子の分子量は150000g/mol~200000g/molであり、」というものである。
引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」は、「重量平均分子量Mw」が「194000」であるから、本件補正発明と引用発明とは、「前記変性ポリオレフィン高分子の分子量は150000g/mol~200000g/molであ」る点で一致する。
キ 発明特定事項E3について
発明特定事項E3は「前記変性ポリオレフィン高分子の酸価は5.8mgKOH/g~10mgKOH/gであり、」というものである。
引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」は、「酸価P」が「0.12mmol/gであ」る(構成f2)。
KOH(水酸化カリウム)は約56.1g/molであるから、引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」の「酸価P」をmgKOH/gに換算すると、0.12mmol/g=(0.12×56.1)mgKOH/g=6.732mgKOH/gである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記変性ポリオレフィン高分子の酸価は5.8mgKOH/g~10mgKOH/gであ」る点で一致する。
ク 発明特定事項F、F1について
発明特定事項Fは「前記ポリオレフィン接着剤を調製する工程は、混合溶媒で変性粒子を溶解した後に、前記硬化剤を更に添加して前記ポリオレフィン接着剤を形成することを含み、」というものであり、発明特定事項F1は「前記変性粒子の材料は前記変性ポリオレフィン高分子であり、」というものである。
(ア)引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」は、「ポリマー溶液を多量のメタノール中に攪拌しながら添加し、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをろ過した後に乾燥させることにより得」る(構成f、f1)から、ろ紙でこし取れる程度の粒径を持つ粒子として析出すると解される。
よって、引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」は、変性ポリオレフィン高分子の粒子であると解されるから、本件補正発明の「変性粒子」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記変性粒子の材料は前記変性ポリオレフィン高分子であ」る(発明特定事項F1)点で一致する。
(イ)引用発明の「主剤3」は、「ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1からなる固形分100部を、メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる混合溶媒で溶解させて調整」するもの(構成d)であるから、「主剤3」の調整には、「混合溶媒」で「ポリオレフィン樹脂A3」を溶解する工程が含まれる。
(ウ)引用発明の「接着剤組成物」は、「主剤3と硬化剤C1を配合し、メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈して調整」するもの(構成c1)であるから、「接着剤組成物」の調整には、「主剤3」に「硬化剤C1」を添加する工程が含まれる。
引用発明の「接着剤組成物」を調整する工程では、「主剤3」を要するから、前記(イ)の「主剤3」を調整する工程が先に行われている必要がある。
よって、引用発明の「接着剤組成物」を調整する工程は、「混合溶媒」で「ポリオレフィン樹脂A3」を溶解した後に、「硬化剤C1」を更に添加することを含む。その結果、「希釈」(構成c1)前の「接着剤組成物」が形成される。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記ポリオレフィン接着剤を調製する工程は、混合溶媒で変性粒子を溶解した後に、前記硬化剤を更に添加してポリオレフィン接着剤を形成することを含」む点で共通するものの、本件補正発明の「前記ポリオレフィン接着剤を調整する工程」では、硬化剤を添加すると「前記ポリオレフィン接着剤」すなわちアルミ箔層の片面に塗布するポリオレフィン接着剤(発明特定事項B)が形成されるのに対し、引用発明の「接着剤組成物」を調整する工程は、「硬化剤C1」を添加した後に、「メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈」する工程(構成c1)を経ることによって、「アルミ処理面」に塗工する接着剤組成物が形成される点で相違する。
ケ 発明特定事項F2について
発明特定事項F2は「前記混合溶媒は、メチルシクロヘキサンである非極性溶媒と、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合物である極性溶媒とを含み、」というものである。
引用発明の「混合溶媒」は、「メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からな」る(構成d)。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記混合溶媒は、メチルシクロヘキサンである非極性溶媒と、メチルエチルケトン」「である極性溶媒とを含」む点で共通するものの、本件補正発明の極性溶媒は、「酢酸エチルの混合物」であるのに対し、引用発明では、酢酸エチルを含まないメチルエチルケトンである点で相違する。
コ 発明特定事項F3について
発明特定事項F3は「前記非極性溶媒と前記極性溶媒との質量比(前記非極性溶媒:前記極性溶媒)は4:1~3:2である」というものである。
引用発明の「混合溶媒」は「メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる」(構成d)。そして、「メチルシクロヘキサン」は非極性溶媒であり、「メチルエチルケトン」は極性溶媒である。
そうすると、引用発明の「混合溶媒」の非極性溶媒と極性溶媒との質量比は、280:120≒2.33:1となるので、本件補正発明の4:1~3:2の範囲内にある。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記非極性溶媒と前記極性溶媒との質量比(前記非極性溶媒:前記極性溶媒)は4:1~3:2である」点で一致する。
サ 発明特定事項Gについて
発明特定事項Gは「ことを特徴とする、リチウム電池用アルミプラスチックフィルムの製造方法。」というものである。
(ア)引用発明の「ONY/AL/CPP積層フィルム」は、「処理アルミニウム箔」と「ナイロンフィルム」と(構成a1)、「未延伸ポリプロピレンフィルムを貼りあわせ」たもの(構成a2)であるから、アルミプラスチックフィルムである。
(イ)引用発明の「ONY/AL/CPP積層フィルム」の「未延伸ポリプロピレンフィルムを貼りあわせ」るための「接着剤」(構成a2)は、「リチウムイオン電池に好適に使用でき」る「接着剤組成物」(構成b)であると解される。
よって、前記(ア)も考慮すると、引用発明の「ONY/AL/CPP積層フィルム」は、本件補正発明の「リチウム電池用アルミプラスチックフィルム」に相当する。
(ウ)引用発明の「ONY/AL/CPP積層フィルム」は、前記ア~クに示した各工程を経て製造されるものと解されるため、引用発明は、「ONY/AL/CPP積層フィルム」の製造方法を実質的に備えていると解される。
(エ)以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、上記各工程を含む「リチウム電池用アルミプラスチックフィルムの製造方法」である点で一致する。
シ 一致点及び相違点
前記ア~サによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉
「変性ポリオレフィン高分子及び硬化剤を含むポリオレフィン接着剤を調製する工程と、
前記ポリオレフィン接着剤をアルミ箔層の片面に塗布する工程と、
内側ポリオレフィン層を前記ポリオレフィン接着剤に設置する工程と、
前記ポリオレフィン接着剤を乾燥することによって、前記アルミ箔層と前記内側ポリオレフィン層との間にポリオレフィン接着剤層を形成する工程と、を含み、
前記変性ポリオレフィン高分子は変性基を含み、前記変性基の構造は無水マレイン酸を含み、前記変性ポリオレフィン高分子の分子量は150000g/mol~200000g/molであり、前記変性ポリオレフィン高分子の酸価は5.8mgKOH/g~10mgKOH/gであり、
前記ポリオレフィン接着剤を調製する工程は、混合溶媒で変性粒子を溶解した後に、前記硬化剤を更に添加してポリオレフィン接着剤を形成することを含み、
前記変性粒子の材料は前記変性ポリオレフィン高分子であり、前記混合溶媒は、メチルシクロヘキサンである非極性溶媒と、メチルエチルケトンである極性溶媒とを含み、前記非極性溶媒と前記極性溶媒との質量比(前記非極性溶媒:前記極性溶媒)は4:1~3:2であることを特徴とする、リチウム電池用アルミプラスチックフィルムの製造方法。」である点。
〈相違点1〉
本件補正発明の「前記ポリオレフィン接着剤を調整する工程」では、硬化剤を更に添加すると「前記ポリオレフィン接着剤」すなわちアルミ箔層の片面に塗布するポリオレフィン接着剤(発明特定事項B)が形成されるのに対し、引用発明の「接着剤組成物」を調整する工程は、「硬化剤C1」を添加した後に、「メチルシクロヘキサン123.2部及びメチルエチルケトン52.8部からなる混合溶媒で希釈」する工程を経ることによって、「アルミ処理面」に塗工する接着剤組成物が形成される点。(発明特定事項F)
〈相違点2〉
本件補正発明の極性溶媒は、「酢酸エチルの混合物」であるのに対し、引用発明では、酢酸エチルを含まないメチルエチルケトンである点。(発明特定事項F2)
(5)相違点についての判断
相違点1及び2について判断する。
ア 接着剤に用いられる溶媒は、接着剤と化学反応をするものではなく、単に接着剤の流動性や粘性を塗布に好適に調整するものと解される。したがって、接着剤を調整する工程のどの時点でどの程度の分量の溶媒を加えるかは、接着剤の物性に影響を与えるものではないので、設計的事項に過ぎない。
また、溶媒として、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルは、いずれも著名なものであり、これらの混合溶媒も一般的に用いられるものであって、前記3種の溶媒の混合溶媒を用いることも設計的事項に過ぎない。
加えて、引用文献には、「有機溶剤としては特に限定されない…(略)…溶剤の具体例としては、…(略)…メチルシクロヘキサン…(略)…メチルエチルケトン…(略)…酢酸エチル…(略)…等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」(【0074】)との記載があるため、溶媒として、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合溶媒を用いることは示唆されている。
さらに、引用発明の「接着剤組成物」は、「ポリオレフィン樹脂A3及び重合体B1合計100部と、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体2部とを固形分として含み、メチルシクロヘキサン403.2部と、メチルエチルケトン172.8部と、酢酸エチル2部とを溶媒として含」む(構成c2)のだから、「接着剤組成物」に含まれる溶媒には、最終的に、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの3種が含まれている。よって、構成dにおいて添加する「メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる混合溶媒」を、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合溶媒に代えることに阻害要因はない。
また、引用発明は、主剤3の調整時に混合溶媒を加え(構成d)、さらに、主剤3と硬化剤C1を配合した後に混合溶媒で希釈して調整する(構成c1)が、混合溶媒を2回にわたって加えることにより、特異な効果が得られるわけではない。引用文献には、「混合溶媒で希釈して固形分濃度15%に調整して接着剤組成物を作製した。但し、実施例23については固形分濃度15%では粘度が高かったため、固形分10%に調整して接着剤組成物を作製した。」(【0113】)との記載にあるように、2回目の混合溶媒は、単に粘度を調整するためのものである。よって、最終的に固形分濃度15%の接着剤組成物が得られれば良いのであるから、全体の工程数を減らすために、構成dにおける混合溶媒の量を、最終的に固形分濃度15%とするに必要な量(576部)として、工程c1での希釈を省略することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
イ 他方、引用発明の「接着剤組成物」に最終的に含まれるメチルシクロヘキサンは、403.2部であり、メチルエチルケトンは172.8部であり、酢酸エチルは2部であり、これらにより固形分が溶解される(構成c2)ところ、技術常識によれば、非極性溶媒は極性を持たない物質をよく溶かし、極性溶媒は極性を持つ物質をよく溶かすのだから、引用発明における非極性溶媒と極性溶媒との比を変える理由はない。むしろ、非極性溶媒と極性溶媒との比率を変えると、固形分が溶解し切れなくなるおそれが生じるから、変えるべきではない。
そうすると、前記アに示したように、構成dにおいて添加する「メチルシクロヘキサン280部及びメチルエチルケトン120部からなる混合溶媒」を、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン及び酢酸エチルの混合溶媒576部に代えるにあたり、非極性溶媒と極性溶媒との比率を維持し、メチルシクロヘキサン403.2部、メチルエチルケトン172.8-x部、酢酸エチルx部とすべきことは、明らかである。
ウ 前記ア及びイによれば、引用発明の構成dにおいて添加する「混合溶媒」を、メチルシクロヘキサン403.2部、メチルエチルケトン172.8-x部、酢酸エチルx部とし、構成c1での希釈を省略すること(以下「引用発明設計変更」という。)によって、相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たと認められる。
(6)効果についての判断
本願発明の効果は、引用発明の効果に比して、格別とは認められない。
(7)請求人の主張について
請求人は、本願発明の引用発明に対する進歩性について、概略、以下の主張1~3を主張する。
〈主張1〉
本願明細書【0044】の内容から、本件補正発明は、特定の成分を特定の含有比で含む混合溶媒を用いることにより、加工性が優れ、且つ良好な接着性をポリオレフィン接着剤に与えることができるものであることは明らかである。
一方で、引用文献及び原査定の理由で引用された文献2~9のいずれも、本件補正発明において規定される混合溶媒を採用しておらず、引用発明及び文献1~9に記載の発明に基づいて、本件補正発明において規定される混合溶媒を用いて調製されたポリオレフィン接着剤でリチウム電池用アルミプラスチックフィルムを製造する具体的な動機付けはない。
また、本件補正発明は、特定の混合溶媒を用いた上で、良好な最初接着強度及び厳しい環境で評価した耐電解液接着強度を達成するものである。
(審判請求書「4.理由4について」「(1)混合溶媒について」)
〈主張2〉
本願明細書【0042】には、酸価の範囲は変性基の具体的なグラフト量に関連することが記載される。
引用文献及び原査定の理由で引用された文献2~9に記載された酸価の範囲は、本件補正発明で特定される範囲と比較して、極めて広い範囲である。例えば、引用文献に記載された酸価は1.1~67.3mgKOH/gであり、文献6に記載された酸価は5~20mgKOH/gであり、文献7に記載された酸価は7~35mgKOH/gである。
一方で、本件補正発明は、酸価を特定の狭い範囲に限定することで、ポリオレフィンの改質度についてもある程度限定するものである。
また、官能基の数は、高分子の特性に大きな影響を与える。
さらに、引用文献に記載された一部の実施例や比較例の酸価が、本件補正発明の範囲に含まれ得るとしても、引用発明に基づいて、本件補正発明において規定される特定の狭い範囲に制御する具体的な動機付けはない。
(審判請求書「4.理由4について」「(2)酸価について」、意見書「5.理由3及び4について」)
〈主張3〉
本件補正発明は、実際には、様々なパラメータ及び製造条件を同時に制御した上で完成したものであり、換言すると、上述の様々な条件を同時に満たした上で、分子量をさらに最適化して、本件補正発明に想到したものである。例えば、本願の実施例2及び3は、他の条件を同一に制御した上で、分子量を15万~20万に制御することで、極めて優れた最初接着強度及び耐電解液接着強度の両方が得られることを示す。
しかしながら、他の条件を変化させると、15万~20万の分子量であっても、本願発明の優れた接着強度が得られる保証はない。
すなわち、本件補正発明は、引用文献及び原査定の理由で引用された文献2~9に接した当業者が、容易に想到し得るものではない。
(審判請求書「4.理由4について」「(3).分子量について」)
ア 主張1について
本願明細書の【0044】の記載は、次のとおりである。
「【0044】
本発明において、混合溶媒として非極性溶媒及び極性溶媒を用いる。特定の成分及び含有比を有する混合溶媒によって、加工性が優れ、且つ良好な接着性を有するポリオレフィン接着剤を製造することができる。一つの示範例において、非極性溶媒の添加量は、極性溶媒の添加量より多い。極性溶媒の添加量が非極性溶媒の添加量より多い場合、ポリオレフィン接着剤は塊状のポリオレフィンとして析出されるため、加工を行うことができない。好ましくは、非極性溶媒と極性溶媒との比(非極性溶媒:極性溶媒)は4:1~3:2である。」
上記記載によれば、本件補正発明における優れた加工性及び良好な接着性という効果は、非極性溶媒と極性溶媒との比が4:1~3:2であることにより得られると理解される。
引用発明には、実施例8として、非極性溶媒:極性溶媒≒2.33:1の混合溶媒が記載されており、この比率は本件補正発明に包含される。そして、この比率は変えるべきではない(前記(5)イ)から、引用発明設計変更によってもこの比率は変わらない。そうすると、引用発明設計変更後の引用発明の効果は、本件補正発明と同様と評価される。
よって、請求人の主張は採用できない。
イ 主張2について
当審で認定する引用発明は、引用文献2に開示された実施例8に関するものであり、他の実施例は引用発明として認定していない。
そして、引用発明の「ポリオレフィン樹脂A3」の酸価Pは0.12mmol/gであり(構成f、f2)、mgKOH/gに換算すると6.732mgKOH/gであり、本件補正発明の発明特定事項E3の範囲に包含される(前記(4)キ)。
よって、請求人の主張は採用できない。
ウ 主張3について
請求人の主張によれば、本件補正発明を特定する様々なパラメータ及び製造条件を同時に満たす発明が奏する効果は、本件補正発明が奏する効果と同じになると理解される。
そして、前記(4)シのとおり、本件補正発明と引用発明とは、発明特定事項F及びF2においてのみ相違しているが、これらの相違点に係る構成は、引用文献の記載から容易に想到し得たものである(前記(5))。
そうすると、本件補正発明を特定する全てのパラメータ及び製造条件は、引用発明に基づいて容易に想到し得たものであるから、引用発明設計変更後の引用発明の効果は、本件補正発明の効果と同じになる。
よって、請求人の主張は採用できない。
(8)小括
以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
4 本件補正についてのむすび
前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した記載のとおりのものと認める。
第4 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、以下のとおりである。
(新規性)この出願の請求項1、3~8及び10に係る発明は、以下の文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の請求項1~10に係る発明は、以下の文献1~5のいずれかに記載された発明及び文献1~9に記載された技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特開2018-111808号公報
文献2.国際公開第2017/030024号
文献3.国際公開第2020/090818号
文献4.特開2022-007514号公報
文献5.特開2015-021108号公報
文献6.特開2020-029557号公報
文献7.国際公開第2019/188284号
文献8.国際公開第2019/069896号
文献9.特開2018-022690号公報
第5 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開2018-111808号公報(文献1。この審決における引用文献に対応。)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に示したとおりである。
第6 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、発明特定事項F及びF1~F3を削除したものである。
そして、前記第2[理由]3(4)シに示したように、本件補正発明と引用発明との相違点は、発明特定事項F及びF2に関する点のみである。
そうすると、本件補正発明と引用発明との相違点となる発明特定事項を含まない本願発明は、引用発明と相違する点がない。
よって、本願発明は、引用発明と同一である。
また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に掲げる発明である引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-016830