特許異議申立
2023-700978
ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品
- 審判番号
- 2023-700978
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-163065
- 登録番号
- 7240646
- 請求日
- 2023年09月15日
- 審決日
- 2025年03月17日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【異議申立人】古川 慎二
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 田口 傑
- 審判官 筑波 茂樹
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7240646号発明「ポリオレフィン樹脂層を備える積層体およびそれを備える包装製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7240646号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7240646号の請求項1~4、6、7に係る特許を維持する。
特許第7240646号の請求項5に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7240646号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成28年7月1日に出願された特願2016-131900号の一部を令和3年10月1日に新たな特許出願としたものであって、令和5年3月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月16日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 9月15日 :特許異議申立人 古川慎二(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 1月30日付け:取消理由通知
同年 3月29日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
同年 5月27日 :申立人による意見書の提出
同年 8月30日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年10月30日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
なお、令和6年10月30日の訂正請求書による訂正の請求について、期間を指定して申立人に意見を求めたところ、意見書等の提出はなかった。
また、令和6年3月29日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月30日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、」
と記載されているのを、
「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2、4、6、7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、
「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、」
と記載されているのを、
「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されており、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2、4、6、7も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、
「積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除く)。」
と記載されているのを、
「積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2、4、6、7も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1または2に記載の積層体。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、引用形式を解消して独立形式に改める。
(5)訂正事項5
訂正事項4により引用形式を解消して独立形式に改めた請求項3において、
「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、」
と記載されているのを、
「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、」
に訂正する(請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4、6、7も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
訂正事項4により引用形式を解消して独立形式に改めた請求項3において、
「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、」
と記載されているのを、
「前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成しており、」
に訂正する(請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4、6、7も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
訂正事項4により引用形式を解消して独立形式に改めた請求項3において、
「積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除く)。」
と記載されているのを、
「積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が穣層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)。」
に訂正する(請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4、6、7も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4において、
「前記アンカーコート層の材料が、有機チタン系、ポリウレタン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、および変性ポリオレフィン系からなる群から選択される材料である、」
と記載されているのを、
「前記アンカーコート層の材料が、ポリウレタン系である、」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
特許精求の範囲の請求項5を削除する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1~3について
請求項1についての訂正である訂正事項1~3をまとめて検討する。
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、積層体について、基材層とアンカーコート層の間に、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムとを備えることを特定するものであるから、積層体の構成をさらに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項2は、積層体について、アンカーコート層が、プラスチックフィルムの面上に形成されているとの特定を加えるものであるから、積層体の構成をさらに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項3は、積層体について、「延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く」とすることで、積層体の特定の態様を除外して、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、請求項1についてする訂正事項1~3による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1について、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)の段落【0114】には「基材層、アンカーコート層、接着樹脂層、バリア層、プラスチックフィルム、アンカーコート層、ポリオレフィン樹脂層が順に積層された積層体7を得た。」と記載され、段落【0115】にも同様の記載がある。そうすると、基材層とアンカーコート層の間に、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムとを備えることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
訂正事項2について、特許明細書等の段落【0114】には「続いて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム1のポリエチレンテレフタレートフィルム面上に、2液硬化型アンカーコート剤(三井化学社製:A3210/A3075)をコーティングして、アンカーコート層を形成した。」と記載されており、段落【0115】にも同様に記載されている。そうすると、アンカーコート層が、プラスチックフィルムの面上に形成されていることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
訂正事項3は、積層体から特定の態様を除外するものであり、これによって新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。
そうすると、訂正事項1~3は、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1~3は、積層体の層構成をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項4~7について
請求項3についての訂正である訂正事項4~7をまとめて検討する。
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったのを、請求項2を引用しないものとして特許請求の範囲を減縮するとともに、請求項1を引用するものについて引用形式を解消して独立形式に改めるものである。
訂正事項5は、訂正事項4で独立形式に改めた請求項3における積層体について、基材層とアンカーコート層の間に、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層とを備えることを特定するものであるから、積層体の構成をさらに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項6は、訂正事項4で独立形式に改めた請求項3における積層体について、バイオマスポリオレフィン層が、積層体の内側の表面を構成しているとの特定を加えるものであるから、積層体の構成をさらに限定して、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項7は、訂正事項3と同様に、積層体の特定の態様を除外して、特許請求の範囲を減縮するものである。
そうすると、請求項3についてする訂正事項4~7による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、引用する請求項を減少させ、また独立形式に改めるものであるから、特許明細書等の記載された事項の範囲内のものであることは明らかである。
訂正事項5について、特許明細書等の段落【0110】には「基材層、アンカーコート層、接着樹脂層、バリア層、アンカーコート層、ポリオレフィン樹脂層が順に積層された積層体4を得た。」と記載され、【0111】にも同様の記載がある。そうすると、基材層とアンカーコート層の間に、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層とを備えることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
訂正事項6について、特許明細書等の段落【0022】には「図2に示される積層体20は、基材層11と、バリア層14と、アンカーコート層12と、アンカーコート層12上に直接形成されたポリオレフィン樹脂層13とをこの順に備える。積層体20を備える軟包装の場合、ポリオレフィン樹脂層13が軟包装の内側に位置する。」との記載がある。そうすると、ポリオレフィン樹脂層が、積層体の内側の表面を構成していることは、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
訂正事項7は、積層体から特定の態様を除外するものであり、これによって新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。
そうすると、訂正事項4~7は、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、引用する請求項を減少させ、また独立形式に改めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。
また、訂正事項5~7は、積層体の層構成をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項4において、アンカーコート層の材料の選択肢が複数あったものを、「ポリウレタン系」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項8は、訂正前の請求項4の選択肢のうちポリウレタン系以外の選択肢が、請求項1の記載と整合しておらず不明瞭であったのを、ポリウレタン系に限定して明瞭化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項8は、複数の選択肢の一部を削除するものといえるから、特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであることは明らかであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、訂正事項9は、請求項を削除するものであるから、特許明細書等の記載の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。
3 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、訂正後の請求項1~4、6、7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」・・・「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6、7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されており、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記バイオマス由来の低密度ポリエチレンを5質量%以上100質量%以下、および前記化石燃料由来の低密度ポリエチレンを0質量%以上95質量%以下含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上であり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成しており、
前記アンカーコート層の厚みが、0.5μm以下である、積層体(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)。
【請求項4】
前記アンカーコート層の材料が、ポリウレタン系である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。」
「【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装製品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体を備える、軟包装。」
第4 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載された特許異議の申立ての理由(以下「異議申立理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 特許異議の申立ての理由
・(進歩性)本件特許の請求項1~7に係る特許は、甲第1号証及び甲第2号証並びに周知技術(甲第3号証~甲第12号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされてものであり、取り消されるべきものである。
・(進歩性)本件特許の請求項1~7に係る特許は、甲第13号証及び甲第2号証並びに周知技術(甲第3号証~甲第11号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされてものであり、取り消されるべきものである。
・(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
・(委任省令要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が発明の技術上の意義を理解できることができるように記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
申立人が、本件特許異議の申立ての手続きで提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2008-162600号公報
甲第2号証:カタログ“I’M GREENTM POLYETHYLENE”、Braskem、2014年5月
甲第3号証:特開2015-205719号公報
甲第4号証:特開2015-214365号公報
甲第5号証:特開2015-231870号公報
甲第6号証:特開2012-251006号公報
甲第7号証:牧野太宣、“サトウキビから作られたプラスチック包装材料「Bipro-PE」”、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2011年2月15日、第39巻、第2号、p.83~85
甲第8号証:杉山英路、他1名、“地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」”、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、p.63~67
甲第9号証:“期待の新顔 汎用プラもエンプラも身近な素材がバイオ化へ”、日経ものづくり、日経BP社、2009年8月1日、第659号、p.54~57
甲第10号証:特開2012-250350号公報
甲第11号証:“バイオポリエチレンの試験生産がスタート、2011年・20万t供給に変更なし”、日経バイオテク、日経BP社、2010年11月22日、第700号、p.17
甲第12号証:特開2013-155343号公報
甲第13号証:特開2006-150981号公報
甲第14号証:特開2015-66799号公報
甲第15号証:特開2015-66800号公報
甲第16号証:特開2013-126719号公報
甲第17号証:カタログ“熱圧着型接着剤/溶融ラミネート用接着促進剤 セイカダイン[SEIKADYNE]”、大日精化工業株式会社
以下、甲〇号証を「甲〇」という。
第5 取消理由通知(決定の予告)の概要
取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項5及びこれを引用する請求項6、7
・甲1、甲2~11
・請求項5及びこれを引用する6、7
・甲13、甲2~11
・請求項1及び請求項5並びにこれらを引用する請求項2、4、6、7
・甲14、甲2~11
・請求項3及びこれを引用する請求項6、7
・甲16、甲2~11
第6 当審の判断
1 甲号証の記載等
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
本件特許の原出願前に公開された甲1には、次の事項が記載されている。
なお、「・・・」は摘記の省略を示し、下線は当審において付与した(以下、同じ。)。
「【0001】
本発明は、食品、医薬品、工業製品等の包装に使用され、一部の内容物を取り出した後に再度密封することができるジッパー付き包装袋に関するものである。」
「【0011】
図2は、ジッパー付包装袋のジッパー部の一例を拡大して説明する断面図である。
積層体2は、基材層21、接着層22、バリア層23、アンカーコート層24、シーラント層25が、基材層21が外面となるように順に積層されて構成されている。内面のシーラント層25には、ジッパー5の雌型部51,雄型部52が対向して接合されている。・・・」
「【0017】
実施例1
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、イソシアネート系の接着剤(東洋インキ(株)製「AD502」)を乾燥厚3μmで塗布し、厚さ7μmのアルミニウム箔をドライラミネートした。
【0018】
次いで、アルミニウム箔の他の面に、無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散体であって、数平均粒子径0.6μmの粒子を分散した、乳化剤を含まない水性分散液(ユニチカ(株)製「SE-1200」)を乾燥厚が0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥してアンカーコート層を形成した。
次いで、得られたアンカーコート層面に、低密度ポリエチレン(三井化学(株)製「ミラソン11P」)を、押出温度295℃で、厚み50μmに押し出し、押し出しラミネート法によりシーラント層を積層し、積層体を作成した。
「【0022】
比較例2
実施例1において、積層体としてアルミニウム面に形成するアンカーコート層として、水性分散体に代えてイソシアネート系アンカコート剤(東洋モートン(株)製「EL-540」))を用いた点を除き、実施例1と同様に積層体を作製した。得られた積層体によって実施例1と同様にジッパー付包装袋を作製して実施例1と同様に評価をし、その結果を表1に示す。」
イ 甲1の記載から認められる事項
段落【0017】、【0018】に記載された実施例1において、段落【0011】の「積層体2は、基材層21、接着層22、バリア層23、アンカーコート層24、シーラント層25が、基材層21が外面となるように順に積層されて構成されている。内面のシーラント層25には、ジッパー5の雌型部51,雄型部52が対向して接合されている。」との記載を参酌すると、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、基材層であり、アルミニウム箔は、バリア層であると認められ、また、シーラント層は、内面の表面を構成するものと認められる。
段落【0022】の記載から、比較例2は、実施例1のアンカーコート層にイソシアネート系アンカコート剤を用いる点以外は、実施例1と同じものと認められる。
ウ 甲1に記載された発明
以上を踏まえると、甲1には、比較例2の積層体に係る次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムにイソシアネート系の接着剤を塗布し、バリア層であるアルミニウム箔をドライラミネートし、アルミニウム箔の他の面にイソシアネート系アンカーコート剤を乾燥厚が0.5μmとなるようにしてアンカーコート層を形成し、得られたアンカーコート層面に、低密度ポリエチレンを押し出して内面の表面を構成するシーラント層を積層した、積層体。」
(2)甲2~甲11
ア 甲2~甲11の記載事項
(ア)甲2は、Braskem社の製品カタログであり、最終ページ右上の「may/2014」との記載から、本件特許の原出願前に公知になったものと推認される。そして、甲2には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001423435000001.jpg]
」
甲2の上記表には最上部に「Blow and Cast Film Extrusion」(当審訳:吹込み及び押出キャストフィルム)と記載され、「LDPE」の欄には、「Minimum Bio-based Content」(当審訳:最小バイオ由来成分)が95%の「SBC818」や同45%の「SBC818R50」等が記載されている。
(イ)甲3には、「該植物由来LLDPE及び植物由来HDPEを用いて、従来の石油由来ポリエチレンからの置き換えが検討されている」(段落【0004】)と記載され、甲4(段落【0004】)及び甲5(段落【0004】)にも同様の記載がある。
(ウ)甲3の段落【0083】には、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を押し出して接着樹脂層3及び外側熱可塑性樹脂層1を設けることが、甲4の段落【0041】及び【0042】には、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を押し出しラミネーションによって積層し、熱可塑性樹脂層を設けることが、甲5の段落【0063】には、シーラント層が、植物由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を100質量%含んでいることが記載されている。
(エ)甲6には、「従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。」(段落【0007】)と記載され、甲10(段落【0007】)にも同様の記載がある。
(オ)甲6の段落【0079】及び甲10の段落【0095】には 、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンをPETフィルム上に押し出して樹脂フィルムを得ることが記載されている。
(カ)甲6の段落【0080】及び甲10の段落【0096】には、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン33質量部と化石燃料由来の低密度ポリエチレン67質量部とをメルトブレンドした樹脂をPETフィルム上に押し出して樹脂フィルムを得ることが、甲6の段落【0081】及び【0082】、甲10の段落【0097】及び【0098】には、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン33質量部と化石燃料由来の低密度ポリエチレン37質量部と化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン30質量部とをメルトブレンドした樹脂をPETフィルム上に押し出して樹脂フィルムを得ることが記載されている。
(キ)甲7には、「Bipro-PEは、サトウキビから作られた植物由来PEを原料としているため、その化学的な構造は従来の石油由来のPEフィルムと全く同じである。・・・よって、従来よりPEを使用している用途に対して容易な転換が可能。また、石油由来PEとのブレンドも可能なことから、様々な機能性の付与も可能であり、幅広い用途で使用が可能である。」(84ページ中欄2~13行)と記載されている。
(ク)甲8には、「ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換える」(63ページ左欄25~27行)と記載されている。
(ケ)甲9には、「石油由来PEからバイオPEへの移行に技術的な障壁はそれほど見当たらない。」(57ページ中欄22~24行)と記載されている。
(コ)甲11には、「100%バイオポリエチレンで置き換えるのは、汎用品ではコスト面から難しいこともある。従って石油系ポリエチレンの30%のみをバイオポリエチレンに置き換える」(17ページ7~9行)と記載されている。
イ 甲2~甲11に記載された技術事項
(ア)上記ア(イ)、(エ)、(キ)、(ク)、(ケ)及び(コ)により、甲3~甲11の記載から、化石燃料由来のポリエチレンをバイオマス由来のポリエチレンに置き換えることは、本件特許の原出願前に、当業者によく知られた技術事項であると認められる。
(イ)上記ア(イ)及び(オ)により、甲2~甲6、甲10の記載から、バイオマス由来のポリエチレンとして、低密度ポリエチレンが存在することも、当業者によく知られた技術事項であると認められる。また、上記ア(ア)の甲2から、本件特許の原出願前に、バイオマス由来の低密度ポリエチレンが市販されていたと認められる。
(ウ)上記ア(ウ)及び(オ)により、甲3~甲6、甲10の記載から、バイオマス由来のポリエチレンを用いる際に、バイオマス由来のポリエチレンのみを用いることは周知の技術(以下「周知技術1」という。)と認められる。
(エ)上記ア(カ)、(キ)及び(コ)により、甲6、甲7、甲10及び甲11の記載から、バイオマス由来のポリエチレンを用いる際に、バイオマス由来のポリエチレンと化石燃料由来のポリエチレンの混合樹脂で構成することは周知の技術(以下「周知技術2」という。)と認められる。
(3)甲13
ア 甲13の記載事項
本件特許の原出願前に公開された甲13には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなる包装用積層材料であって、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする易引裂性包装用積層材料。
【請求項2】
前記合成樹脂材料の少なくとも一層が、無延伸の熱可塑性樹脂材料である請求項1に記載の易引裂性包装用積層材料。
・・・
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかの包装用積層材料を、熱可塑性樹脂層側が内面になるように重ね合わせ、該積層材料の周縁部で、熱可塑性樹脂を熱融着させることにより収納部を形成し、かつ、熱融着部にノッチもしくはスリットを設けたことを特徴とする易開封性包装袋。」
「【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため検討を重ねた結果、少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されて構成される包装用積層材料において、該積層間にコート層を設けることにより易引裂性を改良することができ、該積層材料を使用することにより開封容易な包装袋を提供できることに想到し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の第一は、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなる包装用積層材料にあり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3μm~5μmの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とするものである。」
「【0022】
実施例1
図1に示す積層構造の下で、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1の積層面2に下記のコーティング剤をバーコータを用いて塗布し、70℃で乾燥、厚さ2μmのコート層3を形成させた。次いで、このコート層3にポリウレタン樹脂系アンカーコート層(図示せず)を塗布し乾燥させた。該アンカーコート層に溶融押出法により、厚さ40μmのポリエチレン層4を積層して、易引裂性を有する包装用積層フィルム(A)を得た。この包装用積層フィルム(A)について前記の測定方法による引裂強度を求めたところ、最大引張荷重294mNの結果を得た。
なお、コーティング剤としては、下記組成のコート成分(KIMコート005:大日精化工業(株))100重量部とメチルエチルケトン/トルエン混合溶媒約30重量部およびKIM添加剤3重量部との混合物を使用した。」
イ 甲13の記載から認められる事項
実施例1の包装用積層フィルムにおけるコート層3は、請求項1、段落【0007】等の記載を踏まえると、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有するコート層であると認められる。
実施例1の包装用積層フィルムの層構成と、請求項1、2、5の記載を照らし合わせると、ポリエチレン層4は、易開封性包装袋を形成する際に内面になるように重ねあわされるものと認められる。
ウ 甲13に記載された発明
以上を踏まえると、甲13には、実施例1の包装用積層フィルムに係る次の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されていると認められる。
「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1の積層面2にコーティング剤を塗布し、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有するコート層3を形成させ、このコート層3にポリウレタン樹脂系アンカーコート層を塗布し乾燥させ、該アンカーコート層に溶融押出法により、易開封性包装袋を形成する際に内面になるように重ねあわされるポリエチレン層4を積層した、包装用積層フィルム。」
(4)甲14
ア 甲14の記載事項
本件特許の原出願前に公開された甲14には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、化成品、医薬品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性のシーラントフィルムからなる包装材用積層体に関し、より詳細には、内容物中の有効成分の含有量を高く維持することができ、且つ、高いシール強度を示し、さらに、成膜が容易であるシーラントフィルムからなる包装材用積層体に関する。」
「【0039】
[実施例1]
(1)基材フィルムとして2軸延伸PETフィルム(東洋紡績(株)製E5100;厚さ12μm)を用い、その一方の面上に接着剤(ロックペイント(株)製ロックボンドJ/アドロック、RU77T/H-7;配合比10/1)を、版深90μmの斜線版を用いて塗工量3.0g/m2で塗布し、厚さ7μmのアルミ箔(日本製箔(株)製 A1N30H-O)と貼り合せ、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させた。
(2)次いで、このアルミ箔面に、接着剤を同様に塗布し、ベース樹脂層としての2軸延伸ホモPETフィルム(ユニチカ製 PTMB;厚さ12μm)と貼り合せ、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させた。
(3)次いで、この2軸延伸ホモPETフィルム上に、ポリウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)製タケラック/タケネート、A-3210/A-3075;配合比1/1)を版深20μmの斜線版を用いて塗工量0.4g/m2で塗布した。
(4)次いで、このアンカーコート剤塗布面上に、シール層として非晶性PET(東洋紡(株)製SI-173;ガラス転移点78℃)を押出しコーティングにより層厚30μmとなるように積層し、本発明の積層体を製造した。この積層体の層構成は以下のとおりであった:
2軸延伸PETフィルム/接着剤/アルミ箔/接着剤/2軸延伸ホモPETフィルム/アンカーコート剤層/シール層
【0040】
[比較例1]
シール層の形成において、非晶性PETの代わりに低密度ポリエチレン樹脂(LDPE;日本ポリエチレン(株)製ノバテックLC522)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
イ 甲14の記載から認められる事項
段落【0039】、【0040】の記載から、比較例1では、アンカーコート剤塗布面上に、シール層として、低密度ポリエチレン樹脂を押出しコーティングしたものと認められる。また、樹脂を押出すのであるから、当該押出しコーティングは、溶融押出しコーティングであると認められる。
段落【0039】のポリウレタン系アンカーコート剤が、同段落に記載された積層体の層構成における、アンカーコート剤層となると認められる。
段落【0039】の接着剤(ロックペイント(株)製ロックボンドJ/アドロック、RU77T/H-7;配合比10/1)は、技術常識を踏まえると、樹脂製の接着剤と認められる。
ウ 甲14に記載された発明
以上を踏まえると、甲14には、比較例1の積層体に係る次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材フィルムとして2軸延伸PETフィルムを用い、その一方の面上に樹脂製の接着剤を塗布し、アルミ箔と貼り合せ、このアルミ箔面に、樹脂製の接着剤を同様に塗布し、ベース樹脂層としての2軸延伸ホモPETフィルムと貼り合せ、この2軸延伸ホモPETフィルム上に、アンカーコート剤層となるポリウレタン系アンカーコート剤を塗布し、このアンカーコート剤塗布面上に、シール層として、低密度ポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティングにより積層した積層体。」
(5)甲16
ア 甲16の記載事項
本件特許の原出願前に公開された甲16には、次の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層体の製造方法は、アンカーコート剤層(d)を有する基材(a)の該アンカーコート剤層(d)表面と、基材(b)のアンカーコート剤を有しない表面とを、250℃を超えて340℃以下の加工温度でエチレン系重合体(c)を用いてサンドイッチラミネーション加工して貼り合わせる工程(以下、「サンドイッチラミネーション工程」ともいう)を有し、必要に応じその他の工程を有して構成される。
本発明におけるサンドイッチラミネーション加工では、250℃を超えて340℃以下の樹脂温度となるように溶融されたエチレン系重合体(c)を介し、アンカーコート剤層(d)を有する基材(a)と、基材(b)と、が貼り合わせられ、基材(a)/アンカーコート剤層(d)/エチレン系重合体(c)を用いてなる層(以下、「エチレン系重合体(c)層」とも称する)/基材(b)の積層構造を有する積層体が製造される。このとき、アンカーコート剤層(d)に含まれるアンカーコート剤がエチレン系重合体(c)層の中を移動(浸透)し、エチレン系重合体(c)層と基材(b)との界面に達し、その結果、この界面における接着強度が向上する。
従って、本発明によれば、層間接着性に優れた積層体が製造される。」
「【0026】
本発明において、バリア性(例えばガスバリア性)の観点からは、前記基材(a)及び前記基材(b)の少なくとも一方が、表面層として金属もしくは無機化合物の蒸着層又はアルミニウム箔を有するフィルムであることが好ましい。このとき表面層が形成される基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。」
「【0028】
<エチレン系重合体(c)>
前記エチレン系重合体(c)としては、サンドイッチラミネーション加工に通常用いられるエチレン系重合体を特に制限無く用いることができるが、アンカーコート剤の移動し易さやサンドイッチラミネーション加工における加工性等を考慮して選択されることが好ましい。」
「【0049】
本発明の積層体の製造方法によって製造された積層体は、層間接着強度に優れている。
本発明によれば、前記積層体において、前記基材(b)と前記エチレン共重合体(c)層との層間接着強度を、T型剥離法により引張速度300m/分の条件で測定したときに、例えば3N/15mm以上とすることができる。
また、本発明の積層体の製造方法によって製造された積層体は、例えば、食品、医薬品、電子部材、電子機器等の包装材料など、種々の用途に用いることができる。」
「【0052】
<エチレン系共重合体(c)>
以下の実施例及び比較例において、エチレン系共重合体(c)として用いたエチレン系重合体(A)又はエチレン系重合体(B)の詳細は以下の通りである。
・エチレン系重合体(A)…三井・デュポンポリケミカル(株)製「ミラソン16P」(高圧法低密度ポリエチレン、MFR=3.7g/10分、密度923kg/m3)
・エチレン系重合体(B)…エチレン・メタクリル酸・イソブチルアクリレートの三元共重合体(メタクリル酸含量4質量%、イソブチルアクリレート含量7.5質量%、MFR=14g/10分、密度930kg/m3)
【0053】
<アンカーコート(ac)剤塗布液>
以下の実施例では、ac剤塗布液として、大日精化工業(株)製の2液混合型ac剤(「セイカダイン2710A」及び「セイカダイン2710C」)並びに酢酸エチルを、セイカダイン2710A/セイカダイン2710C/酢酸エチル=1/2/15.5の比率(質量比)で混合して得られた混合液を用いた。」
「【0055】
〔実施例1〕
<基材(b)の準備>
以下のようにして、基材(b)として、Al/PE/PETの積層構造を有する基材(Al/PE/PET)を準備した。
上記ラミネーター装置を用いてPETフィルム(12μm厚)上にac剤塗布液を塗布して乾燥させてac剤層付きPETフィルムを得、次にこのac剤層付きPETフィルムのac剤層表面と、Al箔表面とを、溶融されたエチレン系重合体(A)を介して貼り合わせ(サンドイッチラミネーション加工)、基材(Al/PE/PET)を得た。基材(Al/PE/PET)において、エチレン系重合体(A)を用いて形成された層(PE)の厚みは、15μmとなるようにした。
【0056】
<積層体(基材(a)/ac剤層(d)/エチレン系重合体(c)層/基材(b))の作製>
上記ラミネーター装置を用い、基材(a)としてのPETフィルム(12μm厚)上にac剤塗布液を、乾燥塗布量が0.14g/m2となるように塗布して乾燥させ、ac剤層(d)を有する基材(a)として、ac剤層付きPETフィルムを得、次にこのac剤層付きPETフィルムのac剤層表面と、上記基材(b)のAl箔表面とを、溶融されたエチレン系重合体(A)(前述の「エチレン系重合体(c)」に相当)を介して貼り合わせ(サンドイッチラミネーション加工)、積層体(基材(a)/ac剤層(d)/エチレン系重合体(c)層/基材(b))を得た。このとき、エチレン共重合体(A)(エチレン系重合体(c))を用いて形成されたエチレン系重合体(c)層の厚みは、10μmとなるようにした。」
「【0059】
〔実施例3〕
実施例1において、エチレン系共重合体(c)の種類、エチレン共重合体(c)層の厚み、基材(b)、及びエージング条件を下記表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体の作製及び層間接着強度の測定を行った。
積層体の作製では、基材(b)におけるアルミナ蒸着層がエチレン系重合体(c)層と接する向きとした。
評価結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例4〕
実施例3において、基材(a)、基材(b)、及びエージング条件を下記表1に示すように変更したこと以外は実施例3と同様にして、積層体の作製及び層間接着強度の測定を行った。
ここで基材(a)としての基材(PET/PE/Al)は、実施例1における基材(b)と同様の方法により作製した。また、ac剤層は、基材(a)としての基材(PET/PE/Al)のAl箔側に形成した。
評価結果を表1に示す。」
【0068】
【表1】
[図:0001423435000002.jpg]
【0069】
<表1の説明>
・表1において、各層の後ろのカッコ内の数字(PET(12)における「12」、エチレン系重合体(A)(10)における「10」、Al(7)における「7」、等)は、各層の厚み(単位μm)を示している。
・・・」
イ 甲16の記載から認められる事項
(ア)実施例4の積層体について、【表1】を参照すると、基材(a)が、PET/PE/Alであり、実施例4の基材(a)は、段落【0060】の記載から、実施例1の基材(b)と同様の方法により作成したものであるから、PETフィルム上にac剤塗布液を塗布して乾燥させてac剤層付きPETフィルムを得、このac剤層表面を溶融されたエチレン系重合体(A)を介してAl箔表面と貼り合わせたものである(段落【0055】)。そして、段落【0026】の記載から、この基材(a)における、PETフィルムは基材フィルムであり、Al箔はバリア性のためのものであると認められる。
(イ)段落【0060】に記載されたac剤層は、基材(a)としてのPET/PE/AlのAl箔側に形成したものであり、この基材(a)のac剤層表面(以下、このAl箔側に形成したac剤層を、Al箔側ac剤層といい、上記(ア)のPETフィルム上のac剤層を、PETフィルム側ac剤層という。)を、溶融されたエチレン系重合体(c)を介して基材(b)と貼り合わせるものと認められる(【0056】、【表1】)。そして、【表1】から、実施例4におけるエチレン系重合体(c)はエチレン系重合体(B)であり、基材(b)はシリカ蒸着PETである。
そうすると、実施例4の積層体は、基材(a)であるPET/PE/AlのAl箔側にAl箔側ac剤層を形成し、このAl箔側ac剤層表面を、溶融されたエチレン系重合体(B)を介して、シリカ蒸着PETと貼り合わせたものと認められる。
(ウ)Al箔側のac剤層は、段落【0056】の記載及び【表1】から乾燥塗布量が0.14g/m2となるように塗布されたものであり、【表1】及び段落【0069】における表1の説明から、実施例4の基材(a)におけるPE、すなわちエチレン系重合体(A)の厚みは15μmであり、エチレン系重合体(B)の厚みは7μmである。
ウ 甲16に記載された発明
以上を踏まえると、甲16には、実施例4の積層体に係る次の発明(以下「甲16発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材フィルムであるPETフィルム上にac剤塗布液を塗布して乾燥させてPETフィルム側ac剤層付きPETフィルムを得、このPETフィルム側ac剤層表面を、溶融された厚み15μmのエチレン系重合体(A)の層を介して、バリア性のためのAl箔表面と貼り合わせ、このAl箔側に乾燥塗布量が0.14g/m2となるようにac剤を塗布して、Al箔側ac剤層を形成し、このAl箔側ac剤層を、溶融された厚み7μmのエチレン系重合体(B)を介して、シリカ蒸着PETと貼り合わせた積層体であって、
エチレン系重合体(A)は、高圧法低密度ポリエチレンであり、
エチレン系重合体(B)は、エチレン・メタクリル酸・イソブチルアクリレートの三元共重合体であり、
ac剤は、2液混合型ac剤(「セイカダイン2710A」及び「セイカダイン2710C」)並びに酢酸エチルを混合して得られた混合液を用いる、
積層体。」
(6)甲17
甲17には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001423435000003.jpg]
」
2 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由についての判断
本件訂正による訂正後の本件発明1~4、6、7は、以下に示すように取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由を解消したものと判断する。
2-1 甲1を主たる引用例とする取消理由について
取消理由通知(決定の予告)で通知した甲1を主たる引用例とする取消理由は、請求項5及びこれを引用する請求項6、7に対するものであるところ、本件訂正により、請求項5は削除されたから、この取消理由は解消した。
2-2 甲13を主たる引用例とする取消理由について
取消理由通知(決定の予告)で通知した甲13を主たる引用例とする取消理由は、請求項5及びこれを引用する請求項6、7に対するものであるところ、本件訂正により、請求項5は削除されたから、この取消理由は解消した。
2-3 甲14を主たる引用例とする取消理由について
取消理由通知(決定の予告)で通知した甲14を主たる引用例とする取消理由は、請求項1及び5並びにこれらを引用する請求項2、4、6、7に対するものである。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲14発明とを対比する。
(ア)後者の「基材フィルム」である「2軸延伸PETフィルム」は、前者の「基材層」に相当し、同様に、後者の「2軸延伸ホモPETフィルム」は前者の「プラスチックフィルム」に、「アンカーコート剤層」は「アンカーコート層」に、「積層体」は「積層体」に、それぞれ相当する。また、後者の「塗布」された「樹脂製の接着剤」は、層を構成するといえるから、前者の「接着樹脂層」に相当する。
(イ)後者の「低密度ポリエチレン樹脂」は、前者の「ポリオレフィン樹脂」に相当するから、後者の「低密度ポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティング」した「シール層」は、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
また、後者のシール層の「アンカーコート剤塗布面上に、シール層として、低密度ポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティングにより積層した」構成は、前者の「アンカーコート層上に直接積層された」構成に相当する。
そして、後者の「基材フィルムとして2軸延伸PETフィルムを用い、その一方の面上に樹脂製の接着剤を塗布し、アルミ箔と貼り合せ、このアルミ箔面に、樹脂製の接着剤を同様に塗布し、ベース樹脂層としての2軸延伸ホモPETフィルムと貼り合せ、この2軸延伸ホモPETフィルム上に、アンカーコート剤層となるポリウレタン系アンカーコート剤を塗布し、このアンカーコート剤塗布面上に、シール層として、低密度ポリエチレン樹脂を溶融押出しコーティングにより積層した積層体」は、2軸延伸PETフィルム、2軸延伸ホモPETフィルム、アンカーコート剤層、シール層をこの順で備えているから、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」と「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の点で共通する。
(ウ)後者の「基材フィルムとして2軸延伸PETフィルムを用い」の構成は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(エ)後者の「2軸延伸ホモPETフィルム上に、アンカーコート剤層となるポリウレタン系アンカーコート剤を塗布し」の構成は、前者の「前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されており」の構成に相当する。
(オ)後者の「アンカーコート剤層となるポリウレタン系アンカーコート剤」の構成は、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当すると共に、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明1と甲14発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムとアンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されている、
積層体。」
(キ)そして、本件発明1と甲14発明との相違点は次のとおりである。(なお、以下の相違点14A、相違点14B等の表記において、相違点の後の数字は、主となる甲号証の番号を示す。以下、同じ。)
・相違点14A
本件発明1の積層体は、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」を備えるのに対し、甲14発明は、そのような層を備えない点。
・相違点14B
基材層について、本件発明1は「化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるのに対し、甲14発明は「2軸延伸PETフィルム」であるが、化石燃料由来であるか不明である点。
・相違点14C
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明1は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲14発明の低密度ポリエチレン樹脂は、そのような特定がない点。
・相違点14D
積層体について、本件発明1は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲14発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
相違点14Aについて検討する。
甲14には、基材フィルムである2軸延伸PETフィルムと、樹脂製の接着剤の間に、基材側アンカーコート層を備えることについて、記載も示唆もない。また、甲14発明の層構成を備えた積層体において、基材フィルムである2軸延伸PETフィルムと、樹脂製の接着剤の間に、基材側アンカーコート層を設けることは、周知技術1、2ではなく、その他、取消理由通知で引用した甲2~甲11にも、提出されたその他の証拠、すなわち、甲1、甲12、甲13、甲15~甲17にも記載も示唆もない。
そうすると、甲14発明において、相違点14Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲14発明及び甲1~13、甲15~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)で検討したとの同様に、本件発明2は、甲14発明及び甲1~13、甲15~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明5について
本件訂正により、請求項5は削除されたから、甲14を主たる引用例とする取消理由は解消した。
(4)本件発明6、7について
本件発明6、7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)で検討したとの同様に、本件発明6、7は、甲14発明及び甲1~13、甲15~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2-4 甲16を主たる引用例とする取消理由について
取消理由通知(決定の予告)で通知した甲16を主たる引用例とする取消理由は、請求項3及びこれを引用する請求項6、7に対するものである。
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲16発明とを対比する。
(ア)後者の「基材フィルム」である「PETフィルム」は、前者の「基材層」に相当し、以下同様に、「PETフィルム側ac剤層」は「基材層側アンカーコート層」に、「Al箔側ac剤層」は「アンカーコート層」に、「積層体」は「積層体」に、それぞれ相当する。
(イ)後者の「エチレン系重合体(A)」は、「厚み15μm」であるから層といえるものであり、さらに、ac剤層付きPETフィルムとAl箔表面とを「貼り合わせ」るものであるから、前者の「接着樹脂層」に相当し、後者の「Al箔」は、「バリア性のため」のものであるから、前者の「バリア層」に相当する。後者の「エチレン系重合体(B)」は、「厚み7μm」であるから、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
(ウ)後者の「Al箔側ac剤層を、溶融された厚み7μmのエチレン系重合体(B)を介して、シリカ蒸着PETと貼り合わせた」構成は、Al箔側ac剤層の上にエチレン系重合体(B)が直接積層されているといえるから、前者の「アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層」の構成に相当する。
そして、後者の「基材フィルムであるPETフィルム上にac剤塗布液を塗布して乾燥させてPETフィルム側ac剤層付きPETフィルムを得、このPETフィルム側ac剤層表面を、溶融された厚み15μmのエチレン系重合体(A)の層を介して、バリア性のためのAl箔表面と貼り合わせ、このAl箔側に乾燥塗布量が0.14g/m2となるようにac剤を塗布して、Al箔側ac剤層を形成し、このAl箔側ac剤層を、溶融された厚み7μmのエチレン系重合体(B)を介して、シリカ蒸着PETと貼り合わせた積層体」は、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」 に相当する。
(エ)後者の「基材フィルムであるPETフィルム」の構成は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(オ)後者の「ac剤」は、セイカダイン2710A及びセイカダイン2710Cを含む2液混合型ac剤であるところ、甲17によると、セイカダイン2710A及びセイカダイン2710Cは、それぞれNCO成分、OH成分、すなわちイソシアネート基成分と水酸基成分であるから、2液混合して得られるのがウレタン樹脂であることは明らかである。
そうすると、後者の「ac剤は、2液混合型ac剤(「セイカダイン2710A」及び「セイカダイン2710C」)並びに酢酸エチルを混合して得られた混合液を用いる」「Al箔側ac剤層」の構成は、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当すると共に、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明3と甲16発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、 アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかである、
積層体。」
(キ)そして、本件発明1と甲16発明との相違点は次のとおりである。
・相違点16A
基材層について、本件発明3は「化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるのに対し、甲16発明は「PETフィルム」であるが、化石燃料由来であるか不明であり、また、二軸延伸フィルムであるか不明である点。
・相違点16B
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明3は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲16発明のエチレン系重合体(B)は、エチレン・メタクリル酸・イソブチルアクリレートの三元共重合体である点。
・相違点16C
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明3は、「前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成して」いるのに対し、甲16発明は「エチレン重合体(B)」に「シリカ蒸着PET」を張り合わせている点。
・相違点16D
アンカーコート層について、本件発明3は「前記アンカーコート層の厚みが、0.5μm以下である」のに対し、甲16発明のAl箔側ac剤層は、乾燥塗布量が0.14g/m2となるように塗布されて形成されたものであるが、厚みが特定されていない点。
・相違点16E
積層体について、本件発明3は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲16発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点16Cについて検討する。
甲16の【0004】、【0012】を参照すると、甲16には、層間接着強度を向上させた積層体の製造方法を提供することを目的として、250℃を超えて340度以下音樹脂温度となるように溶融されたエチレン系重合体(c)層を介して、アンカーコート剤層(d)と基材(b)とが貼り合わせられることで、接着強度を向上させることが記載されている。
そして、【0068】の特に表1から、実施例4に係る甲16発明において、Al箔側ac剤層、エチレン系重合体(B)、シリカ蒸着PETは、それぞれ、アンカーコート剤層(d)、エチレン系重合体(c)層、基材(b)にそれぞれ対応するものであることが分かる。そうすると、甲16発明におけるエチレン系重合体(B)の層は、Al箔側ac剤層とシリカ蒸着PETとの間に介在して接着強度を向上させるための層であるから、このエチレン系重合体(B)の層を、積層体の表面を構成するものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
また、甲16発明のエチレン系重合体(B)の層が積層体の表面を構成するものとすることは、周知技術1、2ではなく、その他、取消理由通知で引用した甲2~甲11にも、提出されたその他の証拠、すなわち、甲1~甲15、甲17にも記載も示唆もない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲16発明及び甲1~甲15、甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明6、7について
本件発明6、7は、本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)で検討したとの同様に、本件発明6、7は、甲16発明及び甲1~15、甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 取消理由通知(決定の予告)に記載しなかった異議申立理由について
本件訂正による訂正後の本件発明1~4、6、7について、取消理由通知(決定の予告)で通知しなった異議申立理由について検討しても、以下に示すようにいずれも理由がないと判断する。
3-1 甲1を主たる引用例とする異議申立理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「基材層」、「アンカーコート層」及び「積層体」は、それぞれ本件発明1の「基材層」、「アンカーコート層」及び「積層体」に相当する。また、後者の「塗布」された「イソシアネート系の接着剤」は、層を構成するといえ、また、樹脂であるといえるから、前者の「接着樹脂層」に相当する。
(イ)後者の「低密度ポリエチレン」は、前者の「ポリオレフィン樹脂」に相当する。そして、後者の「低密度ポリエチレン」の「シーラント層」は、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
また、後者の「低密度ポリエチレン」の「シーラント層」の、「アンカーコート層面に」「積層」した構成は、前者の「アンカーコート層上に直接積層された」構成に相当する。
(ウ)後者の「基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムにイソシアネート系の接着剤を塗布し、バリア層であるアルミニウム箔をドライラミネートし、アルミニウム箔の他の面にイソシアネート系アンカーコート剤を乾燥厚が0.5μmとなるようにしてアンカーコート層を形成し、得られたアンカーコート層面に、低密度ポリエチレンを押し出して内面の表面を構成するシーラント層を積層した積層体」の構成は、基材層、接着剤、アンカーコート層、シーラント層をこの順で備えているから、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の構成と、「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の点で共通する。
(エ)後者の「基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルム」は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(オ)後者の「アンカーコート層」が「イソシアネート系アンカーコート剤」である構成は、イソシアネート系ということからウレタン樹脂であることが通常であることを踏まえると、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当する。また、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする、前者の「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明1と甲1発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかである
積層体。」
(キ)そして、本件発明1と甲1発明との相違点は次のとおりである。
・相違点1A
本件発明1の積層体は、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」を備え、接着樹脂層と、アンカーコート層の間に「プラスチックフィルム」を備え、「前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されてい」るのに対して、甲1発明は、そのような層を備えない点。
・相違点1B
基材層について、本件発明1は「化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるのに対し、甲1発明は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるが、化石燃料由来であるか不明であり、また、二軸延伸と特定されていない点。
・相違点1C
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明1は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲1発明の低密度ポリエチレンは、そのような特定がない点。
・相違点1D
積層体について、本件発明1は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲1発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
相違点1Aについて検討する。
相違点1Aのうち、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」を備える点について検討すると、甲1には、甲1発明における基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムとイソシアネート系の接着剤の間に基材側アンカーコート層を備えることについて、記載も示唆もない。また、甲1発明の層構成を備えた積層体において、基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムと、イソシアネート系の接着剤の間に、基材側アンカーコート層を備えることは、周知技術1、2ではなく、特許異議の申立ての理由として挙げられた甲2や甲3~甲12にも、その他の提出された証拠である甲13~甲17にも記載も示唆もない。
そうすると、甲1発明において、少なくとも、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」をこの順に備える点で、相違点1Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)で検討したとの同様に、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
(ア)後者の「基材層」、「バリア層」、「アンカーコート層」、及び「積層体」は、それぞれ本件発明1の「基材層」、「バリア層」、「アンカーコート層」及び「積層体」に相当する。また、後者の「塗布」された「イソシアネート系の接着剤」は、層を構成するといえ、また、樹脂であるといえるから、前者の「接着樹脂層」に相当する。
(イ)後者の「低密度ポリエチレン」は、前者の「ポリオレフィン樹脂」に相当する。そして、後者の「低密度ポリエチレン」の「シーラント層」は、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
また、後者の「低密度ポリエチレン」の「シーラント層」の、「アンカーコート層面に」「積層」した構成は、前者の「アンカーコート層上に直接積層された」構成に相当する。
(ウ)後者の「基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルムにイソシアネート系の接着剤を塗布し、バリア層であるアルミニウム箔をドライラミネートし、アルミニウム箔の他の面にイソシアネート系アンカーコート剤を乾燥厚が0.5μmとなるようにしてアンカーコート層を形成し、得られたアンカーコート層面に、低密度ポリエチレンを押し出してシーラント層を積層した積層体」の構成は、基材層、接着剤、バリア層、アンカーコート層、シーラント層をこの順で備えているから、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の構成と、「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の点で共通する。
(エ)後者の「基材層であるポリエチレンテレフタレートフィルム」は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(オ)後者の「アンカーコート層」が「イソシアネート系アンカーコート剤」である構成は、イソシアネート系ということからウレタン樹脂であることが通常であることを踏まえると、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当する。また、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする、前者の「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)後者の「内面の表面を構成するシーラント層」の構成は、上記(イ)を踏まえると、前者の「前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成しており」の構成に相当する。
(キ)以上を総合すると、本件発明3と甲1発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成している、
積層体。」
(ク)そして、本件発明3と甲1発明との相違点は次のとおりである。
・相違点1E
本件発明3の積層体は、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」を備えているのに対し、甲1発明は、そのような層を備えない点。
・相違点1F
基材層について、本件発明3は「化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるのに対し、甲1発明は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」であるが、化石燃料由来であるか不明であり、また、二軸延伸と特定されていない点。
・相違点1G
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明3は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲1発明の低密度ポリエチレンは、そのような特定がない点。
・相違点1H
積層体について、本件発明3は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲1発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
相違点1Fについて検討する。
上記(1)イのとおり相違点1Aについて検討したのと同様に、甲1発明において、基材層と接着樹脂層の間に「基材側アンカーコート層」をこの順に備えるものとすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲2~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4、6、7について
本件発明4、6、7は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)及び(3)で検討したとの同様に、本件発明4、6、7は、甲1発明及び甲2~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3-2 甲13を主たる引用例とする異議申立理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲13発明とを対比する。
(ア)後者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」、「アンカーコート層」及び「包装用積層フィルム」は、前者の「基材層」、「アンカーコート層」及び「積層体」に相当する。
(イ)後者の「ポリエチレン」は、前者の「ポリオレフィン樹脂」に相当するから、後者の「ポリエチレン層4」は、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
また、後者のポリエチレン層の「アンカーコート層に溶融押出法により」「ポリエチレン層を積層した」積層した構成は、前者の「アンカーコート層上に直接積層された」構成に相当する。
(ウ)前者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」、「ポリウレタン樹脂系アンカーコート層を塗布し乾燥させ、該アンカーコート層に溶融押出法により」「ポリエチレン層を積層した、包装用積層フィルム」は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1、ポリウレタン樹脂系アンカーコート層、ポリエチレン層をこの順で備えているから、前記(ア)及び(イ)を踏まえると、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」と、「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の点で共通する。
(エ)後者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(オ)後者の「ポリウレタン樹脂系アンカーコート層」は、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当すると共に、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)以上を総合すると、本件発明1と甲13発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかである、
積層体。」
(キ)そして、本件発明1と甲13発明との相違点は次のとおりである。
・相違点13A
本件発明1は、基材層とアンカーコート層の間に、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと」をこの順に備え、「前記アンカーコート層が、前記プラスチックフィルムの面上に形成されて」いるのに対し、甲13発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1とアンカーコート層の間に「アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有するコート層3」を備える点。
・相違点13B
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明1は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲13発明のポリエチレンは、そのような特定がない点。
・相違点13C
積層体について、本件発明1は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲13発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
相違点13Aについて検討する。
相違点13Aのうち、基材層とアンカーコート層の間に、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと」をこの順に備える点について検討すると、甲13には、甲13発明におけるコート層3に代えて、又は、コート層3に加えて、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと」を備えるものとすることは、記載も示唆もない。また、甲13発明の層構成を備えた積層体において、コート層3に代えて、又はコート層3に加えて、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと」をこの順に備えるものとすることは、特許異議の申立ての理由として挙げられた甲2や甲3~甲12にも、ほかに提出された証拠である甲1、甲14~甲17にも記載も示唆もない。
そうすると、甲13発明において、少なくとも、基材層とアンカーコート層の間に、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、プラスチックフィルムと」をこの順に備える点で、相違点13Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲13発明及び甲1~甲12、甲14~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)で検討したとの同様に、本件発明2は、甲13発明及び甲1~甲12、甲14~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲13発明とを対比する。
(ア)後者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」、「アンカーコート層」及び「包装用積層フィルム」は、前者の「基材層」、「アンカーコート層」及び「積層体」に相当する。
(イ)後者の「ポリエチレン」は、前者の「ポリオレフィン樹脂」に相当するから、後者の「ポリエチレン層4」は、前者の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
また、後者のポリエチレン層の「アンカーコート層に溶融押出法により」「ポリエチレン層を積層した」積層した構成は、前者の「アンカーコート層上に直接積層された」構成に相当する。
(ウ)前者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」、「ポリウレタン樹脂系アンカーコート層を塗布し乾燥させ、該アンカーコート層に溶融押出法により」「ポリエチレン層を積層した、包装用積層フィルム」は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1、ポリウレタン樹脂系アンカーコート層、ポリエチレン層をこの順で備えているから、前記(ア)及び(イ)を踏まえると、前者の「少なくとも、基材層と、基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」と、「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体」の点で共通する。
(エ)後者の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1」は、前者の「前記基材層が、化石燃料由来の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る構成と、「前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る点で共通する。
(オ)後者の「ポリウレタン樹脂系アンカーコート層」は、前者の「前記アンカーコート層が」「ウレタン樹脂」である構成に相当すると共に、ウレタン樹脂を選択肢の1つとする「前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであ」る構成にも相当する。
(カ)後者の「易開封性包装袋を形成する際に内面になるように重ねあわされるポリエチレン層4」の構成は、上記(イ)を踏まえると、前者の「前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成しており」の構成に相当する。
(キ)以上を総合すると、本件発明1と甲13発明との一致点は次のとおりである。
「少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたポリオレフィン樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであり、
前記ポリオレフィン樹脂層が、前記積層体の内側の表面を構成している、
積層体。」
(ク)そして、本件発明1と甲13発明との相違点は次のとおりである。
・相違点13D
本件発明1は、基材層とアンカーコート層の間に、「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と」をこの順に備えるのに対し、甲13発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材1とアンカーコート層の間に「アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有するコート層3」を備える点。
・相違点13E
ポリオレフィン樹脂層について、本件発明1は「バイオマス由来の低密度ポリエチレンのみで構成されるか、または、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとの混合樹脂で構成され」、「ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である」のに対し、甲13発明のポリエチレンは、そのような特定がない点。
・相違点13F
積層体について、本件発明1は、「(但し、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなるバイオマスポリエステル樹脂組成物からなり、且つ、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであるバイオマスポリエステル樹脂層を含む積層体を除き、且つ、延伸された合成樹脂材料からなる基材を含む少なくとも二層の合成樹脂材料が積層されてなり、該基材の積層面側に、アクリルポリオール樹脂およびポリウレタン樹脂を含有する被膜からなる0.3m~5mの厚みのコート層を直接的もしくは間接的に配設してなることを特徴とする積層体を除く)」との特定を有するのに対し、甲13発明が、当該特定に合致する構成であるか不明である点。
イ 判断
相違点13Dについて検討する。
上記(1)イのとおり相違点13Aについて検討したのと同様に、甲13発明において「基材層側アンカーコート層と、接着樹脂層と、バリア層と」をこの順に備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲13発明及び甲1~甲12、甲14~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明4、6、7について
本件発明4、6、7は、本件発明1又は本件発明3の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものであるところ、上記(1)及び(3)で検討したとの同様に、本件発明4、6、7は、甲13発明及び甲1~甲12、甲14~甲17に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3-3 サポート要件について
(1)サポート要件の異議申立理由の概要
申立人が異議申立書で主張するサポート要件違反の概要は、以下のとおりである。
ア 本件特許明細書の段落【0017】には、効果として「従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がない」ことが記載され、これに対応する記載として、実施例1~8の積層体、比較例1~3の積層体を組み合わせた製造例1~11について、液漏れ評価を行ったことが記載されている。しかし、実施例同士を組み合わせた製造例も比較例同士を組み合わせた製造例も評価はいずれも「○」であり、従来技術を含めた比較対象と対比した性能の優劣が明らかでないから、どのように課題が解決されたかが明確でなく、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものと捉えざるを得ない。
イ 本件特許明細書の段落【0017】には、効果として「従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がない」ことが記載され、これに対応して、実施例には、本件特許発明1のアンカーコート層はウレタン樹脂を用いた例が記載されている。しかし、アンカーコート層の材料が異なると機械的特性等に影響することは当業者であれば容易に推察されることであるところ、実施例ではウレタン樹脂以外の樹脂を用いた例は記載されていないから、アンカーコート層について、ウレタン樹脂以外の樹脂を用いた場合の効果の有無は裏付けられていない。従来技術を含めた比較対象と対比した性能の優劣が明らかでないから、どのように課題が解決されたかが明確でなく、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
ウ 本件特許明細書の段落【0017】には、効果として「従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がない」ことが記載され、これに対応する記載として、実施例では、「基材層/アンカーコート層/・・・/ポリオレフィン樹脂層」の積層構造が記載されているのみであり、基材の反対側(アンカーコート層を有しない側)にも他の層を有する構造まで明示されていない。したがって、「他の層/基材層/アンカーコート層/・・・/ポリオレフィン樹脂層」等の積層構造としうることまで実施例で裏付けられていないから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
(2)サポート要件についての判断
ア 上記(1)アで主張するサポート要件違反について
本件特許明細書の段落【0008】等の記載を参照すると、本件特許の発明が解決しようとする課題(以下「本件特許の課題」という。)は、「従来の化石燃料由来のポリオレフィンからなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と機械的特性等の物性面で遜色ない、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体を提供すること」であると認められる。
そして、実施例であるバイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体を用いたものも、比較例である従来の化石燃料由来のポリオレフィンからなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体を用いたものも、評価はいずれも「○」となっており、これは、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体であっても同等に性能が良好であること、すなわち、機械的特性等の物性面で遜色がないことを示すものと理解でき、本件特許の課題を解決したものと理解できる。
そうすると、上記(1)アで主張するサポート要件違反については、理由がない。
イ 上記(1)イで主張するサポート要件違反について
本件特許明細書の段落【0017】には「本発明による積層体は、少なくとも、基材層と、アンカーコート層と、前記アンカーコート層上に直接積層されたバイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層とを備えることで、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明による積層体は、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体と比べて機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来の化石燃料由来のポリオレフィン樹脂の積層体を代替することができる。」と記載され、段落【0070】には、アンカーコート剤として「ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなるアンカーコート剤が挙げられる」ことが記載されている。
そして、段落【0017】の記載によれば、アンカーコート層の材質は特に特定されずとも本件発明の課題を解決するものと理解でき、段落【0070】のように「アンカーコート層が、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂のいずれか」を選択したものであっても本件特許の課題を解決するものと理解できる。
申立人は、ウレタン樹脂以外の樹脂を用いた場合の効果の有無は裏付けられていないと主張するが、ウレタン樹脂以外の場合に効果がないという具体的な理由も示していない。
そうすると、上記(1)イで主張するサポート要件違反については、理由がない。
ウ 上記(1)ウで主張するサポート要件について
申立人は、基材の反対側(アンカーコート層を有しない側)にも他の層を有する構造について実施例で裏付けられていないと主張する。しかしながら、当該他の層が追加されていない積層体が、従来の積層体と機械的特性等の物性面で遜色がないのであれば、当該他の層を追加した場合であっても、機械的特性等の物性は、従来の積層体と同等に遜色がないと考えられる。
また、申立人は、当該他の層が追加された積層体では、効果を奏さなくなるという具体的な理由も示していない。
そうすると、上記(1)ウで主張するサポート要件違反については、理由がない。
3-4 委任省令要件について
(1)委任省令要件の異議申理由の概要
申立人が異議申立書で主張する委任省令要件違反の概要は、以下のとおりである。
製造例1~11の評価結果はいずれも「○」であり、本件特許発明1の効果の有意差は明らかでない。よって、本件特許発明の構成を特定した事による技術的異議として、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が明示されているとはいえない。
(2)委任省令要件についての判断
本件特許明細書の段落【0008】等の記載を参照すると、本件特許の課題は、「従来の化石燃料由来のポリオレフィンからなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と機械的特性等の物性面で遜色ない、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体を提供すること」であると認められ、その解決手段は、段落【0009】に記載されている。そして、製造例1~11の評価はいずれも「○」となっており、これは、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体であっても同等に性能が良好であること、すなわち、機械的特性等の物性面で遜色がないことを示すものと理解できることは、上記(1)イ(ア)で説示したとおりである。
そうすると、発明の詳細な説明は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載しているといえ、上記(1)で主張する委任省令要件違反については、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由及び証拠並びに取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~4、6、7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~4、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項5に係る特許については、本件訂正請求により削除されたから、請求項5に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700978