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特許異議申立

2023-701242

生物処理装置の運転方法

審判番号
2023-701242
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-115614
登録番号
7283253
請求日
2023年11月27日
審決日
2024年02月13日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】栗田工業株式会社
  • 【権利者代理人】重野 剛
  • 【権利者代理人】重野 隆之
  • 【異議申立人】夏目 由美
  • 【異議申立人】白井 雅恵
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.121-Y (C02F) / P1651.537-Y (C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7283253号発明「生物処理装置の運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7283253号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7283253号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和元年6月21日の出願であって、令和5年5月22日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月27日に、請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人 夏目 由美(以下、「申立人夏目」という。)により、甲第1~3号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年同月30日に、特許異議申立人 白井 雅恵(以下、「申立人白井」という。)により、甲第1~4号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~4に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、 該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、 ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管と を備えてなる生物処理装置の運転方法において、 電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う生物処理装置の運転方法であって、 前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、 前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うことを特徴とする生物処理装置の運転方法。 【請求項2】 前記電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は停止するガス溶解膜モジュールを順次に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の生物処理装置の運転方法。 【請求項3】 前記凝縮水排出工程を行うガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を、通常運転時の電子伝達体含有ガス供給量の2~20倍とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の生物処理装置の運転方法。 【請求項4】 前記通常運転時に前記ガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給圧力が所定値よりも高くなったときに前記凝縮水排出工程を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の生物処理装置の運転方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 申立人夏目による特許異議申立理由の概要 ここでいう甲第1~3号証は、下記(2)に記載された、申立人夏目が提出した甲第1~3号証である。 (1) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 証拠方法 甲第1号証:米国特許出願公開第2018/0022625号明細書 甲第2号証:特開平11-290659号公報 甲第3号証:特開平9-312168号公報 2 申立人白井による特許異議申立理由の概要 ここでいう甲第1~4号証は、下記(3)に記載された、申立人白井が提出した甲第1~4号証である。 (1) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件発明は、「前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うこと」、との発明特定事項を有するが、本件特許明細書の段落【0043】~【0046】、【図3】の実施例(以下、「本件実施例」という。)においては、反応槽51に浸漬配置された1個の酸素溶解膜モジュール52に対して、2週間通常運転を行った後、通常運転の3倍の通気量で10分間通気し、その後初期の通気量に戻す凝縮水排出工程を行ったことが記載されているにすぎず、本件発明は実施例による効果の立証がされていないから、課題解決手段たり得るか否かが不明であるので、サポート要件を満たさない。 仮に、本件発明がサポート要件を満たすならば、従来公知の運転方法である1個の酸素溶解膜モジュールにおける凝縮水排出から容易に想到し得ることになり、進歩性を有しない。 (3) 証拠方法 甲第1号証:特開2018-153731号公報 甲第2号証:Mei Li et al, "Pilot-Scale Study of an Integrated Membrane-Aerated Biofilm Reactor System on Urban River Remediation", Ind. Eng. Chem. Res., 2016年, Vol.55, American Chemical Society, p.8373-8382 甲第3号証:国際公開第2005/042133号 甲第4号証:Data sheet: OxyTube, 2017年7月4日, OxyMem 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 申立人夏目による特許異議申立理由について ここでいう甲第1~3号証は、前記第3の1(2)に記載された、申立人夏目が提出した甲第1~3号証である。 (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~eの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 a 「33. A process for water treatment, comprising the steps of: (a) floating a gas transfer membrane in the water, and (b) supplying a gas to the gas transfer membrane. ・・・ 40. The process of claim 33 further comprising removing liquid from the gas transfer membrane. 41. The process of claim 40 further comprising monitoring the amount of liquid to determine whether there may be a leak in the gas transfer membrane, for example as indicated by an unexpected increase in the amount of liquid or by a surplus of liquid over an amount expected as condensate.」(特許請求の範囲) (当審訳:33. 以下のステップを含む、水処理プロセス: (a) ガス移動膜を水中に浮遊させるステップと、 (b) ガス移動膜にガスを供給するステップ。 ・・・ 40. ガス移動膜から液体を除去することを更に含む請求項33に記載のプロセス。 41. 例えば、液体量の予期せぬ増加や、凝縮液として予想される量を超えた液体の余剰によって示される、ガス移動膜の漏れの有無を判定するために、液体の量を監視することを更に含む、請求項40に記載のプロセス。) b 「[0029] FIG. 3 shows, from above, a reactor 50 with three of the larger units 40 floating in a tank 52. In use, water being treated, such as mixed liquor or wastewater, flows through the tank 52.・・・ ・・・ [0033] When a unit 40 is used for water treatment, for example in a MABR, the membranes are typically provided with gas for transfer to the biofilm supported on the membranes and gas to produce bubbles outside of the membranes. The first gas may be called“process gas” and is pumped into the inside of the gas transfer membranes. Optionally, process gas that is not transferred to the biofilm may be removed from the the inside of the membranes. Gas used to produce bubbles may be called non-process gas, mixing gas, scouring gas, or mixing/scouring gas. This gas is fed to an aerator 20, preferably below or near the bottom of the module 10. The process gas contains a component, such as oxygen, that supports a biochemical reaction in the biofilm.・・・ ・・・ [0037] FIG. 4 shows a module 10 connected to various hoses 56. A single module 10 is shown to simplify the figure, but numerical parameters in the following description are for a floating unit 40 having four cassettes 16. One hose 56 is used for carrying a generally continuous flow of process air to the membranes in the module 10. This air enters through the upper header 15, flows down the lumens of the hollow fiber membranes in the cords 12, collects in lower header 14, and exhausts through a hose 56 that preferably extends back above the surface of the water. Flowing process gas from top to bottom helps carry any condensate or leakage water to the bottom header 14 where it can be removed as described further below.・・・ ・・・ [0045] Another hose 56 may be used for one or more ancillary functions such as removing liquid from a module 10, monitoring gasses exhausted from the module 10, or both. This ancillary function hose 56 may be a small tube, for example about 5 mm for a four-cassette unit 40. In the example shown in FIG. 4, the ancillary hose 56 is connected at a low point, preferably at or below the bottom of the lower headers 14, where liquid from inside of the modules 10 collects. The liquid may contain condensate or leakage or both. The ancillary hose 56 may be attached to another hose 56, for example the process air hose 56, to extend from the unit 40 to the edge do the tank 52. The distal end of the ancillary hose 56 is connected to a monitoring station 70 shown in FIG. 6. The monitoring station 70 may be located on the ground or a deck near the tank 52 and be connected to ancillary hoses 56 from multiple units 40. [0046] At the monitoring station 70, each ancillary hose 56 is equipped with a valve 72, for example an on/off isolation valve. The valve 72 allows liquid to be removed, or exhaust monitored, from each unit 40 separately. For example, each unit may be treated once per hour or once per day in sequence. The monitoring station 70 has a vacuum pump 74, a liquid reservoir 76 on a load cell 78 and a liquid discharge line 80. [0047] When monitoring or testing a unit 40, the associated isolation valve 72 is opened (as shown for the top ancillary hose 56 in FIG. 6) while the other isolation valves 72 remain closed. Liquid is pumped from the unit 40 using the vacuum pump 74 and collected in the condensate reservoir 76. Once the mass of liquid removed has stabilized, indicating that substantially all the liquid has been removed from the unit 40, the mass is recorded using the load cell 78 and the condensate is discharged through discharge line 80. ・・・When the testing for one unit 40 is done, its associated isolation valve 72 is closed and the process can be repeated for another unit 40. Typically, all of the units 40 are tested in sequence. [0048] Liquid may collect in a unit 40 due to condensation of water vapor in the process air or due to leaks. The liquid is removed to allow for continued operation of the unit 40. Measuring the amount of liquid collected can be used, for example, to check for leaks in a unit.」 (当審訳:[0029] 図3は、タンク52内に大型ユニット40が3つ浮かぶ反応器50を上から見た図である。使用時には、混合液や廃水などの処理される水がタンク52を流れる。・・・ ・・・ [0033] ユニット40が水処理、例えばMABRに使用される場合、膜には通常、膜に担持されたバイオフィルムに移動するためのガスと、膜の外側に気泡を生成するためのガスが供給される。第1のガスはプロセスガスと呼ばれ、ガス移動膜の内側に送り込まれる。オプションとして、バイオフィルムに移送されなかったプロセスガスは、膜の内側から除去される。気泡を生成するために使用されるガスは、非プロセスガス、混合ガス、スカーリングガス、又は混合/スカーリングガスと呼ばれることがある。このガスは、好ましくはモジュール10の下方又は底部近傍のエアレータ20に供給される。プロセスガスは、バイオフィルム中の生化学反応をサポートする酸素などの成分を含む。 ・・・ [0037] 図4は様々なホース56に接続されたモジュール10を示している。図を単純化するために単一のモジュール10が示されているが、以下の説明における数値パラメータは、4つのカセット16を有するフローティングユニット40のものである。1つのホース56は、モジュール10内の膜におおむね連続的なプロセス空気の流れを運ぶために使用される。この空気は上部ヘッダー15から入り、コード12の中空糸膜の内腔を流れ、下部ヘッダー14に集まり、好ましくは水面上に戻って伸びるホース56を通って排気される。プロセスガスを上部から下部へ流すことで、凝縮水や漏れた水を下部ヘッダー14へ運び、そこで後述するように除去することができる。・・・ ・・・ [0045] 別のホース56は、モジュール10から液体を除去する、モジュール10から排出される気体を監視する、又はその両方のような1つ又は複数の補助機能に使用することができる。この補助ホース56は、例えば、4カセットユニット40の場合、約5mmの細い管であってもよい。図4に示す例では、補助ホース56は、モジュール10の内部からの液体が集まる低い箇所、好ましくは下部ヘッダー14の下部又はその下に接続される。液体は凝縮水、漏れた水、又はその両方を含んでいる可能性がある。補助ホース56は、ユニット40からタンク52の縁まで伸ばすために、ほかのホース56、例えばプロセス空気ホースに取り付けることができる。補助ホース56の遠位端は、図6に示すモニタリングステーション70に接続されている。モニタリングステーション70は、タンク52の近くの地面又はデッキに配置され、複数のユニット40からの補助ホース56に接続されうる。 [0046] モニタリングステーション70において、各補助ホース56はバルブ72、例えばオン/オフ分離バルブを備えている。バルブ72は、各ユニット40から別々に液体を除去すること、又は排気を監視することを可能にする。例えば、各ユニットは、1時間に1回、又は1日に1回、順番に処理することができる。モニタリングステーション70は、真空ポンプ74、ロードセル78上の液体リザーバ76、及び液体排出ライン80を有する。 [0047] ユニット40を監視又は試験する場合、関連する分離バルブ72は開かれ(図6の上部の補助ホース56に示されるように)、ほかの分離バルブ72は閉じたままである。液体は、真空ポンプ74を使用してユニット40から汲み上げられ、凝縮水リザーバ76に集められる。除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニット40から除去されたことを示すと、ロードセル78を用いて質量を記録し、凝縮水を液体排出ライン80を通じて排出する。・・・あるユニット40の検査が終わると、その関連する離バルブ72が閉じられ、別のユニット40についてプロセスを繰り返すことができる。典型的には、全てのユニット40が順番に試験される。 [0048] 液体は、プロセス空気中の水蒸気の凝縮や漏れのために、ユニット40内にたまることがある。液体は、ユニット40の運転継続を可能とするために除去される。集められた液体の量を測定することは、例えば、ユニット内の漏れをチェックするために使用することができる。」 c 「 [図:0001407883000001.jpg] 」 d 「 [図:0001407883000002.jpg] 」 e 「 [図:0001407883000003.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には水処理プロセスが記載されており、当該水処理プロセスは、(a) ガス移動膜を水中に浮遊させるステップと、(b) ガス移動膜にガスを供給するステップを含み、ガス移動膜から液体を除去することを更に含み、例えば、液体量の予期せぬ増加や、凝縮液として予想される量を超えた液体の余剰によって示される、ガス移動膜の漏れの有無を判定するために、液体の量を監視することを含むものである。 また、前記(ア)b~eの記載によれば、前記水処理プロセスは、タンク52内に大型ユニット40が3つ浮かぶ反応器50によるものであり、使用時には、混合液や廃水などの処理される水がタンク52を流れるものであり(段落[0029]、図3)、ユニット40が水処理、例えばMABRに使用される場合、膜には通常、膜に担持されたバイオフィルムに移動するためのガスと、膜の外側に気泡を生成するためのガスが供給されるものであり、第1のガスはプロセスガスと呼ばれ、ガス移動膜の内側に送り込まれ、オプションとして、バイオフィルムに移送されなかったプロセスガスは、膜の内側から除去されるものであり、プロセスガスは、バイオフィルム中の生化学反応をサポートする酸素などの成分を含むものである(段落[0033])。 そして、前記ユニット40のモジュール10には様々なホース56が接続され、1つのホース56は、モジュール10内の膜におおむね連続的なプロセス空気の流れを運ぶために使用されるものであり、この空気は上部ヘッダー15から入り、コード12の中空糸膜の内腔を流れ、下部ヘッダー14に集まり、好ましくは水面上に戻って伸びるホース56を通って排気されるものであり、プロセスガスを上部から下部へ流すことで、凝縮水や漏れた水を下部ヘッダー14へ運び、そこで後述するように除去することができるものであり(段落[0037]、図4)、別のホース56は、モジュール10から液体を除去する、モジュール10から排出される気体を監視する、又はその両方のような1つ又は複数の補助機能に使用することができるものであり、補助ホース56は、モジュール10の内部からの液体が集まる低い箇所、好ましくは下部ヘッダー14の下部又はその下に接続されるものであり、液体は凝縮水、漏れた水、又はその両方を含んでいる可能性があるものであり、補助ホース56の遠位端は、モニタリングステーション70に接続されているものであり、モニタリングステーション70は、複数のユニット40からの補助ホース56に接続されうるものである(段落[0045]、図4)。 更に、モニタリングステーション70において、各補助ホース56はバルブ72、例えばオン/オフ分離バルブを備え、分離バルブ72は、各ユニット40から別々に液体を除去すること、又は排気を監視することを可能にするものであり、モニタリングステーション70は、真空ポンプ74、ロードセル78上の液体リザーバ76、及び液体排出ライン80を有するものであり(段落[0046]、図6)、ユニット40を監視又は試験する場合、関連する分離バルブ72は開かれ、ほかの分離バルブ72は閉じたままであり、液体は、真空ポンプ74を使用してユニット40から汲み上げられ、凝縮水リザーバ76に集められ、除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニット40から除去されたことを示すと、ロードセル78を用いて質量を記録し、凝縮水を液体排出ライン80を通じて排出するものであり、あるユニット40の検査が終わると、その関連する分離バルブ72が閉じられ、別のユニット40についてプロセスを繰り返すことができ、典型的には、全てのユニット40が順番に試験されるものであり(段落[0047]、図6)、液体は、プロセス空気中の水蒸気の凝縮や漏れのために、ユニット40内にたまることがあるので、ユニット40の運転継続を可能とするために除去されるものであり、集められた液体の量を測定することは、例えば、ユニット内の漏れをチェックするために使用することができるものである(段落[0048])。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「(a) ガス移動膜を水中に浮遊させるステップと、 (b) ガス移動膜にガスを供給するステップを含み、 ガス移動膜から液体を除去することを更に含み、 例えば、液体量の予期せぬ増加や、凝縮液として予想される量を超えた液体の余剰によって示される、ガス移動膜の漏れの有無を判定するために、液体の量を監視することを含む、水処理プロセスであって、 前記水処理プロセスは、タンク内に大型ユニットが3つ浮かぶ反応器によるものであり、使用時には、混合液や廃水などの処理される水がタンクを流れるものであり、ユニットが水処理、例えばMABRに使用される場合、膜には通常、膜に担持されたバイオフィルムに移動するためのガスと、膜の外側に気泡を生成するためのガスが供給されるものであり、第1のガスはプロセスガスと呼ばれ、ガス移動膜の内側に送り込まれ、オプションとして、バイオフィルムに移送されなかったプロセスガスは、膜の内側から除去されるものであり、プロセスガスは、バイオフィルム中の生化学反応をサポートする酸素などの成分を含むものであり、 前記ユニットのモジュールには様々なホースが接続され、1つのホースは、モジュール内の膜におおむね連続的なプロセス空気の流れを運ぶために使用されるものであり、この空気は上部ヘッダーから入り、コードの中空糸膜の内腔を流れ、下部ヘッダーに集まり、好ましくは水面上に戻って伸びるホースを通って排気されるものであり、プロセスガスを上部から下部へ流すことで、凝縮水や漏れた水を下部ヘッダーへ運び、そこで後述するように除去することができるものであり、 別のホースは、モジュールから液体を除去する、モジュールから排出される気体を監視する、又はその両方のような1つ又は複数の補助機能に使用することができるものであり、補助ホースは、モジュールの内部からの液体が集まる低い箇所、好ましくは下部ヘッダーの下部又はその下に接続されるものであり、液体は凝縮水、漏れた水、又はその両方を含んでいる可能性があるものであり、補助ホースの遠位端は、モニタリングステーションに接続されているものであり、モニタリングステーションは、複数のユニットからの補助ホースに接続されうるものであり、 モニタリングステーションにおいて、各補助ホースはバルブ、例えばオン/オフ分離バルブを備え、分離バルブは、各ユニットから別々に液体を除去すること、又は排気を監視することを可能にするものであり、モニタリングステーションは、真空ポンプ、ロードセル上の液体リザーバ、及び液体排出ラインを有するものであり、 ユニットを監視又は試験する場合、関連する分離バルブは開かれ、ほかの分離バルブは閉じたままであり、液体は、真空ポンプを使用してユニットから汲み上げられ、凝縮水リザーバに集められ、除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニットから除去されたことを示すと、ロードセルを用いて質量を記録し、凝縮水を液体排出ラインを通じて排出するものであり、あるユニットの検査が終わると、その関連する分離バルブが閉じられ、別のユニットについてプロセスを繰り返すことができ、典型的には、全てのユニットが順番に試験されるものであり、液体は、プロセス空気中の水蒸気の凝縮や漏れのために、ユニット内にたまることがあるので、ユニットの運転継続を可能とするために除去されるものであり、集められた液体の量を測定することは、例えば、ユニット内の漏れをチェックするために使用することができるものである、水処理プロセス。」 イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の(ア)~(エ)の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 膜モジュールに設けられた透過膜で仕切られた一方の流路に液体を流動させ、他方の流路に第1の気体を流動させて気液接触操作を行う膜モジュールの運転方法において、前記気液接触操作中に、前記一方の流路に液体を流動させつつ間欠的に前記他方の流路に前記第1の気体に代えて室温以上の第2の気体を流動させることを特徴とする膜モジュールの運転方法。 ・・・ 【請求項6】 膜モジュールに設けられた透過膜で仕切られた一方の流路に液体を流動させ、他方の流路に気体を流動させて気液接触操作を行う膜モジュールの運転方法において、前記気液接触操作中に前記他方の流路に流動させる前記気体の流速を間欠的に変化させることを特徴とする膜モジュールの運転方法。 ・・・ 【請求項8】 前記他方の流路に前記気体を導く管路中に設けられた開閉弁を開閉することによって前記気体の流速を変化させることを特徴とする請求項6記載の膜モジュールの運転方法。」 (イ) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液体への気体溶解あるいは液体中からの気体放散といった気液接触操作に用いられる膜モジュールの運転方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、化学工業等の多くの分野では、液体への気体溶解(ガス溶解)あるいは液体からの気体放散(ガス放散)といった気液接触操作が行われている。例えば、ガス溶解として、医薬品分野等における微生物培養液への酸素供給、電子産業における超純水ラインへのオゾン溶解、水産業界における養魚への酸素供給、あるいはNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)等の排ガス処理が挙げられ、また、ガス放散としては、純水製造における脱炭酸処理が挙げられる。 【0003】このような気液接触操作には、膜が用いられる。膜を用いた気液接触操作では、液体と気体の分圧差により気体と液体の2相間で膜を介した物質移動が起こり、これよってガス溶解あるいはガス放散が行われる。膜による気液接触操作は、単位容積当たりの接触面積が大きくとれるため、効率の良いガス溶解あるいはガス放散が可能である。 ・・・ 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の気液接触用の膜モジュールにおいては、気液接触操作の運転条件によっては、膜を透過した蒸気が気体流路において凝縮し、膜の透過性能を低下させたり、気体流路の圧力損失の上昇を招くという不都合があった。特に、スパイラル型膜モジュールでは、液体流路に比べて気体流路が狭く、かつ気体流路にネット状の流路材が挿入されている。このため、膜を透過した蒸気が気体流路で凝縮しやすく、しかも凝縮した液滴による透過膜の性能低下や圧力損失の上昇といった悪影響が顕著となる。 【0007】本発明の目的は、気体が導入される流路内に生じる液滴を容易に除去することが可能な膜モジュールの運転方法を提供することである。」 (ウ) 「【0022】第8の発明に係る膜モジュールの運転方法は、第6の発明に係る膜モジュールの運転方法の構成において、他方の流路に気体を導く管路中に設けられた開閉弁を開閉することによって気体の流速を変化させるものである。 【0023】この場合には、開閉弁の開閉により他方の流路に流動される気体の流速を瞬間的に高めることができる。これにより、他方の流路内に生じた凝縮液を飛沫化して気体に同伴させて外部へ排出することができる。 ・・・ 【0042】第3の方法は、気液接触操作中に、気体流路19に供給する気体30の流速を間欠的に高め、凝縮液を飛沫状にして気体に同伴させて外部へ排出する方法である。気体流路19に供給される気体30の流速を高める方法としては、気体供給源の流量を急速に増加させる方法、あるいは気体供給路に設けられた電磁弁(開閉弁)20を間欠的に開閉する方法が用いられる。後者の方法では、電磁弁20を閉じると、電磁弁20の上流側の気体の圧力が増加する。その後、電磁弁20を開放すると、電磁弁20から供給される気体の流速が瞬間的に高められ、気体流路19内を以前よりも高速で流動する。このとき、気体流路19内の凝縮液が気体の流動により飛沫化され、気体とともに気体出口6から外部へ排出される。これにより、気体流路19内の凝縮液が排出される。なお、この場合には、電磁弁20を開放した際に、気体入口4における気体の圧力が液体供給管11の入口における液体の圧力を越えないように制御する必要がある。」 (エ) 「【図1】 [図:0001407883000004.jpg] 」 ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の(ア)~(ウ)の記載がある。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 単セルを複数積層したスタック構造を備え、前記単セルの各電極に対してガスの供給を受け、前記ガス中の所定の成分を用いた電気化学反応によって起電力を得る燃料電池装置において、 前記スタック構造内部において該スタック構造の積層方向に貫通して形成され、前記各単セル内部に設けられたガス流路に対して前記ガスを供給するガス供給マニホールドと、 該ガス供給マニホールドから前記各単セルに至るガスの流路において、前記単セル内ガス流路の一部に対して前記ガスの供給を一時的に停止するガス分配手段とを備えた燃料電池装置。」 (イ) 「【0064】次に、スリット構造60の動作の制御について説明する。上述したスリット構造60の動作は、既述したモータ66から回転軸64に駆動力が伝えられることによって起こる。モータ66は、図示しない所定の制御装置と接続されている。この制御装置は、やはり図示しないセンサから、燃料電池20が出力している電圧および電流に関する検出信号を入力可能となっている。燃料電池20を構成する単セル22のいずれかの内部において、凝縮水あるいは生成水によってガス流路が閉塞されると、燃料電池20が出力する電圧-電流特性(V-I特性)に影響が表われる。前記センサが検出するV-I特性の変化が基準値を越えると、前記制御装置は、燃料電池20内部においてガス流路の閉塞が起こっていると判断してモータ66に対して駆動信号を出力する。 【0065】制御装置からの駆動信号を受けると、モータ66は、所定の時間をかけて(例えば本実施例では1秒間)既述した時計回りで回転軸64を一回転させる。このように回転軸64が一回転する間に、スリット構造60は既述した動作を行ない、各単セル内に形成された酸化ガス流路35Pでは、その入り口部が半数ずつ所定の時間だけ(ここでは1/4秒間)塞がれる。 【0066】このように回転軸64の回転と共にスリット構造60が動作して、既述したスリットプレート74またはスリットプレート84が所定の酸化ガス流路35Pの入り口部を塞ぐと、所定の期間、酸化ガスが供給される酸化ガス流路35Pの数が半減する。従って、燃料電池20に接続された酸化ガス供給装置から供給される酸化ガスの量および圧力が一定であっても、単セル22内の酸化ガス流路35Pに供給される酸化ガスの量および圧力が一時的に増減する。このように、供給される酸化ガスの量および圧力が一時的に増大したとき、単セル22内のガス流路を閉塞させていた水が吹き飛ばされて流路の閉塞は解消される。 【0067】以上説明した本発明の燃料電池20によれば、一時的にスタック構造24内の酸化ガス流路35Pの数を半減させることによって酸化ガス流路35P内に供給される酸化ガスの流量および圧力を増大させるため、この酸化ガスの圧力によって酸化ガス流路35Pを閉塞している水を吹き飛ばして、流路の閉塞状態を解消することができる。このとき、酸化ガスの流量および圧力の増大は、酸化ガス流路35Pの数を一時的に減らすことによって実現されているため、燃料電池20に供給される酸化ガス全体の流量および圧力を変える必要がない。また、酸化ガス流路35Pの数の半減は、すべての酸化ガス流路35Pを2つのグループに分けて交互に入り口部を閉じることによって実行されているため、燃料電池20を構成するいずれの単セル22において流路の閉塞が起こった場合にも同様の効果が得られ、流路の閉塞を解消することができる。さらに、上記スリット構造60は酸化ガス供給マニホールド58内に設けられているため、このスリット構造60によって酸化ガス流路35P内の水滴の除去を行なう構成としても燃料電池20が大型化することがない。」 (ウ) 「【図1】 [図:0001407883000005.jpg] 」 (2) 対比・判断 ア 対比 (ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明がMABRに使用されるものであることからみれば、甲1発明における「混合液や廃水などの処理される水」は、本件発明1における「有機性排水」に相当し、甲1発明において「混合液や廃水などの処理される水」が流れる「タンク」は、本件発明1における「有機性排水が通水される反応槽」に相当し、甲1発明における「ガス移動膜」は、膜に担持されたバイオフィルムに移動するためのガス、すなわち「プロセスガス」が内側に送り込まれるものであるから、本件発明1における「ガス溶解膜」に相当し、甲1発明における「モジュール」は、前記「タンク」内に設置されて、前記「ガス移動膜」を有するものといえるから、本件発明1における「前記反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュール」に相当する。 また、甲1発明における前記「プロセスガス」は、「バイオフィルム中の生化学反応をサポートする酸素などの成分を含む」ものであるから、本件発明1における「気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガス」に相当し、甲1発明において前記「プロセスガス」を「モジュール内の膜」に運ぶための「ホース」は、本件発明1の「該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段」に相当する。 更に、甲1発明において、「上部ヘッダーから入り、コードの中空糸膜の内腔を流れ、下部ヘッダーに集ま」った空気を排気する、「好ましくは水面上に戻って伸びるホース」は、本件発明1における「ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管」に相当し、甲1発明における「反応器」は、MABRに使用されるものであることからみれば、本件発明1における「生物処理装置」に相当し、甲1発明における「水処理プロセス」は、本件発明1における「生物処理装置の運転方法」に相当する。 そして、甲1発明において「モジュール」から除去される「液体」は、「凝縮水、漏れた水、又はその両方を含んでいる可能性がある」ものであるから、本件発明1における「凝縮水」に相当し、甲1発明において、「補助ホース」により「モジュールから液体を除去する」ことは、本件発明1において、「凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」ことに相当し、甲1発明における「水処理プロセス」が、「タンク内に大型ユニットが3つ浮かぶ反応器によるもの」であることは、本件発明1において、「前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されて」いることに相当する。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、 該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、 ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管と を備えてなる生物処理装置の運転方法において、 凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う生物処理装置の運転方法であって、 前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されている、生物処理装置の運転方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:「凝縮水排出工程」が、本件発明1では、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する」ものであって、「前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ものであるのに対して、甲1発明では、「プロセスガスを上部から下部へ流すことで、凝縮水や漏れた水を下部ヘッダーへ運び、そこで」「除去することができるものであり」、「モニタリングステーションにおいて、各補助ホースはバルブ、例えばオン/オフ分離バルブを備え、分離バルブは、各ユニットから別々に液体を除去すること、又は排気を監視することを可能にするものであり」、「ユニットを監視又は試験する場合、関連する分離バルブは開かれ、ほかの分離バルブは閉じたままであり、液体は、真空ポンプを使用してユニットから汲み上げられ、凝縮水リザーバに集められ、除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニットから除去されたことを示すと、ロードセルを用いて質量を記録し、凝縮水を液体排出ラインを通じて排出するものであり、あるユニットの検査が終わると、その関連する分離バルブが閉じられ、別のユニットについてプロセスを繰り返すことができ、典型的には、全てのユニットが順番に試験されるものであり」、「液体は、ユニットの運転継続を可能とするために除去されるものであり、集められた液体の量を測定することは、例えば、ユニット内の漏れをチェックするために使用することができるものである」点。 イ 判断 (ア) 以下、前記ア(イ)の相違点1の容易想到性について検討すると、甲1発明は、「ガス移動膜の漏れの有無」を判定するものであって、通常の運転条件を継続したまま、「プロセスガスを上部から下部へ流すことで、凝縮水や漏れた水を下部ヘッダーへ運び」、「ユニットを監視又は試験する場合、関連する分離バルブは開かれ、ほかの分離バルブは閉じたままであり、液体は、真空ポンプを使用してユニットから汲み上げられ、凝縮水リザーバに集められ、除去された液体の質量が安定し、実質的に全ての液体がユニットから除去されたことを示すと、ロードセルを用いて質量を記録し、凝縮水を液体排出ラインを通じて排出するものであり、あるユニットの検査が終わると、その関連する分離バルブが閉じられ、別のユニットについてプロセスを繰り返すことができ、典型的には、全てのユニットが順番に試験される」ものといえる。 そうすると、甲1発明は、通常の運転条件を継続したまま「凝縮水」を「ガス溶解膜モジュール」外に排出してその質量を記録し、「全てのユニット」を「順番に試験」することで、「ガス移動膜の漏れの有無」を判定するものといえ、そのような甲1発明において、「凝縮水」を「ガス溶解膜モジュール」外に排出する際に、殊更、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加」させたり、そのために「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止」したりして、「ガス溶解膜モジュール」の運転条件を通常のものから大きく変更することは、そもそも想定されない。 してみれば、甲1発明において、「凝縮水排出工程」を、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する」ものとし、「前記ガス供給手段」を、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ものとする動機付けは存在しないから、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 (イ) また、前記(1)イの甲第2号証の記載事項をみても、甲第2号証には、膜モジュールに設けられた透過膜で仕切られた一方の流路に液体を流動させ、他方の流路に第1の気体を流動させて気液接触操作を行う膜モジュールの運転方法において、気液接触操作中に、気体流路に供給する気体の流速を間欠的に高め、凝縮液を飛沫状にして気体に同伴させて外部へ排出することが記載されているにすぎず、前記(1)ウの甲第3号証の記載事項をみても、甲第3号証には、単セルを複数積層したスタック構造を備え、前記単セルの各電極に対してガスの供給を受け、前記ガス中の所定の成分を用いた電気化学反応によって起電力を得る燃料電池装置において、一時的にスタック構造内の酸化ガス流路の数を半減させることによって酸化ガス流路内に供給される酸化ガスの流量および圧力を増大させて、この酸化ガスの圧力によって酸化ガス流路を閉塞している水を吹き飛ばして、流路の閉塞状態を解消することが記載されているにすぎない。 そして、前記甲第2~3号証には、前記相違点1に係る発明特定事項、特に、「前記凝縮水排出工程」において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことは記載も示唆もされていないから、仮に、甲第2~3号証に記載された事項を参酌し、甲1発明と組合せたとしても、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~4について検討しても事情は同じである。 (3) 申立人夏目の主張について (ア) 前記第3の1(1)の特許異議の申立て理由についての申立人夏目の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第2号証の段落【0042】には、前記(1)イ(ウ)の記載があるから、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程」を行うことが記載されているといえ、甲1発明に甲第2号証の記載事項を適用することは容易であり、前記(1)ウの記載によれば、甲第3号証には、複数の流路に酸化ガスを供給して反応を起こさせる系において、酸化ガス流路にとどまる凝縮水を吹き飛ばすために、一部の酸化ガス流路への酸化ガス供給を停止することにより、他の酸化ガス流路への酸化ガス供給量を増加させて当該他の酸化ガス流路の凝縮水排出を行うことが記載されているから、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことは、本件特許の出願日前の周知技術である。 また、甲第2号証の前記段落【0042】の記載から、甲1発明における真空ポンプによる凝縮水排出工程を、甲第2号証に記載されたガスの供給圧力を高めて凝縮水を追い出す工程に置き換え、甲第1号証に記載されたように、複数の膜モジュールに対して凝縮水を排出する工程とすれば、本件発明1の発明特定事項となるから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、又は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された本件特許出願時における周知技術の組合せにより、当業者が容易に想到することができたものである(特許異議申立書16ページ6行~12行)。 (イ) そこで、前記(ア)の主張について検討すると、甲1発明において、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加」させたり、そのために「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止」したりして、「ガス溶解膜モジュール」の運転条件を通常のものから大きく変更することはそもそも想定されないことは、前記(2)イ(ア)に記載したとおりであるから、甲1発明に、甲第2号証に記載された事項や甲第3号証に記載された本件特許出願時における周知技術を組み合わせる動機付けが存在しないので、そうすることは、当業者が容易に想到することではない。 また、前記(2)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことが本件特許の出願日前の周知技術であるということはできないし、仮に、甲1発明に、甲第2号証に記載された事項や甲第3号証に記載された本件特許出願時における周知技術を組み合わせたとしても、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らないから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、又は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された本件特許出願時における周知技術の組合せにより、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 したがって、前記(ア)の主張は採用できない。 (4) 小括 よって、本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第3の1の申立人夏目による特許異議の申立て理由は理由がない。 2 申立人白井による特許異議申立理由について ここでいう甲第1~4号証は、前記第3の2(3)に記載された、申立人白井が提出した甲第1~4号証である。 (1) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について ア 甲各号証の記載事項 (ア) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 a 甲第1号証には、以下の(a)~(e)の記載がある。 (a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、 少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された酸素溶解膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。」 (b) 「【0001】 本発明は、揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を好気性生物処理するのに好適な好気性生物処理装置に係り、特に酸素溶解膜を用いて反応槽内の被処理水に酸素を溶解させるようにしたMABR(メンブレンエアレーションバイオリアクター)方式を採用した好気性生物処理装置に関する。」 (c) 「【0019】 以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。図1は本発明の一例に係る好気性生物処理装置1の模式的な縦断面図である。第1反応槽3内に酸素溶解膜モジュール2が設置されている。酸素溶解膜モジュール2は1個又は複数個設置される。酸素溶解膜モジュール2は上下多段に設置されてもよい。 【0020】 原水は、配管4によって反応槽3に供給され、処理水は、トラフ6を越流し、流出口7から流出する。 【0021】 酸素溶解膜モジュール2は、非多孔質の酸素溶解膜を備えており、膜を透過した酸素が反応槽3内の被処理水に溶解するので、反応槽3内において気泡が生じない。 【0022】 ブロアBからの空気は、配管8によって酸素溶解膜モジュール2に供給され、酸素溶解膜モジュール2から流出した排気は、配管9を介して排出される。なお、空気は酸素溶解膜モジュール2に上から下へ流れてもよく、下から上へ流れてもよく、横方向に流れてもよい。複数の酸素溶解膜に通気する場合、直列に通気してもよく、並列に通気してもよい。 ・・・ 【0034】 図6の生物処理装置にあっては、酸素含有ガスは、各酸素透過膜モジュール2a~2cに並列に流れる。即ち、ブロアBからの酸素含有ガスは、配管8によって各酸素透過膜モジュール2a,2b,2cの上部に供給され、各々の下部から流出し、配管21を介して排出される。 ・・・ 【0038】 図6のように、各酸素透過膜モジュール2a~2cに並列に酸素含有ガスを流通させる場合、酸素含有ガスの圧力損失が少なく、省エネルギーとなる。なお、図6において、下段側の酸素透過膜モジュールほど酸素含有ガス流通量を多くするようにすることにより、負荷に応じた酸素供給量とすることができる。 ・・・ 【0041】 酸素透過膜モジュール2の酸素透過膜は、中空糸膜、平膜、スパイラル膜のいずれでもよいが、中空糸膜が好ましい。膜の材質は通常MABRに使用される、シリコン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリウレタン等が使用できるが、シリコンが好適である。強度が高い、ノンポーラスポリマーでポーラス中空糸をコーティングしたコンポジット膜を用いてもよい。」 (d) 「【図1】 [図:0001407883000006.jpg] 」 (e) 「【図6】 [図:0001407883000007.jpg] 」 b 前記a(a)の記載によれば、甲第1号証には好気性生物処理装置が記載されており、前記a(b)の記載によれば、前記好気性生物処理装置は、揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を好気性生物処理するのに好適なものである。 そして、前記a(c)及び(d)の図1の好気性生物処理装置に注目すると、前記好気性生物処理装置は、第1反応槽3内に酸素溶解膜モジュール2が設置されているものであり、酸素溶解膜モジュール2は上下多段に設置されるものであり、原水は、配管4によって前記第1反応槽3に供給され、処理水は、トラフ6を越流し、流出口7から流出するものであり、前記酸素溶解膜モジュール2は、非多孔質の酸素溶解膜を備えており、膜を透過した酸素が前記第1反応槽3内の被処理水に溶解するので、前記第1反応槽3内において気泡が生じないものであり、ブロアBからの空気は、配管8によって前記酸素溶解膜モジュール2に供給され、前記酸素溶解膜モジュール2から流出した排気は、配管9を介して排出されるものである(段落【0019】~【0022】、【図1】)。 更に、これを踏まえて、更に前記ア(c)及び(e)の図6の好気性生物処理装置に注目すると、前記好気性生物処理装置にあっては、酸素含有ガスは、各酸素溶解膜モジュール2a~2cに並列に流れるものであり、すなわち、ブロアBからの前記酸素含有ガスは、配管8によって各酸素溶解膜モジュール2a,2b,2cの上部に供給され、各々の下部から流出し、配管21を介して排出されるものであり(段落【0034】)、下段側の酸素透過膜モジュールほど酸素含有ガス流通量を多くするようにすることにより、負荷に応じた酸素供給量とすることができるものであり(段落【0038】)、前記酸素溶解膜モジュール2の酸素溶解膜は、中空糸膜、平膜、スパイラル膜のいずれでもよいが、中空糸膜が好ましいものであり(段落【0041】)、係る好気性生物処理装置による工程は、好気性生物処理装置の運転方法といえるものである(当審注:文脈からみて、図6の好気性生物処理装置における酸素透過膜は、図1の好気性生物処理装置の酸素溶解膜に相当するといえるので、甲第1号証の図6の好気性生物処理装置についての記載を前記のとおり認定する。)。 c 前記bによれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を好気性生物処理するのに好適な好気性生物処理装置の運転方法であって、 第1反応槽内に酸素溶解膜モジュールが設置され、前記酸素溶解膜モジュールは上下多段に設置され、 原水は、配管によって前記第1反応槽に供給され、処理水は、トラフを越流し、流出口から流出するものであり、前記酸素溶解膜モジュールは、非多孔質の酸素溶解膜を備えており、膜を透過した酸素が前記第1反応槽内の被処理水に溶解するので、前記第1反応槽内において気泡が生じないものであり、 酸素含有ガスは、各酸素溶解膜モジュールに並列に流れるものであり、すなわち、ブロアからの前記酸素含有ガスは、配管によって各酸素溶解膜モジュールの上部に供給され、各々の下部から流出し、配管を介して排出されるものであり、下段側の酸素透過膜モジュールほど酸素含有ガス流通量を多くするようにすることにより、負荷に応じた酸素供給量とすることができるものであり、前記酸素溶解膜モジュールの酸素溶解膜は、中空糸膜、平膜、スパイラル膜のいずれでもよいが、中空糸膜が好ましいものである、好気性生物処理装置の運転方法。」 (イ) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下のa及びbの記載がある。 a 「The main aerated conduit was devided to individually aerate the MABR-1 and the MABR-2 and to regulate the pressure and airflow rate.」(8374ページ右欄下から7行~下から5行) (当審訳:メイン通気管路は、MABR-1とMABR-2を個別に通気し、圧力と通気量を調整するために分割された。) b 「 [図:0001407883000008.jpg] 」(8375ページ) (当審訳:図1.設計されたMABRシステムの技術プロセスの概略図:(A)パイロット・スケール・システムの画像;(B)統合された、(1)エアコンプレッサー、(2)ガス封入スタビライザー、(3)エアブロワー、(4)リサーバー、(5)揚水ポンプ、(6)タンク1、(7)タンク2及び(8)循環ポンプを有する2段階MABRシステムのフローチャート。(当審注:「(1)」~「(8)」はいずれも「○」に「1」~「○」に「8」で表記されている。)(C)結合されたタンク1とタンク2の詳細プロファイル、ここでタンク1はバイオキャリアを含むH-Aプール(c)とMABR-1(e)で構成され;タンク2はMABR-2(f)であった:(a)水入口;(b)配水;(c)H-Aプール;(d)インペラ-;(e)MABR-1;(f)MABR-2;(g)流量計;(h)水出口。(当審注:「the ater outlet」は「the water outlet」の誤記と認める。)組み立てられたMABRモジュールユニットを以下に示す。合計17のカーテン状の膜モジュールがステンレス鋼製のフレームに組み込まれ、1つのモジュールユニットを形成するために主要な通気コースに並列された。) (ウ) 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下のa及びbの記載がある。 a 「請求の範囲 ・・・ [18] 非多孔質層を有する中空糸膜からなるシート状中空糸膜(1)と、固定部材(2)とから構成され、複数のシート状中空糸膜(1)が略並行、かつ開口状態となるように、シート状中空糸膜(1)の中空糸膜開口側の端部が、固定部材(2)によって固定され、固定部材(2)のシート状中空糸膜(1)が露出する側の端面形状が略矩形であり、固定部材(2)の中空糸膜開口側の端面形状が略円形である、中空糸膜モジュール、又はこれを複数個配置した中空糸膜モジュールユニットを使用し、シート状中空糸膜(1)の外表面に微生物を付着させ、この外表面に被処理水を供給し、膜の中空部に 気体を供給して被処理水を浄化する、水処理方法。 」 b 「[0063] 本発明の水処理方法は、中空糸膜の外表面に被処理水を供給し、中空糸膜の中空部に気体を供給して、中空糸膜の外表面に付着した微生物によって被処理水を浄化するにあたって、前述した本発明の中空糸膜モジュール又は中空糸膜モジユールユニットを用いる。 [0064] 中空糸膜の中空部に供給する気体は、中空糸膜外表面に付着させる微生物の種類や処理対象となる被処理水中の成分の種類によって適宜選定されるものであるが、例えば空気、酸素、窒素、水素などが挙げられる。 ・・・ [0068] 本発明の水処理方法は、中空糸膜の外表面は微生物が付着するとともに水とも接しているため、運転を継続するにしたがって、水蒸気の透過によって気体供給側となる中空糸膜の中空部に透過水や凝縮水が蓄積してくる。中空糸膜の中空部に蓄積した水は、気体供給に対する抵抗となり、膜の利用効率を低下することになる。その結果、装置としての処理能力が低下してしまうことになる。 [0069] このような性能低下を起こさず能力を維持するためには、以下のような運転方法が好ましい。すなわち、図1に示すような中空糸膜の両端部が相対して固定された中空糸膜モジュールを用いて、中空糸膜の中空部に水が溜まった際に、中空糸膜の一方の開口端面から加圧ガスを圧送して、もう一方の開口端面側は開放することにより、中空糸膜の中空部に溜まった水を排出することが好ましい。このような操作を行うことで、常に抵抗なく膜外表面の微生物に気体を供給することができ、効率よく処理を行うことができる。 [0070] 溜まった水の排出は、手動にて適宜行っても構わないが、一定期間ごとに自動的に行うように、タイマーやシーケンサ一等を用いて一連の操作を自動化することが好ましい。 なお、水の排出に使用する加圧ガスは、被処理水の浄化のために使用する気体と同じものを用いるのが好ましいが、別の気体としても構わない。」 (エ) 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、以下のa及びbの記載がある。 a 「OxyTube provides end users with an opportunity to experience advanced Membrane Aerated Biofilm Reacter (MABR) technology first hand, on their own wastewater facility, with minimal investment.」(2ページ1行~3行) (当審訳:オキシチューブは、エンドユーザーに、最小限の投資で、先進的な膜分離活性汚泥法(MABR)を自分の配水設備で直接体験する機会を提供する。) b 「The condensate builds up through back diffusion of water vapor and must be removed periodically.」(5ページ右欄7行~10行) (当審訳:凝縮水は水蒸気の逆拡散によって蓄積されるため、定期的に取り除く必要がある。) イ 対比・判断 (ア) 対比 a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、揮発性物質や臭気の発生する物質を含む有機性廃水を好気性生物処理するのに好適なものであるから、甲1発明における「第1反応槽」は本件発明1における「有機性排水が通水される反応槽」に相当し、甲1発明において「第1反応槽内に」「設置され」る「酸素溶解膜モジュール」は、本件発明1における「該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュール」に相当する。 また、甲1発明における「酸素含有ガス」は、本件発明1における「気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガス」に相当し、甲1発明において「酸素含有ガス」を「各酸素透過膜モジュールの上部に供給」する「ブロア」及び「配管」は、本件発明1における「該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段」に相当し、甲1発明において「酸素含有ガス」を「各酸素透過膜モジュールの」「各々の下部から」「排出」する「配管」は、本件発明1における「ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管」に相当し、甲1発明における「好気性生物処理装置の運転方法」は、本件発明1における「生物処理装置の運転方法」に相当する。 更に、甲1発明において「酸素溶解膜モジュール」が「上下多段に設置され」ることは、本件発明1において「前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されて」いることに相当する。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、 「有機性排水が通水される反応槽と、 該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、 該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、 ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管と を備えてなる生物処理装置の運転方法において、 前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されている、生物処理装置の運転方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2:「生物処理装置の運転方法」が、本件発明1では、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」ものであって、「前記ガス供給手段」が、「前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ものであるのに対して、甲1発明では、そのような「凝縮水排出工程」を有しない点。 (イ) 判断 a 以下、前記(ア)bの相違点2の容易想到性について検討すると、甲1発明は、「上下多段に設置」された「酸素溶解膜モジュール」において、「下段側の酸素溶解膜モジュールほど酸素含有ガス流通量を多くするようにすることにより、負荷に応じた酸素供給量とすることができる」、との発明特定事項を有するものであるが、前記発明特定事項は、「凝縮水排出工程」に関するものではなく、前記相違点2に係る発明特定事項を開示するものとは到底いえない。 また、前記ア(イ)の甲第2号証の記載事項をみても、甲第2号証には、MABR-1を備えるタンク1と、MABR-2を備えるタンク2の二つのタンクを有するMABRシステムにおいて、メイン通気管路が、MABR-1とMABR-2を個別に通気し、圧力と通気量を調整するために分割されたことが記載されているにすぎず、前記ア(ウ)の甲第3号証の記載事項をみても、甲第3号証には、中空糸膜の外表面に被処理水を供給し、中空糸膜の中空部に気体を供給して、中空糸膜の外表面に付着した微生物によって被処理水を浄化するにあたって、中空糸膜の中空部に水が溜まった際に、中空糸膜の一方の開口端面から加圧ガスを圧送して、もう一方の開口端面側は開放することにより、中空糸膜の中空部に溜まった水を排出することが好ましいことが記載されているにすぎず、前記ア(エ)の甲第4号証の記載事項をみても、甲第4号証には、エンドユーザーに、最小限の投資で、先進的な膜分離活性汚泥法(MABR)を自分の配水設備で直接体験する機会を提供するオキシチューブにおいて、凝縮水は水蒸気の逆拡散によって蓄積されるため、定期的に取り除く必要があることが記載されているにすぎない。 そして、前記甲第2~4号証にも、前記相違点2に係る発明特定事項、特に、「前記凝縮水排出工程」において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことが記載も示唆もされるものではないし、このことが本件特許の出願日当時の技術常識であったことを裏付ける証拠もないから、甲1発明を、前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第1~4号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 b 前記aによれば、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第1~4号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~4について検討しても事情は同じである。 ウ 申立人白井の主張について (ア) 前記第3の2(1)の特許異議の申立て理由についての申立人白井の主張は、概略、以下のとおりである。 甲第3号証には、MRBAにおいて、中空糸膜に凝縮水が蓄積すること、被処理水の浄化のために使用する気体を用いて蓄積した凝縮水を排出することが好ましいことが記載されており、甲第4号証には、市販のMRBA装置において、中空糸膜に蓄積する凝縮水を定期的に除去しなければならないことが記載されており、ガス溶解膜モジュールに蓄積した凝縮水を定期的に排出することは通常の運転方法であるから、甲1発明において通常の運転方法である凝縮水排出工程を設けることは当然に行われることである。 また、甲第1号証の段落【0038】(前記ア(ア)a(c))の記載によれば、甲第1号証には、ガス溶解膜モジュールへの酸素含有ガス供給量を調節できることが示されており、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことが開示されているといえるし、凝縮水が排出されることは、酸素溶解膜モジュールへの酸素含有ガスを多くしたことによる結果にすぎないから、甲第1号証に酸素溶解膜モジュール内の凝縮水を排出するために酸素含有ガス流通量を多くすることが記載されていないことは実質的な相違点とはいえない。 よって、甲1発明において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことに困難性はない。 甲第2号証には、ブロアから酸素溶解膜モジュールが設置されている反応層に空気を供給する各配管に弁が設けられ、空気流量を調節することが記載されており、甲1発明において、各酸素溶解膜モジュールへの酸素含有ガス供給量を調節するために、酸素含有ガスを供給する配管の各酸素溶解膜モジュールへの分岐箇所に弁を設けることに困難性はないから、甲1発明において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことに困難性はない。 甲第4号証には、MABRにおいてガス溶解膜モジュールに蓄積する凝縮水を除去する必要があることが記載され(前記(1)エ)、甲第3号証の記載(前記(1)ウ)から、凝縮水を除去するために酸素含有ガスを用いて凝縮水排出工程を設けることは一般的な運転方法であり、甲第2号証には、配管に弁を設けて溶解膜モジュールへの酸素含有ガス供給量を調節することが記載されており、甲1発明において、甲第2号証に記載のように配管に弁を設けて一部の溶解膜モジュールへの酸素含有ガス供給量を減少させれば、ほかの溶解膜モジュールへの酸素含有ガス供給量が増加することは技術常識であり、結果的に当該ほかの溶解膜モジュールから凝縮水が排出されるから、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」こと、及び、「前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うこと」は、通常の運転方法と何ら変わるところがないので、本件発明1は進歩性を有しない。 本件実施例においては、1個の酸素溶解膜モジュールに対して、通常運転の3倍の通気量で10分間通気し、その後初期の通気量に戻す凝縮水排出工程を行ったことが記載されているにすぎず、「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」こと、及び、「前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うこと」による特段の効果は記載されていないから、甲1発明は、当業者が予測し得ない効果を奏するものとはいえないので、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証~甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書11ページ16行~13ページ最終行)。 (イ) そこで、前記(ア)の主張について検討すると、前記主張は、総じて、甲第1号証~甲第2号証に、「前記凝縮水排出工程」において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことが記載ないし開示されていることを前提として、甲1発明においても凝縮水を排出することが必要であることは当然であるから、本件発明1は容易想到であることをいうものといえる。 しかしながら、甲第1~2号証には、「前記凝縮水排出工程」において、「一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」ことは記載も示唆もされていないことは、前記イ(イ)に記載したとおりであるから、申立人白井の前記主張は前提において誤っている。 そして、本件発明1が甲1発明及び甲第1~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、前記イ(イ)に記載したとおりであるので、申立人白井の前記(ア)の主張は採用できない。 エ 小括 よって、本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第3の2(1)の申立人白井による特許異議の申立て理由は理由がない。 (2) 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下の(ア)及び(イ)の記載がある。 (ア) 「【0001】 本発明は、有機性排水をガス溶解膜を用いて生物処理する生物処理装置の運転方法に係り、特にガス溶解膜に酸素含有ガスを通気して膜を通じて酸素を供給することで好気性生物処理を行う生物処理装置や、ガス溶解膜にメタン含有ガスを通気して膜を通じてメタンを供給することで生物脱窒処理を行う生物処理装置に適用するのに好適な生物処理装置の運転方法に関する。 【背景技術】 ・・・ 【0004】 中空糸膜の外側に生物膜を付着させ、内側から酸素を供給することで好気性生物処理を行うメンブレンエアレーションバイオリアクター(MABR)は、気泡の発生なしで酸素溶解できる。MABRでは、水深にかかる水圧よりも低い圧力の空気を通気すればよいため、ブロワの必要圧力が低く、また、酸素の溶解効率が高い。 【0005】 中空糸膜を用いたMABR型排水処理装置では、膜の内側に凝縮水が発生し、空気の流れを妨げる。これにより、十分な酸素(もしくはメタンなど)が反応槽内に溶解しない現象が生じる。特に比表面積の大きな細い膜は毛細管現象などにより、凝縮水の除去が難しい。 【0006】 通常、凝縮水は連続的に発生するため、定期的に水抜きを実施して凝縮水を排除する必要がある。 【0007】 上記課題は好気性生物処理に限らず、反応槽内に浸漬したガス溶解膜を通じて生物処理に使用される電子伝達体(電子供与体、電子受容体)を供給する方式の生物処理に共通の課題である。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明はガス溶解膜内から凝縮水が容易に排出され、高いガス溶解効率を長期間維持することができる生物処理装置の運転方法を提供することを目的とする。」 (イ) 「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明の生物処理装置の運転方法は、有機性排水が通水される反応槽と、該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管とを備えてなる生物処理装置の運転方法において、電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行うことを特徴とする。 ・・・ 【0013】 本発明の一態様では、前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う。 ・・・ 【発明の効果】 【0017】 本発明の生物処理装置の運転方法では、ガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて凝縮水を排出する凝縮水排出工程を行うので、ガス溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出される。そのため、ガス溶解膜の電子伝達体溶解効率を常に高く維持することができる。」 ウ 当審の判断 (ア) 前記イ(ア)の記載からみて、本件発明は、有機性排水をガス溶解膜を用いて生物処理する生物処理装置の運転方法に係り、特にガス溶解膜に酸素含有ガスを通気して膜を通じて酸素を供給することで好気性生物処理を行う生物処理装置や、ガス溶解膜にメタン含有ガスを通気して膜を通じてメタンを供給することで生物脱窒処理を行う生物処理装置に適用するのに好適な生物処理装置の運転方法に関するものであって、中空糸膜の外側に生物膜を付着させ、内側から酸素を供給することで好気性生物処理を行うメンブレンエアレーションバイオリアクター(MABR)は、気泡の発生なしで酸素溶解でき、MABRでは、水深にかかる水圧よりも低い圧力の空気を通気すればよいため、ブロワの必要圧力が低く、また、酸素の溶解効率が高いのであるが、中空糸膜を用いたMABR型排水処理装置では、膜の内側に凝縮水が発生し、空気の流れを妨げ、これにより、十分な酸素(もしくはメタンなど)が反応槽内に溶解しない現象が生じ、特に比表面積の大きな細い膜は毛細管現象などにより凝縮水の除去が難しいのであり、通常、凝縮水は連続的に発生するため、定期的に水抜きを実施して凝縮水を排除する必要がある、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであり、ガス溶解膜内から凝縮水が容易に排出され、高いガス溶解効率を長期間維持することができる生物処理装置の運転方法を提供することを目的とするものである。 (イ) これに対して、前記イ(イ)の記載によれば、本件発明は、有機性排水が通水される反応槽と、該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管とを備えてなる生物処理装置の運転方法において、電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行うものであり、その一態様において、前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うものであり、そのようにしてガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて凝縮水を排出する凝縮水排出工程を行うので、ガス溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出され、そのため、ガス溶解膜の電子伝達体溶解効率を常に高く維持することができるものである。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、有機性排水が通水される反応槽と、該反応槽内に設置されたガス溶解膜モジュールと、該ガス溶解膜モジュールに気体状の電子伝達体を含有する電子伝達体含有ガスを供給するガス供給手段と、ガス溶解膜に溶解しなかったガスを該ガス溶解膜モジュールから反応槽外に排出する排ガス配管とを備えてなる生物処理装置の運転方法において、電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行うものであって、前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う生物処理装置の運転方法により、ガス溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出され、そのため、ガス溶解膜の電子伝達体溶解効率を常に高く維持することができ、本件課題を解決できることを理解することができる。 そして、そのような生物処理装置の運転方法は、本件発明1の発明特定事項による生物処理装置の運転方法にほかならない。 (エ) 前記(ウ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 そして、このことを前記アの判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえ、同請求項2~4の記載について検討しても事情は同じである。 エ 申立人白井の主張について (ア) 以下、前記第3の2(2)の申立人白井の主張について検討すると、本件特許明細書には、更に以下の記載がある。 「【0020】 図1は実施の形態に係る好気性生物処理装置10の縦断面図である。この好気性生物処理装置10は、反応槽(槽体)11と、該反応槽11内に配置された複数の酸素溶解膜モジュール(ガス溶解膜モジュールに相当)1,2,3,4を備えている。 【0021】 各酸素溶解膜モジュール1~4には、ブロワ12から酸素含有ガス(電子伝達体含有ガスに相当)として空気が配管13、該配管13から分岐した配管21,22,23,24及びバルブ31,32,33,34を介して供給される。酸素溶解膜モジュール1~4を通過した排ガスは、配管41,42,43,44及び合流配管45(排ガス配管に相当)を介して反応槽11外に流出する。 ・・・ 【0026】 酸素溶解膜モジュール1~4の上部に供給された空気等の酸素含有ガスは上部ヘッダーから中空糸膜を通って下部ヘッダーへ流れ、この間に酸素が中空糸膜を透過して反応槽11内の水に溶解する。 【0027】 図1の実施の形態では、酸素溶解膜モジュール1~4が並列に設置されており、通常運転時には、ブロワ12により給気された空気が各酸素溶解膜モジュール1~4に均等に供給される。反応槽11に被処理水(有機性排水)が供給され、好気性生物処理された処理水が反応槽11から流出する。 【0028】 凝縮水排出工程を行うときには、バルブ31~34のうち一部のものを閉じ、該一部のバルブが連なる酸素溶解膜モジュールへの空気供給を停止し、他の酸素溶解膜モジュールへの空気供給量を増大させる。 ・・・ 【0030】 凝縮水排出工程の空気供給量を通常運転時の4倍とするときには、例えばバルブ31のみを開とし、他のバルブ32~34を閉とすることで、酸素溶解膜モジュール1への空気供給量を通常運転時の4倍とする。順次にバルブ32のみ、33のみ、34のみを開とし、酸素溶解膜モジュール2,3,4での凝縮水排出を行う。 ・・・ 【0034】 <推定される作用機構> 酸素溶解膜モジュールを浸漬した反応槽で長期間継続運転する場合に、本発明に従った凝縮水排出を実施しなかった場合と、本発明に従った凝縮水排出を定期的に実施した場合の酸素溶解膜モジュール内圧(通気圧損)の経時変化の一例を図2に示す。 【0035】 凝縮水の排出を行わない場合は、凝縮水の蓄積により閉塞する中空糸の本数が徐々に増えていき、それに伴って、酸素溶解膜モジュールの通気抵抗が高くなるため、内圧が徐々に高くなるものと推定される(図2の△)。 【0036】 一方、凝縮水を排出することにより、閉塞している中空糸の本数が減少し、酸素溶解膜モジュールの内圧が所定値以下まで低下すると推定される。この凝縮水の排出を定期的に行うことにより、酸素溶解膜モジュールの内圧を長期的に所定値以下に維持することができ、安定した酸素供給が可能となる(図2の○)。 【0037】 上記説明では、バルブ31~34を開閉切替作動させているが、閉動作の代りに、開度を絞る操作を行うことによって他の酸素溶解膜モジュールへの空気供給量を増加させるようにしてもよい。」 「【図1】 [図:0001407883000009.jpg] 」 「【図2】 [図:0001407883000010.jpg] 」 そして、前記記載によれば、本件特許明細書には、反応槽11内に複数の酸素溶解膜モジュール(ガス溶解膜モジュールに相当)1,2,3,4が配置され(段落【0020】、【図1】)、各酸素溶解膜モジュール1~4には、ブロワ12から酸素含有ガス(電子伝達体含有ガスに相当)として空気が配管13、該配管13から分岐した配管21,22,23,24及びバルブ31,32,33,34を介して供給され(段落【0021】)、バルブ31~34のうち一部のものを閉じ、該一部のバルブが連なる酸素溶解膜モジュールへの空気供給を停止し、他の酸素溶解膜モジュールへの空気供給量を増大させて凝縮水排出工程を行うことで(段落【0028】)、酸素溶解膜モジュールの内圧を長期的に所定値以下に維持することができ、安定した酸素供給が可能となる(段落【0036】、【図2】)ことが記載されている。 ここで、前記複数の酸素溶解膜モジュール(ガス溶解膜モジュールに相当)1,2,3,4に対する凝縮水排出工程における空気の供給工程は、本件発明1の「前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」、との発明特定事項に対応したものといえ、本件特許明細書には、そうすることで、酸素溶解膜モジュールの内圧を長期的に所定値以下に維持することができ、安定した酸素供給が可能となることが記載されているのであり、係る記載は、本件発明1の発明特定事項による効果を立証するものといえる。 してみれば、本件特許明細書において、本件発明1の効果の立証がされていないとはいえない。 (イ) また、前記ウ(イ)によれば、本件発明に係る生物処理装置の運転方法では、ガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて凝縮水を排出する凝縮水排出工程を行うので、ガス溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出され、そのため、ガス溶解膜の電子伝達体溶解効率を常に高く維持することができるのであるから、本件特許明細書の記載に接した当業者は、反応層に浸漬配置される酸素溶解膜モジュールの個数に関わりなく、ガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて凝縮水を排出する凝縮水排出工程を行うことで、ガス溶解膜から凝縮水が速やかに反応槽外へ排出され、ガス溶解膜の電子伝達体溶解効率を常に高く維持することができ、本件課題を解決できることを理解することができるのであり、前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行うことは、その一態様にすぎない。 そして、ガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて凝縮水を排出する凝縮水排出工程を行うことは、本件発明1の「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」、との発明特定事項にほかならないから、本件実施例において本件発明1の「前記反応槽内に前記ガス溶解膜モジュールが複数設置されており、前記ガス供給手段は、前記凝縮水排出工程では、一部のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を減少させるか又は電子伝達体含有ガス供給を停止することにより、他のガス溶解膜モジュールへの電子伝達体含有ガス供給量を増加させて該他のガス溶解膜モジュールについて凝縮水排出を行う」、との発明特定事項による効果の立証がされていないとしても、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の「電子伝達体含有ガスの供給量を通常運転時よりも増加させて凝縮水をガス溶解膜モジュール外に排出する凝縮水排出工程を行う」、との発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができることに変わりはない。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができるのであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるので、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえ、同請求項2~4の記載について検討しても事情は同じである。 なお、申立人白井は、前記第3の2(2)で記載したように、「仮に、本件発明がサポート要件を満たすならば、従来公知の運転方法である1個の酸素溶解膜モジュールにおける凝縮水排出から容易に想到し得ることになり、進歩性を有しない。」との主張もしているが、前記アで記載したサポート要件の判断手法と進歩性の判断手法とは異なるものであり、前記ウ(ア)~(ウ)で記載したサポート要件についての判断が、前記(1)イ(イ)aに記載した進歩性の判断を否定することにはならないから、申立人白井の前記主張は当を得たものではないので、申立人白井の前記第3の2(2)の主張はいずれも採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第3の2(2)の申立人白井の特許異議の申立て理由は理由がない。 (3) まとめ よって、前記第3の2の申立人白井の特許異議の申立て理由はいずれも理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人夏目及び申立人白井の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701242

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