特許異議申立
2023-700417
床材
- 審判番号
- 2023-700417
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-043342
- 登録番号
- 7165770
- 請求日
- 2023年04月24日
- 審決日
- 2024年03月21日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東リ株式会社
- 【権利者代理人】細田 芳徳
- 【権利者代理人】細田 芳弘
- 【異議申立人】塩谷 由紀子
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.121-YAA(E04F) / P1651.537-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7165770号発明「床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7165770号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
特許第7165770号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7165770号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成28年7月6日に出願された特願2016-134612号の一部を令和3年3月17日に新たな特許出願としたものであって、令和4年10月26日にその特許権の設定登録がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和5年 4月24日 特許異議申立人 塩谷 由紀子(以下「申立
人」という。)による請求項1及び2に係る 発明の特許に対する特許異議の申立て
同年 7月14日付け 取消理由通知
同年 9月12日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年10月31日 申立人による意見書の提出
同年11月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和6年 1月11日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 2月20日 申立人による意見書の提出
なお、令和6年1月11日に訂正の請求がされたことにより、令和5年9月12日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者により令和6年1月11日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の内容(以下「本件訂正」という。)は以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「柔軟性を有する樹脂層を含む床材本体と、前記床材本体の上に表面保護層を有する床材であって、前記樹脂層は、合成樹脂成分を含有し、前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である、床材(但し、木材を含む床材を除く)。」と記載されているのを、「柔軟性を有する樹脂層及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、前記樹脂層は、合成樹脂成分を含有し、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である、靴底に対する防滑及び防汚用の床材(但し、木材を含む床材を除く)。」
に訂正する。(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、床材本体について「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」を含むものに特定して限定し、表面保護層について「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された」ものに特定して限定し、「床材」について「床材を長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、」「靴底に対する防滑及び防汚用」であるものに特定して限定するとともに、表面保護層について「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された」ものに特定するのに伴い、表面保護層について、訂正前の請求項1において「電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み」としていた記載の「電離放射線硬化性樹脂組成物」が、「表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物」と同じものであることが明瞭となるよう、「電離放射線硬化性樹脂組成物」の前に「前記」を付したものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(2)新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更
床材本体について、本件特許明細書の段落【0015】に「床材本体2は、基材層21、形状安定化層23、化粧層24、表層3などの層を任意に組み合わせた構造のものが挙げられる。」と記載され、段落【0042】に「表層3としては、・・・例えば熱可塑性樹脂および可塑剤などにより形成され、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、・・・などが挙げられ、」と記載される。
表面保護層について、段落【0091】に「・・・電離放射線硬化性樹脂組成物を、床材中間品の表層上にナチュラルロールコート法により均一な厚みで塗布した後、直ちに空気中において有電極紫外線ランプで紫外線を照射することにより、表面保護層を形成した。」と記載される。
床材の有する柔軟性について、段落【0014】に「長尺帯状の床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。」と記載されている。
床材の用途について、段落【0012】に「本発明の床材は、防汚性に優れる電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類が含まれるため、シリコン及びフッ素の官能基の有する摺動性及び撥水・撥油性によって電離放射線硬化性樹脂表面に汚れ物質が付着し難く、付着した汚れ物質も除去し易い。また、防滑性については、表面保護層表面に防滑性粒子による微細な凹凸が形成されるので、人が踏んだ際に足裏や靴底にめり込んで、適当な防滑性を有することができるためと推定される。」(下線は合議体において付与した。)と記載され、段落【0097】に「<BHM試験>
実施例1、比較例1、参考例1の床材について、・・・その表面の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。続いて各サンプルの表面を乾燥した状態で紙拭き(乾拭)及び、水で濡らした状態で紙拭き(水拭)し、汚れを拭き終わるまでの時間(10分間以内に拭き取れないものは拭き取り不可とする。)と拭きとった後の汚れ状態を目視で観察し、写真撮影した。清掃後の表面の防汚性および汚染除去性を、目視で以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。また、図5に、各例の試験直後および拭き取り後の状態を示す。
◎:ヒールマークがつかない
○:ヒールマークがつくが紙拭き・水拭きで短時間で拭きとれるもの
△:ヒールマークがつくが紙拭き・水拭きで時間をかければ拭きとれるもの
×:紙拭き・水拭きした後でもわずかにヒールマークがのこるもの」と記載され、【0105】に「実施例1、比較例1、参考例1から、表面保護層に電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂が含有されていると、防汚性および汚染除去性に優れていることがわかる。」と記載されており、ヒールマークが靴底のゴムの付着による汚れであることが技術常識であることに鑑みると、床材は「靴底」に対する「防汚用」であるといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、上記(1)において検討したとおり、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項2は、請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
そうすると、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1に係る訂正は、一群の請求項〔1-2〕についてするものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、請求項番号により「本件発明1」等といい、これらを併せて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
柔軟性を有する樹脂層及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有し、前記樹脂層は、合成樹脂成分を含有し、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類と、防滑性粒子とを含み、前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である、靴底に対する防滑及び防汚用の床材(但し、木材を含む床材を除く)。
【請求項2】
前記防滑性粒子の平均粒子径と前記表面保護層の厚さとの比(粒子径μm/厚さμm)が0.1~1である、請求項1に記載の床材。
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要及び証拠
1 取消理由通知(決定の予告)の概要
令和5年9月12日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に対して、令和5年11月27日付けで当審において特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、参考資料2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 取消理由(決定の予告)で引用した文献は以下のとおり。
甲第1号証 特開2012-213923号公報
甲第3号証-1 鹿工技ニュース No.56,
鹿児島県工業技術センター,2002年1月,P.5
甲第4号証 特開2003-213211号公報
甲第5号証 特開2001-123113号公報
甲第6号証 特開2014-69447号公報
参考資料2 特開2001-254504号公報
参考資料4 長尺塩ビシート,[online],最終更新日2002/09/18,三井住友信託銀行グループ三井住友トラスト不動産,[令和5年2月2日出力],インターネット<URL:https://smtrc.jp/useful/glossary/detail/n/608>
参考資料5 特開2014-84684号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という場合がある。)
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
1 各甲号証等について
(1)甲1
ア 甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)「【背景技術】
【0002】
化粧シートは、表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して用いられている。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
【0003】
従来の化粧シートは、表面が一般に滑らかである。そのため、フローリング、階段等の床材用として使用した場合に、人が歩くと滑りやすく、転倒のおそれがある。
【0004】
そこで、化粧シートに表面の防滑性を付与する目的で、熱可塑性ポリマーを表面に散在露出させた床材が提案されている(特許文献1)。また、表面保護層に特殊なフィラーを添加したり、化粧シートの表面にエンボス加工を施すことにより防滑性を付与した床材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-254504号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の床材(化粧板)を、軽量物、例えば犬、猫等のペットに対して使用した場合、防滑性に劣るという問題がある。」
(イ)「【0012】
本発明の化粧シートの層構成
本発明の化粧シートは、最表面に前記表面保護層を有すればよく、具体的構成については化粧シートの用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層及びプライマー層のいずれかを有する化粧シートが挙げられる。
【0013】
以下、本発明の化粧シートに関し、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層、プライマー層及び前記表面保護層を順に有する化粧シートを代表例として、具体的に説明する。
(中略)
【0015】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたシート(フィルム)が好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル等が挙げられる。前記基材シートは、これら樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせ用いることにより形成される。
【0018】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20~300μmが好ましい。」
(ウ)「【0036】
(透明性熱可塑性樹脂層)
透明性接着剤層の上には、透明性熱可塑性樹脂層が形成される。
【0037】
透明性熱可塑性樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。前記透明性熱可塑性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等を挙げることができる。これら樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
【0038】
好ましくは、ポリプロピレン樹脂を代表とするポリオレフィン系樹脂を使用する。従って、透明性熱可塑性樹脂層としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合は、基材シートを構成するものとして挙げた各種のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。
【0039】
なお、透明性熱可塑性樹脂層は、透明性を有する限り、着色されていても良いが、着色剤を配合しない方が望ましい。
【0040】
透明性熱可塑性樹脂層の形成方法は限定的でなく、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層にラミネートする方法、透明性熱可塑性樹脂層を形成し得る樹脂組成物を溶融押出し、隣接する層と一緒にラミネートする方法等がある。ラミネート方法としては、例えばドライラミネート方式によるラミネート方法が挙げられる。
【0041】
透明性熱可塑性樹脂層の厚みは、通常は20~200μm程度であるが、化粧シートの用途等に応じて上記範囲を超えても良い。」
(エ)「【0042】
(表面保護層)
本発明の化粧シートは、最表面にマルテンス硬さ(硬度)が30~170N/mm2である表面保護層を有する。当該表面保護層の好ましいマルテンス硬さは、60~150N/mm2である。マルテンス硬さが上記範囲内であれば、対象が軽量物においても防滑性に優れ、防滑性の低下が抑制されている。特に、後述する特定の表面凹凸形状が消失した後においても、防滑性を保持することができる。
(中略)
【0044】
表面保護層のマルテンス硬さは、1)複数の樹脂成分を混合する、2)樹脂にエラストマーを添加する、等によって適宜設定することができる。例えば、表面保護層を構成する樹脂成分として、後述するウレタンアクリレートを使用する場合、2官能ウレタンアクリレートと6官能ウレタンアクリレートを適宜配合したり、または分子量1500程度の3官能ウレタンアクリレートのみを使用する等により、所望のマルテンス硬さを得ることができる。なお、ここで2官能ウレタンアクリレートとは1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレートを意味する。3官能ウレタンアクリレートと6官能ウレタンアクリレートについても同様に、1分子中にラジカル重合性のアクリロイル基をそれぞれ3つ、6つ有するウレタンアクリレートを意味する。」
(オ)「【0048】
また、表面保護層の最大高さ(Rz)は、20~60μmである。好ましくは20~53μmであり、より好ましくは20~50μmである。Rzが20を下回る場合は、対象が軽量物である場合の防滑性が劣り、Rzが60を超える場合は耐傷性が劣る。
(中略)
【0052】
上記したSmはJIS B0601(1994)、Rz及びRzjisはJIS B0601(2001)表面粗さの規格に準拠している。」
(カ)「【0057】
表面保護層のSm、Rz及びRzjisは、1)後述するフィラーを含有する、2)エンボス加工を行う等により、適宜設定することができる。静摩擦係数及び動摩擦係数は、上記1)及び2)の方法の他、3)後述する複数の樹脂成分を混合すること等によっても適宜設定できる。
(キ)「【0059】
表面保護層は、耐擦傷性等の観点から、電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であることが好ましい。電離放射線硬化型樹脂とは、紫外線、電子線等を照射することにより、架橋及び硬化する樹脂を指す。
【0060】
電離放射線硬化型樹脂としては、公知のもの又は市販品を使用することができる。具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用いる。
【0061】
前記のプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルメタアクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ウレタンメタアクリレート、ポリオールメタアクリレート、メラミンメタアクリレート等のメタアクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2007-118596に則ったウレタンアクリレートオリゴマーを用いてもよい。」
(ク)「【0067】
表面保護層に含まれるフィラーとしては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)等の無機粒子;アクリル、架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素- ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロン等の有機材料パウダーないしビーズ等が挙げられる。フィラーとして好ましいのは、シリカ及びアクリルビーズからなる群から選ばれた少なくとも1種である。なお、前記フィラーは、1種又は2種以上使用することができる。
【0068】
フィラーの平均粒径は、少なくとも表面保護層の厚み以上であり、後述する耐傷性を保持する為には「表面保護層の厚み+40μm」未満であることが好ましく、「表面保護層の厚み+30μm」以下であることがより好ましい。なお、フィラーの平均粒径と表面保護層の厚みが等しいとき、表面保護層にはフィラーにより形成される凸部が存在しない(つまり、フィラーにより形成される凸部の厚みが0μmである)場合もあれば、フィラーにより形成される凸部が存在する場合もある。」
(ケ)「【0083】
電離放射線硬化型樹脂による表面保護層の形成方法については、公知の方法に従えば良い。例えば、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、これをグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布すれば良い。この場合の前記組成物の塗布量としては、特に限定されず、表面保護層の厚みが上記範囲になるよう適宜設定すればよい。」
(コ)「【0087】
(プライマー層)
プライマー層を設けることにより、前記表面保護層の形成を容易にすることができる。前記プライマー層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。」
(サ)「【0099】
化粧板
本発明の化粧板は、前記化粧シートの表面保護層が最表面層となるように前記化粧シートが被着材上に積層されてなる。
【0100】
被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、本発明化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
(中略)
【0103】
本発明の化粧シートは、対象が軽量物においても防滑性に優れ、かつ防滑性の低下が抑制されている。よって、本発明の化粧シートを積層した化粧板は、各種の建材、家具等に用いることができる。特に、本発明の化粧板は、床用化粧材として好適に用いることができる。」
(シ)「【0116】
<<方法(防滑性評価 犬)>>
防滑性(犬)を確認した。具体的には、各化粧シートをフロア加工し、小型犬及び中型犬に対して、歩行、通常走行、眺躍、及び反復運動をさせた。また、汎用木質フロアについても、同様の行動をさせた。結果を表1、2に示す。なお、評価方法は以下の通りである。」
イ 甲1発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「化粧シートに表面の防滑性を付与する目的で、熱可塑性ポリマーを表面に散在露出させた床材が提案されている(特許文献1:特開2001-254504号公報)が、特許文献1の床材(化粧板)を、軽量物に対して使用した場合、防滑性に劣ることを背景技術としたものであり、(【0004】、【0005】)
化粧シートの表面保護層が最表面層となるように化粧シートが被着材上に積層されてなる、床用化粧材として好適に用いることができる化粧板であって、(【0099】、【0103】)
被着材は、限定的でなく、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられ、(【0100】)
化粧シートは、最表面に前記表面保護層を有すればよく、具体的構成については化粧シートの用途等に応じて適宜設定すればよく、例えば、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層及びプライマー層のいずれかを有する化粧シートが挙げられ、(【0012】)
代表例とされる、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性熱可塑性樹脂層、プライマー層及び前記表面保護層を順に有する化粧シートは、(【0013】)
基材シートとしては、熱可塑性樹脂により形成されたシートが好適であり、基材シートの厚みは、20~300μmが好ましく、(【0015】、【0018】)
透明性熱可塑性樹脂層は、透明性のものであれば特に限定されず、(【0037】)
表面保護層は、耐擦傷性等の観点から、電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であり、(【0059】)
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用い、プレポリマー又はオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートを用いてもよく、(【0060】、【0061】)
電離放射線硬化型樹脂による表面保護層の形成方法は、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、周知の塗布法で塗布すれば良く(【0083】)、
表面保護層の最大高さRzは、JIS B0601(2001)表面粗さの規格に準拠しているものであり、より好ましくは20~50μmであり、(【0048】、【0052】)
表面保護層のRzは、フィラーを含有する、エンボス加工を行う等により、適宜設定することができ、(【0057】)
表面保護層に含まれるフィラーとしては、無機粒子が挙げられ、(【0067】)
フィラーの平均粒径は、少なくとも表面保護層の厚み以上であり、フィラーの平均粒径と表面保護層の厚みが等しいとき、フィラーにより形成される凸部が存在する場合もある、(【0068】)
化粧板。」
(2)甲3-1
ア 甲3-1の記載
甲3-1には以下の記載がある。
(ア)「A:表面粗さに関するJIS規格は,国際規格(ISO規格)に整合化することを目的として,2001年にJIS B 0601を含む6つの規格が改正されました。一般に,使用頻度の高いパラメータは中心線平均粗さRa,最大高さRy,十点平均粗さRzと思われますので,これらに関して内容をお知らせします。改正されたポイントは,主に以下の3点です。
○1旧規格の最大高さRyが,最大高さ粗さRzに変更された。十点平均粗さRzは規格から削除され,付属書に移された。
○2最大高さ粗さをRzとし,十点平均粗さをRzjisとして区別する。
○3パラメータを求める輪郭曲線は,断面曲線,粗さ曲線,うねり曲線に分け,それぞれに断面曲線パラメータ(頭文字P),粗さパラメータ(頭文字R),うねリパラメータ(頭文字W)を規定する。」(当審注:○1等は数字を○で囲む文字を表す。以下同様。)(5頁右欄4-21行)
イ 甲3記載技術
上記アより、甲3-1には、次の技術的事項(以下「甲3記載技術」という。)が記載されている。
(甲3記載技術)
「表面粗さに関するJIS規格は,国際規格(ISO規格)に整合化することを目的として,2001年にJIS B 0601を含む6つの規格が改正され,旧規格の最大高さRyが,最大高さ粗さRzに変更されたこと。」
(3)甲4
ア 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、床、壁、天井などの表面仕上げ材、柱や家具、キャビネット、自動車内装などの化粧材、各種造作材などに使用される木質仕上げ材用の塗料組成物に関する。及び、この塗料組成物を塗布してなる表面塗装木質材に関する。」
(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の結果、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物と微粒子状物質を組み合わせることで、耐汚染性が良好で、且つ、この性能が長期間に亘って持続し、さらに、表面の滑りを抑制し、転倒や倒壊の危険性を低減可能なことを見出し、本発明に至った。
【0006】すなわち本発明は、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)、微粒子状物質(B)を含有することを特徴とする木質材用塗料組成物を提供する。さらに、本発明は、前記した木質材用塗料組成物の硬化塗膜が木質材表面に形成されていることを特徴とする表面塗装木質材を提供する。
(中略)
【0008】本発明のシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、インキおよび塗料等に使用されている各種シリコーン化合物の中で、活性エネルギー線照射により重合可能な官能基によって変性された化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン変性不飽和ポリエステル、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン変性エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ変性シリコーン、ビニル変性シリコーン等が挙げられる。この中で好ましくは(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン変性エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン変性ポリエステル(メタ)アクリレートである。これらシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、上記化合物を単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。」
(ウ)「【0020】本発明で言う活性エネルギー線とは、電子線、紫外線あるいはγ線の如き、電離性放射線や電磁波などを総称するものである。また、紫外線を照射して硬化させる場合には、必要に応じて、紫外線の照射によりラジカルや酸を発生する光(重合)開始剤をシリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)と反応性希釈剤の合計100質量部に対して0.1~20質量部程度添加することが好ましい。」
イ 甲4記載技術
上記アより、甲4には、次の技術的事項(以下「甲4記載技術」という。)が記載されている。
(甲4記載技術)
「シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)、微粒子状物質(B)を含有する、床などの表面仕上げ材用の塗料組成物において、活性エネルギー線は、電離性放射線であり、シリコーン変性活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、シリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートであり、耐汚染性が良好で、且つ、この性能が長期間に亘って持続し、さらに、表面の滑りを抑制し、転倒や倒壊の危険性を低減可能であること。」
(4)甲5
ア 甲5の記載
甲5には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、床、壁、天井などの表面仕上材、或いは柱や家具、システムキッチン及びキャビネットなどの化粧材、自動車の内装材、更には各種造作の表面材などとして使用される木質仕上げ材に、耐久性、耐汚染性、耐傷付き性に優れた塗膜を形成することができる木質仕上材用塗料、及び、このような木質仕上材用塗料を最表面に塗布して耐久性、耐汚染性、耐傷付き性を高めた表面塗装木質仕上材に関する。」
(イ)「【0006】本発明の木質仕上材用塗料は、ベースポリマーがシリコーン変性ウレタン樹脂であるため、シリコーンによる撥水性が発現され、塗膜の耐汚染性、耐傷付き性、耐久性に優れる。
(中略)
【0008】本発明におけるベースポリマーのシリコーン変性ウレタン樹脂は塗工の前にポリオール成分とイソシアネート成分を混合し、硬化させる2液タイプのものでも良いが、製造の段階でポリオール成分とイソシアネート成分を反応させ、ウレタン構造を形成した1液タイプのものでも良い。ただし、1液タイプのものは塗工後、紫外線硬化又は電子線硬化が必要なため、シリコーン変性ウレタン樹脂の分子構造に2重結合を含むことが必要で、シリコーン変性ウレタン樹脂が主鎖末端及び/又は側鎖末端にアクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基を持つことが好ましい。」
イ 甲5記載技術
上記アより、甲5には、次の技術的事項(以下「甲5記載技術」という。)が記載されている。
(甲5記載技術)
「シリコーンによる撥水性が発現され、塗膜の耐汚染性、耐傷付き性、耐久性に優れる、ベースポリマーがシリコーン変性ウレタン樹脂である、床などの表面仕上材用塗料において、
ベースポリマーのシリコーン変性ウレタン樹脂はウレタン構造を形成した1液タイプのものでも良く、1液タイプのものは塗工後、紫外線硬化又は電子線硬化が必要なため、シリコーン変性ウレタン樹脂の分子構造に2重結合を含むことが必要で、シリコーン変性ウレタン樹脂が主鎖末端及び/又は側鎖末端にアクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基を持つことが好ましいこと。」
(5)甲6
ア 甲6の記載
甲6には以下の記載がある。
(ア)「【0130】
本発明の加飾樹脂成形品は、耐薬品性に優れており、低艶感が表出された意匠性を有しており、複雑な形状にも成形可能であるので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;幅木、回縁等の造作部材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。」
(イ)「【0121】
2.加飾樹脂成形品
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに射出樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも射出樹脂層、基材層、プライマー層、及び表面保護層を順に有しており、当該表面保護層が、艶消し剤及び電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、且つプライマー層が疎水処理シリカ粒子を含有していることを特徴とする。」
(ウ)「【0090】
シリコーン変性ウレタンアクリレート
電離放射線硬化性樹脂として使用されるシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、ウレタン(メタ)アクリレートの側鎖の一部をシリコーンで変性させた化合物であればよい。」
イ 甲6記載技術
上記アより、甲6には、次の技術的事項(以下「甲6記載技術」という。)が記載されている。
(甲6記載技術)
「床等の建築物の内装材として利用することができる、耐薬品性に優れた加飾樹脂成形品において、加飾樹脂成形品は、少なくとも表面保護層を有しており、表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物から形成されており、電離放射線硬化性樹脂としてシリコーン変性ウレタン(メタ)アクリレートが使用されること。」
(6)参考資料1
ア 参考資料1の記載
申立人が令和5年10月31日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)に添付して提出した参考資料1(和坂 英雄、富田 芳朗「可塑剤用途の現場から7 床材の現場」、可塑剤インフォメーション 5~7頁 可塑剤工業会、平成10年4月)には以下の記載がある(枠は申立人が付与した)。
(ア)「
[図:0001411286000001.jpg]
」(5頁)
(イ)「
[図:0001411286000002.jpg]
」(6頁)
(7)参考資料2
ア 参考資料2の記載
申立人が申立人意見書に添付して提出した参考資料2(特開2001-254504号公報)には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防滑性床材と、その製造方法に関するものであり、より詳しくは、表面が実質的に平坦,平滑であることにより清掃性に優れていながら、良好な意匠的な外観模様を付与することが可能な構成を有する防滑性床材、及びこれを製造する方法に関するものである。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来から、ポリ塩化ビニル(以下単に「塩ビ」という)を主体とした合成樹脂製の床面形成素材、一般的には矩形状のシート床材や、長尺状の床材が用いられており、オフィスビル、病院や学校、老人ホーム、或いは電車やバス等の車両の床材として広く使用されている。このような塩ビを主体とした合成樹脂製床材は、通常の状態で比較的滑りにくいものであるが、病院や老人ホーム、或いは電車やバス等の床面、或いは傾斜がある通路など、特に防滑性が要求される場合には、より滑り難くすることが求められるので種々の方法で床材表面の防滑性を高めるための工夫が従来からされている。
【0003】このような工夫の代表的なものとしては、例えば床材表面に深いエンボスを施してその凹凸によって高い防滑性を得る方法や、細かな砂や石等の硬度の高い粒子を床材に埋設して表面層から突起状に突出させることで高い防滑性を付与する方法、更には特開昭59-8869号公報で提案されているように、ポリウレタンや合成ゴム等の粒子を塩ビマトリックス内に分散させることでより高い防滑性を付与する方法が提案されている。」
(ウ)「【0014】また本発明の別の目的は、耐汚れ性が劣るという不具合の影響をできるだけ少なくすることができてかつ清掃性に優れた床材を提供するところにある。」
(エ)「【0035】上記構成を有する上記発明の防滑性床材は、床材表面に露出した相対的に滑り抵抗が大きくかつショアA硬度が20~90という柔軟なポリマー(B)領域の優れた防滑性と、相対的に滑り抵抗係数の小さいポリマー(A)の領域の汚れにくさとを利用できるように、上記の各領域を所定の表面積割合で散在させたことで、異なるポリマー素材が複合化して床材表面を形成し、防滑性と耐汚れ性の両方を調和して満足でき、柔軟性が良好であるため転倒しても擦過傷の恐れの無い防滑性床材が提供される。すなわち、従来のエンボス床材等とは異なり、実質的に平坦な表面を有するものでありながら、全体として滑り抵抗が大きい状態が確保され、また当該表面を含む層が柔軟である状態をも確保して、優れた防滑性と十分な安全性の確保を両立させることができる。」
(オ)【0041】本発明の防滑性床材の厚みは特に限定されないが、1.0~5mm程度が一般的である。また、床材の形状は、タイル、長尺シート等、通常の床材に使用されているものが適用できる。また、本発明の防滑性床材は表面が平滑で優れた防滑性を示すものであるが、意匠付与の目的や、より防滑性を高めるため表面に凹凸のエンボスを施すことも可能である。」
(カ)「【0049】(熱可塑性ポリマー組成物粒子の作製)上記1~5の熱可塑性ポリマー組成物を押出機またはロールを用いて厚さ1.0mmのシートを成形し、これらをパンチ網4mmの粉砕機にて破砕し、ポリマー粒子を作製した。
(実施例及び比較例の床材の作製)表1、表2の熱可塑性ポリマー組成物(A)及び(B)を、表3,表4の基材を用い、表中の混合比の条件にて実施例1~7、及び比較例1~5の床材を作製した。それぞれの床材の製造方法は、基材上に混合したポリマー粒子を必要厚さに展延して載置後、熱風オーブンにて加熱し、熱可塑性ポリマー組成物が柔軟化した状態で表面をロールで押圧し(加工温度150℃~160℃)、表面が平滑な総厚3.0mmの床材を得た。なお、これらの床材について防滑性、耐汚れ性、耐久性及び加工性の評価を行った。結果を下記表3,表4に示した。
【0050】なお、上記表中の防滑性、耐汚れ性、耐久性及び加工性は下記により評価した。また表中の基材は下記の○1~○3とした。
(基材)
○1:ポリ塩化ビニル樹脂製シート
○2:エチレン酢酸ビニル樹脂製シート
○3:ポリエステル不織布
(防滑性):歩行による官能試験で評価した。
【0051】
◎:防滑性に特に優れる
〇:防滑性に優れる
×:防滑性に劣る
(中略)
(耐汚れ性):歩行量の多い場所に1ヶ月施工し、汚れ度合を目視評価した。
【0052】
〇:汚れが目立たない
△:若干汚れが目立つ
×:汚れが目立つ」
(キ)「【0053】
【表3】
[図:0001411286000003.jpg]
」
(ク)上記(カ)の記載を踏まえると、上記(キ)の表3からは、ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した床材について防滑性と耐汚れ性を評価したところ、防滑性が○(防滑性に優れる)、耐汚れ性が◎であった床材(実施例1)、防滑性が◎(防滑性に特に優れる)、耐汚れ性が○(汚れがめだたない)であった床材(実施例2)が得られたことが読み取れる。
(ケ)「【0055】
【発明の効果】本発明の防滑性床材は、滑り抵抗係数が0.4~0.9の領域(A)が防汚性に優れ、また、滑り抵抗係数が1.2以上の領域(B)が防滑性に優れ、これらの(A),(B)の領域がそれぞれ面として作用することで、従来得られなかった防滑性と防汚性を兼ね備えた表面特性を得ることができる。また、(B)の領域のショア硬度を20~90とすることで柔軟性に優れ、転倒時に擦過傷の虞れのない床材とすることができる。」
イ 参考2記載技術
上記アより、参考資料2には、次の技術的事項(以下「参考2記載技術」という。)が記載されている。
(参考2記載技術)
「防滑性床材を、耐汚れ性が劣るという不具合の影響をできるだけ少なくすることができてかつ清掃性に優れた床材とするようにしたものであり、
床材の形状は、タイル、長尺シート等、通常の床材に使用されているものが適用でき、
より防滑性を高めるため表面に凹凸のエンボスを施すことも可能であり、
ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した、床材。」
(8)参考資料3
ア 参考資料3の記載
申立人が申立人意見書に添付して提出した参考資料3(特開2005-290568号公報)には以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、床材用化粧シート及びそれを用いた床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の床材用化粧シートの構成材料として、ポリ塩化ビニル樹脂シートが多用されている。ポリ塩化ビニル樹脂シートを用いる場合には、可塑剤の添加量を調整することにより、シート硬度(硬質~軟質)を容易に調整でき、しかもエンボス加工を容易に施せるという利点がある。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時に有害な黒鉛、塩素系ガスを放出するおそれがあるため、近年では、ポリ塩化ビニル樹脂に代えて、焼却時に塩素系ガスを放出しないポリオレフィン系樹脂が用いられるようになってきている。
【0004】
ポリオレフィン系樹脂を用いた床材用化粧シートとしては、例えば、特許文献1及び2に、ポリオレフィン系樹脂からなるバッカー層の上に、片面に印刷模様層及びプライマー層を順に形成した印刷シートを積層し、さらに印刷シート上にアイオノマー樹脂からなるクリアシートを積層し、バッカー層/印刷シート/クリアシートからなる3層を同時に熱ラミネートしてなる床材用化粧シートが開示されている。このような床材用化粧シートは、バッカー層側を各種被着材に貼着して床用化粧材として用いられている。なお、バッカー層とは、床材用化粧シートに硬度、強度等を付与するために形成される補強層である。
【0005】
このようなバッカー層を有する床材用化粧シートは、所定の硬度、強度等を発現し易く、優れた耐衝撃性能を発揮する。
【0006】
しかしながら、バッカー層を有する床材用化粧シートの作製では、バッカー部分をそれ以外の部分(例えば、印刷シート)に貼り合わせる工程が必要であり、該工程では製品ロスが発生し易い傾向がある。
【0007】
従って、バッカー層を形成しなくても所定の硬度、強度等を発揮する床材用化粧シートの開発が望まれている。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バッカー層を形成しなくても、バッカー層を形成する場合と同程度の耐衝撃性能を発揮する床材用化粧シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の層構成からなる床材用化粧シートが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(イ)「【0068】
床用化粧材
本発明の床材用化粧シートは、各種被着材と接合することにより、床用化粧材とできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0069】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0070】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0071】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0072】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0073】
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。」
(9)参考資料4
ア 参考資料4の記載
申立人が申立人意見書に添付して提出した参考資料4(長尺塩ビシート,[online],最終更新日2002/09/18,三井住友信託銀行グループ三井住友トラスト不動産,[令和5年2月2日出力],インターネット<URL:https://smtrc.jp/useful/glossary/detail/n/608>)には以下の記載がある。
(ア)「長尺塩ビシート
読み:ちょうじゃくえんびしーと
プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいない、幅の広いロール状のプラスチックシートのことを「長尺塩化ビニルシート」または「長尺塩ビシート」と呼んでいる。
「長尺塩ビシート」は、ロール状であるため大きな床面の仕上げに適しており、同時に硬質で耐久性・耐摩耗性に優れている。このため、学校、病院、オフィスなどでよく使用されている。」
イ 参考4記載技術
上記アより、参考資料4には、次の技術的事項(以下「参考4記載技術」という。)が記載されている。
(参考4記載技術)
「長尺塩ビシートと呼ばれる、プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいない、幅の広いロール状のプラスチックシート、はロール状であり、よく使用されているものであること。」
(10)参考資料5
ア 参考資料5の記載
申立人が申立人意見書に添付して提出した参考資料5(特開2014-84684号公報)には以下の記載がある。
(ア)「【0012】
[床材の基本的構成]
図1は、本発明の床材の1つの実施形態を示す平面図であり、図2は、その床材を厚み方向で切断した断面図の拡大である。
図1及び図2において、本発明の床材1は、床材本体2と、前記床材本体2の上に設けられた表層3と、前記表層3の上に設けられた表面保護層4と、を有する。
必要に応じて、床材本体2と表層3の間に、化粧層24が設けられる。
表層3には、反応性可塑剤が含まれており、その反応性可塑剤が表面保護層4の硬化性樹脂と重合することにより、表面保護層4が表層3に強度に密着している。
【0013】
図示例の床材1は、平面視長尺帯状に形成されている。長尺帯状は、一方向の長さが他方向(他方向は一方向に対して直交する方向)の長さに比して十分に長い長方形状であり、例えば、一方向の長さが他方向の長さの2倍以上、好ましくは4倍以上である。長尺帯状の床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。もっとも、本発明の床材1は、長尺帯状に限られず、平面視正方形状などの枚葉状に形成されていてもよい(図示せず)。
【0014】
(床材本体)
床材本体2は、床材1の強度及び重量を構成する主たる部分である。
本発明では、床材本体2は、主として合成樹脂から形成されている。もっとも、床材本体2は、合成樹脂以外を用いて形成することもできる。
前記床材本体2は、例えば、樹脂層22を有し、必要に応じて、前記樹脂層22の裏面に基材層21が設けられ、さらに、前記樹脂層22内には、形状安定化層23が設けられる。
(中略)
【0017】
前記樹脂層22は、基材層21の表面側に積層される。
前記樹脂層22の合成樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂;オレフィン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂;アミド樹脂;エステル樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。優れた可撓性を有し、さらに、表層3と強固に密着することから、塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂層が好ましい。塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂層22を有する床材1は、柔軟性に優れているので、歩行感が良好であり、さらに、湾曲させながら床面(床材を敷設する施工面)に施工できる。また、塩化ビニル樹脂は、安価である上、これを用いると、床材1の製造も簡易となる。
前記樹脂層22には、通常、上記樹脂以外に各種添加剤が含まれる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。」
(イ)「【0020】
前記形状安定化層23としては、不織布又は織布などを用いることができる。不織布及び織布を構成する繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。床材1の寸法安定性を高めることができ、有機繊維に比べて極めて寸法変動が少ない上、樹脂との馴染みも良いことから、形状安定化層23として、ガラス繊維不織布を用いることが好ましい。さらに、形状安定化層23としてガラス繊維不織布を用い且つ基材層21としてポリエステル繊維からなる不織布を用いると、ガラス繊維不織布が床材全体の寸法安定性に大きく寄与し且つポリエステル繊維不織布が床材の反りを防止するので、寸法安定性を失うことなく、施工後の反り上りも生じない、安定した床材1を得ることができる。」
(ウ)「【0040】
[本発明の床材の製造方法]
本発明の床材は、例えば、次の工程を経て製造することができる。
(床材本体の形成工程)
床材本体の形成工程は、床材本体を形成する工程である。
例えば、樹脂層形成材料を、展開用フィルムなどの展開面に塗布して塗膜を形成する。化粧層を設ける場合には、前記展開用フィルムとして、上述の樹脂チップとが混合された熱可塑性樹脂層、所要の着色又は印刷の施された樹脂フィルムなどが用いられる。
形状安定化層を設ける場合には、前記樹脂層形成材料の塗膜の上に、形状安定化層となる不織布などを積層し、その上から、前記樹脂層形成材料を重ね塗布して塗膜を形成する。さらに、基材層を設ける場合には、その塗膜の上に、基材層となる不織布などを積層する。
このようにして、基材層、樹脂層、形状安定化層、樹脂層及び化粧層が順に積層された未固化の床材本体を得ることができる。
(中略)
【0042】
(表層の形成工程)
表層の形成工程は、前記未固化の床材本体の表面に表層を形成する工程である。
例えば、表層形成材料を前記化粧層の表面に塗布して塗膜を形成する。
表層形成材料は、前記表層の欄で述べたような、熱可塑性樹脂、反応性可塑剤を含む可塑剤及びその他の成分からなり、好ましくは、塩化ビニル樹脂ペースト、反応性可塑剤、非反応性の可塑剤及びその他の成分からなる。
反応性可塑剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部~20質量部配合され、好ましくは2質量部~10質量部配合される。非反応性の可塑剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、9質量部~80質量部配合され、好ましくは18質量部~50質量部配合される。
前記表層形成材料は、その粘度が3000Pa・s~8000Pa・sであるものが好ましい。かかる粘度の表層形成材料は、良好に塗布できる上、表面保護層と強固に密着する。
(中略)
【0044】
(床材本体の固化工程)
床材本体の固化工程は、未固化の床材本体を硬化させる工程である。
熱可塑性樹脂が樹脂ペーストである場合には、前記未固化の床材本体の表面上に、表層形成材料の塗膜を形成した後、その全体を加熱することにより、樹脂層形成材料の塗膜及び表層形成材料の塗膜をプリゲル化できる。加熱手段は特に限定されないが、例えば、電熱ヒーターなどが挙げられる。
なお、この段階では、反応性可塑剤は、それ自身重合していない。
【0045】
加熱温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル系樹脂ペーストである場合には、好ましくは130℃~170℃であり、より好ましくは140℃~160℃である。
加熱時間は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル系樹脂ペーストである場合には、好ましくは40秒~65秒であり、より好ましくは45秒~60秒である。
加熱温度が低すぎる又は加熱時間が短すぎると、プリゲル化が十分に行われず、次の工程で破損するおそれがある。加熱温度が高すぎる又は加熱時間が長すぎると、塗膜の表面が完全に固化し、次の工程において表面保護層を一体的に積層接着できないおそれがある。
【0046】
(表面保護層の形成工程)
表面保護層の形成工程は、前記表層の表面上に表面保護層を形成する工程である。
例えば、表面保護層形成材料を前記表層の表面に塗布して未硬化の塗膜を形成する。
表面保護層形成材料は、前記表面保護層の欄で述べたような、硬化性モノマー又はオリゴマー及びその他の成分からなり、これらが溶剤に溶解又は分散されている。
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタノン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
【0047】
前記表面保護層形成材料は、前記硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が、固形分濃度で80~95質量%含まれていることが好ましい。
また、前記表面保護層形成材料を良好に塗布できるようにするため、表面保護層形成材料の粘度は1500Pa・s~3000Pa・sが好ましい。粘度の調整は、溶剤の量によって行うことができる。
前記表面保護層形成材料を塗布して得られた、未硬化の塗膜を、必要に応じて乾燥し、その塗膜から溶剤を揮発させる。
【0048】
前記表面保護層形成材料として、市販の硬化性樹脂を含む組成物(硬化性樹脂塗料など)を用いてもよい。
前記市販の組成物は、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくとも何れか一方と光重合開始剤とを含み、さらに、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤及びチクソトロピー化剤などから得らばれる少なくとも1種の添加剤が含まれている。かかる市販の組成物は、そのまま又は必要に応じて粘度調製をした上で、表層に塗布することにより、前記未硬化の塗膜を形成できる。
前記市販の組成物としては、代表的には、紫外線硬化性の樹脂組成物が挙げられ、具体的には、例えば、オーレックス(中国塗料(株)製)、アデカオプトマー(旭電化工業(株)製)、コーエイハード(広栄化学工業(株)製)、セイカビーム(大日精化工業(株)製)、EBECRYL(ダイセル・サイテック(株)製)、ユニディック(DIC(株)製)、サンラッド(三洋化成工業(株)製)などが挙げられる。
(中略)
【0050】
以上のようにして、表面保護層、表層及び床材本体がそれぞれの界面において強固に接着した、本発明の床材を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、表面保護層を硬化させること、及び、表面保護層の硬化性樹脂と表層の反応性可塑剤とを重合させることを、1つの処理にて行うことができるので、比較的簡易に床材を製造できる。」
イ 参考5記載技術
上記アより、参考資料5には、次の技術的事項(以下「参考5記載技術」という。)が記載されている。
(参考5記載技術)
「平面視長尺帯状に形成されている床材1であって、長尺帯状の床材1は、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用されるものであり、
長尺帯状に限られず、平面視正方形状などの枚葉状に形成されていてもよい床材1において、
床材1の強度及び重量を構成する主たる部分である床材本体2は、樹脂層22を有し、樹脂層22内には、形状安定化層23が設けられ、形状安定化層23としてガラス繊維不織布を用いると、ガラス繊維不織布が床材全体の寸法安定性に大きく寄与すること。」
2 本件発明1
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 本件発明1の「床材本体」が「含む」「柔軟性を有する樹脂層」と甲1発明の「化粧シート」が有する「20~300μm」の「厚み」の「熱可塑性樹脂により形成されたシート」とは、「柔軟性を有する樹脂層」の点で共通する。また、甲1発明は、本件発明1の「前記樹脂層は、合成樹脂成分を含有し、」に相当する構成を備えるといえる。
イ 本件発明1の「床材本体」が「含む」「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」と甲1発明の「化粧シート」が有する「透明性熱可塑性樹脂層」とは、「樹脂を含む」「層」の点で共通する。
ウ 本件発明1の「前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層」と甲1発明の「化粧シート」の「最表面層」であって「電離放射線硬化型樹脂を樹脂架橋することにより形成される電離放射線硬化型樹脂層であ」る「表面保護層」は、表面保護層が「電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、周知の塗布法で塗布す」る「形成方法」により形成されるものであるから、「塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層」の点で共通する。また、甲1発明は、本件発明1の「前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含」むことに相当する構成を備えるといえる。
エ 甲1発明の「床用化粧材として好適に用いることができる化粧板」において、「被着材」として挙げられたもののうち「木質材」以外を選択したものは、本件発明1の「床材(但し、木材を含む床材を除く)」に相当する。
オ 本件発明1の「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」「を含」むことと、甲1発明の「表面保護層」の「電離放射線硬化型樹脂」が「ウレタン(メタ)アクリレート」であることとは、「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂」「を含」む点で共通する。
カ 甲1発明の「電離放射線硬化型樹脂層であ」る「表面保護層」が「Rz」を「適宜設定することができ」るように、「無機粒子」である「フィラーを含有する」ことは、本件発明1の「前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、」「防滑性粒子」を含むことに相当する。
キ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「柔軟性を有する樹脂層、樹脂を含む層、塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する床材であって、前記樹脂層は、合成樹脂成分を含有し、前記表面保護層は、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、防滑性粒子とを含む、床材(但し、木材を含む床材を除く)。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
床材が、本件発明1は、「柔軟性を有する樹脂層及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体と、前記表層上に塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有する」とされるのに対し、甲1発明は、「透明性熱可塑性樹脂層」(「樹脂を含む層」、本件発明1の「表層」に対応)が、可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含むものと特定されず、また、「熱可塑性樹脂により形成されたシート」(「柔軟性を有する樹脂層」)、「透明性熱可塑性樹脂層」(「樹脂を含む層」)、「表面保護層」(「表面保護層」)を備えるものの、「熱可塑性樹脂により形成されたシート」及び「透明性熱可塑性樹脂層」は、「被着材」に「積層」されて「床用化粧材として好適に用いることができる化粧板」となる「化粧シート」が備えるものであって、「床材本体」が「柔軟性を有する樹脂層及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含」むものとされておらず、「表面保護層」も「床材本体」が含む「表層」の上(「表層上」)に「塗布され」て形成されたものではない点。
(相違点2)
「床材」について、本件発明1は、「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。
(相違点3)
「電離放射線硬化性樹脂」について、本件発明1は、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含むとされるのに対し、甲1発明は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を使う示唆はあるものの、「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とまでは特定されていない点。
(相違点4)
本件発明1は「表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である」のに対し、甲1発明は、「表面保護層の最大高さRzは、JISB0601(2001)表面粗さの規格に準拠しているものであり、より好ましくは20~50μmであ」る点。
(相違点5)
本件発明1は、床材が「靴底に対する防滑及び防汚用」であるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。
(2)判断
ア 本件発明1について
本件発明1は、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含む「電離放射線硬化性樹脂組成物」により形成され、「前記電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物」と「防滑性粒子」を含む「表面保護層」を、「柔軟性を有する樹脂層及び可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層を含む床材本体」の「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」の上に「電離放射線硬化性樹脂組成物」を「塗布」して形成し、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する「床材」としたものである。本件発明1は、上記相違点1~3を含む本件発明1に係る発明特定事項により、本件特許明細書の段落【0012】等に示されるような防汚性及び汚染除去性に優れ、防滑性のある床材を、長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する床材において実現することができたものであるといえる。
特に、ビニル系の素材はゴム靴底と接触した際のヒールマークが付きやすいものであるところ、本件発明1は「可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む表層」の上に「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」を含む「電離放射線硬化性樹脂組成物」が塗布され硬化させて形成された「電離放射線硬化性樹脂組成物」の「硬化物」を含む「表面保護層」により保護してヒールマークがつきにくいものとするとともに、「表面保護層」が含む「防滑性粒子」によって滑りにくくすることで、靴底に対する防滑及び防汚用に適した、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する「床材」としたものである。
本件発明1を上記のように認識したうえで、甲1発明から出発して本件発明1とすることが当業者が容易のなし得たものであるといえるかを検討するべく、以下、甲1発明と本件発明1との相違点について検討する。
イ 相違点1について
甲1発明は、「熱可塑性樹脂により形成されたシート」及び「透明性熱可塑性樹脂層」を備える「化粧シート」を「被着材」に「積層」して「化粧板」とするものである。そうすると、「化粧シート」を「被着材」に「積層」して本件発明1の「床材」に相当するものとすることができれば、積層した化粧板(床材)のうち、表面保護層を除く部分が「床材本体」であると認定でき、表層が可塑剤を有する塩化ビニル樹脂を含む点を除き、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことということができる。
しかし、下記ウにおいて相違点2について検討するように、「被着材」について「化粧シート」が「積層」された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものを選択し、「化粧シート」を「被着材」に「積層」した「化粧板」が、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することは、甲1発明から当業者が容易になし得たこととはいえず、相違点1についても、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ウ 相違点2について
上記相違点2について検討する。
(ア)甲1発明は「被着材」について「限定的でなく」、「木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられ」るものとするものであるが、「被着材」が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するか否かは不明であって、「被着材」が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することについて記載ないし示唆されているとはいえない。
(イ)甲1には、「被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。」と記載される(上記1(1)ア(サ)段落【0100】)。当該記載は、文理上、「被着材」として「公知の化粧シートと同様のもの」を用いることができると解釈することもでき、このように解釈した場合、甲1発明の「化粧板」は、甲1発明の化粧シートと公知の化粧シートとを積層したものとなり、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する蓋然性が高いといえる。しかし、甲1が上記1ア(ア)において背景技術として明示するように、「化粧シートは、表面の保護、装飾等を目的として、木質板、プラスチック板等の表面に貼着して用いられ」ることが技術常識であり、化粧シート同士を積層して用いるものではない。そうすると、この「被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。」との記載は、公知の化粧シートが積層される被着材と同様の被着材を、甲1発明の化粧シートを積層する被着材として用いることができると解釈するのが自然である。そうすると、段落【0100】の記載を考慮しても、依然として、「被着材」について「化粧シート」が「積層」された際に「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することについて甲1に記載ないし示唆されているとはいえない。
(ウ)甲1が先行技術文献として提示する参考資料2には、従来の技術として、塩ビを主体とした合成樹脂製床材は、電車やバス等の床面等、特に防滑性が要求される場合があることが示されており、また、参考2記載技術は、ポリ塩化ビニル樹脂製シートの基材を用いて作成した床材を、耐汚れ性と防滑性とを有するものとするものであるといえる。しかし、参考資料2において防滑性と防汚性とを兼ね備えた床材は、床材表面の2のポリマーの性質と表面積割合を特定したことによって防滑性と防汚性とを兼ね備えることを開示するものであり、化粧シートを被着材と積層して長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する床材を得ることについて参考資料2に記載ないし示唆されるものではないから、甲1が参考資料2を先行技術文献として挙げており、参考2記載技術が長尺シート等とすることを示しているとしても、そのことをもって、甲1発明の「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することが記載ないし示唆されているとはいえない。
(エ)申立人は、「床材」が「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することについて、下記(3)に述べるように、参考資料1~5を示して主張をしているが、参考資料2については上記(ウ)において検討したとおりである。参考資料1、3~5について以下のa~dにおいて検討するが、参考資料1、3~5のいずれにも、「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとすることについて、記載ないし示唆があるとはいえない。
a 参考資料1には、塩化ビニルからなる床材が記載されている。参考資料1において、塩ビ床材としては、「コンポジションタイル」のような半硬質タイプのものと、「一般ビニル床シート」等が並列して挙げられる。このうち「一般ビニル床シート」等が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものであることが技術常識であるとしても、そのような床材が「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られることについては、参考資料1に記載も示唆もない。
b 参考資料3は、甲1と同じ出願人が出願した床材に関する発明であって、床材における被着材として「プラスチック系」と記載されているものの、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する床材については、甲1同様、記載も示唆もない。また、塩化ビニルを採用することについては、「ポリ塩化ビニル樹脂は、焼却時に有害な黒鉛、塩素系ガスを放出するおそれがあるため、近年では、・・・ポリオレフィン系樹脂が用いられるようになってきている。」(上記1(8)ア(ア))として、むしろ、塩化ビニルを採用しない方向を示すものである。
c 参考資料4には、長尺塩ビシートについて「塩化ビニル系の床材であって、・・・幅の広いロール状のプラスチックシート」であることが記載され、参考資料4からは、「塩ビシート」が「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する床材として、周知であるといえる。しかし、参考資料4には、「塩ビシート」を「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得ることについては記載も示唆もされていない。
d 参考資料5には、「長尺帯状の床材1」が「通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され」ることが記載されており、「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する床材は周知であったといえる。
しかし、参考資料5は、「基材層、樹脂層、形状安定化層、樹脂層及び化粧層が順に積層された未固化の床材本体」の表面に「表層を形成」し、「前記表層の表面上に」、「例えば、表面保護層形成材料を前記表層の表面に塗布して」「表面保護層を形成する」ものであって、「床材」を「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得ることについては記載も示唆もされていない。
(オ)以上のとおりであるから、甲1発明において、「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとし、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
エ 相違点3について
甲1発明において表面保護層の樹脂として挙げられるウレタン(メタ)アクリレート樹脂について、防汚性向上のために「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすること自体は、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
しかし、本件発明1において「表面保護層」は、「床材本体」が有する「表層」の上、すなわち「表層上」に「塗布された電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された」ものであるから、本件発明1の構成とするためには、甲1発明の「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものとし、その上でさらに、表面保護層の樹脂について、「シリコン変性」ないし「フッ素変性」がされた「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすることが必要である。
この前段の点について、上記イ及びウにおいて検討したように当業者が容易に想到し得たといえるものではなく、その上でさらに、表面保護層の樹脂について、「電離放射線硬化性シリコン変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および電離放射線硬化性フッ素変性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる少なくとも1種類」とすることも、当業者が容易になし得たことではない。
オ 相違点4及び5について
上記イ~エにおいて検討したとおり、相違点1~3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たものではないから、相違点4、5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明から出発して当業者が容易になし得たものではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張
相違点2(「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものである点)について、申立人は、令和5年9月12日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において、参考資料1~5を示し、概略以下の主張をする
(ア)甲1の段落【0100】には、甲1発明の被着材は限定的ではないと、明確に記載されている。塩化ビニルからなる床材は周知である(参考資料1、2)から、甲1発明の被着材のプラスチックは周知である塩化ビニルを容易に適用することができる。甲1の段落【0005】で引用する参考資料2は主にポリ塩化ビニルを主体とした床材の防滑性の向上を目的とした発明であり、甲1の発明開示内容を考慮する際には参考資料2の発明内容も考慮されるべきなので、甲1の段落【0100】の被着材のプラスチックは周知である塩化ビニルを容易に適用することができる。参考資料3によれば、甲1の段落【0100】の被着材のプラスチックはポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が含まれることは容易に考えつくことである。
(イ)甲1の段落【0006】に「特許文献1の床材(化粧材)」と記載され、特許文献1である特開2001-254504号公報(参考資料2)
の床材の形状は長尺シート等を含むものであるから、甲1の化粧板は長尺シートを含む。参考資料1~5に記載されているように化粧板を長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有するのは周知事項であり、甲1に適用することは容易に考えつくことである。
イ 主張の検討
(ア)上記ア(ア)について
相違点2は「床材は長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」するものである点であって、この点は、そのプラスチックが塩化ビニルか否か、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料か否かとは直接的には関与しないものであるから、上記申立人の主張は採用できない。また、「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」する「床材」を得ることは参考資料1~5に記載も示唆もされておらず、相違点2に係る本件発明1の構成を当業者が容易になし得たといえないことについては、上記(2)ウにおいて検討したとおりである。
(イ)上記ア(イ)について
上記(2)ウ(ウ)において検討したとおり、甲1が先行技術文献として提示する参考資料2は、化粧シートを被着材と積層して長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有する床材を得ることについて記載ないし示唆がされるものではないから、参考2記載技術が長尺シート等とすることを示しているとしても、そのことをもって、甲1発明の「化粧シート」と「被着材」とを積層することによって得られる化粧板を「長尺帯状とした際にロールに巻くことができる程度の柔軟性を有」することが記載ないし示唆されているとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、参考資料2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに他の構成を追加して限定したものであるから、上記1と同様の理由により、甲1発明、参考資料2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 申立人の主張する申立理由(特許法36条6項1号)
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項2は、発明の詳細な説明に記載されておらず、サポート要件違反に該当するとして異議申立てをしている。
具体的には、請求項2は請求項1を引用するところ、請求項1は「前記表面保護層の表面粗さRyが10以上50未満である」と特定し、【請求項2】は「前記防滑性粒子の平均粒子径と前記表面保護層の厚さとの比(粒子径μm/厚さμm)が0.1~1である・・・」と特定するが、発明の詳細な説明においては、本件明細書段落【0100】【表5】において「アルミナ粒子径(μm/表面保護層厚さ(μm))」が「1」であり、本件発明2の「前記防滑性粒子の平均粒子径と前記表面保護層の厚さとの比(粒子径μm/厚さ(μm)」が0.1~1である」に該当する「実施例2」及び「実施例3」は、本件明細書段落【0104】【表7】によると、そのRyがそれぞれ、「12.46」及び「13.49」であり、Ryの数値が上限である50程度となることについて技術的説明はされていない、というものである。
2 検討
上記申立理由について検討する。
(1) 本件明細書段落【0082】によれば「本明細書における表面粗さは、JIS B0601-1994に準じて表面粗さ測定機により測定されたものから算出される」ものであるところ、JIS B0601-1994によれば「最大高さ Ry」は「粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したもの」である。
(2)本件明細書段落【0066】、【0067】、【0085】及び【図4】には、以下の記載がある。
ア「【0066】
防滑性粒子5の形状は、楕円体や球などの球状、多角形、鱗片状、不定形等が挙げられるが、球状は、角が丸まっているので、防汚性と防滑性の両立の観点から好ましい。防滑性粒子5の平均粒子径は、好ましくは2μm~100μmであり、より好ましくは5μm~80μmであり、さらに好ましくは15μm~60μmである。防滑性を付与しつつも防汚性を阻害しない観点から、防滑性粒子5の平均粒子径と表面保護層4の厚さとの比(粒子径μm/厚さμm)は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.5~5であり、さらに好ましくは0.8~3である。本明細書における防滑性粒子5の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定により測定されたものを指す。これによって、表面保護層4の表面に微細な凹凸が形成され、防汚性と防滑性を両立させることができる。
【0067】
また、図4に示すように、防滑性粒子5は、防汚性の観点から、表面保護層4の中に埋没していることが好ましく、凸部においても、防滑性粒子5の表面に表面保護層4が薄く被覆している被覆部5aが形成されることが好ましい。防滑性粒子5が表面保護層4から露出してしまうと、露出した箇所において汚れが付着し易くなり、防汚性が悪化することとなる。たとえば、被覆部5aの厚みは、1μm~10μmであり、好ましくは、4~8μmである。被覆部5aの厚みが、下限値よりも小さいと、被覆部5aが剥がれ易くなり、上限値よりも大きいと、防滑性粒子5による凹凸の形成が困難となる。」
イ「【0085】
表面保護層4の厚さTは、特に限定されるものではないが、5~150μmが好ましく、10~70μmがより好ましく、15~40μmがさらに好ましい。本明細書において、表面保護層の厚さは、図4に示すように、防滑性粒子5により隆起した分の厚さを含むものではない。」
ウ 【図4】は以下のとおり。
「
[図:0001411286000004.jpg]
」
(3)段落【0066】、【0085】には、防滑性粒子と表面保護層4の厚さTの好適な寸法が例示されており、当業者であれば、【0067】及び【図4】を参照し、段落【0066】、【0085】の数値を参考に、表面保護層の厚さ、防滑性粒子径、被覆部の厚みを、表面粗さRy、すなわち最大高さが所定の範囲となるとともに、前記防滑性粒子の平均粒子径と前記表面保護層の厚さとの比(粒子径μm/厚さμm)が0.1~1となるように設定することができ、Ryを50程度とすることが格別困難であるといえる事情もない。
そうすると、表面保護層の厚さとの比(粒子径μm/厚さμm)が0.1~1の実施例において上限値の50程度のものが示されていないからといって、明細書に記載されたものではないとはいえるものではなく、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700417