特許拒絶査定不服審判
2023-008092
単電池、動力電池パック及び電気自動車
- 審判番号
- 2023-008092
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-540056
- 請求日
- 2023年05月17日
- 審決日
- 2024年05月27日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビーワイディー カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】村井 康司
- 【請求人代理人】川分 康博
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P18 .572-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M) / P18 .121-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-540056「単電池、動力電池パック及び電気自動車」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月16日国際公開、WO2020/143171、令和 4年 3月 7日国内公表、特表2022-517214〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)6月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年1月9日 中国、2019年1月9日 中国)を国際出願日とする出願であって、令和3年8月26日に手続補正書が提出され、令和4年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月22日に意見書が提出され、同年12月28日付けで拒絶査定されたところ、令和5年5月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年5月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月17日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の概要
令和5年5月17日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、令和3年8月26日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される、
「 電池本体を含み、前記電池本体が長さL、幅H及び厚さDを有し、前記電池本体の長さLが幅Hより大きく、前記電池本体の幅Hが厚さDより大きく、
前記電池本体の長さLが
L>600mm
であり、前記電池本体の長さLと幅Hが、
L/H=4~21
を満たすことを特徴とする、単電池。」
との発明(以下、「本願発明」という。)を、
「 電池本体を含み、前記電池本体が長さL、幅H及び厚さDを有し、前記電池本体の長さLが幅Hより大きく、前記電池本体の幅Hが厚さDより大きく、
前記電池本体の長さLが
L>600mm
であり、前記電池本体の長さLと幅Hが、
L/H=4~21
を満たし、
前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され、前記電池本体の内部を前記正極から前記負極に向かって、又は、前記負極から前記正極に向かって、長手方向に電流が流れるように構成されている、ことを特徴とする、単電池。」(下線部は、補正箇所を示す。)
との発明(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含むものである。
2.補正の適否
(1)補正の目的要件
上記補正の内容は、以下の「補正A」「補正B」に分けられる。
(補正A)「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」る構成を追加する補正。
(補正B)「前記電池本体の内部を前記正極から前記負極に向かって、又は、前記負極から前記正極に向かって、長手方向に電流が流れるように構成されている」ことを限定する補正。
上記補正Aに関して検討する。
補正Aは電池本体に関し、その長手方向両端部に正極及び負極が配置されるという新たな構成を加える補正であり、補正前の発明の発明特定事項を限定する補正であるということはできないから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正ではない。また、補正Aは、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする補正でもない。
また、補正Aに関し、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との記載では、電池本体の長手方向両端部に設置されるのは「正極」「負極」であるところ、審判請求人が審判請求書において補正の根拠としている(審判請求書「3.(2)補正の根拠の明示」の欄を参照)発明の詳細な説明の段落【0081】をみても、電池本体の長手方向の端部には「第1のタブ101」(負極タブ)、「第2のタブ102」(正極タブ)が設置されることしか記載されておらず、「正極」「負極」が設置されていることは記載されていないから、「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との構成を追加する補正Aは新たな技術事項を導入する補正であり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
次に、上記補正Bについて検討する。
補正Bは電池本体の内部を正極から負極に向かって、又は、負極から正極に向かって、長手方向に電流が流れることを特定する補正であるが、本件補正前には電池本体の内部について何ら特定されていなかったことに鑑みれば、補正Bは補正前の発明の発明特定事項を限定する補正ということはできないから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正ではない。また、補正Bは、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする補正ともいえない。
したがって、上記補正は、新たな技術事項を導入するものであり、また特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
(2)独立特許要件について
上記(1)で検討したとおり、本件補正における請求項1についての補正事項は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項(目的要件)の規定に違反するものであるが、更に進めて、仮に上記補正が特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、さらに、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項(シフト補正)にも違反しない補正であるとした場合に、本件補正後の請求項1に記載された本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に予備的に検討する。
本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され、前記電池本体の内部を前記正極から前記負極に向かって、又は、前記負極から前記正極に向かって、長手方向に電流が流れるように構成されている」との記載に関連して、本件発明の詳細な説明の段落【0081】に以下のように記載されている。
「第1のタブ101は、電池本体110の長手方向の一端に設けられ、第2のタブ102は、電池本体110の長手方向の他端に設けられる。換言すれば、単電池100の長手方向は、単電池100の内部の電流方向であってよく、すなわち、単電池100の内部の電流方向は、矢印Bにより示すとおりである。このように、電流方向が単電池100の長手方向と同じであるため、単電池100の有効放熱面積がより大きく、放熱効率がより高い。ここで、第1のタブ101は、単電池100の正極タブであり、第2のタブ102は、単電池100の負極タブであってよく、或いは、第1のタブ101は、単電池100の負極タブであり、第2のタブ102は、単電池100の正極タブである。」(下線は当審で付した。)
ここで、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との記載では、電池本体の長手方向両端部に設置されるのは「正極」「負極」であるが、本件発明の詳細な説明の段落【0081】には、「第1のタブ101」(負極タブ)、「第2のタブ102」(正極タブ)が設置されることしか記載されておらず、「正極」「負極」が設置されていることは記載されていない。そして、段落【0073】には「・・・電池本体110は、一定の構造強度を有するように、外面が平滑な直方体形状に構成され、例えば、電池用電極体を角形電池ケース内に入れ、蓋板で電池ケースの開口部分を密封し、電解液を注入する。」と記載されており、「正極」「負極」などの「電極体」は角形電池ケースの内部に入れられる構成物であって、外部との電気的接続を行う「タブ」とは異なる構成であると解されるから、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」る構成は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、仮に、本件補正発明の「正極」「負極」が「正極タブ」「負極タブ」を意味していたとしても、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との記載では電池本体の長手方向の両端部、すなわち、一端と他端のそれぞれに正極と負極の両方が配置されるとも解し得る。しかしながら、上記引用した本件発明の詳細な説明の段落【0081】には、電池本体110の長手方向の一端に一方のタブが設けられるものしか記載されておらず、「正極タブ」と「負極タブ」の両方が一端と他端の両端に設けられることは記載されていないから、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との構成は発明の詳細な説明に記載された事項ではなく、本件補正発明は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、通常、技術常識として、電池の両端それぞれに両極が構成されることはないから、本件補正発明の「前記電池本体の長手方向両端部に正極及び負極が配置され」との記載は技術常識に反し、発明の詳細な説明をみてもその構成は明らかではないから、当該記載は明りょうとはいえず、本件補正発明は明確とはいえない。
したがって、本件補正発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本件発明
上記のとおり、令和5年5月17日の手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年8月26日の手続補正により補正された上記「第2 1.」において「本願発明」として記載したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概略は次のとおりである。
この出願の請求項1ないし21に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:中国特許出願公開第107394279号明細書
引用文献2:国際公開第2013/161370号
3.進歩性について
(1)引用文献の記載及び引用発明
引用文献2(国際公開第2013/161370号)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
「[0073] 図2A及び図2Bは、セル101、及びカートリッジ100の外観例を表す図である。図3は、セル101及びカートリッジ100の仕様の一例を表す図である。
セル101は、図2Aに示す様に、略直方体の形状をしており、タブ(正極端子、及び負極端子)が1つの面に設けられる。セル101の大きさは、例えば、図3に示すように、横幅が160mm程度、高さ(厚み)が3mm程度、縦幅(奥行き)が80mm程度である。なお、セルの大きさは、これに限られるものではなく、各用途に応じて自由に設計することができるものとする。例えば、住宅定置用の場合、交換やカートリッジ単独での使用の観点で、横幅が100~300mm程度、高さ(厚み)が1~10mm程度、縦幅(奥行き)が50~200mm程度であることが好ましく、横幅が130~180mm程度、高さ(厚み)が2~5mm程度、縦幅(奥行き)が60~100mm程度であることが更に好ましい。また、大型用途の場合、交換の観点で、横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度であることが好ましく、横幅が300~700mm程度、高さ(厚み)が8~15mm程度、縦幅(奥行き)が300~700mm程度であることが更に好ましい。セルの形状も図2Aに示されるものに限らず、楕円体、円筒状、長方体、正方体、菱体又は複数個の楕円体、円筒状、長方体、正方体、菱体の組み合わせによるものでも良く、異なる種類の形状のものの組み合わせでも良い。なお、生産性の観点で、長方体、正方体、楕円体、円筒状のいずれか又はそれらの組み合わせであることが好ましい。
蓄電するデバイスとしてのセル101は、リチウムイオン二次電池(以下LiBとも呼ぶ)、ニッケル水素二次電池、鉛蓄電池、ニッカド電池、レドックスフロー電池、亜鉛塩素電池、亜鉛臭素電池、リチウム空気電池、アルミニウム空気電池、空気亜鉛電池、ナトリウム硫黄電池、リチウム硫化鉄電池、空気マグネシウム電池のいずれかから構成される。」
[図:0001415948000001.jpg]
上記記載によれば、引用文献2には以下の事項が記載されている。
・上記記載によれば、「セル101は、リチウムイオン二次電池(以下LiBとも呼ぶ)、ニッケル水素二次電池、鉛蓄電池、ニッカド電池、レドックスフロー電池、亜鉛塩素電池、亜鉛臭素電池、リチウム空気電池、アルミニウム空気電池、空気亜鉛電池、ナトリウム硫黄電池、リチウム硫化鉄電池、空気マグネシウム電池のいずれかから構成される」から、セル101は電池であるといえる。
・上記記載によれば、セル101の大きさに関して、各用途に応じて自由に設計できるとしており、大型用途の場合、横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度であり、セルの形状も長方体であってもよいことが記載されている。
したがって、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度であり、長方体の形状を有する、電池であるセル。」
(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「電池であるセル」は単体の電池であり、本体を含んでいるといえるから、本願発明の「電池本体を含」む「単電池」に相当する。
・引用発明においてセルは「長方体」の形状を有することから、「横幅」(本願発明の「幅H」に相当)に対して「縦幅(奥行き)」(本願発明の「長さL」に相当)が長い形状を有するセルが含まれる。そうしてみると、引用発明では「横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度」であり、横幅と縦幅(奥行き)が高さ(厚み)より大きいことを踏まえれば、「縦幅(奥行き)」(本願発明の「長さL」に相当)が「横幅」(本願発明の「幅H」に相当)より大きく、「横幅」が「高さ(厚み)」(本願発明の「厚さD」に相当)より大きくなるから、引用発明は本願発明の「前記電池本体が長さL、幅H及び厚さDを有し、前記電池本体の長さLが幅Hより大きく、前記電池本体の幅Hが厚さDより大き」い構成を有しているといえ、この点で両者は一致する。
・本願発明では「前記電池本体の幅Hが厚さDより大きく、前記電池本体の長さLがL>600mmであり、前記電池本体の長さLと幅Hが、L/H=4~21を満たす」のに対して、引用発明は「横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度であり、長方体の形状を有」している点で相違する。
そうしてみると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「電池本体を含み、前記電池本体が長さL、幅H及び厚さDを有し、前記電池本体の長さLが幅Hより大きく、前記電池本体の幅Hが厚さDより大きい単電池。」
(相違点)
本願発明では「前記電池本体の長さLがL>600mmであり、前記電池本体の長さLと幅Hが、L/H=4~21を満たす」のに対して、引用発明は「横幅が200~1000mm程度、高さ(厚み)が5~20mm程度、縦幅(奥行き)が200~1000mm程度であり、長方体の形状を有」している点。
上記相違点について検討する。
引用発明において、縦幅(奥行き)は200~1000mm程度であり、横幅より大きいことを踏まえれば600mmより大きくすることは適宜設計できた程度の事項にすぎないと認められる。そして縦幅(奥行き)と横幅との比(縦幅/横幅)は1~5(=1000mm/200mm)となり、本願発明のL/H=4~21と一部重なることを踏まえれば、4より大きく本願発明の範囲に含まれるように構成することは適宜なし得た程度の事項にすぎず、また、このように構成することを阻害すべき要因を見いだすことはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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