特許異議申立
2023-700864
床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材
- 審判番号
- 2023-700864
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-076612
- 登録番号
- 7228326
- 請求日
- 2023年08月22日
- 審決日
- 2024年05月17日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ロンシール工業株式会社
- 【異議申立人】森村 実
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 北川 創
- 審判官 澤田 真治
- 分類
- P1651.121-YAA(E04F) / P1651.537-YAA(E04F) / P1651.841-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7228326号発明「床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7228326号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7228326号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7228326号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成31年4月12日に出願した特願2019-76612号であって、令和5年2月15日にその特許権の設定登録がされ、同月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年8月22日に特許異議申立人 森村実(以下「申立人」という。)より請求項1~4に対して特許異議の申立てがされ、同年11月7日付けで取消理由が通知され、令和6年1月4日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出され、同年2月27日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
令和6年1月4日に提出された訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)に記載された請求の趣旨は、「特許第7228326号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示すために合議体が付した。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝」
と記載されているのを、
「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
明細書の段落【0007】に
「 前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝に差し込まれる差込片とを有し、前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている床仕上げ構造である。」
と記載されているのを、
「 前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝に差し込まれる差込片とを有し、前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている床仕上げ構造である。」
に訂正する。
3 訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項1~4は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2) 訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝」について、「前記溝蓋受枠に隣接する」との用語が「床部」に係るのか、(床部に形成された)「凹溝」に係るのかが明らかでなかったものを、訂正後の請求項1において、「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝」と訂正することにより、「前記溝蓋受枠に隣接する」との用語が「凹溝」に係ることを明らかとしている。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アで検討したように、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書及び図面には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体が付した。)。
「【0013】
溝蓋受枠7に隣接する床部には、凹溝9が成形されている。凹溝9は溝蓋受枠7を段差6の立ち上がり部6-1に固定している固定手段8よりも上部に位置する。凹溝9はほぼ一定の深さで溝蓋受枠の周囲の床部に成形される。凹溝9が固定手段8よりも上部に位置するため、溝蓋受枠7を段差6の立ち上がり部6-1に固定した後に溝蓋受枠7の立ち上がり縁の外側側面に接する部分の床部3を切削して凹溝9を成形する際に、固定手段8が障害となることなく容易に成形可能となる。」
「【図1】
[図:0001413326000001.jpg]
」
本件特許明細書の【0013】には、凹溝9を成形する部位に関して、「溝蓋受枠7に隣接する床部に」、「溝蓋受枠の周囲の床部に」、「外側側面に接する部分の床部3を切削して」と記載され、床部「を」切削することにより、床部「に」凹溝が成形されることが示されていると認められる。
また、例えば、広辞苑第七版(2018年1月12日第一刷発行)によれば、「凹」とは、「物の表面が部分的にくぼんでいること。くぼみ。」を意味し、「溝」とは、「一般に、細長くくぼんだところ。」を意味するから、「凹溝」は、物の表面が細長くくぼんだところを意味するものと認められるところ、細長くくぼんだところを成形するには、相対的に低い細長い部分と、その両側に存在する相対的に高い部分が必要であることは明らかである。そうすると、訂正事項1において特定されている「床部に形成され」る「凹溝」とは、床部の相対的に低い細長い部分と、その両側の床部の相対的に高い部分によって形成されており、凹溝を形成する両側面(相対的に低い細長い部分の両側の相対的に高い部分)は床部であると解される。
一方、当該凹溝をなす領域が、上記床部の切削により形成される、溝蓋受枠7の立ち上がり縁と平行であり床部の上面に対して垂直となる床部の部位(以下「部位a」という。)と、床部に対する切削の最深部となる部位(以下「部位b」という。)とともに、溝蓋受枠7の立ち上がり縁から形成されるものとした場合には、床部「に」成形されるものは「凹溝9」ではなく、上記部位a及びbからなる「段部」となることは明らかであるから、上記の床部「に」凹部が成形されることは、図1に示されるのと同様に、「溝蓋受枠7の立ち上がり縁の外側側面に接する部分に」「床部3」が残存する部位(以下「部位c」という。)を備える態様を意味すると解することができる。
そうすると、訂正事項1の「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝」との事項は、上記の「部位a」、「部位b」及び「部位c」からなる凹溝9について、本件特許明細書の【0013】における、「床部に成形される」との記載、及び、当該凹溝が成形される部位に係る「溝蓋受枠7に隣接する床部」との記載に基づくものであるといえる。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3) 訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、訂正事項1と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4) 訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1~4に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)。
「【請求項1】
排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、
前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、
前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝に差し込まれる差込片とを有し、前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている床仕上げ構造。
【請求項2】
前記差込片の厚さaに対する前記差込片の差込深さbの比b/aが3.0以上7.0以下である請求項1に記載の床仕上げ構造。
【請求項3】
前記差込片が前記凹溝に接合材により固定されている請求項1または2に記載の床仕上げ構造。
【請求項4】
前記床仕上げ材と前記接合片とが樹脂溶接されている請求項1~3に記載の床仕上げ構造。」
第4 異議申立理由について
1 異議申立の概要
申立人が申し立てた特許異議申立の理由の概要は、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(進歩性)
本件発明1~4は、甲第1号証の記載から、又は甲第1号証及び甲第2号証の記載から、当業者であれば容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により、その特許は取り消されるべきである。
甲第1号証:特開2005-16140号公報
甲第2号証:タキロンシーアイ床材製品総合カタログ2018(第183、184、313、314、333、334頁)
甲第3号証:エービーシー商会建材総合カタログ2008(→1)2009(第59、60頁)[合議体による注:上記の「(→1)」は、右向きの三角黒塗り矢印である。]
甲第4号証:エービーシー商会建材総合カタログ2018(→2)2019(第63、64、301、302頁)[合議体による注:上記の「(→2)」は、矢印先端の上側にのみ戻りがついた右向き矢印である。]
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
(2) 申立理由2(明確性)
本件発明1~4は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないから、特許法第113条第4号の規定により、その特許は取り消されるべきである。
2 合議体の判断
(1) 申立理由1(進歩性)について
ア 各甲号証の記載
ア-1 甲1
(ア) 記載事項
甲1は、本件特許出願前に頒布された刊行物であって、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同じ。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、周囲の床面上に合成樹脂シートが敷設される排水溝路に用いる溝蓋受枠に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、厨房の床に形成される排水溝路は、該排水溝路の上部内縁に対向状に配設された溝蓋受枠上にグレーチング等の溝蓋を載置することにより、上部開口が通水可能に遮蔽されている。
【0003】
ところで、従来、厨房の床はモルタル又はコンクリート塗りの床が殆どであったが、近年、美観性,清潔性,防滑性に優れたポリ塩化ビニルを主体とする合成樹脂シートをモルタル又はコンクリートの床面上に敷設して仕上げるシート貼りの床が増えつつある。
【0004】
現在、かかる合成樹脂シートを排水溝路が形成された床面上に敷設する場合、合成樹脂シートの端縁と、排水溝路の上部内縁に配設された溝蓋受枠との突き合わせ部に生じる目地からの漏水を防止するために、次のような施工方法が用いられている。即ち、図8(イ)に示すように、床面fを構成するモルタル又はコンクリートmの打設によって上部内縁に溝蓋受枠bが配設された排水溝路aを形成した後、前記溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの外側面に接する部分のモルタル又はコンクリートmを、ダイヤモンドカッター等の回転円盤工具を用いて切削することにより、図8(ロ)に示すように、立ち上がり縁cの長手方向に沿う所定深さの凹溝dを連続状に形成する。然る後、図9に示すように、合成樹脂シートkと同一素材で形成した合成樹脂製L形アングルeの一片縁gを前記凹溝d内に装入し、予め充填された接着剤hで固定して該L形アングルeの他片縁jを外側方に突出させる一方、床面f上に敷設される合成樹脂シートkの端縁と、L形アングルeの他片縁jの端縁とを突き合わせた状態で、床面f上に予め塗布された接着剤nによって合成樹脂シートkの裏面及びL形アングルeの他片縁jの裏面を床面fに接着する。そして、合成樹脂シートkの端縁と、L形アングルeの他片縁jの端縁との突き合わせ部を公知の樹脂溶接手段によって水密状に溶着するようにしている。これにより、前記突き合わせ部には断面半円形の溶接部pが形成されることとなる。」
「【図8】
[図:0001413326000002.jpg]
」
「【図9】
[図:0001413326000003.jpg]
」
(イ) 認定事項
甲1の図8、図9には、
排水溝路の上部内縁に配設された溝蓋受枠bは、立ち上がり縁cの下端から水平方向内側に延びてその上にグレーチング等の溝蓋が載置される部分を有し、
凹溝dが、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い位置まで形成され、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い部分では、両側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分では、一方の側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、他方の側面が溝蓋受枠bの立ち上がり縁cで構成され、
L形アングルeの一片縁gが装入されるのは、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分までであること(以下「認定事項1」という。)
が示されていると認められる。
(ウ) 甲1発明
上記(ア)、(イ)によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「周囲の床面上に合成樹脂シートが敷設される排水溝路であって(【0001】)、
床面fを構成するモルタル又はコンクリートmの打設によって上部内縁に溝蓋受枠bが配設された排水溝路aを形成した後、前記溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの外側面に接する部分のモルタル又はコンクリートmを、ダイヤモンドカッター等の回転円盤工具を用いて切削することにより、立ち上がり縁cの長手方向に沿う所定深さの凹溝dを連続状に形成し、
合成樹脂製L形アングルeの一片縁gを前記凹溝d内に装入し、予め充填された接着剤hで固定して該L形アングルeの他片縁jを外側方に突出させる一方、床面f上に敷設される合成樹脂シートkの端縁と、L形アングルeの他片縁jの端縁とを突き合わせた状態で、床面f上に予め塗布された接着剤nによって合成樹脂シートkの裏面及びL形アングルeの他片縁jの裏面を床面fに接着し、合成樹脂シートkの端縁と、L形アングルeの他片縁jの端縁との突き合わせ部を樹脂溶接手段によって水密状に溶着し(【0004】)、
排水溝路の上部内縁に配設された溝蓋受枠bは、立ち上がり縁cの下端から水平方向内側に延びてその上にグレーチング等の溝蓋が載置される部分を有し、
凹溝dが、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い位置まで形成され、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い部分は、両側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分は、一方の側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、他方の側面が溝蓋受枠bの立ち上がり縁cで構成され、
L形アングルeの一片縁gが装入されるのは、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分までである(図8~9、認定事項1)
排水溝路。(【0001】)」
ア-2 甲2
(ア) 記載事項
甲2は、「タキロンシーアイ床材製品総合カタログ2018」との題名のカタログであって、背表紙に「2018年4月現在」と記載されていることから、遅くとも本件特許の出願前の2018年(平成30年)中に頒布された刊行物であると認められ、以下の事項が記載されている。
183頁
「
[図:0001413326000004.jpg]
」
184頁
「
[図:0001413326000005.jpg]
」
313頁
「
[図:0001413326000006.jpg]
」
314頁上部
「
[図:0001413326000007.jpg]
」
314頁左下部
「
[図:0001413326000008.jpg]
」
(イ) 認定事項
314頁左下部の「2.仮置き・裁断」に記載の図から、Lアングル抗菌埋め込み用の溝は、一方の側面が床、他方の側面がグレーチング受枠で構成されることがみてとれる(以下「認定事項2a」という。)。
また、同図に、グレーチング受枠固定用ボルト等よりも下の位置まで形成されているLアングル抗菌埋め込み用の溝が示され、313頁の「E.グレーチング廻り」「●L字アングル工法」及び314頁左下部の「1.下地の確認」において、グレーチング受金物(枠)に沿ってダイヤモンドカッターで目地切りすることが記載されているところ、Lアングル抗菌埋め込み用の溝をグレーチング受枠固定用ボルト等がある箇所で浅く形成することについての記載がないことから、甲2には、Lアングル抗菌埋め込み用の溝が、グレーチング受枠固定用ボルト等よりも下の位置まで形成されていることが示されていると認められる(以下「認定事項2b」という。)。
(ウ) 甲2記載事項
上記(ア)、(イ)によれば、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲2記載事項)
「グレーチング廻りのL字アングル工法において、
グレーチング受金物に沿ってダイヤモンドカッターで目地切りし、
専用接着剤を全面に塗布し、
L字アングル抗菌を目地切り部に埋め込み、
ネオセーフ抗菌を貼り付け、
床接着棒にて継目部を熱風溶接し(313頁)、
ネオセーフ抗菌は、特殊防滑性ビニル床シートであり(183頁)、
L字アングル抗菌は、ネオセーフ抗菌専用のグレーチング端部用アングル材であり(184頁)、
L字アングル抗菌埋め込み用の溝にグレーチング受枠固定用ボルト等の突起があり溝が部分的に浅い場合には、L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取り(314頁左下部)、
Lアングル抗菌埋め込み用の溝は、一方の側面が床、他方の側面がグレーチング受枠で構成され、グレーチング受枠固定用ボルト等よりも下の位置まで形成されていること(314頁左下部、認定事項2a、認定事項2b)。」
ア-3 甲3
甲3は、「エービーシー商会建材総合カタログ2008(→1)2009」[合議体による注:上記の「(→1)」は、右向きの三角黒塗り矢印である。]との題名を有するカタログであって、遅くとも本件特許の出願前の2008年(平成20年)中に頒布された刊行物であると認められ、以下の事項が記載されている。
(ア) 記載事項
60頁
「
[図:0001413326000009.jpg]
」
(イ) 甲3開示事項
【グレーチング回りの納まり(ウエットエリア)】の図には、グレーチング付近の床仕上げ構造において、PVCアングルが、一方の側面が床、他方の側面がグレーチングを受ける枠によって構成される溝に装入され、グレーチングを受ける枠の水平方向に延びる部分にグレーチングを受ける枠を固定する部材が設けられ、専用接着剤が上記溝に充てんされていること(以下「甲3開示事項」という。)が示されていると認められる。
ア-4 甲4
甲4は、「エービーシー商会建材総合カタログ2018(→2)2019」[合議体による注:上記の「(→2)」は、矢印先端の上側にのみ戻りがついた右向き矢印である。]との題名のカタログであって、302頁に「●ここに掲載しているカタログは、2018年4月現在のものです。」と記載されていることから、遅くとも本件特許の出願前の2018年(平成30年)中に頒布された刊行物であると認められ、以下の事項が記載されている。
(ア) 記載事項
63頁
「
[図:0001413326000010.jpg]
」
(イ) 甲4開示事項
「■グレーチング廻りの納まり(PVCアングル)」の図には、グレーチング付近の床仕上げ構造において、PVCアングルが、一方の側面が床、他方の側面がグレーチングを受ける枠によって構成される溝に装入され、グレーチングを受ける枠の水平方向に延びる部分にグレーチングを受ける枠を固定する部材が設けられ、専用接着剤が上記溝に充てんされていること(以下「甲4開示事項」という。)が示されていると認められる。
イ 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「排水溝路a」、「排水溝路aを形成し」「モルタル又はコンクリートm」により「構成」される「床面f」及び「床面f上に敷設される合成樹脂シートk」は、それぞれ本件発明1の「排水溝」、「排水溝を有する床部」及び「排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材」に相当する。
(イ) 甲1発明の「L形アングルe」は、その「他片縁jの端縁」が「床面f上に敷設される合成樹脂シートkの端縁」と「突き合わせた状態で」「床面fに接着」されるものであるから、「床面f上に敷設される合成樹脂シートkの端縁」と「排水溝路a」に隣接して配置されるものである。
また、甲1発明の「L形アングルe」は、その「一片縁g」が「排水溝路a」に配設された「溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの外側面に接する部分のモルタル又はコンクリートmを」「切削することにより」形成された「凹溝d内に装入」されるものであるから、「排水溝路a」に隣接して配置されるものといえる。
そうすると、甲1発明の「合成樹脂製L形アングルe」は、本件発明1の「前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材」に相当する。
(ウ) 甲1発明において、「溝蓋受枠b」が配設される「排水溝路の上部内縁」には、「溝蓋受枠b」の「立ち上がり縁c」に沿って上下方向に延びる側面と、「水平方向内側に延びてその上にグレーチング等の溝蓋が載置される部分」に沿って水平方向に延びる側面があって、これらの側面によって段差が形成されることは明らかであり、この段差は、本件発明1の「前記排水溝」の「上端内部」に設けられた「溝蓋を載置するための段差」に相当する。
したがって、甲1発明の「排水溝路の上部内縁」に、「溝蓋受枠b」の「立ち上がり縁c」に沿う上下方向に延びる側面と、「水平方向内側に延びてその上にグレーチング等の溝蓋が載置される部分」に沿う水平方向に延びる側面によって段差が形成され、この段差の水平方向に延びる側面に「溝蓋受枠b」が配設されることは、本件発明1の「前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され」ることに相当する。
(エ) 甲1発明において、「L形アングルeの一片縁gが装入されるのは、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分までである」ことから、甲1発明の「凹溝d」のうち、「溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分」は、本件発明1の「見切り材」の「差込片」が「差し込まれる」「凹溝」に相当する。
甲1発明において、「L形アングルe」が、「床面f上に敷設される合成樹脂シートkの端縁と」その「端縁とを突き合わせた状態で」「床面fに接着」される「他片縁j」と、「凹溝d内に装入」する「一片縁g」を有し、「合成樹脂シートkの端縁と、L形アングルeの他片縁jの端縁との突き合わせ部を樹脂溶接手段によって水密状に溶着」することから、甲1発明と本件発明1とは、「前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と」、「凹溝に差し込まれる差込片とを有」する点で共通する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
(一致点)
「排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、
前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、
前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、凹溝に差し込まれる差込片とを有する床仕上げ構造。」
(相違点1)
本件発明1は、「溝蓋受枠」を「前記段差の立ち上がり部に固定」する「固定手段」を備えているのに対して、甲1発明は、「溝蓋受枠b」を「溝蓋受枠b」の「立ち上がり縁c」に沿って上下方向に延びる「排水溝路の上部内縁」の部分に固定する固定手段を有していない点。
(相違点2)
本件発明1の「凹溝」が、「見切り材」の「差込片」が「差し込まれる」ものであるのに対して、甲1発明の「凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い部分」は、「L形アングルeの一片縁gが装入されるのは、凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分までである」ことから、「見切り材」(L形アングルe)の「差込片」(一辺縁g)が「差し込まれる」ものでない点で本件発明1の「凹溝」と相違する。
また、本件発明1の「凹溝」が、「床部に形成され」たもの(上記3(2)ウで検討したように、凹溝を形成する両側面が床部で構成され、溝蓋受枠7の立ち上がり縁の外側側面に接する部分に床部3が残存する部位を備えるもの)であるのに対して、甲1発明の「L形アングルeの一片縁gが装入される」「凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分」は、「一方の側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、他方の側面が溝蓋受枠bの立ち上がり縁cで構成され」るものであることから、床部に形成された(両側面が、床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成された)凹溝ではなく、床部に形成された段部と溝蓋受枠bの立ち上がり縁cとで形成された凹溝である点で相違する。
そして、「隣接する」という用語は、一般に、別個のものが互いに隣り合って接することを意味するものであることを考慮すると、本件発明1において、互いに「隣接する」「溝蓋受枠」と「凹溝」とは、別個のものであるのに対して、甲1発明において、「凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分は」、「他方の側面が溝蓋受枠bの立ち上がり縁cで構成され」ることから、「溝蓋受枠b」は「凹溝d」の一部を構成するものであって、別個のものではない点で相違する。
以上の3点において、本件発明1の「凹溝」が、「見切り材」の「差込片」が「差し込まれ」るとともに、「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する」ものであるのに対して、甲1発明の「凹溝d」が、「溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い部分」及び「溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分」のいずれにおいても、「L形アングルe」(見切り材)の「一片縁g」(差込片)が「差し込まれ」るとともに、床部に形成され溝蓋受枠bに隣接するものではない点。
(相違点3)
本件発明1において、「前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている」のに対して、甲1発明において、「溝蓋受枠b」の「立ち上がり縁c」に沿って上下方向に延びる「排水溝路の上部内縁」の部分に「固定手段」が設けられておらず、このため、「凹溝d」が固定手段の位置より上側に形成されることもない点。
ウ 判断
(ア) 相違点1及び相違点3について
相違点1及び相違点3は、「固定手段」に関するものであるから、まとめて検討する。
甲1には、「溝蓋受枠b」を固定手段により「立ち上がり縁c」に沿って上下方向に延びる「排水溝路の上部内縁」の部分に固定することは、記載も示唆もされていない。
以下、特許異議申立書における申立人の主張に沿って検討する。
(ア-1) 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「相違点1について、例えばボルト等の固定手段で溝蓋受枠を段差の立ち上がり部に固定することは、当業者であれば必要に応じて適宜採用する技術事項に過ぎない」(11頁10~12行)
上記主張について検討する。甲1発明は、「床面fを構成するモルタル又はコンクリートmの打設によって上部内縁に溝蓋受枠bが配設された排水溝路aを形成」するものであって、「床面fを構成するモルタル又はコンクリートmの打設」の工程において、「溝蓋受枠b」がボルト等の固定手段により「排水溝路a」の「上部内縁」に固定されるとしても、ボルト等の固定手段で溝蓋受枠を固定する箇所を、上記主張のとおり、段差の立ち上がり部とすると、「凹溝dが、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い位置まで形成され」ることから、「ダイヤモンドカッター等の回転円盤工具を用いて切削することにより、立ち上がり縁cの長手方向に沿う所定深さの凹溝dを連続状に形成」する切削工程において、固定手段が障害となることは明らかである。
ボルト等の固定手段で溝蓋受枠を固定する箇所として、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端から水平方向内側に延びる部分等、上記切削工程において、固定手段が障害とならない箇所も存在するところ、あえて上記切削工程の障害となる段差の立ち上がり部とすることは、当業者であれば必要に応じて適宜採用する技術事項であるとはいえない。
(ア-2) 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「相違点2については、例えば溝蓋受枠の固定に対して障害となるもの等がある場合に、それを避けて凹溝を形成することも、当業者であれば適宜採用する技術事項に過ぎない。」(11頁12~14行)(合議体による注:特許異議申立書における「相違点2」は、上記イにおける「相違点3」に対応するものである。以下同じ。)。
上記主張について検討する。上記(ア-1)で検討したように、ボルト等の固定手段で溝蓋受枠を固定する箇所として、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端から水平方向内側に延びる部分等、凹溝を形成する切削工程において、固定手段が障害とならない箇所も存在するところ、あえて段差の立ち上がり部として、凹溝を形成する切削工程において固定手段を避けるという困難を生じさせることは、当業者であれば適宜採用する技術事項であるとはいえない。
(ア-3) 申立人は、特許異議申立書において以下の旨を主張する。
「また、相違点1について、「立ち上がり縁3の外側面に取り付けられたアンカー8」は、「排水溝路9の側部のコンクリート基盤10に立設された差筋11に溶接することにより溝蓋受枠1を所定位置に仮固定」されており、固定手段と捉えることが可能である。
更に、相違点2については、モルタル又はコンクリートmの打設によって、合成樹脂製連結部材の下部部分の床面に凹溝が形成されており、固定手段と凹溝の位置関係は「前記凹溝が前記固定手段の位置より上側」と捉えることも可能である。」(11頁15行~12頁3行)
上記主張について検討する。上記主張における「「立ち上がり縁3の外側面に取り付けられたアンカー8」は、「排水溝路9の側部のコンクリート基盤10に立設された差筋11に溶接することにより溝蓋受枠1を所定位置に仮固定」されること」は、甲1の【0019】の記載に基づくものであり、「モルタル又はコンクリートmの打設によって、合成樹脂製連結部材の下部部分の床面に凹溝が形成されて」いることは、甲1の図3、4、7に基づくものと認められるところ、甲1の【0019】、図3、4、7に記載の実施例は、いずれも、「従来のような凹溝d」「の切削形成が不要である」(【0021】、【0031】)実施例である。したがって、上記主張において、本件発明1と同様の構成であると捉えることが可能であるとされた事項は、いずれも甲1において、甲1発明とは別の実施例における構成として記載されたものであって、凹溝dが切削形成される甲1発明に、凹溝dの切削形成が不要である実施例の構成を適用することは、両者が凹溝dの切削形成について相反するものであることから、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
仮に、甲1に記載の凹溝dの切削形成が不要である実施例において、上記主張のとおり、合成樹脂製連結部材4の下部部分を「凹溝」とみなし、甲1発明に適用したとしても、合成樹脂製連結部材4の下部部分からなる「凹溝」の一方の側面は、「蓋受け縁2」の「立ち上がり縁3」によって構成されているため、上記イ(相違点2)で検討したように、当該「凹溝」は、「床部に形成され」たものとはいえず、「溝蓋受枠に隣接する」ものともいえない点で本件発明1と相違し、上記イで示した相違点2に係る構成を得ることはできない。
そして、本件発明1の「見切り材」は「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝に差し込まれる差込片とを有」するものであることから、「見切り材」の「差込片」は、事前に形成されていた「凹溝」に差し込まれるものであるところ、上記主張における当該「凹溝」は、「モルタル又はコンクリートmの打設」と同時に形成されるものであるから、甲1に記載の凹溝dの切削形成が不要である実施例における「合成樹脂製連結部材4」は、事前に形成されていた「凹溝」に差し込まれるものではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明(上記主張における「甲第1号証に記載の従来技術」に対応。)と、甲1の凹溝dの切削形成が不要である実施例についての記載(上記主張における「甲1発明」に対応。)により、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(ア-4) 申立人は、特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
「ここで、更に相違点2について、甲第2号証の第314頁の「納まり図」には、まず本件特許発明1の発明特定事項A~E及びGが明確に開示されているものと認められる。
…
そして、更に同下段左段落における「2.仮置き・裁断」の欄には、「●L宇アングル抗菌埋め込み用の溝に、グレーチング受枠固定用ボルト等の突起があり溝が部分的に浅い場合には・・・」との記載があり、下記図において赤丸部分で示されるように、凹溝がグレーチング受枠固定用ボルトの位置より上側に形成されている部分が開示されている。
[図:0001413326000011.jpg]
これにより発明特定事項F「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」は、甲第2号証に開示されていることは明らかである。
より詳細に検討すると、「●L宇アングル抗菌埋め込み用の溝に、グレーチング受枠固定用ボルト等の突起があり溝が部分的に浅い場合には、L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取ってください。」の記載に基づく構造は、以下の通りである。
即ち、凹溝は、その形成時に固定手段を避けて形成されており、固定手段の下側の床部3はモルタル又はコンクリートは存在したままであり、固定手段の存在しない他の部分に比べて「部分的に浅い(溝)」が形成されている。
甲第2号証の記載からは、「浅い(溝)」が形成されているか否か、即ち固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在するか否かは明示されていないが、「1.下地の確認」の欄に、「●グレーチング廻りに目地切り部が設けられていない場合は施工できません。グレーチング受金物(枠)に沿ってダイヤモンドカッターで目地切りしてください。」とあることから、当該の方法で構を形成した場合、固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在することは、当業者であればもとより当業者でなくても常識的に考えて明らかである。
そのため、甲第2号証では「部分的に浅い(溝)」で干渉しないように「L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取ってください。」と記載されているのであり、このように切り取らないと垂れ下がり部が凹溝内に収まらないこととなってしまうからである。
してみると、甲第2号証には、固定手段を含む「部分的に浅い(溝)」に、「垂れ下がり部を切り取っ」て部分的に短くなった差込片の下端が所在する構造であるといえる。即ち、少なくとも部分的には「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」のであって、発明特定事項F「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」は、甲第2号証に開示されていることは明らかである。
よって、本件特許発明1において、凹溝全体にわたって固定手段の位置より上側に形成されているとしても、部分的に凹溝が固定手段の位置より上側に形成されているところの甲第2号証の構造から、本件特許発明1は容易に想到できることは明らかである。
加えて、本件特許発明1における凹溝の形成方法は、本件特許明細書の段落[0019]によれば、「床部3はモルタル又はコンクリートからなり、凹溝9は床部3をダイヤモンドカッターなどにより切削することにより成形される。凹溝9は溝蓋受枠7の周囲を囲うように成形される。」と記載されており、当該形成方法は甲第2号証に記載の形成方法と同一である。
このことからも、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証の記載から、容易に導かれるものなのである。
なお、請求項1が、「溝蓋受枠の立ち上がり縁の外側側面に接する部分のモルタル又はコンクリートを切削して凹溝を成形」(本願明細書の段落[0005])した構造ではなく、「溝蓋受枠」と「凹溝」との間において床部の一部が削り残された構造を採用したとしても、当該構造も当業者が適宜採用し得る設計事項に過ぎない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証の記載から、又は甲第1号証及び甲第2号証の記載から、当業者であれば容易に想到し得るものであるから、進歩性を有さず、特許を受けることができない(特許法第29条第2項)。
附言すると、本件特許発明1に係る床仕上げ構造と酷似する構造として、甲第3号証に、「アルトロ専用副資材」の欄に、PVCアングルや専用接着剤を用いたグレーチング(溝蓋に相当)付近の床仕上げ構造が開示されており(甲第3号証、第60頁)、また、甲第4号証においても、「アルトロセーフティーフロア」の欄に、PVCアングルや専用接着剤を用いたグレーチング(溝蓋に相当)付近の床仕上げ構造が開示されている(甲第4号証、第63頁)。」(特許異議申立書12頁6行~15頁7行)
上記主張について検討する。申立人は、甲2の314頁「2.仮置き・裁断」の欄の図において、「凹溝がグレーチング受枠固定用ボルトの位置より上側に形成されている部分が開示されて」おり、本件発明1の「「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」は、甲第2号証に開示されていることは明らかである」と主張するが、上記2ア-2(イ)及び(ウ)において甲2記載事項として検討したとおり、甲2に記載されているのは、凹溝が、グレーチング受枠固定用ボルト等の位置より下側にも形成されているものであって、本件発明1の「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」ことは、甲2に開示されていない。
上記主張における「凹溝は、その形成時に固定手段を避けて形成されており、固定手段の下側の床部3はモルタル又はコンクリートは存在したままであり、固定手段の存在しない他の部分に比べて「部分的に浅い(溝)」が形成されている」との事項は、甲2に記載されていない。
上記主張における「「1.下地の確認」の欄に、「●グレーチング廻りに目地切り部が設けられていない場合は施工できません。グレーチング受金物(枠)に沿ってダイヤモンドカッターで目地切りしてください。」とあることから、当該の方法で構を形成した場合、固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在することは、当業者であればもとより当業者でなくても常識的に考えて明らかである。」との事項については、溝を形成した後にグレーチング受枠固定用ボルト等を設けた場合等には、固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在するとは限らず、固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在することは明らかであるとはいえない。
上記主張における「甲第2号証では「部分的に浅い(溝)」で干渉しないように「L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取ってください。」と記載されているのであり、このように切り取らないと垂れ下がり部が凹溝内に収まらないこととなってしまうからである。」
との事項については、甲2記載事項における「部分的に浅い」「溝」は、「L字アングル抗菌埋め込み用の溝にグレーチング受枠固定用ボルト等の突起があ」る場合にできるものであるから、固定手段の下側の床部3にモルタル又はコンクリートが存在することを意味するのではなく、「グレーチング受枠固定用ボルト等の突起」が存在するために溝に部分的に浅い部分ができていることを述べていると認められる。
また、甲3及び甲4は、VCアングルや専用接着剤を用いたグレーチング(溝蓋に相当)付近の床仕上げ構造を開示するものにすぎず、グレーチングを受ける枠を固定する部材は、グレーチングを受ける枠を当該枠が設置される段差の立ち上がり部に固定するものではない。
したがって、特許異議申立書における主張はいずれも採用することができない。
(イ) 相違点2について
甲1発明において、「L形アングルeの一片縁gが装入される」「凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも高い部分」は、「一方の側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され、他方の側面が溝蓋受枠bの立ち上がり縁cで構成され」るものであって、床部に形成された段部と溝蓋受枠bの立ち上がり縁cとで形成されるものであるところ、凹溝dの当該部分を、両側面が、床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成されるものとし、溝蓋受枠bに隣接するものとして構成することは、甲1に記載も示唆もされておらず、甲1発明において、そのように構成する動機もない。
また、甲1発明において、「L形アングルeの一片縁g」を、「両側面が床面fを構成するモルタル又はコンクリートmで構成され」る「凹溝dのうち、溝蓋受枠bの立ち上がり縁cの下端よりも低い部分」まで装入することは、甲1に記載も示唆もされておらず、甲1発明において、そのように構成する動機もない。
また、甲2記載事項の「L字アングル抗菌埋め込み用の溝」は、「一方の側面が床、他方の側面がグレーチング受枠で構成され」ているものであって、両方の側面が、床で構成されたものではないから、「床部に形成され」たものとはいえず、また、「他方の側面」が「グレーチング受枠」自体によって構成されるものであって、「グレーチング受枠」(溝蓋受枠)に「隣接する」といえるような「グレーチング受枠」(溝蓋受枠)とは別個のものではなく、「グレーチング受枠」(溝蓋受枠)に「隣接する」ものともいえない。
甲3開示事項及び甲4開示事項において開示される溝は、いずれも、一方の側面が床、他方の側面がグレーチングを受ける枠によって構成されるものであって、両側面が床で形成され(床部に形成され)るとともに、グレーチングを受ける枠(溝蓋受枠)に隣接する溝(凹溝)を、開示及び示唆するものではない。
したがって、甲2~甲4にも、相違点2に係る構成は開示されておらず、甲2~甲4に記載の事項を考慮しても、甲1発明において、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
エ 申立理由1(進歩性)についての結論
以上によれば、本件発明1は、甲1~甲4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項に該当するものではない。本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記ウと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件の請求項1~4に係る特許は、甲1~甲4を根拠に特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして、取り消すことはできない。
(2) 申立理由2(明確性)について
特許異議申立書における申立理由2(明確性)は、以下のものである。
「本件特許発明1では、「差込片」について、「溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝に差し込まれる」と規定されている。
しかし、「床部」が「溝蓋受枠」に対していかなる態様によって「隣接」しているのか、当該「隣接」の技術的意義が不明確である。
ここで、辞典類による「隣接」の定義は、以下のとおりである。
(一)広辞苑第六版
となりあってつづくこと。近隣関係にあるあること。
(二)精選版 日本国語大辞典
となり合っていること。
(三)デジタル大辞泉
となり合っていること。「隣接する町村」「隣接地」
(四)普及版 字通
となりに続く。
即ち、上記の辞典類による定義に基づけば、本件特許発明1における「隣接」が、「溝蓋受枠」と「凹溝」とが隣り合って続いて(接して)存在するのか、それとも「溝蓋受枠」と「凹溝」とがその間に一部の床部を削り残し、間隔を設けて形成されているのか、不明である。また、削り残された一部の床部がどの程度の幅を有するものであるのかも明らかではない。」
上記の申立理由2(明確性)について検討する。
上記第3に記載のように、本件訂正後の請求項1において、「差込片」について、「床部に形成され溝蓋受枠に隣接する凹溝に差し込まれる」ことが特定された。
上記第2の3(2)ウで検討したように、「凹溝」とは、一般に、相対的に低い細長い部分と、その両側に存在する相対的に高い部分とによって形成されるものであるところ、請求項1に記載の「凹溝」は、「床部に形成され」るものであるから、凹溝の両側面は、床部で形成され、「溝蓋受枠」と「凹溝」の間に一部の床部が削り残されるものと認められる。
また、請求項1に記載の「凹溝」は、「溝蓋受枠に隣接する」ものであるから、辞典類による「隣接」の定義を用いて表現すれば、(両側面が床部で形成された)「凹溝」は、溝蓋受枠にとなり合うものであり、削り残された一部の床部の幅は、(両側面が床部で形成された)「凹溝」が溝蓋受枠に隣接する(となり合う)といえる程度の幅であると理解することができる。
したがって、本件訂正特許請求の範囲の請求項1~4の記載は明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできないから、請求項1~4に係る特許が、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものということはできない。
第5 申立人の意見書における主張について
1 申立人の意見書における主張
申立人は、令和6年2月27日に提出された意見書において、以下の旨を主張する。
(1) 申立人の主張1(サポート要件)
「…取消理由通知書及び特許権者による意見書によれば、これによって『「前記溝蓋受枠に隣接する」との用語が「凹溝」に係る場合、「凹溝」は、「床部に形成された」ものであるとともに、「前記溝蓋受枠に隣接する」ものであるから、「溝蓋受枠」と「凹溝」は、隣り合って続いて(接して)おり、「溝蓋受枠」と「凹溝」との間には床部が存在しない(凹溝の一方の側面が床部、他方の側面が溝蓋受枠で構成されている)ものと解される。』とされている。
しかしながら、…本件特許明細書の【図1】によれば、溝蓋受枠7と凹溝9との間には床部の一部が明らかに存在している。そして、上記のように「溝蓋受枠」と「凹溝」との間に床部が存在しない(凹溝の一方の側面が床部、他方の側面が溝蓋受枠で構成されている)態様については、本件特許明細書及び図面のいずれにも開示も示唆もない。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、いわゆるサポート要件違反であるから、特許法第113条第4号(第36条第6項第1号違反)に該当し、取り消されるべきである。」(2頁3~17行。)
(2) 申立人の主張2(進歩性)
「(2) 進歩性
(ア)本件特許発明1と甲第1号証記載の発明(甲1発明)との対比
本件特許発明1と甲第1号証とを対比すると、甲第1号証の段落【0004】及び図9には、下記のとおり、下記の赤丸部分に示すように、発明特定事項A~C、E、G及びHが記載されている。
…
したがって、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、前者が発明特定事項D「前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており」にある「固定手段」を具備しているのに対し、後者はこれを明記していない点で、両者は相違する(相違点1)。
また、両者は、前者が発明特定事項F「前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている」を具備しているのに対し、後者がこれを明記していない点で、両者は相違する(相違点2)。
しかしながら、相違点1について、例えばボルト等の固定手段で溝蓋受枠を段差の立ち上がり部に固定することは、当業者であれば必要に応じて適宜採用する技術事項に過ぎないし、相違点2については、例えば溝蓋受枠の固定に対して障害となるもの等がある場合に、それを避けて凹溝を形成することも、当業者であれば適宜採用する技術事項に過ぎない。
また、相違点1について、甲第1号証記載の「立ち上がり縁3の外側面に取り付けられたアンカー8」は、「排水溝路9の側部のコンクリート基盤10に立設された差筋11に溶接することにより溝蓋受枠1を所定位置に仮固定」(甲第1号証【0019】、図3、図4)とあって、当該アンカー8は固定手段と捉えられる。
更に、相違点2については、甲第1号証に、「その状態で溝蓋受枠1の下部及び外側部に床面fを構成するモルタル又はコンクリートmを打設する。ここで、該溝蓋受枠1には、立ち上がり縁3の外側面上部に合成樹脂製連結部材4がその長手方向に沿って接合されていることにより、前記モルタル又はコンクリートmの打設と同時に合成樹脂製連結部材4の施工が完了する」(甲第1号証【0019】)とあって、モルタル又はコンクリートmの打設によって、合成樹脂製連結部材の下部部分の床面に凹溝が形成されることになる。
かかる構成に甲第1号証に記載の従来技術を適用すると、固定手段と凹溝の位置関係は必然的に「前記凹溝が前記固定手段の位置より上側」になると認められる。換言すると、上記構成に甲第1号証に記載の従来技術を適用すると、固定手段と凹溝の位置関係が「前記凹溝が前記固定手段の位置より上側」になることは不可避である。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載の従来技術と、甲1発明と、により、当業者が容易に想到し得たものである。
ここで、更に相違点2について、甲第2号証の第314頁の「納まり図」には、まず本件特許発明1の発明特定事項A~E及びGが明確に開示されているものと認められる。
…
これにより発明特定事項F「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」は、甲第2号証に開示されていることは明らかである。
より詳細に検討すると、「●L字アングル抗菌埋め込み用の溝に、グレーチング受枠固定用ボルト等の突起があり溝が部分的に浅い場合には、L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取ってください。」の記載に基づく構造は、以下の通りである。
即ち、凹溝は、その形成時に固定手段を避けて形成されており、固定手段の下側の床部3はモルタル又はコンクリートは存在したままであり、固定手段の存在しない他の部分に比べて「部分的に浅い(溝)」が形成されている。
甲第2号証の記載からは、「浅い(溝)」が形成されているか否か、即ち固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在するか否かは明示されていないが、「1.下地の確認」の欄に、「●グレーチング廻りに目地切り部が設けられていない場合は施工できません。グレーチング受金物(枠)に沿ってダイヤモンドカッターで目地切りしてください。」とあることから、当該の方法で溝を形成した場合、固定手段の下側にモルタル又はコンクリートが存在することは、当業者であればもとより当業者でなくても常識的に考えて明らかである。
そのため、甲第2号証では「部分的に浅い(溝)」で干渉しないように「L字アングル抗菌の垂れ下がり部を切り取ってください。」と記載されているのであり、このように切り取らないと垂れ下がり部が凹溝内に収まらないこととなってしまうからである。
してみると、甲第2号証には、固定手段を含む「部分的に浅い(溝)」に、「垂れ下がり部を切り取っ」て部分的に短くなった差込片の下端が所在する構造であるといえる。即ち、少なくとも部分的には「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」のであって、発明特定事項F「凹溝が固定手段の位置より上側に形成されている」は、甲第2号証に開示されていることは明らかである。
よって、本件特許発明1において、凹溝全体にわたって固定手段の位置より上側に形成されているとしても、部分的に凹溝が固定手段の位置より上側に形成されているところの甲第2号証の構造から、本件特許発明1は容易に想到できることは明らかである。
加えて、本件特許発明1における凹溝の形成方法は、本件特許明細書の段落[0019]によれば、「床部3はモルタル又はコンクリートからなり、凹溝9は床部3をダイヤモンドカッターなどにより切削することにより成形される。凹溝9は溝蓋受枠7の周囲を囲うように成形される。」と記載されており、当該形成方法は甲第2号証に記載の形成方法と同一である。
このことからも、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証の記載から、容易に導かれるものなのである。
なお、請求項1が、「溝蓋受枠の立ち上がり縁の外側側面に接する部分のモルタル又はコンクリートを切削して凹溝を成形」(本願明細書の段落[0005])した構造ではなく、「溝蓋受枠」と「凹溝」との間において床部の一部が削り残された構造を採用したとしても、当該構造も当業者が適宜採用し得る設計事項に過ぎない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証の記載から、又は甲第1号証及び甲第2号証の記載から、当業者であれば容易に想到し得るものであるから、進歩性を有さず、特許を受けることができない(特許法第29条第2項)。
附言すると、本件特許発明1に係る床仕上げ構造と酷似する構造として、甲第3号証に、「アルトロ専用副資材」の欄に、PVCアングルや専用接着剤を用いたグレーチング(溝蓋に相当)付近の床仕上げ構造が開示されており(甲第3号証、第60頁)、また、甲第4号証においても、「アルトロセーフティーフロア」の欄に、PVCアングルや専用接着剤を用いたグレーチング(溝蓋に相当)付近の床仕上げ構造が開示されている(甲第4号証、第63頁)。
よって、本件特許発明1は、特許法第113条第2号(第29条第2項違反) に該当し、その特許は取り消されるべきである。
なお、本件特許の請求項2~4に係る発明(本件特許発明2~4)については、特許異議申立書で述べたとおり、特許法第113条第2号(第29条第2項違反)に該当し、その特許は取り消されるべきである。」(3頁1行~9頁25行)
2 申立人の意見書における主張についての検討
(1) 申立人の意見書における主張1(サポート要件)について
第2の3(2)ウで検討したように、「凹溝」とは、一般に、相対的に低い細長い部分と、その両側に存在する相対的に高い部分とによって形成されるものであるから、本件発明1において特定されている「凹溝」が「床部に形成され」るということは、床部に、相対的に低い細長い部分と、その両側の相対的に高い部分が形成されるということであり、凹溝を形成する両側面(両側の相対的に高い部分)は床部であると解される。
そして、【0013】の記載によれば、「凹溝9」は、「溝蓋受枠7に隣接する床部」であって、「溝蓋受枠7の立ち上がり縁の外側側面に接する部分の床部3」を切削して成形されたものであるから、溝蓋受枠7に隣接するものであるといえる。また、図1には、両側面が床部3によって形成されるとともに、溝蓋受枠7の近傍の床部3に形成される凹溝9が示されている。
そうすると、明細書及び図面には、両側面が床部3によって形成されるとともに、溝蓋受枠7に隣接する凹溝9が記載されているといえ、本件発明1の「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝」との事項は、【0013】及び図1から導き出されたものである。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の意見書における主張1(サポート要件)は採用することができない。
(2) 申立人の意見書における主張2(進歩性)について
申立人の意見書における主張2(進歩性)は、特許異議申立書の申立理由1(進歩性)における主張と同様のものであって、第4の2(1)ウ(ア)及び(イ)で検討したように、特許異議申立書における主張2(進歩性)と同じ理由で採用することができない。
第6 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1の「前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝」との記載について、「前記溝蓋受枠に隣接する」との用語が、「床部」に係るのか、(床部に形成された)「凹溝」に係るのか、明らかでなく、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 合議体の判断
本件訂正前の請求項1の「前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝」との記載は、本件訂正により、「床部に形成され前記溝蓋受枠に隣接する凹溝」との記載に訂正され、「前記溝蓋受枠に隣接する」との用語が「凹溝」に係ることが明確になった。
よって、本件訂正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~4の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということはできないから、請求項1~4に係る特許が、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700864