特許異議申立
2023-701206
水処理情報システム
- 審判番号
- 2023-701206
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-198199
- 登録番号
- 7276412
- 請求日
- 2023年11月15日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】栗田工業株式会社
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【権利者代理人】井上 美和子
- 【異議申立人】原 麗
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 金 公彦
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F) / P1651.536-YAA(C02F) / P1651.537-YAA(C02F) / P1651.55 -YAA(C02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7276412号発明「水処理情報システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7276412号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7276412号の請求項1、5~9に係る特許を維持する。
特許第7276412号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7276412号の請求項1~9に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、令和3年12月7日に出願され、令和4年10月26日付けで拒絶理由が通知され、令和5年2月7日に意見書及び手続補正書の提出がされ、同年3月29日付けで特許査定がされ、同年5月10日に本件特許の特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許1~9に対して、令和5年11月15日に特許異議申立人原 麗(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年2月16日付けで取消理由が通知され、同年4月17日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされ、同年5月10日に特許権者により訂正請求書に対する手続補正書の提出がされた。
なお、申立人に対して、訂正請求のあった旨の通知をし、期間を指定して意見を求めたが、意見書の提出はされなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年5月10日付けの手続補正書により補正された、同年4月17日付けの訂正請求書における訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~9〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」
とあるのを、
「前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており、
前記監視部が、
前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部と、
前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部と、を有しており、
前記提示部が、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~9も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2~4を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項3又は4に記載の」
とあるのを、
「請求項1に記載の」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1から5のいずれか一項に記載の」
とあるのを、
「請求項1または5に記載の」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~9も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1から6のいずれか一項に記載の」
とあるのを、
「請求項1、5、または6に記載の」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1から7のいずれか一項に記載の」
とあるのを、
「請求項1、5、6、または7に記載の」
に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、「前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており」とする訂正事項(以下、「訂正事項1A」という。)と、「前記監視部が、
前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部と、
前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部と、を有しており、
前記提示部が、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」とする訂正事項(以下、「訂正事項1B」という。)からなるから、それぞれについて個別に検討する。
ア 訂正事項1Aについて
(ア) 訂正の目的の適否について
訂正事項1Aは、設定登録時の請求項1の記載において、「PLC」、「監視部」、「監視部」が監視する「測定情報」、及び、「コンピュータ」の相互関係が不明瞭であったところ、この相互関係が明瞭になるように訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無について
a 本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれを「本件特許明細書」などといい、まとめて「本件特許明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
(a) 「【0012】
<1.第1の実施形態(水処理情報システムの例1)>
本発明の一実施形態に係る水処理情報システムは、水処理装置の駆動を制御する制御部と、前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記制御部および前記監視部のそれぞれが異なる装置に備えられている。
【0013】
本発明の一実施形態に係る水処理情報システムの構成例について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水処理情報システム100の構成例を示すブロック図である。図1に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る水処理情報システム100は、制御部21と、監視部11と、複数の水処理装置32と、複数の測定装置31と、を備えている。制御部21および監視部11のそれぞれが異なる装置に備えられている。
・・・
【0018】
監視部11は、複数の測定装置31のそれぞれに接続されている。監視部11は、複数の測定装置31のそれぞれが得た測定情報を監視する。
【0019】
制御部21および監視部11のそれぞれは、異なる装置に備えられている。これにより、例えば制御部21をPLCとし、監視部11を安価な制御装置とすることができる。その結果、導入コスト及び稼働コストを低減させることができる。」
(b) 「【0066】
<7.第7の実施形態(水処理情報システムの例7)>
本発明の一実施形態に係る水処理情報システムは、前記測定情報に含まれる値と、所定の閾値と、に基づいて、前記水処理装置を駆動させる駆動情報を生成する生成部をさらに備えていてよい。このことについて図11を参照しつつ説明する。・・・
・・・
【0072】
一方、本発明によれば、生成部14が生成した駆動情報が制御部21に送信される。つまり、例えば水素イオン指数、導電率、水温、水圧、水位、水流量、熱量、消費電力などの多種多様な測定情報が制御部21に送信されるのではなく、水処理装置32を駆動させる駆動情報のみが制御部21に送信される。」
(c) 「【0080】
<9.ハードウェア構成>
本発明の一実施形態に係る水処理情報システムは、プログラム及びコンピュータの協業により実現できる。本発明の一実施形態に係る水処理情報システムの実現に用いられるコンピュータのハードウェア構成について図15を参照しつつ説明する。図15は、本発明の一実施形態に係る水処理情報システムを実現するコンピュータ70の構成例を示すブロック図である。
【0081】
図15に示されるとおり、コンピュータ70は、構成要素として、CPU71、メモリ72、記憶部73、表示部74、及び通信部75などを備えることができる。それぞれの構成要素は、例えばデータの伝送路としてのバスで接続されている。
【0082】
CPU71は、コンピュータ70のそれぞれの構成要素を制御する。あるいは、CPU71は、例えば、監視部11、制御部21、抽出部111、提示部112、分析部12、及び生成部14などの構成要素として機能することができる。これらの構成要素はプログラムにより実現されることができる。このプログラムは、CPU71に読み込まれることにより、コンピュータ70に実行させることができる。」
(d) 「【図1】
[図:0001415299000001.jpg]
」
(e) 「【図11】
[図:0001415299000002.jpg]
」
(f) 「【図15】
[図:0001415299000003.jpg]
」
b 前記aによれば、本件特許明細書等には、水処理情報システムは、監視部と制御部を備え、監視部と制御部は異なる装置に備えられていること(【0012】)、制御部をPLCとし、監視部を安価な制御装置とすること(【0019】、【図1】)、監視部は、測定情報を監視すること(【0013】、【0018】、【図1】)、及び、監視部の生成部において、測定情報から駆動情報が生成され、制御部には、測定情報が送信されず、駆動情報のみが送信されること(【0066】、【0072】、【図11】)が記載されている。
また、本件特許明細書等には、コンピュータが監視部や制御部として機能するCPUを備えること(【0080】~【0082】、【図15】)が記載されているところ、甲第13号証(電気と工事編集部編、「電気工事基礎用語事典」、第3版、株式会社オーム社、平成26年11月30日、第114~115頁、第316~317頁)の
「プログラマブル・ロジックコントローラ
programmable logic controller:PLC
順序操作,限時,演算,計数などの制御動作をするためのメモリを持ち,その内容に従って,機械やプロセスの制御をディジタル方式で行う工業用電子装置.
[図:0001415299000004.jpg]
」(第316頁)
との記載によれば、PLCがCPU及びメモリ等を備えた工業用電子装置であって、PLC自体がコンピュータの一種であることは技術常識であるといえるから、制御部として機能するCPUを備えたコンピュータがPLCということができる。
c これらの事項を踏まえると、本件特許明細書等には、水処理情報システムが、PLCと、監視部として機能するCPUを備えたコンピュータとを備えていること、及び、PLCである制御部には、測定情報が送信させないことが記載されているといえるから、訂正事項1Aは、本件特許明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1Aは、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正事項1Aにより、設定登録時の請求項1には含まれないとされていた発明が訂正後の請求項1に含まれることとなるという事情は認められないから、訂正事項1Aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 訂正事項1Bについて
(ア) 訂正の目的の適否について
訂正事項1Bは、設定登録時の請求項1における「監視部」を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無について
a 本件特許明細書等には、次の事項が記載されている。
(a) 「【0012】
<1.第1の実施形態(水処理情報システムの例1)>
本発明の一実施形態に係る水処理情報システムは、水処理装置の駆動を制御する制御部と、前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記制御部および前記監視部のそれぞれが異なる装置に備えられている。
・・・
【0014】
複数の水処理装置32のそれぞれは、水処理を行う。水処理装置32には、例えばタンク、ポンプ、膜、及び電磁弁などが含まれる。」
(b) 「【0024】
<2.第2の実施形態(水処理情報システムの例2)>
前記監視部が、前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部を有していてよい。・・・」
(c) 「【0033】
<3.第3の実施形態(水処理情報システムの例3)>
前記監視部が、前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部を有していてよい。・・・」
(d) 「【0041】
<4.第4の実施形態(水処理情報システムの例4)>
前記提示部は、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示してよい。このことについて図6を参照しつつ説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る水処理情報システム100の構成例を示すブロック図である。図6に示されるとおり、本発明の一実施形態に係る水処理情報システム100は、監視部11が、複数の拠点(例えば水処理プラントなど)41~45に接続されている。図示を省略するが、複数の拠点41~45のそれぞれには、測定装置31及び水処理装置32が配置されている。複数の拠点41~45のそれぞれは、原水条件、気温や湿度などの環境条件、及び設備条件などが異なる。
・・・
【0047】
例えば拠点41において膜の洗浄又は交換を行う時期が推定されているとする。この場合、提示部112は、拠点41における膜の洗浄又は交換を行う時期と、拠点42における原水条件と、に基づいて、拠点42における膜の洗浄又は交換を行う時期を推定できる。」
(e) 「【図6】
[図:0001415299000005.jpg]
」
b これらの記載事項によれば、本件特許明細書等には、「水処理情報システムは、水処理装置の駆動を制御する制御部と、前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部」(【0012】)を備え、「監視部」が、「前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部」(【0024】)、「前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部」(【0033】)を有し、「前記提示部は、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示」すること(【0041】、【図6】)、及び、前記改善策として、「水処理装置32」に含まれる「膜」に関して、「提示部112は、拠点41における膜の洗浄又は交換を行う時期と、拠点42における原水条件と、に基づいて、拠点42における膜の洗浄又は交換を行う時期を推定できる」こと(【0014】、【0047】)が記載されているといえるから、訂正事項1Bは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1Bは、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正事項1Bにより、設定登録時の請求項1には含まれないとされていた発明が訂正後の請求項1に含まれることとなるという事情は認められないから、訂正事項1Bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2~4を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3~6について
訂正事項3~6は、訂正事項2による請求項2~4の削除に伴い、請求項5~8における引用関係を整理するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。そして、請求項1、5~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その記載事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
水処理装置の駆動を制御するPLCと、
前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、
前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており、
前記監視部が、
前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部と、
前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部と、を有しており、
前記提示部が、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する、水処理情報システム。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記提示部が提示した改善策と、前記監視部が得た前記測定情報と、を分析して分析結果を得る分析部をさらに備えており、
前記分析部が、前記分析結果を前記監視部にフィードバックする、
請求項1に記載の水処理情報システム。
【請求項6】
前記測定情報には、水素イオン指数、導電率、水温、水圧、水位、水流量、熱量、消費電力が含まれる、
請求項1または5に記載の水処理情報システム。
【請求項7】
情報通信ネットワークを介して前記測定情報を送信する通信部をさらに備えている、
請求項1、5、または6に記載の水処理情報システム。
【請求項8】
前記測定情報に含まれる値と、所定の閾値と、に基づいて、前記水処理装置を駆動させる駆動情報を生成する生成部をさらに備えている、
請求項1、5、6、または7に記載の水処理情報システム。
【請求項9】
前記駆動情報へのアクセス権限を管理する管理部をさらに備えている、
請求項8に記載の水処理情報システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和6年2月16日付けの取消理由は、概略、以下のとおりである。
なお、ここで引用した甲各号証は、後記(7)に示したとおりである。
(1) 取消理由1(新規事項の追加)
令和5年2月7日付けの手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれ「本件当初明細書」などといい、まとめて「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができないため、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(2) 取消理由2(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記2(2)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 取消理由3(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が後記2(3)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4) 取消理由4(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が後記2(4)アの点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5) 取消理由5(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、7、8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1~9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~9は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(6) 取消理由6(甲第5号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
設定登録時の請求項1、6、7に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1~9に係る発明は、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~9は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(7) 引用文献一覧
甲第1号証 国際公開第2015/133049号
甲第2号証 特開平10-337556号公報
甲第5号証 松尾弘樹、「海水淡水化施設の計装・制御」、日本海水学会
誌、2004年、第58巻、第3号、第261~263頁
甲第10号証 朝妻智裕他、「多様な施設の運用管理を最適にサポートす
る統合型中央監視システム BUILDACTM-U」、
東芝レビュー、2009年、第64巻、第9号、第66~
69頁
甲第11号証 三菱電機株式会社、「GOT2000シリーズ 三菱グラ
フィックオペレーションターミナル」、2015年5月、
表紙、第2頁、第3頁、第41頁、裏表紙
甲第16号証 特開平10-97318号公報
なお、甲第16号証は、シーケンサがPLCであるとの技術常識を示すために提示したものである。
2 当審の判断
(1) 取消理由1(新規事項の追加)について
ア 具体的な指摘事項
本件特許の審査段階における、令和5年2月7日付けの手続補正は、請求項1の「前記制御部および前記監視部のそれぞれが異なる装置に備えられている」との記載を、「前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含むところ、補正後の「前記PLC」「が別個のコンピュータに備えられている」ことは、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内であるといえないから、補正事項1を含む前記手続補正は、本件当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものでない。
よって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
イ 新規事項の追加に対する判断
前記補正事項1に係る「前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」との発明特定事項は、本件訂正により、「前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており」との発明特定事項に訂正された。
そして、本件当初明細書及び図面の記載は、その後に手続補正されておらず、本件特許明細書及び図面の記載と同じであるから、訂正後の上記発明特定事項は、前記第2の2(1)ア(イ)で検討したのと同様な理由で、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。
ウ 取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。
(2) 取消理由2(明確性要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
設定登録時の請求項1には、「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」との発明特定事項が記載されているところ、当該発明特定事項の「PLC」「が別個のコンピュータに備えられている」ことの形態や構成を想定できないし、また、当該発明特定事項の「測定情報」と「PLC」との関係が明らかでないため、設定登録時の請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2~9に係る発明は明確でない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 明確性要件違反に対する判断
前記アで指摘した発明特定事項は、本件訂正により、「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており」との発明特定事項に訂正され、「PLC」と「コンピュータ」とが異なることや、「測定情報」と「PLC」との関係が明確になった。
したがって、本件発明1における発明特定事項に不明確な部分はないから、本件発明1は明確である。
また、本件発明1に係る請求項1の記載を引用する本件発明5~9についても同様である。
ウ 取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。
(3) 取消理由3(サポート要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
設定登録時の請求項1には、「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」との発明特定事項が記載されているところ、当該発明特定事項の「PLC」「が別個のコンピュータに備えられている」ことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面に記載も示唆もされていないから、当該発明特定事項を含む請求項1に係る発明は、そもそも発明の詳細な説明に記載された発明といえない。
また、本件発明の課題は、本件特許明細書の【0002】~【0006】の記載からして、全ての測定情報と駆動情報をPLCに送信する水処理プラントでは、大規模になると導入コスト及び稼働コストが増加するとの問題があったので、このような導入コスト及び稼働コストを低減できる水処理情報システムを提供することといえるところ、前記発明特定事項は、前記(2)アで指摘したとおり、「測定情報」と「PLC」との関係が明確でなく、このような発明特定事項を含む請求項1に係る発明は、全ての測定情報及び駆動情報がPLCを経由する水処理情報システムのような、前記課題を解決できない態様を包含することになるから、設定登録時の請求項1に係る発明は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
したがって、設定登録時の請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ サポート要件違反に対する判断
前記アで指摘した発明特定事項は、本件訂正により、「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部と、を備えており、前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており」との発明特定事項に訂正された。
そして、当該発明特定事項を含む本件発明1は、前記第2の2(1)ア(イ)及びイ(イ)での検討を踏まえると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
また、本件特許明細書には、「制御部21をPLCとし、監視部11を安価な制御装置とすることができる。その結果、導入コスト及び稼働コストを低減させることができる」こと(【0019】)、「水処理プラントが抱える問題点を把握することができ」、「この改善策が実行されることにより、水処理プラントの稼働コストが削減される。」こと(【0031】、【0039】)、「拠点42よりも拠点41の方が、稼働コストが低く処理水の品質が高い場合、拠点42は拠点41のノウハウを継承できる」こと(【0048】)、及び、「水処理装置32を駆動させる駆動情報のみが制御部21に送信される」ことにより、「制御部21に送信されるデータ容量が削減される。その結果、通信の遅延が防止される。また、制御部21の判定処理に要する時間も短縮される」こと(【0072】、【0073】)が記載されており、これらの記載事項を併せ考えれば、本件発明1は、当業者において、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また、本件発明1に係る請求項1の記載を引用する本件発明5~9についても事情は同じである。
ウ 取消理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由3に理由はない。
(4) 取消理由4(実施可能要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、設定登録時の請求項1に係る発明の「前記PLCおよび前記監視部のそれぞれが別個のコンピュータに備えられている」との発明特定事項の「前記PLC」「が別個のコンピュータに備えられている」ことについて何ら記載されておらず、また、このようなことが技術常識であるとの証拠もないため、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2~9に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 実施可能要件違反に対する判断
前記アで指摘した発明特定事項は、本件訂正により、「前記測定情報は前記PLCに送信されないように、前記監視部が前記PLCと異なるコンピュータに備えられており」との発明特定事項に訂正された。
そして、当該発明特定事項を含む本件発明1は、前記第2の2(1)ア(イ)及びイ(イ)での検討を踏まえると、本件特許明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載されているといえるから、発明の詳細な説明の当該記載に基づき、当業者において、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1を実施できるものといえる。
また、本件発明1に係る請求項1の記載を引用する本件発明5~9についても事情は同じである。
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1、5~9について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
ウ 取消理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由4に理由はない。
(5) 取消理由5(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
ア 甲第2号証について
(ア) 甲第2号証の記載事項について
甲第2号証には、「水処理施設における運転監視制御の表示装置」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は上水(浄水)場又は下水処理場等の水処現場における現場施設の監視又は制御装置側のデータを取り込み表示する水処理施設の監視装置に関する。」
b 「【0014】つまり1つの現場施設1と該現場施設1に対応する端末監視制御装置2とによって1つの上又は下水道施設3が形成されており、複数の上又は下水道施設3(各端末監視制御装置2)が、端末監視制御装置2側からデータ(情報)を得て各水処理現場a~hにおける水道施設3の作動状態を監視制御するホストコンピュータ4,サブホストコンピュータ6,監視端末7等に通信回線(NTT公衆回線)8又は専用回線9等を介してLAN接続されて水処理施設(複数の上又は下水道施設3)における運転監視制御機構が構築されている。」
c 「【0021】ここで上記端末監視制御装置2の構造と機能について簡単に説明する。上記端末監視制御装置2は、図2に示されるように現場施設1における作動用現場機器1aの駆動,停止等の運転を行うドライバ21と計装機器1bからのデータをフォローする信号変換器22とを備えた制御装置23と、該ドライバ21を制御するシーケンサ24と、運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みを行い、該データを処理するとともに上記シーケンサ24を制御する制御コンピュータ27とを備えた構造で、特開平9-24361号公報に示されるものと同様の機能を有したものとなっており、CRT等のディスプレイ26を備えるとともに、公衆回線8又は専用回線9を介する通信が通信装置であるモデム28又はネットワーク(LAN)アダプタ29等によって可能となっている。
【0022】このとき上記制御コンピュータ27には、現場施設1の運転を制御する運転制御機能,該運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みと該データを所定形式に処理して保存するデータ処理管理機能,監視用に処理されたデータをグラフィック的にディスプレイ表示可能に処理するグラフィック処理機能を備えた表示処理機能,モデム又はネットワークアダプタ等の通信装置を使用した公衆回線8又は専用回線9を介する通信をサポートする通信機能,上記各機能の一部又は全部が機能しないように制限する規制機能を実現させるためのプログラム(メインプログラム)を記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体が内蔵、つまり上記メインプログラムがインストールされている。」
d 「【図2】
[図:0001415299000006.jpg]
」
(イ) 甲第2号証に記載された発明(甲2発明)について
a 前記(ア)によれば、甲第2号証には、水処理施設の監視装置の現場施設1に対応する端末監視制御装置2(【0001】、【0014】)について、端末監視制御装置2が、現場施設1における作動用現場機器1aの運転を行うドライバ21、該ドライバ21を制御するシーケンサ24、現場施設1における計装機器1bからのデータをフォローする信号変換器22、運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みを行い、該データを処理するとともに上記シーケンサ24を制御する制御コンピュータ27を備えること(【0021】)、制御コンピュータ27には、現場施設1の運転を制御する運転制御機能、該運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みと該データを所定形式に処理して保存するデータ処理管理機能、監視用に処理されたデータをグラフィック的にディスプレイ表示可能に処理するグラフィック処理機能を備えた表示処理機能、モデム又はネットワークアダプタ等の通信装置を使用した公衆回線8又は専用回線9を介する通信をサポートする通信機能、上記各機能の一部又は全部が機能しないように制限する規制機能を実現させるためのプログラム(メインプログラム)を記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体が内蔵されていること(【0022】)が記載され、また、【図2】からは、計装機器1bからのデータは、シーケンサ24を経由せずに、信号変換器22から直接制御コンピュータ27に取り込まれることが見て取れる。
b これらの記載事項を整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「水処理施設の監視装置の現場施設1に対応する端末監視制御装置2であって、
現場施設1における作動用現場機器1aの運転を行うドライバ21と、ドライバ21を制御するシーケンサ24と、
現場施設1における計装機器1bからのデータをフォローする信号変換器22と、信号変換器22からのデータを直接取り込み、データを処理するとともにシーケンサ24を制御する制御コンピュータ27とを備え、
制御コンピュータ27は、現場施設1の運転を制御する運転制御機能、該運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みと該データを所定形式に処理して保存するデータ処理管理機能、監視用に処理されたデータをグラフィック的にディスプレイ表示可能に処理するグラフィック処理機能を備えた表示処理機能、モデム又はネットワークアダプタ等の通信装置を使用した公衆回線8又は専用回線9を介する通信をサポートする通信機能、上記各機能の一部又は全部が機能しないように制限する規制機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体が内蔵されている、端末監視制御装置2。」
イ 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明との対比
a 本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりである。
(a) 甲2発明の「水処理施設の監視装置の現場施設1に対応する端末監視制御装置2」は、本件発明1の「水処理情報システム」に相当する。
(b) 甲2発明の「シーケンサ24」は「水処理施設」の「現場施設1における作動用現場機器1a」を運転制御するものであるし、また、「シーケンサ」が「PLC」を示すことは技術常識である(必要であれば、甲第5号証の第261頁左欄第4行、甲第16号証の【0016】等を参照。)から、甲2発明の「シーケンサ24」は、本件発明1の「水処理装置の駆動を制御するPLC」に相当する。
(c) 甲2発明の「制御コンピュータ27」は、「運転制御及び監視のための現場施設1側からのデータの取り込みと該データを所定形式に処理して保存するデータ処理管理機能」を「実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読みとり可能な記録媒体が内蔵されている」から、本件発明1の「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部」を備えた「前記PLCと異なるコンピュータ」に相当する。
(d) 甲2発明において、「現場施設1側からのデータ」は、「計装機器1b」から「信号変換器22」にフォローされ、「信号変換器22」から「制御コンピュータ27」に「直接取り込」まれていることから、本件発明1の「前記測定情報は前記PLCに送信されない」との規定を満足する。
b 以上の対応関係を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、次の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
(相違点1)
監視部について、本件発明1は、「前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部と、前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部と、を有しており、前記提示部が、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」のに対して、甲2発明は、その点が明らかでない点。
(イ) 新規性・進歩性欠如についての判断
はじめに、本件発明1の新規性欠如について検討すると、相違点1は、実質的なものといえるから、本件発明1は、甲2発明であるといえない。
次に、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項の容易想到性について検討すると、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第10号証、及び、甲第11号証のいずれにも、「水処理情報システム」の「監視部」における「提示部」が、「原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」ことについて、何ら記載も示唆もされていないし、このことが周知技術であることを示す証拠もないから、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件発明5~9について
本件発明5~9は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明7、8は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明5~9は、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
エ 取消理由5についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由5に理由はない。
(6) 取消理由6(甲第5号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
ア 甲第5号証について
(ア) 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、「海水淡水化施設の計装・制御」(タイトル)に関して、次の事項が記載されている。
a 「1. システムのハードウェア構成
システムのハードウェア構成図を図1に示す.
システムは,制御装置として分散型制御装置(DCS)およびシーケンサ(PLC)を有し,運転操作は中央操作卓のコンピュータより行う.
・・・
現場計装品からの信号は,直接,DCSに入力される.」(第261頁左欄第1行~右欄第3行)
b 「
[図:0001415299000007.jpg]
」
(第261頁)
c 「1.2 PLCによる制御
DSCがプラント全体の総合的な制御を行うのに対し,各工程ごとに設置するシーケンサ(PLC)は,DCSからの起動・停止指令を受け,直接に電動機や弁などの制御対象に対して監視・制御を行なう機能をもつ.」(第262頁左欄第2~7行)
(イ) 甲第5号証に記載された発明(甲5発明)について
a 前記(ア)によれば、甲第5号証には、海水淡水化施設の計装・制御システムについて、システムは、制御装置として分散型制御装置(DCS)及びシーケンサ(PLC)を有し、運転操作は中央操作卓のコンピュータより行い、現場計装品からの信号は、直接,分散型制御装置(DCS)に入力されること(前記(ア)a、b)、及び、分散型制御装置(DCS)がプラント全体の総合的な制御を行うのに対し、各工程ごとに設置するシーケンサ(PLC)は、分散型制御装置(DCS)からの起動・停止指令を受け、直接に電動機や弁などの制御対象に対して監視・制御を行なう機能をもつこと(前記(ア)c)が記載されているといえる。
b これらの記載事項を整理すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「直接に電動機や弁などの制御対象に対して監視・制御を行なう機能をもつシーケンサ(PLC)と、現場計装品からの信号が直接入力される分散型制御装置(DCS)を有する、海水淡水化施設の計装・制御システム。」
イ 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲5発明との対比
a 本件発明1と甲5発明とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりである。
(a) 甲5発明の「海水淡水化施設の計装・制御システム」は、本件発明1の「水処理情報システム」に相当する。
(b) 甲5発明の「直接に電動機や弁などの制御対象に対して監視・制御を行なう機能をもつシーケンサ(PLC)」は、本件発明1の「水処理装置の駆動を制御するPLC」に相当する。
(c) 甲5発明の「現場計装品からの信号が直接入力される分散型制御装置(DCS)」は、入力された信号を監視する機能を当然に有しているといえるから、本件発明1の「前記水処理装置の駆動により処理される水及び/又はエネルギーを測定して得た測定情報を監視する監視部」が「前記測定情報は前記PLCに送信されないように」備えられている「前記PLCと異なるコンピュータ」に相当する。
b 以上の対応関係を踏まえると、本件発明1と甲5発明とは、次の点で相違し、その余の点で一致しているといえる。
(相違点2)
監視部について、本件発明1は、「前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する問題点を抽出する抽出部と、前記問題点に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示する提示部と、を有しており、前記提示部が、原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」のに対して、甲5発明は、その点が明らかでない点。
(イ) 新規性・進歩性欠如についての判断
はじめに、本件発明1の新規性欠如について検討すると、相違点2は、実質的なものといえるから、本件発明1は、甲5発明であるといえない。
次に、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項の容易想到性について検討すると、前記(5)イ(イ)での検討と同様に、甲第1号証、甲第2号証、甲第10号証、及び、甲第11号証の記載を参酌しても、甲5発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
したがって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 本件発明5~9について
本件発明5~9は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明6、7は、甲第5号証に記載された発明であるといえないし、また、本件発明5~9は、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第1号証、甲第2号証、甲第10号証、甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
エ 取消理由6についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由6に理由はない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 標記特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由のうち、標記特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
なお、申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、後記(3)に示したとおりである。
(1) 申立理由1(新規性欠如)
設定登録時の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1~9は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
設定登録時の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証~甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 証拠方法
甲第1号証 国際公開第2015/133049号
甲第2号証 特開平10-337556号公報
甲第3号証 上田淳、「プロセスオートメーションへのシーケンサ応用最
新技術」、紙パ技協誌、2006年3月、第60巻、第3号
、第26~36頁
甲第4号証 礒辺昭彦他、「汚泥再生処理センターにおけるPLCを適用
した分散型監視制御システム」、宮崎嘉次、「省エネ・安定
運転を指向した所内工業用水の最適化制御システム」、佐野
直人他、「PLCによる排水処理設備のリモート監視」、計
装、2004年、第47巻、第5号、第24~35頁
甲第5号証 松尾弘樹、「海水淡水化施設の計装・制御」、日本海水学会
誌、2004年、第58巻、第3号、第261~263頁
甲第6号証 三菱電機株式会社、「三菱電機FAリモートソリューション
」、2018年、表紙、第1~14頁、裏表紙
甲第7号証 国際公開第2015/173863号
甲第8号証 特開2021-37480号公報
甲第9号証 特開平10-192620号公報
甲第10号証 朝妻智裕他、「多様な施設の運用管理を最適にサポートす
る統合型中央監視システム BUILDACTM-U」、
東芝レビュー、2009年、第64巻、第9号、第66~
69頁
甲第11号証 三菱電機株式会社、「GOT2000シリーズ 三菱グラ
フィックオペレーションターミナル」、2015年5月、
表紙、第2頁、第3頁、第41頁、裏表紙
甲第12号証 goo辞書、「PLC(ピーエルシー)とは」、[online]
、[2023年10月6日検索]、インターネット<URL
:https://dictionary.goo.ne.jp/word/PLC/#jn-301022>
甲第13号証 電気と工事編集部編、「電気工事基礎用語事典」、第3版
、株式会社オーム社、平成26年11月30日、第114
~115頁、第316~317頁
甲第14号証 JIS B 3501:2004、平成16年6月20日
、財団法人日本規格協会
甲第15号証 三菱シーケンサテクニカルニュース、2002年6月、N
o.PLC-D-428-A 1/3
甲第16号証 特開平10-97318号公報
なお、甲第12号証~甲第16号証は、用語説明のために提出されたものである。
2 当審の判断
(1) 申立理由1(新規性欠如)について
ア 甲各号証について
(ア) 甲第1号証について
a 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「水処理システム、プログラム」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
(a)「[請求項1] 利用前の水に含まれている成分を監視する第1のセンサと、
利用後の廃水に含まれている成分を監視する第2のセンサと、
前記廃水に含まれる成分の少なくとも一部を取り除いて水質改善を行う処理部と、
前記第1のセンサが検出した成分に基づいて水の用途を複数の用途のいずれかに振り分ける分配部と、
前記廃水を前記処理部に引き渡して再処理を行うか前記廃水を廃棄するかの経路を切り替える切替部と、
前記第2のセンサが検出した前記廃水の成分の情報に基づいて前記切替部を制御し、かつ前記廃水の前記再処理を行う場合に、前記水質改善に関する指示の情報を前記処理部に与える制御部とを備える
ことを特徴とする水処理システム。」
(b) 「[請求項4] 前記第1のセンサおよび前記第2のセンサにより検出された前記成分に関する情報と前記情報を取得した日時とを対応させた履歴情報を収集する管理部をさらに備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理システム。」
(c) 「[0071] ところで、上述した構成例において、利用前の水の成分は第1のセンサ21が監視し、廃水の成分は第2のセンサ22が監視し、また、必要に応じて、原水の成分を第3のセンサ23が監視している。第1のセンサ21および第2のセンサ22が監視している成分に関する情報を、その情報を取得した日時に対応させ、履歴情報として記憶しておけば、水処理システム10の動作を管理することが可能になる。履歴情報は、第1のセンサ21により検出された成分(第1の成分)に関する情報とこの情報を管理部24が取得した日時とを対応させた情報を含む。また、履歴情報は、第2のセンサ22により検出された成分(第2の成分)に関する情報とこの情報を管理部24が取得した日時とを対応させた情報を含む。履歴情報は、第1のセンサ21と第2のセンサ22とが監視した成分の情報だけではなく、第3のセンサ23が監視した成分の情報も加えることが望ましい。履歴情報に含める日時は、制御部20が備える内蔵時計により計時される。
[0072] 履歴情報を収集すれば、第1の処理部111、第2の処理部112の経時変化などによる性能の劣化の程度を知ることが可能になる。また、図2に示した構成では、第1のセンサ21として機能する3個のセンサ213、214、215を備えるから、処理部1111、1112、1113ごとに性能の劣化の程度を知ることが可能である。したがって、履歴情報に基づいて、モジュールの交換時期あるいはモジュールの故障の検知が可能になる。ここに、このような目的の場合、たとえば、1日、1週間、1ヶ月などから選択される時間間隔で履歴情報を収集すればよい。
[0073]
図3に示すように、履歴情報は管理部24が収集する。管理部24は、制御部20に設けることが可能であるが、制御部20は基本的に水処理システム10ごとに設けられているから、管理部24が制御部20に設けられている場合、単独の水処理システム10に関する履歴情報しか収集できない。そのため、図3に示す構成例では、インターネット回線あるいは移動体通信網のような電気通信回線33を通して制御部20と通信するサーバ30に管理部24を設けている。このサーバ30は、履歴情報を収集して記憶する記憶部31を備え、さらに、記憶部31が記憶している履歴情報を用いて第1の処理部111、第2の処理部112について劣化の程度を判断する監視部32を備える。すなわち、記憶部31および監視部32により、管理部24が構成される。上記より、記憶部31は、履歴情報を記憶する。具体的には、記憶部31は、電気通信回線33を通して収集された履歴情報を記憶する。」
(d) 「[図3]
[図:0001415299000008.jpg]
」
b 甲第1号証に記載された発明(甲1発明)
(a) 前記aによれば、甲第1号証には、利用前の水に含まれている成分を監視する第1のセンサと、利用後の廃水に含まれている成分を監視する第2のセンサと、前記廃水に含まれる成分の少なくとも一部を取り除いて水質改善を行う処理部と、前記第1のセンサが検出した成分に基づいて水の用途を複数の用途のいずれかに振り分ける分配部と、前記廃水を前記処理部に引き渡して再処理を行うか前記廃水を廃棄するかの経路を切り替える切替部と、前記第2のセンサが検出した前記廃水の成分の情報に基づいて前記切替部を制御し、かつ前記廃水の前記再処理を行う場合に、前記水質改善に関する指示の情報を前記処理部に与える制御部と、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサにより検出された前記成分に関する情報と前記情報を取得した日時とを対応させた履歴情報を収集する管理部とを備えた水処理システム([請求項1]、[請求項4])、及び、前記管理部は、第1のセンサ21及び第2のセンサ22が監視している成分に関する情報を、その情報を取得した日時に対応させ、履歴情報として記憶する記憶部31と、記憶部31が記憶している履歴情報を用いて、モジュールの交換時期あるいはモジュールの故障の検知を判断する監視部32を備えること([0071]~[0073]、[図3])が記載されているといえる。
(b) これらの記載事項を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「利用前の水に含まれている成分を監視する第1のセンサと、利用後の廃水に含まれている成分を監視する第2のセンサと、前記廃水に含まれる成分の少なくとも一部を取り除いて水質改善を行う処理部と、前記第1のセンサが検出した成分に基づいて水の用途を複数の用途のいずれかに振り分ける分配部と、前記廃水を前記処理部に引き渡して再処理を行うか前記廃水を廃棄するかの経路を切り替える切替部と、前記第2のセンサが検出した前記廃水の成分の情報に基づいて前記切替部を制御し、かつ前記廃水の前記再処理を行う場合に、前記水質改善に関する指示の情報を前記処理部に与える制御部と、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサにより検出された前記成分に関する情報と前記情報を取得した日時とを対応させた履歴情報を収集する管理部とを備え、
前記管理部は、前記履歴情報を記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶している履歴情報を用いて、モジュールの交換時期あるいはモジュールの故障の検知を判断する監視部を備える、水処理システム。」
(イ) 甲第3号証について
a 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「プロセスオートメーションへのシーケンサ応用最新技術」(タイトル)に関して、次の事項が記載されている。
(a) 「4.2 最新のシーケンサによる計装の具体化
最新のシーケンサによる計装の具体化として,当社「MELSEC計装」のシステム構成を以下に示す(図13)。
4.3 シーケンサによる計装の導入分野
シーケンサによる計装の代表的な導入分野の例を表3に示す。
4.4 シーケンサによる計装の導入事例
図14にシステム構成を示す。」(第33頁左欄第1~9行)
(b) 「
[図:0001415299000009.jpg]
」(第33頁)
(c) 「
[図:0001415299000010.jpg]
」(第34頁)
(d) 「
[図:0001415299000011.jpg]
」(第34頁)
b 甲第3号証に記載された発明(甲3発明)
(a) 前記aによれば、甲第3号証には、MELSEC計装システム(前記a(a))について、その導入分野例として、上下水道のろ過,薬注,汚泥処理などを制御対象とすること(前記a(c))が記載され、図13(前記a(b))及び図14(前記a(d))からは、各工程を監視するプロセスCPU等を備えたシーケンサ間をMELSEC-NETで接続し、これらとリモート監視ステーションとをEthernetで接続することが見て取れる。
(b) これらの記載事項を整理すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「上下水道のろ過、薬注、汚泥処理などを制御対象として監視するMELSEC計装システムであって、各工程を監視するプロセスCPU等を備えたシーケンサ間をMELSEC-NETで接続し、これらとリモート監視ステーションとをEthernetで接続する、システム。」
(ウ) 甲第4号証について
a 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「汚泥再生処理センターにおけるPLCを適用した分散型監視制御システム」(タイトル)に関して、次の事項が記載されている。
(a) 「ここに,汚泥再生処理センターにおいてPLCを適用した分散型監視制御装置「Vision-Pro System」の例(写真1)を紹介する。」(第24頁左欄第20~22行)
(b) 「2. システム構成
Vision-Pro Systemは,プラントの制御・操作を行う制御系,運転管理・監視を行う情報系,制御系と情報系の間で信号の授受を行う管理局で構成された分散型監視制御システムである(図1)。
制御系は,設備区分ごとにPLCを設置し,その1台のPLCて対象機器に対し,運転操作,PID制御や比率制御といったPA(Plant Automation)向けの演算制御を行い,設備区分内の機器に対しほぼ全ての運転制御を行っている。
情報系は,監視操作用パソコン,プリンタ等のOA機器をEthernetで接続し,プリンタの共有化,データファイルの共有化を行っている。・・・
管理局は,情報系・制御系との信号の授受をスムーズに行うために設置するPLCで,運転制御・管理なとは一切行わず信号の授受のみを行う。」(第24頁左欄第23行~右欄第12行)
(c) 「
[図:0001415299000012.jpg]
」
(第25頁)
b 甲第4号証に記載された発明(甲4発明)
(a) 前記aによれば、甲第4号証には、汚泥再生処理センターにおいてPLCを適用した分散型監視制御装置「Vision-Pro System」が、プラントの制御・操作を行う制御系、運転管理・監視を行う情報系、制御系と情報系の間で信号の授受を行う管理局で構成された分散型監視制御システムであって、制御系では、設備区分ごとにPLCを設置し、その1台のPLCで設備区分内の機器に対しほぼ全ての運転制御を行ない、情報系では、監視操作用OA機器をEthernetで接続し、データファイルの共有化を行ない、管理局では、情報系・制御系との信号の授受をスムーズに行うために設置するPLCで、運転制御・管理なとは一切行わず信号の授受のみを行うことが記載されているといえる。
(b) これらの記載事項を整理すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラントの制御・操作を行う制御系、運転管理・監視を行う情報系、制御系と情報系の間で信号の授受を行う管理局で構成された、汚泥再生処理センターにおいてPLCを適用した分散型監視制御装置であって、
制御系は、設備区分ごとに設置したPLCであって、設備区分内の機器に対しほぼ全ての運転制御を行うPLCであり、
情報系は、Ethernetで接続された監視操作用のOA機器であり、
管理局は、情報系・制御系との信号の授受のみを行うために設置したPLCである、分散型監視制御装置。」
イ 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1は、「原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」「提示部」を備えているのに対して、甲1発明は、そのような提示部を備えていない点で少なくとも相違している(以下、この相違点を「相違点3」という。)。
そして、当該相違点3は実質的なものであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。
(イ) 本件発明1と甲3発明又は甲4発明との対比・判断
本件発明1と甲3発明又は甲4発明とを対比すると、前記(ア)の相違点3と同様な点で少なくとも相違するから、本件発明1は、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明であるといえない。
ウ 本件発明5~9について
本件発明5~9は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記イ(ア)の本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明5~9は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。
エ 申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)について
ア 本件発明1について
まず、甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如について検討すると、前記(1)イ(ア)で検討したとおり、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも相違点3で相違している。
そこで、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項の容易想到性について検討すると、甲第2号証~甲第11号証のいずれにも、「水処理情報システム」の「監視部」が、「原水条件がそれぞれ異なる複数の拠点における前記測定情報に含まれる値の傾向に基づいて、前記水処理装置に関する改善策を提示するものであって、第1拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期と、第2拠点における原水条件と、に基づいて、前記第2拠点における前記水処理装置が含む膜の洗浄又は交換を行う時期を推定して提示する」「提示部」を備えていることについて、何ら記載も示唆もされていないし、このことが周知技術であることを示す証拠もないから、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項をなすことは、当業者にとって容易想到の事項であるといえない。
また、甲第2号証~甲第11号証のいずれかを主たる証拠として検討しても同様である。
したがって、本件発明1は、甲第1号証~甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
イ 本件発明5~9について
本件発明5~9は、いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに限定が付されたものであるから、前記アの本件発明1についての検討と同様の理由により、本件発明5~9は、甲第1号証~甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1、5~9を取り消すことはできない。また、他に本件特許1、5~9を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2~4は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、これらの請求項に係る本件特許2~4に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701206