特許異議申立
2023-701300
油中水型乳化組成物
- 審判番号
- 2023-701300
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-029363
- 登録番号
- 7290765
- 請求日
- 2023年12月08日
- 審決日
- 2025年04月28日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポーラ化成工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】若林 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 恵
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 天野 皓己
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7290765号発明「油中水型乳化組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7290765号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7290765号の請求項2~5に係る特許を維持する。
特許第7290765号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7290765号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年1月5日に出願した特願2017-637号の一部を令和4年2月28日に新たな特許出願としたものであって、令和5年6月5日に特許権の設定の登録がされ、同年同月13日にその特許掲載公報が発行された。
その後、同年12月8日に、本件特許の請求項1~5に係る特許に対し、特許異議申立人 若林 太郎(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである(日付は、当審による起案を除き、書類の受付日である)。
令和 6年 4月 1日付け 取消理由通知
同年 6月 4日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月18日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 7月 9日 意見書の提出(申立人)
同年11月11日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 7年 1月10日 意見書の提出(特許権者)
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和6年6月4日受付の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という)の「請求の趣旨」は、「特許第7290765号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~6からなるものである。
なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「さらに、フェノキシエタノール、及び/又は1,2-アルキレンジオールを含有する、請求項1に記載の油中水型乳化組成物。」と、請求項1を引用して記載されているのを、独立形式に改め、
「 モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する油中水型乳化組成物であって、
さらに、フェノキシエタノール、及び/又は1,2-アルキレンジオールを含有し、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、油中水型乳化組成物」に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2の末尾に、
「(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)」
との記載を追加する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3において、訂正前に「請求項1又は2」と記載されているのを、「請求項2」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4において、訂正前に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項2又は3」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5において、訂正前に「請求項1~4」と記載されているのを、「請求項2~4」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
3 訂正事項についての訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項1を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2において訂正前の請求項1を引用するものを、訂正前の請求項1の発明特定事項の全てを変更することなく、請求項1の記載を引用しない形式(独立形式)に書き換えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、前記アで述べたとおり、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであるところ、引用する訂正前の請求項1の発明特定事項を変更することなく独立形式の請求項2にするという、記載形式を変更するものに過ぎないから、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項2を、引用する訂正前の請求項1の発明特定事項を変更することなく独立形式の請求項2にするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項2の「油中水型乳化組成物」を、「油中水型乳化組成物(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)」
と規定することにより、「油中水型乳化組成物」を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、前記アで述べたとおり、訂正前の請求項2の「油中水型乳化組成物」を、「油中水型乳化組成物(ただし、下記成分を含有する態様を除く:・・・(省略)・・・)」と規定することにより、「油中水型乳化組成物」を限定するものであって、訂正前の請求項2に係る発明が、申立人が提出した甲第1号証に記載された発明と重なるために、当該重なりのみを除くものであって、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項2の「油中水型乳化組成物」を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4~6について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1により訂正前の請求項1が削除されることに伴い、訂正前の請求項3において、請求項3が引用する「請求項1又は2」のうち、請求項1を削除するものであり、本件訂正の訂正事項5に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項4において、請求項4が引用する「請求項1~3のいずれか一項」のうち、請求項1を削除するものであり、また、本件訂正の訂正事項6に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項5において、請求項5が引用する「請求項1~4」のうち、請求項1を削除するものであり、それぞれ、引用する請求項を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項4~6に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項4~6に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正後の請求項3~5において、それぞれ、訂正前の請求項3~5が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項4~6に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項4~6に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正後の請求項3~5において、それぞれ、訂正前の請求項3~5が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項4~6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)独立特許要件について
本件訂正の訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同法同条同項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を訂正の目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項2~5に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和6年6月4日受付の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項2~5(以下「本件請求項2」~「本件請求項5」ということがある。)の記載は、令和6年6月4日受付の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2~5に記載された以下のとおりのものである(下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。
そして、本件請求項2~5に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2~5に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認める(以下「本件発明2」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する油中水型乳化組成物であって、
さらに、フェノキシエタノール、及び/又は1,2-アルキレンジオールを含有し、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、油中水型乳化組成物
(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)。
【請求項3】
さらに、ポリエーテル変性シリコーン、及び/又はポリグリセリン変性シリコーンを含有する、請求項2に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
粉体の総含有量が組成物全体に対して40質量%以下である、請求項2又は3に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項5】
皮膚外用剤である、請求項2~4のいずれか一項に記載の油中水型乳化組成物。」
第4 当審合議体が通知した取消理由及び特許異議の申立ての理由の概要
1 当審合議体が通知した取消理由の概要
当審合議体が令和6年11月11日付け取消理由通知書で通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
取消理由(進歩性)
本件発明2~5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項2~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:米国特許出願公開第2013/0302385号明細書(申立人が提出。)
参考文献1:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「酸化チタン」の総合レポート 酸化チタンの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2022年4月17日、[online]、インターネットURL: https://cosmetic-ingredients.org/colorants/3217/ (当審合議体が追加して引用した文献。)
参考文献2:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン」の総合レポート PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2023年1月4日、[online]、インターネットURL: https://cosmetic-ingredients.org/surfactants-emulsifying-agents/13000/ (当審合議体が追加して引用した文献。)
参考文献5:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「ステアロイルグルタミン酸2Na」の総合レポート ステアロイルグルタミン酸2Naの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2023年2月9日、[online]、インターネットhttps://cosmetic-ingredients.org/surface-modifiers/10690/(当審合議体が追加して引用した文献。)
参考文献6:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「水酸化Al」の総合レポート 水酸化Alの基本情報・配合目的・安全性」、公開日 :2022年5月7日、[online]、インターネットhttps://cosmetic-ingredients.org/surface-modifiers/105/ (当審合議体が追加して引用した文献。)
参考文献7:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「エチルヘキシルグリセリン」の総合レポート エチルヘキシルグリセリンの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2021年11月18日、[online]、インターネットhttps://cosmetic-ingredients.org/preservative-aid/6765/ (申立人が令和6年7月9日受付の意見書に添付して提出した甲第13号証。)
参考文献8:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「ジステアルジモニウムヘクトライト」の総合レポート ジステアルジモニウムヘクトライトの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2023年3月26日、[online]、インターネットhttps://cosmetic-ingredients.org/viscosity-increasing-agents/10031/ (申立人が令和6年7月9日受付の意見書に添付して提出した甲第14号証。)
参考文献9:特開2014-5209号公報(申立人が提出した甲第11号証。)
2 特許異議の申立ての理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)は、以下のとおりのものと認められる。(なお、本件訂正前の請求項に係る発明を「本件特許発明1」などという。)
(1)申立理由1 特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
ア 申立理由1-1(申立書における具体的理由(4-3-1))
本件特許発明1~5は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものである。
イ 申立理由1-2(申立書における具体的理由(4-3-2))
本件特許発明1~5は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものである。
ウ 申立理由1-3(申立書における具体的理由(4-3-3))
本件特許発明1、4及び5は、甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものである。
(2)申立理由2 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
ア 申立理由2-4(申立書における具体的理由(4-3-4))
本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明及び甲第9号証及び甲第10号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
イ 申立理由2-5 (申立書における具体的理由(4-3-5))
本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明及び甲第11号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
ウ 申立理由2-6 (申立書における具体的理由(4-3-6))
本件特許発明1は、甲第6号証に記載された発明及び甲第11号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
エ 申立理由2-7 (申立書における具体的理由(4-3-7))
本件特許発明1は、甲第7号証に記載された発明及び甲第9号証及び甲第10号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
オ 申立理由2-8 (申立書における具体的理由(4-3-8))
本件特許発明1は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
カ 申立理由2-9(申立書における具体的理由(4-3-9)~(4-3-13))
本件特許発明1~5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
キ 申立理由2-10(申立書における具体的理由(4-3-9)~(4-3-13))
本件特許発明1~5は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
ク 申立理由2-11(申立書における具体的理由(4-3-9)~(4-3-13))
本件特許発明1~5は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
(申立人が提出した証拠)
甲第1号証:米国特許出願公開第2013/0302385号明細書
甲第2号証:国際公開第2013/124540号
甲第3号証:特開2005-162635号公報
甲第4号証:国際公開第2011/158331号
甲第5号証:特開2014-62135号公報
甲第6号証:特開2014-172837号公報
甲第7号証:特開2008-56643号公報
甲第8号証:特開2012-246446号公報
甲第9号証:特開2008-150330号公報
甲第10号証:特開2014-198672号公報
甲第11号証:特開2014-5209号公報
甲第12号証:特開2007-289452号公報
(以下では甲第1号証~甲第12号証を「甲1」~「甲12」という。)
(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))
本件特許発明1~5は、本願明細書に記載された発明ではないから、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)申立理由4(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))
本件特許発明1~3及び5は、不明確であるから、請求項1~3及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審合議体の判断
1 取消理由について
(1)甲1の記載(甲1は英語で記載されているので訳文で示す。)
引用箇所等に付した下線は、特に注釈がない限り、いずれも当審合議体によるものである。また、「・・・」は摘記の省略を示す。
甲1a
「クレーム
1.(a)水と少なくとも1種のフィルム形成剤を含む水ベースゲル相;及び(b)少なくとも1種の油と少なくとも1種のポリウレタン/ポリ(メタ)アクリレートグラフト共重合体を含む油中水型エマルジョン相を含有する組成物。」
甲1b
「[0004]したがって、本発明の一つの態様は、水ベースゲル相及びエマルジョン相を含む、安定性があり審美的に望ましい、皮膚及び/又は唇のようなケラチン物質の手入れ及び/又はメイクアップ及び/又はトリートメント組成物である。
発明の概要
[0005]本発明は、(a)水ベースゲル相及び(b)油中水型エマルジョン相を含有する組成物、好ましくは化粧料組成物に関する。・・・」
甲1c
「[0038]本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して25重量%-35重量%、より好ましくは27重量%-33重量%、さらに好ましくは29重量%-31重量%の油中水型エマルジョン相を含む。」
甲1d
「実施例4
さらなるシリコーン中水型エマルジョン相
[0113]以下のシリコーン中水型エマルジョン相を実施例1に記載したように調製した。
相 INCI名 %
A1 イソドデカン 4.200
ジメチコン 7.000
イソノニルイソノナノエート 8.850
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500
A2 二酸化チタン(及び) 15.000
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム(及び)
水酸化アルミニウム(白、黄、赤、黒)
A3 アクリル酸エステルコポリマー 0.200
ビタミンEI 0.050
ビタミンC 0.050
乳酸メンチル 2.000
A4 ジメチコン(及び) 32.000
ジメチコンクロスポリマー
マイカ(及び)シリカ 0.500
B 水 7.750
グリセリン 5.000
クロルフェネシン 0.200
クエン酸 0.050
ソルビン酸カリウム 0.100
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200
エチルヘキシルグリセリン 0.300
フェノキシエタノール 0.800
パンテノール 0.050
クコバルバラム果実抽出物 0.200
グルタミルアミドエチルインドール 0.250
C マイカ 2.000」
(2)甲1に記載された発明
甲1a~甲1dの記載より、甲1は化粧品組成物に関する文献であって(甲1b[0005])、甲1には、請求項1に「(a)水と少なくとも1種のフィルム形成剤を含む水ベースゲル相;及び(b)少なくとも1種の油と少なくとも1種のポリウレタン/ポリ(メタ)アクリレートグラフト共重合体を含む油中水型エマルジョン相を含有する組成物」が記載されており(甲1a)、当該組成物が含有する「(b)・・・油中水型エマルジョン相」の具体例として、実施例4には、具体的な処方(含有成分名及びその含有%)に基づき調製された「シリコーン中水型エマルジョン相」が記載されている(甲1d)。ここで、「%」は、甲1cの記載より、重量%を意味するものと理解される。
そうすると、甲1には、実施例4のシリコーン中水型エマルジョン相の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明)
「以下の成分からなるシリコーン中水型エマルジョン相。
A1相イソドデカン 4.200重量%
ジメチコン 7.000重量%
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2.000重量%
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%
A2相二酸化チタン(及び) 15.000重量%
ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム(及び)
水酸化アルミニウム(白、黄、赤、黒)
A3相アクリル酸エステルコポリマー 0.200重量%
ビタミンEI 0.050重量%
ビタミンC 0.050重量%
乳酸メンチル 2.000重量%
A4相ジメチコン(及び) 32.000重量%
ジメチコンクロスポリマー
マイカ(及び)シリカ 0.500重量%
B相 水 7.750重量%
グリセリン 5.000重量%
クロルフェネシン 0.200重量%
クエン酸 0.050重量%
ソルビン酸カリウム 0.100重量%
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%
フェノキシエタノール 0.800重量%
パンテノール 0.050重量%
クコバルバラム果実抽出物 0.200重量%
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%
C相 マイカ 2.000重量%」
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明を対比する。
甲1発明における「シリコーン中水型エマルジョン相」は、油中水型エマルジョン相であり、甲1発明に記載の成分からなる組成物であるから、本件発明2における「油中水型乳化組成物」に相当する。
甲1発明における「エチルヘキシルグリセリン」は、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルのことであるから、本件発明2における「モノアルキルグリセリルエーテル」、「モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり」に相当する。
そして、この含有量は「0.300重量%」で、「シリコーン中水型エマルジョン相」という組成物全体に対する含有量であり、重量%と質量%は組成物の含有割合の特定としては実質的に同じことを意味することになるので、本件発明2における「前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり」に相当する。
甲1発明における「ジステアルジモニウムヘクトライト」は、本件発明2における「有機変性粘土鉱物」であって、「有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり」に相当する。
そして、この含有量は「1.500重量%」で、これは組成物全体に対する含有量であるから、本件発明2における「前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり」に相当する。
甲1発明における「二酸化チタン」は、化粧品組成物に利用されるものであることを考慮すると(甲1b[0005])白色顔料であり、医薬部外品表示名が「微粒子酸化チタン」というものである(必要であれば参考文献1を参照。)。つまり、通常、微粒子で使用されるものであり、微粒子金属酸化物といえるから、本件発明2における「微粒子金属酸化物」に相当する。
甲1発明において、組成物全体に対する粉体の総含有量は、17.500重量%(=「二酸化チタン(及び)ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム(及び)水酸化アルミニウム(白、黄、赤、黒) 15.000重量%」+「マイカ(及び)シリカ 0.500重量%」+「マイカ 2.000重量%」)といえるから、本件発明2における「粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり」に相当する。
甲1発明は、パラベン類を含有していないから、本件発明2における「パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である」ものに相当する。
甲1発明は、「フェノキシエタノール」を含有するものであるから、本件発明2における「さらに、フェノキシエタノール」「を含有する」ものに相当する。
したがって、本件発明2と甲1発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
「 モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する油中水型乳化組成物であって、
さらに、フェノキシエタノールを含有し、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、油中水型乳化組成物。」
(相違点-甲1)
油中水型乳化組成物が、本件発明2では、
「下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)」
と特定されているのに対し、甲1発明では、上記成分からなる態様を除いていない点。
イ 相違点についての判断
甲1発明は、さらなる構成要素である「(a)水と少なくとも1種のフィルム形成剤を含む水ベースゲル相」との組成物として、皮膚等の手入れ及び/又はメイクアップ及び/又はトリートメント組成物として使用される最終的な組成物の総重量に対して、例えば25重量%-35重量%程度含まれるものである(甲1a~c)。すなわち、甲1発明は最終的な組成物を構成する相の一つであって、それ自体が皮膚等に適用されるものではないといえる。
これに対し、本件発明2は、パラベン類を含有しなくても十分な防腐力を有し、かつ安定性に優れ、低刺激性の油中水型乳化組成物を提供し得るものであり、特に、粉体を総量で10質量%以上含有させた場合であっても、刺激が抑制され、優れた使用感を与えることができる効果を奏するものである(本件明細書の段落【0009】及び段落【0020】)。
そうすると、甲1の記載から、甲1発明における着色剤や付加的な添加剤といえる成分の種類や含有量の変更を想定し得るとしても、それ自体が皮膚等に適用されるものではないから、本件発明2が奏する上記効果について予測して、そのような効果を奏する本件発明2の油中水型乳化組成物に容易に想到し得たとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和6年7月9日受付の意見書において、本件発明と甲1の技術的思想は同一であり、甲1の実施例との重なりを排除したからといって重なりが解消されるものではない旨を主張する。
しかしながら、上記イのとおり、甲1発明は最終的な組成物を構成する相の一つであって、それ自体が皮膚に適用されるものではないから、技術的思想が同一ということはできず、本件発明2が奏する上記効果の予測性があるともいえない。
エ 小括
以上より、本件発明2は、甲1に記載された発明及び本件特許の優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(3)イで述べた理由と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、当審合議体において通知した取消理由は理由がない。
2 申立理由について
本件訂正により請求項1は削除されたので、請求項1に係る特許のみに対する申立理由である2-4~2-8並びに申立理由1-1~1-3、申立理由2-9~2-11、申立理由3及び申立理由4のうちの請求項1に係る特許に対する理由については、判断の対象が存在しなくなった。
したがって、申立理由1-1~1-3、申立理由2-9~2-11、申立理由3、申立理由4のうちの請求項2~5に係る特許に対する申立理由について以下判断する。
(1)申立理由1-1について
ア 甲1に記載された発明
上記1(2)で示したとおり、甲1には、甲1発明が記載されているといえる。
イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明との相違点は上記1(3)アで述べたとおりであるところ、当該相違点(相違点-甲1)は実質的な相違点であるから、本件発明2は甲1に記載された発明であるとはいえない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イで述べた理由と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-1には理由がない。
(2)申立理由1-2について
ア 甲2の記載及び甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載 (甲2は英語で記載されているので訳文で示す)
甲2a 7頁の6行目~9行目
「本発明による化粧品組成物は、例えば、デイクリーム又はファンデーションクリームなどのエマルジョンクリーム、口紅、ヘアコンディショニング用組成物または頭皮トリートメント用組成物などの皮膚美容液または毛髪化粧品であり得る。」
甲2b 7頁の23行目~31行目
「さらに、本発明による化粧用組成物はまた、組成物の意図する使用に応じて、シンブルベリー種子油を含む異なるケア剤を含有してもよい。これらのケア剤は、典型的には0.1~40重量%の量で、より好ましくは製品のケア剤含有量は0.1~20重量%、最も好ましくは1~5重量%である。
・・・
クラウドベリー細胞培養調製物、および任意選択でクラウドベリー種子油および/または種子抽出物を含有する本発明によるエマルジョンクリームは、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、水-油-水エマルジョンのタイプまたはマイクロエマルジョンの態様であり得る。」
甲2c 16頁
「実施例10
顔の皮膚用のクラウドベリー細胞培養調製物粉末を含むファンデーションクリーム組成物の成分の例を表3に示す。クリームは皮膚に潤いを与え、紫外線から保護する。クリームはまた、皮膚に光保護と色味を与える。
表3.ファンデーションクリーム
[図:0001424557000001.jpg]
」
(イ)甲2に記載された発明
甲2の16頁の実施例10に記載されたファンデーションクリーム組成物の組成を示す表の記載より、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(甲2発明)
「以下の組成(比率%)を有するファンデーションクリーム組成物。
[図:0001424557000002.jpg]
」
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明を対比する。
ファンデーションクリーム組成物である甲2発明はエマルジョンクリーム組成物であって(甲2a)、本件発明2と「乳化組成物」である点で共通する。
甲2発明の「エチルヘキシルグリセリン」は、本件発明2の「モノアルキルグリセリルエーテル」及び「1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル」に相当する。
甲2発明の「比率%」は、甲2の「これらのケア剤は、典型的には0.1~40重量%の量で」(甲2b)との記載からみて「重量%」であると解されるので「エチルヘキシルグリセリン」の含有量である「0.05-0.3比率%」は、本件発明2における「前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり」に相当する。
甲2発明の「フェノキシエタノール」は、本件発明2の「フェノキシエタノール」に相当する。
甲2発明の「ジステアルジモニウムヘクトライト」は、本件発明2の「有機変性粘土鉱物」及び「有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり」に相当する。また、その含有量である「0.5-1.0比率%」は、本件発明2の「前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり」に相当する。
甲2発明の「(CI 77891)二酸化チタン」、「二酸化チタン」、「(CI 77491)酸化鉄」、「(CI 77492)酸化鉄」及び「(CI 77499)酸化鉄」及び「アルミナ」は、いずれも本件発明2の「微粒子金属酸化物」及び「粉体」に相当する。
甲2発明の「硫酸マグネシウム」、「マイカ」及び「シリカ」は通常「粉体」であり、本件発明2の「粉体」に相当する。
甲2発明の上記「(CI 77891)二酸化チタン」、「二酸化チタン」、「(CI 77491)酸化鉄」、「(CI 77492)酸化鉄」、「(CI 77499)酸化鉄」、「硫酸マグネシウム」、「マイカ」及び「シリカ」の各成分の下限値の合計量は9.25比率%であり、上限値の合計量は20.3比率%であるから、甲2発明の上記粉体に相当する成分の総含有量の範囲は9.25~20.3比率%であり、本件発明2における粉体の総含有量である組成物全体に対して10質量%以上と重複する範囲を含んでいる。
甲2発明はパラベンを含有しておらず、本件発明2において「ただし、・・・」として除かれた態様でもない。
したがって、本件発明2と甲2発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
「モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する乳化組成物であって、
さらに、フェノキシエタノールを含有し、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、乳化組成物
(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)。」
(相違点-甲2)
本件発明2は「油中水型」の乳化組成物であるのに対して、甲2発明はファンデーションクリーム組成物と特定され、「油中水型」の乳化組成物であることが特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
本件発明2と甲2発明との相違点は上記のとおりであるところ、当該相違点(相違点-甲2)は実質的な相違点であるから、本件発明2は甲2に記載された発明であるとはいえない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イで述べた理由と同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-2には理由がない。
(3)申立理由1-3について
ア 甲3の記載及び甲3に記載された発明
(ア)甲3の記載
甲3a
「【0001】
この発明は、汗の臭いを防ぐ効果が高く、且つ長時間にわたり持続力のある制汗・防臭剤組成物に関する。
・・・
【0006】
本発明においては、上記のような問題点を解決し、人体への安全性が高く、高い制汗・防臭効果を発揮する制汗・防臭剤組成物を提供することにある。
・・・
【0007】
上記の課題を解決するにあたり、種々検討を行ったところ、静菌剤としてグリセリルモノアルキルエーテルを使用し、さらに特定の制汗有効成分を併用して制汗防臭剤組成物に配合することにより、人体への安全性が高く、高い制汗・防臭効果を発揮することを見いだし、本発明を完成するにいたった。」
甲3b
「【0015】
本発明の制汗・防臭剤組成物の剤型としては、クリーム、乳液、ローション、ゲル状、溶液状、スティック状等がある。これらの剤型のなかでも、乳化組成物、特に油中水型乳化組成物の剤型をとることにより、より高い効果が得られる。また、これらには適宜の成分、例えば、油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、顔料、pH調製剤、他の薬効成分、紫外線吸収剤、香料等など一般に用いられる各種成分を配合することもできる。」
甲3c
「【0018】 腋臭防止用油中水型乳化クリーム
[図:0001424557000003.jpg]
【0019】
【表1】
[図:0001424557000004.jpg]
」
(イ)甲3に記載された発明
甲3の【0018】【0019】の実施例3についての記載(甲3c)より、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
(甲3発明)
「以下の組成(重量%)を有し、表1に示した制汗有効成分として酸化亜鉛を有する、腋臭防止用油中水型乳化クリーム。
[図:0001424557000005.jpg]
」
イ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と甲3発明を対比する。
甲3発明の「1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル」は本件発明4の「モノアルキルグリセリルエーテル」及び「1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル」に相当する。また、その含有量である「0.30重量%」は、本件発明4における「前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり」に相当する。
甲3発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト」は、本件発明4の「有機変性粘土鉱物」及び「ジステアリルジモニウムヘクトライト」に相当する。また、その含有量である「0.70重量%」は、本件発明4の「前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり」に相当する。
甲3発明の「酸化亜鉛」は、本件発明4の「微粒子金属酸化物」に相当する。
甲3発明の「ポリメタクリル酸メチル」及び「酸化亜鉛」は、本件発明4の「粉体」に相当する。またそれらの合計量は10.00重量%であると認められるので、本件発明4の「粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり」及び「粉体の総含有量が組成物全体に対して40質量%以下である」ことに相当する。
甲3発明は、パラベンを含有しておらず、本件発明4において「ただし、・・・」として除かれた態様でもない。
したがって、本件発明4と甲3発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
「モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する油中水型乳化組成物であって、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、粉体の総含有量が組成物全体に対して40質量%以下であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、油中水型乳化組成物
(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)。」
(相違点-甲3)
本件発明4は「フェノキシエタノール、及び/又は1,2-アルキレンジオールを含有」するものであるのに対し、甲3発明は当該化合物を含有していない点。
(イ)相違点についての判断
本件発明4と甲3発明との相違点は上記のとおりであるところ、当該相違点(相違点-甲3)は実質的な相違点であるから、本件発明4は甲3に記載された発明であるとはいえない。
ウ 本件発明5について
本件発明5と甲3発明を対比すると、両者は少なくとも上記相違点(相違点-甲3)を有するから、上記イで述べた理由と同様の理由により、本件発明5は甲3に記載された発明であるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-3には理由がない。
(4)申立理由2-9について
ア 甲1に記載された発明
上記1(2)で示したとおり、甲1には、甲1発明が記載されているといえる。
イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明との相違点は上記1(3)アで述べたとおりである。
当該相違点(相違点-甲1)について、上記1(3)イ及びウで述べたとおり、甲1発明は最終的な組成物を構成する相の一つであって、それ自体が皮膚に適用されるものではないところ、甲2~甲12の記載を参照しても、パラベン類を含有しなくても十分な防腐力を有し、かつ安定性に優れ、低刺激性の油中水型乳化組成物を提供し得るものであり、特に、粉体を総量で10質量%以上含有させた場合であっても、刺激が抑制され、優れた使用感を与えることができるという効果を達成し得る、本件発明2の油中水型乳化組成物に容易に想到し得たとはいえない。
したがって、当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イで述べた理由と同様の理由により、当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2-9には理由がない。
(5)申立理由2-10について
ア 甲2に記載された発明
上記(2)ア(イ)で示したとおり、甲2には、甲2発明が記載されているといえる。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明との相違点は上記(2)イ(ア)で述べたとおりである。
(イ)相違点についての判断
甲2において、甲2発明が50-55%の水及びその他の成分を含むファンデーションクリーム組成物であることの他に、具体的な調製方法等に関する記載はない。そして、「本発明によるエマルジョンクリームは、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、水-油-水エマルジョンのタイプまたはマイクロエマルジョンの態様であり得る」(甲2b)との記載は存在するものの、当該記載にしたがって甲2発明を「油中水型」エマルジョンとする動機付けがあるともいえない。
また、甲3の段落【0015】(甲3b)や甲5の段落【0131】に化粧料の形態として油中水型乳化組成物とし得る旨が記載されているとしても、また、甲1~甲12のその他の記載を参照しても、甲2発明を「油中水型」の乳化組成物とする動機付けがあるとはいえない。
そして、本件発明2の効果である、パラベン類を含有しなくても十分な防腐力を有し、かつ安定性に優れ、低刺激性の油中水型乳化組成物を提供し得るものであり、特に、粉体を総量で10質量%以上含有させた場合であっても、刺激が抑制され、優れた使用感を与えることができるという効果についても予測し得ないものである。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イで述べた理由と同様の理由により、当業者が甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2-10には理由がない。
(6)申立理由2-11について
ア 甲3に記載された発明
上記(3)ア(イ)で示したとおり、甲3には、甲3発明が記載されているといえる。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲3発明を対比すると、本件発明2は、本件発明4と「粉体の総含有量が組成物全体に対して40質量%以下であり」という特定がない点でのみ異なる発明であるから、上記(3)イ(ア)で述べたものと同様の理由により、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。
(一致点)
「モノアルキルグリセリルエーテル、有機変性粘土鉱物、及び微粒子金属酸化物を含有する油中水型乳化組成物であって、
前記モノアルキルグリセリルエーテルは、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテルであり、
前記有機変性粘土鉱物が、ジメチルステアリルジモニウムヘクトライトであり、
前記モノアルキルグリセリルエーテルの含有量が、組成物全体に対して0.05質量%以上0.4質量%以下であり、
前記有機変性粘土鉱物の含有量が、組成物全体に対して0.5質量%以上4質量%以下であり、
粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり、
パラベン類の含有量が、組成物全体に対して0.1質量%以下である、油中水型乳化組成物
(ただし、下記成分を含有する態様を除く:
イソドデカン 4.200重量%、
ジメチコン 7.000重量%、
イソノニルイソノナノエート 8.850重量%、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 2.000重量%、
ジステアルジモニウムヘクトライト 1.500重量%、
二酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム、及び水酸化アルミニウム 15.000重量%、
アクリレーツコポリマー 0.200重量%、
ビタミンE 0.050重量%、
ビタミンC 0.050重量%、
乳酸メンチル 2.000重量%、
ジメチコン及びジメチコンクロスポリマー 32.000重量%、
マイカ及びシリカ 0.500重量%、
水 7.750重量%、
グリセリン 5.000重量%、
クロルフェネシン 0.200重量%、
クエン酸 0.050重量%、
ソルビン酸カリウム 0.100重量%、
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.200重量%、
エチルヘキシルグリセリン 0.300重量%、
フェノキシエタノール 0.800重量%、
パンテノール 0.050重量%、
クコバルバラム(Lycium Barbarum)果実抽出物 0.200重量%、
グルタミルアミドエチルインドール 0.250重量%、並びに
マイカ 2.000重量%)。」
(相違点-甲3)
本件発明2は「フェノキシエタノール、及び/又は1,2-アルキレンジオールを含有」するものであるのに対し、甲3発明は当該化合物を含有していない点。
(イ)相違点についての判断
上記相違点(相違点-甲3)について検討すると、甲3には、人体への安全性が高く、高い制汗・防臭効果を発揮する制汗・防臭剤組成物の提供を課題とすることが記載され(甲3a【0006】)、当該課題を解決するために静菌剤としてグリセリルモノアルキルエーテルを使用し、さらに特定の制汗有効成分を併用して制汗防臭剤組成物に配合することが記載されている(甲3a【0007】)。
そうすると、甲3発明は特定の静菌剤と制汗有効成分とを併用した点に特徴を有し、静菌剤の作用により細菌の増殖を抑制する組成物であるということができるところ、組成物の防腐性を高めるための成分として、甲1の実施例4や甲2の実施例10にフェノキシエタノールを含有する組成物が記載され、甲9の【0013】に皮膚外用剤において1,2-ペンタンジオール等の多価アルコール類やフェノキシエタノール等の抗菌剤を含有することができる旨記載されているとしても、甲3発明における特徴的な静菌剤及びその含有量を維持しつつ、防腐性を付与するために、敢えて組み合わせて含有させる動機付けがあるとはいえない。
また、令和6年7月9日受付の意見書において申立人が主張するように、甲4の実施例13や実施例14、甲6の実施例5においてフェノキシエタノールを含有する組成物が記載されていることを考慮しても、上記と同様に、甲3発明に対してフェノキシエタノールを追加する動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件発明2は、当業者が甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記イで述べた理由と同様の理由により、当業者が甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第12号証の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2-11には理由がない。
(7)申立理由3について
ア 特許法第36条第6項第1号の要件について
特許法第36条第6項第1号の要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 判断
本件発明の課題及び解決手段について検討する。
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0006】等の記載からみて、パラベン類を含有しなくても十分な防腐力を有し、かつ安定性に優れ、低刺激性の油中水型乳化組成物を提供する、というものである。
そして、本件発明は、上記課題に対し、モノアルキルグリセリルエーテル及び有機変性粘土鉱物を含有させることで課題を解決できるものであると認められる(本件明細書の段落【0006】~【0007】)。
本件発明の詳細な説明の実施例には、微粒子金属酸化物を含有しない実施例1~7、微粒子金属酸化物を含有する実施例8~13のいずれにおいても、本件発明に該当する油中水型乳化組成物が、安定性や防腐力、刺激性について所定の基準を満たしていることが示されている。
そして、本件請求項2の記載からみて、モノアルキルグリセリルエーテル及び有機変性粘土鉱物を含有させるという上記の課題解決手段は本件発明において反映されており、上記実施例1~13の記載から上記課題を解決できることが認識できるといえる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明2~5の「微粒子金属酸化物」や「粉体」について、本願実施例の記載から、全ての微粒子金属酸化物や粉体が一様に防腐力、安定力、低刺激性効果を奏するとは判断できない旨、それらの含有量についても本件発明2~5の範囲まで拡張できない旨を主張する。
しかしながら、上記イのとおり、本件発明はモノアルキルグリセリルエーテル及び有機変性粘土鉱物を含有させることで課題を解決できるものであると認められ、本件明細書の段落【0016】~【0018】の記載によれば、特定の微粒子金属酸化物や粉体によって課題を解決するものとは解されないし、実施例で使用された微粒子金属酸化物や粉体以外を用いた場合や、その含有量を本件発明の範囲で変更した場合に上記課題を解決できないという具体的な技術常識も確認できない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明2~5は、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題を解決可能な範囲内のものであることが当業者において理解できるものであり、明細書に記載された発明であって、本件発明2~5に係る特許は特許法第36条第6項第1号の要件を満たす特許出願についてされたものである。
したがって、申立理由3には理由がない。
(8)申立理由4について
申立人は、本件発明の「粉体」について、総含有量の上限値の規定がなく、粉体の総含有量の範囲が定まらず、発明の範囲が不明確である旨を主張する
そこで検討すると、本件請求項2には「粉体の総含有量が組成物全体に対して10質量%以上であり」と記載されているところ、上限値は他成分の含有量によって定まり、100%以内の範囲内で多くとも粉体以外の成分の最低含有量を除いた割合であることが明らかであるから、本件発明2、3、5は明確であり、本件発明2、3、5に係る特許は特許法第36条第6項第2号の要件を満たす特許出願についてされたものである。
したがって、申立理由4には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、そのほかに請求項2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は上記のとおり訂正により削除された。これにより、請求項1に係る申立ては対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701300