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特許異議申立

2023-700944

アクリル系ポリマー含有ピッカリングエマルション

審判番号
2023-700944
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-099545
登録番号
7237463
請求日
2023年09月11日
審決日
2024年09月02日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ポーラ化成工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人みなとみらい特許事務所
  • 【異議申立人】山下 桂
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 小石 真弓
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.853-YAA(A61K) / P1651.857-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7237463号発明「アクリル系ポリマー含有ピッカリングエマルション」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7237463号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、13及び14について訂正することを認める。 特許第7237463号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7237463号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成30年5月24日に出願され、令和5年3月3日に特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~14に係る発明の特許に対し、同年9月11日付けで 山下 桂(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯は次のとおりである。 令和5年11月14日付け 取消理由通知 令和6年 1月16日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 2月 2日付け 手続補正指令(方式) 同年 同月 8日 手続補正書の提出(特許権者) 同年 同月19日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 3月25日 意見書の提出(申立人) 同年 4月15日付け 訂正拒絶理由通知 同年 同月22日 意見書・補正書の提出(特許権者) 同年 5月24日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 7月 8日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) なお、令和6年1月16日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、同年7月8日に訂正の請求がされているが、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2のとおり、同年7月8日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年7月8日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は『特許第7237463号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。』というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~9からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1の、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマーを含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であることを特徴とする、ピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含むことを特徴とする、ピッカリングエマルション(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)。」 との記載に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2の、 「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む、請求項1に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、 置換基を有しないか、又は 糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する、 ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3の、 「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20である、請求項2に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~4である、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4の、 「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しない、請求項2又は3に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しておらず、 カチオン性界面活性剤を含まない、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項4を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5の、 「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20であり、エステル残基が置換基を有しない、請求項2に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20であり、エステル残基が置換基を有しない、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項6を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項6の、 「前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーであり、 前記アクリル系ポリマーを水相成分として含むことを特徴とする、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項6を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (なお、訂正事項6-4に関して、訂正請求書5頁、カにおいて、 『特許請求の範囲の請求項6に 「・・・」 とあるうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1. 5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーであり、 前記アクリル系ポリマーを水相成分として含むことを特徴とする、ピッカリングエマルション。」 に訂正する。』 との記載があるが、訂正特許請求の範囲の記載及びその他の訂正事項6に関する訂正請求書の記載(20~24頁の(カ))からみて、上記訂正請求書5頁、カにおける「前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーであり」との記載は、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーであり」との記載の誤記であると認める。) (7)訂正事項7 訂正前の請求項7の、 「前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーであることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーであることを特徴とする、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項13の、 「平均乳化粒子径が4μm以下であることを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 平均乳化粒子径が4μm以下であることを特徴とする、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項14の、 「前記粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1~13の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。」 との記載を、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記粉体以外の界面活性剤を含まない、ピッカリングエマルション。」 との記載に訂正する。 2 本件訂正による訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1について、以下の3つの訂正事項からなる。 訂正事項1-1:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項1-2:「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む」との記載を追加する訂正 訂正事項1-3:「(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)」との記載を追加する訂正 ア 訂正事項1-1について 訂正事項1-1は、アクリル系ポリマーを特定する訂正であるところ、令和6年5月24日付けの取消理由通知における取消理由3(明確性要件違反)(1)として、『本件発明1は、「乳化界面に吸着して」いる「粉体」が「アクリル系ポリマー」である場合を含むといえる。しかし、上記の場合の「粉体」である「アクリル系ポリマー」を、上記「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比」を算出するにあたって、「アクリル系ポリマー」と「粉体」のいずれとするかが明確でない。』と指摘されたことに対応してされた訂正であり、アクリル系ポリマーが乳化界面に吸着している粉体ではないことを明確にし、かつ、アクリル系ポリマーから、乳化界面に吸着している粉体を除くものである。 したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 イ 訂正事項1-2について 訂正事項1-2は、アクリル系ポリマーの構成モノマーを限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等には、 「【0018】 <1>アクリル系ポリマー 本発明のピッカリングエマルションは、アクリル系ポリマーを必須の構成要素として含む。アクリル系ポリマーには、(メタ)アクリル酸並びにそのアミド及びエステルから選択される(メタ)アクリル系モノマーを構成モノマーとする、ポリマー又はコポリマーが含まれる。 本発明においては、ランダム共重合体、交互共重合体又はブロック共重合体であるアクリル系コポリマーを用いることが好ましい。 【0019】 (メタ)アクリル酸のエステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に例示することができる。・・・ 【0027】 アクリル系ポリマーは、上述の構成モノマーを重合して得ることができる。」 との記載がある。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項1-3について 訂正事項1-3は、ピッカリングエマルションから、アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ まとめ したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2について、以下の4つの訂正事項からなる。 訂正事項2-1:請求項1の記載を引用する請求項2を独立請求項とする訂正 訂正事項2-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項2-3:「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 訂正事項2-4:「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する、」との記載を追加する訂正 ア 訂正事項2-1について 訂正事項2-1は、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項2-2について 訂正事項2-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項2-3について 訂正事項2-3は、アクリル系ポリマーを特定する訂正であるところ、令和6年5月24日付けの取消理由通知における取消理由3(明確性要件違反)(2)として、『「由来」の解釈によって「アクリル系ポリマー」との語に含まれるポリマーの範囲が異なるといえるから、請求項1に記載された「アクリル系ポリマー」は明確でない。』と指摘されたことに対応してされた訂正であり、「由来」との語を用いないものとすることで、「アクリル系ポリマー」に含まれるポリマーの範囲を明確にするものであり、かつ、構成モノマーを特定することで「アクリル系ポリマー」を限定するものである。したがって、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 また、この訂正は、訂正事項1-2と同様の記載とするものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ 訂正事項2-4について 訂正事項2-4は、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等の請求項4には、 「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しない」との記載が、同【0020】には、 「(メタ)アクリル酸のアミド又はエステルを構成モノマーとする場合には、そのアミド残基又はエステル残基は、置換基を有していてもよい。 置換基としては、糖残基、アミノ酸残基、ホスホリルコリンなどの生体構成物質に由来する置換基であってもよい。」との記載がある。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 オ まとめ したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項3について、以下の4つの訂正事項からなる。 訂正事項3-1:請求項2の記載を引用する請求項3を独立請求項とする訂正 訂正事項3-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項3-3:(請求項2に記載されていた)「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 訂正事項3-4:(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が「1~20」と記載されていたのを「1~4」との記載とする訂正 ア 訂正事項3-1について 訂正事項3-1は、請求項2の記載を引用する請求項3の記載を、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項3-2について 訂正事項3-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項3-3について 訂正事項3-3は訂正事項2-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ 訂正事項3-4について 訂正事項3-4は、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数をより狭い範囲に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等の【0019】には、 「(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は特に限定されず、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~4を例示することができる。」との記載があるから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 オ まとめ したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項4について、以下の4つの訂正事項からなる。 訂正事項4-1:請求項2及び3の記載を引用する請求項4のうち、請求項2の記載を引用する請求項4を独立請求項とする訂正 訂正事項4-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項4-3:(請求項2に記載されていた)「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 訂正事項4-4:「カチオン性界面活性剤を含ま」ないとの記載を追加する訂正 ア 訂正事項4-1について 訂正事項4-1は、請求項2及び3の記載を引用する請求項4の記載を、請求項3の記載の引用を削除し、かつ、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項4-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項4-2について 訂正事項4-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項4-3について 訂正事項4-3は訂正事項2-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ 訂正事項4-4について 訂正事項4-4は、ピッカリングエマルションを、カチオン性界面活性剤を含まないものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等の【0075】には、 「また、本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、・・・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類」との記載があり、カチオン界面活性剤類が任意成分であることが記載されているから、特許明細書等にはカチオン性界面活性剤を含まないことが記載されているといえる。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 オ まとめ したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項5について、以下の3つの訂正事項からなる。 訂正事項5-1:請求項2の記載を引用する請求項5を独立請求項とする訂正 訂正事項5-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項5-3:(請求項2に記載されていた)「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 ア 訂正事項5-1について 訂正事項5-1は、請求項2の記載を引用する請求項5の記載を、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項5-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項5-2について 訂正事項5-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項5-3について 訂正事項5-3は訂正事項2-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ まとめ したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項6について、以下の5つの訂正事項からなる。 訂正事項6-1:請求項1~5の記載を引用する請求項6のうち、請求項2の記載を引用する請求項6を独立請求項とする訂正 訂正事項6-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項6-3:(請求項2に記載されていた)「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 訂正事項6-4:「前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーである」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーであり」との記載とする訂正 訂正事項6-5:「前記アクリル系ポリマーを水相成分として含む」との記載を追加する訂正 ア 訂正事項6-1について 訂正事項6-1は、請求項1~5の記載を引用する請求項6の記載を、請求項1及び3~5の記載の引用を削除し、かつ、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項6-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項6-2について 訂正事項6-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項6-3について 訂正事項6-3は訂正事項2-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ 訂正事項6-4について 訂正事項6-4は、アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位、すなわち、構成モノマーが、(メタ)アクリル酸アルキル及び(メタ)アクリル酸アルキルの誘導体であることを含むコポリマーであったのを、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーであるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等の【0026】には、 「アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸(C1-C4)アルキレート、メタアクリル酸(C1-C4)アルキレートからなる群から選ばれる二種以上の構成モノマーの共重合体であることが好ましい。」として、アクリル系ポリマーが、アクリル酸(C1-C4)アルキレート、メタアクリル酸(C1-C4)アルキレート等の構成モノマーの共重合体であることの記載があり、上記(1)で摘記したとおり、特許明細書等の【0018】、【0019】及び【0027】には、アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが記載されている。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 オ 訂正事項6-5について 訂正事項6-5は、ピッカリングエマルションにおいてアクリル系ポリマーが水相成分であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、ピッカリングエマルションにおけるエマルションを構成する粉体以外の各成分は、通常水相か油相に存在することは明らかであり、特許明細書等の【0026】には、 「アクリル系ポリマーとしては、・・・具体的には、・・・「ACRYLATES COPOLYMER(アクリレーツコポリマー)」と表記される化合物が挙げられる。」との記載があり、同【0080】の表1には、実施例1~6として、アクリル系ポリマーであるアクリレーツコポリマーが水相成分であることが記載されている。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 カ まとめ したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、請求項7について、以下の2つの訂正事項からなる。 訂正事項7-1:請求項1~6の記載を引用する請求項7のうち、請求項1の記載を引用する請求項7を独立請求項とする訂正 訂正事項7-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 ア 訂正事項7-1について 訂正事項7-1は、請求項1~6の記載を引用する請求項7の記載を、請求項2~6の記載の引用を削除し、かつ、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項7-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項7-2について 訂正事項7-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ まとめ したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、請求項13について、以下の2つの訂正事項からなる。 訂正事項8-1:請求項1~12の記載を引用する請求項13のうち、請求項1の記載を引用する請求項13を独立請求項とする訂正 訂正事項8-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 ア 訂正事項8-1について 訂正事項8-1は、請求項1~12の記載を引用する請求項13の記載を、請求項2~12の記載の引用を削除し、かつ、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項8-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項8-2について 訂正事項8-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ まとめ したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、請求項14について、以下の4つの訂正事項からなる。 訂正事項9-1:請求項1~13の記載を引用する請求項14のうち、請求項2の記載を引用する請求項14を独立請求項とする訂正 訂正事項9-2:「(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」との記載を追加する訂正 訂正事項9-3:(請求項2に記載されていた)「前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構造を含む」との記載を、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み」との記載とする訂正 訂正事項9-4:「前記粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする」との記載を、「前記粉体以外の界面活性剤を含まない」との記載とする訂正 ア 訂正事項9-1について 訂正事項9-1は、請求項1~13の記載を引用する請求項14の記載を、請求項1及び3~13の記載の引用を削除し、かつ、請求項2の記載を引用しないものとし、独立形式の記載に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 また、訂正事項9-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項9-2について 訂正事項9-2は訂正事項1-1と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項9-3について 訂正事項4-3は訂正事項2-3と同様の訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 エ 訂正事項9-4について 訂正事項9-4は、ピッカリングエマルションにおける粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下であったのを、含まないものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、特許明細書等の【0076】には、 「本発明のピッカリングエマルションには界面活性剤を含有せしめてもよいがその含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。」との記載があり、ピッカリングエマルションが界面活性剤を含まないことが記載されているといえる。 したがって、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 オ まとめ したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (10)独立特許要件について 本件特許異議申立においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~14に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~14に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 (11)一群の請求項について 本件訂正に係る訂正前の請求項1~14について、その請求項2~14は直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 3 まとめ 以上のとおり、訂正事項1~9による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ここで、令和6年7月6月8日付けの訂正請求書において、訂正後の請求項2~7、13及び14については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められているところ、訂正後の請求項8において、請求項1~7の記載が引用されており、請求項9~12において、直接的・間接的に請求項8の記載が引用されているから、訂正後の請求項1~12は一群の請求項であって、別途訂正することはできない。 したがって、訂正後の請求項〔1-12〕、13及び14について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1~14に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明14」といい、併せて「本件発明」ともいうことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含むことを特徴とする、ピッカリングエマルション(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)。 【請求項2】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、 置換基を有しないか、又は 糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する、 ピッカリングエマルション。 【請求項3】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~4である、ピッカリングエマルション。 【請求項4】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しておらず、 カチオン性界面活性剤を含まない、ピッカリングエマルション。 【請求項5】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20であり、エステル残基が置換基を有しない、ピッカリングエマルション。 【請求項6】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーであり、 前記アクリル系ポリマーを水相成分として含むことを特徴とする、ピッカリングエマルション。 【請求項7】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーであることを特徴とする、ピッカリングエマルション。 【請求項8】 油相成分として極性油を含むことを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。 【請求項9】 前記極性油としてIOB値0.1以上の高極性油を含むことを特徴とする、請求項8に記載のピッカリングエマルション。 【請求項10】 ピッカリングエマルションに含まれる油相に占める極性油の割合が、60質量%以上であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のピッカリングエマルション。 【請求項11】 前記極性油として紫外線吸収剤を含むことを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載のピッカリングエマルション。 【請求項12】 ピッカリングエマルションに含まれる油相に占める紫外線吸収剤の割合が、30質量%以上であることを特徴とする、請求項11に記載のピッカリングエマルション。 【請求項13】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 平均乳化粒子径が4μm以下であることを特徴とする、ピッカリングエマルション。 【請求項14】 粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記粉体以外の界面活性剤を含まない、ピッカリングエマルション。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立理由の概要 次の申立理由1~申立理由4からなる。 [申立理由1]特許法第29条第1項第3号(同法第113条第1項第2号) 訂正前の請求項1、8~12及び14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一である。 [申立理由2]特許法第29条第2項(同法第113条第1項第2号) 訂正前の請求項1~14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証~甲第5号証に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲第2号証に記載された発明、甲第2号証~甲第4号証及び甲第6号証に記載された事項並びに本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 申立理由1及び申立理由2について、提出された証拠は次のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2017/057563号 甲第2号証:特開2010-285422号公報 甲第3号証:特開2017-197434号公報 甲第4号証:特開2014-240382号公報 甲第5号証:特開2011-148771号公報 甲第6号証:特開2010-285610号公報 以下では、甲第1号証~甲第6号証を「甲1」~「甲6」ということがある。 [申立理由3]特許法第36条第6項第1号(同法第113条第1項第4号) 訂正前の特許請求の範囲の記載には不備があり、訂正前の請求項1~14に係る発明についての特許は、いずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 申立理由3について、具体的に指摘されている不備の概要は次のとおりである。 (i)アクリル系ポリマーの種類について 本件特許出願時の技術常識を踏まえても、請求項1に記載の「アクリル系ポリマー」に含まれるあらゆるポリマーにおいて本件特許の課題(段落0004)が解決できるとは理解できない。 よって、本件特許発明1にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (ii)粉体の材料について 本件特許出願時の技術常識を踏まえても、請求項1においてあらゆる材料の「粉体」において本件特許の課題(段落0004)が解決できるとは理解できない。 よって、本件特許発明1にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (iii)粉体と油剤の関係について 請求項1におけるあらゆるサイズの粉体やあらゆる油剤量において本件特許の課題(段落0004)が解決できるとは理解できない。 よって、本件特許発明1にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 請求項1を引用する請求項2~14についても同様である。 [申立理由4]特許法第36条第6項第2号(同法第113条第1項第4号) 訂正前の特許請求の範囲の記載には不備があり、訂正前の請求項1~14に係る発明についての特許は、いずれも、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 申立理由4について、具体的に指摘されている不備の概要は次のとおりである。 請求項1において、「粉体」および「アクリル系ポリマー」の定義および範囲が明確でないため、「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比」の算出方法が不明である。 請求項1を引用する請求項2~14についても同様である。 2 取消理由の概要 (1)令和5年11月14日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要 次の取消理由1及び取消理由2からなる。 [取消理由1](新規性欠如) 訂正前の請求項1、8~12及び14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Aに記載された発明であり、訂正前の請求項1~6、8、9及び14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Bに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1~6、8~12及び14に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 [取消理由2](進歩性欠如) 訂正前の請求項1~6、8~12及び14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Bに記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~6、8~12及び14に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由1及び取消理由2について、提示した証拠は次のとおりである。 文献A:国際公開第2017/057563号(甲1) 文献B:特開2008-291026号公報(当審合議体が提示した文献) 文献C:特開2017-197434号公報(参考文献:甲3) 文献D:特開2014-240382号公報(参考文献:甲4) 文献E:特開2011-148771号公報(参考文献:甲5) 文献F:特開2021-95340号公報(参考文献:当審合議体が提示した文献) 文献G:特開2021-134195号公報(参考文献:同上) (2)令和6年5月24日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要 次の取消理由3~取消理由5からなる。 [取消理由3](明確性要件違反) 訂正前(令和6年1月16日付けの訂正請求による訂正後のこと。以下(2)の項目について同様。)の請求項1~14に係る発明は、明確であるとはいえないから、訂正前の請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号により、取り消すべきものである。 取消理由3について、具体的に指摘した不備の概要は次のとおりである。 ア 訂正前の請求項1に係る発明は、「乳化界面に吸着して」いる「粉体」が「アクリル系ポリマー」である場合を含むといえるが、その場合の「粉体」である「アクリル系ポリマー」を、「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比」を算出するにあたって、「アクリル系ポリマー」と「粉体」のいずれとするかが明確でない。 訂正前の請求項2~14に係る発明についても同様に明確であるとはいえない。 イ 訂正前の請求項1の記載は、「由来」の解釈によって「アクリル系ポリマー」との語に含まれるポリマーの範囲が異なるといえるから、請求項1に記載された「アクリル系ポリマー」は明確でない。 訂正前の請求項3、4、6、8~12及び14に係る発明についても同様に明確であるとはいえない。 [取消理由4](新規性欠如) 訂正前の請求項2、8及び9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Bに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項2、8及び9に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号により、取り消すべきものである。 [取消理由5](進歩性欠如) 訂正前の請求項2及び8~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記文献Bに記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項2及び8~12に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号により、取り消すべきものである。 取消理由4及び取消理由5について、提示した証拠は次のとおりである。 文献B:特開2008-291026号公報 文献G:特開2021-134195号公報(参考文献) 第5 当審の判断 以下において「・・・」は記載の省略を表す。 1 文献A~文献G及び甲1~甲6の記載事項 (ただし、文献A、文献C~文献Eは順に甲1、甲3~5と同じ文献である。) (1)文献A(甲1) 文献Aには以下の記載がある。 A1)「[請求項1] 疎水性粉体と、 前記疎水性粉体が分散した油相と、 前記油相が分散した水相と、 を備え、 前記油相を水相に分散させる分散剤として、 疎水性ゲル微粒子表面に、部分的に親水基を設けたコア-コロナ型ミクロゲルを用いたことを特徴とする水中油中粉体型組成物。」 A2)「発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0005] 本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、水中油中粉体型の形態をとりながら、疎水性粉体の有する耐水性を損なうことのない組成物を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0006] 前記課題を解決するために、本発明者らが検討を行った結果、コア-コロナ型ミクロゲルを分散剤として用いることにより、水中油中粉体型組成物の安定性が高く、しかも該組成物が適用された塗膜上での疎水性粉体の耐水性が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明にかかる水中油中粉体型組成物は、 疎水性粉体と、 前記疎水性粉体が分散した油相と、 前記油相が分散した水相と、 を備え、 前記油相を水相に分散させる分散剤として、 疎水性ゲル微粒子表面に、部分的に親水基を設けたコア-コロナ型ミクロゲルを用いたことを特徴とする。 また、前記組成物において、コア-コロナ型ミクロゲルとして、(アクリレーツ/メタクリル酸メトキシPEG)クロスポリマー及び/又は特定のアクリルアミド誘導体とアクリレート誘導体を、架橋せずに特定の条件下でラジカル重合させた非架橋アクリルアミド系ポリマーを0.5~10質量%用いることが好適である。 また、前記組成物において、非イオン性界面活性剤を用いる場合には、組成物中0.5質量%以下とすることが好適である。 なお、本願明細書に言う「分散」ないし「分散剤」は、それぞれ「乳化」ないし「乳化剤」を含む概念である。 本発明において特徴的なコア-コロナ型ミクロゲルは、いわゆるピッカリングエマルション(粉体乳化)において、分散剤として用いることができる(特許文献1~11、非特許文献1~4)。しかしながら、このコア-コロナ型ミクロゲルが、水中油中粉体型組成物において、高い分散安定性とともに、該組成物が適用された際の塗膜における疎水粉体の耐水性を高める点について、新知見を得たものである。 発明の効果 [0007] 本発明は水中油中粉体型組成物の分散剤としてコア-コロナ型ミクロゲルを用いたので、他の界面活性剤の使用を抑制することが可能となり、疎水性粉体の耐水性を十分に発揮させることが可能となる。 発明を実施するための形態 [0008] 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 [疎水性粉体] 本発明に用いられる疎水性粉体は、粉体の表面が疎水性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン樹脂粉体、フッ素樹脂粉体など、粉体自体が疎水性を有するもののほか、無機粉体粒子の表面を、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を用いて、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したものが挙げられる。なお、疎水性粉体の平均粒子径は本発明の油相である乳化粒子よりも小さい必要がある。特に、粉体を紫外線散乱剤として使用する場合には、湿式分散機で破砕後の平均粒子径が100nm以下のものが好ましい。疎水化処理される無機粉体粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。 [0009] また、これらの疎水性粉体のうち、特に疎水化処理微粒子二酸化チタンと、疎水化処理微粒子酸化亜鉛とを共に配合している場合、顕著な乳化粒子の凝集や合一が生じやすいことが知られているが、本発明にかかる水中油中粉体型組成物においては、前記ミクロゲルを分散剤として配合することにより、粉体の分散安定性、及び乳化安定性を著しく改善することが可能となる。このため、本発明においては、疎水性粉体として疎水化処理微粒子二酸化チタン及び疎水化処理微粒子酸化亜鉛を含有している場合において、特に有用性が高い。」 A3)「[0030] 増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラーヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸A1Mg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。」 A4)「[0033] 合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等)、ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等)、アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等)、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。」 A5)「[0069] 化粧料における本発明のコア-コロナ型ミクロゲルの配合量は、組成物全量に対して通常0.01~10質量%(純分。以下、単に%で示す)であることが好ましい。配合量が0.01%(純分)未満では、安定な化粧料が得難くなる場合がある。配合量が10%(純分)を超えると、高温条件下での長期保存において安定性の観点から組成物として好ましくない場合や、使用感に劣る場合がある。」 A6)「[0072][その他の成分] 本発明にかかる組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧料や医薬部外品等に用いられる他の成分、例えば、紫外線吸収剤、粉末、有機アミン、高分子エマルジョン、ビタミン類、酸化防止剤等を適宜配合することができる。」 A7)「[0074] 粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等)、有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等)、無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等)、無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等)、無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等)、無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等)、無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等)、無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等)、無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等)、無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等)、パール顔料(例えば、酸化チタンコ-テッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等)、金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等)、ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレ-キ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号等の有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等)、天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。」 A8)「[0088] [表1] [図:0001417618000001.jpg] なお、各試験例の製造方法は以下の通りである。 <製造工程(1-1、2、3、4)> 水相 成分1,2,3,4,5,7,9,30、33,34,35を混合 油相A 成分14,15,16,17の液状油分に成分11,12,13、21,22,23,24の固形油分を溶解 油相B 成分18,19,20に成分27を分散 乳化 水相に油相A、Bを混合 <製造工程(1-5)> 油相 成分10,14,17,18,19,25,26を混合し、まず成分6、その後に28、31,32を分散する。 水相 成分1に33を混合し、よく分散させ、さらに成分2,4を混合する 乳化 油相に水相を混合 <製造工程(1-6)> 水相 成分1,2,3,4,5、8,30、33,34,35を混合 油相A 成分14,15,16,17の液状油分に成分11,12,13、21,22,23,24の固形油分を溶解 油相B 成分18,19,20に成分27を分散 乳化 水相に、油相B,Aの順番で混合 [0089]前記表1より明らかなように、コア-コロナ乳化により疎水性粉体を含む水中油中粉体型(POW)サンスクリーン化粧料を調製した場合(1-1)には、乳化安定性、使用感触、耐水性ともに良好な評価を得た。 これに対し、ノニオン界面活性剤を用いてもPOWサンスクリーン化粧料を調製することはできる(1-2,1-3)が、いずれも耐水性の大きな低下が認められた。 また、コア-コロナ乳化サンスクリーン化粧料であっても、疎水性粉体を抜去したO/W型の場合(1-4)には、耐水性は発揮されない。 また、通常の油中水型サンスクリーン化粧料を調製した場合(1-5)には、適切な界面活性剤の選択により乳化安定性、耐水性を得ることができるが、連続相が油相であり、みずみずしい使用感触を得ることはできない。 なお、コア-コロナ乳化は、いわゆる粉体乳化(ピッカリングエマルション)の一種とも考えられ、油・水界面への微粒子の付着で乳化を安定化するという点で類似技術と考えられる「三相乳化」と比較を行った。三相乳化に用いられる粒子の1つであるベシクルを形成するPEG-10水添ヒマシ油を用いて乳化を試みた(1-6)が、疎水性粉体が内相より飛び出して凝集してしまい、安定な乳化組成物の調製が困難であった。 ・・・ [0090][表2] ・・・ なお、製造方法は、試験例1-1に準じた。 表2に示す結果より、コア-コロナ型ミクロゲルは、疎水性粉体を含む油相の配合量にもよるが、組成物中0.5質量%以上(純分)で優れた安定性を示す。なお、常識的な範囲で配合量を増量した場合にも、安定性、使用感、耐水性等に悪影響を及ぼすことはほとんどなく、分散剤として2質量%程度までが好適であるが、10質量%程度の配合も可能である。」 A9)「[0098] 表6に示されるように、メトキシポリエチレングリコールモノメタレート(マクロモノマー)と、炭素数1~4のアルキル基を含む置換基を有するメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドから選ばれる1種または2種以上の疎水性モノマーとを、水-エタノール混合溶媒(水:エタノール=40~60:18~82)中で、“マクロモノマーの仕込みモル量/疎水性モノマーの仕込みモル量”の値が1:50~100となる条件で重合させた製造例1~10では、白濁溶液状の分散液が得られ、粒子径及び分散度が評価可能であった。すなわち、粒子状ポリマー(コア-コロナ型ミクロ粒子)の生成が確認できた。そして、製造例1~10のコア-コロナ型ミクロ粒子は、粒子径が150~250nmで、さらに粒子径が揃っていることが示された。」 (2)文献B 文献Bには以下の記載がある。 B1)「【請求項1】 (a)粉末成分を1~20質量%、 (b)炭素鎖が12以上、22以下であるアルキル鎖を2つ有するカチオン性界面活性剤を0.001~0.5質量%、 (c)油相成分、 (d)水相成分 を含有し、 水相に分散した油滴上に(a)の粉末粒子が吸着してなる構造を有し、且つ、(b)のカチオン性界面活性剤以外に界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする水中油型乳化組成物。 ・・・ 【請求項13】 下記一般式(I)で示されるアクリルシリコーンを1種または2種以上含むことを特徴とする請求項10ないし12に記載のメーキャップ用組成物。 (化1) [図:0001417618000002.jpg] (上記式中、Rは炭素数10~20のアルキル基、a+b+c=1、a,b,cは共に0.2以上、dは5~100の整数である。) 【請求項14】 下記一般式(II)で示される両末端シリコーン変性グリセリンを1種または2種以上含むことを特徴とする請求項10ないし12に記載のメーキャップ用組成物。 (化2) [図:0001417618000003.jpg] (上記式中、R1は炭素数1~12の直鎖または分岐アルキル基、もしくはフェニル基であり、R2は炭素数2~11のアルキレン基であり、mは10~120、nは1~11である。)」 B2)「【0002】 ・・・ 界面活性剤を用いず、粉末を界面に吸着させることによって調製するエマルションは、ピッカリングエマルションとして従来知られている。・・・ 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物を簡便に得ることができる。さらに、前記組成物の配合により、機能性の高い水中油型日焼け止め用皮膚外用剤、水中油型メーキャップ用組成物、及び整髪用毛髪化粧料を得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。 まず、本発明の第一の態様である水中油型乳化組成物について説明する。 本発明の水中油型乳化組成物は、従来のピッカリングエマルションの構成成分である油相、水相、及び粉末成分に加え、ある範囲の鎖長の2鎖のアルキルを含むカチオン性界面活性剤を特定量含有するものである。」 B3)「【0018】 (粉末成分) 本発明の水中油型乳化組成物に含まれる粉末成分としては、例えば、・・・等が挙げられ、単独で用いることも2種以上を配合することもできる。また、粉末に金属酸化物等を被覆させて得られる複合粉体や、粉末表面を化合物等で処理した改質粉体を用いてもよい。 本発明においては、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛又はこれらを含む複合粉末を用いることが好適であり、特にシリカ被覆酸化亜鉛、シリカ被覆酸化チタンが肌なじみや使用性、紫外線遮蔽効果付与、乳化安定性の観点から好ましい。」 B4)「【0031】 本発明の水中油型乳化組成物は、上記した成分を含み、いわゆるピッカリングエマルションを形成するものである。 ピッカリングエマルション(Pickering emulsion)は、水中油型の分散系において、油相を微粒子(Powder)によって水相へ均一に分散するO/P/W型乳化物として知られている。本発明では、このような乳化物に特定構造のカチオン性界面活性剤を適用し、粉末による乳化安定性を強化せしめる。」 B5)「【0038】 さらに、本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他、その効果を損なわない範囲において、通常化粧料や医薬部外品に用いられる成分を配合することができ、常法に応じて製造される。配合可能な成分には制限はないが、例えば・・・、紫外線吸収剤、・・・等が挙げられる。 ・・・ 【0043】 紫外線防御剤としては、有機化合物である紫外線吸収剤として、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルさリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロへキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。」 B6)「【0046】 続いて、本発明の第二の態様である日焼け止め用皮膚外用剤について説明する。 一般に、紫外線を防御用の皮膚外用剤には、油剤である有機紫外線防御剤及び、粉末状の無機紫外線防御剤が基剤へ配合される。・・・ 【0047】 本発明にかかる日焼け止め用皮膚外用剤に配合する水中油型乳化組成物の構成成分については、前述のとおりである。ただし、本発明にかかる日焼け止め用皮膚外用剤は、前記水中油型乳化組成物の油相成分中に疎水化処理粉体を分散してなる。 油相成分中に分散させる疎水化処理粉体は、無機粉体粒子の表面を例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したもの、あるいは無機粉体粒子をシリカで被覆した後、アルキル変性したシランカップリング剤等によって疎水化処理を施したものなどが挙げられる。 前記疎水化処理を行う無機粉体粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。本発明においては、特に、疎水化処理微粒子二酸化チタン及び/または疎水化処理微粒子酸化亜鉛を含むことが好適である。 【0048】 前記疎水化処理粉体を油相成分中に分散させるという本発明の性質を考慮すると、その平均粒子径は油相である乳化粒子よりも小さいことが好ましい。特に、疎水化処理粉体を紫外線散乱剤として利用することを加味すれば、本発明にかかる日焼け止め用皮膚外用剤においては、平均粒子径が100nm以下の粉体を用いることが好適である。 ・・・ 【0052】 本発明にかかるメーキャップ用組成物に配合する水中油型乳化組成物の構成成分については、前述のとおりである。ただし、本発明にかかるメーキャップ用組成物は、前記水中油型乳化組成物の油相成分中に疎水化処理粉体を分散してなる。 ・・・ 【0054】 また、本発明にかかるメーキャップ用組成物は、必須成分である水中油型乳化組成物において、その油相成分に対して50質量%以上のシリコーン油を含有する。 本発明に適用し得るシリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられ、これらを単独または2種以上組み合わせて配合することができる。 【0055】 特に、本発明においては、下記一般式(I)で示されるアクリルシリコーンの使用が好適である。 (化3) ・・・ 【0056】 また、本発明においては、下記一般式(II)で示される両末端シリコーン変性グリセリンを配合することが好適である。 (化4) ・・・」 B7)「【実施例3】 【0133】 本発明にかかるメーキャップ用組成物について検討した。なお本実施例中、配合量を示す「質量%」または「%」は、特に断らない限り組成物全量に対する質量%を意味する。 初めに、本実施例で用いた評価法について説明する。 【0134】 評価(1):製剤安定性 調製したエマルションを50℃下にて1ヵ月保存した後の状態について、外観を肉眼で観察し、また、エマルションの状態を光学顕微鏡で観察した。評価基準は下記のとおりである。 ○:外観上変化は見られず、また乳化粒子は均一で、合一や凝集を認めなかった。 △:外観上変化は見られないが、乳化粒子に合一や凝集などを認めた。 ×:外観上、油相の分離が認められた。 【0135】 評価(2):使用後のべたつき感 試料を使用した後のべたつき感の有無について、専門パネル10名により実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。 ◎:パネル8名以上が、使用後べたつき感がないと認めた。 ○:パネル6名以上8名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。 △:パネル3名以上6名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。 ×:パネル3名未満が、使用後べたつき感がないと認めた。 【0136】 評価(3):塗布時のみずみずしさの評価 専門パネル10名によって、各々の試料の実使用試験を実施した。評価の基準は以下のとおりである。 ◎:パネル8名以上が、塗布中みずみずしいと認めた。 ○:パネル6名以上8名未満が、塗布中みずみずしいと認めた。 △:パネル3名以上6名未満が、塗布中みずみずしいと認めた。 ×:パネル3名未満が、塗布中みずみずしいと認めた。 ・・・ 【0140】 本発明のメーキャップ用組成物の油相成分について、次の検討を行った。 すなわち、表15に記載した配合組成よりなる水中油型メーキャップ用組成物を製造し、各試料について、上記評価(2)、(3)に関する評価を行った。 【表15】 [図:0001417618000004.jpg] (製造方法) A相を70℃に加熱し、超音波処理にて分散させた。ここにB相を加えての混合物を添加し、乳化機で乳化後、冷却した。 【0141】 表15に示すとおり、油相中にシリコーン油を油相成分に対し50質量%以上含む試験例59~62の組成物は、べたつき感がなく、みずみずしい感触を有するものであった。特に、特定構造のアクリルシリコーン(試験例59)または両末端シリコーン変性グリセリン(試験例60)、もしくはその両方(試験例61)を配合した場合において、顕著な使用性の改善が認められた。一方、シリコーン油の配合量が油相成分に対し50質量%に満たない試験例63においては、試料が著しくべたつき、みずみずしさも感じられなかった。 以上のことから、本発明にかかるメーキャップ用組成物においては、シリコーン油をその油相成分に対し50質量%以上含むことが好ましく、特定構造のアクリルシリコーン及び/または両末端シリコーン変性グリセリンの配合が、使用性向上の上で特に好適であることが明らかである。 【0142】 界面活性剤の配合量による、メーキャップ用組成物の耐水性について評価を行った。評価方法は次のとおりである。 【0143】 評価(4):耐水性試験 パネル10名の腕に試料を塗布した直後と、一定量の流水で水洗した後の皮膚上の外用剤量を、エタノールによる抽出で定量し、その残存率(%)を次式によって算出した。 残存率(%)=(水洗後の皮膚上の外用剤量)/(水洗前の皮膚上の外用剤量)×100 その後、算出した残存率を以下の基準により評価した。 【0144】 「耐水性試験」の評価基準は以下のとおりである。 ◎:残存率が90%以上 ○:残存率が60%以上90%未満 △:残存率が30%以上60%未満 ×:残存率が30%未満 【0145】 表16に記載した配合組成よりなるメーキャップ用組成物を製造し、各試料について、上記評価(4)に関する評価を行った。 【表16】 [図:0001417618000005.jpg] (製造方法) A相を70℃に加熱し、超音波処理にて分散させた。ここにB相を加えての混合物を添加し、乳化機で乳化後、冷却した。 【0146】 表16に示すように、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム以外に界面活性剤を配合しなかった試験例64の組成物は、耐水性にも優れていた。一方、前記界面活性剤と他の水溶性界面活性剤(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム)とを併用した場合、他の水溶性界面活性剤の配合が0.01質量%と非常に少量であれば高い耐水性を示したが(試験例65)、併用する水溶性界面活性剤の配合量が増加するほど耐水性が低下する傾向がにあった(試験例66~68)。 したがって、本発明にかかるメーキャップ用組成物においては、(b)炭素鎖が12以上、22以下であるアルキル鎖を2つ有するカチオン性界面活性剤以外の水溶性界面活性剤を実質的に含まないことが好適である。 【0147】 続いて、乳化にかかる粉末成分の好適な配合量を調べるために、表17に記載した配合組成よりなるメーキャップ用組成物を製造し、各試料について上記(1)~(3)に関する評価試験を行った。 【0148】 【表17】 [図:0001417618000006.jpg] (製造方法) A相を70℃に加熱し、超音波処理にて分散させた。ここにB相を加えての混合物を添加し、乳化機で乳化後、冷却した。 【0149】 表17に示すとおり、試験例70~72のメーキャップ用組成物は優れた製剤安定性を有し、且つべたつきのなさ及びみずみずしさにおいても優れていた。一方、乳化にかかる粉末成分(シリカ被覆酸化亜鉛)の配合を0.5質量%とした試験例69においては、製剤安定性に劣り、同粉末成分を30質量%配合した実施例73の組成物はべたつきが強く、みずみずしさに欠けていた。 したがって、本発明にかかるメーキャップ用組成物は、粉末成分の配合量が組成物に対し1~20質量%であることが好適である。 【0150】 続いて、2本の長鎖アルキル基を有するカチオン性界面活性剤の好適な配合量を調べるために、表18に記載した配合組成よりなるメーキャップ用組成物を製造し、各試料について上記評価(1)~(3)に関する評価試験を行った。 【0151】 【表18】 [図:0001417618000007.jpg] (製造方法) A相を70℃に加熱し、超音波処理にて分散させた。ここにB相を加えての混合物を添加し、乳化機で乳化後、冷却した。 【0152】 表18に示すとおり、試験例75~77のメーキャップ用組成物は優れた製剤安定性を示し、且つべたつきのなさ及びみずみずしさにおいて優れていた。一方、塩化ジメチルジステアリルアンモニウムの配合を0.0005質量%とした実施例74、及び1質量%とした試験例78においては製剤安定性が著しく低下した。 したがって、本発明にかかるメーキャップ用組成物において、炭素鎖が12以上、22以下であるアルキル鎖を2つ有するカチオン性界面活性剤を組成物に対し0.001~0.5質量%配合することが好適である。 続いて、表19に記載した配合組成よりなるメーキャップ用組成物を製造し、各試料について、上記評価(1)~(3)に関する評価試験を行った。 【0153】 【表19】 [図:0001417618000008.jpg] (製造方法) A相を70℃に加熱し、超音波処理にて分散させた。ここにB相を加えての混合物を添加し、乳化機で乳化後、冷却した。 【0154】 表19に示すとおり、試験例80、81の組成物は、いずれの評価項目においても良好な結果を示した。一方、アルキル鎖長を10とした塩化ジメチルジステアリルアンモニウムを用いた実施例79の組成物は製剤安定性が著しく低く、使用に耐えなかった。アルキル鎖長を22とした実施例82の組成物は、製剤安定性に優れていたものの、ややべたつきを示し、みずみずしさも不十分であった。 したがって、本発明にかかるメーキャップ用組成物においては、カチオン性界面活性剤の2つのアルキル鎖長が12~22であることが好適である。」 B8)「【0159】 <処方例3> 水中油型ジェルファンデーション (質量%) (1)疎水化処理二酸化チタン 10.0 (2)疎水化処理黄酸化鉄 0.8 (3)疎水化処理黒酸化鉄 0.15 (4)疎水化処理赤酸化鉄 0.36 (5)一般式(I)で示されるアクリルシリコーン 1.0 (6)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5 (7)イソステアリン酸 0.2 (8)デカメチルシクロペンタシロキサン 12.0 (9)オクタン酸セチル 3.0 (10)グリセリン 3.0 (11)ジプロピレングリコール 4.0 (12)シリカ被覆二酸化チタン(10nm) 3.0 (13)塩化ジメチルジステアリルアンモニウム 0.15 (14)精製水 適量 (15)キサンタンガム 0.2 (16)寒天末 1.5 (17)エデト酸塩 0.1 (18)防腐剤 適量 (19)精製水 残余 【0160】 (製法) (11)~(14)を混合して70℃に加熱し、ホモミキサーもしくは超音波で十分に分散した後、これにあらかじめビーズミルで分散破砕した油相(1)~(10)を徐々に加え、乳化機で乳化した。その後、あらかじめ90℃で均一分散した後、冷却した(15)~(19)を添加し、水中油型ジェルファンデーションを得た。」 (3)文献C(甲3) 文献Cには以下の記載がある。 C1)「【請求項1】 成分(A)、(B)、(C)及び(D): (A)カルボキシル基を有する表面処理剤で表面処理されてなる酸化チタン粒子 3質量%超20質量%以下、 (B)(メタ)アクリル酸またはスルホン酸由来の構成単位を有する水溶性高分子、 (C)HLBが6以上10以下のノニオン性界面活性剤及び (D)25℃で液体状である油剤 を含有する水中油型日焼け止め化粧料。」 C2)「【0013】 本発明に用いられる成分(B)は、(メタ)アクリル酸またはスルホン酸由来の構成単位を有する水溶性高分子である。ここで、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸とアクリル酸を含む概念である。 (メタ)アクリル酸由来の構成単位を有する水溶性高分子として、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、およびアクリルアミドから選ばれるモノマーを構成単位とするホモポリマーまたはこれらモノマーを2種以上含むコポリマーが挙げられる。さらに具体的には、カルボキシビニルポリマー(たとえば、シンタレンK、L;和光純薬工業社製)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(たとえば、PEMULEN TR-1、TR-2;ルーブリゾール社製)、SEPPIC社から販売されているポリアクリルアミド(SEPIGEL 305)、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(SIMULG EL EG)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(SIMULGEL FL、SIMULGEL NS、SEPIPLUS S、SEPINOV EMT 10)、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー(SEPIPLUS 265)、ポリアクリレート-13(SEPIPLUS 400)等が挙げられる。これらから選ばれる(メタ)アクリル酸系ポリマーの1種または2種以上を使用することができる。」 C3)「【0028】 IOB値0.1~0.4の極性油剤としては、パルミチン酸オクチル(IOB=0.13)、2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、オクタン酸セチル(IOB=0.13)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.14)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、ジイソステアリン酸プロピレングリコール(IOB=0.15)、ジステアリン酸グリコール(IOB=0.16)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、トリイソステアリン酸グリセリル(IOB=0.18)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.20)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.20)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.27)、メトキシケイヒ酸オクチル(IOB=0.28)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB=0.29)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.31)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.31)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(IOB=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(IOB=0.32)、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット(IOB=0.35)、トリオクタノイン(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、テトラオクタン酸ペンタエリスリット(IOB=0.35)、テトラ2-エチルヘキサ ン酸ペンタエリスリット(IOB=0.35)、トリエチルヘキサノイン(IOB=0.35)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB=0.40)等のエステル油;オリーブ油(IOB=0.16)、マカダミアナッツ油(IOB=0.17)等の天然油脂;デシルテトラデカノール(IOB=0.21)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、オレイルアルコール(IOB=0.28)等の高級アルコール等が挙げられる。」 (4)文献D(甲4) 文献Dには以下の記載がある。 D1)「【0023】 IOB値が0.1~0.4である液状油としては、2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.35)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(IOB=0.13)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.33)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、イソデシルベンゾエート(IOB=0.23)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.2)、イソノナン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(IOB=0.2)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.28)等が挙げられる。」 (5)文献E(甲5) 文献Eには以下の記載がある。 E1)「【0052】 結晶性有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(OV=480、IV=325、IOB値=0.68、HLB値=6.77)、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル(OV=460、IV=462、IOB値=1.00、HLB値=10.04)、t-ブチルメトキシベンゾイルメタン(OV=380、IV=180、IOB値=0.47、HLB値=4.74)等が挙げられる。結晶性有機系紫外線吸収剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。」 (6)文献F 文献Fには以下の記載がある。 F1)「【0044】 油分とみなすことが可能な紫外線吸収剤としては、例えば、IOBが0.10以上の紫外線吸収剤、具体的には、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、・・・、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、・・・、オキシベンゾン-3、・・・等の有機系の油溶性紫外線吸収剤を挙げることができる。」 (7)文献G 文献Gには以下の記載がある。 G1)「【0032】 IOBが0.01以上の極性油の例としては、・・・、イソステアリン酸(IOB値=0.43)、・・・等が挙げられる。」 (8)甲2 甲2には以下の記載がある。 甲2-1)「【請求項1】 乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料において、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある板状アクリル系重合体板状粒子からなる親疎水異方性板状粒子を配合したことを特徴とする乳化型化粧料。」 甲2-2)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、乳化剤を用いて乳化させた乳化型化粧料について、その乳化安定性を向上させた乳化型化粧料を提供することを目的とする。特に、シリコーン油を含む油剤を乳化させた乳化型化粧料について、その乳化安定性を向上させた乳化型化粧料を提供することを目的とする。」 甲2-3)「【0026】 本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるという親水性、疎水性に関し異方性を有する。すなわち、この親疎水異方性板状粒子は、一方の面が親水性であり、他方の面が疎水性である。本発明で用いる親疎水異方性板状粒子は、このように板状粒子の表裏で親疎水異方性を示すため、界面活性を有し、粉体乳化剤として用いられ、ピッカリングエマルションの生成に用いることができる。このピッカリングエマルションは、水/油/親疎水異方性板状粒子の3成分系で構成され、親疎水異方性板状粒子が界面活性剤としての役割を果たす。O/W型、W/O型の乳化物を調製することが可能である。得られるエマルションは、20~80μmである。 【0027】 本発明では、親疎水異方性板状粒子を、上記のピッカリングエマルションの生成に用いるもの、すなわち乳化剤として用いるものではなく、調製された乳化型化粧料の乳化安定性の向上ために用いるものである。例えば、乳化型化粧料(特にW/O型)に、平均粒子径が20~80μmの親疎水異方性板状粒子を配合した場合、乳化滴が約1~2μmの乳化液が形成される。このように、形成された乳化滴が親疎水異方性板状粒子の平均粒子径より小さいことから、親疎水異方性板状粒子は乳化滴の界面に配向していないことが分かる(これは、上記のピッカリングエマルションとは異なる。)。しかしながら、親疎水異方性板状粒子を配合した乳化型化粧料は、粘度が上昇し、乳化安定性の向上がなされている。この粘度上昇は、粉体の体積効果よりも優位に働いており、異方性粉体特有の現象と考えられる。本発明は、特に、シリコーン油を含む油剤を乳化させた乳化型化粧料、更には、シリコーン油を含む油剤をシリコーン系界面活性剤で乳化させた乳化型化粧料の乳化安定性の向上に有効である。」 甲2-4)「【0033】 本発明は、油剤と水とを乳化剤を用いて乳化した乳化型化粧料に適用できる。上記の油剤としては、通常使用されている動物油、植物油、合成油等の起源、及び固形油、半固形油、液体油、揮発製油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。本発明は、シリコーン油を含む乳化型化粧料に有用である。シリコーン油としてはジメチルポリシロキサン、環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、トリメチルシロキシシリケート等が挙げられる。」 甲2-5)「【0036】 以下に、本発明で用いる親疎水異方性板状粒子の製造実施例と、この親疎水異方性板状粒子を配合した実施例を示す。なお、両面の接触角の角度差を得るための接触角は次のようにして測定した。すなわち、作成された薄膜について表裏が分かるように採取し、測定サンプルとした。測定は、接触角測定装置(Dropmaster DM500 協和界面科学株式会社製)、液滴法(θ/2法)を用いて、精製水2.0μLを各面に滴下した後、1.0秒後の接触角を測定した。測定は各面に対して5回行い、その平均値を面の接触角とした。そして、両面の接触角の差を算出した。これは親疎水異方性差の指標となる。 〔製造実施例1〕 【0037】 500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン150mLを入れ、窒素置換した。これにメタクリル酸メチル39.2g、アクリル酸メチル0.35g、シリコーンマクロモノマー(RES-422 信越化学工業社製)8.0g、N、N-アゾビスイソブチロニトリル1.30gを添加し、70℃、3時間の条件下で窒素バブリングしながら攪拌した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、メタノールで充分に洗浄後乾燥し、アクリル系共重合体(1)を32.5g得た。得られたアクリル系共重合体(1)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は40000であり、またメタクリル酸メチル98モル%とアクリル酸メチル1モル%とシリコーンマクロモノマー1モル%の共重合組成であった。 【0038】 このアクリル系共重合体(1)を、酢酸エチルに10質量%溶液となるように均一に溶解し、この溶液を静止状態とした水面に液面1m2当たり20gの割合で滴下して展開させ、水面上で酢酸エチルが揮発あるいは水に移行することでアクリル系共重合体を固形化し、薄膜を形成させた。この薄膜を5分間放置した後、水から分離して採取し、脱水乾燥、脱溶剤して薄膜を得た。この薄膜は、上側の空気と接した面も、下側の水に接した面も平滑であった。脱溶剤した薄膜を液体窒素中に投入して、薄膜を粉砕することにより本発明の板状粒子を得た。得られた板状粒子の平均粒径は40μm、平均厚みは3.0μmであった。また、この板状粒子の両面の接触角の角度差は16.3度であった。」 甲2-6)「【0054】 ・・・ (注3)メチルハイドロジェンポリシロキサン3%処理 ・・・ 〔実施例11〕 【0062】 (成分) (質量%) 1.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 0.5 2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5 3.1,3-ブチレングリコール 10.0 4.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0 5.シリコーン処理ベンガラ(注3) 0.4 6.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 2.0 7.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.1 8.シリコーン処理タルク(注3) 5.0 9.カルボキシビニルポリマー 0.3 10.トリエタノールアミン 2.0 11.精製水 残量 12.エタノール 2.0 13.ステアリン酸 1.0 14.ベヘニルアルコール 0.5 15.流動パラフィン 1.0 16.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0 17.パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル 2.0 18.ワセリン 0.5 20.パラオキシ安息香酸メチル 0.2 21.実施例1の異方性板状粒子 1.0 22.香料 0.1 【0063】 (製造方法) A:成分1~8をローラーにて均一に分散する。 B:成分9~12を均一に混合する。 C:BにAを添加し、均一に混合する。 D:成分13~20を80℃にて混合溶解する。 E:CにDを80℃にて添加し、乳化する。 F:Eを冷却し、成分21、22を添加混合し、O/W型ファンデーションを得た。 得られたO/W型リキッドファンデーションは、肌に塗布する際のスライド性、柔らかな感触、肌への密着性に優れ、経時における化粧膜の色ぐすみのなさ、透明感の持続性等の化粧効果が高く、さらに乳化安定性が良好であった。」 (9)甲6 甲6には以下の記載がある。 甲6-1)「【0014】 本発明の親疎水異方性板状粒子は、板状粒子の一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上ある。そのため、親疎水異方性板状粒子は、その粒子自体が界面活性を呈し、乳化剤或いは乳化助剤として有用である。そして、良好なピッカリングエマルションを形成でき、このピッカリングエマルション組成物は皮膚外用剤、化粧料に好適である。また、皮膚外用剤や化粧料などに界面活性化合物を乳化剤として配合するのが不都合な場合は、この親疎水異方性板状粒子は乳化剤或いは乳化助剤として特に有用である。また、その一方の面がアクリル系重合体で形成された平滑面であり、他方の面がアクリル系重合体から突出した球状粒子で形成された凹凸面である親疎水異方性板状粒子は、両表面の形状が異なるため、光反射性などで異方性があり、例えば化粧料に配合することにより、乳化効果の他に、特異な反射効果をも付与できる。」 甲6-2)「【0026】 本発明の親疎水異方性板状粒子は、一方の面と他方の面のそれぞれの面について、20℃の水との接触角を測定したとき、両者の接触角の角度差が15度以上あるという親水性、疎水性に関し異方性を有する。すなわち、この親疎水異方性板状粒子は、一方の面が親水性であり、他方の面が疎水性であって、この異方性板状粒子が水相と油相の2相間の界面に吸着し、これによって安定化されたエマルジョンが形成される。接触角の角度差が15度未満では、界面への吸着に劣り、乳化不良を起こすため、本発明の目的を達成しない。本発明の親疎水異方性板状粒子は粉体乳化剤、粉体乳化助剤として用いられ、O/W型、W/O型の乳化物を調製可能である。そして、これを粉体乳化剤に用いてピッカリングエマルションを生成させることができる。そして、皮膚外用剤や化粧料の乳化に有用である。」 2 取消理由通知で通知された取消理由について (1)取消理由1(新規性欠如)、取消理由2(進歩性欠如)、取消理由4(新規性欠如)及び取消理由5(進歩性欠如)について ア 引用発明 (ア)文献A発明 文献Aには、所定のコア-コロナ型ミクロゲルを用いたことを特徴とする水中油中粉体型組成物についての記載があるところ(摘記A1~A9)、具体的な組成が示されている試験例1-4の記載がある(摘記A8。なお、試験例1-4についての各数値は、文献Aの[0090]等の記載から質量%であるといえる。)。そして、当該試験例1-4の組成物は、コア-コロナ乳化サンスクリーン化粧料であること、コア-コロナ乳化は、いわゆる粉体乳化(ピッカリングエマルション)の一種とも考えられることが記載されている(摘記A8)。 したがって、文献Aには、以下の発明(以下「文献A発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の表の試験例1-4で示される組成を有するコア-コロナ乳化サンスクリーン化粧料であるピッカリングエマルション。 [図:0001417618000009.jpg] なお、各成分についての数値は質量%である。」 (イ)文献B発明 文献Bには、水中油型乳化組成物についての記載があるところ(摘記B1~B8)、具体的な組成が示された、水中油型メーキャップ用組成物である試験例59、61、63、64、66、68、71、76及び81並びに水中油型ジェルファンデーションである処方例3の記載がある(摘記B7及びB8)。また、文献Bには、当該文献に記載の発明が、いわゆるピッカリングエマルションを形成するものであることが記載されている(摘記B4)。 したがって、文献Bには、以下の発明(以下「文献B発明」という。)が記載されていると認める。 「試験例59、61、63、64、66、68、71、76若しくは81の組成を有する水中油型メーキャップ用組成物又は処方例3の組成を有する水中油型ジェルファンデーションであるピッカリングエマルション。」(各試験例、処方例3の組成は、摘記B7及びB8を参照。) イ 本件発明1について (ア)文献A発明について 本件発明1と文献A発明を対比する。 文献A発明はピッカリングエマルションであり、粉体として唯一(メタクリル酸メチル/メタクリル酸(PEG-4/PPG-3))クロスポリマーを含有するところ、摘記B2にあるように、ピッカリングエマルションとは、粉末を界面に吸着させることによって調製するエマルションのことであり、上記「界面」は「乳化界面」を意味するから、文献A発明においては、上記クロスポリマーからなる粉体が乳化界面に吸着されているといえる。 したがって、文献A発明の「(メタクリル酸メチル/メタクリル酸(PEG-4/PPG-3))クロスポリマー」を含有する「ピッカリングエマルション」は、本件発明1の「粉体が乳化界面に吸着して」いる「ピッカリングエマルション」に相当する。 文献A発明のピッカリングエマルションが増粘剤として含有する「(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」は、本件発明1の「アクリル系ポリマー」に相当する。 文献A発明において、粉体である「(メタクリル酸メチル/メタクリル酸(PEG-4/PPG-3))クロスポリマー」は、アクリル系ポリマーである「(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」と異なる成分であるから、文献A発明は、本件発明1の「但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない」ことを具備する。 文献A発明は上記粉体であるクロスポリマーを5質量%、上記増粘剤であるコポリマーを0.65質量%含有するところ、その比は約7.69であり、本件発明1の「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である」ことに相当する。 文献A発明は、アクリルシリコーンを含むものではないから、本件発明1の「但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。」に相当する。 してみると、本件発明1と文献A発明とは、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である、 ピッカリングエマルション(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-A> アクリル系ポリマーについて、本件発明1は「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む」と特定しているのに対し、文献A発明は「(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」である点。 上記相違点1-Aは実質的な相違点であるから、本件発明1は文献Aに記載された発明であるとはいえない。 (イ)文献B発明について 本件発明1と文献B発明を対比する。 文献B発明の各水中油型メーキャップ用組成物及び水中油型ジェルファンデーションの成分のうち、シリカ被覆二酸化チタン及びシリカ被覆酸化亜鉛は摘記B3、【0018】の記載からみて、粉末成分であるところ、文献Bには、「本発明の水中油型乳化組成物は、従来のピッカリングエマルションの構成成分である油相、水相、及び粉末成分に加え」との記載(摘記B2、【0014】)、上記【0018】に続く摘記B4、【0031】に「本発明の水中油型乳化組成物は、上記した成分を含み、いわゆるピッカリングエマルションを形成するものである」との記載があるから、上記(ア)で述べた摘記B2の記載も考慮すれば、上記シリカ被覆二酸化チタン及びシリカ被覆酸化亜鉛はピッカリングエマルションにおいて、乳化界面に吸着している粉体であるといえる。 したがって、文献B発明の「シリカ被覆二酸化チタン」又は「シリカ被覆酸化亜鉛」を含有する「ピッカリングエマルション」は、本件発明1の「粉体が乳化界面に吸着して」いる「ピッカリングエマルション」に相当する。 文献B発明の各水中油型メーキャップ用組成物及び水中油型ジェルファンデーションは「一般式(I)の(で示される)アクリルシリコーン」を含有するところ、その一般式(摘記B1、請求項13)からみて、当該成分は本件発明1の「アクリル系ポリマー」に相当し、「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む」ことに相当する。 (なお、文献B発明の水中油型メーキャップ用組成物である試験例59、61、63、64、66、68、71、76及び81に含まれる「一般式(I)のアクリルシリコーン」について、文献Bには、「Rは2-ヘキシル基」と記載され(摘記B7の表15~19)、当該Rは、摘記B1、請求項13における一般式(I)についての「Rは炭素数10~20のアルキル基」との定義と整合していないものの、上記試験例には、「一般式(I)のアクリルシリコーン(Rは2-ヘキシル基)」の成分が含まれていることが記載されているといえる。また、文献B発明の水中油型ジェルファンデーションである処方例3に含まれる「一般式(I)のアクリルシリコーン」については、Rについての記載はないから、請求項13における一般式(I)における定義のとおり、「Rは炭素数10~20のアルキル基」であるといえる。) 文献B発明において、粉体である「シリカ被覆二酸化チタン」及び「シリカ被覆酸化亜鉛」は、アクリル系ポリマーである「一般式(I)のアクリルシリコーン」と異なる成分であるから、文献B発明は、本件発明1の「但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない」ことを具備する。 文献B発明の試験例59、61、63、64、66、68、71、76及び81並びに処方例3の組成物における「シリカ被覆二酸化チタン」又は「シリカ被覆酸化亜鉛」と「一般式(I)の(で示される)アクリルシリコーン」との比は、約1.7(=5.0/3.0:試験例59、64)、約3.3(=5.0/1.5:試験例61、63、66、68、71、76)、2(=3.0/1.5:試験例81)、3(=3.0/1.0:処方例3)であり、本件発明1の「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である」ことに相当する。 してみると、本件発明1と文献B発明とは、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-B> ピッカリングエマルションについて、本件発明1は「(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)」と特定しているのに対し、文献B発明は「一般式(I)のアクリルシリコーン」を含む点。 上記相違点1-Bは実質的な相違点であるから、本件発明1は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、アクリルシリコーンではない、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含むアクリル系ポリマーを粉体との質量比が所定の範囲となるように配合することは記載も示唆もされておらず、また、文献B発明のピッカリングエマルションを、アクリルシリコーンを含まないものとする動機付けを見出すことはできない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点1-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明1は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2について 文献B発明について 本件発明1の場合と同様に、本件発明2と文献B発明を対比する。 ここで、文献B発明が含有する一般式(I)のアクリルシリコーンは、 a: [図:0001417618000010.jpg] (Rは炭素数10~20のアルキル基。試験例59等では、Rは2-ヘキシル基。)、 b: [図:0001417618000011.jpg] 及び c: [図:0001417618000012.jpg] の3種を構成モノマーとしたものであって(摘記B1、請求項13)、そのうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、a及びcであり、そのエステル残基は、それぞれR及び [図:0001417618000013.jpg] である。 一方、本件発明2における「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する」との事項は、アクリル系ポリマーポリマーが含有する全ての「(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基」が「置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する」ものであると解されるところ、文献B発明は(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基がシリコーン置換基を有するものを含むので、本件発明2における「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する」ことに相当するものではない。 以上の点を考慮すると、本件発明2と文献B発明は、、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点2-B> アクリル系ポリマーについて、本件発明2は「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は、置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有する」と特定しているのに対し、文献B発明は「一般式(I)のアクリルシリコーン」、すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基がシリコーン置換基を有する点。 上記相違点2-Bは実質的な相違点であるから、本件発明2は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基が、置換基を有しないか、又は糖残基、アミノ酸残基、及びホスホリルコリン残基の何れかを置換基として有するアクリル系ポリマーを粉体との質量比が所定の範囲となるように配合することは記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点2-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明2は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明3について 文献B発明について 本件発明1の場合と同様に、本件発明3と文献B発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点3-B> アクリル系ポリマーについて、本件発明3は「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~4である」と特定しているのに対し、文献B発明における「一般式(I)のアクリルシリコーン」の構成モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに相当する上記ウで示したaにおけるRは2-ヘキシル基(すなわち、炭素数が6。)又は炭素数10~20のアルキル基であり、同cにおけるエステル残基のアルキル基の炭素数は3である点。 上記相違点3-Bは実質的な相違点であるから、本件発明3は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~4であるアクリル系ポリマーを粉体との質量比が所定の範囲となるように配合することは記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点3-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明3は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 本件発明4について 文献B発明について 本件発明1の場合と同様に、本件発明4と文献B発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点4-B-1> アクリル系ポリマーについて、本件発明4は「前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基は置換基を有しておらず」と特定しているのに対し、文献B発明は「一般式(I)のアクリルシリコーン」、すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基がシリコーン置換基を有する点。 <相違点4-B-2> ピッカリングエマルションについて、本件発明4は「カチオン性界面活性剤を含まない」と特定しているのに対し、文献B発明はカチオン性界面活性剤に相当する、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム(塩化ジメチルジアルキル(C18)アンモニウム)、又は塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを含む点。 上記相違点4-B-1及び相違点4-B-2は実質的な相違点であるから、本件発明4は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基が置換基を有していないアクリル系ポリマーを粉体との質量比が所定の範囲となるように配合することは記載も示唆もされておらず、また、ピッカリングエマルションについて、カチオン性界面活性剤を含まないピッカリングエマルションとすることも記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点4-B-1及び相違点4-B-2に係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明4は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ 本件発明5について 文献B発明について 本件発明1の場合と同様に、本件発明5と文献B発明を対比する。 上記エで述べたとおり、文献B発明における「一般式(I)のアクリルシリコーン」の構成モノマーのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに相当する上記ウで示したaにおけるRは2-ヘキシル基(すなわち、炭素数が6。)又は炭素数10~20のアルキル基であり、同cにおけるエステル残基のアルキル基の炭素数は3であって、本件発明5で特定される「炭素数1~20」の範囲内にあることを考慮すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が1~20である、ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点5-B> アクリル系ポリマーについて、本件発明5は(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおける「エステル残基が置換基を有しない」と特定しているのに対し、文献B発明は「一般式(I)のアクリルシリコーン」、すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基がシリコーン置換基を有する点。 上記相違点5-Bは実質的な相違点であるから、本件発明5は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、構成モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるエステル残基が置換基を有しないアクリル系ポリマーを粉体との質量比が所定の範囲となるように配合することは記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点5-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明5は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 キ 本件発明6について 文献B発明について 文献B発明の「一般式(I)のアクリルシリコーン」は、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーである。 また、文献B発明における「一般式(I)のアクリルシリコーン」に関して、処方例3では、成分「(5)一般式(I)で示されるアクリルシリコーン」について、文献Bに「油相(1)~(10)」と記載されており(摘記B8)、試験例59、61、63、64、66、68、71、76若しくは81においても、処方例と同様に、デカメチルペンタシロキサン等と同じB相に存在することから、油相に存在するといえる。 以上の点を考慮して、本件発明1の場合と同様に、本件発明6と文献B発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルが重合した構造を含むコポリマーである、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点6-B> ピッカリングエマルションについて、本件発明6は「前記アクリル系ポリマーを水相成分として含む」と特定しているのに対し、文献B発明は「一般式(I)のアクリルシリコーン」が油相に存在する点。 上記相違点6-Bは実質的な相違点であるから、本件発明6は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、「一般式(I)のアクリルシリコーン」を水相成分として含むピッカリングエマルションとすることは記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点6-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明6は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ク 本件発明8~12について (ア)本件発明8~12は、本件発明1~7を技術的にさらに限定するものである。 上述のとおり、本件発明1が文献Aに記載された発明であるとはいえず、後述するように(3(2)イ)、本件発明2~7は、文献A発明と実質的に相違し、文献Aに記載された発明であるとはいえないから、本件発明8~12は文献Aに記載された発明であるとはいえない。 (イ)また、上述のとおり、本件発明1~6が、文献Bに記載された発明であるとはいえず、文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明7が「前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーである」ことを特定している点で、文献Bに記載された発明であるとはいえず、文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1~7を技術的にさらに限定するものである本件発明8及び9は、文献Bに記載された発明であるとはいえず、同じく本件発明8~12は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ケ 本件発明14について (ア)文献A発明について 文献A発明が粉体以外の界面活性剤を含まないことを考慮して、本件発明1の場合と同様に、本件発明14と文献A発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記粉体以外の界面活性剤を含まない、ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点14-A> アクリル系ポリマーについて、本件発明14は「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含」むと特定しているのに対し、文献A発明は「(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」である点。 上記相違点14-Aは実質的な相違点であるから、本件発明14は文献Aに記載された発明であるとはいえない。 (イ)文献B発明について 本件発明1の場合と同様に、本件発明14と文献B発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8であり、 前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含み、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点14-B> ピッカリングエマルションについて、本件発明14は「前記粉体以外の界面活性剤を含まない」と特定しているのに対し、文献B発明はカチオン性界面活性剤に相当する、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム(塩化ジメチルジアルキル(C18)アンモニウム)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを含む点。 上記相違点14-Bは実質的な相違点であるから、本件発明14は文献Bに記載された発明であるとはいえない。 また、文献Bには、カチオン性界面活性剤を含まないピッカリングエマルションとすることは記載も示唆もされていない。 してみると、文献Bに記載された発明において、相違点14-Bに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明14は文献Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 コ 令和6年3月25日付け意見書における申立人の意見書について 申立人は、令和6年3月25日付けの意見書において、令和6年1月16日付け訂正請求による訂正後の請求項13に係る発明について、文献Bに記載された発明及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するが、当該理由は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むので採用しない。 サ まとめ 以上のとおりであるから、取消理由1、取消理由2、取消理由4及び取消理由5は理由がない。 (2)取消理由3(明確性要件違反)について 取消理由3のアは、訂正前(令和6年1月16日付けの訂正請求による訂正後のこと。以下(2)の項目について同様。)の請求項1~14に係る発明は、「乳化界面に吸着して」いる「粉体」が「アクリル系ポリマー」である場合を含むことに起因する理由であるところ、本件訂正によって、本件発明1~14において、「アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)」と特定されることによって、「乳化界面に吸着して」いる「粉体」が「アクリル系ポリマー」である場合が含まれないこととなったから、上記理由は解消した。 取消理由3のイは、訂正前の請求項1、3、4、6、8~12及び14に係る発明は、「由来」の解釈によって「アクリル系ポリマー」との語に含まれるポリマーの範囲が異なるといえることに起因する理由であるところ、本件訂正によって、本件発明1、3、4、6、8~12及び14に係る発明は、「由来」との語を用いることなく特定されるものとなったから、上記理由は解消した。 したがって、取消理由3は理由がない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1(新規性欠如)及び申立理由4(明確性要件違反)について 申立理由1は取消理由1として、申立理由4は取消理由3として、それぞれ採用した理由である。 (2)申立理由2(進歩性欠如)について ア 引用発明 (ア)文献A(甲1)発明 上記2(1)ア(ア)で示したとおりである。 (イ)甲2発明 甲2には、乳化型化粧料についての記載があるところ(摘記甲2-1~甲2-6)、具体例として、実施例11のO/W型リキッドファンデーションが記載されている(摘記甲2-6)。 したがって、甲2には、実施例11の記載に基づく以下の発明(以下「甲2発明という。」)が記載されていると認める。 「以下の組成のO/W型リキッドファンデーション。 (成分) (質量%) 1.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 0.5 2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5 3.1,3-ブチレングリコール 10.0 4.シリコーン処理酸化チタン(注3) 10.0 5.シリコーン処理ベンガラ(注3) 0.4 6.シリコーン処理黄酸化鉄(注3) 2.0 7.シリコーン処理黒酸化鉄(注3) 0.1 8.シリコーン処理タルク(注3) 5.0 9.カルボキシビニルポリマー 0.3 10.トリエタノールアミン 2.0 11.精製水 残量 12.エタノール 2.0 13.ステアリン酸 1.0 14.ベヘニルアルコール 0.5 15.流動パラフィン 1.0 16.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0 17.パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル 2.0 18.ワセリン 0.5 20.パラオキシ安息香酸メチル 0.2 21.実施例1の異方性板状粒子 1.0 22.香料 0.1 (注3)メチルハイドロジェンポリシロキサン3%処理 (成分21の「実施例1の異方性板状粒子」は、摘記甲2-5の「製造実施例1」で製造された板状粒子。)」 イ 文献A発明について (ア)本件発明1~6及び14について 本件発明1と文献A発明の一致点・相違点は、上記2(1)イ(ア)で示したとおりである。 そして、本件発明2~6及び14は本件発明1と同様に、相違点1-Aに係る「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含」むことが特定されているから、本件発明2~6及び14も文献A発明と、少なくとも相違点1-Aで相違する。 相違点1-Aについて検討するに、文献A発明は、文献Aに記載の試験例1-4に基づくものであるところ、文献Aに「コア-コロナ乳化サンスクリーン化粧料であっても、疎水性粉体を抜去したO/W型の場合(1-4)には、耐水性は発揮されない。」と記載される(摘記A8、[0089])とおり、試験例1-4は、文献Aに記載された発明において必須の成分である(摘記A1、請求項1)疎水性粉体を含有しない、いわば比較例に相当するものであるから、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術を考慮しても、文献A発明の化粧料について、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含むアクリル系ポリマーを配合しようとする動機付けは見出せない。 してみると、文献Aに記載された発明において、相違点1-Aに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その他の事項について検討するまでもなく、本件発明1~6及び14は文献Aに記載された発明、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件発明7について 本件発明1の場合と同様に、本件発明7と文献A発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点7-A> アクリル系ポリマーについて、本件発明7は「前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーである」ことを特定しているのに対し、文献A発明は「(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー」である点。 上記相違点について検討するに、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、文献A発明の化粧料について、アクリレーツコポリマーを配合しようとする動機付けは見出せない。 してみると、文献Aに記載された発明において、相違点7-Aに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明7は文献Aに記載された発明、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明8~12について 本件発明8~12は、本件発明1~7を技術的にさらに限定するものであるから、本件発明1が文献Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明8~12は文献Aに記載された発明、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (エ)本件発明13について 本件発明1の場合と同様に、本件発明13と文献A発明を対比すると、両者は、 「粉体が乳化界面に吸着しており、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である、 ピッカリングエマルション。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点13-A> ピッカリングエマルションについて、本件発明13は「平均乳化粒子径が4μm以下である」ことを特定しているのに対し、文献A発明は平均乳化粒子径が不明である点。 上記相違点について検討するに、文献Aには、試験例1-4とは異なる製造例1~10のコア-コロナ型ミクロ粒子の粒子径が150~250nmであることが記載されているが(摘記A9)、試験例1-4の組成と製造例1~10の組成は異なるものであるから、かかる記載を参酌しても、試験例1-4の平均乳化粒子径が4μm以下であるとすることはできず、また、上記(ア)で述べたとおり、試験例1-4はいわば比較例に相当するものであるから、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術を考慮しても、文献A発明において、平均乳化粒子径が4μm以下であるとする動機付けがあるとはいえない。 してみると、文献Aに記載された発明において、相違点13-Aに係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、本件発明13は文献Aに記載された発明、甲3~甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 甲2発明について (ア)本件発明1について 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「異方性板状粒子」は本件発明1の「粉体」に相当する。 甲2発明の「カルボキシビニルポリマー」はアクリル系ポリマーであるところ、上記異方性板状粒子とは異なる物質であるから、本件発明1の「アクリル系ポリマー(但し、前記粉体ではない)」に相当する。 甲2発明は上記異方性板状粒子を1.0質量%、上記カルボキシビニルポリマーを0.3質量%含有するところ、その比は約3.3であり、本件発明1の「前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である」ことに相当する。 甲2発明は、アクリルシリコーンを含むものではないから、本件発明1の「但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。」に相当する。 甲2発明の「O/W型リキッドファンデーション」は、エマルションである限りにおいて、本件発明1の「ピッカリングエマルション」と共通する。 してみると、本件発明1と甲2発明とは、 「粉体、アクリル系ポリマー(但し、前記乳化界面に吸着する前記粉体ではない)を含み、 前記アクリル系ポリマーの質量に対する前記粉体の質量の比が1.5~8である、 エマルション(但し、前記アクリル系ポリマーとして、アクリルシリコーンを含む形態を除く。)。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-2-1> 粉体について、本件発明1は「粉体が乳化界面に吸着しており」及び「前記乳化界面に吸着する前記粉体」と特定しているのに対し、甲2発明は、粉体が乳化界面に吸着しているとはされていない点。 <相違点1-2-2> アクリル系ポリマーについて、本件発明1は「前記アクリル系ポリマーは、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが重合した構造を含む」と特定しているのに対し、甲2発明は「カルボキシビニルポリマー」である点。 <相違点1-2-3> エマルションについて、本件発明1は「ピッカリングエマルション」と特定しているのに対し、甲2発明は「O/W型リキッドファンデーション」である点。 事案に鑑みて、相違点1-2-3について検討する。 甲2には、「【0027】本発明では、親疎水異方性板状粒子を、上記のピッカリングエマルションの生成に用いるもの、すなわち乳化剤として用いるものではなく、調製された乳化型化粧料の乳化安定性の向上ために用いるものである。例えば、乳化型化粧料(特にW/O型)に、平均粒子径が20~80μmの親疎水異方性板状粒子を配合した場合、乳化滴が約1~2μmの乳化液が形成される。このように、形成された乳化滴が親疎水異方性板状粒子の平均粒子径より小さいことから、親疎水異方性板状粒子は乳化滴の界面に配向していないことが分かる(これは、上記のピッカリングエマルションとは異なる。)。」と記載されており(摘記甲2-3)、甲2に記載された乳化型化粧料はピッカリングエマルションではないことが記載されている。 そして、甲2~甲4及び甲6の記載事項を参酌しても、ピッカリングエマルションではないとされている甲2発明のO/W型リキッドファンデーションをピッカリングエマルションとする動機付けは見出せない。 してみると、甲2に記載された発明において、相違点1-2-3に係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その他の事項について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2~甲4及び甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件発明2~14について 本件発明2~14は、いずれも、本件発明1と同様に「ピッカリングエマルション」に係る発明であるから、甲2発明との対比において、上記<相違点1-2-3>と同様の相違点を有するところ、上記(ア)で述べたとおり、相違点1-2-3に係る事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、その他の事項について検討するまでもなく、本件発明2~14は、甲2~甲4及び甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。 (3)申立理由3(サポート要件違反)について ア 判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 本a)「【技術分野】 【0001】 本発明はピッカリングエマルションに関する。 【背景技術】 【0002】 両親媒性の固体粒子を界面に吸着させることで乳化した剤形は、ピッカリングエマルションとして従来知られており、・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ピッカリングエマルションでは、乳化できる油剤の種類や、量に制限があり、制限を超えると乳化状態が悪化するという課題があった。 本発明の解決しようとする課題は、ピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させる技術を提供することにある。特に油相成分として極性油剤を含有する形態にも応用可能なピッカリングエマルションの乳化安定性向上技術を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者の鋭意研究努力により、アクリル酸ポリマーの添加によって、乳化界面に吸着する粉体の分散状態が改善された、乳化粒子径の細かい安定性に優れたピッカリングエマルションが調製できることが見出された。かかる知見に基づき、本発明を完成させた。」 本b)「【0007】 本発明の好ましい形態では、前記アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマーである。 【0008】 本発明の好ましい形態では、前記アクリル系ポリマーが、アクリレーツコポリマーである。」 本c)「【0009】 本発明の好ましい形態では、油相成分として極性油を含む。 ・・・ 【0010】 本発明の好ましい形態では、前記極性油としてIOB値0.1以上の高極性油を含む。 ・・・ 【0011】 本発明の好ましい形態では、ピッカリングエマルションに含まれる油剤に占める極性油の割合が60質量%以上である。 ・・・ 【0012】 本発明の好ましい形態では、前記極性油として紫外線吸収剤を含む。 ・・・ 【0013】 本発明の好ましい実施の形態では、ピッカリングエマルションに含まれる油剤に占める紫外線吸収剤の割合が、30質量%以上である。」 本d)「【0015】 本発明の好ましい形態では、前記粉体以外の界面活性剤の含有量が0.1質量%以下である。 界面活性剤フリーの形態としても、本発明のピッカリングエマルションは優れた乳化安定性を示す。」 本e)「【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを提供することができる。」 本f)「【発明を実施するための形態】 【0018】 <1>アクリル系ポリマー 本発明のピッカリングエマルションは、アクリル系ポリマーを必須の構成要素として含む。アクリル系ポリマーには、(メタ)アクリル酸並びにそのアミド及びエステルから選択される(メタ)アクリル系モノマーを構成モノマーとする、ポリマー又はコポリマーが含まれる。 本発明においては、ランダム共重合体、交互共重合体又はブロック共重合体であるアクリル系コポリマーを用いることが好ましい。 【0019】 (メタ)アクリル酸のエステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に例示することができる。 (メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は特に限定されず、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~4を例示することができる。 【0020】 (メタ)アクリル酸のアミド又はエステルを構成モノマーとする場合には、そのアミド残基又はエステル残基は、置換基を有していてもよい。 置換基としては、糖残基、アミノ酸残基、ホスホリルコリンなどの生体構成物質に由来する置換基であってもよい。 【0021】 このようなモノマーは、公知の方法によって調整することができる。例えば糖残基であれば、糖とクロロエタノールなどの多価アルコールのハロゲン化物を酸化銀などの触媒存在下、アルカリにより縮合せしめヒドロキシエチル基をアノマーに導入し、このヒドロキシ基とアクリル酸乃至はメタクリル酸とをエステル化し所望のモノマーに導くことができる。 【0022】 アミノ酸残基であれば、アクリル酸又はメタクリル酸を塩化チオニルなどにより酸クロリドへ導き、アミノ酸とアルカリ存在下縮合せしめ、酸アミド結合を構築することによりアミド型の所望のモノマーを得ることができる。 【0023】 ホスホリルコリンなどのようなリン脂質類似構造は、ホスホリルコリンとクロロエタノールをアルカリ存在下縮合せしめ、ヒドロキシエチルホスホリルコリンとなす。これとアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとアルカリ存在下縮合させることにより、所望のモノマーを得ることができる。 【0024】 このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、具体的に(メタ)アクリル酸n-ブチル、・・・等のエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリレート等が例示される。 【0025】 アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の構成モノマーを共重合させたコポリマーを使用してもよい。 このような構成モノマーとしては、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;・・・等が例示される。 【0026】 アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸(C1-C4)アルキレート、メタアクリル酸(C1-C4)アルキレートからなる群から選ばれる二種以上の構成モノマーの共重合体であることが好ましい。 具体的には、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第14版,第1巻,CTFA,2012年,p.60~61)で「ACRYLATES COPOLYMER(アクリレーツコポリマー)」と表記される化合物が挙げられる。 【0027】 アクリル系ポリマーは、上述の構成モノマーを重合して得ることができる。 重合は、アゾビスブチロニトリル等の重合開始剤の存在下、常法に従って行えばよい。 【0028】 アクリル系ポリマーの含有量は、ピッカリングエマルションの乳化粒子径の低減ないし乳化安定性の向上効果の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。 【0029】 また、ピッカリングエマルション全体に対するアクリル系ポリマーの含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下を目安とすることができる。」 本g)「【0030】 <2>粉体 本発明のピッカリングエマルションにおいては、粉体が乳化界面に吸着している。この粉体としては、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体であれば特段の制限なく用いることができる。 【0031】 粉体としては、有機粉体や無機粉体の何れをも用いることができる。特に本発明においては金属酸化物粉体を用いることが好ましい。 ここでいう金属酸化物には、ケイ素などの半金属の酸化物も含まれる。 金属酸化物粉体としては、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムなどを例示することができる。 【0032】 金属酸化物粉体としてシリカ粉体を用いる場合には、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成される、いわゆる乾式シリカ粉末、及び水ガラス等から製造される、いわゆる湿式シリカ粉末の何れを用いてもよい。 乾式シリカ粉末としては、例えばAerosilシリーズ(日本アエロジル株式会社)、CAB-O-SILシリーズ(キャボットコーポレーション)、HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン株式会社)、湿式シリカ粉末としては、例えばNipsilシリーズ(東ソー・シリカ株式会社)、HI-SILシリーズ(PPG)等の市販品の市販品を用いることができる。 【0033】 その他の金属酸化物粉体についても、多くの市販品が存在するので、市販品をそのまま用いることもできる。このような市販品としては、具体的には、微粒子二酸化チタンとして、「MTY-110M3S」(テイカ株式会社製)、・・・等が挙げられる。 【0034】 また、微粒子酸化亜鉛として、「MZ-300」(テイカ株式会社製)、・・・等が挙げられる。 【0035】 金属酸化物粉体の表面は疎水化処理されていることが好ましい。疎水化金属酸化物粉体は、金属酸化物粉体と疎水化処理剤を反応させ、該粉体の表面に存在する水酸基に疎水基を共有結合によって付加したり、また、金属酸化物粉体の表面に疎水化処理剤を物理的に付着させることで被覆したりすることによって調製することができる。 【0036】 疎水化処理は、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物等の疎水化処理剤で金属酸化物粉体を処理する方法が挙げられる。 特に好ましくは、有機ケイ素化合物又はシリコーンを疎水化処理剤として金属酸化物粉体を処理する。 【0037】 有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、・・・等が挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。 【0038】 本発明の好ましい実施の形態では、トリメチルシランによって金属酸化物粉体を処理し、表面にトリメチルシリル基が付加された疎水化金属酸化物粉体を用い、特に好ましくはトリメチルシランによってシリカ粉体を処理し、表面にトリメチルシリル基が付加された部分的疎水化シリカを用いる。 【0039】 疎水化処理剤としてシリコーンを用いる場合には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン、クロルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーンなどが例示できる。 【0040】 金属酸化物粉体の平均一次粒子径は特に限定されない。例えば1~1000nmを目安とすることができ、好ましくは3~100nm、より好ましくは5~30nmである。 【0041】 また、金属酸化物粉体の平均二次粒子径も特に限定されない。好ましくは1μm以下を目安とすることができ、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。 【0042】 ここで、平均一次粒子径及び平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡像上で2500個以上の粒子の最大径を測定し、その個数平均を算出することにより求めることができる。 なお、平均二次粒子径は外用組成物の調製の際に加える応力によって調整することができる。 【0043】 粉体の含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上を目安とすることができる。 また、粉体の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは10質以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下を目安とすることができる。」 本h)「【0044】 <3>油相成分 【0045】 本発明のピッカリングエマルションにおける油相に含まれる油剤は、特に限定されず、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等を含有することができる。 【0046】 液体油脂としては、例えば、アボガド油、・・・等が挙げられる。 【0047】 固体油脂としては、カカオ脂、・・・等が挙げられる。 【0048】 ロウ類としては、ミツロウ、・・・等が挙げられる。 【0049】 炭化水素油としては、流動パラフィン、・・・等が挙げられる。 【0050】 高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、・・・等が挙げられる。 【0051】 高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、・・・等が挙げられる。 【0052】 エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、・・・等が挙げられる。 【0053】 シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、・・・等が挙げられる。 【0054】 中でも、シリコーン油、エステル油、液体油脂、固体油脂及びロウ類が好ましく用いられ、特にジフェニルポリシロキサン、エチルヘキサン酸セチル等が好ましく用いられる。油剤は1種または2種以上を用いることができる。 【0055】 本発明のピッカリングエマルションは乳化安定性に優れることから、油剤として極性油剤を用いることができる。 極性油剤としては、ツバキ油、・・・などを特に好ましく例示することができる。 【0056】 また、IOB値が0.1以上、より好ましくは0.2以上の高極性油剤を用いる形態とすることが好ましい。このような高極性油剤を用いた場合、従来の方法では安定なピッカリングエマルションを調製することが難しかった。本発明によれば高極性油剤を用いた場合であっても乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを調製することができる。 【0057】 また、紫外線吸収剤は一般的に極性が高く、これを用いて安定なピッカリングエマルションを調製することが難しかった。本発明によれば紫外線吸収剤を用いた場合であっても乳化安定性に優れたピッカリングエマルションを調製することができる。 【0058】 紫外線吸収剤としては、化粧料などの皮膚外用剤の分野で使用されているものであれば特段の限定なく用いることができ、パラアミノ安息香酸、・・・が好ましいものとして挙げられる。 ・・・ 【0061】 ピッカリングエマルション全体に占める油剤の割合は特に限定されないが、水中油型のピッカリングエマルションとする場合には、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上とすることができる。 また、水中油型の形態とする場合には、全体に占める油剤の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下とすることができる。 【0062】 水中油型の形態とする場合、ピッカリングエマルション全体に占める極性油の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上とすることができる。 【0063】 水中油型の形態とする場合、ピッカリングエマルション全体に占める紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収機能の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上とすることができる。 【0064】 また、油相全体に占める極性油の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。 【0065】 油相全体に占める紫外線吸収剤の含有量の下限は、紫外線吸収機能の向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。 【0066】 油相全体に占める紫外線吸収剤の含有量の上限は、特に限定されず、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。」 本i)「【0067】 <4>ピッカリングエマルション 本発明のピッカリングエマルションは、油中水型としてもよいし、水中油型としてもよい。好ましくは水中油型とする。 【0068】 水中油型とする場合には、水相と油相の質量比は特に限定されないが、好ましくは4:6~9:1、より好ましくは5:5~8:2、さらに好ましくは5.5:4.5~7:3、さらに好ましくは6:4~6.5:3.5を目安とすることができる。 【0069】 また、本発明においては粉体と油相の質量比は、好ましくは1:120~3:10、より好ましくは1:60~1:5、さらに好ましくは1:30~1:10である。 【0070】 また、本発明においてはアクリル系ポリマーと粉体の質量比は、好ましくは1:0.5~1:100、より好ましくは1:1~1:50、さらに好ましくは1:1.5~1:20、さらに好ましくは1:2~1:15、さらに好ましくは1:3~1:10、さらに好ましくは1:3~1:8である。 アクリル系ポリマーと粉体の質量比を前記範囲とすることによってピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させることができる。 【0071】 本発明のピッカリングエマルションにおける水相は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができるが、例えば、以下の成分を含有することが好ましい。・・・ 【0072】 また、本発明のピッカリングエマルションにおける水の含有量は、全体に対し好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~70質量%、特に好ましくは45~65質量%である。 また、水の含有量は、水相に対し好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%である。 【0073】 本発明のピッカリングエマルションにおける平均乳化粒子径は、乳化安定性の観点から、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。 なお、平均乳化粒子径は、光学顕微鏡で20℃下観察し、無作為に選出した乳化粒子10個の最大径の個数平均を算出することにより求めることができる。 【0074】 本発明において、平均乳化粒子径は、40℃で2週間以上、好ましくは1か月静置したときの値が、絶対値としては前記範囲であることが好ましい。 また、相対値としては調製直後の平均乳化粒子径の値に対して、40℃で2週間以上、好ましくは1か月静置したときの平均乳化粒子径の値が、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.2倍以下であることが好ましい。」 本j)「【0077】 本発明のピッカリングエマルションは、室温下、水相に粉体を分散し、そこへ油相を投入し乳化することにより製造することができる。 【0078】 本発明のピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。また、中でも、紫外線吸収剤の機能を生かし、サンスクリーン皮膚外用剤とすることが好ましい。 中でも、化粧料に用いることが好ましく、化粧下地、ファンデーション等とすることが好ましい。」 本k)「【実施例】 【0079】 表1に示す成分中、水相成分の混合物にシリル化シリカを分散し、そこへ油剤を撹拌しながら投入し、乳化することで、実施例及び比較例のピッカリングエマルションを製造した。 なお、試験例1で使用したシリル化シリカは、シリカ微粒子(AEROSIL社製、平均一次粒子径12nm(測定方法は前述のとおり))とモノ、ジ、及びトリメチルシリル疎水化処理剤を混合することにより得られたものを使用した。 【0080】 【表1】 [図:0001417618000014.jpg] 【0081】 (乳化安定性) 実施例及び比較例のピッカリングエマルションを40℃で1か月放置した。放置前後の平均乳化粒子径を計測し、経時による平均乳化粒子径の増加率を計算し、以下の基準に従い乳化安定性を評価した。結果を表1に示す。 ○・・・100%~120% △・・・120%~200% ×・・・200%~ 【0082】 (平均乳化粒子径) 実施例及び比較例のピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察し、上述の方法により平均乳化粒子径を測定した。結果を表1に示す。また、実施例1と比較例1のピッカリングエマルションの顕微鏡像を図1に示す。 【0083】 (紫外線カット力) 実施例及び比較例のピッカリングエマルションを、サージカルテープ(Transporeスリーエムヘルスケア株式会社製)に、2mg/cm2の載り量で6.4cm×6.4cmの広さで塗布し、Labsphere社製UV-2000S SPFアナライザーを用いて10回測定して得られた平均防御スペクトルからSPF値を求めた。SPF50以上であったものを◎、SPF30以上50未満であったものを〇、SPF15以上30未満であったものを△、SPF15未満のものを×、として評価結果を表1に示す。 【0084】 表1及び図1に示すように、アクリレーツコポリマーを含む実施例1のピッカリングエマルションは、これを含まない比較例1のピッカリングエマルションと比較して顕著に平均乳化粒子径が小さく、乳化安定性に優れていた。 【0085】 また、表1に示した実施例1~3の結果より、アクリレーツコポリマーの含有量依存的に平均乳化粒子径が小さくなり、かつ、乳化安定性が向上することがわかる。 【0086】 これらの結果は、ピッカリングエマルションにアクリル系ポリマーを加えることによって乳化安定性を顕著に向上させることができることを示している。 この効果は、アクリル系ポリマーによって乳化界面に吸着する粉体の分散性が向上したことに起因するものと考えられる。 【0087】 また、表1に示すように、実施例4~6は実施例1とは油相の組成が異なるが、いずれも非常に優れた乳化安定性を備えている。 従来技術では安定したピッカリングエマルションを得ることができる油相の種類や組成が限定されていた(要すれば比較例1)。しかし、表1に示した結果は、本発明の適用によりその自由度を大幅に向上させることができることを示している。 【0088】 また、実施例1~3のピッカリングエマルションは、油相の約半分を紫外線吸収剤が占めるが、優れた乳化安定性を示している。 従来技術では紫外線吸収剤を多量に含むピッカリングエマルションの調製は困難であった(要すれば比較例1)。しかし、表1に示した結果は、アクリル系ポリマーの添加によって、紫外線吸収剤を多量に含むピッカリングエマルションの乳化安定性を顕著に向上させることができることを示している。」 ウ 判断 本件明細書の記載事項全体、特に【0004】の記載からみて、本件発明1~14の解決しようとする課題は、「ピッカリングエマルションの乳化安定性を向上させる技術を提供すること、特に油相成分として極性油剤を含有する形態にも応用可能なピッカリングエマルションの乳化安定性向上技術を提供すること」であると認める。 そして、本件明細書には、 i)アクリル酸ポリマーの添加によって、乳化界面に吸着する粉体の分散状態が改善された、乳化粒子径の細かい安定性に優れたピッカリングエマルションが調製できることが見出されたことについての記載(摘記本a、【0005】)、 ii)アクリル系ポリマーについて、(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される構成単位を含むコポリマー、アクリレーツコポリマーが好ましい形態である旨の記載、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数についての記載、(メタ)アクリル酸のアミド又はエステルを構成モノマーとする場合の置換基についての記載、(メタ)アクリル系モノマーの具体例の記載、アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の構成モノマーを共重合させたコポリマーを使用してもよい旨の記載、ピッカリングエマルションの乳化粒子径の低減ないし乳化安定性の向上効果の観点からの含有量についての記載(摘記本b、本f)、 iii)粉体について、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体であれば特段の制限なく用いることができる旨の記載、有機粉体や無機粉体の何れをも用いることができる旨の記載、粉体の具体例の記載、粉体の平均一次粒子径、平均二次粒子径及び含有量についての記載(摘記本g)、 iv)油相成分について、油相に含まれる油剤は、特に限定されない旨の記載、油剤の具体例の記載、油剤として極性油剤を用いることができる旨の記載、極性油、紫外線吸収剤を用いることができる旨の記載、油剤の含有量についての記載(摘記本c、本h)、 v)ピッカリングエマルションについて、油中水型としてもよいし、水中油型としてもよい旨の記載、水相と油相の質量比、粉体と油相の質量比、アクリル系ポリマーと粉体の質量比、水の含有量についての記載、平均乳化粒子径についての記載(摘記本i)、 vi)粉体以外の界面活性剤の含有量についての記載(摘記本d)、 vii)ピッカリングエマルションの製造方法、及び用途についての記載(摘記本j) がある。 そして、実施例として、本件発明の実施例に相当するピッカリングエマルション(極性油を含有する)が乳化安定性を有する旨が記載され、アクリル系ポリマーであるアクリレーツコポリマーを含まない比較例1及び乳化用粉体であるシリル化シリカを含まない比較例2のピッカリングエマルションは乳化安定性に劣ることが示されており(摘記本k)、かかる実施例の記載から、本件発明に係るピッカリングエマルションは油相成分として極性油剤を含有する形態においても乳化安定性が向上されていることを認識することができるといえる。 してみると、本件発明は、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。 エ 申立理由3について申立人が指摘する具体的な理由について 申立人は、具体的に、(i)~(iii)の理由(第4、1(1)の[申立理由3]を参照。)を主張しているので、以下に検討する。 (i)アクリル系ポリマーの種類について 申立人の主張する理由は、本件特許出願時の技術常識を踏まえても、「アクリル系ポリマー」に含まれるあらゆるポリマーにおいて本件発明の課題が解決できるとは理解できないというものである。 そこで検討するに、発明の詳細な説明において具体的に乳化安定性が得られることが記載されているのは、実施例に記載のアクリレーツコポリマーを用いたピッカリングエマルションのみではあるが、発明の詳細な説明には、好ましい形態であるとされているアクリレーツコポリマー以外にも、(メタ)アクリル酸並びにそのアミド及びエステルから選択される(メタ)アクリル系モノマーを構成モノマーとする、ポリマー又はコポリマー等の各種アクリル系ポリマーを用いることができること、構成モノマーの具体例、置換基の種類等が記載されている(摘記本b、本f)。 そして、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸及びその誘導体である構造を有するモノマーが重合したポリマーであり、共通する化学構造を有 | | するものである(少なくとも-C-C-C(=O)の構造を有する)といえるから、当該共通する化学構造以外の化学構造によって、その化学性質が異なることは当然であるにしても、当該共通する化学構造に基づいて一定程度の類似する性質を有するということができる。 してみると、アクリル系ポリマーの種類に応じて、乳化安定化の程度が異なることがあるとしても、当業者であれば、本件の発明の詳細な説明の記載から、アクリル系ポリマーを用いることで、ピッカリングエマルションの乳化安定性が一定程度向上することを理解することができるといえる。 したがって、(i)の主張は採用できない。 (ii)粉体の材料について 申立人の主張する理由は、本件特許出願時の技術常識を踏まえても、あらゆる材料の「粉体」において本件発明の課題が解決できるとは理解できないというものである。 そこで検討するに、発明の詳細な説明において具体的に乳化安定性が得られることが記載されているのは、実施例に記載のシリル化シリカを用いたピッカリングエマルションのみではあるが、発明の詳細な説明には、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体であれば特段の制限なく用いることができることが記載され、その具体例の記載がある(摘記本g)。 そして、発明の詳細な説明には、「【0002】両親媒性の固体粒子を界面に吸着させることで乳化した剤形は、ピッカリングエマルションとして従来知られており」と記載されていることからみても(摘記本a)、本件発明において使用される「粉体」はあらゆる材料の「粉体」であってもよいのではなく、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体であるといえる。 してみると、粉体の種類に応じて、乳化安定化の程度が異なることがあるとしても、当業者であれば、本件の発明の詳細な説明の記載から、通常、ピッカリングエマルションに用いられる乳化能力を有する粉体を用いることで、ピッカリングエマルションの乳化安定性が一定程度向上することを理解することができるといえる。 したがって、(ii)の主張は採用できない。 (iii)粉体と油剤の関係について 申立人の主張する理由は、あらゆるサイズの粉体やあらゆる油剤量において本件発明の課題が解決できるとは理解できないというものである。 そこで検討するに、発明の詳細な説明において具体的に乳化安定性が得られることが記載されているのは、実施例に記載の特定の平均一次粒子径を有する粉体及び特定の油剤量を用いたピッカリングエマルションのみではあるが、発明の詳細な説明には、粉体の好ましい平均一次粒子径、平均二次粒子径についての記載(摘記本g)、油剤の好ましい含有量についての記載(摘記本h)、好ましい粉体と油相の質量比の記載(摘記本i)がある。 そして、あらゆるサイズの粉体、あらゆる油剤量においてピッカリングエマルションの乳化安定性が得られないのは技術的にみて明らかであり、それぞれ適切な範囲があることは自明である。 してみると、粉体のサイズ、油剤量に応じて、乳化安定化の程度が異なることがあるとしても、当業者であれば、本件の発明の詳細な説明の記載から、適切なサイズの粉体及び適切な油剤量とすることで、ピッカリングエマルションの乳化安定性が一定程度向上することを理解することができるといえる。 したがって、(iii)の主張は採用できない。 オ 令和6年3月25日付け意見書における申立人の主張について 申立人は、令和6年3月25日付けの意見書において、シリル化シリカとアクリレーツコポリマーとを特定の質量比で組み合わせた結果を、本件発明1~6、8~14の粉体及びアクリル系ポリマーの組合せにまで拡張ないし一般化するための根拠を見出せない旨主張する。 しかし、粉体及びアクリル系ポリマーの種類については、上記エ(i)及び(ii)で述べたとおりであり、それらの質量比についても、あらゆる質量比において乳化安定性が得られないことは自明であって、当業者は、実施例の記載及び摘記本iに示した本件の発明の詳細な説明の記載(【0070】)に基づいて適切な範囲において本件発明の課題を解決できると認識できるといえるから、上記主張は採用できない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。 第6 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1~14に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700944

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