特許異議申立
2023-701167
油性化粧料
- 審判番号
- 2023-701167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-063708
- 登録番号
- 7269064
- 請求日
- 2023年11月02日
- 審決日
- 2024年07月22日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社コーセー
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【権利者代理人】井上 美和子
- 【異議申立人】脇谷 治義
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 野田 定文
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7269064号発明「油性化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7269064号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7269064号の請求項1~4、6及び7に係る特許を維持する。
特許第7269064号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7269064号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成31年3月28日に出願され、令和5年4月25日に特許権の設定登録がされ、同年5月8日にその特許掲載公報が発行された。その後、同年11月2日に、本件特許の請求項1~7に係る特許に対し、特許異議申立人 脇谷 治義 (以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和 6年 2月20日付け 取消理由通知
同年 4月10日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 同月30日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和6年4月30日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人による意見書の提出はなかった。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
令和6年4月10日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、
「特許第7269064号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」
というものであり、その訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~4からなるものである。
なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
訂正1-1:
特許請求の範囲の請求項1に、成分(A)の「油剤」の種類について、
「(A)分子中に水酸基を2つ以上含む油剤(ただし、下記成分(C)に該当するものを除く)」
と記載されているのを、
「(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」
に訂正する。
訂正1-2:
特許請求の範囲の請求項1に、
「成分(A)及び(B)の含有質量割合(A)/(B)」
と記載されているのを、
「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項に記載」
と記載されているのを、
「請求項1~4のいずれか1項に記載」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか1項に記載」
と記載されているのを、
「請求項1~4、6のいずれか1項に記載」
に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
3 訂正事項についての訂正要件の判断
(1)訂正事項1-1について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1-1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、成分(A)の「油剤」の種類として、「分子中に水酸基を2つ以上含む油剤(ただし、下記成分(C)に該当するものを除く)」(決定注:「下記成分(C)」とは、「(C)デキストリン脂肪酸エステル」のことである。)と記載されているのを、当該「油剤」の種類の一種であって、「(C)デキストリン脂肪酸エステル」に該当しない「重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」とし、当該「油剤」の種類の範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5には、「前記成分(A)が重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1~4・・・に記載の油性化粧料。」(摘記中の下線は当審合議体が付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同じ。)と記載されており、当該成分(A)の「油剤」の種類の一種として「重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」が記載されているから、本件訂正の訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1-1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項1-1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1における「成分(A)」の「油剤」の種類を限定するものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項1-1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項1-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の「成分(A)及び(B)の含有質量割合(A)/(B)」について、「含有質量割合(A)/(B)」の算出対象である「成分(A)及び(B)」が何であるのか、当該記載では必ずしも明らかでなく、不明瞭なものとなっていた。
そこで、本件訂正の訂正事項1-2に係る訂正は、訂正前の請求項1における上記「成分(A)及び(B)」が、請求項1において当該記載の前に記載されている「前記成分(A)及び前記成分(B)」であることを明確化するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1-2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1-2の「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)」との訂正は、訂正前の請求項1における「成分(A)及び(B)」が、請求項1において当該記載の前に記載されている「成分(A)~(C)」のうち、「成分(A)」及び「成分(B)」を意味することを明確化するものであって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1-2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項1-2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1における「成分(A)及び(B)」が、「前記成分(A)及び前記成分(B)」であることに明確化するものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項1-2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項5を削除するものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項5を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項3に係る訂正は、訂正事項2により訂正前の請求項5が削除されることに伴い、訂正前の請求項6において、請求項6が引用する請求項1~5のうち、請求項5を削除するものであり、また、本件訂正の訂正事項4に係る訂正は、同様に、訂正前の請求項7において、請求項7が引用する請求項1~6のうち、請求項5を削除するものであって、それぞれ、引用する請求項を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項3及び4に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件訂正の訂正事項3及び4に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正後の請求項6及び7において、それぞれ、訂正前の請求項6及び7が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、本件訂正の訂正事項3及び4に係る訂正は、それぞれ、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
本件訂正の訂正事項3及び4に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正後の請求項6及び7において、それぞれ、訂正前の請求項6及び7が引用する請求項の一部を削除して、引用する請求項を限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正の訂正事項3及び4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)独立特許要件について
本件訂正の訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を訂正の目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~4、6及び7に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 本件訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和6年4月10日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~4、6及び7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」、「本件発明6」及び「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4、6及び7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める(下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。
「【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体
(C)デキストリン脂肪酸エステル
を含有し、前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が1~20である油性化粧料。
【請求項2】
前記成分(B)の含有量が化粧料全量中3~20質量%である請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
さらに成分(D)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する請求項1または2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記成分(D)が(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーである請求項3に記載の油性化粧料。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記成分(B)が(VP/エイコセン)コポリマーまたはトリコンタニルPVPである請求項1~4のいずれか1項に記載の油性化粧料。
【請求項7】
前記成分(C)がパルミチン酸デキストリン及び/または(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンである請求項1~4、6のいずれか1項に記載の油性化粧料。」
第4 申立理由及び取消理由の概要
1 申立理由の概要及び証拠方法
申立人の主張する特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の全体の記載からみて、下記(1)のとおりと認められる。また、申立人は、証拠方法として、下記(2)の甲第1号証(以下「甲1」という。)を申立書に添付して提出した。
(1)申立理由の概要
ア 申立理由1(新規性欠如)
本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
イ 申立理由2(サポート要件違反)
本件訂正前の特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明は、「油性化粧料」が含有する「成分(A)」として、「分子中に水酸基を2つ以上含む油剤(ただし、下記成分(C)に該当するものを除く)」と特定しているが、発明の詳細な説明の実施例において、具体的に使用され、課題が解決されていることを確認できる「成分(A)」は、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」のみである(段落【0025】、【0028】及び【0029】)。
発明の詳細な説明の段落【0010】には、「成分(A)」として多数の化合物が例示されているものの、これら全てが「ポリグリセリン脂肪酸エステル」と同等に課題解決できるかについては何ら説明がされていない。
したがって、発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識に照らしても、当業者が本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明の課題を解決することができると認識できる範囲のものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(2)証拠方法
甲1:特開2009-235017号公報
2 当審合議体が通知した取消理由の概要及び引用した文献
本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る特許に対し、当審合議体が令和6年2月20日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記(1)のとおりであり、当審合議体が、申立人の提出した甲1に追加して引用した参考資料1及び2(以下「参考1」及び「参考2」という。)は、下記(2)のとおりである。
(1)取消理由の概要
ア 取消理由1(新規性欠如)
本件訂正前の請求項1、2、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件訂正前の請求項1、2、6及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
イ 取消理由2(進歩性欠如)
本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
ウ 取消理由3(サポート要件違反)
本件訂正前の特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
本件特許明細書の実施例における【表3】「比較品5」は、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明に該当する発明といえるところ、「比較品5」は、その「評価項目及び判定結果」をみると、本件発明の課題を解決していない。
そうすると、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明には、本件発明の課題を解決できないものが包含されているといえるから、本件訂正前の請求項1~4、6及び7は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
(2)当審合議体が追加して引用した文献
参考1:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「化粧品配合成分「水添ロジン酸ペンタエリスリチル」の総合レポート 水添ロジン酸ペンタエリスリチルの基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2022年11月13日、[online]、[令和6年2月7日検索]、インターネットURL: https://cosmetic-ingredients.org/viscosity-increasing-agents/3399/
参考2:「表示名称、原料、処方例の検索ができる化粧品技術者のためのデータベースサイト Cosmetic-Info.jp」ウェブサイト、「製品詳細 レオパールKL2」、[online]、[令和6年2月7日検索]、インターネットURL: https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=7442
参考1は、本件特許の出願後に公開された文献であり、参考2は、公開日不明の文献であるが、化学的事実又は本件特許出願時の技術常識を示すものと認められる。
なお、取消理由1(新規性欠如)は、上記1の申立理由1(新規性欠如)において、本件訂正前の請求項1、2、6及び7に係る発明に対応するものであり、取消理由3(サポート要件違反)は、上記1の申立理由2(サポート要件違反)に対応するものである。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件請求項1~4、6及び7に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
その理由の詳細は以下のとおりである。
1 当審合議体が通知した取消理由についての判断
(1)取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲1、並びに、参考1及び参考2の記載事項
(ア)甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
なお、摘記中の下線は、特に注釈がない限り、当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の文献の摘記についても同様である。
甲1a
「【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体
(C)分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000の常温で液状のエステル油
(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体を含有することを特徴とする非固形状油性化粧料。
【請求項2】
成分(C)が、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の非固形状油性化粧料。
【請求項3】
メイクアップ化粧料であることを特徴とする請求項1又は2記載の非固形状油性化粧料。」
甲1b
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の市場ニーズは、塗付膜の均一な仕上がりによるツヤの付与だけでは物足りず、保湿性や使用性、化粧持ちに関して以前に比べ高い品質が要求されるようになってきた。近年、化粧持ちを向上させるために、ワックスや油溶性樹脂等による粉体表面処理技術の検討がなされてきたが、耐水性や耐油性が飛躍的に向上したものの、その反面、処理粉体は非常に分散性が悪いため、不均一な膜となりツヤのない塗布膜となっていた。また、発色性を向上させるために、顔料分散性を向上させる技術が検討されているものの、顔料分散性だけでは塗布膜の不均一性を解消することができず、ツヤのない塗布膜となっていた。このように、従来技術においては、ツヤ持ち効果と使用性(軽さ、なめらかさ)、保湿効果の持続性、化粧持ち効果、経時安定性等をすべて同時に具現化することは技術的に困難であった。そこで、粉体分散性が良く、ツヤ持ち効果に優れたムラ付きの無い均一な塗付膜を長時間持続することができ、塗布後の化粧膜に耐水性を与えるとともに、化粧膜をしっかり固着させ、化粧膜自体が強固であることで、保湿効果の持続性、化粧持ち効果、経時安定性、使用性(軽さ、なめらかさ)に優れた非固形状油性化粧料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、成分(A)デキストリン脂肪酸エステル、成分(B)α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、成分(C)分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000の常温で液状のエステル油、及び、成分(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで撥水撥油処理をした粉体を用いることで、ムラ付きの無い均一な塗付膜を長時間持続することでツヤ持ち効果に優れた化粧料が得られることを見出した。成分(D)は粉体分散性が良く、化粧膜中で凝集せず均一に分散しているため、化粧持ちや使用性、化粧膜の均一性に優れ、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を組み合わせることで、塗布後の化粧膜に耐水性を与え、化粧膜をしっかり固着させ、化粧膜自体が強固であることで、保湿効果の持続性、化粧持ち効果、経時安定性、使用性(軽さ、なめらかさ)に優れ、更にはツヤ持ち効果に優れたムラ付きの無い均一な塗付膜を長時間持続することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(D)、
(A)デキストリン脂肪酸エステル
(B)α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体
(C)分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000の常温で液状のエステル油
(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体
を含有することを特徴とする非固形状油性化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の非固形状油性化粧料は、塗布後の化粧膜に耐水性を与えるとともに、化粧膜をしっかり固着させ、化粧膜自体が強固であることで、保湿効果の持続や化粧持ち効果に優れ、しかも、ツヤ持ち効果、使用時の軽さ、なめらかさ、経時安定性にも優れた非固形状油性化粧料に関するものである。」
甲1c
「【0009】
本発明の非固形状油性化粧料に用いられる成分(A)のデキストリン脂肪酸エステルとしては、デキストリンと好ましくは炭素数8~22の高級脂肪酸とのエステルが用いられ、具体的には、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン等が挙げられる。このうちパルミチン酸デキストリンが経時安定性や、使用性面から最も好ましい。これらのデキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、「レオパールKL」「レオパールKE」「レオパールTT」「レオパールTL」(以上、千葉製粉社製)等が挙げられる。
【0010】
本発明の非固形状油性化粧料における成分(A)の含有量は特に限定されないが、全量中0.1~20質量%(以下、単に「%」で示す。)が好ましく、更に、1~10%が特に好ましい。含有量がこの範囲であれば軽く、なめらかな使用性、良好な粉体分散性から生じるツヤ持ち効果、化粧持ち及び経時安定性の観点から良好なものが得られる。また、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
本発明の非固形状油性化粧料に用いられる成分(B)α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体は、α-オレフィンとビニルピロリドンで構成される共重合体で、油膜を作る皮膜形成能があり、化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができる。成分(B)の共重合体を構成するα-オレフィンとしては、ヘキサデセンやエイコセン、トリアコンテン等が挙げられ、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体の市販品としてはANTARON V-220、GANEX V-220(以上、ISP社製)、UNIMER U-15(INDUCHEM社製)が例示でき、ヘキサデセン・ビニルピロリドン共重合体の市販品として、ANTARON V-216(ISP社製)、UNIMER U-151(INDUCHEM社製)が例示でき、トリアコンタニル・ビニルピロリドン共重合体の市販品として、ANTARON WP-600(ISP社製)、UNIMER U-6(INDUCHEM社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明の非固形状油性化粧料における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~20%であり、より好ましくは1~10%である。この範囲であれば保湿効果の持続や化粧持ち及び経時安定性の観点から良好なものが得られる。また、これらの皮膜形成剤は必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
本発明の非固形状油性化粧料に用いられる成分(C)としては、分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000の常温で液状のエステル油が用いられる。分子量500~1000であると保湿効果や経時安定性の点で好ましい。分子量300未満は、肌や睫毛等に対する付着性が弱く、期待する保湿効果も得られない。更に、分子量1000以上では、肌や睫毛等に対する付着性が強いため、化粧持ちは向上するものの、使用性が非常に悪くなる。成分(C)の分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000のエステル油は、具体的には、例えば乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、本発明の保湿効果をより高めることができ、かつ経時安定性が良好なものとしては、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル等を例示することができる。
【0014】
本発明の非固形状油性化粧料における成分(C)の含有量は特に限定されないが、全量中0.1~90%が好ましく、更に、1~50%が特に好ましい。含有量がこの範囲であれば、使用性の点で優れたものが得られる。また、これらのエステル油剤は必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
・・・
【0021】
本発明の非固形状油性化粧料には、上記必須成分の他に、通常化粧料に配合される成分として、炭化水素油、エステル油、植物油、抱水性油剤、シリコーン油、シリコーン誘導体等の油性成分、無機顔料、有機顔料及び体質顔料等の粉体およびそれらのシリコーン処理物や成分(D)以外のフッ素化合物処理物、界面活性剤、水や多価アルコール、低級アルコール、水溶性高分子、保湿剤等の水性成分、繊維、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、リパーゼやプロテアーゼ等の酵素類、レゾルシンやイオウ等の各種薬剤、清涼剤、色素、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0022】
上記必須成分以外の油性成分としては、化粧品に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、パラフィンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、セレシンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ホホバ油、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ト
リメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、蔗糖脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
・・・
【0024】
非固形状油性化粧料の一態様であるメイクアップ化粧料においては粉体を含有することが多いが、その粉体の分散性向上を目的で、界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。」
甲1d
「【0030】
実施例1~6及び比較例1~6:口紅(液状)
下記表1に示す処方の口紅(液状)を調製し、経時安定性、使用性(軽さ、なめらかさ)、化粧持ち効果、ツヤ持ち効果、保湿効果の持続について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
使用したトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、イソプロピルアルコールに粉体を添加分散し、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを添加する。そして、加熱混合することで表面処理し、次に、乾燥して溶剤を揮発させ、最後に粉砕処理を行って得たものである。
【0031】
【表1】
[図:0001415296000001.jpg]
【0032】
*1:レオパール KL(千葉製粉社製)
*2:レオパール TT(千葉製粉社製)
*3:平均分子量1000
*4:エステルガム HP(荒川化学工業社製)
*5:リンゴ酸ジイソステアリル
*6:トリイソステアリン酸ジグリセリル
*7:ANTARON V-220(ISP社製)
*8:AEROSIL 200(日本アエロジル社製)
(製造方法)
A:成分1~10を100℃で均一に溶解混合する。
B:A成分に成分11~21を添加し均一に混合する。
C:Bを塗付体付き容器に流し込み、冷却して口紅(液状)を得た。
【0033】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目)
イ.経時安定性
ロ.使用性(軽さ、なめらかさ)
ハ.化粧持ち効果
ニ.ツヤ持ち効果
ホ.保湿効果の持続性
ロについては、各試料について専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が絶対評価基準1にて評点を付け、パネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、判定基準1により判定した。
ハ~ホについては、各試料を唇に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後の色残りによる化粧持ち効果、油膜に起因するツヤ持ち効果、保湿効果の持続性について、パネル各人が絶対評価基準1にて評点を付け、パネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、判定基準1により判定した。
イの経時安定性は、室温、40℃にて6ヶ月放置した後、各試料の外観を下記評価基準2により評価し、その平均値を算出し、判定基準2により判定した。
尚、表1には、判定と()内に評点の平均値を記載した。
【0034】
<使用性(軽さ、なめらかさ)、化粧持ち効果、ツヤ持ち効果、保湿効果の持続性評価>
絶対評価基準:1
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
【0035】
判定基準:1
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える
○ :3点を超える5点以下
△ :1点を超える3点以下
× :1点以下
【0036】
<経時安定性評価>
絶対評価基準:2
4 :室温放置と40℃放置の差がなく均一である。
3 :40℃放置の表面に僅かに分離が見られるが、問題ない。
2 :40℃放置の表面に明らかに分離が見られる。
1 :室温放置に亀裂が見られ、室温及び40℃放置の双方の表面に分離が見られる。
【0037】
判定基準:2
(判定): (評点の平均点) :(評価)
◎ :4.0点 :非常に良好
○ :3.0点以上4.0点未満 :良好
△ :2.0点以上3.0点未満 :やや不良
× :2.0点未満 :不良
【0038】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~6の口紅(液状)は、比較例1~6の口紅(液状)に比べ、経時安定性、使用性(軽さ、なめらかさ)、化粧持ち効果、ツヤ持ち効果、保湿効果の持続の全てにおいて優れたものであった。これに対して、成分(A)の配合されていない比較例1では化粧料をゲル化する能力や粉体を分散する能力が低下するので、特に経時安定性、使用性、化粧持ち効果、ツヤ持ち効果の点で満足いくものが得られなかった。また、成分(B)の配合されていない比較例2では皮膜形成能力が弱いため、特に経時安定性、使用性、化粧持ち効果、保湿効果の持続の点で、満足いくものが得られなかった。成分(B)の代わりに保湿効果の高いグリセリンを含有した比較例3では一時的な保湿効果はあるものの、保湿効果の持続性に欠け、さらにベタツキが付与されるため使用性も悪くなるなど、全ての点において満足いくものが得られなかった。成分(B)の代わりに皮膜形成能力のあるポリエチレンワックスを含有した比較例4は皮膜形成能力があるものの保湿効果の持続性に欠け、さらにポリエチレンワックスから生じる固形分の影響で、使用性(軽さ、なめらかさ)、塗布膜のツヤ持ち効果が悪くなるなど、全ての点において満足いくものが得られなかった。成分(C)が配合されていない比較例5では全体の粘度が上がってしまい、特に使用性の点で満足いくものが得られなかった。成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体をフルオロアルコールリン酸で表面処理した粉体に替えた比較例6は、粉体分散性不良を要因とする化粧膜の不均一性から、使用性、ツヤ持ち効果の点において満足いくものが得られなかった。」
(イ)参考1の記載事項
参考1には、次の事項が記載されている。
参考1a
「水添ロジン酸ペンタエリスリチルの基本情報・配合目的・安全性
・・・
[図:0001415296000002.jpg]
化粧品表示名 水添ロジン酸ペンタエリスリチル
INCI名 Pentaerythrityl Hydrogenated Rosinate
配合目的 増粘 など 」(標題、及び、標題下~目次上の説明)
参考1b
「1.基本情報
1.1.定義
以下の化学式で表されるペンタエリスリトールのヒドロキシ基(-OH)にロジン酸のカルボキシ基(-COOH)を脱水縮合(*1)したエステルです[1a]。
・・・
[図:0001415296000003.jpg]
1.2.物性・性状
水添ロジン酸ペンタエリスリチルの物性・性状は(*2)、
・・・
状態 琥珀色の固体
軟化点(℃) 98
溶解性 炭化水素など非極性液体に可溶
このように報告されています[2][3a]。」(目次下の「1.基本情報 1.1.定義、及び、1.2.物性・性状)
(ウ)参考2の記載事項
参考2には、次の事項が記載されている。
参考2a
「製品詳細
レオパールKL2
化粧品表示名称 パルミチン酸デキストリン」
・・・
製造元 千葉製粉株式会社 」(標題及び標題下の説明)
イ 甲1に記載された発明
甲1には、請求項1に、次の成分(A)~(D);
(A)デキストリン脂肪酸エステル、
(B)α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、
(C)分子内に1個の水酸基を有する分子量300~1000の常温で液状のエステル油、及び、
(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体を含有する非固形状油性化粧料が記載されており(甲1a)、当該「非固形状油性化粧料」の具体例として、実施例1~5の「口紅(液状)」の含有成分とその含有量が、それぞれの「評価項目及び判定結果」とともに記載され(甲1d【表1】)、【表1】中の成分である「デキストリン脂肪酸エステル*1」、「成分(C):液状のエステル油*5」、「成分(C):液状のエステル油*6」及び「α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体*7」の「*1」、「*5」、「*6」及び「*7」について、それぞれ「*1:レオパール KL(千葉製粉社製)」、「*5:リンゴ酸ジイソステアリル」、「*6:トリイソステアリン酸ジグリセリル」及び「*7:ANTARON V-220(ISP社製)」と記載されている(甲1d【0032】)。
この非固形状油性化粧料のうち、代表的な実施例として、実施例1に着目して以下検討すると、甲1には、実施例1の口紅(液状)の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「デキストリン脂肪酸エステル(レオパール KL(千葉製粉社製))7質量%
水添ポリイソブテン 残量
水添ロジン酸ペンタエリスリチル 5質量%
流動パラフィン 10質量%
2-エチルヘキサン酸セチル 10質量%
成分(C):液状のエステル油(リンゴ酸ジイソステアリル) 15質量%
成分(C):液状のエステル油(トリイソステアリン酸ジグリセリル)
20質量%
α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体(ANTARON V-220
(ISP社製)) 5質量%
無水ケイ酸 3質量%
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン5%処理タルク 6質量%
タルク 2質量%
p-メトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル 1質量%
α-トコフェノール 0.1質量%
赤色202号 0.1質量%
香料 適宜
防腐剤 適宜
からなる液状の口紅。 」
ウ 本件発明1について
(ア)甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における「α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体(ANTARON V-220(ISP社製))」について、「ANTARON V-220(ISP社製)」は、甲1の段落0011の記載より、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体の市販品であると理解できる(甲1c)。
エイコセンは炭素数20のαオレフィンであり、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体は、「炭素数20のαオレフィンとビニルピロリドンとの共重合体」であるから、「炭素数18以上のαオレフィンとビニルピロリドンとの共重合体」といえる。
そうすると、甲1発明における「α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体(ANTARON V-220(ISP社製))」は、本件発明1における「(B)炭素数18以上のαオレフィンとビニルピロリドンとの共重合体」に相当する。
b 甲1発明における「デキストリン脂肪酸エステル(レオパール KL(千葉製粉社製))」は、本件発明1における「(C)デキストリン脂肪酸エステル」に相当する。
c 甲1発明における「液状の口紅」は、甲1の請求項1に係る発明の「非固形状油性化粧料」の具体例であり、油性化粧料といえるから、本件発明1の「油性化粧料」に相当する。
d 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「 次の成分(B)及び(C);
(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体
(C)デキストリン脂肪酸エステル
を含有する、油性化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:
油性化粧料が、本件発明1では、「成分(A)」として、「(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有し、かつ、「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が1~20である」のに対し、甲1発明では、「(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有しておらず、「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が0」である点。
(イ)相違点の判断
a 新規性について
相違点について検討する。
甲1発明には、本件発明1における「(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」に該当する成分は、含まれていないから、上記相違点は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
上記相違点について、以下検討する。
甲1には、粉体を含有するメイクアップ化粧料において、粉体の分散性向上の目的で、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤を使用することができることが記載されている(甲1cの【0024】)。
しかしながら、本件発明1は、べたつきのない軽くなめらかな伸び広がりを有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のあるという効果を有する油性化粧料を得るために、「分子中に水酸基を2つ以上有する油剤」の中でも、特定の重合度を有したポリグリセリン脂肪酸エステルを、(B)成分との特定の含有割合で配合したものである。
甲1には、任意成分としての界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外にも多数列挙されており、その中から、べたつきのない軽くなめらかな伸び広がりを有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のあるという効果を奏するように、特定の重合度を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを、特定の含有割合で配合するという動機付けは、甲1の記載からは見いだせない。
また、本件発明1の上記効果は、甲1の記載や本件特許の出願時の技術常識から、当業者が予測し得ない、顕著なものといえる。
そうすると、甲1発明において、「(A)重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有させ、かつ、その含有割合として、本件発明1における「(B)炭素数18以上のαオレフィンとビニルピロリドンとの共重合体」に該当する、甲1発明における「α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体(ANTARON V-220(ISP社製))」の含有質量%との「含有質量割合(A)/(B)が1~20」となるように含有させることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明2~4、6及び7について
本件発明2は、本件発明1における「成分(B)」について、「成分(B)の含有量が化粧料全量中3~20質量%である」ことを特定したものである。
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2において、「さらに成分(D)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する」ことを特定したものである。
本件発明4は、本件発明3において、「成分(D)が(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーである」ことを特定したものである。
本件発明6は、本件発明1における「成分(B)」について、「成分(B)が(VP/エイコセン)コポリマーまたはトリコンタニルPVPである」ことを特定したものである。
本件発明7は、本件発明1における「成分(C)」について、「成分(C)がパルミチン酸デキストリン及び/または(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンである」ことを特定したものである。
したがって、本件発明2~4、6及び7は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記ウと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
オ 取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)のまとめ
以上のとおり、本件発明1~4、6及び7は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
したがって、取消理由1及び2は理由がない。
(2)取消理由3(サポート要件違反)について
ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。
イ 特許請求の範囲の記載
本件請求項1~4、6及び7の記載は、前記第3に摘記したとおりである。
ウ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(ア)「背景技術」に関する記載
「【背景技術】
【0002】
口紅、チークやアイシャドウ等のメイク製品は、唇や頬、瞼といった塗布部に色味を付与し、顔の印象を華やかに仕上げるアイテムである。これらは、色の鮮やかさや化粧持ちの点から油性化粧料で提供されることが多い。発色やツヤ感、使用感に加えて、最近では化粧持ち機能がとても需要の高い機能となっている。その機能を発揮するために、様々な素材の組み合わせが検討されている。例えば、特定の物性の硬化ヒマシ油とダイマー酸とのオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス及び/またはセレシン、水酸基を少なくとも1個有するヒドロキシ化合物及びIOB値が0.1~0.4である液状エステル油を組み合わせて塗布時ののびやつや、しっとり感等に優れる技術(特許文献1参照)や、フェニル基を含むシリコーンレジンと(ビニルピロリドン/アルフェオレフィン)コポリマーを一定の比率で含有することでツヤ感や化粧持ちを上げる技術(特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-185070号公報
【特許文献2】特開2016-117701号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、膜ができる際の負担感が大きく、ツヤ感もそこまで上がらず、化粧膜のぷっくり感が得られないなど満足のいくものが得られなかった。また、特許文献2の技術においては、使用感が重くなりやすく、負担感を伴い、ぷっくり感も十分でないなど、満足のいくものが得られなかった。」
(イ)「発明が解決しようとする課題」、「課題を解決するための手段」及び「効果」に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のある油性化粧料の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油性化粧料において、分子中に水酸基を2つ以上含む油剤と炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体とを組み合わせることでゲル化し、デキストリン脂肪酸エステルと組み合わせることで、なめらかな伸び広がり、べたつきのなさ、ツヤ感やぷっくり感を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下を含むものである。
[1]
次の成分(A)~(C);
(A)分子中に水酸基を2つ以上含む油剤
(B)炭素数18以上のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体
(C)デキストリン脂肪酸エステル
を含有し、成分(A)及び(B)の含有質量割合(A)/(B)が1~20である油性化粧料。
[2]
前記成分(B)の含有量が化粧料全量中3~20質量%である[1]に記載の前記油性化粧料。
[3]
さらに成分(D)炭素数16以下のα-オレフィンとビニルピロリドンとの共重合体を含有する[1]または[2]に記載の前記油性化粧料。
[4]
前記成分(D)が(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマーである[3]に記載の前記油性化粧料。
[5]
前記成分(A)が重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステルである[1]~[4]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[6]
前記成分(B)が(VP/エイコセン)コポリマーまたはトリコンタニルPVPである[1]~[5]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
[7]
前記成分(C)がパルミチン酸デキストリン及び/または(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンである[1]~[6]のいずれかに記載の前記油性化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、べたつきのない軽くなめらかな伸び広がりを有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のある油性化粧料を提供できる。」
(ウ)本件発明の実施例に関する記載
「【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
[油剤ゲルの調整]
表1に示す組成の組成物をそれぞれ100℃に加熱溶融してジャー容器に流し込み得られたゲルについて、以下に示す方法により、ゲル強度を測定した。その結果も併せて表1に示す。
【0025】
【表1】
[図:0001415296000004.jpg]
*1:ANTARON V-220(Ashland社製)
*2:KEH-1010(坂本薬品工業社製)
*3:Sフェイス IS-1005P(坂本薬品工業社製)
*4:コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
*5:Liponate TDTM(Vantage Speciality Chemical社製)
*6:T.I.O(日清オイリオグループ社製)
【0026】
(評価方法)
ゲル強度について、各試料を25℃1時間静置後、FUDOH社製レオメーターを用いて、10mmのブランジャーを使い、6cm/minで2mmの距離を針入した際のゲル強度を測定した。本発明においては、0.5N以上のものを用いると、ぷっくり感により優れる為より好ましい。
【0027】
実施例1(本発明品1~19)及び比較例(比較品1~7):油性リキッドルージュ
表2及び表3に示す組成の油性リップグロスを下記の製造方法により製造して得られた油性リップグロスについて、以下に示す方法により、(a)負担感のなさ、(b)ツヤ感、(c)ぷっくり感、(d)なめらかな伸び広がり、(e)べたつきのなさについて評価した。この結果も併せて表2及び表3に示す。
【0028】
【表2】
[図:0001415296000005.jpg]
【0029】
【表3】
[図:0001415296000006.jpg]
*7:ANTARON WP-660(Ashland社製)
*8:ANTARON V-216(Ashland社製)
*9:ユニフィルマ HVY(千葉製粉社製)
*10:KF-96A-100cs(信越化学工業社製)
【0030】
(製造方法)
A:成分(1)~(14)を80℃~90℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(15)~(22)を加えて、室温で均一に混合する。
C:Bを脱泡後、直接流し込み、油性リキッドルージュを得た。
【0031】
(評価方法)
下記評価項目(a)~(e)の項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が各試料を口唇に塗布し、(a)については化粧膜の収縮感がなく、化粧膜の負担感を感じないかどうかを、(b)については化粧膜にツヤがあるように感じるかを、(c)については化粧膜に厚みが感じられ、ぷっくりした印象となるかを、(d)については塗布時になめらかに伸び広がるかどうかを、(e)塗布時にべたつきを感じないかを下記絶対評価基準にて評点をつけ、パネル全員の評点合計を算出し、下記階判定基準により判定した。
【0032】
<評価項目>
(a)負担感のなさ
(b)ツヤ感
(c)ぷっくり感
(d)なめらかな伸び広がり
(e)べたつきのなさ
<絶対評価基準>
(評点):(評価)
4点:非常によい
3点:よい
2点:やや悪い
1点:悪い
<判定基準>
(判定):(評点の合計)
◎ :65点以上
〇 :50点以上64点以下
△ :35点以上49点以下
× :34点以下
【0033】
表2および表3から明らかなごとく、本発明の実施例1(本発明品1~19)は、負担感のなさ、ツヤ感、ぷっくり感、なめらかな伸び広がり、べたつきのなさ、すべての評価項目において優れた良好なものであった。一方、成分(A)を含有しない比較例1では、ぷっくり感、ツヤ感、べたつきのなさが得られずに効果が不十分であった。成分(A)を含有せず、分子中の水酸基数が2つであるトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた比較例2では、ぷっくり感、ツヤ感に満足のいくものが得られなかった。成分(B)を含有しない比較例3、4では、ぷっくり感、負担感のなさ、ツヤ感が得られずに効果が不十分であった。成分(A)及び(B)の含有質量割合が0.9である比較例5では、なめらかな伸び広がり、ツヤ感、ぷっくり感が十分でなかった。成分(A)及び(B)の含有質量割合が26.67である比較例6では、ぷっくり感に十分満足いくものが得られなかった。成分(C)を含有しない比較例7では、べたつきのなさ、ぷっくり感に充分満足のいくものが得られなかった。
【0034】
実施例2:油性リップグロス
(成分) (%)
1.デカ2-エチルヘキサン酸デカグリセリル *2 20
2.(VP/エイコセン)コポリマー *1 1
3.パルミチン酸デキストリン 5
4.(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン 4
5.(ヘキサデセン/VP)コポリマー *8 10
6.ジメチルシリル化シリカ 0.5
7.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
8.ポリブテン *11 10
9.重質流動イソパラフィン *12 13
10.トコフェロール 0.01
11.ポリシリコーン-15 0.5
12.赤色202号 0.02
13.黄色4号 0.005
14.酸化チタン 0.05
15.黒色酸化鉄 0.001
16.赤色218号 0.04
17.(PET/ポリメタクリル酸メチル)ラミネート 1
18.アルミニウム末 0.5
19.オリーブ油 0.001
20.ツバキ油 0.001
21.シア脂 0.01
22.コメヌカ油 0.001
23.ラベンダー油 0.001
24.ブドウポリフェノール 0.001
25.香料 0.02
*11:日石ポリブテンHV-1900(JX日鉱日石エネルギー社製)
*12:パールリーム46
(製造方法)
A:成分(1)~(11)を80℃~90℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(12)~(16)を加えて、ビーズミルにて均一に混合する。
C:Bに成分(17)~(25)を加えて、均一の混合する。
D:Cを脱泡後、90℃に加熱してチューブ容器に直接流し込み、放冷して油性リップグロスを得た。
実施例2の油性リップグロスは、負担感のなさ、ツヤ感、ぷっくり感、なめらかな伸び広がり、べたつきのなさのすべての点で満足のいくものであった。
【0035】
実施例3:油性流し込みアイカラー
(成分) (%)
1.(パルミチン酸/ヘキシルデカン酸)デキストリン *13 6
2.ノナイソステアリン酸デカグリセリル *14 25
3.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 残量
4.トリメリト酸トリトリデシル 5
5.(VP/エイコサン)コポリマー 5
6.ジメチコン(25℃動粘度2CS) 10
7.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 1
8.ホウケイ酸(Ca/Al) 10
9.パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン3%処理
酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al) 15
10.ジメチルシリル化シリカ 2
11.ジプロピレングリコール 0.5
12.1,2-ペンタンジオール 0.1
13.酢酸トコフェロール 0.02
14.ヒアルロン酸 0.01
15.コラーゲン 0.01
16.センチフォリアバラ花エキス 0.05
*13:レオパールWX(千葉製粉社製)
*14:Sフェイス IS-1009P(阪本薬品工業社製)
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を80~90℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(6)、(7)、(10)~(16)を加えて、ロールミルにて均一の混合する。
C:Bに成分(8)、(9)を加えて、均一に混合する。
D:Cを90℃で溶解し、皿に直接流し込み、油性流し込みアイカラーを得た。
実施例3の油性流し込みアイカラーは、なめらかな伸び広がり、べたつきのなさ、ツヤ感、ぷっくり感(その効果による目元の立体感)のすべての点で満足のいくものであった。
【0036】
実施例4:油性リップバーム
(成分) (%)
1.パルミチン酸デキストリン 9
2.2-エチルヘキサン酸セチル 15
3.重質流動イソパラフィン 残量
4.リンゴ酸ジイソステアリル 13
5.トリオレイン酸ペンタグリセリル 15
6.デカイソステアリン酸デカポリグリセリル 15
7.イソステアリン酸デキストリン 2
8.(VP/エイコセン)コポリマー 10
9.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7.5
10.ジメチコン(25℃動粘度20CS) 0.5
11.1,3-ブチレングリコール 0.3
12.ジブチルヒドロキシトルエン 0.01
13.無水ケイ酸 2
14.ベンガラ 0.01
15.油溶性ローズマリーエキス 0.01
16.アボカド油 0.01
17.アルガンオイル 0.01
18.香料 0.1
(製造方法)
A:成分(1)~(10)を80℃~90℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(11)~(17)を加えてロールミルにて均一に混合する。
C:Bを90~95℃で容器に直接流し込み、リップバームを得た。
実施例4のリップバームはなめらかな伸び広がり、ツヤ感、負担感のなさ、べたつきのなさ、仕上がりのぷっくり感のすべての点で満足のいくものであった。」
エ 判断
(ア)本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の発明の詳細な説明における「背景技術」の記載(【0002】~【0004】)、「発明が解決しようとする課題」の記載(【0005】)、及び、実施例の記載(【0023】~【0036】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のある油性化粧料を提供すること」であると認められる。
(イ)発明の詳細な説明の実施例1(本発明品1~19)~実施例4(【0023】~【0036】)には、本件発明1~4、6及び7の発明特定事項を有する油性化粧料(各成分において、発明特定事項の範囲内の、複数の種類及び複数の質量%を含有する、複数の油性化粧料)を製造したこと、並びに、それらの油性化粧料は、いずれも、べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のあることを具体的に確認したことが記載されている。
そうすると、当業者は、本件発明1~4、6及び7の発明特定事項を有する油性化粧料は、べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、ツヤ感があり、負担感を伴わずに塗布後の化粧膜がぷっくり感のある油性化粧料を提供できると理解し、上記課題を解決できると認識できるといえるので、本件発明1~4、6及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1~4、6及び7に係る発明において、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」以外の「成分(A)」を用いたものが、本件発明の課題を解決できることが示されていない旨の主張をする。
しかしながら、本件訂正により、本件訂正前の「成分(A)」は、「重合度3~20のポリグリセリン脂肪酸エステル」に限定されたため、上記主張は採用できない。
なお、令和6年4月30日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人による意見書の提出はなく、申立人のさらなる主張はない。
オ 取消理由3(サポート要件違反)のまとめ
したがって、本件発明1~4、6及び7は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、本件請求項1~4、6及び7に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
したがって、取消理由3は理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
申立理由1(新規性欠如)のうち、本件訂正前の請求項3~4に係る発明に対するものは、取消理由通知において採用していない。当該申立理由について、以下のとおり判断する。
本件訂正後の請求項3及び4は、本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1を更に特定したものである。それゆえ、本件発明3及び4は、甲1発明とは、少なくとも上記相違点(上記1(1)ウ(ア))を有しているから、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正前の請求項5は削除された。
したがって、上記採用しなかった申立理由は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに/又は、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~4、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1~4、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項5に係る特許は、本件訂正により削除され、請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701167