特許拒絶査定不服審判
2025-000069
エネルギー貯蔵デバイスにおけるエネルギー貯蔵セルのための相互接続構造
- 審判番号
- 2025-000069
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-525133
- 請求日
- 2025年01月06日
- 審決日
- 2026年01月19日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ティーヴィーエス モーター カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-525133「エネルギー貯蔵デバイスにおけるエネルギー貯蔵セルのための相互接続構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日国際公開、WO2020/095325、令和 4年 3月11日国内公表、特表2022-517897〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)11月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年11月8日 (IN)インド共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 5月21日 :手続補正書
令和5年11月15日付け:拒絶理由通知書
令和6年 5月20日 :意見書、手続補正書
同年 8月29日付け:拒絶査定
令和7年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書
同年 3月 6日 :手続補正書(方式)
以下では、令和6年8月29日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和7年1月6日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の請求項1
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイス(100)であって、
少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に配置される1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)と、
前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)を電気的に接続するためになされた1つまたは複数の相互接続構造(103)であって、前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれが、前記少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置付けるためになされた1つまたは複数の開口(203)を含む、1つまたは複数の相互接続構造(103)と
前記エネルギー貯蔵デバイス(100)に電気的に接続されているバッテリ管理システム(201)と、
を含むエネルギー貯蔵デバイス(100)において、
スリット開口の形の1つまたは複数のすき間(200)が、前記1つまたは複数の相互接続構造(103)の前記それぞれの少なくとも一部に形成され、
前記1つまたは複数のすき間(200)が、より長い経路(202)を通って前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれにわたって発生した大量のシャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され、
前記1つまたは複数の相互接続構造(103)が、少なくとも1つの端部(104)を含み、前記少なくとも1つの端部(104)が、前記少なくとも1つの相互接続構造(103)を、前記バッテリ管理システム(201)に電気的に接続するための、少なくとも1つの取り付け受け入れ部(104b)を含む少なくとも1つの装着構造(104a)を含むことを特徴とする、エネルギー貯蔵デバイス(100)。」
(2)本件補正前の請求項1
本件補正前の、令和6年5月20日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイス(100)であって、
少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に配置される1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)と、
前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)を電気的に接続するためになされた1つまたは複数の相互接続構造(103)であって、前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれが、前記少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置付けるためになされた1つまたは複数の開口(203)を含む、1つまたは複数の相互接続構造(103)と
を含むエネルギー貯蔵デバイス(100)において、
スリット開口の形の1つまたは複数のすき間(200)が、前記1つまたは複数の相互接続構造(103)の前記それぞれの少なくとも一部に形成され、
前記1つまたは複数のすき間(200)が、より長い経路(202)を通って前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれにわたって発生した大量のシャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成されることを特徴とする、エネルギー貯蔵デバイス(100)。」
2 補正の適否
本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項である「エネルギー貯蔵デバイス(100)」に、「前記エネルギー貯蔵デバイス(100)に電気的に接続されているバッテリ管理システム(201)」を「含む」との限定を付加するとともに、同じく請求項1の発明を特定するために必要な事項である「1つまたは複数の相互接続構造(103)」に、「少なくとも1つの端部(104)を含み、前記少なくとも1つの端部(104)が、前記少なくとも1つの相互接続構造(103)を、前記バッテリ管理システム(201)に電気的に接続するための、少なくとも1つの取り付け受け入れ部(104b)を含む少なくとも1つの装着構造(104a)を含む」との限定を付加するものである。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1の記載事項、引用発明
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2011-154883号公報(平成23年8月11日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである(以下、同じ。)。
「【0018】
本発明のバッテリシステムは、主として電動バイクに搭載されて、オートバイを走行させるモータに電力を供給する電源に最適である。ただ、本発明のバッテリシステムは、電動バイクに限らず、自動車や自転車等の電動車両に搭載されて、これらの車両を走行させる電源としても使用できる。さらに、本発明のバッテリシステムは、電動車両に限らず、ハイパワーな出力が要求される種々の電気機器の電源として使用することもできる。
【0019】
図2ないし図8に示すバッテリシステムは、複数の電池1を定位置に配置して直列と並列に接続している電池組立10を内蔵してなる絶縁材の成形体からなる防水構造の外装ケース2と、この外装ケース2に防水構造で連結されて表面に露出し、かつ内蔵している電池1のプラスとマイナスの出力側に接続してなる一対の外部出力9を備える。図のバッテリシステムは、外部出力9を出力リード板8と出力端子7とで構成している。出力リード板8は、電池組立10の接続リード板3に接続される金属板からなるリード板81、82で、出力端子7は、出力リード板8に連結している金属ロッド70である。図示しないが、外部出力は、出力端子と出力リード板とを一体構造とする金属で製作することもできる。」
「【0027】
[電池組立]
電池組立10を図3ないし図8に示す。これらの図の電池組立10は、互いに平行な姿勢で隣接して配設されている複数の充電できる電池1と、電池1を多段多列に配置するプラスチック製の電池ホルダ11と、電池ホルダ11で配置される各々の電池1の端部電極1Aに溶接されて、隣接する電池1を接続している複数の接続リード板3とを備える。」
「【0030】
[電池ホルダ]
図8に示す電池組立10は、電池ホルダ11の電池装着部12に電池1を挿入して定位置に配置している。電池ホルダ11は、図8に示すように、円柱状の電池装着部12を有する形状に成形している。電池装着部12は、円筒型電池を挿入できる内形に成形している。図の電池ホルダ11は、8段14列の電池1を挿入できるように、112個の電池装着部12を設けている。電池装着部12は両端を開口している。
【0031】
図8の電池組立10は、電池ホルダ11を、円筒形電池1の長さ方向である、図において左右方向に2分割して、第1の電池ホルダ11Aと第2の電池ホルダ11Bとで構成している。第1の電池ホルダ11Aと第2の電池ホルダ11Bは、電池装着部12の両端を開口して、円筒形電池1を挿入できる形状に成形している。電池ホルダ11は、プラスチックなどの絶縁性部材で成形される。電池装着部12を設けた形状にプラスチックを成形している電池ホルダ11は、電池1を区画して配列することで、複数の電池1を正確に位置決めしながら配列でき、かつ各電池1を各々独立して分離することで、電池1の熱暴走の誘発を防止できる。2分割して成形される電池ホルダ11は、2つを連結する状態で、電池1の端部電極1Aを電池装着部12の開口部から外部に露出させる。外部に露出する端部電極1Aに接続リード板3がスポット溶接やレーザー溶接などの方法で溶接される。電池ホルダ11のプラスチック材料としては、ポリカーボネートが利用できる。この材料は強度が大きく、漏液したリチウムイオン電池の電解液に対して溶け難い性質がある。なお、ABS樹脂は、漏液したリチウムイオン電池の電解液に対して解け易い性質があるので望ましくない。
【0032】
電池ホルダ11は、電池装着部12の両端を開口している両面に、複数の接続リード板3を互いに離して定位置に配置する複数列の嵌着凹部13を成形して設けている。接続リード板3は、嵌着凹部13に案内されて、電池1の端部電極1Aに接続される。したがって、嵌着凹部13は、端部電極1Aに接続される接続リード板3を配置する位置に設けている。」
「【0035】
[接続リード板]
接続リード板3は、電池ホルダ11の嵌着凹部13に案内されて、電池1の端部電極1Aにスポット溶接やレーザー溶接して接続されて、隣接する電池1を直列と並列に接続する。図7の電池組立10は、複数枚の接続リード板3を、絶縁隙間34を設けて互いに平行に配列して、電池1の端部電極1Aに溶接している。」
「【0040】
図7の接続リード板3は、電池1の端部電極1Aにスポット溶接する溶接部に、溶接の無効電流を少なくするスリット30を設けている。図7の接続リード板3は、溶接部に縦スリット30Aと、この縦スリット30Aの上下に連結して横スリット30Bを設けている。この接続リード板3は、縦スリット30Aの両側にスポット溶接の電極を押圧して、縦スリット30Aの両側を電池1の端部電極1Aに溶接する。電池1の端部電極1Aに溶接して接続される接続リード板3は、安定して電池1に接続される。さらに、接続リード板3は、その上端に、回路基板35に接続するための突出部3aを設けている。接続リード板3の突出部3aは、リード36を介して回路基板35に接続している。
【0041】
さらに、接続リード板3は、図13に示すように、電池1の端部電極1Aにスポット溶接する工程において、電池ホルダ11の定位置に仮止めできる構造としている。図の電池ホルダ11は、接続リード板3を係止して連結する仮止め突起59を嵌着凹部13に突出して設けている。さらに、接続リード板3は、これらの仮止め突起59と対向する位置に、仮止め突起59を挿入する連結孔3cを開口して設けている。この接続リード板3は、電池ホルダ11の外側面から突出する仮止め突起59を連結孔3cに案内して、電池ホルダ11の定位置に配置される。図13の電池ホルダ11は、嵌着凹部13の上下の両端部に位置して、各々2個ずつの仮止め突起59を設けている。各々の仮止め突起59は、嵌着凹部13の端部であって、上下に隣接する電池装着部12の間に一体成形して設けている。図の仮止め突起59は、全体の形状を円柱状とすると共に、片側の下部を切り欠いて、接続リード板3の連結孔3cを挿入して係合させる切欠部59aを設けている。いいかえると、円柱状の仮止め突起59は、その先端部を切欠部59aから突出する形状として、連結孔3cを係止する係止フック59bを設けている。図13に示すように、同じ列の上下に配置される一対の仮止め突起59は、各々の係止フック59b(切欠部59a)が互いに向かい合う姿勢となるように設けている。
【0042】
さらに、図13の接続リード板3は、上下の両端部に位置して各々2個ずつの連結孔3cを設けている。各々の連結孔3cは、接続リード板3の端部であって、上下に隣接するスリット30の間に開口して設けている。これらの連結孔3cは、仮止め突起59を挿入できる大きさと形状としている。図に示す連結孔3cは、内形を完全な円形とすることなく、片側の周縁部を直線状にカットして、平面視をD字状とする形状に開口している。図13の接続リード板3は、同じ列の上下に位置する一対の連結孔3cの直線部3dが仮止め突起59の切欠部59aと対向する姿勢となるように設けている。連結孔3cをこの形状とする接続リード板3は、連結孔3cの直線部3dを仮止め突起59の切欠部59aに案内する姿勢で電池ホルダ11に連結されて、接続リード板3を係止フック59bで係止する。さらに、接続リード板3は、電池ホルダ11の仮止め突起59を連結孔3cに案内する状態で、電池ホルダ11から外れないようにするために、上下に位置する一対の連結孔3cの直線部3dの間隔を、これと対向する一対の仮止め突起59の係止フック59bの先端の間隔よりも大きくすると共に、一対の仮止め突起59の切欠部59aの対向面の間隔よりも小さくしている。この接続リード板3は、たとえば、図13の矢印Aで示すように、上下の中央部分で撓ませて、両端部に設けた連結孔3cの間隔を狭くする状態で、各々の連結孔3cに仮止め突起59を案内し、その後、接続リード板3を元の形状に復元させることによって、各々の連結孔3cの直線部3dを仮止め突起59の切欠部59aに係合させる姿勢として、接続リード板3を電池ホルダ11に外れないように連結できる。以上の連結構造は、接続リード板3を中央部で撓ませて電池ホルダ11の仮止め突起59に連結するが、電池ホルダの仮止め突起を撓ませる構造として、接続リード板を電池ホルダの仮止め突起に連結することも、接続リード板の連結孔に仮止め突起を圧入して外れないように連結することもできる。」
「【0051】
[回路基板]
各々の接続リード板3が接続される回路基板35は、電子部品などを実装し、電池1の充電制御や保護回路などを構成したり、電池1の残容量の演算回路を実装している。また、基板回路35においては、残容量、異常、放電停止(指令)、充電停止(指令)等の各種情報の演算、取得等を行い、これら情報を、リード線37を介して、本バッテリシステムを電源とする電気機器(例えば、電動二輪車)に伝達している。そして、これらの情報より、電気機器は各種の制御を行っている。図2に示す外装ケース2は、一方(図2において左側)の連結突出部22に、リード線37を案内するリード線開口22Aを設けており、このリード線開口22Aからリード線37を外部に引き出している。
【0052】
回路基板35は、図5ないし図8において、電池ホルダ11の上面に固定して保持される。電池ホルダ11は、回路基板35を定位置に案内するために、複数の位置決めリブ18を回路基板35の周囲に沿って一体的に成形して設けている。回路基板35は、電池ホルダ11の上面であって、位置決めリブ18で囲まれる領域に案内されて、ネジ止めして電池ホルダ11に固定される。」
「【図3】
[図:0001436887000001.jpg]
」
「【図7】
[図:0001436887000002.jpg]
」
「【図8】
[図:0001436887000003.jpg]
」
「【図13】
[図:0001436887000004.jpg]
」
(イ)引用発明
前記(ア)の下線部に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の便宜のために、引用発明をa~nに分説し、「構成a」等として参照する。
「a バッテリシステムであって、(【0019】)
b 電池組立10を内蔵してなる外装ケース2と、内蔵している電池1のプラスとマイナスの出力側に接続してなる一対の外部出力9を備え、(【0019】)
c 電池組立10は、複数の充電できる電池1と、電池1を多段多列に配置する電池ホルダ11と、電池ホルダ11で配置される各々の電池1の端部電極1Aに溶接されて、隣接する電池1を接続している複数の接続リード板3とを備え、(【0027】)
d 電池組立10は、電池ホルダ11の電池装着部12に電池1を挿入して定位置に配置し、電池装着部12は両端を開口しており、(【0030】)
e 電池ホルダ11を、第1の電池ホルダ11Aと第2の電池ホルダ11Bとで構成し、(【0031】)
f 電池ホルダ11は、電池装着部12の両端を開口している両面に、複数の接続リード板3を定位置に配置する複数列の嵌着凹部13を成形して設け、(【0032】)
g 電池ホルダ11は、接続リード板3を係止して連結する仮止め突起59を嵌着凹部13に設け、(【0041】)
h 接続リード板3は、電池ホルダ11の嵌着凹部13に案内されて、電池1の端部電極1Aにスポット溶接して接続されて、隣接する電池1を直列と並列に接続し、(【0035】)
i 接続リード板3は、電池1の端部電極1Aにスポット溶接する溶接部に、溶接の無効電流を少なくするスリット30の縦スリット30Aと、この縦スリット30Aの上下に連結して横スリット30Bを設け、接続リード板3は、縦スリット30Aの両側にスポット溶接の電極を押圧して、縦スリット30Aの両側を電池1の端部電極1Aに溶接し、(【0040】)
j 接続リード板3は、その上端に、回路基板35に接続するための突出部3aを設け、突出部3aは、リード36を介して回路基板35に接続し、(【0040】)
k 接続リード板3は、上下の両端部に位置して各々2個ずつの連結孔3cを設け、各々の連結孔3cを仮止め突起59に係合させる姿勢として、接続リード板3を電池ホルダ11に外れないように連結でき、(【0042】)
l 各々の接続リード板3が接続される回路基板35は、電池1の充電制御を構成したり、電池1の残容量の演算回路を実装し、残容量、異常、放電停止(指令)、充電停止(指令)等の各種情報の演算、取得等を行い、(【0051】)
m 回路基板35は、電池ホルダ11の上面に固定して保持される(【0052】)
n バッテリシステム」
イ 周知技術
(ア)周知文献1の記載事項
本審決で周知技術を示すために引用する、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である登録実用新案第3190872号公報(平成26年6月5日発行。以下「周知文献1」という。)には、次の記載がある。
「【0012】
まず、本考案の無配線式電池装置の第一実施例における構造を示す図2を参照されたい。図2が示すように、この無配線式電池装置30は電池フレーム32、複数の電池ユニット34、複数の電気接続板36および少なくとも1つの電池管理モジュール38を含む。
複数の電池ユニット34は電池フレーム32内に取り付けられ、これらの電気接続板36は電池フレーム32の相対する2つの外側辺に取り付けられる。これらの電池ユニット34の電極端は電池フレーム32に貫設して、対応するこれらの電気接続板36と電気的に接触することで、各電池ユニット34の電極端は対応する電気接続板36に電気的に接続する。たとえば、4組の電池ユニット34を使用する場合、8つの電気接続板36が必要であり、電気接続板36は2つずつ1組の電池ユニット34の正極端と負極端にそれぞれ電気的に接触する。電池管理モジュール38は電池フレーム32上に設置され、電池管理モジュール38とこれらの電気接続板36は垂直に設置される。電気接続板36には複数の第一電気的接続部を設け、電池管理モジュール38上には複数の第二電気的接続部を設け、電気接続板36の第一電気的接続部は電池管理モジュール38の第二電気的接続部にそれぞれ対応して電気的に接続し、これらの電池ユニット34の電池情報が第一電気的接続部および第二電気的接続部を経由して電池管理モジュール38に伝送されるようにする。
詳しくは、この第一電気的接続部と第二電気的接続部の設計が相互対応する接続導電孔362、382である場合、ねじ40のような対応する導電素子を用いて電池管理モジュール38の接続導電孔382を貫通し、電気接続板36の接続導電孔362に挿入して締結固定するだけで、電池管理モジュール38と各電気接続板36はねじ40により電気的な接続を形成できる。こうして、電池管理モジュール38は接続導電孔362、382を通じて検出信号を電池ユニット34に伝送し、これらの電池ユニット34の電池情報を検出し、これらの電池ユニット34の電池情報が対応設置された電気接続板36をそれぞれ経由して電池管理モジュール38に伝送されることにより、これらの電池ユニット34を管理できる。」
「【図2】
[図:0001436887000005.jpg]
」
(イ)周知文献2の記載事項
本審決で周知技術を示すために引用する、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2016-18605号公報(平成28年2月1日出願公開。以下「周知文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0038】
セルホルダ54には、セル52が前後方向(図24等の紙面視上下方向)に3段積された状態で、その3段積されたセル集合体520が上下方向(長手方向)に10列並べられた状態で収納されている。そして、セルホルダ54の左右両側にリード板55が設けられている。リード板55は、各セル52の+電極、-電極の電圧信号を保護回路60の基板62,64に入力するための導体製の平板である。リード板55は、セル52の+電極、-電極に溶接されるリード板本体部55eと、そのリード板本体部55eから後方(図24等の紙面視上方)に突出して本体基板62、あるいは補助基板64に接続されるターミナル部55cとから構成されている。例えば、No.2~No10部分のリード板55の場合、図23、図24等に示すように、3本のセル52の+電極と、別の3本のセル52の-電極とが溶接により接続されるように構成されている。また、No.1部分のリード板55の場合、図23、図25に示すように、3本のセル52の+電極が溶接により接続されるように構成されている。さらに、No.11部分のリード板55の場合、図23、図25に示すように、3本のセル52の-電極が溶接により接続されるように構成されている。」
「【0042】
左右のセルホルダ54には、図24、図25に示すように、各リード板55のターミナル部55cに対応する位置に柱状の基板支持部54pが形成されている。セルホルダ54の基板支持部54pは、図27に示すように、先端面54sでリード板55のターミナル部55cと、本体基板62、あるいは補助基板64の裏面を支えられるように構成されている。ここで、補助基板64を支える中央部のセルホルダ54の基板支持部54pは、本体基板62を支える左右端のセルホルダ54の基板支持部54pよりも高さ寸法が一定寸法だけ小さく設定されている。また、セルホルダ54の基板支持部54pの内部には、前記基板62,64を固定するネジ63が螺合されるナット54nがインサートされている。さらに、本体基板62、あるいは補助基板64の裏面には、セルホルダ54の基板支持部54pに支えられる部分に回路の導体部分62d,64dが設けられている。
【0043】
このため、左右のセルホルダ54のNo.2、No.4、No.6、No.8、No.10部分のリード板55上に補助基板64をセットすると、図27に示すように、それらのリード板55のターミナル部55cがセルホルダ54の基板支持部54pと補助基板64との間に挟まれるようになる。この状態で、補助基板64をセルホルダ54の基板支持部54pにネジ止めすることで、前記リード板55のターミナル部55cが補助基板64の導体部分64dに電気的に接続される。即ち、前記ネジ63と、セルホルダ54の基板支持部54pにインサートされたナット54nとが本発明の機械的な連結機構に相当する。」
「【0045】
そして、左右のセルホルダ54のNo.1、No.3、No.5、No.7、No.9、No.11部分のリード板55上に本体基板62がセットされることで、図27に示すように、それらのリード板55のターミナル部55cがセルホルダ54の基板支持部54pと本体基板62との間に挟まれるようになる。この状態で、本体基板62をセルホルダ54の基板支持部54pにネジ止めすることで、前記リード板55のターミナル部55cが本体基板62の導体部分62dと電気的に接続されるようになる。ここで、上記したように、セル収納部450の中央部に配置されたNo.2、No.4、No.6、No.8、No.10部分のリード板55の電圧信号は、補助基板64を介して本体基板62に伝送される。このため、本体基板62の中央部にNo.2、No.4、No.6、No.8、No.10部分のリード板55の接続部を設ける必要がなくなる。これにより、本体基板62の回路設計を簡単化できる。」
「【図24】
[図:0001436887000006.jpg]
」
「【図27】
[図:0001436887000007.jpg]
」
(ウ)周知技術
a 周知文献1の図2からは、「電気接続板36」が、その上端に、「接続導電孔362」が設けられた曲げ部を備えることが見て取れる。また、「電池管理モジュール38」は、基板であることが見て取れる。
図2及び【0012】の記載によれば、「電気接続板36」の曲げ部は、「ねじ40のような対応する導電素子を用いて電池管理モジュール38の接続導電孔382を貫通し、電気接続板36の接続導電孔362に挿入して締結固定する」(【0012】)ことで、電池管理モジュール38(基板)に固定されると解される。
b 周知文献2の図24及び27からは、「リード板55のターミナル部55c」が、「リード板本体部55e」の端から「突出」(【0038】)した曲げ部として形成され、「ネジ63」を貫通させる孔が設けられていることが見て取れる。
c 周知文献1の「電気接続板36」及び周知文献2の「リード板55」は、ともに、電池(周知文献1の「電池ユニット34」、周知文献2の「セル52」)を電気的に接続する導電板である。そのため、周知文献1及び2は、電池を電気的に接続する導電板の端に、ネジを貫通させる孔を設けた曲げ部を設け、この孔にネジを貫通させて曲げ部を基板に固定して、導電板と基板とを電気的に接続する技術を示しているということができ、該技術は、本願優先日前に周知の技術(以下「周知技術」という。)であったと認められる。
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 「エネルギー貯蔵デバイス(100)であって、」について
引用発明の「バッテリシステム」(構成a)は、「外装ケース2」を「備え」ている(構成b)ため、一のデバイスを構成しているということができ、電力(電気エネルギー)を蓄積可能なものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「エネルギー貯蔵デバイス」である点で一致する。
イ 「少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に配置される1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)と、」について
引用発明の「複数の充電できる電池1」は、「第1の電池ホルダ11Aと第2の電池ホルダ11Bとで構成し」た「電池ホルダ11」に、「多段多列に配置」される(構成c、e)ものであり、「電池1」は、本件補正発明の「エネルギー貯蔵セル」に相当し、「第1の電池ホルダ11A」及び「第2の電池ホルダ11B」は、それぞれ、本件補正発明の「セルホルダ」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「少なくとも1つのセルホルダに配置される1または複数のエネルギー貯蔵セル」を含む点で一致する。
ウ 「前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セル(106)を電気的に接続するためになされた1つまたは複数の相互接続構造(103)であって、」について
引用発明は、「複数の接続リード板3」を「備え」(構成c)、「接続リード板3」は、「隣接する電池1を直列と並列に接続」する(構成h)ものであるから、本件補正発明の「前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルを電気的に接続するためになされた」「相互接続構造」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルを電気的に接続するためになされた1つまたは複数の相互接続構造」を含む点で一致する。
エ 「前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれが、前記少なくとも1つのセルホルダ(100a)、(100b)に前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置付けるためになされた1つまたは複数の開口(203)を含む、1つまたは複数の相互接続構造(103)と」について
引用発明の「複数の接続リード板3」は、「電池ホルダ11」の「電池装着部12の両端を開口している両面に」「設け」られた「嵌着凹部13に案内され」(構成f、h)、「上下の両端部に位置して各々2個ずつ」「設け」られた「連結孔3c」(構成k)が、「電池ホルダ11」の「嵌着凹部13に設け」られた「仮止め突起59」(構成g)と「係合」することで、「接続リード板3を電池ホルダ11に外れないように連結でき」る(構成k)ものである。これにより、複数の「電池1」は、それぞれ、「電池ホルダ11」の「電池装着部12」(構成d)と「接続リード板3」とで画される「定位置」(構成d)に固定されると解されるから、「複数の接続リード板3」の「上下の両端部に位置」する「各々2個ずつ」の「連結孔3c」は、上記「定位置」に固定するために「設け」られたものといえる。そうすると、上記「連結孔3c」は、本件補正発明の「少なくとも1つのセルホルダに前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置づけるためになされた1つまたは複数の開口」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数の相互接続構造のそれぞれが、前記少なくとも1つのセルホルダに前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置付けるためになされた1つまたは複数の開口を含む、1つまたは複数の相互接続構造」を含む点で一致する。
オ 「前記エネルギー貯蔵デバイス(100)に電気的に接続されているバッテリ管理システム(201)と、」について
引用発明の「回路基板35」は、「電池1の充電制御を構成したり、電池1の残容量の演算回路を実装し、残容量、異常、放電停止(指令)、充電停止(指令)等の各種情報の演算、取得等を行」う(構成l)ものであるから、本件補正発明の「バッテリ管理システム」に相当する。該「回路基板35」は、「リード36を介して」(構成j)「各々の接続リード板3が接続され」る(構成l)から、「バッテリシステム」に電気的に接続されるものであり、また、「電池ホルダ11の上面に固定して保持される」(構成m)から、「バッテリシステム」に含まれるものといえる。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記エネルギー貯蔵デバイスに電気的に接続されているバッテリ管理システム」を含む点で一致する。
カ 「スリット開口の形の1つまたは複数のすき間(200)が、前記1つまたは複数の相互接続構造(103)の前記それぞれの少なくとも一部に形成され、」について
引用発明の「接続リード板3」には、「接続リード板3」の「電池1の端部電極1Aにスポット溶接する溶接部」に「スリット30」が「設け」られ(構成i)、該「スリット30」は、本件補正発明の「スリット開口の形の」「すき間」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「スリット開口の形の1つまたは複数のすき間が、前記1つまたは複数の相互接続構造の前記それぞれの少なくとも一部に形成され」ている点で一致する。
キ 「前記1つまたは複数のすき間(200)が、より長い経路(202)を通って前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれにわたって発生した大量のシャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され、」について
引用発明の前記カの「スリット30」は、「溶接の無効電流を少なくする」(構成i)ものであるところ、この「無効電流」は、主に、「スリット30」の「縦スリット30Aの両側にスポット溶接の電極を押圧して、縦スリット30Aの両側を電池1の端部電極1Aに溶接」する(構成i)際に、「接続リード板3」の「縦スリット30の両側」と「電池1の端部電極1A」の接触箇所を通らずに「スポット溶接の電極」間に流れる分流と解されるから、本件補正発明の「前記1つまたは複数の相互接続構造(103)のそれぞれにわたって発生した」「シャント電流」に相当する。この「無効電流」は、「縦スリット30Aの両側」の「スポット溶接の電極」間を、「縦スリット30A」及びその「上下に連結し」た「横スリット30B」(構成i)を迂回する経路で流れると解され、この迂回経路は、「スリット30」を設けない場合の「無効電流」の流れる経路よりも長いことは明らかであるから、本件補正発明の「シャント電流」と引用発明の「無効電流」は、「より長い経路を通」る点で共通する。他方、引用発明の「無効電流」が「大量」であることは、特定されていない。
引用発明の「スリット30」は、上記のとおり「無効電流」を迂回させるためのものといえる。また、「スリット30」は、図13(前記(2)ア(ア))に示されるように、「縦スリット30Aと、この縦スリット30Aの上下に連結して横スリット30B」(構成i)で形成された所定の形状を有し、図7(前記(2)ア(ア))にも示されるように、「接続リード板3」を貫通するものである。そのため、本件補正発明の「すき間」と引用発明の「スリット30」は、「シャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され」ている点で共通する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数のすき間が、より長い経路を通って前記1つまたは複数の相互接続構造のそれぞれにわたって発生したシャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され」ている点で共通する一方、引用発明は「無効電流」が「大量」であると特定されていない点で相違する。
ク 「前記1つまたは複数の相互接続構造(103)が、少なくとも1つの端部(104)を含み、前記少なくとも1つの端部(104)が、前記少なくとも1つの相互接続構造(103)を、前記バッテリ管理システム(201)に電気的に接続するための、少なくとも1つの取り付け受け入れ部(104b)を含む少なくとも1つの装着構造(104a)を含む」について
引用発明の「接続リード板3」は、「その上端に、回路基板35に接続するための突出部3aを設け、突出部3aは、リード36を介して回路基板35に接続」する(構成j)ものであり、「突出部3a」は、本件補正発明の「端部」に相当するから、本件補正発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数の相互接続構造が、少なくとも1つの端部(104)を含」む点で一致する。
また、引用発明の「突出部3a」は、「リード36を介して」、「接続リード板3」を前記オの「回路基板35」に電気的に「接続」すると解され、「突出部3a」は該「接続」のための構造を有しているといえるから、本件補正発明の「端部」と引用発明の「突出部3a」は、「前記少なくとも1つの端部が、前記少なくとも1つの相互接続構造を、前記バッテリ管理システムに電気的に接続するための、少なくとも1つの構造を含む」点で共通する。他方、引用発明の「突出部3a」の上記構造が、「少なくとも1つの取り付け受け入れ部を含む装着構造」であるとは特定されていない。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数の相互接続構造が、少なくとも1つの端部を含み、前記少なくとも1つの端部が、前記少なくとも1つの相互接続構造を、前記バッテリ管理システムに電気的に接続するための、少なくとも1つの構造を含む」点で共通する一方、引用発明は、「突出部3a」の構造が「少なくとも1つの取り付け受け入れ部を含む装着構造」であるとは特定されていない点で相違する。
ケ 一致点、相違点
前記ア~クによれば、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
エネルギー貯蔵デバイスであって、
少なくとも1つのセルホルダに配置される1または複数のエネルギー貯蔵セルと、
前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルを電気的に接続するためになされた1つまたは複数の相互接続構造であって、前記1つまたは複数の相互接続構造のそれぞれが、前記少なくとも1つのセルホルダに前記1つまたは複数のエネルギー貯蔵セルの前記それぞれをしっかり固定して位置付けるためになされた1つまたは複数の開口を含む、1つまたは複数の相互接続構造と
前記エネルギー貯蔵デバイスに電気的に接続されているバッテリ管理システムと、
を含むエネルギー貯蔵デバイスにおいて、
スリット開口の形の1つまたは複数のすき間が、前記1つまたは複数の相互接続構造の前記それぞれの少なくとも一部に形成され、
前記1つまたは複数のすき間が、より長い経路を通って前記1つまたは複数の相互接続構造のそれぞれにわたって発生したシャント電流をわきにそらすように、少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され、
前記1つまたは複数の相互接続構造が、少なくとも1つの端部を含み、前記少なくとも1つの端部が、前記少なくとも1つの相互接続構造を、前記バッテリ管理システムに電気的に接続するための、少なくとも1つの構造を含む、
エネルギー貯蔵デバイス。
[相違点]
〈相違点1〉「シャント電流」が、本件補正発明は「大量」であるのに対し、引用発明は「無効電流」が「大量」であると特定されていない点。
〈相違点2〉「端部」が「含」む「前記バッテリ管理システムに電気的に接続するための、少なくとも1つの構造」が、本件補正発明は、「少なくとも1つの取り付け受け入れ部を含む装着構造」であるのに対し、引用発明は、「突出部3a」の上記構造が「少なくとも1つの取り付け受け入れ部を含む装着構造」であるとは特定されていない点。
(4)判断
ア 相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用発明は、「スリット30」により「溶接の無効電流を少なくする」、具体的には、前記(3)キのとおり、「スリット30」によって「無効電流」が迂回して流れる経路を長くすることで、該迂回経路に「無効電流」が流れにくくするものである。しかしながら、スポット溶接のために溶接箇所(「縦スリット30の両側」と「電池1の端部電極1A」との接触箇所)に大量の電流を流そうとすれば、それに応じて、大量の「無効電流」も迂回経路を流れることは、当業者であれば容易に想定し得たことである。
よって、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(イ)相違点2について
前記(2)イ(ウ)のとおり、電池を電気的に接続する導電板の端に、ネジを貫通させる孔を設けた曲げ部を設け、この孔にネジを貫通させて曲げ部を基板に固定して、導電板と基板とを電気的に接続する技術は、周知技術である。
これに対し、引用発明は、前記(3)クのとおり、「接続リード板3」の「突出部3a」を「リード36を介して」「回路基板35」に接続することで、「接続リード板3」を「回路基板35」に電気的に接続する構成であるが、この接続構成に「接続リード板3」を「回路基板35」に電気的に接続する以上の技術的意義があるとは認められない。そのため、引用発明に周知技術を採用し、上記接続構成に代えて、「接続リード板3」の端に、ネジを貫通させる孔を設けた曲げ部を備え、この孔にネジを貫通させて、曲げ部を「回路基板35」に固定して、「接続リード板3」を「回路基板35」に電気的に接続する構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮といえる。そして、該構成におけるネジを貫通させる孔及び曲げ部は、それぞれ、本件補正発明の「取り付け受け入れ部」及び「装着構造」に相当するから、該構成は、相違点2に係る本件補正発明の構成に他ならない。
よって、相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、令和7年3月6日の手続補正書(方式)で補正された審判請求書で、概略次の点を主張する。
(ア)引用文献1~4には、補正後の請求項1の特徴の「前記少なくとも1つの端部(104)が、前記少なくとも1つの相互接続構造(103)を、前記バッテリ管理システム(201)に電気的に接続するための、少なくとも1つの取り付け受け入れ部(104b)を含む少なくとも1つの装着構造(104a)を含む」ことについて何ら開示も示唆もされておらず、補正後請求項に係る発明は、引用文献1及び2に対して新規性を有し、引用文献1~4の記載に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(【請求の理由】欄の[本願発明が特許されるべき理由]3(5))
(イ)本願発明は、(i)大きなシャント電流の流れが各相互接続構造体を通って迂回するため、溶接工程が容易になり、さらに相互接続構造体とエネルギー貯蔵セルの端子間の接点への損傷、排出、劣化を最小限に抑えることができ、(ii)スリットの改良された形状のプロファイルは、所定の直径で形成された接触点を提供し、それにより、1つ以上の相互接続構造と前記1つ以上のエネルギー貯蔵セルの少なくとも末端との間に強力な接触点を形成することを容易にする、との技術的進歩をもたらす。(【請求の理由】欄の[本願発明が特許されるべき理由]3(3))
イ 以下、請求人の主張について検討する。
(ア)前記ア(ア)の主張の本件補正発明の特徴は、前記(4)ア(イ)に示したとおり、引用発明及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。
(イ)前記ア(イ)の主張のうち、(i)の主張について、前記(4)ア(ア)に示したとおり、引用発明において、スリット30を迂回する大量の「無効電流」が流れることは、当業者が容易に想到し得たことであり、引用発明も、溶接の容易化等の本件補正発明と同等の作用効果を奏し得ることは自明である。また、(ii)の主張について、本件補正後の請求項1には、「スリット開口の形の1つまたは複数のすき間(200)」は、「少なくとも1つの断面の少なくとも1つの断面の少なくとも1つの予め決められた形状であるように構成され」としか特定されていないから、(ii)の主張は、請求項の記載に基づかないものであるため採用できない。
(ウ)したがって、請求人の前記アの主張は、いずれも採用できない。
(6)補正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年5月20日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る理由は、次の理由1及び2のとおりのものである。
(理由1)この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の文献1及び文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(理由2)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に、以下の文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、以下の文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特開2011-154883号公報
文献2.特開2015-159105号公報
3 文献1、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された文献1(本審決における引用文献1と同じ。)及びその記載事項並びに引用発明は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記エネルギー貯蔵デバイス(100)に電気的に接続されているバッテリ管理システム(201)」を含むとの限定事項、及び「少なくとも1つの端部(104)を含み、前記少なくとも1つの端部(104)が、前記少なくとも1つの相互接続構造(103)を、前記バッテリ管理システム(201)に電気的に接続するための、少なくとも1つの取り付け受け入れ部(104b)を含む少なくとも1つの装着構造(104a)を含む」との限定事項を削除したものである。
そして、第2[理由]2(3)に示したとおり、本件補正発明と引用発明との相違点のうち、相違点2は前記限定事項に関するものであるから、本願発明と引用発明との相違点は相違点1のみであり、相違点1については、前記第2[理由]2(4)ア(ア)及びイのとおりである。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-000069