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特許異議申立

2023-701277

化粧シート及び化粧材

審判番号
2023-701277
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-196921
登録番号
7287561
請求日
2023年12月04日
審決日
2024年10月15日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】廣瀬 一
  • 【権利者代理人】宮坂 徹
  • 【異議申立人】下河 あい
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-ZC (B32B) / P1651.537-ZC (B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条1項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第113条第1項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7287561号発明「化粧シート及び化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7287561号の請求項2~4、6~10に係る特許を取り消す。 特許第7287561号の請求項1、5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7287561号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和4年3月7日に出願した特願2022-90612号(優先権主張 令和3年3月24日)の一部を、令和4年12月9日に新たな特許出願としたものであって、令和5年5月29日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和5年6月6日)がされた。 その後、その特許に対し、令和5年12月4日に特許異議申立人下河あい(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~10に係る発明の特許について本件特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年3月27日付けで取消理由を通知した。 なお、上記取消理由通知書に対して、指定期間内に特許権者から応答はなかった。 第2 本件発明 特許第7287561号の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件特許の請求項1~10に係る発明を、まとめて「本件発明」と総称することもある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である化粧シート。 【請求項2】 着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、 前記無機物は、シリカのみである化粧シート。 【請求項3】 全体でバイオマス由来の材料を5質量%以上含む請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。 【請求項4】 全体の比重が、0.97以上1.5以下である請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項5】 着色基材層を備え、 前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であって、当該着色基材層はさらに無機物を含み、 当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である化粧シート。 【請求項6】 着色基材層を備え、 前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、当該着色基材層はさらに無機物を含み、 当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、 前記無機物は、シリカのみである化粧シート。 【請求項7】 全体の比重が、0.97以上1.5以下である請求項5又は請求項6に記載した化粧シート。 【請求項8】 全体の厚みが、50μm以上200μm以下である請求項5から請求項7のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項9】 前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項10】 基材と、 前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。」 第3 令和6年3月27日付け取消理由の概要 1 取消理由1(進歩性) 本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3、4、9、10並びに請求項6及び請求項6を引用する請求項7~10に係る発明は、下記甲1に記載された発明及び周知技術、又は、下記甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 <申立人が提出した証拠> 甲第1号証:特開2010-162748号公報 甲第2号証:特開2016-196151号公報 甲第3号証:特開2017-105889号公報 甲第4号証:特開2012-240399号公報 甲第5号証:特開2013―22836号公報 甲第6号証:特開2017-226849号公報 甲第7号証:特開2020-157501号公報 甲第8号証:特開2016-168786号公報 甲第1号証を「甲1」という。他の甲各号証についても同様である。 2 取消理由2(サポート要件) 本件特許は、請求項2及び請求項2を引用する請求項3、4、9、10並びに請求項6及び請求項6を引用する請求項7~10に係る発明について、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 本件発明2及び本件発明6の「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であ」って、「前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、前記無機物は、シリカのみである」ものについて、隠蔽性、生産性及び印刷適性について評価されていない。 したがって、本件発明2、本件発明2を引用する本件発明3及び本件発明4、本件発明6、本件発明6を引用する本件発明7~10は、本件発明の課題を解決したものとして、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 第4 当審の判断 1 取消理由1(進歩性)について (1) 甲各号証に記載された事項及び発明 ア 甲1 (ア)甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付したものである。また、「・・・」は文章の省略を示す。以下同様。)。 「【請求項1】 着色フィルム上に少なくとも絵柄層、透明フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記着色フィルムは層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上含み、前記透明フィルムは層厚が20~100μmで植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含むことを特徴とする化粧シート。」 「【発明の効果】 【0011】 本発明はその着色フィルムの植物原料由来ポリエチレンを70重量%以上として厚みを50~100μmとすることで、植物原料由来を高めつつも印刷適性、隠蔽性、加工適性を維持することが可能となる。また、透明フィルムの植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上として厚みを20~100μmとすることで、植物原料由来を維持しつつ、意匠性と化粧シート表面の各種耐性を有するものとすることが可能となる。」 「【0016】 以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。 本発明における着色フィルム1は、層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上を主材とし、着色剤としての顔料および/または染料を添加し、必要に応じて適宜無機フィラー、熱安定剤、酸中和剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を加えたものが用いられる。ニ酸化炭素削減の趣旨に鑑みて植物原料由来度は70重量%以上とされる。着色剤を添加するため植物原料由来度は後述する透明フィルムより低い。厚みが50μmより薄いと隠蔽性に劣るものとなり、100μmより厚いと製造適性、加工適性に劣るものとなる。植物原料由来のポリエチレンは印刷適性が良好であれば特に制約を受けるものではないが、通常は耐熱性において有利な密度0.94~0.97の高密度ポリエチレンが使われる。着色剤についても公知の材料が使用できる。特によく用いられる顔料には酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料が多く用いられる。」 「【0026】 本発明の化粧シートの製造方法としては、着色フィルム1に絵柄層2を印刷した後、接着性を向上させるため適宜接着層4を設けて、透明フィルム3を貼り合わせ、さらに適宜設けるトップコート層5をコーティングする。この際、着色フィルム1及び透明フィルム3には接着性向上の為、必要に応じてコロナ処理を施すことが望ましい。」 「【0028】 適宜設けるトップコート層5には、さらに耐候性を向上させるために紫外線吸収材及び光安定材を適宜添加してもよい。また各種機能を付与するために抗菌材、防カビ材等の機能性添加材の添加も任意に行える。さらに、表面の意匠性から艶の調整のためあるいはさらに耐磨耗性を付与するためにアルミナ、シリカ、ガラスビーズ等の添加も任意に行える。塗布厚みは通常2~10μmが妥当である。」 「【0030】 以下、本発明を実施例に基づき説明する。まず、使用する樹脂組成などを以下に示す。 <ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒 (MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96) 【0031】 <ポリエチレンB> エチレン(サトウキビ原料)94重量% 1-ヘキセン(石油原料)6重量% 重合触媒:メタロセン触媒 (MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0.93) 【0032】 <ポリエチレンC> (株)プライムポリマー製「ハイゼックス 232J」 重合触媒:チグラー触媒 (MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0) 【0033】 <ポリエチレンD> (株)プライムポリマー製「エボリュー SP3530」 重合触媒 メタロセン触媒 (MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0) 【0034】 <核剤A> ミリケンケミカル製「ハイパフォーム HPN-20E」 【0035】 <核剤B> (株)アデカ製「NA-11」 【0036】 <着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量% (製膜方法:Tダイキャスト法 厚み:70μm 植物由来度:0.93) 【0037】 <着色フィルムB> ポリエチレンC:97重量% 酸化チタン:3重量% (製膜方法:Tダイキャスト法 厚み:70μm 植物由来度:0) 【0038】 <透明フィルムA> 配合比率:ポリエチレンA/ポリエチレンB/核剤A=50/49/1 (厚み:50μm 密度:0.95 ヘイズ:20% 球晶サイズ:1μm 植物由来度:0.93) 【0039】 <透明フィルムB> 配合比率:ポリエチレンC/ポリエチレンD=50/50 (厚み:50μm 密度:0.94 ヘイズ:40% 球晶サイズ:7μm 植物由来度:0) 【0040】 <透明フィルムC> 配合比率:ポリエチレンC/核剤A=99/1 (厚み:50μm 密度:0.98 ヘイズ:40% 球晶サイズ:2μm 植物由来度:0) 【0041】 <透明フィルムD> ポリエチレンC/ポリエチレンD/核剤B=50/49/1 (厚み:50μm 密度:0.96 ヘイズ:35% 球晶サイズ:2μm 植物由来度:0) 【0042】 <透明フィルムE> ポリエチレンD (厚み:50μm 密度:0.93 ヘイズ:20% 球晶サイズ:8μm 植物由来度:0) 【0043】 <トップコート層5> 東洋インキ製造(株)製「YL413」(アクリルウレタン) (グラビアコーティング法 コーティング厚み:5g/m2) 【0044】 <接着層層4> 三井武田ポリウレタン(株)製「タケラックA520/タケネートA50」 (ドライラミネート法 塗工厚み:2g/m2) 【0045】 <絵柄層2> 東洋インキ製造(株):「V378インキ」(ウレタン/ウレア) (グラビア印刷 厚み:平均1g/m2) 【実施例1】 【0046】 前記着色フィルムAにコロナ処理を施し、絵柄層2を印刷した。一方、前記透明フィルムAの両面にコロナ処理を施した。そして、前記透明フィルムAの下側面と、前記着色フィルムAの前記絵柄層2を印刷した面とを、ドライラミネートにて貼り合わせた。その後、前記透明フィルムAの上側面にトップコート層5をコーティングして、化粧シートを作成した。」 (イ) 甲1発明 上記(ア)を総合し、特に実施例1の態様に着目すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「以下のポリエチレンAを含む着色フィルムAにコロナ処理を施し、絵柄層2を印刷し、 一方、以下のポリエチレンA、ポリエチレンB、核剤Aからなる透明フィルムAの両面にコロナ処理を施し、 着色フィルムAに絵柄層2を印刷した後、接着性を向上させるため適宜接着層4を設けて、前記透明フィルムAの下側面と、前記着色フィルムAの前記絵柄層2を印刷した面とをドライラミネートにて貼り合わせ、 その後、前記透明フィルムAの上側面に以下のトップコート層5をコーティングして作成した、化粧シート。 <ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒 (MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96) <ポリエチレンB> エチレン(サトウキビ原料)94重量% 1-ヘキセン(石化原料)6重量% 重合触媒:メタロセン触媒 (MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0.93) <核剤A> ミリケンケミカル製「ハイパフォーム HPN-20E」 <着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量% (製膜方法:Tダイキャスト法 厚み:70μm 植物由来度:0.93) <トップコート層5> 東洋インキ製造(株)製「YL413」(アクリルウレタン) (グラビアコーティング法 コーティング厚み:5g/m2)」 イ 甲2 (ア)甲2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 着色基材層の一方の面側に、印刷により形成された絵柄印刷層、及びオーバーレイフィルム層がこの順に積層されてなり、 前記着色基材層は、ポリオレフィン系樹脂からなり、 前記オーバーレイフィルム層の少なくとも表面側は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むアクリルウレタン系樹脂からなり、前記アクリルウレタン系樹脂の固形分塗布量が5g/m2以上10g/m2以下であり、 前記着色基材層は、酸化チタンを顔料とし、 前記絵柄印刷層は、赤外光の透過率が80%以上であるインキを印刷インキとすることを特徴とする化粧シート。」 「【請求項3】 前記着色基材層は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、酸化チタンを23質量部以上50質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。」 「【0009】 (化粧板10) 本実施形態の化粧板10は、図1に示すように、着色基材層1の一方の面側に、絵柄印刷層2、透明粘着剤層3、及びオーバーレイフィルム層4がこの順に積層されて化粧シート20が形成され、着色基材層1の他方の面側に、粘着剤層6を介して基材7を貼り合わせて構成される。本実施形態の化粧板10は、特に、玄関ドア、屋根、外壁、ルーバー等の外装用途に好適なものである。 【0010】 (着色基材層1) 着色基材層1は、ポリオレフィン系樹脂からなるシート状の層である。このように、ポリオレフィン系樹脂を使用することにより、フッ素系樹脂を使用する場合と異なり、化粧シート20を焼却処理してもフッ化水素ガスが発生することがない。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン系樹脂、ランダムポリプロピレン系樹脂等のポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン樹脂のいずれか、或いはこれらの変性樹脂を使用することができる。特に、表面の硬度や耐熱性等を考慮すれば、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、着色基材層1には、耐候性を考慮して、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等)を添加してもよい。添加量は、所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%以上10%以下、好ましくは1%以上5%以下とする。・・・」 「【0012】 また、着色基材層1を構成するポリオレフィン系樹脂は、酸化チタンを顔料(白色)として含んでいる。これにより、着色基材層1は、赤外光が絵柄印刷層2を透過すると、透過した赤外光を反射する。また、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、酸化チタンを23質量部以上50質量部以下の範囲内で含む。これにより、絵柄印刷層2が透過した赤外光をより適切に反射でき、また、着色基材層1をより適切に形成できる。 なお、本実施形態では、顔料である酸化チタン(白色顔料)を着色基材層1の樹脂内に含ませる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、着色基材層1の絵柄印刷層2側の面に酸化チタンを顔料とする塗料を塗工する構成としてもよい。 また、基材層1の厚みは、30μm以上120μm以下とすることが好ましい。」 「【0014】 ここで、印刷インキの透過率の測定方法としては、例えば、厚み25μmの2軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製ルミラーS50)に対し、重量1g/m2となるよう顔料を分散したインキで印刷し、株式会社島津製作所製分光光度計UV3600によって波長782nm以上2500nm以下の領域を2nm毎に測定点数860点の透過率を測定し、各波長の透過率(%T)の合計値を測定点数で除算した除算結果を、赤外光の透過率とする方法がある。即ち、式「赤外光の透過率=赤外線各波長(782nm以上2500nm以下)の測定透過率(%T)合計値÷測定点数(860)」で算出する。 また、絵柄印刷層2の厚みは5μm以上10μm以下が好ましい。さらに、絵柄印刷層2を構成する樹脂内の酸化チタンの比率は50%以下とすることが好ましい。」 「【0029】 次に、本発明に基づく実施例について説明する。 (実施例1) 実施例1では、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設けた。着色基材層1の厚みは70μmとした。続いて、着色基材層1の表面に、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂とを7:3で混合した混合物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを2:8で混合した硬化剤を3質量部、イソインドリノン、ポリアゾ、及びフタロシアニンからなる顔料を3質量部添加したインキを使用してグラビア印刷により絵柄(木目柄)を印刷し、絵柄印刷層2を設けた。絵柄印刷層2の印刷インキの赤外光の透過率は80%とした。 【0030】 続いて、絵柄印刷層2上に、ランダムポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤0.3質量部とを添加したものを溶融押出成形によりオーバーレイフィルム層4を設けた。オーバーレイフィルム層4の厚み(乾燥後の厚み)は70μmとした。 続いて、オーバーレイフィルム層4上に、アクリルポリオール100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネート10質量部とトリアジン系紫外線吸収剤5質量部とヒンダードアミン系光安定剤5質量部とを添加したアクリルウレタン系樹脂をコーティングして表面保護層5を設けて、化粧シート20を設けた。表面保護層5の厚みは9μmとした。アクリルウレタン系樹脂の固形分塗布量は5g/m2以上10g/m2以下とした。 【0031】 (実施例2) 実施例2では、ポリプロピレン系樹脂に代えて、ポリエチレン樹脂を使用して着色基材層1を設けた。それ以外は、実施例1と同様の手順により、実施例2の化粧シート20を作製した。 (比較例) 比較例では、絵柄印刷層2に用いる顔料をカーボンブラックとした。それ以外は、実施例1と同様の手順により、比較例の化粧シート20を作製した。」 (イ) 甲2発明 上記(ア)を総合し、特に実施例1及び2の態様に着目すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け、着色基材層1の厚みは70μmとし、 続いて、着色基材層1の表面に、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂とを7:3で混合した混合物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを2:8で混合した硬化剤を3質量部、イソインドリノン、ポリアゾ、及びフタロシアニンからなる顔料を3質量部添加したインキを使用してグラビア印刷により絵柄(木目柄)を印刷し、絵柄印刷層2を設け、 絵柄印刷層2の上に透明粘着剤層3を設け、 続いてランダムポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤0.3質量部とを添加したものを溶融押出成形によりオーバーレイフィルム層4を設け、オーバーレイフィルム層4の厚み(乾燥後の厚み)は70μmとし、 続いて、オーバーレイフィルム層4上に、アクリルポリオール100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネート10質量部とトリアジン系紫外線吸収剤5質量部とヒンダードアミン系光安定剤5質量部とを添加したアクリルウレタン系樹脂をコーティングして表面保護層5を設けた、化粧シート20。」 ウ 甲7 甲7には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、高い不燃性能と高い意匠性を両立させ、かつ軽量な化粧シート、建築物内装材、および化粧シートの製造方法に関するものである。」 「【0047】 このような基体側塩化ビニル系樹脂シート12は、製造時において塩化ビニル樹脂粉末に着色剤を配合して調製したコンパウンドを作り、そのコンパウンドを種々の加工機械に供給し、加工成形することで得ることができる。着色剤は顔料、染料のいずれでも構わないが、顔料が用いられることが多く、白色に着色する場合には、例えば酸化チタンあるいは体質顔料としてシリカ、あるいはその両方などが用いられる。これらのように、無機顔料で白色化されたものは、紫外線の反射率が上がるため、耐久性が向上する。 厚さは25μm以上300μm以下が好ましい。化粧シート1として形成された際の重量、しなやかさなどを加味し適当な厚さを選択すればよく、一例として150μmである。」 (2) 甲1発明に基づく理由について ア 本件発明2について (ア) 対比 本件発明2と甲1発明とを、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮して対比する。 甲1発明の「着色フィルムA」、「接着層4」、「透明フィルムA」、「酸化チタン」、「化粧シート」は、それぞれ、本件発明2の「着色基材層」、「接着層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「無機物」、「化粧シート」に相当する。 甲1発明の「以下のポリエチレンAを含む着色フィルムAにコロナ処理を施し、絵柄層2を印刷し、一方、以下のポリエチレンA、ポリエチレンB、核剤Aからなる透明フィルムAの両面にコロナ処理を施し、着色フィルムAに絵柄層2を印刷した後、接着性を向上させるため適宜接着層4を設けて、前記透明フィルムAの下側面と、前記着色フィルムAの前記絵柄層を印刷した面とをドライラミネートにて貼り合わせ」ることは、本件発明2の「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え」ることに相当する。 甲1発明の「以下のポリエチレンAを含む着色フィルムA」、「<ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)」は、本件発明2の「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることに相当する。 甲1発明の「<着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量%(製膜方法:Tダイキャスト法厚み:70μm 植物由来度:0.93)」であることは、本件発明2の「前記着色基材層はさらに無機物を含」むことに相当する。 そうすると、本件発明2と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点1] 「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含む、 化粧シート。」 [相違点1] 着色基材層について、本件発明2は、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり」、「着色基材層」に含まれる「無機物」が「シリカのみ」であるのに対して、甲1発明は、「<ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒 (MFR:5密度:0.96 植物由来度:0.96)」で形成される、「<着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量%(製膜方法:Tダイキャスト法厚み:70μm 植物由来度:0.93)」であり、「着色フィルムA」の比重は特定されておらず、また、「無機物」が「酸化チタン」である点。 (イ) 判断 本件発明2は、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下」とするものであるが、本件特許明細書全体の記載を参酌しても、単に、「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層」において、当該比重を特定することで、従来のものと比較して格別な効果を奏すると認めることはできない。 そして、着色基材層において、着色剤として、酸化チタン、シリカを添加することは、本件特許出願(優先日)前における、周知技術であり(甲7参照。)、甲1発明において、酸化チタンに替えて、シリカとすることは当業者が容易に想到し得たことであり、その際、比重を0.97以上1.0以下とすることは当業者が適宜なし得たことである。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本件発明2は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10について 本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10において、さらに特定する事項を検討しても、上記アで検討した理由と同様に、本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明6、及び本件発明6を引用する本件発明7~10について 本件発明6は、甲1発明との対比において、上記相違点1を有し、上記アで検討したのと同様に、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明6を引用する本件発明7~10において、さらに特定する事項を検討しても、上記アで検討した理由と同様に、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 甲2発明に基づく理由について ア 本件発明2について (ア) 対比 本件発明2と甲2発明とを、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮して対比する。 甲2発明の「着色基材層1」、「透明粘着剤層3」、「オーバーレイフィルム層4」、「酸化チタン(顔料、白色)」、「化粧シート20」は、それぞれ、本件発明2の「着色基材層」、「接着層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「無機物」、「化粧シート」に相当する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け、着色基材層1の厚みは70μmとし、続いて、着色基材層1の表面に、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂とを7:3で混合した混合物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを2:8で混合した硬化剤を3質量部、イソインドリノン、ポリアゾ、及びフタロシアニンからなる顔料を3質量部添加したインキを使用してグラビア印刷により絵柄(木目柄)を印刷し、絵柄印刷層2を設け、絵柄印刷層2の上に透明粘着剤層3を設け、続いてランダムポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤0.3質量部とを添加したものを溶融押出成形によりオーバーレイフィルム層4を設け、オーバーレイフィルム層4の厚み(乾燥後の厚み)は70μmとし」たことは、本件発明2の「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え」ることに相当する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け」ることは、本件発明2の「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることと、「前記着色基材層は、オレフィンを含むモノマーが重合したポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であ」る限りで一致する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け」ることは、本件発明2の「前記着色基材層はさらに無機物を含」むことに相当する。 そうすると、本件発明2と甲2発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点2] 「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、オレフィンを含むモノマーが重合したポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含む、 化粧シート。」 [相違点2] 着色基材層について、本件発明2は、「バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成され」、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり」、「着色基材層」に含まれる「無機物」が「シリカのみ」であるのに対して、甲2発明は、「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1」を設けたものであり、「着色基材層1」の比重は特定されておらず、また、「無機物」が「酸化チタン」である点。 (イ) 判断 本件発明2は、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下」とするものであるが、本件特許明細書全体の記載を参酌しても、単に、「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層」において、当該比重を特定することで、従来のものと比較して格別な効果を奏すると認めることはできない。 そして、着色基材層において、着色剤として、酸化チタン、シリカを添加することは、本件特許出願(優先日)前における、周知技術であり(甲7参照。)、甲2発明において、酸化チタンに替えて、シリカとすることは当業者が容易に想到し得たことであり、その際、比重を0.97以上1.0以下とすることは当業者が適宜なし得たことである。 したがって、甲2発明において、相違点2に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本件発明2は、当業者が甲2発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10について 本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10において、さらに特定する事項を検討しても、上記アで検討した理由と同様に、本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明6及び本件発明6を引用する本件発明7~10について 本件発明6は、甲2発明との対比において、上記相違点2を有し、上記アで検討したのと同様に、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明6を引用する本件発明7~10において、さらに特定する事項を検討しても、上記アで検討した理由と同様に、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 取消理由2(サポート要件)について (1) はじめに 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2に示したとおりである。 (3) 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、サポート要件の判断に関して、特に以下の記載がある。 「【0570】 (実施例1) 基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の他方の面にポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2[μm])を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:110[μm])を得た。化粧シートのバイオマス度は70%である。この化粧シートのプライマー層側に、例えばエバジャパンコーティングレジン社製の接着剤BA-10Lとジャパンコーティングレジン社製硬化剤BA-11Bとを用いて、MDF(Mediumdensity fiberboard:中質繊維板)を張り合わせることで化粧材を得ることができる。 実施例1では、基材として、バイオマス由来の高密度ポリエチレン(ブラスケム社製の「グリーンポリエチレン」)とバイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成され、無機物が添加された着色基材層(厚さ:100[μm])を用いた。着色基材層の比重が1.1になるように、無機物として炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合した。この樹脂をルーダーラミネートすることで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層のバイオマス度は70%である。 【0571】 (実施例2) 着色基材層の比重が0.97になるように、無機物として酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。 【0572】 (実施例3) 着色基材層の比重が1.5になるように、無機物として酸化チタンを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。 【0573】 (実施例4) 着色基材層の比重が1.0になるように、無機物としてシリカを配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。 【0574】 (実施例5) 着色基材をバイオマス由来の高密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含む樹脂組成物で形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。」 そして、【0585】の【表14】に示される実施例1~実施例7について比較例1~3と比較しながら参酌すると、比重0.97~1.5のものが、隠蔽性、生産性及び印刷適性において、異常は確認されない。 (4) 課題 本件発明が解決しようとする課題は、「実施例1から7の化粧シートは、全ての評価試験に対して、ほぼ優れた性能を示した。つまり、隠蔽性、生産性、物性の点で、現行の化粧シートと同様の作用硬化を得ることが確認された。」(【0586】)と認めることができる(当審注:「硬化」は「効果」の誤記であると認められる。以下同様)。 (5) 判断 ・本件発明2、本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10及び本件発明6、本件発明6を引用する本件発明7~10について 本件発明2は、「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、前記無機物は、シリカのみである」ものが特定され、本件発明6は、「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、当該着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、前記無機物は、シリカのみである」ものが特定されているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、着色基材層について、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合物を用いたものについては、その効果を奏することについては確認されているが(【0087】、【0088】、【0165】、【0166】、【0263】、【0362】、【0472】、【0473】、【0533】、【0585】)、単に「前記着色基材層は、バイオマス由来のオレフィンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であ」って、「前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.0以下であり、前記無機物は、シリカのみである」ものについて、隠蔽性、生産性及び印刷適性について評価されていない。 したがって、本件発明2、本件発明2を引用する本件発明3、4、9、10及び本件発明6、本件発明6を引用する本件発明7~10は、本件発明の課題を解決したものとして、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由のうち、請求項1、5に関するものは次のとおりであり、申立人は、本件特許は以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 (1) 申立理由A(進歩性) 請求項1、5に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (2) 申立理由C(サポート要件) 本件発明1では、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、」との構成を有しており、これにより、「曲げ加工適正の低下と、切削性の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる」という効果を奏すると記載されている(【0069】)。 しかしながら、本件特許明細書の表2、 表3によると、着色基材層として、 植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と、植物由来の低密度ポリエチレン(LDPE) とを60:40の比率で混合した樹脂組生物を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成された比較例5の化粧シート及び化粧材について、曲げ加工適性及び切削性の評価は「×」である。 よって、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、」との構成により、「曲げの低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる」という、効果は奏されていない。 したがって、本件発明1は、本件特許明細書の全体を鑑みても発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、本件発明1及び本件発明1と同様の上述の特定事項を有する本件発明5は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないから、 特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 2 当審の判断 (1) 申立理由A(進歩性)について ア 甲各号証に記載された事項及び発明 (ア)甲1 甲1発明は、第4の、1(1)アと同じ。 (イ)甲2 甲2発明は、第4の、1(1)イと同じ。 (ウ)甲7 甲7の記載事項は、第4の、1(1)ウと同じ。 イ 甲1発明に基づく理由について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲1発明とを、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮して対比する。 甲1発明の「着色フィルムA」、「接着層4」、「透明フィルムA」、「酸化チタン」、「化粧シート」は、それぞれ、本件発明1の「着色基材層」、「接着層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「無機物」、「化粧シート」に相当する。 甲1発明の「以下のポリエチレンAを含む着色フィルムAにコロナ処理を施し、絵柄層2を印刷し、一方、以下のポリエチレンA、ポリエチレンB、核剤Aからなる透明フィルムAの両面にコロナ処理を施し、着色フィルムAに絵柄層2を印刷した後、接着性を向上させるため適宜接着層4を設けて、前記透明フィルムAの下側面と、前記着色フィルムAの前記絵柄層を印刷した面とをドライラミネートにて貼り合わせ」ることは、本件発明1の「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え」ることに相当する。 甲1発明の「以下のポリエチレンAを含む着色フィルムA」、「<ポリエチレンA>エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)」と、本件発明1の「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることとは、「前記着色基材層は、植物由来のポリエチレン樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることの限りで一致する。 甲1発明の「<着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量%(製膜方法:Tダイキャスト法厚み:70μm 植物由来度:0.93)」であることは、本件発明1の「前記着色基材層はさらに無機物を含」むことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点3] 「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、植物由来のポリエチレン樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含む、化粧シート。」 [相違点3] 着色基材層について、本件発明1は、「植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成され」、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」とされているのに対して、甲1発明は、「<ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)」で形成される、「<着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量% (製膜方法:Tダイキャスト法厚み:70μm 植物由来度:0.93)」であり、「着色フィルムA」が「植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成され」たものか、また、その比重が特定されていない点。 b 判断 本件発明1は、植物由来の高密度ポリエチレン、植物由来の低密度ポリエチレンとを用いた着色基材層に無機物を配合し、比重を0.97以上1.5以下の範囲とすることで、生産性、印刷適性、加工適性に優れた化粧シートを得ることができたものである(【0570】~【0586】)。 一方、甲1発明は、「<ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料) 97重量% 1-ヘキセン(石化原料) 3重量% 重合触媒:チグラー触媒(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)」は、密度からみて高密度ポリエチレンといえ、低密度ポリエチレンを配合するものではなく、また、甲1には、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を示唆する記載はない。 さらに、「<着色フィルムA> ポリエチレンA:97重量% 酸化チタン:3重量%(製膜方法:Tダイキャスト法厚み:70μm 植物由来度:0.93)」として、酸化チタンを3重量%加えたものを前提とするもので、仮に甲1発明の着色フィルムAに植物由来の低密度ポリエチレンを加えるとしても、どのような数値範囲の比重とするかを意図してまで、適宜加えるものとすることはできない。 したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ) 本件発明5について 本件発明5は、甲1発明との対比において、上記相違点3を有するので、上記(ア)で検討したのと同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 甲2発明に基づく理由について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲2発明とを、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮して対比する。 甲2発明の「着色基材層1」、「透明粘着剤層3」、「オーバーレイフィルム層4」、「酸化チタン(顔料、白色) 」、「化粧シート20」は、それぞれ、本件発明1の「着色基材層」、「接着層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「無機物」、「化粧シート」に相当する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け、着色基材層1の厚みは70μmとし、続いて、着色基材層1の表面に、ウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂とを7:3で混合した混合物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを2:8で混合した硬化剤を3質量部、イソインドリノン、ポリアゾ、及びフタロシアニンからなる顔料を3質量部添加したインキを使用してグラビア印刷により絵柄(木目柄)を印刷し、絵柄印刷層2を設け、絵柄印刷層2の上に透明粘着剤層3を設け、続いてランダムポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤0.3質量部とを添加したものを溶融押出成形によりオーバーレイフィルム層4を設け、オーバーレイフィルム層4の厚み(乾燥後の厚み)は70μmと」することは、本件発明1の「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え」ることに相当する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1」を設けることと、本件発明1の「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることとは、「前記着色基材層は、ポリエチレン樹脂組成物で形成された樹脂層であ」ることの限りで一致する。 甲2発明の「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用した着色基材層1」であることは、本件発明1の「前記着色基材層はさらに無機物を含」むことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点4] 「着色基材層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層とをこの順に備え、 前記着色基材層は、植物由来のポリエチレン樹脂組成物で形成された樹脂層であり、 前記着色基材層はさらに無機物を含む、化粧シート。」 [相違点4] 着色基材層について、本件発明1は、「植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成され」、「当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」とされているのに対して、甲2発明は、「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け、着色基材層1の厚みは70μmと」であり、「着色基材層1」が「植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成され」たものか、また、その比重が特定されていない点。 b 判断 本件発明1は、植物由来の高密度ポリエチレン、植物由来の低密度ポリエチレンとを用いた着色基材層に無機物を配合し、比重を0.97以上1.5以下の範囲とすることで、生産性、印刷適性、加工適性に優れた化粧シートを得ることができたものである(【0570】~【0586】) 。 一方、甲2発明は、「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用して着色基材層1を設け、着色基材層1の厚みは70μmと」したものであり、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを配合するものではなく、また、甲2には、相違点3に係る本件発明1 の発明特定事項を示唆する記載はない。 さらに、甲2発明は、「ポリエチレン樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加した混合物を使用し」たものであり、「ポリエチレン樹脂100質量部に対し」て、「酸化チタン(顔料、白色)を23質量部添加」するものを前提として、仮に、ポリエチレン樹脂を高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンとからなるものに変更する際に、どのような数値範囲の比重とするかを意図してまで、適宜加えるものとすることはできない。 したがって、甲2発明において、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ) 本件発明5について 本件発明5は、甲2発明との対比において、上記相違点4を有するので、上記(ア)で検討したのと同様に、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 申立理由C(サポート要件)について ア 発明の詳細な説明の記載 サポート要件に関する発明の詳細な説明の記載は第4の、3(3)と同じ。 イ 課題 本件発明が解決しようとする課題は、第4の、3(4)と同じ。 ウ 判断 本件発明1は、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」こと、本件発明5は、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であって、当該着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」ことを発明特定事項とするものであり、本件発明が解決しようとする課題は、「実施例1から7の化粧シートは、全ての評価試験に対して、ほぼ優れた性能を示した。つまり、隠蔽性、生産性、物性の点で、現行の化粧シートと同様の作用硬化を得ることが確認された。」(【0586】)と認めることができるところ、【0585】の【表14】に示される実施例1~実施例7について比較例1~3と比較しながら参酌すると、比重0.97~1.5のものが、隠蔽性、生産性及び印刷適性において、異常は確認されていない。つまり、上記記載事項を踏まえると、本件発明1及び本件発明5は、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。 申立人の主張は、本件発明1では、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、」との構成(本件発明5については、本件発明1と同様の上述の特定事項を有すること)を前提としているものであるが、上記のように本件発明1は、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であり、前記着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」こと、本件発明5は、「前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを混合した樹脂組成物で形成された樹脂層であって、当該着色基材層はさらに無機物を含み、当該着色基材層の比重が、0.97以上1.5以下である」ことを発明特定事項とするものであるから、その前提が異なるものである。 したがって、本件発明1、5についての申立人の申立理由C(サポート要件)についての主張は、採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項2~4、6~10に係る特許は、特許法第113条第1項第2号ないし第4号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項1、5に係る特許は、特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701277

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