特許拒絶査定不服審判
2025-006636
電池モジュール及び電池パック
- 審判番号
- 2025-006636
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-152331
- 請求日
- 2025年04月30日
- 審決日
- 2026年02月27日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】晶科▲儲▼能科技有限公司
- 【請求人代理人】立花 顕治
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 鈴木 圭一郎
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P18 .121-WZ (H01M) / P18 .575-WZ (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-152331「電池モジュール及び電池パック」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年11月28日出願公開、特開2024-166019〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年9月20日(パリ条約による優先権主張2023年5月18日(CN)中華人民共和国)の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 2月29日付け 拒絶理由通知書
6月 4日 意見書・手続補正書
8月 9日付け 拒絶理由通知書
11月15日 意見書・手続補正書
令和 7年 1月29日付け 拒絶査定
4月30日 審判請求書・手続補正書
6月23日 前置報告書
以下では、令和7年1月29日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年4月30日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正前の請求項1の記載は、以下の(1)に示すとおりであり、本件補正後の請求項1の記載は、以下の(2)に示すとおりである。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は、令和6年11月15日の手続補正書により補正された次のとおりのものである。
【請求項1】
電池モジュールであって、
電池セルユニット(11)と、収集ユニット(12)と、第1断熱部材(13)と、断熱緩衝ユニット(14)とを含み、
前記電池セルユニット(11)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の電池セル(111)を含み、
前記収集ユニット(12)は、前記電池セルユニット(11)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う一方側に位置し、前記電池セルユニット(11)に接続され、
前記第1断熱部材(13)は、前記収集ユニット(12)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って前記電池セルユニット(11)から離れる側に位置し、前記収集ユニット(12)に接続され、
前記断熱緩衝ユニット(14)は、隣接する2つの前記電池セル(111)の間に位置し、
前記断熱緩衝ユニット(14)は、第2断熱部材(141)と、2つの緩衝部材(142)とを含み、2つの前記緩衝部材(142)は、前記第2断熱部材(141)における前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う両側に位置し、前記緩衝部材(142)は、一方側が前記第2断熱部材(141)に接続され、他方側が対応する前記電池セル(111)に接続され、
前記電池セル(111)の前記収集ユニット(12)に近い一端には、防爆口(111a)が開設され、前記収集ユニット(12)は、本体部(121)を含み、前記本体部(121)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の待避孔(121a)が開設され、複数の前記待避孔(121a)は、複数の前記電池セル(111)の前記防爆口(111a)と一対一に対応し、且つ各前記待避孔(121a)は、対応する前記防爆口(111a)に連通し、それにより、前記電池セル(111)のうちの少なくとも1つの電池セルに熱暴走が生じると、当該電池セルの内部の圧力及び電解液が当該電池セルの防爆口を介して放出され、且つ前記電解液が当該電池セルの防爆口に対応する待避孔を介して前記第1断熱部材(13)へ噴射することが可能となり、
前記第1断熱部材(13)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満たし、
前記第2断熱部材(141)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D3が、0.65mm≦D3≦1mmを満たし、
前記緩衝部材(142)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D4が、0.5mm≦D4≦0.9mmを満たす、ことを特徴とする電池モジュール。
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものであり、後の参照の便宜のため、請求項1の記載に記号A~Nを付して分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 電池モジュールであって、
B 電池セルユニット(11)と、収集ユニット(12)と、第1断熱部材(13)と、断熱緩衝ユニット(14)とを含み、
C 前記電池セルユニット(11)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の電池セル(111)を含み、
D 前記収集ユニット(12)は、前記電池セルユニット(11)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う一方側に位置し、前記電池セルユニット(11)に接続され、
E 前記第1断熱部材(13)は、前記収集ユニット(12)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って前記電池セルユニット(11)から離れる側に位置し、前記収集ユニット(12)に接続され、
F 前記断熱緩衝ユニット(14)は、隣接する2つの前記電池セル(111)の間に位置し、
G 前記断熱緩衝ユニット(14)は、第2断熱部材(141)と、2つの緩衝部材(142)とを含み、2つの前記緩衝部材(142)は、前記第2断熱部材(141)における前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う両側に位置し、前記緩衝部材(142)は、一方側が前記第2断熱部材(141)に接続され、他方側が対応する前記電池セル(111)に接続され、
H1 前記電池セル(111)の前記収集ユニット(12)に近い一端には、防爆口(111a)が開設され、前記収集ユニット(12)は、本体部(121)を含み、前記本体部(121)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の待避孔(121a)が開設され、複数の前記待避孔(121a)は、複数の前記電池セル(111)の前記防爆口(111a)と一対一に対応し、且つ各前記待避孔(121a)は、対応する前記防爆口(111a)に連通し、
H2 それにより、前記電池セル(111)のうちの少なくとも1つの電池セルに熱暴走が生じると、当該電池セルの内部の圧力及び電解液が当該電池セルの防爆口を介して放出され、且つ前記電解液が当該電池セルの防爆口に対応する待避孔を介して前記第1断熱部材(13)へ噴射することが可能となり、
I 前記第1断熱部材(13)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の凹溝(131)が開設され、複数の前記凹溝(131)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔(121a)と一対一に対応し、
J 前記凹溝(131)の底壁は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満たし、
K 前記第1断熱部材(13)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満たし、
L 前記第2断熱部材(141)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D3が、0.65mm≦D3≦1mmを満たし、
M 前記緩衝部材(142)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D4が、0.5mm≦D4≦0.9mmを満たす、ことを特徴とする
N 電池モジュール。
2 本件補正の目的
前記1によれば、本件補正は、請求項1に係る発明を特定する「第1断熱部材(13)」について、「前記第1断熱部材(13)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の凹溝(131)が開設され、複数の前記凹溝(131)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔(121a)と一対一に対応し、」「前記凹溝(131)の底壁は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満たし、」との限定を加えるものである。
そして、本件補正の前後において、請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められる。
そうすると、本件補正は、少なくとも特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」(いわゆる限定的減縮)を目的としていると認められる。
3 補正の適否
本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)に適合するかについて、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に示した記載の事項により特定されるとおりのものと認める。
(2)引用文献1について
原査定の理由(以下の第4を参照)で引用された中国実用新案第216698613号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
ア「
[図:0001438038000001.jpg]
[図:0001438038000002.jpg]
」
(当審訳:
[0025] 本願の実施例は、電池モジュールを開示し、電池モジュールは、新エネルギー自動車分野で自動車の動力として用いられてもよく、エネルギー貯蔵機器として太陽光発電モジュールの電気エネルギーを貯蔵するために用いられてもよい。
[0026] 図1~5に示すように、本実施例において、電池モジュールは、複数の電池セル1を並べて配置した電池セル群10と、隣接する2つの電池セル1の間に設けられた中間断熱板2と、セル群10の周囲に設けられた側断熱板3と、電池セル群10の上部に設けられた上部断熱板4と、上部断熱板4と電池セル群10との間に設けられたCCSアセンブリ5とを含み、電池セル1の上部に電池セル防爆弁11が設置され、上部断熱板4における電池セル群10に向かう側に圧力逃がし溝41が設置され、圧力逃がし溝41は電池セル防爆弁11と対向している。
[0027] 本実施例に開示された電池モジュールにおける隣接する電池セル1の間に中間断熱板2が設けられ、電池セル群10の外側、即ち電池セル1の外側には側断熱板3が設けられて断熱され、上側には上部断熱板4によって断熱される。上部断熱板4上の電池セル1の電池セル防爆弁11の位置に対向する位置に圧力逃がし溝41が設置され、圧力逃がし溝41の設置により、電池セル1が熱暴走を起こした場合、圧力逃がし溝41に対応する位置の上部断熱板4を、熱エネルギーが突き破ることができる。圧力逃がし溝41を設けることで、実際には上部断熱板4の薄肉化を実現し、薄肉化により電池セルの熱暴走時の熱エネルギーの放出を容易に実現することである。
[0028] 本実施例では、圧力逃がし溝41は上部断熱板4上の電池セル1に近い側に設置され、電池セル1の電池セル防爆弁11の位置に対向する位置に圧力逃がし溝41が配置されている。圧力逃がし溝41を上部断熱板4上の電池セル1から離れた側に設置する方式と比較して、本実施例では、圧力逃がし溝41の位置に対向する上部断熱板4は、暴走した熱エネルギーによって、より効果的に破断される。圧力逃がし溝41が電池セル1に向かう側に向いていることは、実際には、熱エネルギーを誘導する役割を果たし、熱エネルギーは、圧力逃がし溝41の位置で集束し、集束後、圧力逃がし溝41の位置に対向する上部断熱板4をより効果的に破断させ、熱エネルギーの放出を実現する。
[0029] また、熱エネルギーが放出された後、放出された熱エネルギーは上部断熱板4の表面に拡散する。上部断熱板4の表面で拡散する際、隣接する電池セル1への影響を避けるために、上部断熱板4は断熱性能を求められる。本実施例では、上部断熱板4はマイカシートである。従来技術において、上部断熱板4の圧力逃がし溝41は、電池セル1から離れた側に配置されている。この構造では、熱が圧力逃がし溝41内で集積しやすく、集積後に圧力逃がし溝41の位置で、上部断熱板4が破断され、制御不能な熱エネルギーや炎が他の電池セルに逆流して、隣接する他の電池セル1に影響を与える恐れがある。
[0030] 圧力逃がし溝41の位置に対応する上部断熱板4は、熱エネルギーの影響下で押し開かれる必要があり、これにより、熱エネルギーが制御不能な電池セルから放出される。同時に、他の電池セルが熱暴走後に、本電池セルに及ぼす影響を遮断する。他の電池セルが熱暴走後に本電池セルに及ぼす影響は、主に上部断熱板4の外側から侵入する。したがって、本実施例では、圧力逃がし溝41は、電池セル1の方向に開口して設けられ、上部断熱板4の上面を平面状にすることにより、上部断熱板4上での熱の放出をより容易にすることができる。
[0031] 電池セル1の熱暴走後に電池セル防爆弁11の位置に対応する上部断熱板が確実に開放されるように、上部断熱板4上の圧力逃がし溝41の厚さは0.2mmを超えない。
[0032] 本実施例において、中間断熱板2及び側断熱板3はいずれもマイカシートであり、側断熱板3の厚さは中間断熱板2の厚さよりも大きい。側断熱板3の厚さは0.8mm、中間断熱板2の厚さは0.5mmである。)
なお、[0030]には、「熱エネルギーが制御不能な電池セルから放出される」と記載されており、「電池セル」の符号が記載されていないが、 [0026]~[0029]を参照すると、「電池セル」は「複数の電池セル1」、「隣接する電池セル1」という言い回しがあって、「電池セル群10」と使いわけているところ、当該「電池セル」の符号は「1」であることは明らかであり、「熱エネルギーが制御不能な電池セル1から放出される」と読み替えることにする。
イ「
[図:0001438038000003.jpg]
」
(当審訳:
[0035] 本実施例では、CCSアセンブリ5は、ブラケット51と、ブラケット51上に配置された複数の導電片52と、導電片52に接続される接続回路53とを含む。導電片52は、ボルトによって電池セル1の電極柱12に固定され、導電片52は、ブラケット51を電池セル1に圧着固定し、ブラケット51には、電池セル1の電極柱12に適合する位置決め孔510が設けられている。ブラケット51における電池セル防爆弁11の位置に対向する位置には、防爆貫通孔511がさらに設けられている。
[0036] ブラケット51はプラスチック製のブラケットであり、ブラケット51には導電片を位置決めするための複数の導電片位置決めスロットが設けられ、導電片52は導電性ボルトを介して電極柱12に固定されて電池セル1内の電気エネルギーを引き出し、接続回路53は最後に導電片52に接続された後に電池セル1の電気エネルギーを伝送するか、又は電池セル1内に電気エネルギーを伝送する。
[0037] 上部断熱板4は、ブラケット51に固定され、具体的には、上断熱板4は、複数のネジを介してブラケット51に固定される。導電性ボルトはブラケット51を電池セル1に押圧固定され、電池セル1の垂直方向の位置が規制される。同時に、ブラケット51の位置決め孔510電極柱12との嵌合により、ブラケット51の水平面方向に位置決めする。)
ウ 図2
[図:0001438038000004.jpg]
図2によれば、電池セル1の上部に電極柱12が設置されている。
エ 図4
[図:0001438038000005.jpg]
オ 図5
[図:0001438038000006.jpg]
(3)引用発明の認定
前記(2)の記載事項によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を以下のようにa~nに分説し、「構成a」のようにして参照する。
<引用発明>
a 複数の電池セル1を並べて配置した電池セル群10と、隣接する2つの電池セル1の間に設けられた中間断熱板2と、電池セル群10の上部に設けられた上部断熱板4と、上部断熱板4と電池セル群10との間に設けられたCCSアセンブリ5とを含む電池モジュールであって、([0026])
b 電池セル1の上部に電池セル防爆弁11及び電極柱12が設置され、([0026]、図2)
c CCSアセンブリ5は、ブラケット51と、ブラケット51上に配置された複数の導電片52と、導電片52に接続される接続回路53とを含み、([0035]、図5)
d 導電片52は、電池セル1の電極柱12に固定され、導電片52は、ブラケット51を電池セル1に圧着固定し、([0035]、図2及び5)
e ブラケット51における電池セル防爆弁11の位置に対向する位置には、防爆貫通孔511が設けられ、([0035])
f 上部断熱板4上の電池セル1の電池セル防爆弁11の位置に対向する位置に圧力逃がし溝41が設置され、([0027]、図4)
g 圧力逃がし溝41は、電池セル1の方向に開口して設けられ、([0030])
h 上部断熱板4上の圧力逃がし溝41の厚さは0.2mmを超えなく、([0031])
i 上部断熱板4は、ブラケット51に固定され、([0037])
j 隣接する電池セル1の間に中間断熱板2が設けられ、([0027])
k 圧力逃がし溝41の設置により、電池セル1が熱暴走を起こした場合、圧力逃がし溝41に対応する位置の上部断熱板4を、熱エネルギーが突き破り、([0027])
l 熱エネルギーが制御不能な電池セル1から放出され、([0030])
m 熱エネルギーが放出された後、放出された熱エネルギーは上部断熱板4の表面に拡散する、([0029])
n 電池モジュール。
(4)引用文献2の記載について
原査定の理由(以下の第4を参照)で引用された国際公開第2021/199492号(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
ア 「[0027](セパレータ2)
セパレータ2は、積層している電池セル1の間に挟まれて、内圧上昇による電池セル1の膨張を吸収し、さらに隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池間における熱伝導を遮断する。電池ブロック10は、隣接する電池セル1の電極端子13にバスバー(図示せず)を固定して、電池セル1を直列又は並列に接続している。直列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差が発生するので、セパレータ2で絶縁して積層している。並列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、セパレータ2で断熱して積層する。」
イ 「[0034] 以上のセパレータ2は、全体を弾性板5としている。ただ、セパレータ2は、図7の一部拡大模式断面図に示すように、弾性板5と断熱層6との積層構造とすることもできる。このセパレータ2は、両面に積層している弾性板5で中間の断熱層6を挟む積層構造として、断熱層6でもって隣接する電池セル1間の熱伝導を少なくできる。断熱層6は、弾性板5よりも耐熱特性の優れた全ての層、たとえば微細な無数の独立気泡のプラスチック発泡体等が使用できる。」
ウ 図7
[図:0001438038000007.jpg]
(5)引用文献3の記載について
原査定の理由(以下の第4を参照)で引用された国際公開第2020/194938号(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
ア 「[0031](セパレータ2)
セパレータ2は、積層している電池セル1の間に挟まれて、隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池間における熱伝導を遮断し、さらに、電池セル1の膨張を吸収する。電池ブロック10は、隣接する電池セル1の電極端子12にバスバー(図示せず)を固定して、電池セル1を直列又は並列に接続している。直列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差が発生するので、セパレータ2で絶縁して積層する。並列に接続される電池セル1は、電池ケースに電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、セパレータ2で断熱して積層する。
[0032] セパレータ2は、図4に示すように、断熱シート5の表面にゴム状弾性シート6を積層している。断熱シート5は、繊維シートとシリカエアロゲルからなる。断熱シート5は、繊維の隙間に熱伝導率の極めて小さいシリカエアロゲルを充填している。ゴム状弾性シート6は加圧されて薄く弾性変形するシートである。ゴム状弾性シート6は、加圧力で厚さが弾性的に変化して、電池セル1の膨張と収縮を吸収して、断熱シート5の劣化を防止する。シリカエアロゲルの断熱シート5は、脆弱なシリカエアロゲルが圧縮されて破壊されると断熱特性が低下する。ゴム状弾性シート6は、電池セル1の膨張時におけるシリカエアロゲルの圧縮応力を減少して破壊を防止し、長期間にわたって断熱シート5の優れた断熱特性を保障して、電池セル1の熱暴走と熱暴走の誘発を防止する。
[0033](断熱シート5)
断熱シート5は、繊維シートとナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルとからなる。この断熱シート5は、シリカエアロゲルのゲル原料を、繊維に含浸して製造される。シリカエアロゲルを繊維シートに含浸した後、繊維を積層し、ゲル原料を反応させて湿潤ゲルを形成し、さらに湿潤ゲル表面を疎水化、熱風乾燥して製造される。繊維シートの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ただ、繊維シートの繊維は、難燃処理を施した酸化アクリル繊維やグラスウールなどの無機繊維も使用できる。
[0034] 断熱シート5の繊維シートは、好ましくは繊維径を0.1~30μmとする。繊維シートの繊維径を30μmより細くし、繊維による熱伝導を小さくして、断熱シート5の断熱特性を向上できる。シリカエアロゲルは、90%~98%を空気で構成している無機質の微粒子で、ナノオーダの球状体が結合したクラスタで形成される骨格間に微細孔があって、三次元的な微細な多孔性構造をしている。
[0035] 繊維シートとシリカエアロゲルからなる断熱シート5は、薄くて優れた断熱特性を示す。この断熱シート5は、電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーを考慮して、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止できる厚さに設定する。電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーは、電池セル1の充電容量が大きくなると大きくなる。したがって、断熱シート5の厚さは、電池セル1の充電容量を考慮して最適値に設定される。たとえば、充電容量を5Ah~20Ahとするリチウムイオン二次電池を電池セル1とする電源装置は、断熱シート5の厚さを0.5mm~2mm、最適には約1mm~1.5mmとする。ただし、本発明は弾性シートの厚さを以上の範囲に特定するものでなく、断熱シート5の厚さは、繊維シートとシリカエアロゲルからなる熱暴走の断熱特性と、電池セル1の熱暴走の誘発を防止するために要求される断熱特性を考慮して最適値に設定される。
[0036](ゴム状弾性シート6)
セパレータ2は、図4に示すように、断熱シート5の表面にゴム状弾性シート6を積層している。厚いセパレータ2は、各々の電池セル1の間に積層されて電池ブロック10を大きくする。電池ブロック10は小形化が要求されるので、セパレータ2はできる限り薄くして断熱特性が要求される。電源装置100において、容積に対して充電容量を大きくすることが要求されるからである。電源装置100は、電池ブロック10を小形化して充電容量を大きくするために、セパレータ2には、ゴム状弾性シート6と断熱シート5を薄くして、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止することが大切である。このことから、ゴム状弾性シート6は、たとえば0.2mm以上であって2mm以下、さらに好ましくは0.3mm~1mm以下として、電池セル1の膨張による圧縮応力の増加を抑制する。さらに、ゴム状弾性シート6は、好ましくは断熱シート5よりも薄くしながら、電池セル1の膨張時の圧縮応力を低下させる。」
イ 図5
[図:0001438038000008.jpg]
図5によれば、セパレータ2は、断熱シート5と2つのゴム状弾性シート6とを含む。
(6)引用文献2及び3による周知技術1の認定
引用文献2には、積層している電池セル1の間に挟まれて、内圧上昇による電池セル1の膨張を吸収し、さらに隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池間における熱伝導を遮断するセパレータ2において、両面に積層している弾性板5で中間の断熱層6を挟む積層構造とすることが記載されている。
ここで、「断熱層6」は電池間における熱伝導を遮断する断熱部材であり、「弾性板5」は内圧上昇による電池セル1の膨張を吸収する緩衝部材である。また、2つの「弾性板5」は、「断熱層6」における電池セル1の積層方向に沿う両側に位置しているといえる。
また、引用文献3には、隣接する電池セル1を絶縁し、積層している電池セル1の間に挟まれて、電池間における熱伝導を遮断し、さらに、電池セル1の膨張を吸収するセパレータ2において、断熱シート5の表面にゴム状弾性シート6を積層することが記載されている。
ここで、「断熱シート5」は、隣接する電池セル1を絶縁し、積層している電池セル1の間に挟まれて、電池間における熱伝導を遮断する断熱部材であり、「ゴム状弾性シート6」は、電池セル1の膨張を吸収する緩衝部材である。また、2つの「ゴム状弾性シート6」は、「断熱シート5」における電池セル1の積層方向に沿う両側に位置しているといえる。
よって、引用文献2及び3によれば、「積層している電池セルの間に挟まれて、内圧上昇による電池セルの膨張を吸収し、熱伝導を遮断するセパレータにおいて、断熱部材と2つの緩衝部材とを含むように構成し、2つの緩衝部材が、断熱部材における電池セルの積層方向に沿う両側に位置し、緩衝部材が、一方側が断熱部材に接続され、他方側が対応する電池セルに接続される構成」(以下「周知技術1」という。)は、本願の優先権主張日前に周知であったと認められる。
(7)引用文献4の記載及び周知技術2の認定
周知技術を示すために当審で新たに引用する国際公開第2022/099662号(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
ア 「
[図:0001438038000009.jpg]
[図:0001438038000010.jpg]
」
(当審訳:
[0090] 圧力逃がし機構は、電池セルの内部圧力又は温度が予め設定された閾値に達したとき作動して内部の圧力又は熱を逃がす素子又は部材を指す。閾値は、必要に応じて設定することができる。閾値は、電池セルの正極板、負極板、電解液およびセパレータの素材のうちの少なくとも1つによって決定されるものである。圧力逃がし機構は、防爆弁、空気弁、圧力逃がし弁または安全弁などであってもよい。さらに、圧力感応素子または温度感応素子、或いは圧力感応構造または温度感応構造を採用することができる。すなわち、電池セルの内部圧力または温度が予め設定された閾値に達すると、圧力逃がし機構が作動するか、または圧力逃がし機構に設けられた脆弱構造を破壊することにより、内部の圧力又は熱を逃がすための開口または通路を形成するように構成される。
[0091] 本出願で言及される「作動」とは、電池セルの内部圧力および熱を逃がすように、特定の状態になると、圧力逃がし機構が動作するか、またはアクティブにされることを指す。圧力逃がし機構の動作は、圧力逃がし機構の少なくとも一部の破裂、破砕、破れ、開放などを含むが、これらに限定されない。圧力逃がし機構が作動すると、電池セル内の高温高圧物質が排出物として作動する部位から排出される。したがって、圧力または温度を制御可能な範囲内で、電池セルの圧力および熱を逃がすことができ、潜在的なより深刻な事故の発生を回避することができる。
[0092] 本出願で言及される電池セルからの排出物は、電解液、溶解又は分解された正極板、セパレータの屑、反応で生成された高温高圧の気体(例えば、CH4、COなどの可燃焼ガス)、炎等を含むが、これらに限定されない。
[0093] 電池セルの圧力逃がし機構は、電池の安全性に対して重要なものである。例えば、過熱、短絡、過充電、衝突などが発生する場合、短時間で電池セル内に大量のガスが生じ、電池セルの内部温度が急激に上昇することがあり、最終的に、電池セルの爆発と発火が発生してしまうおそれがある。この現象は、電池セルの熱暴走と呼ばれる。この場合、圧力逃がし機構の作動により内圧と熱を逃がすことで、電池セルの爆発、発火を防ぐことができる。)
イ 周知技術2の認定
引用文献4には、「電池セルで熱暴走が発生した場合、電池セルの圧力逃がし機構の破裂、破砕、解放などによって、電池セルの内部の内圧、電解液などを逃がすこと」(以下「周知技術2」という。)が記載されており、当該記載事項は、本願の優先権主張日前に周知であったと認められる。
(8)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項A及びNについて
発明特定事項Aは、「電池モジュールであって、」というものであり、発明特定事項Nは、「電池モジュール。」というものである。
引用発明は、「電池モジュール」(構成a、構成n)であるから、本件補正発明と引用発明は「電池モジュール」である点で一致する。
イ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「電池セルユニット(11)と、収集ユニット(12)と、第1断熱部材(13)と、断熱緩衝ユニット(14)とを含み、」というものである。
引用発明の「電池モジュール」は、「複数の電池セル1を並べて配置した電池セル群10と、隣接する2つの電池セル1の間に設けられた中間断熱板2と、電池セル群10の上部に設けられた上部断熱板4と、上部断熱板4と電池セル群10との間に設けられたCCSアセンブリ5とを含む」(構成a)ものであり、引用発明の「電池セル群10」は、本件補正発明の「電池セルユニット」に相当する。また、引用発明の「上部断熱板4」及び「中間断熱板2」は、いずれも「断熱」機能を有する部材といえるから、それぞれ「第1断熱部材」及び「第2断熱部材」と称することは任意である。
そして、本件補正発明の「収集ユニット」に関して、本願の明細書の【0024】には、「収集ユニット12(即ち、CCSユニット)は、」と記載されていることから、本件補正発明の「収集ユニット」は「CCSユニット」のことである。そうすると、引用発明の「CCSアセンブリ5」は、本件補正発明の「収集ユニット」に相当する。
したがって、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」と引用発明の「中間断熱板2」は、「断熱機能を含む部材」である点で共通し、本件補正発明と引用発明とは「電池セルユニットと、収集ユニットと、第1断熱部材と、断熱機能を含む部材とを含」む点で共通するが、該「断熱機能を含む部材」について、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」は、「緩衝」機能を含む「ユニット」であるのに対して、引用発明の「中間断熱板2」は、この点が特定されていない点で相違する。
ウ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記電池セルユニット(11)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の電池セル(111)を含み、」というものである。
引用発明の「電池セル群10」は、「複数の電池セル1を並べて配置した」(構成a)ものであることから、複数の電池セルを含む。ここで、「複数の電池セル1を並べて配置した」方向を電池モジュールの長さ方向と称することは任意であり、「電池セル1」は、この「電池モジュールの長さ方向」に沿って配列して構成されているといえる。
してみれば、前記イを考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「前記電池セルユニットは、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の電池セルを含」むという点で一致する。
エ 発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記収集ユニット(12)は、前記電池セルユニット(11)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う一方側に位置し、前記電池セルユニット(11)に接続され、」というものである。
引用発明において、「CCSアセンブリ5は、ブラケット51と、ブラケット51上に配置された複数の導電片52と、導電片52に接続される接続回路53とを含み」(構成c)、「導電片52は、電池セル1の電極柱12に固定され、導電片52は、ブラケット51を電池セル1に圧着固定」(構成d)していることから、「CCSアセンブリ5」は、導電片52を用いて「電池セル1」に接続されている。さらに、該「CCSアセンブリ5」は、導電片52が複数であることから、前記ウを考慮すると、「電池セル群10」に接続されているといえる。
また、電池セル1の電極柱12が設置されている方向、つまり、前記(2)ウの図2における電池セル1の上下方向を電池モジュールの高さ方向と称することは任意であり、「CCSアセンブリ5」の「導電片52」は、「電池セル1の上部」にある「電極柱12」(構成b)に「固定」(構成d)されているから、「CCSアセンブリ5」は、電池セル1における電池モジュールの高さ方向に沿う一方側に位置しているといえる。
したがって、前記イを考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「前記収集ユニットは、電池セルユニットにおける前記電池モジュールの高さ方向に沿う一方側に位置し、前記電池セルユニットに接続され」る点で一致する。
オ 発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、「前記第1断熱部材(13)は、前記収集ユニット(12)における前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って前記電池セルユニット(11)から離れる側に位置し、前記収集ユニット(12)に接続され、」というものである。
引用発明において、「上部断熱板4」は「電池セル群10の上部に設けられ」(構成a)、「CCSアセンブリ5」は「上部断熱板4と電池セル群10との間に設けられ」(構成a)ており、電池モジュールの高さ方向(前記エ)の下から上に、電池セル群10、CCSアセンブリ5、上部断熱板4の順に構成されている。そうすると、上部断熱板4は、CCSアセンブリ5における電池モジュールの高さ方向に沿って電池セル群10から離れる側に位置している。また、引用発明の「上部断熱板4」は、「CCSアセンブリ5」の「ブラケット51に固定され」(構成c、構成i)ているから、「CCSアセンブリ5」に接続されているといえる。
したがって、前記イを考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1断熱部材は、前記収集ユニットにおける前記電池モジュールの高さ方向に沿って前記電池セルユニットから離れる側に位置し、前記収集ユニットに接続され」ている点で一致する。
カ 発明特定事項F及びGについて
発明特定事項Fは、「前記断熱緩衝ユニット(14)は、隣接する2つの前記電池セル(111)の間に位置し、」というものであり、発明特定事項Gは、「前記断熱緩衝ユニット(14)は、第2断熱部材(141)と、2つの緩衝部材(142)とを含み、2つの前記緩衝部材(142)は、前記第2断熱部材(141)における前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う両側に位置し、前記緩衝部材(142)は、一方側が前記第2断熱部材(141)に接続され、他方側が対応する前記電池セル(111)に接続され、」というものである。
引用発明の「中間断熱板2」は、「隣接する2つの電池セル1の間に設けられ」(構成a)ており、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」と引用発明の「中間断熱板2」は、断熱機能を含む部材である点で共通する(前記イ)から、本件補正発明と引用発明とは、「断熱機能を含む部材は、隣接する2つの電池セルの間に位置」している点で共通する。
一方、前記イを考慮すると、「断熱機能を含む部材」について、本件補正発明と引用発明とは、「断熱機能を含む部材」が「第2断熱部材」を含む点で共通するが、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」は、「2つの緩衝部材」を含む「ユニット」であるのに対し、引用発明の「中間断熱板2」はこの点が特定されていない点で相違し、それに付随して、本件補正発明は「2つの前記緩衝部材は、前記第2断熱部材における前記電池モジュールの長さ方向に沿う両側に位置し、前記緩衝部材は、一方側が前記第2断熱部材に接続され、他方側が対応する前記電池セルに接続され」ているのに対し、引用発明はこの点が特定されていない点で相違する。
キ 発明特定事項H1、H2及びIについて
発明特定事項H1は、「前記電池セル(111)の前記収集ユニット(12)に近い一端には、防爆口(111a)が開設され、前記収集ユニット(12)は、本体部(121)を含み、前記本体部(121)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の待避孔(121a)が開設され、複数の前記待避孔(121a)は、複数の前記電池セル(111)の前記防爆口(111a)と一対一に対応し、且つ各前記待避孔(121a)は、対応する前記防爆口(111a)に連通し、」というものであり、発明特定事項H2は、「それにより、前記電池セル(111)のうちの少なくとも1つの電池セルに熱暴走が生じると、当該電池セルの内部の圧力及び電解液が当該電池セルの防爆口を介して放出され、且つ前記電解液が当該電池セルの防爆口に対応する待避孔を介して前記第1断熱部材(13)へ噴射することが可能となり、」というものであり、発明特定事項Iは、「前記第1断熱部材(13)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の凹溝(131)が開設され、複数の前記凹溝(131)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔(121a)と一対一に対応し、」というものである。
(ア)電池セルユニット(11)の防爆口(111a)について
引用発明の「電池セル防爆弁11」は、「電池セル1の上部に設置され」(構成b)ており、「CCSアセンブリ5」の「ブラケット51における電池セル防爆弁11の位置に対向する位置には、防爆貫通孔511が設けられ」(構成c、構成e)ている。このことから、「電池セル1」の「電池セル防爆弁11」は、電池セル1のCCSアセンブリ5に近い一端に開設されているものといえる。
してみれば、引用発明の「電池セル防爆弁11」は、本件補正発明の「防爆口」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記電池セルの前記収集ユニットに近い一端には、防爆口が開設され」ている点で一致する。
(イ)収集ユニット(12)の本体部(121)及び待避孔(121a)について
a 引用発明の「CCSアセンブリ5」、「ブラケット51」、「防爆貫通孔511」及び「電池セル防爆弁11」は、それぞれ本件補正発明の「収集ユニット」、「本体部」、「待避孔」及び「防爆口」に相当する。また、引用発明の「CCSアセンブリ5は、ブラケット51」「を含み」(構成c)、「防爆貫通孔511」は、「ブラケット51における電池セル防爆弁11の位置に対向する位置」に「設けられ」(構成e)るから、「電池セル防爆弁11」と一対一に対応して、ブラケット51に開設されているといえる。
ここで、該「電池セル防爆弁11」は、「電池セル1の上部に」「設置され」(構成b)、複数の電池セル1は電池モジュールの長さ方向に沿って配列(前記ウ)されているから、「電池セル1」に設置した複数の「電池セル防爆弁11」及びそれに一対一に対応して開設されている「防爆貫通孔511」についても同様に、電池モジュールの長さ方向に沿って配列されているといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記収集ユニットは、本体部を含み、前記本体部には、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の待避孔が開設され、複数の前記待避孔は、複数の前記電池セルの前記防爆口と一対一に対応し」ている点で一致する。
b 引用発明は、「上部断熱板4上の電池セル1の電池セル防爆弁11の位置に対向する位置に圧力逃がし溝41が設置され」(構成f)、「電池セル1が熱暴走を起こした場合、圧力逃がし溝41に対応する位置の上部断熱板4を、熱エネルギーが突き破り」(構成k)、「熱エネルギーが制御不能な電池セル1から放出され」る(構成l)から、「電池セル1が熱暴走を起こした場合」、「電池セル1」の「熱エネルギー」が、「電池セル防爆弁11」から放出して、「電池セル防爆弁11」と一対一に対応して開設されている「防爆貫通孔511」(前記a)を通り、「電池セル防爆弁11」の位置に対向する位置の「上部断熱板4」を突き破り放出されるものである。つまり、「防爆貫通孔511」は、それに対向する位置の「電池セル防爆弁11」に連通する構成である。
したがって、前記aを考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「各前記待避孔は、対応する前記防爆口に連通」する点で一致する。
(ウ)第1断熱部材(13)の凹溝(131)について
引用発明は、「上部断熱板4上の電池セル1の電池セル防爆弁11の位置に対向する位置に圧力逃がし溝41が設置され」(構成f)ており、引用発明の「圧力逃がし溝41」は「上部断熱板4」上に開設されている。
また、前記(イ)bを考慮すると、「圧力逃がし溝41」と「防爆貫通孔511」とは一対一に対応し、複数の「圧力逃がし溝41」は、電池モジュールの長さ方向に沿って配列される。
引用発明の「圧力逃がし溝41」は、「電池セル1の方向に開口して設けられ」(構成g)ており、「電池セル1の方向」とは、上部断熱板4から電池セル1を見た方向のこと、すなわち、電池モジュールの高さ方向(前記エ)のことである。そうすると、引用発明の「圧力逃がし溝41」は、電池モジュールの高さ方向に沿って延在した凹状の溝であるといえ、本件補正発明の「凹溝」に相当する。
してみれば、前記イを考慮すると、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1断熱部材には、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の凹溝が開設され、複数の前記凹溝は、前記電池モジュールの高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔と一対一に対応」する点で一致する。
(エ)発明特定事項H2について
発明特定事項H2の「それにより、」の「それ」とは、直前の記載である発明特定事項H1を指すものと認められ、前記(ア)、(イ)に示すように、引用発明は、本件補正発明の「それ」に対応する構成を有する。
ここで、前記(イ)bによれば、「電池セル1が熱暴走を起こした場合」、「電池セル1」の「熱エネルギー」は、「電池セル1」の「電池セル防爆弁11」から放出して、「電池セル防爆弁11」と一対一に対応して開設されている「防爆貫通孔511」を通り、「電池セル防爆弁11」の位置に対向する位置の「上部断熱板4」を突き破り放出される。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、本件補正発明の「それ」に対応する構成により、「前記電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルに熱暴走が生じると」、電池セルの熱エネルギーが「当該電池セルの防爆口を介して放出され」、且つ熱エネルギーが「当該電池セルの防爆口に対応する待避孔を介して前記第1断熱部材へ噴射することが可能」となる点で共通する。
ただし、「熱エネルギー」の「放出」に関して、本件補正発明は、「内部の圧力及び電解液」が「放出され」るのに対し、引用発明では、放出されるものが特定されておらず、それに付随して、本件補正発明では、噴出するのが「前記電解液」であるのに対して、引用発明では、この点について特定されていない点で相違する。
ク 発明特定事項J及びKについて
発明特定事項Jは、「前記凹溝(131)の底壁は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満たし、」というものであり、発明特定事項Kは、「前記第1断熱部材(13)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満たし、」というものである。
前記キ(ウ)で述べたように、引用発明の「圧力逃がし溝41」は、本件補正発明の「凹溝」に相当し、電池モジュールの高さ方向に沿って延在する。そうすると、「上部断熱板4の圧力逃がし溝41の厚さ」(構成h)は、本件補正発明の「凹溝の底壁」の「電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D1」に対応する。また、引用発明の「上部断熱板4」は、本件補正発明の「第1断熱部材」に相当し(前記イ)、その厚さは、「圧力逃がし溝41の厚さ」と同様に、電池モジュールの高さ方向に沿っているから、本件補正発明の「第1断熱部材」における「電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D2」に対応する。
そして、引用発明の「上部断熱板4」は、「上部断熱板4上の圧力逃がし溝41の厚さ」が「0.2mmを超えな」い(構成h)ものであることから、引用発明の「上部断熱板4」の寸法のうち、「圧力逃がし溝41の厚さ」については、D1を用いて表現すると、D1<0.2mmの範囲であると認められるものの、0.1mm≦D1≦0.2mmの範囲であることを特定していない。
したがって、本件補正発明では、「前記凹溝の底壁は、前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満た」すのに対し、引用発明では、「前記凹溝の底壁」について、「前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D1」がその範囲であることを特定していない点で相違する。
また、本件補正発明では、「前記第1断熱部材は、前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満た」すのに対して、引用発明では、「第1断熱部材」について、「前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D2」がその範囲であることを特定していない点で相違する。
ケ 発明特定事項L及びMについて
本件補正発明は、「第2断熱部材は、前記電池モジュールの長さ方向に沿う寸法D3が、0.65mm≦D3≦1mmを満たし」、「前記緩衝部材は、前記電池モジュールの長さ方向に沿う寸法D4が、0.5mm≦D4≦0.9mmを満たす」のに対し、引用発明はこの点について特定していない点で相違する。
コ 一致点、相違点
前記ア~ケによれば、本件補正発明と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
電池モジュールであって、
電池セルユニットと、収集ユニットと、第1断熱部材と、断熱機能を含む部材とを含み、
前記電池セルユニットは、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の電池セルを含み、
前記収集ユニットは、前記電池セルユニットにおける前記電池モジュールの高さ方向に沿う一方側に位置し、前記電池セルユニットに接続され、
前記第1断熱部材は、前記収集ユニットにおける前記電池モジュールの高さ方向に沿って前記電池セルユニットから離れる側に位置し、前記収集ユニットに接続され、
前記断熱機能を含む部材は、隣接する2つの前記電池セルの間に位置し、
前記断熱機能を含む部材は、第2断熱部材を含み
前記電池セルの前記収集ユニットに近い一端には、防爆口が開設され、前記収集ユニットは、本体部を含み、前記本体部には、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の待避孔が開設され、複数の前記待避孔は、複数の前記電池セルの前記防爆口と一対一に対応し、且つ各前記待避孔は、対応する前記防爆口に連通し、それにより、前記電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルに熱暴走が生じると、当該電池セルの熱エネルギーが当該電池セルの防爆口を介して放出され、且つ熱エネルギーが当該電池セルの防爆口に対応する待避孔を介して前記第1断熱部材へ噴射することが可能となり、
前記第1断熱部材には、前記電池モジュールの長さ方向に沿って配列された複数の凹溝が開設され、複数の前記凹溝は、前記電池モジュールの高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔と一対一に対応する、
電池モジュール。
[相違点1]
「断熱機能を含む部材」について、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」は、「緩衝」機能を含む「ユニット」であるのに対して、引用発明の「中間断熱板2」は、この点が特定されていない点で相違する。
[相違点2]
「断熱機能を含む部材」について、本件補正発明の「断熱緩衝ユニット」は、「2つの緩衝部材」を含む「ユニット」であるのに対し、引用発明の「中間断熱板2」にはこの点が特定されていない点で相違し、それに付随して、本件補正発明では「2つの前記緩衝部材は、前記第2断熱部材における前記電池モジュールの長さ方向に沿う両側に位置し、前記緩衝部材は、一方側が前記第2断熱部材に接続され、他方側が対応する前記電池セルに接続され」ているのに対し、引用発明ではこの点が特定されていない点で相違する。
[相違点3]
「熱エネルギー」の「放出」に関して、本件補正発明は、電池セルの「内部の圧力及び電解液」が「放出され」るのに対し、引用発明は、放出されるものが特定されておらず、それに付随して、本件補正発明では、噴出するのが「前記電解液」であるのに対して、引用発明では、この点について特定されていない点で相違する。
[相違点4]
本件補正発明では、「前記凹溝の底壁は、前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満た」すのに対し、引用発明では、「前記凹溝の底壁」について、「前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D1」がその範囲であることを特定していない点で相違する。
また、本件補正発明では、「前記第1断熱部材は、前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満た」すのに対して、引用発明では、「第1断熱部材」について、「前記電池モジュールの高さ方向に沿う寸法D2」がその範囲であることを特定していない点で相違する。
[相違点5]
本件補正発明は、「第2断熱部材は、前記電池モジュールの長さ方向に沿う寸法D3が、0.65mm≦D3≦1mmを満たし」、「前記緩衝部材は、前記電池モジュールの長さ方向に沿う寸法D4が、0.5mm≦D4≦0.9mmを満たす」のに対し、引用発明はこの点について特定していない点で相違する。
(9)相違点1、2及び5についての判断
相違点1、2及び5については、「断熱緩衝ユニット」の構成、寸法に関することであるのでまとめて判断する。
ア 前記(6)のとおり、積層している電池セルの間に挟まれて、内圧上昇による電池セルの膨張を吸収し、熱伝導を遮断するセパレータにおいて、断熱部材と2つの緩衝部材とを含み構成し、2つの緩衝部材が、断熱部材における電池セルの積層方向に沿う両側に位置し、緩衝部材が、一方側が断熱部材に接続され、他方側が対応する電池セルに接続される構成(周知技術1)は、本願の優先権主張日前に周知である。ここで、周知技術1の「電池セルの積層方向」は、本件補正発明の「電池モジュールの長さ方向」のことである。
そして、引用発明と周知技術1は、いずれも電池セル間のセパレータに関するものであり、隣接する電池セル間の断熱性を確保するという点で共通するものである。さらに、電池セルの内圧上昇による電池セルの膨張については一般的な課題である。してみれば、引用発明において、隣接する2つの電池セルの間に設ける部材として、「中間断熱板2」に代えて、断熱部材と緩衝部材を含めた上記周知のセパレータを採用し、相違点1及び2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 引用発明の中間断熱板2を、断熱部材と2つの緩衝部材からなるセパレータに置換した際、断熱部材の厚さの設定については、例えば、引用文献3において、「断熱シート5の厚さは、電池セル1の充電容量を考慮して最適値に設定」したり、「電池セル1の熱暴走の誘発を防止するために要求される断熱特性を考慮して最適値に設定」したりして「たとえば、…(中略)…断熱シート5の厚さを0.5mm~2mm」([0035])とすることが示されており、また、緩衝部材の厚さは、「電池ブロック10を小形化して充電容量を大きくするために」、「ゴム状弾性シート6と断熱シート5を薄く」するように設定して、「たとえば、…(中略)…断熱シート5の厚さを0.5mm~2mm」([0036])とすることが示されているとおり、断熱特性、電池セルの充電容量、小型化、薄化を考慮することが当然のことであるから、これらのことを考慮して、断熱部材の厚さD3を「0.65mm≦D3≦1mm」とすることや、緩衝部材の厚さD4を「0.5mm≦D4≦0.9mm」とすることに格別の困難性はない。
したがって、引用発明において相違点5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(10)相違点3についての判断
引用発明では、電池セル1で熱暴走が発生した場合に電池セル1の電池セル防爆弁11から放出されるものを熱エネルギーとしており、当該熱エネルギーがどのようのものかが明記されていない。
しかしながら、前記(7)のとおり、電池セルで熱暴走が発生した場合に、電池セルの圧力逃がし機構によって電池セルの内部から電池セルの内部の内圧や電解液を逃がすこと(周知技術2)は、本願の優先権主張日前に周知である。ここで、周知技術2の「圧力逃がし機構」は、引用発明の「電池セル防爆弁11」に対応するものである。
そうすると、引用発明において、電池セル1で熱暴走が発生した場合、電池セル防爆弁11から放出されるものが電池セルの内部の内圧、電解液であることは自明であり、相違点3については、実質的な相違とは認められない。
(11)相違点4についての判断
前記(8)クで述べたとおり、引用発明の「上部断熱板4」の寸法のうち、「圧力逃がし溝41の厚さ」については、D1<0.2mmの範囲である。これは、引用文献1の[0031]に記載されるように「電池セル1の熱暴走後に電池セル防爆弁11の位置に対応する上部断熱板が確実に開放される」ための厚さにしているからである。
また、一方で、引用文献1の[0029]に記載されるように、「熱エネルギーが放出された後、放出された熱エネルギーは上部断熱板4の表面に拡散」し、「上部断熱板4の表面で拡散する際、隣接する電池セル1への影響を避ける」ために、上部断熱板4は断熱性や隔離性が求められる。
そうすると、「上部断熱板4」の厚さについては、当然、十分な断熱性や隔離性のために、上記で「熱暴走後に」「確実に開放される」とした0.2mmと比して大きい値を選択し得るものであり、一方で、「上部断熱板4」のうち「圧力逃がし溝41」の部分の厚さについては、0.2mmを超えない範囲で、断熱性や隔離性を考慮した厚さとする必要があるといえる。
してみれば、引用発明において、「上部断熱板4」や、「圧力逃がし溝41」の部分の各厚みは、これらの考慮されるべき点を踏まえて、それぞれの機能が好適に発揮される範囲で、当業者が適宜調整し得たものに過ぎないものであって、「圧力逃がし溝41」の厚さD1を「0.1mm≦D1≦0.2mm」とすることや、「上部断熱板4」の厚さD2を「0.4mm≦D2≦1mm」とすることに格別の困難性は認められない。
(12)効果についての判断
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1及び2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
なお、本件補正発明では、「第1断熱部材」、「凹溝の底壁」、「第2断熱部材」、「緩衝部材」の各部材の厚さについてその範囲を特定しているが、願書に最初に添付した明細書又は図面には、その範囲内において奏される効果に格別顕著といえる記載や示唆もないため、臨界的意義を認めることはできない。
(13)請求人の主張について
請求人は、本件補正発明の引用発明に対する進歩性について、概略、以下の主張1~3を主張する。なお、主張に記載された引用文献6は、前記3の(2)の引用文献1のことであり、引用文献2及び3は、前記3の(4)及び(5)の引用文献2及び3のことである。
ア 主張1
「本件発明1は、本拒絶査定で挙げられた引用文献2、引用文献3、および、引用文献6に対して、少なくとも以下の構成要件を相違点として有しています。
ア)前記第1断熱部材(13)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D2が、0.4mm≦D2≦1mmを満たし、
イ)前記第2断熱部材(141)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D3が、0.65mm≦D3≦1mmを満たし、
ウ)前記緩衝部材(142)は、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿う寸法D4が、0.5mm≦D4≦0.9mmを満たす。
エ)前記凹溝(131)の底壁は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満たす。
まず、上記相違点ア)に関し、理由1では、「引用文献6には、圧力逃がし溝41の厚さが0.2mmを超えないことも記載されているのであるから、当業者であれば、上部断熱板4の厚さは、0.2mmよりは大きく、かつ、かかる厚さの圧力逃がし溝41を好適に設けられる厚さに設定すると認められ、具体的に0.4mm~1mmという範囲内の厚さを採用することに、格別の困難性は認められない。」と認定されています。
しかし、たとえ引用文献6の図4などを参照しても、「圧力逃がし溝41の厚さが0.2mmを超えない」ことと、「上部断熱板4の厚さは、0.2mmよりは大きい」こととの間には、何の関係もないと思われます。例えば、圧力逃がし溝41の厚さが0.1mm(0.2mmを超えないことを満たす)である場合に、上部断熱板4の厚さが0.1mm、0.12mm、0.15mm、0.18mmなどの多くの数値に設定され得ます。しかし、上部断熱板4の厚さに関する上記諸数値は、いずれも0.2mmよりも小さいです。つまり、たとえ圧力逃がし溝41の厚さが0.2mmを超えないとしても、上部断熱板4の厚さがあえて0.2mmよりも大きく設定される必要は全くありません。このため、「圧力逃がし溝41の厚さが0.2mmを超えないことも記載されているのであるから、当業者であれば、上部断熱板4の厚さは、0.2mmよりは大きく、かつ、かかる厚さの圧力逃がし溝41を好適に設けられる厚さに設定すると認められ」という認定は、妥当ではないと思料いたします。また、引用文献6から、「上部断熱板4の厚さは、0.2mmよりは大きい」という前提が成り立たない場合に、無論、本件発明1のような「0.4mm~1mm」という数値範囲まで特定するには、一層困難であると思料いたします。
そして、本件発明1は、第1断熱部材(13)の前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D2を0.4mm~1mmという本件特定の数値範囲に設定することにより、「第1断熱部材13が効果的な断熱及び隔離防護の効果を奏することができ、単一の電池セル111の熱暴走によって連鎖反応を引き起こす可能性を低減させることに有利であるとともに、第1断熱部材13が厚すぎることによって電池モジュール1全体の体積が過度に大きくなる可能性を低減させることができる」(出願当初の明細書の段落0041参照)という、引用文献6から奏せにくい有利な作用効果を奏しています。」
イ 主張2
「次に、上記相違点イ)と上記相違点ウ)に関して、理由1では、「引用文献3には、断熱シートの厚さとして0.5mm~2mm、弾性シートの厚さとして0.3~1mmといった範囲の記載もあり(段落0035-0036参照)、それぞれ具体的に、これらの範囲と重複する0.65mm~1mm、0.5mm~0.9mmという厚さを採用してみることに、格別の困難性は認められない。」と認定されています。
しかし、引用文献3には、本件の出願当初の明細書の段落0044、0047に示す本件発明1のかかる限界値の臨界的に意義および作用効果が開示されていません。このため、0.5mm~2mmという相対的に広い範囲の中から、本件発明1の0.65mm~1mmという相対的に狭い数値範囲を選択し、且つ、0.3~1mmという相対的に広い範囲の中から、本件発明1の0.5mm~0.9mmという相対的に狭い数値範囲を選択することは、容易ではないと思料いたします。」
ウ 主張3
「また、本手続補正によって、上記相違点エ)も追加されました。
そして、本件発明1は、上記相違点エ)を含む構成とすることで、「第1断熱部材13に凹溝131を開設することにより、第1断熱部材13における電池セル111の防爆口111aに対応する位置での薄肉化設計が図れ、電池セル111から放出された電解液が第1断熱部材13を突き破ることを容易にでき、さらに第1断熱部材13の電池セル111に対する隔離防護の作用を実現することに有利であり、電解液が他の電池セル111に影響をもたらす可能性を低減できる。更に、凹溝131の底壁の、電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1を0.1mm≦D1≦0.2mmで限定することで、凹溝131の底壁が厚すぎることによって電解液が第1断熱部材13を突き破れず他の電池セル111上に噴射できなくなる可能性を一層低減でき、他の電池セル111に熱暴走が生じる可能性を一層低減させることができる」(出願当初の明細書の段落0035、0038参照)という特有の有利な作用効果を奏しています。」
エ 主張4
「さらに、本件発明1は、上記相違点ア)~エ)、および、それらの各自の作用効果を有するだけでなく、断熱および隔離防護の効果並びに小型化のいずれにおいても相乗的な効果を奏しています。特に、それは、複数の異なる重要部品の間の連携及び寸法上の最適化(トレードオフ)を考慮したうえで良好に達成されたものです。具体的に、本件発明1は、高さ方向及び長さ方向の各方向における諸部品の間の連携及び寸法上の最適化(トレードオフ)を考慮しながら(例えば、高さ方向において第1断熱部材(13)と凹溝(131)との間の連携及び寸法上の最適化(トレードオフ)を考慮し、長さ方向において第2断熱部材(141)と緩衝部材(142)との間の連携及び寸法上の最適化(トレードオフ)を考慮する)、高さ方向と長さ方向との間の連携及び寸法上の最適化(トレードオフ)を考慮しています(それにより、第1断熱部材(13)と凹溝(131)と第2断熱部材(141)と緩衝部材(142)との間のより良好な連携を実現する)。これは、限られた回数の試験で設計された単独な部品を一緒に置くだけでは達成できるものではなく、当業者の予測し得る範囲を超えたものです。」
オ 主張1及び主張3について
主張1については、「第1断熱部材」に関することで、主張3については、「第1断熱部材」の「凹溝の底壁」の厚みに関することであるため、まとめて検討する。
前記「(11)相違点4についての判断」で示したように、「上部断熱板4」の厚さについては、十分な断熱性や隔離性のために、0.2mmと比して大きい値を選択し得るものであって、0.4mm以上に設定することを阻害するものではないから、「0.4mm~1mm」という数値範囲まで特定することが「困難」であるとする理由は認められない。
また、前記「(11)相違点4についての判断」で示したように、「上部断熱板4」のうち「圧力逃がし溝41」の部分の厚さについて、「0.1mm≦D1≦0.2mm」とすることに格別な困難性はなく、その厚さは、「熱暴走後に確実に開放され」、かつ、「断熱性や隔離性を考慮」するものといえるから、請求人が凹溝について主張する作用効果(主張3)は格別なものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張1及び3は採用できない。
カ 主張2について
前記「(9)相違点1、2及び5についての判断」のイで示したとおり、断熱部材及び緩衝部材の各厚さについては、断熱特性、電池セルの充電容量、小型化、薄化を考慮して設計するものであるから、引用文献3に例示されるような数値範囲に含まれる値も当然に選択され得るのであり、例示された範囲の中の一部の数値範囲が選択されることに阻害要因も存在しない。よって、断熱部材の厚さD3を「0.65mm≦D3≦1mm」とすることや、緩衝部材の厚さD4を「0.5mm≦D4≦0.9mm」とすることに格別の困難性は認められない。
したがって、請求人の上記主張2は採用できない。
キ 主張4について
主張4では、「本件発明1は、上記相違点ア)~エ)、および、それらの各自の作用効果を有するだけでなく、断熱および隔離防護の効果並びに小型化のいずれにおいても相乗的な効果を奏」するとしているが、引用発明及び周知技術に示される効果よりも格別顕著な効果、異質な効果については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載されていない。
したがって、請求人の上記主張4は採用できない。
(14)小括
以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
4 本件補正についてのむすび
前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)のとおりのものと認める。
第4 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~6に係る発明は、以下の文献6に記載された発明並びに文献2及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
文献6.中国実用新案第216698613号明細書
文献2.国際公開第2021/199492号
文献3.国際公開第2020/194938号
第5 文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された文献6(当審決の引用文献1)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に示したとおりであり、引用発明は前記第2[理由]3(3)に示したとおりである。また、原査定の拒絶理由で引用された文献2及び文献3の記載事項は、前記第2[理由]3(4)及び(5)に示したとおりであり、周知技術は前記第2[理由]3(6)に示したとおりである。
第6 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「前記第1断熱部材(13)には、前記電池モジュール(1)の長さ方向に沿って配列された複数の凹溝(131)が開設され、複数の前記凹溝(131)は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿って延在し、複数の前記待避孔(121a)と一対一に対応し、」及び「前記凹溝(131)の底壁は、前記電池モジュール(1)の高さ方向に沿う寸法D1が、0.1mm≦D1≦0.2mmを満たし、」として特定される限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-006636