特許異議申立
2023-700305
建築板の製造方法
- 審判番号
- 2023-700305
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-086753
- 登録番号
- 7139011
- 請求日
- 2023年03月20日
- 審決日
- 2025年05月09日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ケイミュー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】田中 純子
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-Z (E04F) / P1651.537-Z (E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第113条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7139011号発明「建築板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7139011号の請求項1~5に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7139011号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成28年5月30日に出願された特願2016-107469号の一部を令和元年9月18日に新たな特許出願とした特願2019-169492号の一部をさらに令和3年5月24日に新たな特許出願としたものであって、令和4年9月9日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和5年 3月20日差出 特許異議申立人 田中 純子(以下「申立人
」という。)による請求項1~5に係る発明
の特許に対する特許異議の申立て
同年 4月21日付け 審尋
同年 5月 8日 回答書
同年 5月29日付け 取消理由通知
同年 7月28日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月20日 申立人による意見書の提出
同年10月30日付け 訂正拒絶理由通知
令和6年 1月12日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 3月18日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月 8日 申立人による意見書の提出
同年 7月11日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 9月17日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月24日付け 特許権者に対する審尋
同年11月28日 特許権者による審尋回答書の提出
令和7年 2月14日付け 訂正拒絶理由通知
同年 3月21日 特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和6年9月17日に訂正の請求がされたことにより、令和5年7月28日及び令和6年3月18日の訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定より取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年9月17日に特許権者が行った訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7139011号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものである。
ここで、特許権者は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、建築板の製造方法」との記載を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載のとおり、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上であり、前記コア材料及び前記スキン材料が、無機質系主材と、有機繊維、ガラス繊維、ロックウール及び無機繊維のうち少なくとも1種とを含有する、建築板の製造方法」とする訂正を、以下のように訂正事項2、訂正事項3に分けて請求した。
訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」と記載されているのを、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である、」と記載されているのを、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上であり、前記コア材料及び前記スキン材料が、無機質系主材と、有機繊維、ガラス繊維、ロックウール及び無機繊維のうち少なくとも1種とを含有する、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
この記載から、訂正事項2において、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上」を「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上」と訂正し、訂正事項3において、さらに「前記コア材料及び前記スキン材料が、無機質系主材と、有機繊維、ガラス繊維、ロックウール及び無機繊維のうち少なくとも1種とを含有する、」を付加する訂正をしようとしていることは理解できるものの、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に訂正しようとする訂正の内容としては不整合ないし不適切な部分があるため、訂正の適否についての判断においては、訂正事項2及び訂正事項3は以下のものであるとして判断した。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた末硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている、建築板の製造方法であって、」と記載されているのを、「板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた末硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されており、前記リブに沿う方向の一端が固定された状態において、振幅200mm、周期1回/秒の条件で5回以上振幅可能である、建築板の製造方法であって、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」と記載されているのを、「前記建築板は、矩形形状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「 建築板の製造方法。」と記載されているのを、「 前記コア材料及び前記スキン材料が、無機質系主材と、有機繊維、ガラス繊維、ロックウール及び無機繊維のうち少なくとも1種とを含有する、
建築板の製造方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項〔1-5〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正拒絶理由の概要
令和7年2月14日付け訂正拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。
訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものではなく、または、同条9項で準用する126条5項及び6項に適合するものではないから、訂正事項2に係る訂正は認められない。
3 令和7年3月21日提出の手続補正書による手続補正について
訂正拒絶理由通知に対しては、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないものであれば補正することができる。しかし、新たな訂正事項を加えることや、訂正事項を変更することは、訂正の要旨を変更するものである。(審判便覧67―05.3の4.(3)イ)。
そこで、令和7年3月21日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件手続補正」という。)が、訂正請求書の要旨を変更しないものであって補正をすることができるものであるか否かについて、以下に検討する。
(1)補正の内容
本件手続補正は、本件訂正請求書の「7 請求の理由 (2)訂正事項 イ 訂正事項2」の欄、「7 請求の理由 (3)訂正の理由 イ 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明(イ)訂正事項2」中の「a 訂正の目的について」、「b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと」及び「c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること」の欄並びに本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の全文を補正するものであり、訂正事項2について、以下の内容を含む。
「7 請求の理由 (2)訂正事項 イ 訂正事項2」の欄及び「訂正特許請求の範囲」の訂正後の請求項1の構成について、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上であり、」(以下「補正前の訂正後構成」という。)とされているのを、
「短手方向に並列する前記リブ間の間隔は、前記リブが100mmあたり1本以上となるように設定され、」(以下「補正後の訂正後構成」という。)と補正する。
(2)判断
訂正事項2に係る訂正についての補正は、訂正事項の削除ではなく、軽微な瑕疵の補正でもない。
そして、訂正事項2に係る訂正についての補正は、補正前の訂正後構成に、「リブ」が「短手方向に並列する」構成を追加し、また、リブ間の間隔とリブの本数の関係について、補正前の訂正後構成において「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上であ」るとされていたものを、「前記リブ間の間隔は、前記リブが100mmあたり1本以上となるように設定され、」と変更するもの、すなわち、「リブの本数」について特定するものを「リブ間の間隔」について「設定され」る内容を特定するものに変更するものである。よって、訂正事項2に係る訂正について、内容を追加し、変更するものであるから、訂正の要旨を変更するものである。
(3)令和7年3月21日提出の意見書による特許権者の主張について
ア 特許権者の主張
訂正事項2に係る補正が認められるべき理由について、特許権者は、令和7年3月21日提出の意見書2頁「(2)訂正請求書の補正について」において、以下の主張をしている。
補正は、補正前の訂正事項2において、「100mm」が重複して記載されているのを解消するとともに、「1本/100mm以上」における「以上」が分子(1本)及び分母(100mm)のうち、分子(1本)についてのものであることを明確にするために、一方の「/100mm」を削除して、「前記リブが100mmあたり1本以上となるように設定され、」とし、また、「前記リブ間の間隔」について、より明確にするため、「『短手方向に並列する』前記リブ間の間隔」としたものであって、訂正事項2の内容をより明確にするために行うものであるから、訂正事項を追加及び交換するもののいずれにも該当せず、補正の前後で、訂正事項2の同一性又は範囲を変更するものではないため、訂正請求書の要旨を変更する補正ではない。
イ 主張の検討
上記(2)において検討したように、訂正事項2に係る訂正についての補正は、補正前の訂正後構成について、「リブ」が「短手方向に並列する」構成を追加するとともに、「リブの本数」について特定するものを「リブ間の間隔」について「設定され」る内容を特定するものに変更するものであるから、当該補正は訂正事項2に係る訂正について、内容を追加し、また、変更するものである。
そして、訂正事項2の内容をより明確にするためであれば、訂正事項を追加及び交換するもののいずれにも該当しないというものではない。
よって、特許権者の主張は、認めることができない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、令和7年3月21日提出の手続補正書による手続補正を認めることはできない。
4 訂正についての当審の判断
(1)訂正の内容について
上記3のとおり、本件手続補正は認められないから、本件訂正の内容は、上記1のとおりである。
(2)判断
ア 訂正の目的について
(ア)明瞭でない記載の釈明に該当するかについて
訂正事項2に係る訂正の目的について、特許権者は、「「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」の意義を明確にするものであるため、特許法120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである」と主張する。(訂正請求書5頁14~17行。)
出願人の上記主張に鑑み、まず、上記の訂正が明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するか否かについて検討する。
a 「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。
b 上記aの判断基準に基づいて訂正事項2について検討すると、訂正前の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載は、訂正事項2によって「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」と訂正しても、以下に詳述するように依然として不明瞭であり、記載上の不備が訂正されていないため、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しない。
c 訂正前の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載については、令和6年1月12日付け取消理由通知(決定の予告)の理由2において通知したように、少なくとも、以下の(a)、(b)の2とおりの意味に解釈できるため、多義的に解釈される、不明確な記載である。
(a)「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である。
(b)「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である。
d(a)訂正前の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載は、令和4年5月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1において導入されたものであり、補正の根拠として本件特許に係る出願の願書に添付された明細書の段落【0017】等を挙げている。なお、本件特許に係る出願の願書に添付された明細書は、令和4年5月23日提出の手続補正書により、段落【0008】が補正された以外補正されていないものである。以下において、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)をみる。
(b)本件明細書の段落【0017】には、「 リブ30の本数およびリブ30間の間隔は、リブ30の形状、リブ30の大きさ等によって影響されるが、1本/100mm以上であることが好ましい。この場合、建築板1の運搬時等の破損を特に抑制できる。」との記載がある。
(c)建築板1の運搬時等の破損とリブの本数等との関係については、上記段落【0017】以外には、段落【0054】~【0064】に実施例の記載がある。
この実施例においては、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を、下記の表1に示す割合で配合することで、コア材料及びスキン材料を調製し、(【0054】)コア材料及びスキン材料を、押出成形機10を使用して成形し、成形体を作製するものであり、押出成形機10の金型100がリブ形成用凹部223が間隔100mmで設けられた中子505を備えていることから、100mmの間隔でリブが形成されるものであり、実施例1、2及び比較例2は、リブ形成用凹部の数、すなわちリブ30の数は、下記の表2に示すように変化させて形成し、(【0056】)、製造された建築板1の寸法は、全ての実施例、比較例とも、幅500mm、厚み16mm、長さ3000mmである(【0058】)。
【表1】(【0055】)及び【表2】(【0063】)は以下のとおり。
【表1】
[図:0001425700000001.jpg]
【表2】
[図:0001425700000002.jpg]
その上で、「表2に示すように、スキン部3がコア部2の裏面側に設けられたリブ30を備えている実施例1~2の建築板は、スキン部3がリブ30を備えていない比較例1の建築板やリブ30の本数が少ない比較例2の建築板よりも、折れるまでの振幅の回数が多い。このため、実施例1~2の建築板は、比較例1~2の建築板よりも、運搬時等の破損が起きにくい。」(【0064】)と評価するものである。
e 特許権者は、令和6年1月12日付け取消理由通知(決定の予告)(上記c)に対し、本件発明1の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」は、「「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である。」(上記c(a))の意味であることを明確にするとして、令和6年3月18日提出の訂正請求書の訂正事項2において、本件訂正の訂正事項2に係る訂正と同じ内容の訂正をした。なお、「「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である」(上記c(b))と解釈することは、構成を字義どおりに理解した結果としては妥当なものであるが、その場合、上記dの比較例2のような「リブ30の本数が少ない」建築板が含まれるものとなって、段落【0017】(上記c(b))の「この場合、建築板1の運搬時等の破損を特に抑制できる」ものとはならず、妥当性を欠いたものとなる。
f そして、合議体は、令和6年7月11日付けの取消理由通知(決定の予告)において、「第2 訂正の適否についての判断」においては「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」ことは、「リブ」に関係する間隔が100mmあたりのリブの本数に関して特定しているものと一応理解することができるとして訂正を認めた上で、令和6年7月11日付けの取消理由通知(決定の予告)の第5の1において、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」ことについて、本件明細書には、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」をどのように算出するかについて何ら特定されておらず、発明が不明確であるとの取消理由(明確性要件)を通知し、算出の仕方を説明するとともに、その算出の仕方が明細書の記載ないし技術常識の範囲であること、特に、本件明細書等の図1Aに示された、所定の幅を有する建築板の幅方向に、複数本のリブが等間隔ではなく形成された建築板における「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」の算出の仕方を、「リブの本数」の特定の仕方、「リブ間の間隔」の特定の仕方、「リブ間の間隔」と「建築板の幅寸法」との関係を明らかにした上で説明するよう、求めた。
g 特許権者は、訂正事項2を、請求項1の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」を「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である、」(以下「構成A」とする。)とする趣旨の訂正とした上で、令和6年9月17日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)において、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」の算出の仕方及びその算出の仕方が明細書の記載ないし技術常識の範囲であることについて、以下の説明をしている。
h 「本件訂正発明1は、特定のコア材料及びスキン材料を用い、特定の方法で製造した、リブが形成された建築板において、リブ間の間隔やリブの本数を特定範囲とすることにより、「従来より軽量であるにもかかわらず、十分な強度を有し、振り折れ等の破損が生じにくい建築板の製造方法を提供する」(段落0007)との課題を解決できることを見出したものです。
本件訂正発明1においては、上述のリブ間の間隔やリブの本数を、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」という規定で表すとよいことを見出しました。「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」とは、リブ間の間隔100mmの間に存在するリブの平均の本数の意味であり、具体的には、建築板の幅方向においてその間の距離である間隔が最も大きい、複数のリブのうち両端に位置する2つのリブについての、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数を意味します。すなわち、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」は、存在するリブの総本数を、「建築板の幅方向において両端に位置する2つのリブ間の間隔(単位:100mm)」で除することにより、算出することができます。
本件明細書等の図1Aに示された建築板は、本件明細書の実施例(実施例1~2及び比較例2)に記載のとおり、「リブ形成用凹部の数、すなわちリブ30の数は、表2に示すように変化させた」ものであり(段落0056)、「これにより、幅500mm、厚み16mm、長さ3000mmの寸法を有し、且つ図1A及び図1Bに示すようにコア部2とスキン部3とを備えた建築板1を製造した」ものです(段落0058)。
図1Aに示された建築板において、建築板の幅方向における両方の端部は、高比重のスキン部で形成されています。このため、この両方の端部におけるスキン部は、高強度であり、リブ以上の補強効果を有することは、技術常識であり、そのため、図1Aの建築板の両方の端部における2つのスキン部は、一種のリブであるとみなすことができることは、当業者であれば理解することができます。
したがって、図1Aの建築板において、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」における「前記リブ間の間隔」は、「建築板の幅寸法」と同じであり、「前記リブの本数」である、存在するリブの総本数は、表2に記載されている「リブ本数」に、リブとみなされる「建築板の両方の端部における2つのスキン部」の2本を加えたものになります。
つまり、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数(単位:本/100mm)=(表2における「リブ本数」+2本)×100mm/建築板の幅寸法(単位:mm)により算出することができます。
このような算出の仕方は、本件明細書の実施例1~2及び比較例1~2において、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」は、以下のようになり、本件請求項1の「前記リブに沿う方向の一端が固定された状態において、振幅200mm、周期1回/秒の条件で5回以上振幅可能である」との規定(ハンドリング性)とも合致していることによっても、示されているといえます。
・実施例1(リブ本数=4本):(4+2)×100/500=1.2本/100mm
・実施例2(リブ本数=8本):(8+2)×100/500=2本/100mm
・比較例1(リブ本数=0本):(0+2)×100/500=0.4本/100mm
・比較例2(リブ本数=2本):(2+2)×100/500=0.8本/100mm)」(意見書4頁5行~5頁最下行)
i 特許権者は、訂正事項2の訂正の目的を明瞭でない記載の釈明であるとした上で、上記hに示したように、構成Aについて、「建築板の幅方向においてその間の距離である間隔が最も大きい、複数のリブのうち両端に位置する2つのリブについての、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数を意味」する(以下「解釈A」という。)と説明する。しかし、本件明細書等には、解釈Aに相当する記載はない。また、構成Aを解釈Aのように理解することはできない。以下、詳述する。
(a)特許権者は、上記hにおいて、解釈Aの「複数のリブのうち両端に位置する2つのリブ」は「建築板の両方の端部における2つのスキン部」であると主張している。
しかし、本件発明1において、「リブ」は、「板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことで」「形成されている」と特定されるものであり、「建築板の両方の端部における2つのスキン部」は「リブ」ではない。本件明細書においても、「スキン部3にはコア部2に食い込むような複数のリブ30が一体的に形成されている」(【0013】)とされるものであり、「建築板の両方の端部における2つのスキン部」は「リブ」ではない。
(b)特許権者は、「高比重のスキン部で形成されてい」る「建築板の幅方向における両方の端部」が「高強度であり、リブ以上の補強効果を有すること」が技術常識であることを根拠に、「図1Aの建築板の両方の端部における2つのスキン部は、一種のリブであるとみなすことができる」としている。
しかし、上記(a)において検討したように、本件発明1ないし本件明細書等において「建築板の両方の端部における2つのスキン部」は「リブ」ではないから、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」の算出にあたり、「建築板の両方の端部における2つのスキン部」を「リブ」とみなした上で、図1Aの建築板において、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」における「前記リブ間の間隔」は、「建築板の幅寸法」と同じであるということはできない。
(c)本件明細書の実施例、比較例に着目して、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」について検討する。
(c1) 本件明細書には、段落【0053】~【0064】に「実施例」について記載される。その中で、「実施例1~2、比較例2」の建築板については段落【0054】~【0059】及び【0063】の【表2】に、「比較例1」の建築板について段落【0060】~【0061】及び【0063】の【表2】に記載される。
(c2)ここで、「実施例1~2、比較例2」の建築板について、本件明細書に以下の記載がある。
(c2-a)「リブ形成用凹部の数、すなわちリブ30の数は、下記の表2に示すように変化させた。リブ形成用凹部間の間隔は100mmとした。」(本件明細書段落【0056】)
(c2-b)リブ30の数は、表2より、実施例1は4、実施例2は8、比較例2は2である。
(c2-c)「これにより、幅500mm、厚み16mm、長さ3000mmの寸法を有し、且つ図1A及び図1Bに示すようにコア部2とスキン部3とを備えた建築板1を製造した。」(本件明細書段落【0058】)
c3(c3-a)「リブ形成用凹部間の間隔は100mmとした。」(上記(c2-a))との記載が「実施例1~2、比較例2」のすべてを満たすとした場合、実施例1のリブ30の数を4(上記(c2-b))とした、幅500mm(上記(c2-c))の建築板は、上記(a)において検討したように、本件発明1ないし本件明細書等において「建築板の両方の端部における2つのスキン部」は「リブ」ではないことに鑑みると、幅500mmの建築板にリブを4本有するものであり、仮に、前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数(単位:本/100mm)=(表2における「リブ本数」)×100mm/建築板の幅寸法(単位:mm)により算出すると0.8となり、1以上とはならない。
(c3-b)同じく「リブ形成用凹部間の間隔は100mmとした。」(上記(c2-a))との記載が「実施例1~2、比較例2」のすべてを満たすとした場合、実施例2のリブ30の数を8(上記(c2-b))とし、リブ形成用凹部間の間隔(すなわちリブ30の間隔)を100mmとした、幅500mm(上記(c2-c))の建築板を製造することはできないことは明らかである。そして、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数を、表2における「リブ本数」と建築板の幅寸法とを用いて導くことができる技術常識も存在しないから、本件明細書に記載された実施例からリブ間の間隔がどのようなものかを認識することはできず、さらに、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数を把握することは困難であるといわざるを得ない。
(c4)以上のとおりであるから、特許権者の上記iの主張のとおり、構成Aを解釈Aとして理解する妥当性があるとはいえず、解釈Aとすべき技術常識その他の特段の事情を認めることもできない。
j 訂正後の請求項1に記載された構成Aについて、上記iにおいて示したように、本件明細書に記載されておらず、また、実施例等を参酌しても特定することが困難であり、特許権者が主張するように解釈Aと理解できるから不明瞭でなくなったとはいえない。
k 以下、構成Aについて、解釈Aによらず字義どおりに解釈するものとして、訂正事項2に係る訂正により、訂正後の請求項1が構成Aを含むものとなり、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」となったことにより、記載上の不備が正されて本来の意味が明らかになったか否かについて検討する。
(a)「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」との記載において、「リブ間」とは隣接する「リブ」の間と理解することができるが、「前記リブ間の間隔」の間には、「リブ」は存在しないというのが技術常識である。
(b)そうすると、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」は0本という技術常識に照らすと、その本数が「1本/100mm以上である」がどのような技術的事項を示すか明瞭でなく、記載上の不備が正されて本来の意味が明らかになったとはいえない。
l よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しない。
(イ)特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、請求項間の引用関係の解消のいずれかに該当するかについて
訂正前における請求項1の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載を訂正後の「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である、」とする訂正は、「1本/100mm以上」との数値範囲が示すものが訂正前の請求項1から変更されるものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書き1号)を目的としたものとはいえない。また、誤記の訂正(同2号)、請求項間の引用関係の解消(同4号)のいずれにも該当しないことは明らかである。
(ウ)小括
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号所定のいずれの目的にも該当しない。
イ 新規事項の有無について
(ア)仮に「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」の算出にあたり、上記ア(ア)hにおける特許権者の主張のとおり「建築板の両方の端部における2つのスキン部」も2本の「リブ」とみなすことができ、さらに「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数」について「解釈A」として意味を特定できる場合、上記ア(ア)iにおいて示したように、本件発明1及び発明の詳細な説明中には、「建築板の両方の端部における2つのスキン部」を「リブ」とみなすことも、構成Aが「建築板の幅方向においてその間の距離である間隔が最も大きい、複数のリブのうち両端に位置する2つのリブについての、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数を意味」する(解釈A)ことも記載も示唆もされていないものであるから、請求項1の訂正前における「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載を訂正後の「前記リブの本数および前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」とする訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
(イ)よって、その場合には、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更しないものかについて
(ア)訂正事項2の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」との記載を訂正後の「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である、」とする訂正は、仮に上記イで検討したように特許権者の意見書による説明を考慮して「建築板の両方の端部における2つのスキン部」も2本の「リブ」とみなしたものとすると、新規事項を追加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものである。
(イ)よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものではない。
(3)訂正の適否についての判断のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、または、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合しないから、認められない。
したがって、一群の請求項〔1-5〕についてする本件訂正を認めることはできない。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている、建築板の製造方法であって、
前記建築板は、矩形板状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、
建築板の製造方法。
【請求項2】
前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い、
請求項1に記載の建築板の製造方法。
【請求項3】
前記スキン部が前記コア部の互いに対向する両側面を更に覆う、
請求項1又は2に記載の建築板の製造方法。
【請求項4】
前記リブが4本以上形成されている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建築板の製造方法。
【請求項5】
前記リブの高さが3mm以上である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建築板の製造方法。」
第4 取消理由の概要及び証拠
1 令和5年5月29日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明に対して、当審において令和5年5月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)理由1.(サポート要件)本件特許の請求項1~3及び5の特許に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した発明ではなく、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由2.(進歩性)本件特許の請求項1、2、4及び5の特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
引用した証拠は以下のとおり。
甲第1号証 特開2009-241479号公報
甲第2号証 特開2005-34815号公報
甲第4号証 特開2001-207584号公報
甲第5号証 特開2015-136892号公報
2 令和6年1月12日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明に対して、当審において令和6年1月12日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)理由1.(サポート要件)本件特許の請求項1~3及び5の特許に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した発明ではなく、その特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由2.(明確性要件)本件特許の請求項1~5の特許に係る発明は、発明が明確でなく、その特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
い。
(3)理由3.(進歩性)本件特許の請求項1、2、4、5の特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
引用した証拠は以下のとおり
甲第1号証 特開2009-241479号公報
甲第2号証 特開2005-34815号公報
甲第4号証 特開2001-207584号公報
甲第5号証 特開2015-136892号公報
3 令和6年7月11日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
令和6年3月18日提出の訂正請求書によって訂正された本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明に対して、当審において、令和6年7月11日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)理由1.(明確性要件)
本件特許の請求項1~5の特許に係る発明は、発明が明確でなく、その特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由2.(進歩性)
本件特許の請求項1~5の特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
引用した証拠は以下のとおり
甲第 1号証 特開2009-241479号公報
甲第 2号証 特開2005-34815号公報
甲第 4号証 特開2001-207584号公報
甲第 5号証 特開2015-136892号公報
甲第 9号証 意匠登録第1541878号公報
甲第11号証 特開2013-189348号公報
第5 当審の判断
1 明確性要件について
事案に鑑み、まず、明確性要件について検討する。
(1)本件発明1
本件発明1には、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載がある。
この記載は、少なくとも、以下のア、イの2とおりの意味に解釈できる。
ア 「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である。
イ 「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である。
そうすると、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載が多義的に解釈され、発明が不明確となっている。
加えて、「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である(上記ア)と解釈すると、「建築板1の運搬時等の破損を特に抑制できる」もの(本件明細書段落【0017】)とならない「リブ30の本数が少ない」建築板が含まれるものとなり、「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である(上記イ)と解釈しようとすると、リブ間の間隔とリブの本数との関係との算出の仕方は本件明細書及び技術常識から導けない(上記第2の4(2)ア(ア))ものであるから、上記ア及びイのいずれの解釈をしても、本件発明1の建築板の製造方法における、リブ間の間隔100mmとリブの本数の関係について、「建築板1の運搬時等の破損を特に抑制できる」リブの本数とリブ間の間隔との関係を特定することができず、請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明瞭であることは明らかである。
(2)本件発明2~5
本件発明1を引用する本件発明2~5は、上記(1)において本件発明1について指摘した点において発明が明確でない。
(3)小括
本件発明1~5は、発明が明確でない。
2 進歩性について
(1)各甲号証の記載
ア 甲1
(ア)甲1の記載
甲第1号証(以下、甲号証をその番号により「甲1」等ということがある。)には以下の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質セメント板は、水硬化性材料と、ケイ酸含有物質と、木質補強材と、所望によってその他の材料を配合した原料混合物を用いてマットを形成し、該マットをプレスして、硬化養生することにより製造されている。そして、該木質セメント板は、外壁材やタイルの下地材等の住宅用部材として広く使用されており、外壁材用の木質セメント板の表面には、外観性を向上させるため、レンガ柄、目地溝など凹凸による様々な意匠が施されている。
近年では、更なる表面意匠性の向上のため、鋭角で深い凹凸が求められている。
また、タイルの下地材として使用する木質セメント板では、タイルを留め付けるために、表面に鋭角で深い凹凸固定部を設ける必要がある。」
b 「【実施例1】
【0019】
図1は、表面に凸部A1を有する木質セメント板Aの一例を示した図である。凸部A1は、ここでは木質セメント板Aの表面を長手方向に一直線状に5本形成されている。」
c 「【0021】
図3は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの一例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図3に示す製造工程では、配合を異にする、表層用原料混合物Eと芯層用原料混合物Fとが用いられる。
最初に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを、図3(A)に示すように、型板Cの凹部C1が上を向くようにしてコンベア(図示せず)の上に載置する。コンベア上に置いた型板Cを搬送させながら、該型板Cの表面全体に表層用原料混合物Eを散布して、図3(B)に示すように表層マットを形成する。なお、表層用原料混合物Eには芯層よりも粒径の細かい原料を配合し、得られる木質セメント板の表面が緻密となるようにする。
次に、表層用原料混合物Eを積載した型板Cを引き続き搬送させながら、表層用原料混合物Eの表面全体に芯層用原料混合物Fを散布する。芯層用原料混合物Fは表層用原料混合物Eよりも多く散布し、芯層マットの厚みを表層マットよりも大きくし、図3(C)に示すように芯層マットを形成する。なお、搬送方向の上方には、芯層用原料混合物Fの表面に軽く接触するようにブラシ(図示せず)を設け、芯層用原料混合物Fの表面を均しくする。エアーを吹き付けて表面を均しくしても良い。そして、原料混合物E、Fを積載した型板Cを更にコンベアで搬送させ、図3(D)に示すように、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bのロール部B2により、原料混合物E、Fのうち、型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみを、上側から加圧し、図3(E)に示すように、型板Cの凹部C1の上に積層している原料混合物のみが加圧された部分E1、F1を有するマットを得る。その後、加圧された部分E1、F1を有するマットは、搬送方向の上方に設けられたブラシ(図示せず)に表面を軽く接触させる、又はエアーを吹き付けることにより、搬送させながら図3(F)に示すような表面が均しくされたマットを得る。なお、表面を均しくするために、E1、F1以外の部分において、E1、F1よりも高い部分をブラシ又はエアー(図示せず)により掻き取り、マットの表面を均しくしても良い。
原料混合物E、Fを積載した型板Cは更にコンベア上で搬送され、原料混合物Fの表面全体に再度、表層用原料混合物Eを散布して、図3(G)に示すように芯層マットの上に表層マットを形成する。そして、そのようにして得られたマット表面に、図3(H)に示すように平滑なプレス板Dを載置し、型板Cと共にプレスし、硬化養生する。
上記製造工程によれば、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが型板Cを搬送させながら行われるので、生産効率が良い。また、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の原料混合物Eの量は変わらないので、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。」
d 「【0022】
図4は、図1に示す木質セメント板Aを製造するための製造工程の流れの他の実施例を、各工程において製造されるマットの状態によって示した模式図である。
図4に示す製造工程も、表層と芯層とで用いる原料混合物の配合や厚さが異なり、表層用原料混合物Eと芯層用原料混合物Fとが用いられる、表層用原料混合物Eの上に芯層用原料混合物Fを散布する、芯層マットは表層マットよりも厚みが大きい、コンベアの上方に設けた図2に示す装置Bにより、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみを加圧し、加圧された部分E1、F1を有するマットを製造する、加圧された部分E1、F1を有するマットの表面を均しくしてから、原料混合物Fの表面全体に表層用原料混合物Eを散布し、プレス、硬化養生を行うという点では図3に示す製造工程と同じだが、図4(A)に示すように最初に平滑なプレス板Dをコンベア上に載置すること、図4(B)~(G)に示すように、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとが平滑なプレス板Dを搬送させながら行なうことと、図4(H)に示すように、三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置する点が図3に記載の製造工程とは異なる。なお、型板Cは、凹部C1を下向きにしてマットの上に載置するので、加圧された位置と凸部C1の位置は同じになる。
上記製造工程においても、原料混合物の散布と、原料混合物の一部加圧と、原料混合物の表面の均しとがプレス板Dを搬送させながら行うので、図3に示す製造方法と同じく、生産効率が良い。また、原料混合物E、Fのうち型板Cの凹部C1に対応した部分のみが加圧され、加圧後に芯層マットの表面を均しくするので、プレスの際にマットには均一に荷重がかかり、プレス能力がそれ程大きくなくても生産が可能となり、かつ、木質セメント板Aの表面凹部と凸部の比重の差を小さくすることができ、木質セメント板Aへのクラックの発生と基材への塗料の吸い込みが改善される。更に、表層の原料混合物Eの量は変わらないので、木質セメント板Aの強度、耐水性、耐凍性、耐候性を維持するとともに、多くの塗料が必要になる、塗装が不均一になるという問題を防ぐことができる。」
e 「【0026】
次に、水硬性材料としてポルトランドセメントを40質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を38質量%、木質補強材として木片を11質量%とパルプを11質量%含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを5質量%外添し、図5に示す木質セメント板の製造工程により、図1に示す木質セメント板を製造し、165℃、6kgf/cm2で6時間オートクレーブ養生し、単層からなる、全体の厚みが16mmの木質セメント板である実施例1を得た。なお、該木質セメント板において、凹凸形状を鋭角で深く形成するため、凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmとした。該木質セメント板の全体の厚みを16mmにするためのマットと型板のプレス圧は45kgf/cm2であった。
また、別の実施例として、水硬性材料としてポルトランドセメントを38質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を38質量%、木質補強材としてパルプを24質量含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを5質量%外添して表層の原料混合物とし、水硬性材料としてポルトランドセメントを40質量%、ケイ酸含有物質として珪砂を40質量%、木質補強材として木片を20質量%含有する原料混合物に、硬化促進剤として硫酸アルミニウムを3質量%外添して芯層の原料混合物として、図3に示す木質セメント板の製造工程により図1に示す木質セメント板を製造し、165℃、6kgf/cm2で6時間オートクレーブ養生し、三層からなる、厚みが16mmの実施例2を得た。なお、表層と芯層の配合比率は質量比で1:4であり、該木質セメント板においても、凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmとした。実施例2において、木質セメント板の全体の厚みを、実施例1と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧は45kgf/cm2であった。
更に、実施例1の比較として、実施例1の製造方法において、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧することと、一部加圧されたマットの表面を均しくすること以外を実施し、単層からなる比較例1を得た。なお、比較例1では、木質セメント板の全体の厚みを、実施例1と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧力は、50kgf/cm2であった。
更に、実施例2の比較として、実施例2の製造方法において、型板の凹部に積層した部分の原料混合物のみに上側から加圧することと、一部加圧されたマットの表面を均しくすること以外を実施し、三層からなる比較例2を得た。なお、比較例2では、木質セメント板の全体の厚みを、実施例2と同様に16mmにするためのマットと型板のプレス圧力は、50kgf/cm2であった。
上記実施例1,2及び比較例1,2について、各木質セメント板の全体の平均比重、及び、凸部、凹部の比重を測定すると共に、該木質セメント板表面の表面吸水量、及び曲げ強度を測定し、表1に示した。なお、曲げ強度はJIS A 1408に準じ試験体500×400mmで測定し、表面吸水量は、枠置き法による測定であり、塗装板の表面に0.2×0.2mの枠を設け、該枠内に水を一定量入れた状態で24時間放置し、測定前後の塗装板の質量変化を数1により算出した値である。」
f 【図1】、【図3】、【図4】は以下のとおり。
【図1】
[図:0001425700000003.jpg]
【図3】
[図:0001425700000004.jpg]
【図4】
[図:0001425700000005.jpg]
g(a)上記bの記載を踏まえると、上記fの【図1】からは、木質セメント板Aは矩形板状をなし、表面を長手方向に一直線状に5本形成されている凸部の間に、4本の凹部が木質セメント板Aの長手方向に延びていることが看取される。また、
(b)上記dの「図4に示す製造工程も、・・・表層用原料混合物Eの上に芯層用原料混合物Fを散布する、・・・原料混合物Fの表面表層用原料混合物Eを散布し、プレス、硬化養生を行うという点では図3に示す製造工程と同じだが、・・・最初に平滑なプレス板Dをコンベア上に載置すること、・・・三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置する点が図3に記載の製造工程とは異なる」との記載を踏まえ、上記cの記載をも踏まえると、上記fの【図4】からは、「最初に平滑なプレス板Dの表面全体に表層用原料混合物Eを散布して表層マットを形成し、表層用原料混合物Eの表面全体に芯層用原料混合物Fを散布して表層マットの上に芯層マットを形成し、原料混合物Fの表面全体に再度、表層用原料混合物Eを散布して芯層マットの上に表層マットを形成し、三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置して平滑なプレス板Dと共にプレスし、硬化養生する」ことが理解できる。
(c)また、上記fの【図4】(H)からは、プレスにより凹部を形成する際、表層の一部が芯層の一部に食い込んでいる様子が看取される。
(イ)甲1発明
上記(ア)より、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
凹凸意匠面を有する木質セメント板の製造方法であって、
木質セメント板は、外壁材等の住宅用部材として使用され、目地溝など凹凸による意匠が施されており、
表面に凸部A1を有する木質セメント板Aでは、凸部A1は、木質セメント板Aの表面を長手方向に一直線状に5本形成され、4本の凹部が矩形板状をなす木質セメント板Aの長手方向に延びており、
凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmであり、
平滑なプレス板Dの表面全体に表層用原料混合物Eを散布して表層マットを形成し、表層用原料混合物Eの表面全体に芯層用原料混合物Fを散布して表層マットの上に芯層マットを形成し、原料混合物Fの表面全体に再度、表層用原料混合物Eを散布して芯層マットの上に表層マットを形成し、三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置して平滑なプレス板Dと共にプレスし、硬化養生する、
プレスにより凹部を形成する際、表層の一部が芯層の一部に食い込んでいる、
木質セメント板の製造方法。
イ 甲2
(ア)甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、特に装飾用粉粒状物を散布して、石柄調、タイル柄調等の表面外観を有する外壁材等の建築用化粧板を製造するのに用いるに好適な装飾用粉粒状物散布装置およびこの散布装置を用いた建築用化粧板の製造方法に関する。
b 「【0037】
次に、本発明の装飾用粉粒状物散布装置を用いた建築用化粧板の製造方法を、実施するに最良の実施形態3を示す図6に基づき説明する。図6の(a)は、支持プレート(7)の上に、セメント等の自硬性無機質材料と木質材料とを主原料とする芯層用半乾式組成物と、セメント等の自硬性無機質材料と木質材料とを主原料とし、これに着色顔料を混入した表裏層用半乾式組成物とを、フォーミング装置によって、裏面層(6c)、芯層(6b)、表面層(6a)の順に散布堆積し、表裏面が着色された、3層構成の未硬化無機質材料マット(6)を半乾式成形する工程を示す。」
c 「【0042】
芯層(6b)用半乾式組成物の具体的な一例として、ポルトランドセメント50重量部、珪砂等の珪酸質材料20重量部、木材フレークを主とする木質材料15重量部、パーライト等の無機発泡体15重量部、水42重量部からなるものを挙げることができる。また、表裏層(6a)(6c)用半乾式組成物の具体的な一例として、ポルトランドセメント50重量部、珪酸質材料18重量部、細かい木フレークとパルプが約半々の木質材料15重量部、パーライト等の無機発泡体15重量部、着色顔料2重量部、水38重量部からなるものを挙げることができる。」
d 「【0045】
図6の(c)は、上記で得られた、装飾用粉粒状物が散布された未硬化無機質材料マット(6)の表面に、所定の凹凸模様(13a)(13b)が設けられたエンボス型板(14)を載置し、未硬化無機質材料マット(6)を加圧圧締する工程を示す。この加圧圧締工程は、支持プレート(7)の上に未硬化無機質材料マット(6)を載置し、その上にエンボス型枠(14)を載置したものを一組として複数組を堆積し、これを所定圧力で冷圧圧締することにより行うことができる。
【0046】
この加圧圧締により、図6の(d)(e)に示す通り、未硬化無機質材料マット(6)はその全体厚さが減じられて所定厚さに形成される。そして、その着色表面層(6a)には、エンボス型板(14)によって、目地溝状凹部(15a)と該凹部(15a)で区画された化粧面凸部(15b)と化粧面凸部(15b)の表面に石肌状等の細かい凹凸が形成され、さらにこれらの着色表面層(6a)の表面に、着色表面層(6a)とは色調の異なる装飾用粉粒状物(8)が所望のパターンで分散された、自然観、質感に優れた建築用化粧板(P)が得られる。
【0047】
このようにして得られた建築用化粧板(P)は、常法により、加温下で養生された後、更にオートクレーブ養生されるが、このオートクレーブ養生の前又は後、或いは前後に、側端部の実加工その他の仕上げ加工や、その表面全面にシーラー塗装等の合成樹脂塗料によるクリアー塗装を施しておくことができる。オートクレーブ養生前にクリアー塗装する場合は、図6の(b)の装飾用粉粒状物(8)の散布後、図6の(c)の加圧圧締時、或いは図6の(d)の加圧圧締後に行うことができ、図6の(c)の加圧圧締時に行う場合には、エンボス型板(14)の押圧面に離型材とクリアー塗料を塗布しておき、加圧圧締と同時にクリアー塗料を未硬化無機質材料マット(6)に塗布することによって行うことができる。このようにオートクレーブ養生前にクリアー塗装やシーラー塗装をしておくと、オートクレーブ養生時のエフロレッセンスの発生を抑制することができる。」
e 【図6】は以下のとおり。
[図:0001425700000006.jpg]
f(a)上記a及びdの記載を踏まえると、上記eの【図6】(d)及び(e)からは、建築用化粧板は、矩形板状をなし、目地溝状凹部(15a)が4本、建築用化粧板の長手方向に延びていることが看取される。
(b)上記a及びdの記載を踏まえると、上記eの【図6】(d)からは、エンボス型板(14)によって、目地溝状凹部(15a)が形成される際、着色表面層(6a)の材料の一部が芯層(6b)の材料に食い込む様子が看取される。
(イ)甲2発明
上記(ア)より、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
石柄調、タイル柄調等の表面外観を有する外壁材等の建築用化粧板を製造するのに用いるに好適な建築用化粧板の製造方法であって、
支持プレート(7)の上に、セメント等の自硬性無機質材料と木質材料とを主原料とする芯層用半乾式組成物と、セメント等の自硬性無機質材料と木質材料とを主原料とし、これに着色顔料を混入した表裏層用半乾式組成物とを、裏面層(6c)、芯層(6b)、表面層(6a)の順に散布堆積し、3層構成の未硬化無機質材料マット(6)を半乾式成形する工程と、
未硬化無機質材料マット(6)の表面に、所定の凹凸模様(13a)(13b)が設けられたエンボス型板(14)を載置し、未硬化無機質材料マット(6)を加圧圧締する工程とを備え、
この加圧圧締により、未硬化無機質材料マット(6)は所定厚さに形成され、着色表面層(6a)には、エンボス型板(14)によって、目地溝状凹部(15a)と該凹部(15a)で区画された化粧面凸部(15b)とが形成され、
エンボス型板(14)によって、目地溝状凹部(15a)が形成される際、着色表面層(6a)の材料の一部が芯層(6b)の材料に食い込み、
建築用化粧板は、矩形板状をなし、目地溝状凹部(15a)が4本、建築用化粧板の長手方向に延びている、
建築用化粧板の製造方法。
ウ 甲4
(ア)甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態による着色建築板の構成を示す図である。着色建築板1は、木質材料と自硬性無機材料とを主成分とする表面層2及び裏面層4と芯層3とからなり、該表裏層2、4の密度は例えば1.0~1.2の範囲で略同等であり、該芯層3の密度は例えば0.8~1.0であって、表面にはエンボスが施されている無機質成形板である。各層の厚みは、例えば、表面層2と裏面層4を、それぞれ、約1mm程度としており、芯層を14mm程度としている。そして、表面層2の約1mmの厚みの中に着色材である顔料を含ませる。」
(イ)甲4記載事項
上記(ア)より、甲4には、以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲4記載事項)
木質材料と自硬性無機材料とを主成分とする表面層2及び裏面層4と芯層3とからなる着色建築板1において、
表裏層2、4の密度は1.0~1.2の範囲、該芯層3の密度は0.8~1.0とすること。
エ 甲5
(ア)甲5の記載
甲5には以下の記載がある。
a 「【背景技術】
【0002】
従来、セメントや石膏等の材料を押出成形して形成される窯業系建材は、建築物の外壁等、種々の建材用途として利用されている。このような窯業系建材では、その強度、耐火性、断熱性等の性能を向上させることを目的として、種々の構造に形成させることがある。例えば、特許文献1では、コア層とスキン層の二層構造からなる窯業系建材が提案されている。ここでは、発泡軽量セメント板がコア層として形成され、その表面に高比重セメントの被覆層がスキン層として設けられたセメント板が例示されている。このような窯業系板材は、コア層はスキン層で全面にわたって包み込まれて形成されている。
【0003】
上記のような窯業系建材は、コア層となる成形材料と、スキン層となる成形材料とを押出成形型の内部で合流させた後、押出成形型から押出して形成される。図10には、押出成形型の先端部分の断面図が示されている。押出成形型10は、上型11、下型12、中子13を備えて形成されている。上型11の先端面と下型12の先端面との間には間隙が形成されており、この間隙が押出口14として形成されている。中子13は上型11と下型12との間に設けられており、中子13の先端面は押出口14と対向して配置されている。中子13の先端面と押出口14との間の空間は合流部15として形成されている。中子13は先端になるほど厚みが小さくなるように形成されている。従って、中子13の先端部の上面は先端に向かう下り傾斜面16として形成され、中子13の先端部の下面は先端に向かう上り傾斜面17として形成されている。
【0004】
中子13の上面と上型11の下面との間には間隙が設けられており、この間隙が第一の流路20として形成されている。また中子13の下面と下型12の上面との間には間隙が設けられており、この間隙が第二の流路21として形成されている。中子13の下り傾斜面16と対向する位置において、上型11の内面は先端に向かう下り傾斜面18として形成されている。また中子13の上り傾斜面17と対向する位置において、下型12の内面は先端に向かう上り傾斜面19として形成されている。さらに中子13には第三の流路22が形成されている。第三の流路22は中子13の先端面に開口部29により開口している。そして、第一の流路20と第二の流路21と第三の流路22が合流部15で開口して合流するように形成されている。
【0005】
上記のような押出成形型10では、図11のように、第一の流路20と第二の流路21とを通じてスキン層を形成するための成形材料(以下、スキン材料ということがある)62が供給され、第三の流路22を通じてコア層を形成するための成形材料(以下、コア材料ということがある)61が供給される。スキン材料62とコア材料61とは合流部15で合流した後、押出口14から板状に押し出される。このとき、コア層は板状に成形され、スキン層はコア層の全面を被覆するように形成される。この後、成形されたスキン材料62とコア材料61を養生硬化することによって、図12のような、コア層Cとスキン層Sとを備えた窯業系板材Bが形成される。
・・・
【0007】
しかし、上記のような窯業系板材Bのスキン層Sには欠損部Pが生じるおそれがあった。この欠損部Pは窯業系板材Bの長尺方向に沿って長く形成される。欠損部Pは流路20、21に異物が詰まることにより生じる。すなわち、スキン材料62に混入したセメント硬化物の大きな粒子や十分に開繊できなかった補強繊維の塊や大きな骨材や大きな不純物などの塊状の異物が狭くなった流路20、21に詰まることにより、その異物の箇所でスキン材料62の流れが遮られることになる。この結果、スキン材料62の流れが異物で遮られたままでスキン材料62が押出口14から押し出されることになり、この異物で遮られた部分が欠損部Pとして形成されるものである。スキン層Sが厚み2~3mmの薄層である場合は流路20、21が非常に狭くなり、特に、下り傾斜面16、18の箇所における流路20と、上り傾斜面17、19の箇所における流路21が非常に狭くなり、異物が詰まって欠損部Pが生じやすかった。」
b 「【0018】
図3の押出し機40で二層構造を有する窯業系板材Bを製造するには、第1の押出し機41の投入口43にスキン材料を投入し、第2の押出し機42の投入口43にコア材料を投入する。スキン材料及びコア材料はスクリュー44によって混練、搬送されながら、やがて押出成形型100内に到達する。この押出成形型100内にてスキン材料及びコア材料が所定の形状に形成された後、押出成形型100に形成されている押出口114から、図3のブロック矢印の方向へ吐出して押し出される。その後、プレス成形、切削加工、養生処理、化粧塗装等の処理がなされて窯業系板材Bが得られる。押出し機41、42としては、例えば二軸のスクリュー44aが内装されたパグ部41a、42aと、一軸のスクリュー44bが内装されたオーガ部41b、42bとの連結部分に真空部45を備えたものを用いることができる。また、押出し後にプレス成形により凹凸模様を形成してもよいが、押出成形型100の押出口114付近の上方に設けた模様付けロールにより押出しと同時に凹凸模様を形成してもよいものである。」
(イ)甲5記載事項
上記(ア)より、甲5には、以下の2の事項(以下「甲5記載事項1」及び「甲5記載事項2」という。)が記載されていると認められる。
a 甲5記載事項1(特に段落【0002】【0007】参照)
建築物の外壁等として利用される、発泡軽量セメント板がコア層として形成され、その表面に高比重セメントの被覆層がスキン層として設けられたセメント板において、スキン層Sが厚み2~3mmであること。
b 甲5記載事項2(特に段落【0002】【0003】【0005】【0018】参照)
建築物の外壁等として利用される窯業系建材であって、
コア層とスキン層の二層構造からなる窯業系建材として、発泡軽量セメント板がコア層として形成され、その表面に高比重セメントの被覆層がスキン層として設けられたセメント板が例示され、このような窯業系板材は、コア層はスキン層で全面にわたって包み込まれて形成されており、
窯業系建材は、コア層となる成形材料と、スキン層となる成形材料とを押出成形型の内部で合流させた後、押出成形型から押出して形成され、
押出成形型では、スキン材料とコア材料とは合流部で合流した後、押出口から板状に押し出され、このとき、コア層は板状に成形され、スキン層はコア層の全面を被覆するように形成され、この後、成形されたスキン材料とコア材料を養生硬化することによって、コア層とスキン層とを備えた窯業系板材が形成されるものであり、
押出し後にプレス成形により凹凸模様を形成してもよいこと。
オ 甲9
(ア)甲9の記載
甲9には以下の記載がある。
a 「(55)【意匠に係る物品の説明】
本物品は、各部の名称を示す参考図に示すように、微細な軽量化材が混入したコア材料からなるコア層と、スキン材料からなるスキン層とが積層された壁板でる。本物品は、例えば、コア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造される。軽量化材は、例えば、熱により溶融する発泡スチロールビーズ等の有機質系発泡体や、鉱物やガラス等を原料とす無機質系発泡体により構成される。
(55)【意匠の説明】
実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、底面図及び右側面図は、意匠登録を受けようとする部分があらわれないため省略する。図面中、省略部分は、願書添付図面上86cmである。正面図,A-A部分拡大図,B-B線端面図において、コア層とスキン層との間に描かれた境界線は、材料配合の違いを示す境界である。」
b 【正面図】、【A-A部分拡大図】、【B-B線端面図】、【平面図】、【時計回りに90°回転させた縮小平面図】、【左側面図】、【各部の名称を示す参考図】は以下のとおり。なお、各図面は適宜拡大縮小等している。
【正面図】
[図:0001425700000007.jpg]
【A-A部分拡大図】
[図:0001425700000008.jpg]
【B-B線端面図】
[図:0001425700000009.jpg]
【平面図】
[図:0001425700000010.jpg]
【時計回りに90°回転させた縮小平面図】
[図:0001425700000011.jpg]
【左側面図】
[図:0001425700000012.jpg]
【各部の名称を示す参考図】
[図:0001425700000013.jpg]
(イ)甲9の図面から看取される事項
a 上記(ア)aの意匠に係る物品の説明の記載を踏まえると、上記(ア)bの各部の名称を示す参考図及びB-B線端面図から、板状のコア層が看取される。
b また、上記(ア)bの各部の名称を示す参考図において、コア層及びスキン層それぞれの、上側の面を「表面」、下側の面を「裏面」、左側及び右側の面を「両側面」と呼称する場合に、コア層の表面及び裏面及び両側面を覆うスキン層が看取される。
c 上記(ア)bの時計回りに90°回転させた縮小平面図と各部の名称を示す参考図をあわせて見ると、スキン層の表面に凹部を5本形成して模様を付けてあることが看取される。
d 上記(ア)aの意匠の説明中の「正面図,A-A部分拡大図,B-B線端面図において、コア層とスキン層との間に描かれた境界線は、材料配合の違いを示す境界である」との記載を踏まえると、上記(ア)bの正面図、A-A部分拡大図からは、スキン層の表面に形成された凹部に対応してスキン層を形成するスキン材料の一部が、コア層を形成するコア材料に食い込み、スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで突状が形成されている様子が看取される。
e 上記(ア)aの意匠に係る物品の説明の記載を踏まえると、上記(ア)bの正面図、時計回りに90°回転させた縮小平面図からは、壁板は、矩形板状をなし、凹部が長手方向に延びていることが看取される。
(ウ)甲9発明
上記(ア)及び(イ)より、甲9には、以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲9発明)
微細な軽量化材が混入したコア材料からなるコア層と、スキン材料からなるスキン層とが積層された壁板をコア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造する方法であって、
軽量化材は、例えば、発泡スチロールビーズ等の有機質系発泡体により構成され、
壁板は、板状のコア層とコア層の表面及び裏面及び両側面を覆うスキン層とを備え、スキン層の表面に凹部を5本形成して模様を付けてあり、スキン層の表面に形成された凹部に対応してスキン層を形成するスキン材料の一部が、コア層を形成するコア材料に食い込み、スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで突状が形成されており、
壁板は、矩形板状をなし、凹部が長手方向に延びている、
壁板の製造方法。
カ 甲11
(ア)甲11の記載
甲11には以下の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材(サイディング)等に用いられる成形板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁材等に用いられる成形板として、セメントと、軽量骨材と、水とを混練して、適宜形状の型枠内に充填し養生硬化させてなる軽量建築資材が知られている(例えば、特許文献1参照)。軽量骨材としては、例えば、発泡倍率が20~100倍で直径1~100μmの中空樹脂ビーズ(マイクロバルーン(MB))が用いられている。
・・・
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、軽量化を図りつつ、パルプのダマを低減して強度の高い成形板を得ることができる成形板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形板の製造方法は、セメント含有粉体、パルプ、軽量骨材を配合し、加水して成形材料を調製した後、前記成形材料を押出成形するようにした成形板の製造方法であって、前記軽量骨材として、平均粒径が500~2000μmであり、かつ、圧縮強度が1.3kgf/cm2以上である発泡樹脂ビーズを用いることを特徴とするものである」
b 「【0036】
(振り折れ性)
成形板の強度の指標となる振り折れ性を次のように評価した。すなわち、2人で成形板(大きさ3030mm×455mm×厚さ16mm)の両端を持ち、そのうち1人は成形板の端部を固定した状態で持ち、もう1人は成形板の端部を持って振幅約200mm、周期約1秒/回の条件で成形板を左右に振り、成形板が折れるまでの回数(振り回数)を計測した。
【0037】
「○」:振り回数が5回以上で折れたもの。
【0038】
「×」:振り回数が5回未満で折れたもの。」
(イ)甲11記載事項
上記(ア)より、甲11には、以下の事項(以下「甲11記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲11記載事項)
外壁材(サイディング)等に用いられる成形板として知られている、セメントと、軽量骨材と、水とを混練して、適宜形状の型枠内に充填し養生硬化させてなる軽量建築資材であって、軽量骨材としては、例えば、中空樹脂ビーズが用いられる成形板を、軽量化を図りつつ、パルプのダマを低減して強度の高い成形板を得ることができるように、セメント含有粉体、パルプ、軽量骨材を配合し、加水して成形材料を調製した後、前記成形材料を押出成形するようにし、前記軽量骨材として、平均粒径が500~2000μmであり、かつ、圧縮強度が1.3kgf/cm2以上である発泡樹脂ビーズを用いる成形板の製造方法とし、
成形板の強度の指標となる振り折れ性を、2人で成形板(大きさ3030mm×455mm×厚さ16mm)の両端を持ち、そのうち1人は成形板の端部を固定した状態で持ち、もう1人は成形板の端部を持って振幅約200mm、周期約1秒/回の条件で成形板を左右に振り、成形板が折れるまでの回数(振り回数)を計測し、振り回数が5回以上で折れたものを○と、振り回数が5回未満で折れたものを×と評価すること。
(2)本件発明について
上記1において検討したように、本件発明1には、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載があり、この記載が、
ア 「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である。
イ 「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である。
の少なくとも2通りの意味に解釈できることから、多義的に解釈され、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~5は、発明が不明確となっている。
ここで、「リブ間の間隔」が100mm以上であると解釈すると、本件明細書中において比較例2とされた(第2の4(2)ア(ア)d)「リブ30の本数が少ない」建築板が含まれるものとなって、本件明細書の段落【0017】の「建築板1の運搬時等の破損を特に抑制できる」ものとはならず、妥当性を欠いたものとなること、本件発明1の「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載について、特許権者は、「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数が1本/100mm以上」であること、または、「短手方向に並列する前記リブ間の間隔は、前記リブが100mmあたり1本以上となるように設定され」ることを意味する旨主張していることから、以下の甲1、甲2及び甲9との対比、判断にあたっては、リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数が1本以上であることを意味するものとして、進歩性について検討する。
(3)甲1発明を主引用例とする場合
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「芯層マット」は、本件発明1の「板状のコア部」に相当し、甲1発明の「表層用原料混合物Eを散布して」「形成し」た「表層マット」及び「原料混合物Fの表面全体に再度、表層用原料混合物Eを散布して芯層マットの上に」「形成し」た「表層マット」は、本件発明1の「前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部」に相当し、甲1発明の「三層構造のマット」は、「硬化養生」の前のものであるから、本件発明1の「未硬化の成形体」に相当する。
b 甲1発明の木質セメント板は「目地溝など凹凸による意匠」を施すものであるから、表面に「凸部」を形成することは「模様を付ける」ことであるといえる。また、甲1発明の「芯層の一部に食い込んでいる」「表層の一部」は突出しており本件発明1の「リブ」に相当するといえるから、甲1発明の「三層構造のマットの上に凸部形成部に対応する凹部C1を形成した型板Cを載置して平滑なプレス板Dと共にプレスし、硬化養生する」ものであり、「プレスにより凹部を形成する際、表層の一部が芯層の一部に食い込んでいる」ことは、本件発明1の「未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている」ことに相当する。
c 甲1発明の「木質セメント板」は「外壁材等の住宅用部材として使用され」るものであるから、本件発明1の「建築板」であるといえ、甲1発明の「木質セメント板の製造方法」は、本件発明1の「建築板の製造方法」に相当する。
d 本件発明1の「前記建築板は、矩形板状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」ことと、甲1発明の「木質セメント板A」が「矩形板状をなす」ものであり、「4本の凹部が矩形板状をなす木質セメント板Aの長手方向に延びて」いることとは、「前記建築板は、矩形板状をなし、前記リブが長手方向に延びて」いることで共通する。
e そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている、建築板の製造方法であって、
前記建築板は、矩形板状をなし、前記リブが長手方向に延びている、
建築板の製造方法。
(相違点1)
本件発明1は「スキン部の厚みが1mm以上であ」ると特定されているのに対し、甲1発明は、「表層」の厚みについて、そのように特定されていない点。
(相違点2)
本件発明1は「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上であ」ると特定されているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1について
(a)甲1発明が「凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmであ」ることに鑑みると、甲1発明の「表層」が「1mm以上」以上である蓋然性が高い。
(b)また、甲1発明において「表層」の厚さは、当業者が適宜決定し得るものであり、これを「1mm以上」と特定することは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)仮に、上記(a)ないし(b)のように判断できないとしても、建築板の表層を1mm以上とすることは、甲5記載事項1に示したように周知技術(以下「周知技術1」という。)であり、甲1発明において当該周知技術を適用し、表層を1mm以上とすることは、当業者が容易になし得たことである。
b 相違点2について
(a)甲1発明は「目地溝など凹凸による意匠」を施すものであって、リブ間の間隔は意匠上決定されるものと認められるところ、タイル、石材等、施す意匠に応じてリブの間隔を決定することは当業者が適宜なし得る設計的事項であって、その間隔として、100mmより小さいものも例示するまでもなく周知の範囲のものであるから、「リブ間の間隔」(前記リブの本数および前記リブ間の間隔)が「1本/100mm以上である」ものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)小括
本件発明1は、甲1発明に基づいて、または甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、上記ア(ア)eの一致点において一致し、上記ア(ア)eの相違点1及び2に加え、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明2は、「前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い」と特定されるのに対し、甲1発明は、「表層」と「芯層」の比重がそのように特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1及び2について
上記相違点1及び2については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
b 相違点3について
建築板において、スキン部の比重をコア部の比重より高いものとすることは、甲4記載事項、甲5記載事項2、甲9発明に示されるように周知技術(以下「周知技術2」という。)であり、甲1発明において「前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
本件発明2は、甲1発明及び周知技術2に基づいて、または甲1発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易になし得たものである。
ウ 本件発明4
(ア)対比
a 本件発明4と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「4本の凹部が矩形板状をなす木質セメント板Aの長手方向に延びて」いることは、本件発明4の「前記リブが4本以上形成されている」ことに相当する。
b そうすると、本件発明4と甲1発明とは、上記ア(ア)eの一致点に加え、「前記リブが4本以上形成されている」点で一致し、上記ア(ア)eの相違点1及び2で相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明4は、甲1発明に基づいて、または甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
エ 本件発明5
(ア)対比
a 本件発明5と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「凸部の頂点から凹部の底点までの長さは4mmであ」ることは、本件発明5の「前記リブの高さが3mm以上である」ことに相当する。
b そうすると、本件発明4と甲1発明とは、上記ア(ア)eの一致点に加え、「前記リブが4本以上形成されている」点で一致し、上記ア(ア)eの相違点1及び2で相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明5は、甲1発明に基づいて、または甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
(4)甲2発明を主引用例とする場合
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「未硬化無機質材料マット(6)」の「芯層(6b)」は、本件発明1の「板状のコア部」に相当し、甲2発明の「未硬化無機質材料マット(6)」の「裏面層(6c)」及び「表面層(6a)」は、本件発明1の「前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部」に相当し、甲2発明の「未硬化無機質材料マット(6)」は、本件発明1の「未硬化の成形体」に相当する。
b 甲2発明の建築用化粧板は「石柄調、タイル柄調等の表面外観を有する外壁材」等に用いられるものであるから、表面に「目地溝状凹部(15a)」を形成することは「模様を付ける」ことであるといえる。また、甲2発明の「芯層(6b)の材料に食い込」む「着色表面層(6a)の材料の一部」は突出しており本件発明2の「リブ」に相当するといえるから、甲2発明の「未硬化無機質材料マット(6)の表面に、所定の凹凸模様(13a)(13b)が設けられたエンボス型板(14)を載置し、未硬化無機質材料マット(6)を加圧圧締する工程」において「エンボス型板(14)によって、目地溝状凹部(15a)が形成される際、着色表面層(6a)の材料の一部が芯層(6b)の材料に食い込」むことは、本件発明1の「未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている」ことに相当する。
c 甲2発明の「建築用化粧板の製造方法」は、本件発明1の「建築板の製造方法」に相当する。
d 本件発明1の「前記建築板は、矩形板状をなし、スキン部の厚みが1mm以上であり、前記リブが長手方向に延びており、前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」ことと、甲2発明の「建築用化粧板」が「矩形板状をな」すものであり、「目地溝状凹部(15a)が4本、建築用化粧板の長手方向に延びている」こととは、「前記建築板は、矩形板状をなし、前記リブが長手方向に延びて」いることで共通する。
e そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている、建築板の製造方法であって、
前記建築板は、矩形板状をなし、前記リブが長手方向に延びている、
建築板の製造方法。
(相違点1’)
本件発明1は「スキン部の厚みが1mm以上であ」ると特定されているのに対し、甲2発明は、「裏面層(6c)」及び「表面層(6a)」の厚みについて、そのように特定されていない点。
(相違点2’)
前記リブ間の間隔が1本/100mm以上であ」ると特定されているのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
相違点1’及び相違点2’は、上記(3)ア(ア)eの相違点1及び2と同様の点であり、上記(3)ア(イ)において検討したのと同様の理由により、甲2発明において、相違点1’及び相違点2’に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
本件発明1は、甲2発明に基づいて、または甲2発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
イ 本件発明2
(ア)対比
a 本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、上記ア(ア)eの一致点において一致し、上記ア(ア)eの相違点1’及び2’に加え、以下の点で相違する。
(相違点3’)
本件発明2は、「前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い」と特定されるのに対し、甲2発明は、「裏面層(6c)」及び「表面層(6a)」と「芯層(6b)」の比重がそのように特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1’及び2’について
上記相違点1’及び2’については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
b 相違点3’について
相違点3’は、上記(3)イ(ア)の相違点3と同様の点であり、上記(3)イ(イ)において検討したのと同様の理由により、甲2発明において、相違点3’に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
本件発明2は、甲2発明及び周知技術2に基づいて、または甲2発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易になし得たものである。
ウ 本件発明4
(ア)対比
a 本件発明4と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「目地溝状凹部(15a)が4本、建築用化粧板の長手方向に延びている」ことは、本件発明4の「前記リブが4本以上形成されている」ことに相当する。
b そうすると、本件発明4と甲2発明とは、上記ア(ア)eの一致点に加え、「前記リブが4本以上形成されている」点で一致し、上記ア(ア)eの相違点1’及び2’で相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明4は、甲2発明に基づいて、または甲2発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
エ 本件発明5
(ア)対比
本件発明5と甲2発明とを対比すると、両者は、上記ア(ア)eの一致点において一致し、ア(ア)eの相違点1’及び2’に加え、以下の点で相違する。
(相違点4)
本件発明5は、「リブの高さが3mm以上である」と特定されるのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
a 相違点1’及び2’について
上記相違点1’及び2’については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
b 相違点4について
甲2発明は、「目地溝状凹部(15a)」を形成したことに起因して「リブ」が形成されているものであるところ、凹部(凹凸)を3mm以上とすることは、甲1発明に示されるように周知技術であり(以下「周知技術3」という。)、甲2発明において当該周知技術を採用して目地深さ等を3mm以上とし、もって、「リブの高さが3mm以上である」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
本件発明5は、甲2発明及び周知技術3に基づいて、または甲1発明及び周知技術1、3に基づいて当業者が容易になし得たものである。
(5)甲9発明を主引用例とする場合
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲9発明とを対比する。
a 甲9発明の「コア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造」される「壁板」の「コア材料からなるコア層」であって「板状」のものは、本件発明1の「板状のコア部」に相当する。
b 甲9発明の「コア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造」される「壁板」の「スキン材料からなるスキン層」であって「板状のコア層とコア層の表面及び裏面及び両側面を覆うスキン層」となるものは、「コア材料とスキン材料とが「押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造」される際に「一体化している」ものといえるから、本件発明1の「少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部」に相当する。
c 本件発明1の「スキン部」の、「未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されて」いることと、甲9発明の「コア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造」する「壁板」が「スキン層の表面に凹部を5本形成して模様を付けてあり、スキン層の表面に形成された凹部に対応してスキン層を形成するスキン材料の一部が、コア層を形成するコア材料に食い込み、スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで突状が形成されて」いることとは、甲9において「スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで」「形成され」る「突状」は「リブ」と同様のものであるから、「スキン部の表面に凹部を形成して模様を付け、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前/記コア部の一部に食い込むことでリブが形成され」る点で共通する。
d 甲9発明の「壁板」が「矩形板状をなし」ていることは、本件発明1の「建築板」が「矩形板状をなし」ていることに相当する。
e 甲9発明の「壁板」が「凹部が長手方向に延びている」ことは、甲9発明は「凹部」に対応して「突状」が形成されているものであるから、上記dの対比を踏まえると、本件発明1の「建築板」が「前記リブが長手方向に延びて」いることとに相当する。
f そうすると、本件発明1と甲9発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体により建築板を製造するものであり、前記スキン部の表面に凹部を形成して模様を付け、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されている、建築板の製造方法であって、
前記建築板は、矩形板状をなし、リブが長手方向に延びている、
建築板の製造方法。
(相違点A)
本件発明1は「板状のコア部と、少なくとも前記コア部の表面及び裏面を覆って前記コア部と一体化しているスキン部と、を備えた未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより凹部を形成して模様を付ける際、前記スキン部を形成するスキン材料の一部が、前記コア部を形成するコア材料に食い込み、前記スキン部の一部が前記コア部の一部に食い込むことでリブが形成されて」いるのに対し、甲9発明は、「微細な軽量化材が混入したコア材料からなるコア層と、スキン材料からなるスキン層とが積層された壁板をコア材料とスキン材料とを押出成形用の金型を用いて成形した上で加熱硬化することで製造する」ものであり、壁板(本件発明1の「建築板」に相当)には、「スキン層の表面」に「凹部」を「形成して模様を付けてあり、スキン層の表面に形成された凹部に対応してスキン層を形成するスキン材料の一部が、コア層を形成するコア材料に食い込み、スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで突状が形成されて」いるものの、凹部が「未硬化の成形体の前記スキン部の表面にプレスにより」形成されたものか不明な点。
(相違点1’’)
本件発明1は「スキン部の厚みが1mm以上であ」ると特定されているのに対し、甲9発明は、「スキン層」の厚みについて、そのように特定されていない点。
(相違点2’’)
本件発明1は「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」と特定されているのに対し、甲9発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点Aについて
(a)甲5記載事項2の窯業系建材は、甲9発明同様、「コア層となる成形材料と、スキン層となる成形材料とを押出成形型の内部で合流させた後、押出成形型から押出して形成されるものであ」るところ、甲5記載事項2は「押出し後にプレス成形により凹凸模様を形成してもよい」とするものである。
(b)そして、甲5記載事項2は、「押出成形型」で「成形されたスキン材料とコア材料」が「養生硬化」して「窯業系板材が形成される」ものであるから、「押出し後にプレス成形により凹凸模様を形成」する際には「未硬化」の状態において「スキン部の表面」にプレスすることとなることは当然である。
(c)甲9発明において、凹部の形成に甲5記載事項2の「押出し後にプレス成形により凹凸模様を形成」する技術を採用し、もって、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
b 相違点1’’について
(a)甲11記載事項に成形板として「大きさ3030mm×455mm×厚さ16mm」との寸法が例示されるように、甲9発明が壁板として厚さ16mm程度であるとすると、スキン部の厚みが1mm以上である蓋然性が高い。
(b)また、甲9発明において「表層」の厚さは、当業者が適宜決定し得るものであり、これを「1mm以上」と特定することは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)仮に、上記(a)ないし(b)のように判断できないとしても、建築板の表層を1mm以上とすることは、甲5記載事項1に示したように周知技術1であり、甲1発明において当該周知技術を適用し、表層を1mm以上とすることは、当業者が容易になし得たことである。
d 相違点2’’について
(a)甲11記載事項に成形板として「大きさ3030mm×455mm×厚さ16mm」との寸法が例示されるように、甲9発明が壁板として幅455mm程度のものであるとすると、「壁板」に「5本」の「凹部」及びそれに対応する「突状」を形成したことは、「前記リブ間の間隔100mmあたりの前記リブの本数が1本/100mm以上である」ことに相当する蓋然性が高い。
(b)また、甲9発明は模様を施しているものであって、凹部ないし突状間の間隔は意匠上決定されるものと認められるところ、タイル、石材等、施す意匠に応じてリブの間隔を決定することは当業者が適宜なし得る設計的事項であって、その間隔として、100mmより小さいものも例示するまでもなく周知の範囲のものであるから、「リブ間の間隔」(前記リブの本数および前記リブ間の間隔)が「1本/100mm以上である」ものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)小括
本件発明1は、甲9発明及び甲5記載事項2に基づいて、または、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2
(ア)対比
本件発明2と甲9発明とを対比する。
甲9発明の「スキン層」が「スキン材料からな」り、「コア層」が「微細な軽量化材が混入したコア材料からなるであって「軽量化材は、例えば、発泡スチロールビーズ等の有機質系発泡体により構成され」るものであることは、「スキン材料からなるスキン層」の方が軽量化されておらず比重が高いといえるから、本件発明2の「コア層が、前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲9発明とは、上記ア(ア)fの一致点に加え、「コア層が、前記スキン部が前記コア部よりも比重が高い」点において一致し、上記ア(ア)fの相違点A、相違点1’’及び相違点2’’において相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明2は、甲9発明及び甲5記載事項2に基づいて、または、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3
(ア)対比
本件発明3と甲9発明とを対比する。
甲9発明の「壁板」が、「板状のコア層とコア層の表面及び裏面及び両側面を覆うスキン層とを備え」ることは、「スキン層」が「コア層の表面及び裏面」に加えてコア層の互いに対向する両側面をさらに覆うものであるといえるから、本件発明3の「前記スキン部が前記コア部の互いに対向する両側面を更に覆う」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲9発明とは、上記ア(ア)fの一致点に加え、「前記スキン部が前記コア部の互いに対向する両側面を更に覆う」点において一致し、上記ア(ア)fの相違点A、相違点1’’及び相違点2’’において相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明3は、甲9発明及び甲5記載事項2に基づいて、または、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明4
(ア)対比
本件発明4と甲9発明とを対比する。
甲9発明において「スキン層の表面に凹部を5本形成して模様を付けてあり、スキン層の表面に形成された凹部に対応してスキン層を形成するスキン材料の一部が、コア層を形成するコア材料に食い込み、スキン層の一部がコア層の一部に食い込むことで突状が形成されて」いることは、本件発明4の「前記リブが4本以上形成されている」ことに相当する。
そうすると、本件発明4と甲9発明とは、上記ア(ア)fの一致点に加え、「前記リブが4本以上形成されている」点において一致し、上記ア(ア)fの相違点A、相違点1’’及び相違点2’’において相違する。
(イ)判断
上記相違点については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
(ウ)小括
本件発明4は、甲9発明及び甲5記載事項2に基づいて、または、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件発明5
(ア)対比
本件発明5と甲9発明とを対比すると、両者は、上記ア(ア)fの一致点において一致し、ア(ア)eの相違点1A、相違点1’’及び相違点2’’に加え、以下の点で相違する。
(相違点5’)
本件発明5は、「リブの高さが3mm以上である」と特定されるのに対し、甲9発明は、そのように特定されていない点。
(イ)判断
a 相違点A、相違点1’’及び相違点2’’について
上記相違点A、相違点1’’及び相違点2’’については、上記ア(イ)において検討したとおりである。
b 相違点5’について
甲9発明は、「凹部」を形成したことに起因して「突状」が形成されているものであるところ、凹部(凹凸)を3mm以上とすることは、甲1発明に示されるように周知技術であり(以下「周知技術3」という。)、甲9発明において当該周知技術を採用して凹部の深さ等を3mm以上とし、もって、「リブの高さが3mm以上である」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
本件発明2は、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術3に基づいて、または、甲9発明、甲5記載事項2及び周知技術1、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 サポート要件について
(1)本件発明について
上記1において検討したように、本件発明1には、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載があり、この記載が、
ア 「リブ間の間隔100mmあたりのリブの本数」(分数)が1本/100mm以上である。
イ 「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上である。
の少なくとも2通りの意味に解釈できることから、多義的に解釈され、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~5は、発明が不明確となっている。
ここでは、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である」との記載が「リブ間の間隔」(分母)が100mm以上と解釈される余地があることから、「リブ間の間隔」が100mm以上と解釈される場合について検討する。
(2)本件発明は、「従来より軽量であるにもかかわらず、十分な強度を有し、振り折れ等の破損が生じにくい建築板の製造方法を提供する」ことを課題とする(本件明細書【0007】)。そこで、本件発明が、当該課題を解決するものであるかについて検討する。
(3)本件発明1は、「前記リブ間の間隔が1本/100mm以上である、」と特定される一方、リブの本数について特定がないものであるから、リブの本数が2本のものが含まれる。
(4)そうすると、本件明細書の実施例における比較例2が本件発明1に含まれることは明らかである。そして、比較例2は【表2】において判定が「×」とされ「振り折れ等の破損が生じにくい建築板」とされたものであるから、本件発明1が上記(1)の課題を解決しない建築板の製造方法を含むことは明らかである。
(5)本件発明2、3及び5についても、リブの本数について特定がないから、本件発明1と同様、上記第2の2(1)の課題を解決しない建築板の製造方法を含む。
(6)以上のとおりであるから、本件発明1~3及び5は、本件発明の課題が解決できるように発明の詳細な説明に記載されたものではない。
第6 まとめ
以上のとおり、本件発明1~5に係る特許は、特許法36条6項2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1~5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
さらに、本件発明1~3及び5に係る特許は、特許法36条6項1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700305