特許異議申立
2022-700908
包装袋
- 審判番号
- 2022-700908
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-185250
- 登録番号
- 7037740
- 請求日
- 2022年09月15日
- 審決日
- 2024年03月22日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】丸島 裕
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【異議申立人】古川 慎二
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 西本 浩司
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7037740号発明「包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7037740号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕、2、3について訂正することを認める。
特許第7037740号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7037740号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年9月26日に出願され、令和4年3月9日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月15日 :特許異議申立人古川慎二(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和5年 2月 1日付け:取消理由通知書
令和5年 4月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 5月10日 :申立人による意見書の提出
令和5年 6月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 8月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 9月26日 :申立人による意見書の提出
令和5年12月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 1月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年 3月 7日 :申立人による意見書の提出
令和5年4月3日及び令和5年8月17日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7037740号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1中「包装体であって、」の次に「前記第1基材層は、化石燃料由来のポリプロピレンフィルムであり、」を加える(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1中「前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含み、」を「前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2の引用関係を解消して独立の請求項とし、
「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、
前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含み、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、
前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であり、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋。」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3の引用関係を解消して独立の請求項とし、
「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記第1基材層は、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、
前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含み、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、
前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であり、
前記積層体は、前記第1基材層と前記シーラント層との間に、バリア層をさらに備え、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋。」と訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項4中「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装袋」を「請求項1に記載の包装袋」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されている。
本件訂正後の請求項2、3に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「第1基材層」について、「化石燃料由来のポリプロピレンフィルム」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0025】、【0098】、【0104】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「シーラント層」が含む「低密度ポリエチレン」について「(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2における「低密度ポリエチレン」について、「(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)」とする点は、「低密度ポリエチレン」から「密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン」を除外することにより、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2について、独立形式に改め、請求項2の「第1基材層」について、「バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートフィルム」と限定し、請求項1の「シーラント層」が含む「低密度ポリエチレン」について「(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)」と限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3の「第1基材層」に係る限定事項は、本件特許の明細書の【0025】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、「除く」を用いて限定する事項は、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3について、独立形式に改め、請求項1の「第1基材層」について、「化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルム」と限定し、請求項1の「シーラント層」が含む「低密度ポリエチレン」について「(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)」と限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4の「第1基材層」に係る限定事項は、本件特許の明細書の【0025】、【0086】、【0090】、【0094】、【0100】、【0106】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。また、「除く」を用いて限定する事項は、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しない。
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項3に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項4について、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕、2、3について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~4を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~4の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記第1基材層は、化石燃料由来のポリプロピレンフィルムであり、
前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、
前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含み、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、
前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であり、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋。
【請求項2】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、
前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含み、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、
前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であり、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋。
【請求項3】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記第1基材層は、化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、
前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含み、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、
前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、
前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であり、
前記積層体は、前記第1基材層と前記シーラント層との間に、バリア層をさらに備え、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋。
【請求項4】
前記シーラント層のバイオマス度が、5%以上30%以下である、請求項1に記載の包装袋。
第4 令和5年12月6日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1
請求項1~4に係る発明は、下記甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2
請求項2に係る発明は、下記甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:特開2013-155343号公報
甲2:特開2013-176951号公報
甲3:特開2005-329150号公報
甲4:特開2005-82164号公報
甲5:特開2005-342323号公報
甲6:特開2007-22558号公報
甲7:特開2003-128088号公報
甲13:特開平11-221887号公報
2 当審の判断
特許異議申立書において、申立人は、甲2を主引例とした場合について、本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を述べているため、この点についても併せて検討する。
(1)引用文献に記載された事項、発明、及び周知技術
ア 甲1
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。以下、引用文献の記載自体に付されていた下線に加え、当審が理解の便宜のために下線を付した。また、「・・・」は文章の省略を表す。
「【請求項1】
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤 0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%であることを特徴とする、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物からなることを特徴とする、包装材用シーラントフィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルムに関し、更に詳しくは、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、高いバイオマス度を示すフィルム用ポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、フィルム全体に対して20~70質量%の量で植物由来のポリオレフィン系樹脂を含むことから環境への負荷が低減された、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物、及びそれを用いた包装材用シーラントフィルムを提供することを目的とする。」
「【0019】
<II> 植物由来のLLDPE
本発明において、「植物由来」とは、植物を原料として得られるアルコールから製造される、植物原料に由来する炭素を含むことを意味する。
【0020】
本発明において、樹脂組成物中に配合される植物由来のLLDPEは、混合する石油由来のLDPE及びLLDPEの物性や、製膜化後のフィルムの用途に応じて、任意の密度及びMFRを有するものであってよい。
本発明の樹脂組成物中に、植物由来のLLDPEは、20~70質量%、好ましくは20~60質量%の範囲で配合される。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、植物由来のLLDPEを20質量%以上含むため、高いバイオマス度を達成することができる。しかしながら、この量が70質量%を超えると、植物由来樹脂の配合に伴い生じるシーラントフィルムとしての手切れ性及び耐衝撃性の低下を防ぐことができない。」
「【0027】
本発明において使用される石油由来のLDPEは、密度0.920~0.933kg/m3、より好ましくは0.920~0.925kg/m3、MFR0.5~3.5g/10分、より好ましくは0.8~3.0g/10分の物性を有する。
【0028】
このような特定の物性を有する石油由来のLDPEを、樹脂組成物中に、15~65質量%、より好ましくは15~50質量%配合することにより、植物由来樹脂の配合により生じる、製膜化後のフィルムの手切れ性の低下を防ぐことができる。
【0029】
石油由来のLDPEの配合量が15質量%より少ないと、製膜化後のフィルムは、引裂強度が高くなり過ぎて、手で切ることができず、はさみ等が必要となる。逆に65質量%より多いと、引き裂く際にフィルムが伸び、手切れ性が悪い。また、シール強度が低いため、シーラントフィルムとして用いた場合に、落下等の衝撃に耐えられずに破袋する恐れがある。
また、石油由来のLDPEの密度が上記範囲外であると、手切れ性低下の防止効果が得られない。
本発明において好適に使用される石油由来のLDPEとしては、宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)等が挙げられる。」
「【0035】
このような特定の物性を有する石油由来のLLDPEを、樹脂組成物中に、15~65質量%、より好ましくは15~60質量%配合することにより、植物由来樹脂の配合により生じる、製膜化後のフィルムの耐衝撃性の低下を防ぐことができる。」
「【0040】
<VI> シーラントフィルムの製造方法
本発明の樹脂組成物は、上記の(a)植物由来のLLDPE20~70質量%、(b)石油由来のLDPE15~65質量%、(c)石油由来のLLDPE15~65質量%、及び(d)添加剤0~20質量%を含み、ここで、(a)~(d)の合計が100質量%である。」
「【0050】
本発明のシーラントフィルムは、高い手切れ性及び耐衝撃性を示しながらも、植物由来のLLDPEを高い配合率で含み、18%~60%程度までの高いバイオマス度を示すことができる。」
「【0052】
<VIII>積層体
本発明のシーラントフィルムを用いて、その一方の面に基材フィルムを積層し、積層体を得ることができる。
【0053】
基材フィルムとしては、積層体の用途に応じて任意の樹脂フィルムまたはシートを使用することができる。例えば、詰め替え用のシャンプーやリンス、食品等を密封包装する詰め替えパウチに適用する場合は、引っ張り強度、屈曲強度、衝撃強度等の機械的強度に優れるとともに、印刷適性に優れることが好ましく、例えば、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等を好適に使用できるほか、合成紙等も使用することができる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて使用してもよい。」
「【0056】
さらに、上述のとおり、基材フィルム上に、シーラントを構成する樹脂組成物を押出コーティングすることにより積層することもできる。
本発明の更なる態様において、基材フィルムとシーラントフィルムとの間に、バリア層を設けてもよい。
【0057】
バリア層としては、アルミニウム箔等の金属箔のほか、アルミニウム等の金属やアルミニウム酸化物、珪素酸化物等の無機酸化物を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材フィルムに蒸着した蒸着フィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等を使用することができる。」
「【実施例】
【0068】
[実施例1]
植物由来のLLDPE(ブラスケム(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)50質量%、石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)25質量%、及び石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)25質量%をブレンドし、溶融混練して、本発明の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形し、厚み120μmのシーラントフィルムを製膜した。フィルム全体のバイオマス度は43.5%であった。
【0069】
得られたシーラントフィルムを、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)とドライラミネートして積層体を得、これを用いて、外形寸法:高さ220mm×幅140mm、底部の折り込み部の高さ40mm、シール幅5mmのスタンディングパウチを製造した。また、底部は舟底型のシールパターンでヒートシールした。」
(イ)甲1に記載された発明
上記(ア)の記載から、甲1には、【請求項1】、【請求項2】、【0052】、【0053】の記載に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤 0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物からなる、包装材用シーラントフィルムの一方の面に基材フィルムを積層した、積層体を適用した、食品等を密封包装する詰め替えパウチ。」
イ 甲2
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも基材フィルムとシーラントフィルムとからなる積層フィルムであって、
該基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリ乳酸フィルムであり、
該シーラントフィルムは、
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるポリエチレンフィルムであることを特徴とする、
上記積層フィルム。」
「【請求項3】
前記基材フィルムとシーラントフィルムとの間にバリア層を有し、該バリア層は、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリ乳酸フィルム上に金属または無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも植物由来の基材フィルムと植物由来のシーラントフィルムとからなる積層フィルムに関し、更に詳しくは、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、高いバイオマス度を示す積層フィルムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決し、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、フィルム全体として少なくとも20%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減された積層フィルムを提供することを目的とする。」
「【0026】
<VI>シーラントフィルムの製造方法
本発明の樹脂組成物は、上記の(a)植物由来のLLDPE20~70質量%、(b)石油由来のLDPE15~65質量%、(c)石油由来のLLDPE15~65質量%、及び(d)添加剤0~20質量%を含み、ここで、(a)~(d)の合計が100質量%である。」
「【0029】
<VII>基材フィルム
本発明において、シーラントフィルムは、植物由来または非植物由来の任意の基材フィルムと積層することができる。
・・・」
「【0031】
・・・得られたPETを製膜し、さらに、所望に応じて、寸法安定性及び耐熱性を高めるために2軸方向に延伸することにより、本発明において好適に使用されるPETフィルムを製造することができる。」
「【0040】
<X>包装材
本発明の積層フィルムは、蓋材や包装袋等の包装材として、好適に使用することができる。例えば、本発明の積層フィルムを二つ折にするか、又は該積層体2枚を用意し、そのシーラントの面を対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋とすることができる。
・・・
【0041】
図4は、本発明の積層フィルムを用いて形成される詰め替えパウチの構成について、その一例を示す正面図である。
・・・」
「【0049】
[実施例4]
植物由来のLLDPE(ブラスケム(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)50質量%、石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)25質量%、及び石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)25質量%をブレンドし、溶融混練して、本発明の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形し、厚み50μmのシーラントフィルムを製膜した。
【0050】
得られたシーラントフィルムを、植物由来PETフィルム(厚さ16μm、バイオマス度30%)、及び、植物由来PETフィルム(厚さ12μm、バイオマス度30%)上に酸化珪素の蒸着膜を積層した蒸着フィルム、とウレタン系接着剤(DIC(株)製703VL)を介してドライラミネートして、本発明の積層フィルム(植物由来PETフィルム/接着剤/蒸着フィルム/接着剤/シーラントフィルム)を得た。
積層フィルム全体のバイオマス度は39%であった。
得られた積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを製造した。
【0051】
[実施例5]
植物由来のLLDPE(ブラスケム(Braskem S.A.)社製SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分、バイオマス度87%)58質量%、石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製UBEポリエチレン(R)F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)20.5質量%、及び石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、エチレンと1-ヘキセンとの共重合物(C6-LLDPE)、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)20.5質量%、スリップ剤(PEXSLT-01)0.5質量%、アンチブロッキング剤(ABR-24)0.5質量%をブレンドし、溶融混練して、本発明の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物と、石油由来のLLDPE(エボリュー(R)SP2020)とを、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により共押出製膜し、石油由来のLLDPE層(30μm)/本発明の樹脂組成物層(60μm)/石油由来のLLDPE層(30μm)のシーラントフィルムを製膜した。シーラントフィルムのバイオマス度は約25%であった。
【0052】
得られたシーラントフィルムを、植物由来PETフィルム(厚さ16μm、バイオマス度30%)、及び、植物由来PETフィルム(厚さ12μm、バイオマス度30%)上に酸化珪素の蒸着膜を積層した蒸着フィルム、とウレタン系接着剤(DIC(株)製703VL)を介してドライラミネートして、本発明の積層フィルム(植物由来PETフィルム/接着剤/蒸着フィルム/接着剤/シーラントフィルム)を得た。
積層フィルム全体のバイオマス度は約26%であった。
得られた積層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてスタンディングパウチを製造した。」
「【図4】
[図:0001411240000001.jpg]
」
(イ)甲2に記載された発明
上記(ア)の記載から、甲2には、【請求項1】において「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「基材フィルム」とし、【請求項3】において「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「蒸着フィルム」とした「積層フィルム」を用いて形成された、【0041】に記載された詰め替えパウチに着目すると、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「少なくとも基材フィルムとシーラントフィルムとからなる積層フィルムであって、
該基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
該シーラントフィルムは、
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.9333kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914~0.9337kg/m3及びMFR0.9~3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるポリエチレンフィルムであり、
前記基材フィルムとシーラントフィルムとの間にバリア層を有し、該バリア層は、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属または無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムからなる、積層フィルムを用いて形成された、詰め替えパウチ。」
(2)甲1発明を主引用発明とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「包装材用シーラントフィルム」、「食品等を密封包装する詰め替えパウチ」は、それぞれ本件発明1の「シーラント層」、「包装袋」に相当する。
甲1発明の「基材フィルム」と、本件発明1の「化石燃料由来のポリプロピレンフィルムであ」る「第1基材層」とは、「第1基材層」の限りで一致する。
甲1発明の「包装材用シーラントフィルム」が「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに(d)添加剤0~20質量%、からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である」ことと、本件発明1の「前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であ」ることとは、「シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含」む限りで一致する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「少なくとも、第1基材層と、シーラント層とを備える積層体を備えた包装袋であって、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む、包装袋。」
[相違点1-1]
本件発明1では、「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備え」、「前記第2基材層は2軸延伸フィルムであり、前記第2基材層はポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選択される1以上を含」むのに対して、甲1発明では、そのような第2基材層を備えていない点。
[相違点1-2]
「第1基材層」に関して、本件発明1は「化石燃料由来のポリプロピレンフィルムであ」る「第1基材層」であるのに対して、甲1発明は「基材フィルム」である点。
[相違点1-3]
「シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含」むことに関して、本件発明1は「前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であり、前記シーラント層中の前記バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとの合計含有量は、75質量%以上95質量%以下であ」るのに対して、甲1発明は「包装材用シーラントフィルム」が「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに(d)添加剤0~20質量%、からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である」点。
[相違点1-4]
本件発明1では、「包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備え」ているのに対して、甲1発明では、このようなテープ体を備えていない点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点1-3について検討する。
甲1は、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、植物由来のポリオレフィン系樹脂を含むことで環境への負荷が低減された包装材用シーラントフィルムを提供することを課題としており(【0007】)、当該課題解決手段として、甲1発明の「包装材用シーラントフィルム」は、「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン 20~70質量%、(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン 15~65質量%、(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合体であって、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~4.5g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン 15~65質量%、並びに(d)添加剤 0~20質量%、からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である、フィルム用ポリエチレン系樹脂組成物からなる」としたものであり、甲1発明の「低密度ポリエチレン」について「密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する」としたことは、優れた手切れ性及び耐衝撃性に影響を与えるものである。
そうすると、甲1発明における「低密度ポリエチレン」について、課題解決手段に係る「密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン」を除くことの動機付けがない。
したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、3について
本件発明2、3と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1-3と同様の点で相違し、上記アで説示したとおり、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明2、3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲2発明を主引用発明とした場合
本件発明1~4と甲2発明とは、少なくとも上記相違点1-3と同様の点で相違し、その判断は上記(2)アで説示したとおりである。
よって、本件発明1~4は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由(サポート要件)の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許明細書の実施例では、耐衝撃性及び手切れ性について、請求項1~4に係る発明によって本件特許の効果が奏されていることが裏付けられておらず、請求項1~4に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
2 当審の判断
(1)本件発明が解決しようとする課題
本件特許の明細書の【0006】、【0007】の記載によると、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、シーラント層としてバイオマス由来のポリエチレン樹脂を使用した包装袋において、手切れ性を改善し得る積層体を提供することである。
(2)本件課題を解決するための手段
本件課題に関して発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、第1基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を備えた包装袋であって、
前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含み、
包装袋内面の一方の前記シーラント層に熱接着された凸条の雄型嵌合部を有する第1のテープ体と、これに対向するように他方の前記シーラント層に熱接着された凹条の雌型嵌合部を有する第2のテープ体と、を備えた包装袋である。」
「【0032】
[シーラント層]
シーラント層は、積層体を用いて包装袋を製造する際に、包装袋の内容物側に配置されて、積層体どうしをシールする機能を有するものである。シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とを含むものであり、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンをさらに含んでもよい。また、低密度ポリエチレンは、バイオマス由来であってもよいし、化石燃料由来であってもよい。シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンの両方を含むことで、包装袋を製造した際に優れた手切れ性を両立することができる。
【0033】
シーラント層中の低密度ポリエチレンの含有量(バイオマス由来と化石燃料由来の2種含む場合、合計含有量)は、好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である。また、シーラント層中のバイオマス由来および/または化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量(2種含む場合、合計含有量)は、好ましくは75質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上90質量%以下である。シーラント層中で、低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを上記割合で混合することで、包装袋に優れた手切れ性を両立することができる。」
(3)判断
発明の詳細な説明の上記(2)の記載を参照すると、本件課題の解決は、シーラント層が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)とを含み(【0032】)、シーラント層中の低密度ポリエチレンの含有量(バイオマス由来と化石燃料由来の2種含む場合、合計含有量)を5質量%以上25質量%以下とする(【0033】)ことによるものと理解できる。
この点、本件発明1~3は、「前記シーラント層は、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(但し、密度0.920~0.933kg/m3の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレンを除く。)とを含み、前記シーラント層中の前記低密度ポリエチレンの含有量は、5質量%以上25質量%以下であ」るとの構成を有しており、当該構成により、手切れ性を改善できることが認識できる。
そうすると、本件発明1~3、及び本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明4は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決することができると認識できる範囲のものである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
よって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700908