特許異議申立
2022-700820
油性化粧料
- 審判番号
- 2022-700820
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-128788
- 登録番号
- 7029235
- 請求日
- 2022年08月19日
- 審決日
- 2023年08月18日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ポーラ化成工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】新井 晶代
- 【異議申立人】宮嶋 文子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 野田 定文
- 分類
- P1651.112-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.85 -YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第29条第1項第2号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7029235号発明「油性化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7029235号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~2]について訂正することを認める。
特許第7029235号の請求項2に係る特許を維持する。
特許第7029235号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7029235号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年6月30日の出願であって、令和4年2月22日に特許権の設定登録がされ、同年3月3日にその特許掲載公報が発行され、同年8月19日に、その請求項1及び2に係る特許に対し、新井 晶代(以下「申立人1」という。)により、及び、同年9月5日に、その請求項1及び2に係る特許に対し、宮嶋 文子(以下「申立人2」という。)により、それぞれ特許異議の申立て(以下「申立1」、「申立2」といい、それぞれの申立書を「申立書1」、「申立書2」という。)がされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年12月26日付け 取消理由通知
令和 5年 3月 7日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 3月24日付け 特許法第120条の5第5項の規定に
基づく通知書
同年 4月25日 意見書の提出(申立人2)
なお、令和5年3月24日付けの特許法第120条の5第5項の規定に基づく通知書に対し、申立人1による意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和5年3月7日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第7029235号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める。」ものであり、その内容は、以下の訂正事項1及び2からなるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の油性化粧料。」と記載されているのを、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種であり、
前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(A)を油性化粧料全体に対して5~50質量%含有し、
前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有することを特徴とする、油性化粧料。」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1及び2について、請求項2は、請求項1の記載を直接引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2に係る本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、請求項の削除をするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、
(ア)訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項に改め、
(イ)訂正前の請求項1における「成分(A)」の選択肢の中から、「(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー」を削除し、かつ、
(ウ)訂正前の請求項1における「成分(B)」の選択肢の中から、「ペンチレングリコール」を削除するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、かつ、同法同条同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項2に係る訂正における、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであったものを、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項に改めるとともに、訂正前の請求項1における「成分(A)」及び「成分(B)」の選択肢のうち、それぞれ一つの選択肢を削除することは、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1の発明特定事項を全て含む独立形式請求項に改めるとともに、訂正前の請求項1における「成分(A)」及び「成分(B)」の選択肢のうち、それぞれ一つの選択肢を削除しただけのものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1~2]についての訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下、当該請求項2に係る発明を「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種であり、
前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(A)を油性化粧料全体に対して5~50質量%含有し、
前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有することを特徴とする、油性化粧料。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立1について
申立人1は、証拠方法として以下の申立1甲第1号証を提出して、以下の申立理由を主張している。
(証拠方法)
申立1甲第1号証:特開2009-107984号公報(申立人1が提出。以下「申立1甲1」と略記する。)
(申立1理由の概要)
申立1理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立1理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立1理由3(サポート要件違反)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲の記載が以下のア及びイの点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
ア 発明の詳細な説明の実施例の記載及び令和3年9月28日付け意見書に添付の実験成績証明書を考慮しても、訂正前の請求項1及び2における「成分(A)」として、「(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー」を含む油性化粧料が、当該発明の課題を解決できると認識できる程度に記載されておらず、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
イ 発明の詳細な説明中には、訂正前の請求項1及び2に係る発明における「油性化粧料」として、ゲル状の口唇化粧料又はゲル状の化粧料しか記載されておらず、その他の油性化粧料とした場合においても、当該発明の課題を解決できると認識できる程度に記載されておらず、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(2)申立2について
申立人2は、証拠方法として以下の申立2甲第1-1号証~申立2甲第14号証及び申立2参考資料1~申立2参考資料3を提出して、以下の申立理由を主張している。
(証拠方法)
申立2甲第1号証-1:(申立人2が提出。以下「申立2甲1-1」と略記し、以下の申立2甲第1号証-2とあわせて「申立2甲1」という。)
ROHTOの公式ホームページ、「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」、[online]、2015年9月22日、[令和4年8月18日検索]、インターネットURL: http://web.archive.org/web/20150922114128/http://jp.rohto.com:80//lipfondue/lipbalm_a/
申立2甲第1号証-2:(申立人2が提出。以下「申立2甲1-2」と略記する。)
ROHTOの公式ホームページ、「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール) 成分」、[online]、2015年11月20日、[令和4年8月18日検索]、インターネットURL: http://web.archive.org/web/20151120030234/http://jp.rohto.com/seib/seib/?kw=143672
申立2甲第2号証-1:(申立人2が提出。以下「申立2甲2-1」と略記し、以下の申立2甲第2号証-2とあわせて「申立2甲2」という。)
ROHTOの公式ホームページ、「メンソレータム リップフォンデュ(無香料)」、[online]、2015年4月14日、[令和4年8月18日検索]、インターネットURL: http://web.archive.org/web/20150414234258/http://jp.rohto.com:80//lipfondue/lipbalm_n/
申立2甲第2号証-2:(申立人2が提出。以下「申立2甲2-2」と略記する。)
ROHTOの公式ホームページ、「メンソレータム リップフォンデュ(無香料) 成分」、[online]、2016年8月26日、[令和4年8月18日検索]、インターネットURL: http://web.archive.org/web/20160826073405/http://jp.rohto.com/seib/seib/?kw=134144
申立2甲第3号証:(申立人2が提出。以下「申立2甲3」と略記する。)
ドクターシーラボの公式ホームページ、「BBリップグロス」、[online]、2011年7月4日、インターネットURL: http://web.archive.org/web/20110704093742/http://ci-labo.com:80/shopping/product/00013724/detail.html
申立2甲第4号証:(申立人2が提出。以下「申立2甲4」と略記する。)
misshausの公式ホームページ、「M エッセンシャル ケア リップ トリートメント SPF15」、[online]、2015年7月2日、[令和4年8月18日検索]、インターネットURL:https://web.archive.org/web/20150702072904/http://www.misshaus.com:80/all/makeup/by-brand/m/m-essential-care-lip-treatment-spf15.html
申立2甲第5号証:特開2008-189618号公報(申立人2が提出。以下「申立2甲5」と略記する。)
申立2甲第6号証:特開2004-131457号公報(申立人2が提出。以下「申立2甲6」と略記する。)
申立2甲第7号証:特開2006-248997号公報(申立人2が提出。以下「申立2甲7」と略記する。)
申立2甲第8号証:特開2009-114161号公報(申立人2が提出。以下「申立2甲8」と略記する。)
申立2甲第9号証:田崎裕人企画編集、「動的粘弾性チャートの解釈事例集」、2016年1月29日第1版第1刷発行、株式会社技術情報協会発行、p.351~359(申立人2が提出。以下「申立2甲9」と略記する。)
申立2甲第10号証:申立人2による2022年8月10日付けの、ポーラ化成工業株式会社 特許第7029235号に関する実験成績証明書(1)(申立人2が提出。以下「申立2甲10」と略記する。)
申立2甲第11号証:申立人2による2022年8月10日付けの、ポーラ化成工業株式会社 特許第7029235号に関する実験成績証明書(2)(申立人2が提出。以下「申立2甲11」と略記する。)
申立2甲第12号証:各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬局審査管理課長・厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課長通知、「○化粧品の全成分表示の表示方法等について」、平成一三年三月六日(申立人2が提出。以下「申立2甲12」と略記する。)
申立2甲第13号証:FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊、No.20、2007年、p.13~18(申立人2が提出。以下「申立2甲13」と略記する。)
申立2甲第14号証:各都道府県薬務主管部(局)長あて厚生省医薬安全局審査管理課長通知、「○ポジティブリスト収載希望成分の取扱いについて」、平成一一年七月一九日(申立人2が提出。以下「申立2甲14」と略記する。)
申立2参考資料1:(申立人2が提出。以下「申立2参考1」と略記する。)
Cosmetic-Info.jpの公式ホームページ、「BG」、[online]、2010年12月27日、[令和5年4月7日検索]、インターネットURL: https://web.archive.org/web/20101227015714/https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=12
申立2参考資料2:特許第5015597号公報(申立人2が提出。以下「申立2参考2」と略記する。)
申立2参考資料3:厚生省告示第331号、「化粧品基準」、平成12年9月29日(申立人2が提出。以下「申立2参考3」と略記する。)
申立2理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、
(1)その出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた申立2甲1~申立2甲4に示された発明と同一であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、及び、
(2)その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立2甲1~申立2甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立2理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立2甲1~申立2甲4に記載された発明、及び、申立2甲5~申立2甲14に記載された技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る発明に対して、令和4年12月26日付けで当審合議体が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立1甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
なお、取消理由1(新規性欠如)は、申立1理由1(新規性欠如)に対応するものである。
(2)取消理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった申立1甲1及び申立2甲1~申立2甲4に記載された発明、並びに、申立2甲5及び申立2甲7に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
なお、取消理由2(進歩性欠如)は、申立1理由2、並びに、申立2理由2における主引例を申立2甲1~申立2甲4とし副引例を申立2甲5及び申立2甲7とする場合に対応するものである。
(3)取消理由3(サポート要件違反)
本件特許は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
発明の詳細な説明の記載および本件出願当時の技術常識を考慮しても、訂正前の請求項1及び2に係る発明における「成分(A)」として、「(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー」を用いた場合、当該発明の課題を解決できると当業者は認識することができず、また、そのような記載や示唆がなくとも、当業者が上記課題を解決できるといえる技術常識は存在しない。
したがって、訂正前の請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
なお、取消理由3(サポート要件)は、申立1理由3(サポート要件違反)アに対応するものである。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、請求項2に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 当審合議体が通知した取消理由についての判断
なお、当審合議体が通知した取消理由1及び2において、副引例として用いていない文献(申立2甲6、申立2甲8~14、申立2参考1~3)についても、ここで、副引例として検討した上での判断を、併せ記載する。
(1)申立1甲1~申立2参考3の記載事項
引用箇所等に付した下線は、当審合議体によるものである。
ア 申立1甲1の記載事項
申立1甲1a
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルと2価アルコールを含有する油性組成物。
・・・
【請求項7】
顔用または身体用の保湿化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の油性組成物。」
申立1甲1b
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを用いた刺激緩和性に優れ、安定した油性組成物を提供することである。
・・・
【発明の効果】
【0007】
1.ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを含有する刺激緩和効果に優れた安定な油性組成物を提供することができた。
2.本発明の油性組成物は刺激緩和効果に優れるので、本発明の油性組成物を用いることにより、刺激物質による皮膚のバリア破壊を抑制することができる。バリア破壊の抑制により肌荒れが改善し、皮膚が保護されるので、肌荒れ改善効果・保湿効果に優れる油性組成物を提供することができる。
3.本発明の油性組成物を用いることにより、皮膚刺激に伴う乾燥から引き起こされる老化に対し、優れた保湿効果により皮膚の健康を維持するので老化を予防できる。
4.本発明の油性組成物は、軟膏状化粧料、軟膏状医薬部外品、軟膏状皮膚外用剤、リップクリーム、あるいは、油性増粘剤でゲル化した油性ゲル状化粧料、油性ゲル状医薬部外品、油性ゲル状皮膚外用剤、油性ゲル状リップクリーム等に適用できる。本発明の油性組成物は、顕著な刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果を有するので、保湿化粧料、肌荒れ改善外用薬に適している。本発明は、刺激緩和化粧料として適している。
申立1甲1c
「【0009】
[ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル]
本発明に用いるダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(以下「DEG-DA」と称することがある)は、ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化して得られる。 ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度は、2,500~4,500mPa・sであることが好ましく、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは皮膚刺激緩和成分である。
本発明の油性組成物料に配合するダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの配合量は必ずしも制限されないが、化粧料全量に対し、10~80質量%が好ましい。
<ダイマージリノール酸>
ダイマージリノール酸は、一般的にはダイマー酸と呼ばれる2塩基酸で、2分子のリノール酸[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸]等の不飽和脂肪酸を重合させたリノール酸の2量体である。リノール酸の重合反応の生成物にはリノール酸の2量体の他に、未反応のリノール酸や3量体、さらに高重合のリノール酸重合体が含まれる。分子蒸留によりリノール酸の2量体の含有量を90質量%以上に高めることができる。また、得られたリノール酸の2量体の不飽和結合に水素を添加して安定化させることができる。これらのリノール酸の2量体を水素添加したものは、一般的には水添ダイマー酸と呼ばれている。本発明のダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの合成に用いるダイマージリノール酸としては、これらのダイマー酸、及び、水添ダイマー酸の何れをも使用することができるが、酸化安定性の観点から水添ダイマー酸を使用することがより好ましい。水添ダイマー酸は市販品、例えばユニケマ社PRIPOL1006、PRIPOL1009、PRIPOL1025等を用いることが可能である。
・・・
【0014】
[2価のアルコール]
本発明の油性組成物に配合する2価のアルコールとしては、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0015】
[用途]
本発明の油性組成物としては軟膏状化粧料、軟膏状医薬部外品、軟膏状皮膚外用剤、リップクリーム、あるいは、油性増粘剤でゲル化した油性ゲル状化粧料、油性ゲル状医薬部外品、油性ゲル状皮膚外用剤、油性ゲル状リップクリーム等が挙げられる。本発明の油性組成物は、顕著な刺激緩和効果及び肌荒れ防止効果を有するので、保湿化粧料、肌荒れ改善外用薬に適している。刺激緩和化粧料として適している。」
申立1甲1d
「【実施例】
・・・
【0025】
[ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの例1(DEG-DA5)]
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル)をDEG-DAの例1とし、その製造を示す。
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)349g(0.6モル)及びジエチレングリコール127g(1.2モル)を仕込み、窒素気流中210~220℃に加熱し、生成する水を留去しながら12時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5:1.0)(以下「DEG-DA5」と表すことがある)416gを淡黄色高粘度油状物として得た。
・・・
【0069】
[油性組成物に関する実施例]
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(DEG-DA)と2価アルコールを含有する油性組成物に関する実施例及び比較例について以下に記載する。
【0070】
<ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを含有する油性組成物の調製並びに安定性評価試験>
油性組成物の調製
実施例1~5、比較例1~5の油性組成物を、表14の処方にて、1~9の成分を加熱溶解し、攪拌しながら冷却して調製した。
【0071】
油性組成物の安定性評価
ガラス瓶に油性組成物を充填し、40℃の恒温槽に入れ、1ヵ月後の安定性(外観)を以下の基準により評価した。
○:変化なし
×:液状油が分離した
・・・
【0073】
【表14】
[図:0001404758000001.jpg]
」
イ 申立2甲1の記載事項
申立2甲1-1a「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)
・・・
メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)の成分表示はこちらをご覧ください。
全成分表示
メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)について
「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」は、まるでフォンデュするように唇をつつみこむ、贅沢な使用感の透明リップ。たっぷりの美容液オイル*1と、オーロラのようにきらめく3Dパール*2を配合。とろけるリップが唇全体をラッピングし、3Dパールが光を受けてきらめいて、より美しく立体的な唇を演出します。グロスとしてもおすすめです。
UVカット機能つき。微香性。
*1:うるおい成分:ホホバ種子オイル、オリーブオイル、ローヤルゼリーエキス、はちみつ
*2:光沢剤:合成金雲母、酸化チタン」(「ROHTO 商品情報サイト」の下 写真左説明文、写真下説明文)
申立2甲1-2a「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)
成分
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ポリシリコーン-15、ペンチレングリコール、合成金雲母、酸化チタン、香料」(「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」の全成分表示)
ウ 申立2甲2の記載事項
申立2甲2-1a「メンソレータム リップフォンデュ(無香料)
・・・
メンソレータム リップフォンデュ(無香料)の成分表示はこちらをご覧ください。
全成分表示
メンソレータム リップフォンデュ(無香料)について
まるでフォンデュするように唇をつつみこむ、贅沢な使用感の透明リップです。
たっぷりの美容液オイル*が、唇全体をラッピング。
しっとりなめらかなツヤ感をキープし、うるおいを保ちます。
透明リップだから、お気に入りのリップを塗った後のツヤ出しにも。
香りが苦手な方にもおすすめの「無香料」タイプです。
UVカット。
*ホホバ種子油、オリーブ油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス」(「ROHTO 商品情報サイト」の下 写真左説明文、写真下説明文)
申立2甲2-2a「メンソレータム リップフォンデュ(無香料)
成分
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル」(「メンソレータム リップフォンデュ(無香料)」の全成分表示)
エ 申立2甲3の記載事項
申立2甲3a「BBリップグロス」(標題)
申立2甲3b「詳細
「BBリップグロス」の詳細です。
これ1本で6つの働きを備えた多機能リップグロス
ボリュームアップ、トリートメント、モイスチャー、グロス、ナチュラルメイク、UVブロックと、幅広く活用できる多機能リップグロスです。
・・・
◆たっぷりの保湿成分を配合で、プルプル唇に
コラーゲン、ヒアルロン酸、シアバター配合。優れたうるおいパワーで、唇の乾燥を防ぎます。
・・・ 」(「BBリップグロス」の詳細)
申立2甲3c「全成分表示
ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ヒドロキシアルキル(C16-18)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、スクワラン、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、乳酸メンチル、セイヨウハッカ油、ヒアルロン酸、Na、ヒトオリゴペプチド-1、水溶性コラーゲン、シア脂、グリチルレチン酸ステアリル、セチルヒドロキシプロリンパルミタミド、グリセリン、BG、ダイズ油、レシチン、パルミチン酸エチルヘキシル、シクロペンタシロキサン、ジメチルシリル化シリカ、(加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、水、エタノール、酸化チタン、酸化鉄、1,2-ヘキサンジオール」(全成分表示)
オ 申立2甲4の記載事項(訳文にて示す。)
申立2甲4a「M エッセンシャル ケア リップ トリートメント SPF15
・・・
しっとりなめらかな唇へと導く保湿リップバーム・・」(標題、写真右説明文)
申立2甲4b「成分
リンゴ酸ジイソステアリル、C18-38 ルキル、ヒドロキシステアロイルステアレート、パルミチン酸エチルヘキシル、トウゴマ種子油、ヘキサヒドロキシステアリン酸/ヘキサステアリン酸/ヘキサロシン酸ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマー、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、酢酸トコフェノール、パルミチン酸デキストリン、メドウフォームデルタ-ラクトン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、シリル酸ジメチル、ヒマワリ種子油、水添ヒマシ油、セラミド3、トコフェリル、ヒマワリ種子油不けん化物、ネロンボ・ヌシフェラ花エキス、アンジェリカ・アクチロバ根エキス、ロドデンドロン・フェルギネウムエキス、レオントポディウム・アルピナムエキス、ミツロウ、カプリル酸グリセリル、セスキオレイン酸ソルビタン、カプリリルグリコール、パンテノール、水、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ソルビトール、ヒアルロン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、エチルヘキシルグリセリン、香料、フェノキシエタノール」(成分)
カ 申立2甲5の記載事項
申立2甲5a「【請求項1】
ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類、炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有してなる口唇用油性固形化粧料。」
申立2甲5b「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであって、唇に艶及びしっとり感を与え、べたつき感を抑制し、しかも、使用時の延びが良く、製剤安定性にも優れる口唇用油性固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類、炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有してなる口唇用油性固形化粧料、及び
〔2〕更に、N-アシルグルタミン酸ジエステルを含有してなる前記〔1〕に記載の口唇用油性固形化粧料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口唇用油性固形化粧料は、唇に艶及びしっとり感を与えるにも拘らず、べたつき感を抑制することができる。また、使用時の延びが良く使用感に優れ、製剤安定性にも優れる。
・・・
【0010】
ダイマー酸エステルとは、不飽和脂肪酸の重合によって得られる2塩基酸のエステルである。用いられる不飽和脂肪酸としては、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸などが挙げられる。また、エステル部に用いられるアルコール類としては、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコールなどが挙げられる他、ヒマシ油などを用いることもできる。
・・・
【0012】
尚、ダイマー酸エステルは、市販品をそのまま用いることもできる。・・・ダイマージリノール酸ジグリセリンイソステアレートとしては、商品名 ハイルーセントISDA(高級アルコール工業社製)などを例示することができる。
【0013】
ダイマー酸エステルは、その1種を単独で、或いは2種以上を適宜組合せて用いることができる。その含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定はなく、艶及びしっとり感を良好にする観点から、化粧料中、1重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上である。また、べたつき感を抑制する観点から、化粧料中、60重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以下である。これらから、口唇用油性固形化粧料中のダイマー酸エステルの含有量は、1~60重量%が好ましく、5~50重量%がより好ましい。
・・・
【0016】
本発明で用いられる1,2-アルカンジオールは、炭素数5~10の1,2-アルカンジオールである。具体的には、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオールが挙げられ、これらのうち、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールを用いるのが好ましく、1,2-オクタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0017】
尚、本発明においては、上記した1,2-アルカンジオールの1種を単独で、或いは2種以上を適宜組合わせて用いることもできる。また、その含有量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定はなく、べたつき感を抑制し、しっとり感を付与する観点から、化粧料中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、経済性の観点から、化粧料中、5重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下である。これらから、口唇用油性固形化粧料中の1,2-アルカンジオールの含有量は、0.01~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がより好ましい。」
キ 申立2甲6の記載事項
申立2甲6には実施例4~6及び9として、ダイマー酸エステル13~33%及びDPG(ジプロピレングリコール)3%を含むカラーグロス処方が記載されている。
ク 申立2甲7の記載事項
申立2甲7a「【請求項1】
(a)分子量300~700のポリエチレンワックスを必須成分として含む炭化水素系ワックスを7~30質量%〔ただし上記分子量300~700のポリエチレンワックスを(a)成分100に対し15~80(質量比)の割合で含む〕と、(b)有機概念図におけるIOBが0~0.2であり25℃において液状~半固型状である油分40~80質量%と、を含有し、かつ植物系ワックスの含有量が1.0質量%以下であり、37℃における組成物全体の硬度が0~10である、油性固型化粧料。」
申立2甲7b「【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、塗布時に柔らかく、滑らかな使用性を有し、塗布後は密着性に優れ、つや、うるおい等の化粧持続効果が高く、温度安定性に優れる油性固型化粧料を提供することを目的とする。」
申立2甲7c「【0051】
[処方例4(リップグロス化粧料)]
(配 合 成 分) (配合量)
ポリエチレンワックス(平均分子量500) 7
マイクロクリスタリンワックス 13
ダイマージリノール酸・フィトステロール・ベヘニルアルコールエステル
20
ダイマージリノール酸・フィトステロール・イソステアリルアルコールエステル 10
リンゴ酸ジイソステアリル 15
ポリブテン 20
流動パラフィン 3
ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末
3
シリコーン被覆赤色酸化鉄 3
ベンガラ被覆雲母チタン 2
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1
1,3ブチレングリコール 3
パラベン 適 量
(製造)
全体を攪拌混合、脱気した後、ラチェット式押し出し容器に充填し、5℃まで冷却してラチェット式押し出し容器に充填しリップグロス化粧料を得た。」
ケ 申立2甲8の記載事項
申立2甲8の段落【0016】~【0017】において、化粧料に用いる有機溶剤として、「DPG、PG、13BG、12ヘキサンジオール」があること、及び、化粧料に用いる艶・光沢剤として「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー(ハイルーセントISDA)」があることが記載されている。
コ 申立2甲9の記載事項
申立2甲9の「4.リップグロスの粘弾性測定試験による評価方法」(356頁~359頁)には、表5(356頁)に、リップグロスの処方例として、「ハイルーセントISDAを配合したリッチ・フィットタイプ処方例」、図8(357頁)に、リップグロスの粘弾性測定によるフィット感スムース感の測定の測定条件及び測定結果、並びに、図9(357頁)に、リップグロスの粘弾性測定によるリッチ感ライト感の測定の測定条件及び測定結果が、それぞれ記載されている。
サ 申立2甲10の記載事項
申立2甲10には、「ポーラ化成工業株式会社 特許第7029235号に関する実験成績証明書(1)」として、申立2甲1に記載の「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」における、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー配合濃度の定量分析に関する定量分析方法及び定量結果が記載されている。
シ 申立2甲11の記載事項
申立2甲11には、「ポーラ化成工業株式会社 特許第7029235号に関する実験成績証明書(2)」として、2021年9月28日付け意見書に添付された実験成績証明書に記載の実施例及び比較例の、申立人2による追試結果が記載されている。
ス 申立2甲12の記載事項
申立2甲12には、「化粧品の全成分表示の表示方法」について、「成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載する」ことが記載されている(1(2))。
セ 申立2甲13の記載事項
申立2甲13には、「スティッ状口紅には形状を保持する目的で固形油が10~20%配合される」ことが記載されている(13頁右欄末行~14頁左欄1行)。
ソ 申立2甲14の記載事項
申立2甲14には、紫外線吸収剤であるパラメトキシケイヒ酸2-エチルヘキシルの口唇化粧品における配合量の上限が7.5%であることが記載されている(別紙 ポジティブリスト(案)の別表 紫外線吸収剤の表)。
タ 申立2参考1の記載事項
申立2参考1には、化粧品表示名称「BG」は、1,3-ブチレングリコールの表示名称であることが記載されている。
チ 申立2参考2の記載事項
申立2参考2には、「ダイマー酸とは、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸をDiels Alder反応で2分子重合した環状の2塩基酸であ」り、ユニケマ社製「PRIPOL1009」(登録商標)等の市販のダイマー酸は、水添した後蒸留精製したもので、水添ダイマー酸とも呼ばれることが記載されている(段落【0023】)。
ツ 申立2参考3の記載事項
申立2参考3には、化粧品基準として、化粧品に配合される、防腐剤又は紫外線吸収剤には配合の制限があることが記載されている。
(2)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 申立1甲1を主引例とする場合
(ア)申立1甲1に記載された発明
申立1甲1は、「ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルと2価アルコールを含有する油性組成物。」及び「顔用または身体用の保湿化粧料・・である・・請求項1~6のいずれかに記載の油性組成物。」(申立1甲1a 請求項1及び請求項7)に関し記載するものである。
そして、上記請求項1の「油性組成物」及び請求項7の「保湿化粧料」の具体例として、申立1甲1の実施例1~3には、表14の処方に従い、「油性DEG-DA5 40質量%、イソノナン酸イソトリデシル10質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル40質量%、マカデミアンナッツ油フィトステリル5質量%、及び、ジプロピレングリコール5質量%、1,3-ブチレングリコール5質量%又は1,2-ペンタンジオール5質量%を含有する油性組成物」である保湿油性化粧料を調製して得たこと(申立1甲1d【表14】【0073】)が記載されている。
そうすると、申立1甲1には、請求項1に対応した実施例1~3に関する発明として、次の発明(以下「申立1甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
「油性DEG-DA5 40質量%、イソノナン酸イソトリデシル 10質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル 40質量%、及び、マカデミアンナッツ油フィトステリル 5質量%、並びに、ジプロピレングリコール 5質量%、1,3-ブチレングリコール 5質量%、又は、1,2-ペンタンジオール 5質量%を含有する油性組成物。」
さらに、申立1甲1には、請求項7に対応した実施例1~3に関する発明として、次の発明(以下「申立1甲1発明2」という。)も記載されているといえる。
「油性DEG-DA5 40質量%、イソノナン酸イソトリデシル 10質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル 40質量%、及び、マカデミアンナッツ油フィトステリル 5質量%、並びに、ジプロピレングリコール 5質量%、1,3-ブチレングリコール 5質量%、又は、1,2-ペンタンジオール 5質量%を含有する保湿油性化粧料。」
(イ)本件発明と申立1甲1発明2との対比・判断
a 申立1甲1発明2との対比
(a)申立1甲1発明2における「保湿油性化粧料」は、本件発明における「油性化粧料」に相当する。
(b)申立1甲1発明2における「油性DEG-DA5」について、申立1甲1には、その製造例が以下のように記載されている。
「【0025】[ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの例1(DEG-DA5)]
・・・
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)349g(0.6モル)及びジエチレングリコール127g(1.2モル)を仕込み、窒素気流中210~220℃に加熱し、生成する水を留去しながら12時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5:1.0)(以下「DEG-DA5」と表すことがある)416gを淡黄色高粘度油状物として得た。」(申立1甲1d)
上記「ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル・・(DEG-DA5)」は、「ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)」と「ジエチレングリコール」をエステル化反応で重合することにより得られるもので、共重合体(コポリマー)といえる。
また、上記「ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)」は、申立1甲1に「【0009】・・・<ダイマージリノール酸>・・・水添ダイマー酸は市販品、例えばユニケマ社PRIPOL1006、PRIPOL1009、PRIPOL1025等を用いる・・・」(申立1甲1c)と記載されていることから、水添ダイマージリノール酸であるといえる。
そうすると、申立1甲1発明2における「油性DEG-DA5」は、水添ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することにより得られるダイマー酸エステルの共重合体(コポリマー)といえるから、本件発明における「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」「前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上であり」と、「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」である限りにおいて一致する。
(c)申立1甲1発明2における「油性DEG-DA5 40質量%」は、「油性組成物」全体に対して、「油性DEG-DA5」を「40質量%」含有していることである。
そうすると、申立1甲1発明2における「油性DEG-DA5 40質量%」は、前記(b)を踏まえると、「油性DEG-DA5」が本件発明における「前記成分(A)」であるから、本件発明における「前記成分(A)を油性化粧料全体に対して5~50質量%含有する」ものに相当する。
(d)申立1甲1発明2における「ジプロピレングリコール」及び「1,3-ブチレングリコール」は、本件発明における「成分」「(B)ポリオール」「前記成分(B)が」「ジプロピレングリコール」及び「1,3-ブチレングリコール」にそれぞれ相当する。
(e)申立1甲1発明2における「ジプロピレングリコール 5質量%」及び「1,3-ブチレングリコール 5質量%」について、両「5質量%」は、「油性組成物」全体に対して、「ジプロピレングリコール」又は「1,3-ブチレングリコール」をそれぞれ「5質量%」含有し、合計10質量%含有していることとなる。
ここで、申立1甲1発明2における「ジプロピレングリコール 5質量%」及び「1,3-ブチレングリコール 5質量%」は、前記(d)を踏まえると、「ジプロピレングリコール」及び「1,3-ブチレングリコール」が本件発明における「前記成分(B)」であるから、本件発明における「前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有する」ものに相当する。
(f)以上によれば、本件発明と申立1甲1発明2とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(A)を油性化粧料全体に対して5~50質量%含有し、
前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有することを特徴とする、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点(申立1甲1発明2):
「成分(A)」が、本件発明では、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上」であるのに対し、申立1甲1発明2では、「DEG-DA5」、すなわち、水添ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することにより得られるダイマー酸エステルの共重合体(コポリマー)である点。
b 相違点についての判断
(a)新規性について
申立1甲1発明2における「DEG-DA5」、すなわち、水添ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することにより得られるダイマー酸エステルの共重合体(コポリマー)は、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」又は「(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」と、ダイマー酸エステルの共重合体として異なるものである。
そうすると、相違点(申立1甲1発明2)は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明は、申立1甲1に記載された発明であるとはいえない。
(b)進歩性について
申立1甲1には、保湿油性化粧料に含有される成分として、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」及び「(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」については、記載も示唆もされていない。
そして、申立1甲1には、申立1甲1発明2が、皮膚緩和刺激成分としてダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを用いた、刺激緩和性に優れ、安定した油性組成物を提供することを課題として(申立1甲1b)、皮膚刺激緩和成分としてのダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルと2価アルコールを含有する油性組成物とすることによって、上記課題、すなわち、刺激緩和性に優れ、安定した油性組成物を提供するという課題を解決した(申立1甲1a、申立1甲1b)ものであることが記載されているといえる。
申立1甲1発明2において、上記課題を解決する上で、皮膚緩和刺激成分として必須の成分である、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの具体例である「DEG-DA5」、すなわち、水添ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することにより得られるダイマー酸エステルの共重合体(コポリマー)を、上記課題を解決する上で、皮膚緩和刺激成分として必須の成分である、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルとは異なる、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2の種以上」のものに変更することは、上記課題を解決する上で、皮膚緩和刺激成分として必須の成分を欠如させることとなり、上記課題を解決することができなくなってしまうことから、動機付けがあるとはいえない。
また、申立2甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された事項を検討しても、申立1甲1発明2において、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの具体例である「DEG-DA5」を、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルとは異なる、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上」のものにすることを、動機付ける記載や示唆はない。
また、皮膚緩和刺激成分としてダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを用いた、刺激緩和性に優れ、安定した油性組成物を提供するという課題で、皮膚緩和刺激成分として必須の成分である、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを、それとは異なる、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2の種以上」のものに変更することが、技術常識であったとはいえない。
そうすると、申立1甲1発明2において、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの具体例である「DEG-DA5」を、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルとは異なる、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上」のものとすることは、当業者であっても、申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、本件発明の効果を検討するまでもなく、申立1甲1に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件発明と申立1甲1発明1との対比・判断
a 申立1甲1発明1との対比
(a)本件発明1における「油性化粧料」は、「成分(A)及び(B)を含有する」組成物であり、油性組成物といえる。
そうすると、申立1甲1発明1における「油性組成物」と、本件発明1における「油性化粧料」とは、油性組成物である点で、共通する。
(b)申立1甲1発明1は「油性組成物」である点で、申立1甲1発明2の「油性化粧料」と異なるのみである。
そうすると、本件発明1と申立1甲1発明1との対比については、前記(ア)a(b)~(e)と同様である。
(c)以上によれば、本件発明1と申立1甲1発明1とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性組成物であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(A)を油性化粧料全体に対して5~50質量%含有し、
前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%含有することを特徴とする、油性組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1(申立1甲1発明1):
「成分(A)」が、本件発明では、「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上」であるのに対し、申立1甲1発明1では、「DEG-DA5」、すなわち、水添ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することにより得られるダイマー酸エステルの共重合体(コポリマー)である点。
相違点2(申立1甲1発明1):
油性組成物が、本件発明1では、「油性化粧料」であるのに対し、申立1甲1発明1では、「油性化粧料」であるか明らかでない点。
b 相違点についての判断
相違点1(申立1甲1発明1)は、相違点(申立1甲1発明2)と同様である。
そうすると、上記(イ)bで述べたように、本件発明は、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、また、相違点2(申立1甲1発明1)及び本件発明の効果を検討するまでもなく、申立1甲1に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、また、申立1甲1に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
イ 申立2甲1を主引用例とする場合
(ア)申立2甲1に記載された発明
申立2甲1は、「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」(申立2甲1-1a)に関するものであって、その成分は、「ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ポリシリコーン-15、ペンチレングリコール、合成金雲母、酸化チタン、香料」(申立2甲1-2a)であることが記載されている。
そうすると、申立2甲1には、次の発明(以下「申立2甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「成分として、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ポリシリコーン-15、ペンチレングリコール、合成金雲母、酸化チタン、香料を含む、リップ。」
(イ)本件発明と申立2甲1発明との対比
a 申立2甲1発明における「リップ」は、化粧料であり、「ホホバ種子油」や「オリーブ果実油」を含むものであるから、油性化粧料といえる。
そうすると、申立2甲1発明における「リップ」は、本件発明における「油性化粧料」に相当する。
b 申立2甲1発明における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」は、本件発明における「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」「成分(A)が」「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」に相当する。
c 申立2甲1発明における「ペンチレングリコール」は、ポリオールの一種であるから、本件発明における「成分」「(B)ポリオール」「前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上」であるものと、「成分」「(B)ポリオール」である限りにおいて、一致する。
d 以上によれば、本件発明と申立2甲1発明とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上であるものを
含有することを特徴とする、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1(申立2甲1発明)
成分(A)である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して5~50質量%」含有するのに対し、申立2甲1発明では、その含有量は明らかでない点。
相違点2(申立2甲1発明)
「(B)ポリオール」について、本件発明では、「前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であり」、「前記成分(B)を油性化粧料全体に対して0.01~10質量%」含有するのに対し、申立2甲1発明では、成分(B)が、ペンチレングリコールであり、その含有量は明らかでない点。
(ウ)相違点についての判断
相違点1(申立2甲1発明)について検討する。
申立2甲1には、甲2発明1における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」の含有量については、記載も示唆もされていない。
申立2甲5には、唇に艶及びしっとり感を与え、べたつき感を抑制し、しかも、使用時の延びが良く、製剤安定性にも優れる口唇用油性固形化粧料を提供することを課題として(申立2甲5b)、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料(申立2甲5a)とすることによって、上記課題を解決したこと、並びに、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料において、ダイマー酸エステルの含有量を、艶及びしっとり感を良好にする観点から、化粧料中より好ましくは5重量%以上、べたつき感を抑制する観点から、化粧料中より好ましくは50重量%以下とすること(申立2甲5b)が記載されている。
申立2甲1発明は、ダイマー酸エステルの一種である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、及び、炭素数5の1,2-アルカンジオールであるペンチレングリコールを含有するリップであるものの、室温で固形のロウ類を含有するものではない。
そのような、室温で固形のロウ類を含有するものではない、申立2甲1発明において、ダイマー酸エステルの一種である、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、申立2甲5に記載の、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料であることを前提とし、上記観点(艶及びしっとり感を良好にする観点、及び、べたつき感を抑制する観点)から、ダイマー酸エステルの好ましい含有量である、化粧料中5重量%以上50重量%以下という技術的事項を適用することには、動機付けがあるとはいえない。
また、申立1甲1及び申立2甲2~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された事項を検討しても、申立2甲1発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップ全体に対して5~50質量%とすることを、動機付ける記載や示唆はないし、申立2甲1発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップ全体に対して5~50質量%とすることが、技術常識であったとはいえない。
そうすると、申立2甲1発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることは、当業者であっても、申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、相違点2(申立2甲1発明)及び本件発明の効果を検討するまでもなく、申立2甲1に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、申立2甲1に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 申立2甲2を主引用例とする場合
(ア)申立2甲2に記載された発明
申立2甲2は、「メンソレータム リップフォンデュ(無香料)」(申立2甲2-1a)に関するものであって、その成分は、「ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル」(申立2甲2-2a)であることが記載されている。
そうすると、申立2甲2には、次の発明(以下「申立2甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「成分として、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ラノリン、オクチルドデカノール、ホホバ種子油、ジブチルラウロイルグルタミド、ミリスチン酸デキストリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水、オリーブ果実油、ハチミツ、ローヤルゼリーエキス、BG、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを含む、リップ。」
(イ)本件発明と申立2甲2発明との対比
a 申立2甲2発明における「リップ」は、化粧料であり、「ホホバ種子油」や「オリーブ果実油」を含むものであるから、油性化粧料といえる。
そうすると、申立2甲2発明における「リップ」は、本件発明における「油性化粧料」に相当する。
b 甲2発明2における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」は、本件発明における「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」「成分(A)が」「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」に相当する。
c 申立2甲2発明における「BG」について、リップの成分における「BG」とは、ブチレングリコールを意味するものと理解される。そして、ブチレングリコールとしては、化学構造上(安定的に存在するものとして)、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコールが存在する。
そうすると、申立2甲2発明における「BG」は、本件発明における「成分」「(B)ポリオール」「成分(B)が」「1,3-ブチレングリコール」と、「成分」「(B)ポリオール」「成分(B)が」「ブチレングリコール」である限りにおいて、一致する。
d 以上によれば、本件発明と申立2甲2発明とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(B)が、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であるものを
含有することを特徴とする、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1(申立2甲2発明)
成分(A)である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して5~50質量%」含有するのに対し、申立2甲2発明では、その含有量は明らかでない点。
相違点2(申立2甲2発明)
成分(B)であるブチレングリコールについて、本件発明は、「1,3-ブチレングリコール」であるのに対し、申立2甲2発明は、1,3-ブチレングリコールであるか明らかでない点。
相違点3(申立2甲2発明)
成分(B)であるブチレングリコールについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して0.01~10質量%」含有するのに対し、申立2甲2発明では、その含有量は明らかでない点。
(ウ)相違点についての判断
相違点1(申立2甲2発明)について、検討する。
申立2甲2には、申立2甲2発明における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」の含有量については、記載も示唆もされていない。
申立2甲5に記載されている技術的事項については、前記イ(ウ)で述べたとおりである。
申立2甲2発明は、ダイマー酸エステルの一種である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを含有するリップではあるものの、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、申立2甲2発明に含まれる「BG」は「ブチレングリコール」であり、炭素数5の1,2-アルカンジオールではないことから、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない。
そのような、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない、申立2甲2発明において、ダイマー酸エステルの一種である、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、申立2甲5に記載の、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料であることを前提とし、艶及びしっとり感を良好にする観点、及び、べたつき感を抑制する観点から、ダイマー酸エステルの好ましい含有量である、化粧料中5重量%以上50重量%以下という技術的事項を適用することには、動機付けがあるとはいえない。
また、申立1甲1、申立2甲1、申立2甲3~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された事項を検討しても、申立2甲2発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップ全体に対して5~50質量%とすることを、動機付ける記載や示唆はないし、申立2甲2発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップ全体に対して5~50質量%とすることが、技術常識であったともいえない。
そうすると、申立2甲2発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることは、当業者であっても、申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、相違点2(申立2甲2発明)、相違点3(申立2甲2発明)及び本件発明の効果を検討するまでもなく、申立2甲2に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、申立2甲2に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立2甲3を主引用例とする場合
(ア)申立2甲3に記載された発明
申立2甲3は、「BBリップグロス」(申立2甲3a)に関するものであって、その成分は、「ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ヒドロキシアルキル(C16-18)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、スクワラン、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、乳酸メンチル、セイヨウハッカ油、ヒアルロン酸、Na、ヒトオリゴペプチド-1、水溶性コラーゲン、シア脂、グリチルレチン酸ステアリル、セチルヒドロキシプロリンパルミタミド、グリセリン、BG、ダイズ油、レシチン、パルミチン酸エチルヘキシル、シクロペンタシロキサン、ジメチルシリル化シリカ、(加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、水、エタノール、酸化チタン、酸化鉄、1,2-ヘキサンジオール」(申立2甲3c)であることが記載されている。
そうすると、申立2甲3には、次の発明(以下「申立2甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「成分として、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ヒドロキシアルキル(C16-18)ヒドロキシダイマージリノレイルエーテル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、スクワラン、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、乳酸メンチル、セイヨウハッカ油、ヒアルロン酸、Na、ヒトオリゴペプチド-1、水溶性コラーゲン、シア脂、グリチルレチン酸ステアリル、セチルヒドロキシプロリンパルミタミド、グリセリン、BG、ダイズ油、レシチン、パルミチン酸エチルヘキシル、シクロペンタシロキサン、ジメチルシリル化シリカ、(加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー、水、エタノール、酸化チタン、酸化鉄、1,2-ヘキサンジオールを含む、BBリップグロス。」
(イ)本件発明と申立2甲3発明との対比
a 申立2甲3発明における「BBリップグロス」は、化粧料であり、「ダイズ油」を含むものであるから、油性化粧料といえる。
そうすると、申立2甲3発明における「BBリップグロス」は、本件発明における「油性化粧料」に相当する。
b 甲2発明3における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」は、本件発明における「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」「成分(A)が」「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」に相当する。
c 申立2甲3発明における「BG」について、リップグロスの成分における「BG」とは、ブチレングリコールを意味するものと理解される。そして、ブチレングリコールとしては、化学構造上(安定的に存在するものとして)、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコールが存在する。
そうすると、申立2甲3発明における「BG」は、本件発明における「成分」「(B)ポリオール」「成分(B)が」「1,3-ブチレングリコール」と、「成分」「(B)ポリオール」「成分(B)が」「ブチレングリコール」である限りにおいて、一致する。
d 以上によれば、本件発明と申立2甲3発明とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(B)が、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であるものを
含有することを特徴とする、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1(申立2甲3発明)
成分(A)である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して5~50質量%」含有するのに対し、申立2甲3発明では、その含有量は明らかでない点。
相違点2(申立2甲3発明)
成分(B)であるブチレングリコールについて、本件発明は、「1,3-ブチレングリコール」であるのに対し、申立2甲3発明は、1,3-ブチレングリコールであるか明らかでない点。
相違点3(申立2甲3発明)
成分(B)であるブチレングリコールについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して0.01~10質量%」含有するのに対し、申立2甲3発明では、その含有量は明らかでない点。
(ウ)相違点についての判断
相違点1(申立2甲3発明)について、検討する。
申立2甲3には、申立2甲3発明における「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」の含有量については、記載も示唆もされていない。
申立2甲5に記載されている技術的事項については、前記イ(ウ)で述べたとおりである。
申立2甲3発明は、ダイマー酸エステルの一種である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを含有するリップグロスではあるものの、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、申立2甲3発明に含まれる「BG」は「ブチレングリコール」であり、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない。
そのような、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない、申立2甲3発明において、ダイマー酸エステルの一種である、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、申立2甲5に記載の、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料であることを前提とし、艶及びしっとり感を良好にする観点、及び、べたつき感を抑制する観点から記載された、ダイマー酸エステルの好ましい含有量である、化粧料中5重量%以上50重量%以下という技術的事項を適用することには、動機付けがあるとはいえない。
また、申立1甲1~申立2甲2、申立2甲4~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された事項を検討しても、申立2甲3発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップグロス全体に対して5~50質量%とすることを、動機付ける記載や示唆はないし、申立2甲3発明において、上記コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップグロス全体に対して5~50質量%とすることが、技術常識であったともいえない。
そうすると、申立2甲3発明において、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量として、油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることは、当業者であっても、申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、相違点2(申立2甲3発明)、相違点3(申立2甲3発明)及び本件発明の効果を検討するまでもなく、申立2甲3に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、申立2甲3に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 申立2甲4を主引用例とする場合
(ア)申立2甲4に記載された発明
申立2甲4は、「M エッセンシャル ケア リップ トリートメント SPF15」(申立2甲4a)に関するものであって、その成分は、「リンゴ酸ジイソステアリル、C18-38アルキル(当審注:原文は「C18-38 ルキル」と記載されているが、「C18-38アルキル」の誤記と認める。)ヒドロキシステアロイルステアレート、パルミチン酸エチルヘキシル、トウゴマ種子油、ヘキサヒドロキシステアリン酸/ヘキサステアリン酸/ヘキサロシン酸ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマー、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、酢酸トコフェノール、パルミチン酸デキストリン、メドウフォームデルタ-ラクトン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、シリル酸ジメチル、ヒマワリ種子油、水添ヒマシ油、セラミド3、トコフェリル、ヒマワリ種子油不けん化物、ネロンボ・ヌシフェラ花エキス、アンジェリカ・アクチロバ根エキス、ロドデンドロン・フェルギネウムエキス、レオントポディウム・アルピナムエキス、ミツロウ、カプリル酸グリセリル、セスキオレイン酸ソルビタン、カプリリルグリコール、パンテノール、水、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ソルビトール、ヒアルロン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、エチルヘキシルグリセリン、香料、フェノキシエタノール」(申立2甲4b)であることが記載されている。
そうすると、申立2甲4には、次の発明(以下「申立2甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「成分として、リンゴ酸ジイソステアリル、C18-38アルキルヒドロキシステアロイルステアレート、パルミチン酸エチルヘキシル、トウゴマ種子油、ヘキサヒドロキシステアリン酸/ヘキサステアリン酸/ヘキサロシン酸ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマー、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、酢酸トコフェノール、パルミチン酸デキストリン、メドウフォームデルタ-ラクトン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、シリル酸ジメチル、ヒマワリ種子油、水添ヒマシ油、セラミド3、トコフェリル、ヒマワリ種子油不けん化物、ネロンボ・ヌシフェラ花エキス、アンジェリカ・アクチロバ根エキス、ロドデンドロン・フェルギネウムエキス、レオントポディウム・アルピナムエキス、ミツロウ、カプリル酸グリセリル、セスキオレイン酸ソルビタン、カプリリルグリコール、パンテノール、水、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ソルビトール、ヒアルロン酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、エチルヘキシルグリセリン、香料、フェノキシエタノールを含む、リップトリートメント。」
(イ)本件発明と申立2甲4発明との対比
a 申立2甲4発明における「リップトリートメント」は、化粧料であり、「トウゴマ種子油」や「ヒマワリ種子油」等を含むものであるから、油性化粧料といえる。
そうすると、申立2甲4発明における「リップトリートメント」は、本件発明における「油性化粧料」に相当する。
b 甲2発明4における「イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマー」は、本件発明における「成分(A)」「(A)ダイマー酸エステルの共重合体」「成分(A)が」「(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー」に相当する。
c 申立2甲4発明における「プロピレングリコール」は、本件発明における「成分」「(B)ポリオール」「成分(B)が」「プロピレングリコール」に相当する。
d 以上によれば、本件発明1と申立2甲4発明とは、
「下記成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする油性化粧料であって、
(A)ダイマー酸エステルの共重合体
(B)ポリオール
前記成分(A)が、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーから選ばれる1種または2種以上であり、
前記成分(B)が、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールより選ばれる1種または2種以上であるものを
含有することを特徴とする、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1(申立2甲4発明)
成分(A)である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して5~50質量%」含有するのに対し、申立2甲4発明では、その含有量は明らかでない点。
相違点2(申立2甲4発明)
成分(B)であるプロピレングリコールについて、本件発明では、「油性化粧料全体に対して0.01~10質量%」含有するのに対し、申立2甲4発明では、その含有量は明らかでない点。
(ウ)相違点についての判断
相違点1(申立2甲4発明)について、検討する。
申立2甲4には、申立2甲4発明における「イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマー」の含有量については、記載も示唆もされていない。
申立2甲5に記載されている技術的事項については、前記イ(ウ)で述べたとおりである。
申立2甲4発明は、ダイマー酸エステルの一種であるイソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマーを含有するリップトリートメントではあるものの、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、申立2甲4発明に含まれる「プロピレングリコール」は、「プロパン1,2ジオール」という炭素数3の1,2-アルカンジオールであって、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない。
そのような、室温で固形のロウ類を含むものでなく、かつ、炭素数5の1,2-アルカンジオールを含有するものでもない、申立2甲4発明において、ダイマー酸エステルの一種である、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマーの含有量として、申立2甲5に記載の、ダイマー酸エステル、室温で固形のロウ類及び炭素数5~10の1,2-アルカンジオールを含有する口唇用油性固形化粧料であることを前提とし、艶及びしっとり感を良好にする観点、及び、べたつき感を抑制する観点から記載された、ダイマー酸エステルの好ましい含有量である、化粧料中5重量%以上50重量%以下という技術的事項を適用することには、動機付けがあるとはいえない。
また、申立1甲1~申立2甲3、申立2甲5~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された事項を検討しても、申立2甲4発明において、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップトリートメント全体に対して5~50質量%とすることを、動機付ける記載や示唆はないし、申立2甲4発明において、上記コポリマーの含有量として、油性化粧料であるリップトリートメント全体に対して5~50質量%とすることが、技術常識であったともいえない。
そうすると、申立2甲4発明において、イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸コポリマーの含有量として、油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることは、当業者であっても、申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、相違点2(申立2甲4発明)及び本件発明の効果を検討するまでもなく、申立2甲4に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、申立2甲4に記載された発明並びに申立1甲1~申立2甲14及び申立2参考1~申立2参考3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
カ 申立人の主張について
(ア)申立人2は、以下の旨を主張している。
a 本件発明と申立2甲1発明との相違点1(申立2甲1発明)に関し、申立書2の3(4)ウ(ア)及び令和5年4月25日付け申立人2の意見書の3(2)イ(ア)において、申立2甲1発明について、水を含む全19成分のうち2番目に多く配合されている成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量は、全体の50質量%を超えることは有り得ず、5質量%以上である蓋然性は極めて高いといえる(その理由として、申立2甲1発明の処方における製剤の形状保持成分(固形化剤)は、6番目に多い成分であるジブチルラウロイルグルタミドのみであり、この成分が5%の未満であった場合、剤形として固化することができないため、リップスティックとしての剤型を維持することが困難であることは、当業者には明らかであること、また、一般的にリップスティックに用いられる固形化剤であるワックスは処方中約10~20%配合されていることは当業者には常識であることからも、本処方における固形化剤であるジブチルラウロイルグルタミドも約10%程度は配合されていると容易に想定されるため)。
また、申立2甲10の実験成績証明書(1)から、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量が「35%」程度であることも理解される。
したがって、申立2甲1発明は、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを油性化粧料全体に対して5~50質量%で含有している蓋然性は非常に高く、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たことであり、それにより奏される効果について、申立2甲11の実験成績証明書(2)の実験結果からも、当業者が予測し得ない格別顕著な効果とは認められない旨。
b 本件発明と申立2甲2発明との相違点1(申立2甲2発明)に関し、申立書2の3(4)ウ(ウ)及び令和5年4月25日付け申立人2の意見書の3(2)イ(イ)において、上記aの主張と同様に、申立2甲2発明において、2番目に多い成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量は、全体の50質量%以下であることは自明であり、また、6番目に多い成分である唯一の固形化剤であるジブチルラウロイルグルタミドよりも多く含まれているため、5質量%よりも多く含まれていることも明らかである。
したがって、申立2甲2発明は、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを油性化粧料全体に対して5~50質量%で含有しているものである、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たことであり、それにより奏される効果について、申立2甲11の実験成績証明書(2)の実験結果からも、当業者が予測し得ない格別顕著な効果とは認められない旨。
c 本件発明と申立2甲3発明との相違点1(申立2甲3発明)に関し、申立書2の3(4)ウ(オ)及び令和5年4月25日付け申立人2の意見書の3(2)イ(ウ)において、申立2甲3発明について、水を含む全29成分のうち2番目に多く配合されている成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量は、全体の50質量%を超えることは有り得ず、5質量%以上である蓋然性は極めて高いといえる(その理由として、申立2甲3発明の処方における香料・冷感剤の役割を持つ乳酸メンチルは9番目に多い成分であり、唇(粘膜)に使用される化粧料であることも考慮すると、この成分は1質量%未満であると考えられ、2番目の成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーが5質量%未満であるとすると、1番目の成分であるダイマージリノール酸水添ヒマシ油が高配合となり、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油特有の油性感強く、ベタベタし曳糸性がある淡黄色のリップグロスとなってしまい、製品として市場へ流通させるには現実的でない。そうすると、2番目に多い成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量は5質量%よりも多いことは明らかであるため)。
したがって、申立2甲3発明は、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを油性化粧料全体に対して5~50質量%で含有している蓋然性は非常に高く、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たことであり、それにより奏される効果について、申立2甲11の実験成績証明書(2)の実験結果からも、当業者が予測し得ない格別顕著な効果とは認められない旨。
d 本件発明と申立2甲4発明との相違点1(申立2甲4発明)に関し、申立書2の3(4)ウ(キ)及び令和5年4月25日付け申立人2の意見書の3(2)イ(エ)において、申立2甲4発明について、水を含む全41成分のうち6番目に多く配合されている成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量は、申立書2の3(4)ウ(ア)における説明と同様に、5~50質量%以上である蓋然性は極めて高いというべきであり、また、その含有量を調整することは当業者が容易になし得たことであり、それにより奏される効果についても、当業者が予測し得ない格別顕著な効果とは認められない旨。
(イ)申立人2の上記主張について、以下検討する。
a 主張aについて
申立2甲1発明において、全19成分のうち2番目に多く配合されている成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量が、全体の5質量%以上である蓋然性は極めて高いといえるかについて、申立人2は、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーとは異なる成分である固形化剤に着目し、リップスティックに用いられる固形化剤の処方中の一般的な含有割合から、その含有質量%を推測し、その上で成分名の記載順序から、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有質量%をさらに推測しているにすぎない。(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの実際の含有質量%が、上記推測を重ねた上で理解される質量%と同じであるかどうかは、実際に確認してみなければ分からないものである。
また、申立2甲1発明における(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの実際の含有質量%を実際に確認しようと実験した、申立2甲10の実験成績証明書(1)の実験結果については、分析対象とした「メンソレータム リップフォンデュ(オーロラ3Dパール)」が、本件出願前に製造され公開された申立2甲1発明と同じ製品(2015年頃に製造された製品)であるのか不明であり、本件出願前に公開された申立2甲1発明の成分含有質量%と同じであるとは認められないことから、当該実験成績証明書(1)に記載の、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの定量結果を参酌することはできない。
したがって、相違点1(申立2甲1発明)は実質的な相違点ではないとはいえず、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たものともいえず、当該構成を容易に想到し得ない以上、それにより奏される効果については検討するまでもない。
b 主張bについて
主張bは、主張aと同様であるから、上記aで述べたことと同様である。
c 主張cについて
申立2甲3発明において、水を含む全29成分のうち2番目に多く配合されている成分である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量が、全体の5質量%よりも多く含まれていることが明らかかについて、申立人2は、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーとは異なる成分である香料・冷感剤の役割を持つ乳酸メンチルに着目し、唇(粘膜)に使用される化粧料であること踏まえてその含有質量%を推測し、その上で成分名の記載順序から、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量が5質量%未満とすると現実的ではないことから、当該含有量が5質量%よりも多いことは明らかとさらに推測しているにすぎない。(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの実際の含有質量%が、上記推測を重ねた上で理解される質量%と同じであるかどうかは、実際に確認してみなければ分からないものであり、その確認はされていない。
したがって、相違点1(申立2甲3発明)は実質的な相違点ではないとはいえず、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たものともいえず、当該構成を容易に想到し得ない以上、それにより奏される効果については検討するまでもない。
d 主張dについて
申立2甲4発明における全成分数、種類及び配合量は、申立2甲1発明における全成分数、種類及び配合量と全く異なるものである。そのように全成分数、種類及び配合量が全く異なる申立2甲1発明における説明と同様に、何故、申立2甲4発明における(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量が、5~50質量%以上である蓋然性は極めて高いといえるのか、何ら説明がされていない。また、実際に当該含有量を確認していない。
したがって、相違点1(申立2甲4発明)は実質的な相違点ではないとはいえず、また、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーの含有量を油性化粧料全体に対して5~50質量%とすることも、容易に想到し得たものともいえず、当該構成を容易に想到し得ない以上、それにより奏される効果については検討するまでもない。
以上のとおりであるから、申立人の前記主張は採用できない。
キ まとめ
以上より、本件発明は、特許法第29条1項第3号に該当しないし、同法同条第2項の規定に違反してされたものでもないから、本件請求項2に係る特許は、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものではなく、取消理由1及び2は解消している。
(3)取消理由3(サポート要件)について
ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。
イ 特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。
ウ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書等の発明の詳細な説明には、次のような記載がなされている。
(ア)発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する油性化粧料を提供することにある。」
(イ)課題を解決するための手段、及び、コンシーラパッチの意味に関する記載
「【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況に鑑み、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する油性化粧料を求めて鋭意研究した結果、ダイマー酸エステルの共重合体とポリオールを含有する油性化粧料が課題を解決することを見出し、本発明に至った。・・・」
(ウ)ダイマー酸エステルの共重合体に関する記載
「【0011】
(1)本発明の油性化粧料の必須成分であるダイマー酸エステルの共重合体。
本発明の油性化粧料は必須成分としてダイマー酸エステルの共重合体を含有する。ダイマー酸エステルの共重合体としては、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(イソノナン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマーが例示される。この中でも、保湿性に優れることから、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーが特に好ましい。具体的な市販品としては、「ハイルーセント ISDA」(高級アルコール工業株式会社)等が挙げられる。
【0012】
本発明の油性化粧料におけるダイマー酸エステルの共重合体の含有量は油性化粧料全体に対して1~80質量%であることが好ましく、5から50質量%であることがより好ましい。含有量が下限未満では、保湿性が不十分な場合があり、また、上限を超えると、ダイマー酸エステルの共重合体の含有量を増加させても保湿性が頭打ちになり、分離の可能性が高まる。」
(エ)ポリオールに関する記載
「【0013】
(2)本発明の油性化粧料の必須成分であるポリオール
本発明の油性化粧料は必須成分としてポリオールを含有する。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、塗布時の滑らかさなどの使用感の点から、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコールがより好ましい。この中でも、べたつきの少なさに優れることから、1,3-ブチレングリコールが特に好ましい。
【0014】
本発明の油性化粧料におけるポリオールの含有量は油性化粧料全体に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましい。含有量が下限以下では、保湿性が不十分な場合があり、また、上限以上では、ポリオールの含有量を増加させても保湿性が頭打ちになり、分離の可能性が高まる。」
(オ)油性化粧料に関する記載
【0015】
(3)本発明の油性化粧料。
本発明の油性化粧料は、必須成分として、ダイマー酸エステルの共重合体及びポリオールを含有することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の油性化粧料は上記必須成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エテル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔等のパール剤類、表面処理されていても良い、微粒子酸化亜鉛、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類などが例示できる。
【0017】
また、本発明の油性化粧料は上記必須成分と任意成分とを常法により処理することにより得られる。」
(カ)本件発明の実施例に関する記載
「【実施例】
・・・
【0019】
<製法例1>
下記に示す表1の処方に従って、本発明の油性化粧料である、口唇化粧料を作製した。即ち、表1に記載の成分を混合し80℃に加温、撹拌した。容器に充填、冷却し、本発明の実施例1~8、比較例1の口唇化粧料を得た。なお表中の数字は質量%を表す。
【0020】
【表1】
[図:0001404758000002.jpg]
【0021】
<試験例1>保湿感、べたつきの評価
熟練評価者5名により実施例1から8、比較例1の口唇化粧料を塗布した場合の保湿感とべたつきについての官能評価を行った。評価項目及び評価基準は以下の通りである。
評価では、5名の平均値を求めその口唇化粧料の評点とした。結果を表2に示す。
塗布化粧膜の保湿感が比較例1と比較して
かなりある・・・・・・・・・◎
ある・・・・・・・・・・・・○
ない・・・・・・・・・・・・△
ほとんどない・・・・・・・・×
塗布時のべたつきが比較例1と比較して
ほとんどない・・・・・・・・◎
ない・・・・・・・・・・・・○
ある・・・・・・・・・・・・△
かなりある・・・・・・・・・×
【0022】
<試験例2>経時安定性評価
調製した各試料をガラスびんに入れて密閉し、40℃に設定した恒温槽に2ヶ月間静置後、外観の変化を目視にて観察し、下記3段階評価基準により判定した。なお、比較対象として、製造直後の試料を用いた。
評価基準
○:外観の変化が見られない
△:わずかに離しょうが見られる
×:明らかに離しょうが見られる
【0023】
【表2】
[図:0001404758000003.jpg]
表2の結果から、明らかなように本発明の油性化粧料はべたつきが少ないながらも、高い保湿性が得られることが確認された。」
エ 判断
(ア)本願発明が解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】~【0006】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0007】)、及び、実施例の記載(【0018】~【0023】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する油性化粧料を提供することであると認める。
(イ)本件訂正により、訂正前の本件発明における「成分(A)」の選択肢の中から、「(ジエチレングリコール/水添ダイマージリノール酸)コポリマー」は削除された。
発明の詳細な説明の実施例1~4及び7には、本件発明の発明特定事項を有する油性化粧料を作製したこと、その油性化粧料は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有することを具体的に確認したことが記載されている。
さらに、発明の詳細な説明には、本件発明の発明特定事項である、油性化粧料における、「成分(A)」及び「成分(B)」それぞれの種類及び含有量に関する実施の態様が詳細に記載されており、これらの記載に沿って実施すれば、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する油性化粧料を提供し得ると理解され、そのことも、実施例の評価結果より理解できるといえる。
そうすると、本件発明の発明特定事項を有する油性化粧料は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する油性化粧料を提供できると、当業者は理解できるといえ、本件発明1~5の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
(ウ)まとめ
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、本件請求項2に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではなく、取消理由3は解消している。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断
(1)申立1理由3(サポート要件違反)イについて
発明の詳細な説明の実施例1~4及び7には、本件発明の発明特定事項を有する「油性化粧料」として、口唇化粧料を作製したこと、その口唇化粧料は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有することを具体的に確認したことが記載されている。
さらに、発明の詳細な説明には、段落【0011】~【0017】に、本件発明の「油性化粧料」に関する実施の態様が詳細に記載されており、本件発明の「油性化粧料」は、必須成分である「(A)ダイマー酸エステル」及び「(B)ポリオール」以外に、通常化粧料で使用される任意成分(液状油や固形油(ロウ等)をも含む)を発明の効果を損なわない範囲で含有することができること、常化粧料で使用される任意成分として、液状油や固形油(ロウ等)をも含む数多の成分が列挙して記載されている。
これらの記載に沿って実施すれば、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する「油性化粧料」として、ゲル状の化粧料のみならず任意の油性化粧料を提供し得ると理解され、そのことも、実施例の評価結果である【表2】(【0023】)より理解できるといえる。
そうすると、本件発明の発明特定事項を有する「油性化粧料」は、べたつきが少ないながらも、高い保湿性を有する任意の油性化粧料を提供できると、当業者は理解できるといえ、本件発明の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、本件請求項2に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
(2)申立2理由1(新規性欠如)について
ア 申立2理由1(2)について
本件発明と、申立2甲1発明~申立2甲4発明それぞれとの相違点、及び、それらの判断については、前記1(2)イ~カで検討したとおりであり、本件発明と申立2甲1発明~申立2甲4発明それぞれとの相違点は、いずれも実質的な相違点と認められる。
したがって、本件発明は、申立2甲1~申立2甲4に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。
イ 申立2理由1(1)について
申立2甲1~申立2甲4の証拠と申立2甲1~申立2甲4から看取できる商品との販売時期や実施された商品との関係が不明であるので、公然実施発明自体を認定できないし、実施時期が本件出願前であったかの判断もできない。
したがって、本件発明は、「公然実施」をされた申立2甲1~申立2甲4に示された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。
ウ まとめ
以上より、本件発明は、特許法第29条第1項第2及び3号に該当し特許を受けることができないものではないから、本件請求項2に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
さらに、ほかに本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項1に係る特許は、本件訂正により削除され、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700820