特許異議申立
2023-701272
ポリオレフィン系接着剤組成物
- 審判番号
- 2023-701272
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-522010
- 登録番号
- 7287276
- 請求日
- 2023年12月04日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋紡エムシー株式会社
- 【異議申立人】吉川 雅也
- 【異議申立人】レバスク 結衣
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7287276号発明「ポリオレフィン系接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7287276号の請求項1-6に係る特許を維持する。
理由
理 由
理由
第1 手続の経緯
特許第7287276号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)4月12日(優先権主張 平成29年5月29日 (JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年5月29日にその特許権の設定登録がされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月4日に特許異議申立人 吉川 雅也(以下、「申立人A」という。)及びレバスク 結依(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7287276号の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、
酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が2~50mgKOH/g-resin、アセトン抽出成分比率が0.01~2質量%であり、
酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり、
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における貯蔵弾性率(E’)が、10~2000MPaであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の25℃における引張破断伸度(Eb)が、50~1000%であり、
有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)を0.5~40質量部、有機溶剤(C)を80~2000質量部含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
溶剤(C1)/溶剤(C2)=50~97/50~3(質量比)である請求項1~2のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との接着に用いられる請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物によって接着されたポリオレフィン樹脂基材と金属基材の積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を構成部材とするリチウムイオン電池用包装材料。」
第3 申立理由の概要
1 申立人Aが申し立てた理由
(新規性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立人Bが申し立てた理由
(新規性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
以下、申立人Aの提示した甲号証を「甲A第1号証」又は「甲A1」などといい、申立人Bの提示した甲号証を「甲B第1号証」又は「甲B1」などという。
第4 申立人Aが申し立てた理由(新規性)及び(進歩性)についての当審の判断
1 甲号証について
甲A第1号証:国際公開第2012/090646号
甲A第2号証:特開2016-124877号公報
甲A第3号証:特許第6083493号公報
甲A第4号証:特許第6055578号公報
甲A第5号証:特開2010-92703号公報
甲A第6号証:特開2015-36385号公報
甲A第7号証:特開2014-120277号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲A第1号証
A1a「[請求項1]
有機溶剤と、該有機溶剤に溶解されており、且つ、130℃で測定したメルトフローレートが5~40g/10minのカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物とを含有することを特徴とする接着剤組成物。」
A1b「[0006]
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂成形体と他の部材(金属製部材、樹脂製部材等)との接着に好適であり、ポリオレフィン樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂成形体同士だけでなく、ポリオレフィン樹脂フィルムと、アルミニウム等からなる金属箔との接着、ポリオレフィン樹脂フィルムと、樹脂層及び金属層を備える複合フィルムにおける金属層との接着、等に用いることもできる。接着剤層は、常温(25℃)で高い接着強さを発現し、特に、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリオレフィン樹脂(B)を含有する場合には、60℃~80℃程度の温度において、接着部における優れた耐熱性(耐熱接着性)等を得ることができる。また、本発明の接着剤組成物を用いた熱融着性部材は、耐熱性(耐熱接着性)に優れた熱融着複合製品の形成に好適であるため、食品、薬品等を収容する密封容器を熱融着複合製品として使用した場合に、その構造を維持しつつ、内容物の変質を防止することができる。
A1c「[0010]
上記変性ポリオレフィン樹脂(A1)を形成するための未変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又は共重合体、これらのオレフィンモノマーと、ジシクロペンタジエン、4-メチルペンテン-1、酢酸ビニル等との共重合体等を用いることができる。好ましい未変性ポリオレフィン樹脂は、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、及びプロピレンと1-ブテンとの共重合体である。未変性ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、プロピレンモノマー単位の含有量は、共重合体を構成するすべてのモノマー単位の合計量を100質量%とした場合に、好ましくは50~90質量%である。
また、上記変性ポリオレフィン樹脂(A1)又は共重合樹脂(A2)を形成するためのエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
A1d「[0048]
本発明について、実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.評価方法
MFR、融点、平均粒子径、粘度及びはく離接着強さの測定方法を以下に示す。
1-1.MFR
JIS K7210に規定された方法で測定した。測定温度は、130℃とした。
1-2.融点
JIS K 7121-1987に規定された方法で、示差走査型熱量計(DSC)により測定した。昇温速度は、10℃/minとした。
1-3.平均粒子径(D50)
ベックマン・コールター社製「コールターカウンター」を使用して測定した。
1-4.粘度
トキメック製B型回転粘度計を用いて、温度25℃±0.5℃の条件で測定した。
1-5.はく離接着強さ
(1)試験片の作製
表面を化成処理した厚さ40μmのアルミニウム箔(100mm×200mm)に、接着剤組成物をバーコーターで塗布し、その後、80℃で60秒間、更に180℃で20秒間乾燥させ、接着剤組成物に含有されていた有機溶剤を除去して膜厚4μmの接着剤層を形成した。次いで、接着剤層の表面に、熱融着性樹脂フィルムとして厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(以下「CPP」と略記する)を貼合し、熱傾斜試験機を用いて、アルミニウム箔の面から加圧して圧着させた。このときの接着条件は、温度180℃、圧力0.3MPa、圧着時間2秒とした。その後、この一体化物を40℃に調温された熱風循環式オーブンに3日間収容し、試験片を得た。
(2)Tはく離接着強さの測定
試験片を15mm幅に裁断し、アルミニウム箔とCPPとの間のTはく離接着強さ(N/15mm)を測定した。測定条件は、温度が25℃及び80℃であり、引張速度は100mm/分である。
[0049]
2.ポリオレフィン樹脂(A)及びその溶液の製造
合成例1-1
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR:10g/10min、融点:85℃、以下、「プロピレン系ランダム共重合体」という)100質量部、無水マレイン酸2質量部、ラウリルメタクリレート1質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド1.5質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、ポリオレフィン樹脂(a1)を合成した。ポリオレフィン樹脂(a1)は、MFRが12g/10min、融点が85℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであった。
次に、内容積1Lの三つ口フラスコに撹拌機、温度計及びコンデンサーを取り付け、トルエン680g及びメチルエチルケトン(以下「MEK」という)170gを仕込み、撹拌しながら60℃に昇温した。これに上記ポリオレフィン樹脂(a1)150gを供給し、1時間程度撹拌した。樹脂を溶解した後、室温まで冷却して固形分15%の溶液を得た。この溶液を「PP溶液a1」とする。
[0050]
合成例1-2
MFRが20g/10minであるプロピレン系ランダム共重合体を用い、合成例1-1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(a2)を合成した。ポリオレフィン樹脂(a2)は、MFRが23g/10min、融点が85℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであった。その後、樹脂の溶解を合成例1-1と同様にして行い、「PP溶液a2」を得た。
[0051]
合成例1-3
MFRが25g/10minであるプロピレン系ランダム共重合体を用い、合成例1-1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(a3)を合成した。ポリオレフィン樹脂(a3)は、MFRが28g/10min、融点が84℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであった。その後、樹脂の溶解を合成例1-1と同様にして行い、「PP溶液a3」を得た。
[0052]
合成例1-4
MFRが44g/10minであるプロピレン系ランダム共重合体を用い、合成例1-1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(x1)を合成した。ポリオレフィン樹脂(x1)は、MFRが47g/10min、融点が84℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであった。その後、樹脂の溶解を合成例1-1と同様にして行い、「PP溶液x1」を得た。
[0053]
合成例1-5
MFRが90g/10minであるプロピレン系ランダム共重合体を用い、合成例1-1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(x2)を合成した。ポリオレフィン樹脂(x2)は、MFRが94g/10min、融点が83℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであった。その後、樹脂の溶解を合成例1-1と同様にして行い、「PP溶液x2」を得た。
[0054]
3.ポリオレフィン樹脂(B)及びその分散液の製造
合成例2-1
プロピレン重合体(融点:163℃)100質量部及びトルエン435質量部を撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに入れ、攪拌下、140℃に昇温し、完全に溶解した。この溶液を140℃に保ったまま、攪拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を、それぞれ、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に140℃で1時間撹拌し、後反応を行い、変性重合体を得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えて変性重合体を析出させた。析出した変性重合体を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥し、変性重合体を回収した。この変性重合体の無水マレイン酸のグラフト量は2.8質量%であり、融点が156℃、酸価が32mgKOH/g、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.6mmolであった。
次に、この変性共重合体15質量部及びトルエン85質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、130℃に加熱して樹脂を完全に溶解した。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で、30℃まで降温したさせて、固形分15%の乳白色の均一な分散液を得た。分散物(樹脂粒子)の平均粒子径(D50)を測定したところ、11.0μmであった。この分散液を、「PP分散液b1」とする。
[0055]
合成例2-2
プロピレン単位95.7モル%及びエチレン単位4.3モル%からなるプロピレン-エチレン共重合体(融点:140℃)100質量部及びトルエン435質量部を、撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに入れ、攪拌下、140℃に昇温し、完全に溶解した。この溶液を140℃に保ったまま、攪拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を、それぞれ、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に140℃で1時間撹拌し、後反応を行い、変性重合体を得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えて変性共重合体を析出させた。析出した変性共重合体を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥し、変性重合体を回収し得た。この変性共重合体の無水マレイン酸のグラフト量は2.6質量%であり、融点が136℃、酸価が30mgKOH/g、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.5mmolであった。
次に、この変性共重合体15質量部、トルエン70質量部及びMEK15質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、130℃に加熱して樹脂を完全に溶解した。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で、30℃まで降温させて、固形分15%の乳白色の均一な分散液を得た。分散物(樹脂粒子)の平均粒子径(D50)を測定したところ、10.3μmであった。この分散液を、「PP分散液b2」とする。
[0056]
合成例2-3
プロピレン単位82モル%及びブテン単位18モル%からなるプロピレン-ブテン共重合体(融点:117℃)100質量部及びトルエン435質量部を、撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに入れ、攪拌下、140℃に昇温し、完全に溶解した。この溶液を140℃に保ったまま、攪拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を、それぞれ、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に140℃で1時間撹拌し、後反応を行い、変性重合体を得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えて変性共重合体を析出させた。析出した変性共重合体を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥し、変性重合体を回収し得た。この変性共重合体の無水マレイン酸のグラフト量は2.4質量%であり、融点が113℃、酸価が27mgKOH/g、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.5mmolであった。
次に、この変性共重合体15質量部、トルエン17質量部及びMEK68質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、130℃に加熱して樹脂を完全に溶解した。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で、30℃まで降温させて、固形分
15%の乳白色の均一な分散液を得た。分散物(樹脂粒子)の平均粒子径(D50)を測定したところ、11.2μmであった。この分散液を、「PP分散液y1」とする。
[0057]
合成例2-4
プロピレン単位74モル%及びブテン単位26モル%からなるプロピレン-ブテン共重合体(融点:110℃)100質量部及びトルエン435質量部を、撹拌機が付設された内容積1.5Lのオートクレーブに入れ、攪拌下、140℃に昇温し、完全に溶解した。この溶液を140℃に保ったまま、攪拌下、無水マレイン酸16質量部及びジクミルパーオキサイド1.5質量部を、それぞれ、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に140℃で1時間撹拌し、後反応を行い、変性重合体を得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えて変性共重合体を析出させた。析出した変性共重合体を繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥し、変性重合体を回収し得た。この変性共重合体の無水マレイン酸のグラフト量は2.6質量%であり、融点が107℃、酸価が30mgKOH/g、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.5mmolであった。
次に、この変性共重合体15質量部、トルエン17質量部及びMEK68質量部を、撹拌機付きオートクレーブに入れ、130℃に加熱して樹脂を完全に溶解した。その後、撹拌しながら25℃/時間の冷却速度で90℃まで降温した後、5℃/時間の冷却速度で60℃まで冷却した。次いで、20℃/時間の冷却速度で、30℃まで降温させて、固形分15%の乳白色の均一な分散液を得た。分散物(樹脂粒子)の平均粒子径(D50)を測定したところ、10.0μmであった。この分散液を、「PP分散液y2」とする。
[0058]
4.接着剤組成物の製造及び評価
実施例1
コンデンサー及び攪拌機が付設された内容積300mlのフラスコに、10gの「PP溶液a1」及び190gの「PP分散液b1」を仕込み、室温で10分間撹拌し、混合液を得た。その後、この混合液に、反応促進剤としてジブチルスズジラウレート(以下「DBTL」という)0.15mgを添加して更に混合し、25℃における粘度が43mPa・sであり、樹脂濃度が15質量%である、白濁した液状の樹脂組成物を得た。
次いで、この樹脂組成物を主剤とし、この主剤に多官能イソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTPA-100」)を、当量比(NCO/OH)が1.5になるように配合して混合し、接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を用いて、上記の接着性試験に供した。尚、試験片の作製に際して、多官能イソシアネート化合物を配合後、1時間以内に、接着剤組成物を使用した。配合組成及び評価結果を表1に示す。
[0059]
実施例2~9
PP溶液、PP分散液、反応促進剤及び多官能イソシアネート化合物の配合量を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。そして、上記の接着性試験に供した。配合組成及び評価結果を表1に示す。
尚、実施例8において、多官能イソシアネート化合物を配合する前の樹脂組成物の粘度(25℃)は、68mPa・sであった。
[0060]
比較例1
「PP分散液b1」をそのまま接着剤組成物として、上記の接着性試験に供した。配合組成及び評価結果を表1に示す。
尚、多官能イソシアネート化合物を配合する前の樹脂組成物の粘度(25℃)は、40mPa・sであった。
[0061]
比較例2及び3
PP溶液、PP分散液、反応促進剤及び多官能イソシアネート化合物の配合量を表1の
通りとした以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。そして、上記の接着性試験に供した。配合組成及び評価結果を表1に示す。
[0062]
[表1]
[図:0001409165000001.jpg]
」
(2)甲A第2号証
A2a「【請求項1】
ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンに由来する構成単位を50~98質量%含む、下記(1)~(3)の少なくともいずれかの樹脂を含有する樹脂組成物。
(1)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレタンウレア樹脂(A)
(2)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレア樹脂(B)
(3)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリアミド樹脂(C)
・・・
【請求項7】
接着剤又はバインダーとして用いられる請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有し、
前記接着層が、請求項7に記載の樹脂組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。」
A2b「【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができ、かつ、ドライラミネーション法等の方法を採用することでリチウムイオン電池用の外装体等を簡便に製造しうる接着剤やバインダーとして有用な樹脂組成物を提供することにある。」
(3)甲A第3号証
A3a「【0054】
実施例に用いられたポリオレフィン樹脂(A)である、ハードレン NS-2002、GMP5070Eは、NMR測定の標品との対比により、単量体としてプロピレン及び1-ブテンを主成分としており、更に結晶化ピーク温度が28℃~38℃の範囲であるものである。
一方、比較例に用いられたポリオレフィン樹脂(A)である、GMP3020E、GMP7550E、アウローレン 350S、アウローレン 550Sは、NMR測定の標品との対比により、単量体としてプロピレン及び1-ブテンを主成分としているが、結晶化ピーク温度が28℃~38℃の範囲外にあるものである。
従って、ポリオレフィン樹脂(A)が単量体としてプロピレン及び1-ブテンを主成分としていても、結晶化ピーク温度が28℃~38℃の範囲内にあるものは、耐電解液性(保持率)に優れ、本発明の課題の解決が可能であるが、当該温度の範囲外にあるものは課題解決に至らないがことが明らかである。
以上の結果から、本接着剤を用いて得られる積層体は、初期接着強度、耐電解液性(保持率)に優れることが明らかとなった。」
(4)甲A第4号証
A4a「【0061】
マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(B)の具体例は、日本製紙株式会社製の商品名アウローレン、三菱化学株式会社製の商品名APTOLOK、LOTTE CHEMICAL CORPORATION製の商品名GENPOLY、東洋紡株式会社製の商品名ハードレン、住化ケムテックス株式会社製の商品名スミフィット、日本製紙株式会社製の商品名スーパークロン、日本ポリプロ株式会社製の商品名ウィンテック、三井化学株式会社製の商品名タフマーXM、住友化学株式会社製の商品名タフセレン、及び出光リテール販売株式会社製の商品名LMPOを含む。」
3 甲A1に記載された発明
甲A1には実施例7の接着剤組成物として「トルエン680g及びメチルエチルケトン170gを仕込み、撹拌しながら60℃に昇温し、これに、メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR:10g/10min、融点:85℃)100質量部、無水マレイン酸2質量部、ラウリルメタクリレート1質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド1.5質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応し、その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、MFRが12g/10min、融点が85℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであるポリオレフィン樹脂(a1)150gを供給し、1時間程度撹拌し、樹脂を溶解した後、室温まで冷却して得た、固形分15%のPP溶液a1:200gに、反応促進剤としてジブチルスズジラウレート0.15mgを添加して更に混合し得た、25℃における粘度が43mPa・sであり、樹脂濃度が15質量%である、白濁した液状の樹脂組成物に多官能イソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTPA-100」)を、当量比(NCO/OH)が1.5になるように配合して混合して得た、接着剤組成物であって、アルミニウム箔にバーコーターで塗布し、形成した接着剤層の表面に、熱融着性樹脂フィルムとして厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを貼合し、この一体化物とした試験片とするための接着剤組成物。」の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されているといえる(摘記A1d参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲A1発明との対比
本件特許発明1と甲A1発明を対比する。
甲A1発明の「トルエン」及び「メチルエチルケトン」は、それぞれ、芳香族炭化水素及びケトン系溶剤であるから、本件特許発明1の「有機溶剤(C)」及び「有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である」に相当する。
甲A1発明の「ポリオレフィン樹脂(a1)」は、プロピレン-エチレンランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものといえるから、甲A1発明の「トルエン680g及びメチルエチルケトン170gを仕込み、撹拌しながら60℃に昇温し、これに、メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR:10g/10min、融点:85℃)100質量部、無水マレイン酸2質量部、ラウリルメタクリレート1質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド1.5質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応し、その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、MFRが12g/10min、融点が85℃、酸価が20mgKOH/gであり、カルボキシル基の含有量は、樹脂1gあたり0.4mmolであるポリオレフィン樹脂(a1)」は、本件特許発明1の「酸変性ポリオレフィン(A)」、「酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が2~50mgKOH/g-resin」に相当する。
甲A1発明の「多官能イソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラネートTPA-100」)」は本件特許発明1の「多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲A1発明は、「酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、
酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が2~50mgKOH/g-resinであり、
有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である、
接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A-1>
酸変性ポリオレフィン(A)のアセトン抽出成分比率が、本件特許発明1では0.01~2質量%であるのに対し、本件特許発明1ではそのような特定がない点。
<相違点A-2>
酸変性ポリオレフィン(A)が、本件特許発明1では、重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり、25℃における貯蔵弾性率(E’)が、10~2000MPaであり、25℃における引張破断伸度(Eb)が、50~1000%であるのに対し、甲A1発明では重量平均分子量(Mw)、25℃における貯蔵弾性率(E’)、25℃における引張破断伸度(Eb)が、不明である点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、相違点<A-2>について検討する。
ここで、甲A1には甲A1発明の接着剤組成物においてポリオレフィン樹脂(a1)としてプロピレン-エチレンランダム共重合体のほかに多種の単独重合体又は共重合体が例示されており、その中にプロピレンと1-ブテンとの共重合体が使用できることが記載されている(摘記A1c参照)。そして、甲A3及び甲A4の記載から、アウローレン 550Sがマレイン酸変性プロピレンと1-ブテンとの共重合体であるところ、申立人Aによる異議申立書の3(4)ウに記載された主張に基づくと、アウローレン 550Sの重量平均分子量(Mw)、25℃における貯蔵弾性率(E’)、25℃における引張破断伸度(Eb)は、申立人Aによる測定で、それぞれ、146,0000、473MPa、862%であることから、本件特許発明1の「重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり、25℃における貯蔵弾性率(E’)が、10~2000MPaであり、25℃における引張破断伸度(Eb)が、50~1000%である」を充足するものであり、実質的な相違点ではない主張している。
しかしながら、甲A1には上記のとおり、ポリオレフィン樹脂(a1)としてプロピレン-エチレンランダム共重合体のほかにプロピレンと1-ブテンとの共重合体が使用できることが記載されているのみであり、「アウローレン 550S」を使用することができること、あるいは、「重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり、25℃における貯蔵弾性率(E’)が、10~2000MPaであり、25℃における引張破断伸度(Eb)が、50~1000%である、酸変性ポリオレフィンを使用することができることのいずれも記載されておらず、この点は実質的な相違点である。
また、甲A1には、上記のとおり、「プロピレンと1-ブテンとの共重合体」がポリオレフィン樹脂(a1)の一例として記載されているのみであり、その他の多種の単独重合体又は共重合体の例示の中から「プロピレンと1-ブテンとの共重合体」を選択する動機付けとなる記載も示唆もない。
仮に、甲A1の前記記載から、甲A1には甲A1発明の接着剤組成物において、ポリオレフィン樹脂(a1)としてプロピレン-エチレンランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものに代えて、プロピレンと1-ブテンとの共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものを採用するとしても、プロピレンと1-ブテンとの共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したもののうち甲A3及び甲A4に記載のアウローレン 550Sを選択する動機付けがあるとまではいえない。
この点について、申立人Aは、異議申立書の3(4)ウにおいて、「本件発明1の・・・「酸変性ポリエチレン(A)」と一致する市販品「アウローレン」シリーズが、本件出願時によく知られていた」こと、その市販品「アウローレン」シリーズの一つであ」ることから、「本件発明1の・・・構成と一致する市販品「アウローレン550S」を甲1発明において、「ポリオレフィン樹脂(a1)」と置換して用いることは、互いに組成や融点等の物性が一致するため、容易になされることである」と主張している。しかしながら、甲A1、甲A3、甲A4のいずれにも、酸変性ポリエチレン(A)として他の市販品ではなく「アウローレン」シリーズの中の「アウローレン550S」を選択する動機付けとなる記載も示唆もなく、甲A1発明のポリオレフィン樹脂(a1)とは少なくとも組成が異なるものであり、互いに物性が一致しているとの根拠も示されていない。
また、申立人Aは、「本件明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「25℃における貯蔵弾性率(E’)」、「25℃における引張破断伸度(Eb)、及び「融点」は、それぞれ好ましい範囲の説明がなされているものの・・・各物性が独立に制御し得ることは記載も示唆もない」ことから、「甲第1号証において、他部材との接着強度や接着部における耐熱性に優れた接着剤組成物を得るため(段落0004)、不純物を除く操作を調整することにより、本件発明1・・・で規定する程度の数値範囲とすることの動機付けが認められる」と主張している。しかしながら、甲A1には、本件明細書の記載によらず、「重量平均分子量(Mw)」、「25℃における貯蔵弾性率(E’)」、「25℃における引張破断伸度(Eb)のいずれの数値範囲を特定のものとする動機付けとなる記載や示唆もなく、甲A1の段落0004の記載からも動機付けがあるとは認められない。
よって、申立人Aの上記主張はいずれも採用できない。
また、甲A2及び甲A5~甲A7にも、甲A1発明の接着剤組成物において、ポリオレフィン樹脂(a1)としてプロピレン-エチレンランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものに代えて、プロピレンと1-ブテンとの共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものを採用することについて、記載も示唆もない。
そうすると、甲A1発明の接着剤組成物において酸変性ポリオレフィンとしてプロピレン-エチレンランダム共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものに代えて、プロピレンと1-ブテンとの共重合体に無水マレイン酸をグラフト化したものであるアウローレン 550Sを採用し、相違点<A-2>の特定事項を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲A1に記載された発明ではなく、<相違点A-1>について検討するまでもなく、甲A1発明及び甲A2~甲A7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2~6
本件特許発明2~6は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲A1発明との<相違点A-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点A-2>については上記(1)イで検討したとおりであるから、本件特許発明2~6は、甲A1に記載された発明ではなく、<相違点A-1>について検討するまでもなく、甲A1発明及び甲A2~甲A7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第5 申立人Bが申し立てた理由(新規性)についての当審の判断
1 甲号証について
甲B第1号証:国際公開2014/123183号
甲B第2号証:株式会社三井化学分析センターの従業員である花本康弘氏及び笹倉真一氏が2023年8月20日~25日及び同年11月21日に測定した甲B第1号証に記載の無水マレイン酸変成プロピレン/1-ブテン共重合体の貯蔵弾性率および引張破断伸度の結果を、同従業員である生井勝康氏及び坂井賢英氏が同年11月22日にまとめた実験成績証明書
甲B第3号証:国際公開2017/006681号
2 甲号証の記載について
(1)甲B第1号証(以下、「甲B1」という。)
B1a「[請求項1]
炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と
を含むことを特徴とする、接着剤。
・・・
[請求項9]
基材と、
前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層と
を備え、
前記接着剤層は、
炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2~20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と
を含む組成物を含むコーティング剤からなることを特徴とする、積層体。
・・・
[請求項12]
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材の外側に接着される外側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤の硬化物を含む内側接着剤層と、
前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備えることを特徴とする、電池ケース用包材。」
B1b「[0123]
4.組成物の調製方法
組成物を調製するには、上記した変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)と、必要により配合される炭化水素系合成油(D)とを、イソシアネート基の、イソシアネート基と反応することができる官能基に対する当量比(NCO/官能基)が、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上となり、また、例えば、50以下、好ましくは、30以下、より好ましくは、1.7以下、さらに好ましくは、0.99以下となるように、配合する。
[0124]
イソシアネートインデックスは、後の実施例にて詳述する。
[0125]
上記した変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)との比((A)/(B))は、上記したイソシアネートインデックスとなるように適宜選択され、具体的には、質量換算で、例えば、80/1以下、好ましくは、60/1以下であり、また、例えば、1/10以上、好ましくは、1/5以上である。
[0126]
また、必要に配合される炭化水素系合成油(D)の配合割合は、好ましくは、変性オレフィン重合体(A)と炭化水素系合成油(D)との合計100質量%に対し、例えば、1質量%以上、80質量%以下である。
[0127]
また、組成物、あるいは、それを構成する各成分、具体的には、変性オレフィン重合体(A)、ポリイソシアネート(B)、炭化水素系合成油(D)には、必要に応じて、そのいずれかまたは全てに、エポキシ樹脂、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤(光安定剤、熱安定剤を含む)、可塑剤、界面活性剤、顔料、揺変剤、増粘剤、粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。
[0128]
また、上記調製において、上記した溶媒を配合して、ワニスとして調製することもできる。
[0129]
溶媒としては、上記と同様の溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、メチルシクロヘキサン/メチルイソブチルケトン混合溶剤、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶剤、シクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶剤、セルソルブ類/シクロヘキサノン混合溶剤が挙げられる。なお、水を分散媒として用いることもできる。
[0130]
好ましくは、組成物を、加工性の点から、溶媒を配合してワニスとして使用する。より好ましくは、組成物を溶媒に溶解させて使用する。
[0131]
溶媒は、ワニス100質量部に対する不揮発分の含有割合が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上となり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下となるように、組成物に配合される。
[0132]
なお、変性オレフィン重合体(A)はワニスとして調製されている場合には、ワニスを構成する溶媒をそのまま、上記調製のために溶媒として用いることもできる。」
B1c「[0169]
そして、上記した電池10は、例えば、リチウムイオン2次電池として用いられ、その場合には、電池ケース用包材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられる。
7-2.高アルカリ溶液用包材および包装体
次に、高アルカリ溶液用包材について図3を参照して説明する。なお、図3において、紙面上側を外側、紙面下側を内側として説明する。」
B1d「[0196]
以下に示す実施例などの数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
1.化合物の物性
各化合物の物性などは、下記に従って、評価した。
[0197]
[プロピレン、エチレンおよび1-ブテンに由来する構成単位の含有割合]
プロピレン、エチレンおよび1-ブテンのそれぞれに由来する構成単位の含有割合を、13C-NMRを利用して求めた。
[0198]
[融点(Tm)、融解熱(ΔH)]
示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融点(Tm)および融解熱(ΔH)を求めた。
[0199]
具体的には、示差走査熱量計において、10℃/minで30℃から180℃まで昇温後、その温度で3分間保持し、次いで、10℃/minで0℃まで降温し、その温度で3分間保持し、再度10℃/minで150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に準じて融点(Tm)と融解熱(ΔH)を求めた。
[0200]
[40℃における動粘度]
40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定した。
[0201]
[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]
重量平均分子量(Mw)および分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(島津製作所社製;LC-10 series)を用いて、以下の条件で測定した。
[0202]
・検出器: 島津製作所社製;C-R4A
・カラム: TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
・移動層: テトラヒドロフラン
・温度: 40℃
・流量: 0.8mL/min
単分散標準ポリスチレンにより作成した検量線を用いて、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[0203]
[無水マレイン酸の変性量]
無水マレイン酸の含有割合(変性量)を1H-NMRによる測定から求めた。
[0204]
[無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の半結晶化時間]
無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体5mg程度を専用アルミニウムパンに詰め、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製;Diamond DSC)を用い、30℃から150℃まで320℃/minで昇温し、150℃で5分間保持した後、50℃まで320℃/minで降温し、その温度で保持した時に得られるDSC曲線を解析した。具体的には、DSC熱量曲線とベースラインとの間の面積から全熱量を算出し、その全熱量の50%に到達した時間を、50℃に到達した時刻を基準(t=0)として半結晶化時間を求めた。
[NCO/COOHの比率]
NCO/COOHの比率を以下の式によって算出した。
NCO/COOH=(W×N/100÷42)÷(W´×M/100÷98.06×2)
W:ポリイソシアネートの質量
N:ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量
W´:変性重合体の質量
M:変性重合体における単量体(無水マレイン酸)に由来する構成単位の含量
<重合体の合成>
[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]
充分に窒素置換した2Lのオートクレーブに、ヘキサンを900mL、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm2Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm2Gに保ちながら30分間重合した。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は78℃、融解熱(ΔH)は29J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は67モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は33モル%であった。
[0205]
[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]
上記プロピレン/1-ブテン共重合体(1)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1-ブテン共重合体(1)をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
[0206]
得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は76℃、融解熱(ΔH)は29J/g、50℃での半結晶化時間は946秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部であった。
[製造例3:エチレン/プロピレン共重合体(1)の合成]
充分窒素置換した攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを加え、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として16mmol/lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500mL/h、ヘキサンを500mL/h連続的に供給した。一方重合反応器上部から、重合反応器内の重合液が常に1Lになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを27L/h、プロピレンガスを26L/h、水素ガスを100L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で実施した。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥した。これにより、エチレン/プロピレン共重合体(1)を得た。
[0207]
得られたエチレン/プロピレン共重合体(1)におけるエチレンに由来する構成成分の含有割合が56モル%、プロピレンに由来する構成成分の含有割合が44モル%、40℃における動粘度は37,500cStであった。なお、動粘度は、ASTM D 445に準拠して測定した。また、エチレン/プロピレン共重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、14,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
[製造例4:無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)の合成]
プロピレン含量67モル%、重量平均分子量(Mw)330,000であるプロピレン/エチレン共重合体3kgを10Lのトルエンに加え、系内の窒素置換を1時間実施した。
[0208]
系の温度を145℃に上げ、プロピレン/エチレン共重合体をトルエンに完全に溶解した後、系の撹拌を継続しながら、無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを別々の供給口から4時間かけて、系に供給し、さらに後反応として145℃で2時間撹拌を続けた後、系を室温まで冷却した。
[0209]
冷却後反応液の一部を採取し、大量のアセトン中に投入することにより、クラム状(くず状)の無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体を沈殿させた。
得られた沈殿物を採取し、アセトンで繰返し洗洗した後、常温で2昼夜真空乾燥することにより精製された無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)を得た。無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)100質量部に対し、5.3質量%であった。また、融解熱(ΔH)は1.6J/g、重量平均分子量(Mw)は140,000であった。
[0210]
[製造例5:プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]
1-ブテンの仕込み量90gを75gにした以外は[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体]の合成と同様に処理した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は78モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は22モル%であった。
[0211]
[製造例6:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]
製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体(1)に代えて製造例5のプロピレン/1-ブテン共重合体(2)を用いた以外は[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]と同様に処理した。得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、50℃での半結晶化時間は276秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)100質量部に対し、1質量部であった。
<変性オレフィン重合体(1)ワニスの調製>
[調製例1:変性オレフィン重合体ワニス(1)]
製造例2で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100gを400gのトルエンに溶解させ変性オレフィン重合体ワニス(1)を調製した。
[調製例2:変性オレフィン重合体ワニス(2)]
製造例2で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)80gと製造例3で製造したエチレン/プロピレン共重合体(1)20gとを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(2)を調製した。
[0212]
[調製例3:変性オレフィン重合体ワニス(3)]
製造例4で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)50gを450gのトルエンに溶解させ変性オレフィン重合体ワニス(3)を調製した。
[0213]
[調製例4:変性オレフィン重合体ワニス(4)の調製]
製造例6で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)80g
と製造例3で製造したエチレン/プロピレン共重合体(1)20gとを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(4)を調製した。
<ポリイソシアネートの準備>
[準備例1:ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体の準備]
ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(「タケネートD-165N」、平均官能基数3以上、イソシアネート基含有量23.5%、三井化学社製)を、準備例1のポリイソシアネートとして準備した。
[準備例2:トリマー変性体の準備]
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー変性体(「タケネートD-170N」、3量体、平均官能基数3以上、イソシアネート基含有量21.0%、三井化学社製)を、準備例2のポリイソシアネートとして準備した。
<複合フィルム(Al箔/接着剤層/PPフィルム積層体)の作製>
実施例1
調製例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の不揮発分と準備例1のビウレット変性体とが質量基準で表1に記載の比率になるように混合し、ラミネート用接着剤を調製した。次いで、ラミネート用接着剤をトルエンで希釈し、バーコーターを用いて、坪量3.3g/m2(固形分)となるように厚さ40μmのアルミニウム箔(表面未処理)のツヤ面上に常温下において塗布し、溶媒を揮散させた。その後、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤の塗布面と、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、60℃で3日間養生することにより、ラミネート用接着剤を硬化させて、アルミニウム箔および未延伸ポリプロピレンフィルム間を接着させて、複合フィルムを、アルミニウム箔、接着剤層および未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体として得た。
[0214]
実施例2~7および比較例1~2
表1に示す処方に従って各成分を混合して、ラミネート用接着剤を調製した以外は、実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。
<積層体(ガラス/接着剤層/アルミニウム積層体)の作製および評価>
実施例8
調製例4の変性オレフィン重合体ワニス(4)45gと、準備例2のトリマー変性体1gとを混合して、接着剤ワニスを調製した。次いで、硬質アルミニウム(30μm厚)上に塗工し、200℃で1分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を得た。得られた接着皮膜付き硬質アルミニウムをガラス被着体(テストピース社製;25×50×2mm)にヒートシーラー(テスター産業社製 TP-701-B)を用いて、230℃、0.3MPa、1秒の条件で圧着させた。得られた試験片は150℃のオーブン中で30分間保持し、熱処理を施した。
[0215]
これにより、硬質アルミニウム、接着剤層およびガラス被着体からなる積層体を得た。
[0216]
比較例3
準備例2のポリイソシアネートを混合しなかった以外は、実施例8と同様に処理して積層体を製造し、続いて、剥離強度を測定した。
[0217]
<評価>
[実施例1~7および比較例1および2]
(1)接着強度(常態強度)
実施例1~7および比較例1および2の複合フィルムを、長さ150mm、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製し、この試験片について、万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度300mm/分にて、T型剥離試験を実施して、複合フィルムの接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
(2)耐電解液性試験
複合フィルムを、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネートを1/1/1の質量比で含有する混合溶剤(電解液)に、85℃で、168時間、浸漬した。浸漬後、複合フィルムを取り出し、混合溶剤を拭き取った。その後、直ちに万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度300mm/分にて、T型剥離試験を実施して、浸漬後の複合フィルムの接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例8および比較例3]
(3)接着強度(加熱後の強度)
実施例8および比較例3の積層体を60℃、相対湿度90%の恒温恒湿機内で2日間保管した。保管後、恒温高湿機から積層体を取り出した後、一晩室温で静置した後に幅1cmの短冊状にカッターで切り目を入れて試験片を作製し、この試験片について、オートグラフ(島津製作所社製 AGS-500B)を用いて、100mm/minの条件で硬質アルミニウムをガラス被着体から180°で剥離する180°剥離試験を実施して、接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
[0218]
[表1]
[図:0001409165000002.jpg]
」
(2)甲B第2号証(以下、「甲B2」という。)
B2a「
[図:0001409165000003.jpg]
[図:0001409165000004.jpg]
」
(3)甲B第3号証(以下、「甲B3」という。)
B3a「[請求項1]
酸価が5~50mgKOH/g-resinである結晶性酸変性ポリオレフィン(A)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(B1)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(B2)および有機溶剤(C)を含有する自動車構造パネル用接着剤組成物。」
B3b「[0046]
有機溶剤(C)は、接着剤組成物の溶液状態およびポットライフ性の観点から、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤(C1)、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤(C2)の混合液が好ましい。混合比としては、溶剤(C1)/溶剤(C2)=50~97/50~3(質量比)であることが好ましく、55~95/45~5(質量比)であることがより好ましく、60~90/40~10(質量比)であることがさらに好ましく、70~80/30~20(質量比)であることが特に好ましい。上記範囲を外れると接着剤組成物の溶液状態およびポットライフ性が低下することがある。また、溶剤(C1)が芳香族炭化水素または脂環族炭化水素であり、溶剤(C2)がケトン系溶媒であることが特に好ましい。」
3 甲B1に記載された発明
甲B1には実施例1のラミネート用接着剤として「プロピレン/1-ブテン共重合体(1)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1-ブテン共重合体(1)をトルエンに溶解させ、さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌し、冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥して得た、重量平均分子量(Mw)が110,000であり、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部である無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100gを400gのトルエンに溶解させ、変性オレフィン重合体ワニス(1)の不揮発分が10質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体1質量部となるように混合して得た接着剤であって、硬化させて接着剤層とし、アルミニウム箔、接着剤層および未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体とするためのラミネート用接着剤。」の発明(以下、「甲B1発明」という。)が記載されているといえる(摘記B1d参照)。
4 対比・判断
(1)本件特許発明1
ア 甲B1発明との対比
本件特許発明1と甲B1発明を対比する。
甲B1発明の「重量平均分子量(Mw)が110,000であり、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部である無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)」は、本件特許発明1の「酸変性ポリオレフィン(A)」、「酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり」及び「酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり」に相当する。
甲B1発明の「トルエン」は、本件特許発明1の「有機溶剤(C)」及び「溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤」に相当する。
甲B1発明の「ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体」は本件特許発明1の「多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)」に相当する。
甲B1発明の「ラミネート用接着剤」は本件特許発明1の「接着剤組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲B1発明は、「酸変性ポリオレフィン(A)、多官能ポリイソシアネート硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含有する接着剤組成物であって、
酸変性ポリオレフィン(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体に、α,β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種をグラフトしたものであり、
酸変性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)が、10,000~200,000の範囲であり、
有機溶剤(C)は、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤である、
接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B-1>
酸変性ポリオレフィン(A)の酸価が、本件特許発明1では2~50mgKOH/g-resinであるのに対し、甲B1発明では不明である点。
<相違点B-2>
酸変性ポリオレフィン(A)のアセトン抽出成分比率が、本件特許発明1では0.01~2質量%であるのに対し、甲B1発明ではそのような特定がない点。
<相違点B-3>
酸変性ポリオレフィン(A)が、本件特許発明1では25℃における貯蔵弾性率(E’)が、10~2000MPaであり、25℃における引張破断伸度(Eb)が、50~1000%であるのに対し、甲B1発明では重量平均分子量(Mw)、25℃における貯蔵弾性率(E’)、25℃における引張破断伸度(Eb)が、不明である点。
<相違点B-4>
有機溶剤(C)が、本件特許発明1では、溶剤(C1)と溶剤(C2)の混合液であり、溶剤(C1)が芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素およびハロゲン化炭化水素からなる群より選択された1種以上の溶剤であり、溶剤(C2)がアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤からなる群より選択された1種以上の溶剤であるのに対し、甲B1発明ではトルエンである点。
イ 相違点についての検討
<相違点B-1>について
甲B1発明のラミネート用接着剤の無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)は、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部であるところ、無水マレイン酸の開環率については記載されていない。
ここで、申立人Bは、異議申立書(4)ウ(ア)(要件Cについて)において、「かかる無水マレイン酸の変性量から、以下のようにして、「無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)」の酸価を理論的に計算でき」、「実際の無水マレイン酸変性においては、無水マレイン酸の開環率は0~100%の間にあることから、甲第1号証において得られる無水マレイン酸/1-ブテン共重合体(1)の酸価は5.7~11.4mgKOH/g-resinである」と主張している。
そこで、上記申立人Bの主張に基づき、無視マレイン酸の開環率が0~100%である場合の無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の酸価を理論的に計算したところ、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の酸価は、無水マレイン酸の分子量は98.1、KOHの分子量は56.1であるから、無水マレイン酸の開環率が100%の場合、上記共重合体1g中の酸のモル数は2×1/100/98.1=0.000204(mol)であるため、樹脂1gの中和に必要なKOHの質量は0.000204×56.1=0.0114(g)、すなわち酸価は11.4mgKOH/g-resinとなり、また、無水マレイン酸の開環率が0%の場合は、酸価は0mgKOH/g-resinとなり、無水マレイン酸の開環率が0~100%である場合の無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の酸価は0~11.4mgKOH/g-resinの範囲となり、本件発明1の酸変性ポリオレフィンの酸価の数値範囲外を含むものである。そして、無水マレイン酸の開環率が不明である以上、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の酸価が2mgKOH/g-resin以上であるか否かは不明であるから、この点は実質的な相違点である。よって、申立人Bの上記主張は採用できない。
ウ 小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点B-2>~<相違点B-4>について検討するまでもなく、甲B1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
(2)本件特許発明2~6
本件特許発明2~6は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲B1発明との<相違点B-1>と同じ相違点を有するものであって、<相違点B-1>については上記(1)イで検討したとおりであるから、本件特許発明2~6は、甲B1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701272