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特許異議申立

2024-700262

推測装置、推測システム、推測プログラム及び推測方法

審判番号
2024-700262
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-069109
登録番号
7347575
請求日
2024年03月21日
審決日
2025年12月23日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】栗田工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人IPX
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 岩谷 一臣
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-YAA(D21C) / P1651.536-YAA(D21C) / P1651.537-YAA(D21C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7347575号発明「推測装置、推測システム、推測プログラム及び推測方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7347575号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正することを認める。 特許第7347575号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7347575号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和4年4月19日を出願日とするものであって、令和5年9月11日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和5年9月20日発行)がされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 3月21日 :特許異議申立人松山徳子(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年11月 1日付け:取消理由通知 令和6年12月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 2月21日 :申立人による意見書の提出 令和7年 6月10日付け:取消理由通知(決定の予告) 令和7年 8月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 9月18日 :申立人による意見書の提出 令和7年11月 6日付け:取消理由通知 令和7年11月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。) 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7347575号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度を推測するための推測装置であって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測装置。」と記載されているのを、 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測装置であって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測装置。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「請求項1に記載の推測装置において、 前記関係性モデルは、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との回帰分析、時系列分析、決定木、ニューラルネットワーク、ベイズ、クラスタリング又はアンサンブル学習により求められるモデルである 推測装置。」と記載されているのを、 「請求項1に記載の推測装置において、 前記関係性モデル情報は、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との回帰分析、時系列分析、決定木、ニューラルネットワーク、ベイズ、クラスタリング又はアンサンブル学習により求められるモデルである 推測装置。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、 「請求項1に記載の推測装置において、 前記水系は紙製品を製造する工程における水系である 推測装置。」と記載されているのを、 「請求項1に記載の推測装置において、 前記水系は紙製品を製造する工程における水系であり、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報は、前記水系における前記ピッチによる障害の程度と、抄紙工程に先立ってパルプスラリーに添加するピッチコントロール剤の添加量と、の関係を示すものであり、 前記添加量決定工程は、抄紙工程に先立ってパルプスラリーに添加するピッチコントロール剤の添加量を決定する 推測装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測システムであって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測システム。」と記載されているのを、 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測システムであって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測システム。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、 「水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度を推測するための推測プログラムであって、 コンピュータを、濁度情報取得部、関係性モデル情報取得部、推測部、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部、及び添加量決定部として機能させ、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、ピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測プログラム。」と記載されているのを、 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測プログラムであって、 コンピュータを、濁度情報取得部、関係性モデル情報取得部、推測部、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部、及び添加量決定部として機能させ、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測プログラム。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に、 「水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度を推測するための推測方法であって、 濁度情報取得工程と、関係性モデル情報取得工程と、推測工程と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程と、添加量決定工程とを備え、 前記濁度情報取得工程では、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得工程は、事前に作成した、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 前記推測工程では、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程は、前記水系におけるピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定工程は、推測した前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測方法。」と記載されているのを、 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測方法であって、 濁度情報取得工程と、関係性モデル情報取得工程と、推測工程と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程と、添加量決定工程とを備え、 前記濁度情報取得工程では、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得工程は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測工程では、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定工程は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測方法。」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~4は、訂正前の請求項2~4が、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正後の請求項1~4は一群の請求項である。 また、訂正前の請求項5、請求項6及び請求項7は、いずれも、いずれの請求項を引用する関係にはなく、またいずれの請求項を引用される関係にはないから、訂正後の請求項5、請求項6及び請求項7は、いずれも、他のいずれの請求項とも一群の請求項を構成しない。 そうすると、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~4〕を含む、請求項〔1~4〕、5、6、7について請求されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1の推測装置を「ピッチによる障害の程度」を推測するためのものに限定し、また、「関係性モデル情報」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1のうち、推測装置を「ピッチによる障害の程度」を推測するためのものに限定する点は、選択的に記載されていたものを限定したものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1のうち、「関係性モデル情報」を限定する点は、明細書の【0038】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2-1 訂正事項2のうち、「前記関係性モデル」を「前記関係性モデル情報」に訂正した点(以下「訂正事項2-1」という。)について、当該「前記」とされているものは、その内容からみて請求項1に記載された「関係性モデル情報」であり、これ以外意味しないことは明らかである。そうすると、訂正事項2-1は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。 訂正事項2-1は、明らかな誤記の訂正であって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項2-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2-2 訂正事項2のうち、「前記ピッチの発生の程度又は前記ピッチによる障害の程度」を「前記ピッチによる障害の程度」とした点(以下「訂正事項2-2」という。)は、請求項1の推測装置において推測されるものを「ピッチによる障害の程度」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項2-2は、選択的に記載されていたものを限定したものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項1の「ピッチコントロール剤添加モデル情報」及び「添加量決定部」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項3は、明細書の【0072】~【0085】及び図面の【図4】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4~6について 訂正事項4~6は、いずれも、訂正事項1と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 本件訂正請求についてのまとめ したがって、訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~4〕、5、6、7について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。またこれらを「本件発明」と総称することもある。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測装置であって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測装置。 【請求項2】 請求項1に記載の推測装置において、 前記関係性モデル情報は、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との回帰分析、時系列分析、決定木、ニューラルネットワーク、ベイズ、クラスタリング又はアンサンブル学習により求められるモデルである 推測装置。 【請求項3】 請求項1に記載の推測装置において、 前記濁度は、前記水系の攪拌時の濁度及び前記水系の静置時の濁度の算術平均濁度又は加重平均濁度である 推測装置。 【請求項4】 請求項1に記載の推測装置において、 前記水系は紙製品を製造する工程における水系であり、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報は、前記水系における前記ピッチによる障害の程度と、抄紙工程に先立ってパルプスラリーに添加するピッチコントロール剤の添加量と、の関係を示すものであり、 前記添加量決定工程は、抄紙工程に先立ってパルプスラリーに添加するピッチコントロール剤の添加量を決定する 推測装置。 【請求項5】 水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測システムであって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測システム。 【請求項6】 水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測プログラムであって、 コンピュータを、濁度情報取得部、関係性モデル情報取得部、推測部、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部、及び添加量決定部として機能させ、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測プログラム。 【請求項7】 水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測方法であって、 濁度情報取得工程と、関係性モデル情報取得工程と、推測工程と、ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程と、添加量決定工程とを備え、 前記濁度情報取得工程では、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得工程は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含み、 前記推測工程では、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測し、 前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得工程は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、 前記添加量決定工程は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する、 推測方法。」 第4 令和7年11月6日付け取消理由通知における取消理由について 1 取消理由の概要 令和7年11月6日付けの取消理由通知における取消理由は、概略、次のとおりである。 請求項2における「前記ピッチの発生の程度」の記載について、当該記載より前に「ピッチの発生の程度」の記載がなく、どの「ピッチの発生の程度」を指すのかが不明であり、請求項2に係る発明は明確ではない。 したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 当審の判断 本件訂正により、請求項2における「前記ピッチの発生の程度」が削除されたため、当該取消理由は解消した。 第5 取消理由通知(決定の予告)における取消理由の要旨 令和7年6月10日付けの取消理由通知(決定の予告)における取消理由は、概略、次のとおりである。 本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明は、下記甲5に記載された発明及び下記甲1及び下記甲2に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 <証拠一覧> 甲1:特開昭56-392号公報 甲2:特開昭56-9493号公報 甲5:特開2019-214807号公報 なお、甲1、2、5は、それぞれ、申立人が提出した甲第1、2、5号証である。 第6 当審の判断 1 引用文献の記載等 (1)甲5の記載 甲5には次の記載がある。なお、下線は当審が付した。以下同様。 「【0001】 本発明は、抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量推定方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現在、製紙は、パルプ原料を水質に分散させた原料スラリーを抄紙することによって行われる。抄紙に際して、パルプは漂白、叩解、混合、稀釈等の工程を経て、最終的にパルプスラリーの状態に調製された後、抄紙機のワイヤパートに送り込まれ脱水される。パルプスラリーがワイヤ上で脱水される際、ワイヤ下へ濾過された水を通常白水と呼んでいる。 【0003】 水資源の有効活用や再利用の観点から、白水は、抄紙系、原料系を循環し、回収原料として或いは稀釈水として再利用される。しかしながら、白水は、炭酸カルシウム、澱粉、サイズ剤、ラテックス、カゼイン等に起因する汚れを含むため、白水が抄紙系、原料系を循環することで、汚れ成分が濃縮し、汚れ成分が抄紙工程やプレス工程に与える影響が大きくなる。汚れ成分は、抄紙工程のワイヤや、プレス工程のフェルトに付着し、紙製品に混入することで、紙製品の品質低下につながる。 【0004】 抄紙機のワイヤパートにおける原料の歩留りが低下すると、ワイヤで捕捉されずに通過した白水を回収する白水ピット中の白水の濁度が上昇する。白水の濁度が上昇すると、白水の流れる配管で流動性が低下しスライム粕が発生し易くなる。これが成長して白水サイロや配管内部に付着して剥離したときに製品欠陥や粕穴欠点を発生させる。 【0005】 また、汚れ成分がプレス工程のフェルトに付着すると、搾水性が悪化し、後段のドライヤーでの乾燥に時間を要するため、抄速を上げることができないという弊害や、センターロールでの剥離性が悪化し、断紙を発生させてしまう等、生産効率の低下を招き得る。 【0006】 白水の濁度を抑えるため、ワイヤ下へ濾過された濾過後水の一部を系から排出し、新たな水を導入することも行われるが、それだけでは根本的な解決にはならない。 【0007】 汚れ付着防止を目的に、製紙工程の抄紙工程及び脱水工程のシャワー水系に、(A)非イオン性界面活性剤と(B)ヒドロキシカルボン酸あるいはその塩とを含有する汚れ防止剤組成物を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0008】 【特許文献1】特開2010-163700号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかしながら、これまで、抄紙機のワイヤパートにおけるワイヤや、プレス工程におけるフェルトに付着する汚れ量を、連続的かつ定量的に示すことが容易でなく、汚れ防止剤組成物は、一定量を連続して添加することが一般的である。そのため、ワイヤ洗浄剤やフェルトコンディショナー等の洗浄剤を大量に必要とする。そして、これらの洗浄剤は、比較的高価であり、洗浄剤の使用量を減らす仕組みの提供が求められている。 【0010】 また、フェルトの操業状態を把握するのに、フェルトの含水率の測定が行われることもあるが、この測定は、抄紙機の操業中に人手によって行われるものであり、危険を伴う。 【0011】 本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、抄紙機のワイヤパートにおけるワイヤや、プレス工程におけるフェルトに付着する汚れを、フェルトの含水率を測定することなく定量化し、洗浄剤の使用量を、安全に効率化することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者らは、抄紙工程で用いられる白水に含まれる炭酸カルシウム及びピッチの量を測定し、この測定の結果から、ワイヤ及び/又はフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算することで、汚れ蓄積量をより正確に定量化し、洗浄剤の使用量を最小限に抑えられ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下を提供する。 【0013】 (1)本発明は、抄紙工程で用いられる白水に含まれる炭酸カルシウム及びピッチの量を測定する工程と、前記炭酸カルシウム及びピッチの量の測定結果から、前記抄紙工程のワイヤパートにおけるワイヤ及び/又はプレスパートにおけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算する工程とを含む、抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量推定方法である。 【0014】 (2)また、本発明は、抄紙工程で用いられる白水に含まれる不溶性懸濁物の量を測定する工程をさらに含み、前記汚れ蓄積量は、前記炭酸カルシウム及びピッチの量の測定結果と、前記不溶性懸濁物の量の測定結果とから演算される、(1)に記載の方法である。」 「【0033】 本実施形態では、薬品タンク22aの内部には、薬品Aとしてワイヤ洗浄剤を含む製紙用薬剤が収容されている。そして、薬品Aの供給位置は特に限定されず、好ましくは、薬品タンク22aからワイヤパート55のワイヤシャワー水に供給される。 【0034】 また、内添薬品タンク22bの内部には、内添薬品Bとしてフェルトコンディショナーを含む製紙用薬剤が収容されている。そして、内添薬品Bの供給位置は特に限定されず、好ましくは、内添薬品タンク22bからプレスパート56のフェルトシャワー水に供給される。」 「【0037】 ワイヤ洗浄剤及びフェルトコンディショナーとは異なる他の製紙用薬剤の種類は、特に限定されない。他の製紙用薬剤として、例えば、界面活性剤、ワックス、サイズ剤、填料、防錆剤、導電剤、消泡剤、分散剤、粘性調整剤、凝集剤、凝結剤、紙力増強剤、歩留向上剤、紙粉脱落防止剤、嵩高剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。」 「【0039】 〔(A)炭酸カルシウム及びピッチの量の測定〕 図2は、図1に示す製紙工程10に組み込まれた薬注系20の概要を示す概要図である。本実施形態では、濁度測定ユニット30を用いて、抄紙工程で用いられる白水に含まれる炭酸カルシウム及びピッチの量を測定する。炭酸カルシウム及びピッチの量の測定は、後述する「静止時濁度」を測定することによって行われる。」 「【0043】 測定容器31は、例えば0.3~1.5m程度の深さを有して白水を20~1000L、好ましくは30~50L程度貯留する容積を有するもので、その底部に排水系をなす排水バルブ36を備えている。また測定容器31の内壁面の上部であって、例えば水面から50~200mm下がった位置には測定容器31に貯留された白水の上部における濁度を測定する濁度センサ32が設けられている。濁度センサ32は、例えば吸光度センサ、反射光センサ、透過光センサなどを用いることができる。また、測定容器31の内壁面の満水位置に、白水の水面が満水位置に達したことを検知するための水面センサ(図示せず)が設けられていてもよい。」 「【0046】 〔(B)汚れ蓄積量の演算〕 続いて、本方法では、炭酸カルシウム及びピッチの量の測定結果から、ワイヤパート55におけるワイヤ及び/又はプレスパート56におけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算する。 【0047】 本方法は、白水循環系の炭酸カルシウム・ピッチ等の微細分を測定することで、効率的かつ確実にワイヤ、フェルトに付着する汚れ蓄積量を定量化し、ワイヤ洗浄剤、フェルトコンディショナーの最適化を実施することで、ワイヤ、フェルト汚れ障害を抑制することができる。また、通常一定量で添加されているワイヤ洗浄剤、フェルトコンディショナーを最適化することで、最適化しない場合と比べて、ワイヤ洗浄剤、フェルトコンディショナーの使用量の低減や最適化を図ることもできる。 【0048】 その原理としては、白水循環系に濃縮された炭酸カルシウム・ピッチ等の汚れ量から、紙に移行した汚れ量と紙からワイヤ、フェルトに移行する汚れ量が水バランスを基に算出することができ、算出されたワイヤ、フェルト汚れ付着量に対して、ワイヤ、フェルトコンディショナーの添加量を最適化できる。 【0049】 演算処理部21は、前述の通り、測定容器31に採取され濁度センサ32によって測定される白水の濁度に基づき薬品A、Bの注入量を求めている。そして、演算処理部21は、薬品タンク22a内の薬品Aの注入量及び薬品タンク22b内の薬品Bの注入量を、それぞれ最適化制御するものとなっている。 【0050】 図3は、上記の水バランスを説明するための模式図である。ワイヤパート55の入口における水分量を100とすると、ワイヤにより重力脱水がなされ、プレスパート56の入口での水分量は80となる。さらに、プレス工程でのフェルトによる搾水で、湿紙に含まれる水分量は、50となる。つまり、白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量を測定すると、以下の式(1)及び(2)により、ワイヤ、フェルトに付着する炭酸カルシウム・ピッチ量が推定される。 [式(1)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)=炭酸カルシウム・ピッチによるワイヤへの汚れ付着量 [式(2)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)×(30/80)=炭酸カルシウム・ピッチによるフェルトへの汚れ付着量 【0051】 そして、ワイヤへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、ワイヤに付着する汚れ蓄積量(ワイヤ汚れ指数)を算出でき、フェルトへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、フェルトに付着する汚れ蓄積量(フェルト汚れ指数)を算出できる。」 「【0068】 続いて、演算処理部21は、測定容器31に採取され濁度センサ32によって測定される白水の濁度(少なくとも「静止時濁度」。好ましくは「静止時濁度」と「撹拌時濁度」との両方)から、抄紙工程のワイヤパート55におけるワイヤ及び/又はプレスパート56におけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算する。そして、演算の結果に基づき、ワイヤ、フェルトに対する薬品の注入量を求める[ステップS12]。この処理において、演算処理部21は、薬品タンク22a内の薬品の注入量及び薬品タンク22b内の薬品の注入量をそれぞれ最適化制御するものとなっている。薬品は要求される効果に応じて、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。」 (2)甲5の認定事項 上記(1)より、以下の事項が認められる。 ア 段落【0001】及び【0068】には、抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化することが記載されていると認められる。そして、段落【0039】、【0049】、【0068】等の記載から、これは、濁度測定ユニット30及び演算処理部21によって行われるものであるから、甲5には、抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化する装置であって、濁度測定ユニット30及び演算処理部21を備える装置が記載されていると認められる。 イ 段落【0039】、【0043】の記載から、濁度測定ユニット30は、吸光度センサなどの濁度センサ32を用いて、抄紙工程で用いられる白水の濁度を測定することで、炭酸カルシウム及びピッチの量の測定をするものと認められる。 ウ 段落【0068】の記載から、演算処理部21は、濁度センサ32によって測定される白水の濁度から、抄紙工程のワイヤパート55におけるワイヤ及び/又はプレスパート56におけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算するものであって、その具体的な演算内容は、段落【0050】、【0051】に示されたものであると認められる。 エ 段落【0047】~【0049】の記載を総合すると、演算処理部21は、算出された汚れ蓄積量に基づき、薬品A、Bの注入量を最適化するものと認められ、ここで、段落【0033】、【0034】には、薬品Aがワイヤ洗浄剤を含む製紙用薬剤であり、薬品Bがフェルトコンディショナーを含む製紙用薬剤であることが記載されている。すなわち、演算処理部21は、算出された汚れ蓄積量に基づき、ワイヤ、フェルトに対するワイヤ洗浄剤を含む製紙用薬剤及びフェルトコンディショナーを含む製紙用薬剤の最適な注入量を求めるものと認められる。 (3)甲5に記載された発明 上記(1)、(2)から、甲5には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化する装置であって、 濁度測定ユニット30及び演算処理部21を備え、 濁度測定ユニット30は、吸光度センサなどの濁度センサ32を用いて、抄紙工程で用いられる白水の濁度を測定することで、炭酸カルシウム及びピッチの量を測定し、 演算処理部21は、濁度センサ32によって測定される白水の濁度から、抄紙工程のワイヤパート55におけるワイヤ及び/又はプレスパート56におけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算するものであって、その具体的な演算内容は、 白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量を測定すると、以下の式(1)及び(2)により、ワイヤ、フェルトに付着する炭酸カルシウム・ピッチ量が推定され、 [式(1)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)=炭酸カルシウム・ピッチによるワイヤへの汚れ付着量 [式(2)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)×(30/80)=炭酸カルシウム・ピッチによるフェルトへの汚れ付着量 ワイヤへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、ワイヤに付着する汚れ蓄積量を算出し、フェルトへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、フェルトに付着する汚れ蓄積量を算出するものであり、 演算処理部21は、算出された汚れ蓄積量に基づき、ワイヤ、フェルトに対するワイヤ洗浄剤を含む製紙用薬剤及びフェルトコンディショナーを含む製紙用薬剤の最適な注入量を求める、 抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化する装置。」 2 本件発明1~4について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比する。 (ア)「ピッチによる障害の程度」について 甲5発明の「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量」は、「白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量を測定」した結果から算出されるものであり、汚れは設備に対するピッチによる障害といえるから、汚れ蓄積量は水系におけるピッチによる障害の程度といえる。 そうすると、甲5発明の「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量」は、本件発明1の「ピッチによる障害の程度」に相当する。 (イ)「推測装置」について 甲5発明の「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化する装置」は、汚れ蓄積量の推定を行うものであるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明1の「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測装置」に相当する。 (ウ)「濁度情報取得部」について 甲5発明の「濁度測定ユニット30」は本件発明1の「濁度情報取得部」に相当し、また、甲5発明の「濁度測定ユニット30は、吸光度センサなどの濁度センサ32を用いて、抄紙工程で用いられる白水の濁度を測定することで、炭酸カルシウム及びピッチの量を測定」していることから、本件発明1の「前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得」することに相当する。 (エ)「関係性モデル情報取得部」について 甲5発明において、「汚れ蓄積量を演算」する「具体的な演算内容」は、 「白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量を測定すると、以下の式(1)及び(2)により、ワイヤ、フェルトに付着する炭酸カルシウム・ピッチ量が推定され、 [式(1)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)=炭酸カルシウム・ピッチによるワイヤへの汚れ付着量 [式(2)] (白水中の炭酸カルシウム・ピッチ量)×(80/20)×(30/80)=炭酸カルシウム・ピッチによるフェルトへの汚れ付着量 ワイヤへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、ワイヤに付着する汚れ蓄積量を算出し、フェルトへの汚れ付着量を日毎に積み上げることで、フェルトに付着する汚れ蓄積量を算出するものであ」るが、式(1)及び(2)で炭酸カルシウム・ピッチ量を用いて、汚れ付着量を求めていること、これを日毎に積み上げて、汚れ蓄積量としていることは、炭酸カルシウム・ピッチ量と汚れ蓄積量との関係性をモデル化したものであるといえる。 また、汚れが蓄積しているか否かを判別するためには、「演算処理部21」において、式(1)及び(2)に関連する情報がメモリ等に予め記憶され、演算の際に、演算処理部21のプロセッサ等に読み込まれて演算が行われること、すなわち事前に作成され、演算の際にこれを取得することは当然である。 そうすると、甲5発明の「演算処理部21」は、本件発明1の「関係性モデル情報取得部」に相当する。また、甲5発明の「具体的な演算内容」における処理は、上記(ア)を踏まえると、本件発明1の「前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得」することに相当する。 (オ)「推測部」について 甲5発明の「演算処理部21」は、本件発明1の「推測部」に相当する。また、甲5発明において「演算処理部21は、濁度センサ32によって測定される白水の濁度から、抄紙工程のワイヤパート55におけるワイヤ及び/又はプレスパート56におけるフェルトに付着する汚れ蓄積量を演算」することは、上記(ア)を踏まえると、本件発明1において「前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測」することに相当する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲5発明は次の点で一致し、相違する。 a 一致点 「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測装置であって、 濁度情報取得部と、関係性モデル情報取得部と、推測部とを備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得し、 前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、 前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測する、 推測装置。」 b 相違点1 ピッチによる障害の程度に関して、本件発明1は「前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含」むのに対して、甲5発明は「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量」がピッチによる障害の程度であるといえるものの、その具体的内容が異なる点。 c 相違点2 本件発明1の「推測装置」が、「ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部と、添加量決定部」を備え、「前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得し、前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する」のに対し、 甲5発明の「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量を推定し、薬剤の注入量を最適化する装置」は、「算出された汚れ蓄積量に基づき、ワイヤ、フェルトに対するワイヤ洗浄剤を含む製紙用薬剤及びフェルトコンディショナーを含む製紙用薬剤の最適な注入量を求める」「演算処理部21」を備える点。 イ 判断 相違点1について検討する。 推測装置により推測される「ピッチによる障害の程度」を、水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度として、関係性モデル情報に関連付けることは、甲5やその他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、周知技術でもない。さらに、甲5発明の「抄紙工程におけるワイヤ及び/又はフェルトの汚れ蓄積量」から、当該水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量を思いつくものでもない。 したがって、甲5発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、令和7年9月18日提出の意見書において、甲5においては、文献全体の記載内容から、ワイヤやフェルトについての汚れは、訂正後の本件発明1において特定される「前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積」の紙製品の品質、及び「ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量」の生産効率に該当するものであるため、このような「ピッチによる障害の程度」に関連付けられる「関連性モデル情報」が開示されている旨主張する。 しかしながら、本件発明1における「関連性モデル情報」は、「前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す」ものであるところ、甲5に記載された、「前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積」の紙製品の品質、及び「ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量」の生産効率は、ピッチにより生じる問題点を指摘したものであって、当該問題点と濁度との関係を示すような「関連性モデル情報」について記載も示唆もされていないし、これを得ることが容易想到であるともいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 よって、本件発明1は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明5~7について 本件発明5~7と甲5発明とは、少なくとも相違点1と同様の点で相違し、その判断は上記(1)イで説示したとおりである。 よって、本件発明5~7は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(進歩性) 請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に示される慣用技術、並びに甲第5号証記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 申立理由2(進歩性) 請求項1~7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に示される慣用技術、並びに甲第5号証記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 申立理由3(実施可能要件) 請求項1~7に係る特許は、明細書の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)請求項1、5~7に記載された「ピッチの発生の程度又はピッチによる障害の程度を推測」することに関して、「ピッチによる障害の程度」を濁度等からどのように推測するのか不明であり、当業者であっても本件特許明細書全体を確認しても、どのようにして「ピッチ障害の発生の程度」を推測するのか不明である。 (2)請求項1、5~7に記載された「ピッチコントロール剤添加モデル情報取得」に関して、本件特許明細書の全体を確認しても、水系におけるピッチ発生の程度又はピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量の関係を示す関係性モデル情報について、具体的な例示がされておらず、どのような指標を用いて、ピッチ発生の程度又はピッチによる障害の程度と、ピッチコントロール剤の添加量との関係を示す関係性モデル情報を得ることができるのか不明であり、当業者であってもピッチコントロール剤添加モデル情報についてどのような情報であるか不明である。 申立理由4(サポート要件) 請求項1、5~7に記載された「ピッチコントロール剤添加モデル情報」は、ピッチコントロール剤の性能情報から、従来示されたことのない指標を用いた未知のピッチコントロール剤添加の情報まで、広範囲にわたって含まれる表現であるところ、本件特許明細書の全体から認識できる発明の内容を超えた範囲を含む表現である。 したがって、請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 <証拠一覧> 甲1:特開昭56-392号公報 甲2:特開昭56-9493号公報 甲3:特開昭61-55294号公報 甲4:特表平10-505383号公報 甲5:特開2019-214807号公報 なお、甲1~5は、それぞれ、申立人が提出した甲第1~5号証である。 2 申立理由2(進歩性)について 事案に鑑み、まず、申立理由2から検討する。 (1)甲2に記載された発明 甲2には、特に、実施例1(536ページ左上欄2行~左下欄1行)に着目すると、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「まず木材原料が蒸解工程(17)で蒸解され、次いで洗滌工程(18)で洗滌され、次いで完成塔(19)で約9時間滞留し、続いてチエスト(20)→リフアイナ(21)→チエスト(22)→リフアイナ(23)→チエスト(24)→リフアイナ(25)→チエスト(26)→抄紙工程(27)の工程を経て製造される未晒クラフト紙製造装置であって、 完成塔(19)入口部のモニタ部(1’)で工程水の吸光度が0.20以上の値を示すと、その8時間後より前記ピツチコントロール剤を完成塔出口部(28)に添加し、ピツチ障害の発生を防ぐようにした、 未晒クラフト紙製造装置。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「未晒クラフト紙製造装置」と本件発明1の「推測装置」とは、装置の限りで一致する。 甲2発明の「吸光度」は本件発明1の「濁度情報」に相当する。 甲2発明の「モニタ部(1’)」は、「工程水の吸光度」を観測しているものに外ならないから、本件発明の「前記水系の濁度を含む濁度情報を取得」する「濁度情報取得部」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明は次の点で一致し、相違する。 [一致点A] 装置であって、濁度情報取得部を備え、 前記濁度情報取得部は、前記水系の濁度を含む濁度情報を取得する、 装置。 [相違点A] 装置に関して、本件発明1は「水系におけるピッチによる障害の程度を推測するための推測装置」であるのに対して、甲2発明の「未晒クラフト紙製造装置」は、そのような推測をする機能を有した装置であるといえるか不明である点。 [相違点B] 本件発明1は、「関係性モデル情報取得部」を備え、「前記関係性モデル情報取得部は、事前に作成した、前記ピッチによる障害の程度と、前記濁度との関係を示す関係性モデル情報を取得し、ここで、前記関係性モデル情報に関連付けられる前記ピッチによる障害の程度は、前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含」むのに対して、甲2発明はそのようなものではない点。 [相違点C] 本件発明1は、「推測部」を備え、「前記推測部は、前記濁度情報及び前記関係性モデル情報に基づいて、前記ピッチによる障害の程度を推測」するのに対して、甲2発明はそのようなものではない点。 [相違点D] 本件発明1は、「ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部」を備え、「前記ピッチコントロール剤添加モデル情報取得部は、前記ピッチによる障害の程度とピッチコントロール剤の添加量との関係を示すピッチコントロール剤添加モデル情報を取得」するのに対して、甲2発明はそのようなものではない点。 [相違点E] 本件発明1は、「添加量決定部」を備え、「前記添加量決定部は、推測した前記ピッチによる障害の程度と前記ピッチコントロール剤添加モデル情報とに基づいて、前記水系に対するピッチコントロール剤の添加量を決定する」のに対して、甲2発明は、そのようなものではない点。 イ 判断 事情に鑑み、まず相違点Bについて検討する。 甲2発明は、「完成塔(19)入口部のモニタ部(1’)で工程水の吸光度が0.20以上の値を示すと、その8時間後より前記ピツチコントロール剤を完成塔出口部(28)に添加し、ピツチ障害の発生を防ぐ」ものである。すなわち、「吸光度が0.20以上」になると、「ピツチコントロール剤を」「添加」するだけのものである。そうすると、甲2発明は、本件発明1のように、「ピッチ障害による障害の程度」が関連付けられた「関係性モデル情報」を有しているとはそもそも言えないし、まして「ピッチによる障害の程度」を、「前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量、に関した程度を含」むものとしたものではない。 そして、当該相違点Bに係る本件発明1の構成は、その他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、周知技術でもない。 したがって、甲2発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~7について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明5~7と甲2発明とは、少なくとも相違点Bと同様の点で相違し、その判断は上記(2)イで説示したとおりであるから、本件発明5~7は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 申立理由1(進歩性)について 甲1(特に、実施例3(596ページ右上欄11行~5ページ左上欄2行))に記載された発明と本件発明1~7とは、少なくとも相違点Bと同様の点で相違し、その判断は上記2(2)イで説示したとおりであるから、本件発明1~7は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 申立理由3(実施可能要件)について 請求項1、5~7に記載された「ピッチによる障害の程度」として、「前記水系により製造した紙のピッチ欠点数、ピッチ欠点の面積、ピッチによる断紙回数、又は、ピッチによる損紙量」という具体的な観点が示されているのだから、これらから「ピッチ障害の発生の程度」を推測することは、当業者にとって過度の試行錯誤なく可能である。 したがって、申立人の主張は採用できない。 5 申立理由4(サポート要件)について 明細書の【0046】、【0047】に「ピッチコントロール剤添加モデル」に関し説明があるところ、請求項の記載は、本件発明が解決しようとする課題を離れ、ことさら明細書の記載全体から認識できる発明の内容を超えたものではない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第8 むすび 請求項1~7に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700262

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