特許異議申立
2024-700299
遠心分離装置
- 審判番号
- 2024-700299
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-151198
- 登録番号
- 7421286
- 請求日
- 2024年04月01日
- 審決日
- 2024年12月13日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社IHI回転機械エンジニアリング
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】小松 秀輝
- 【権利者代理人】和田 雄二
- 【異議申立人】脇谷 治義
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.113-Y (B04B) / P1651.121-Y (B04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7421286号発明「遠心分離装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7421286号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7421286号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和元年8月21日に出願され、令和6年1月16日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 4月 1日 :特許異議申立人 脇谷 治義(以下、「申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 9月11日付け:取消理由通知
同年11月11日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
固体と液体との混合物を収容し、回転によって前記混合物から前記固体と前記液体とを遠心分離する筒状の外胴部と、
前記外胴部の内部で前記外胴部の回転軸線に沿って配置され、前記混合物を移送すると共に、前記外胴部の回転方向と同一方向に回転する内胴部と、
前記内胴部の外周面に設けられ、前記内胴部の前記回転軸線に沿った一方側に前記固体を移送するスクリュウ羽根と、を備え、
前記内胴部は、
内部の前記混合物を遠心方向に放出する放出口と、
前記放出口から前記外胴部の内周面に向けて立設され、前記放出口から放出された前記混合物を遠心方向に案内するガイド部と、を備え、
前記外胴部の前記内周面に沿った領域には、前記混合物から前記固体が分離された液体層が形成され、
前記ガイド部の先端は、前記外胴部の前記内周面に向けて開放されており、
前記先端は、前記液体層と気体領域との境界面よりも、前記外胴部の内周面から離れた位置に設けられている、遠心分離装置。
【請求項2】
前記外胴部の前記一方側とは反対側の端部を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部に設けられ、前記固体から分離された前記液体が排出される液体通過口と、
前記液体通過口の一部を閉塞して前記液体を堰き止めるオリフィス板と、を備え、
前記境界面は、前記液体を堰き止める前記オリフィス板の高さによって規定されている、請求項1記載の遠心分離装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記放出口を囲んで立設された管である。請求項1または2記載の遠心分離装置。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(新規性)
本件発明1~3は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件発明1~3は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲1:特開昭59-169550号公報
甲2:特開2010-94611号公報
甲3:再公表特許WO2007/023566号
第4 取消理由の概要
請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和6年9月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
本件発明1~3は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
第5 甲号証の記載、甲号証に記載された発明等
1 甲1(特開昭59-169550号公報)
(1)甲1には以下の記載がある(下線は当審において付した。)。
「本発明は、遠心分離機、特に濃縮ケーキ濃度の不安定性を解消した遠心分離機の改良に関するものである。
スクリユー型遠心分離機は、種々の固体と液体の混合した状態、いわゆるスラリを固体と液体に分離し、さらに固体に同伴する液体をなるべく少なくする濃縮・脱水操作に使用されることは周知のとおりである。スクリユー型遠心分離機は、第1図(a)に示すような遠心力下で沈降分離した固形物とろ液の流れ方向が互に反対方向になるカウンタカレント形と、第1図(b)に示すような互に同方向になるコンカレント形とに大別できるが、いずれの場合においても、ケース7内のスラリ供給管3およびスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介してボウル1内面に投入されたスラリは、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて清澄となつたろ液はボウル1の一端に形成されたセキ板4から溢流排出されるとともに、ボウル1の外周側に沈澱したケーキは、液圧と主軸受5に支持されて回転するスクリユー2の掻き出し作用によりプール18内を移送され、ケーキ排出口12を通つて機外に排出される構造となつている。なお、第1図において、6はギアユニツト、8はメインシープ、9はバツクドライブシーブ、10はペース、11は過負荷保護装置、13はブレード、14はろ液返送管である。
一方、圧密性の悪い固形物が懸濁するスラリを遠心濃縮する場合には、濃縮された固形物(以下、ケーキという。)は流動性を持つているため、ケーキの機外排出はスクリユーによる掻き出し作用を主体とせず、ボウルの一端側からケーキを液圧により溢流させる方法をとるのが通常である。第2図はこの有様を第1図(a)に示したカウンタカレント形の場合を例に模形的に示したもので、15はデイツプウエアである。前述したように、スラリ供給管3およびスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて清澄となつたろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出されるとともに、ボウル1の外周側に沈澱したケーキ20は液圧とスクリユーの掻き出し作用とにより移送されケーキ排出口12を通って機外に排出される。ろ液19およびケーキ20の排出量は、それぞれ操業条件により一定の値に規定される。ろ液19および流動性を有するケーキ20を移送、排出するには流動抵抗に見合う水頭が必要で、Heはろ液排出のための水頭、Hbはデイツプウエア15をケーキが通過するための水頭、Hcはケーキ排出のための水頭である。ケーキ20を溢流排出させるには規定排出量に見合う水頭Heが必要であるが、この水頭Heはセキ板4の高さによって決定される。」(1ページ左下欄下から8行~2ページ右上欄8行)(当審注:上記「ろ液」の「ろ」は、「さんずい」に「戸」である。)
「第1図
(a)
[図:0001420322000001.jpg]
」
「第2図
[図:0001420322000002.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)には、「スクリユー型遠心分離機は、第1図(a)に示すような遠心力下で沈降分離した固形物とろ液の流れ方向が互に反対方向になるカウンタカレント形と、第1図(b)に示すような互に同方向になるコンカレント形とに大別できる」と記載されているから、第1図(a)に示されているのは、カウンタカレント形のスクリユー型遠心分離機である。
そして、上記(1)の「第2図はこの有様を第1図(a)に示したカウンタカレント形の場合を例に模形的に示したもので、15はデイツプウエアである。」との記載によれば、第2図も第1図(a)と同様に、スクリユー型遠心分離機であるといえる。
イ また、上記(1)には、続けて「スラリ供給管3およびスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて清澄となつたろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出されるとともに、ボウル1の外周側に沈澱したケーキ20は液圧とスクリユーの掻き出し作用とにより移送されケーキ排出口12を通って機外に排出される。」と記載されているから、スクリユー型遠心分離機は、内面にスラリ17が投入されるボウル1と、スラリ供給管3と、スクリュー2と、スクリュー2に設けられたスラリ供給口16と、ボウル1の一端側のセキ板4と、ケーキ排出口12とを備えており、スラリ供給管3及びスクリュー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて、清澄となったろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出されるとともに、ボウル1の外周側に沈澱したケーキ20は液圧とスクリユーの掻き出し作用とにより移送されケーキ排出口12を通って機外に排出されるものであるといえる。
ウ 第2図から、ブレード13がスクリュー2の外周面に設けられていること、及び、スクリュー2がボウル1の内部に配置されていることが見て取れる。
また、上記イにおける「ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて、清澄となったろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出される」との構成を参酌すると、第2図における、ボウル1内におけるろ液19よりも内側の領域は、空気であるといえる。
そうすると、第2図から、スラリ供給口16のボウル1側の先端が、ろ液19と空気との境界面よりも、ボウル1の内周面から離れた位置に設けられていることが見て取れるといえる。
エ 上記ア~ウによれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「内面にスラリ17が投入されるボウル1と、ボウル1の内部に配置されるスクリュー2と、スラリ供給管3と、スクリュー2の外周面に設けられたブレード13と、スクリュー2に設けられたスラリ供給口16と、ボウル1の一端側のセキ板4と、ケーキ排出口12とを備え、
スラリ供給口16のボウル1側の先端は、ろ液19と空気との境界面よりも、ボウル1の内周面から離れた位置に設けられており、
スラリ供給管3及びスクリュー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて、清澄となったろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出されるとともに、ボウル1の外周側に沈澱したケーキ20は液圧とスクリユーの掻き出し作用とにより移送されケーキ排出口12を通って機外に排出される、スクリユー型遠心分離機。」
2 甲2(特開2010-94611号公報)
「【0002】
従来の回転式固液分離装置の一つに、遠心力を利用して原液を固体分と液体分とに分離するスクリュウデカンタ型遠心分離機がある(例えば、特許文献1参照)。
この遠心分離機は、高速で回転する外胴ボウルと、この外胴ボウル内に配置されて該外胴ボウルと同一方向に回転する内胴スクリュウと、前記外胴ボウルと前記内胴スクリュウとに回転差を与えるギアボックスと、前記外胴ボウルおよび前記内胴スクリュウの回転支軸を支持する軸受(回転支持器)とを備えた概要構造となっている。」
3 甲3(国際公開2007/023566号)
甲3には、以下の記載がある。
「【0015】
デカンタ型遠心分離機10は、ボウル20内径がφ740mmであり、この場合、ボウル20の回転速度は、遠心力1200G~3200Gの場合に1700~2800min-1で回転するが、内部のスクリュウコンベアフライト42をボウル20に対して差速40~80min-1程度遅い1620~2760min-1でボウル20と同一方向に回転させることにより、ボウル20内の液中に沈降させた固形物を軸方向に搬送することができる。・・・」
第6 取消理由1(新規性)、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明において、「ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて、清澄となったろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出される」ものである。
ここで、上記「スラリ17」は、「固形物」と「ろ液19」に分離されるものであるから、「固形物」と液体からなるものであるといえる。
また、上記「遠心力」が回転によって生じるものであることは技術常識である。
そうすると、甲1発明において、「スラリ17」は、液体と「固形物」との混合物であって、「ボウル1」は、「固形物」と液体との混合物を収容するものであり、また、回転によって混合物から「固形物」と液体とを遠心分離する筒状のものであるといえる。
したがって、甲1発明の「固形物」、「スラリ17」は、それぞれ、本件発明1の「固体」、「固体と液体の混合物」に相当し、甲1発明の「ボウル1」は、本件発明1の「固体と液体との混合物を収容し、回転によって前記混合物から前記固体と前記液体とを遠心分離する筒状の外胴部」に相当する。
イ 甲1発明において、「スラリ17」は、「スラリ供給管3及びスクリュー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入され」るものであるから、「スクリュー2」は、「スラリ17」を移送するものであるといえる。
また、スクリユー型遠心分離機において、スクリューが、ボウルの回転軸線に沿って配置され、ボウルの回転方向と同一方向に回転することは技術常識である。
したがって、甲1発明の「スクリュー2」は、本件発明1の「前記外胴部の内部で前記外胴部の回転軸線に沿って配置され、前記混合物を移送すると共に、前記外胴部の回転方向と同一方向に回転する内胴部」に相当する。
ウ 甲1発明において、「ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて」、「ボウル1の外周側に沈澱したケーキ20は液圧とスクリユーの掻き出し作用とにより移送され」るものであって、この作用は、「スクリュー2」と、「スクリュー2の外周面に設けられたブレード13」によるものであるといえる。
そして、上記イで示した技術常識を参酌すると、「ブレード13」は、「スクリュー2」の回転軸線方向に沿った一方側に「ケーキ20」すなわち「固形物」を移送するものであるといえる。
したがって、甲1発明の「ブレード13」は、本件発明1の「前記内胴部の外周面に設けられ、前記内胴部の前記回転軸線に沿った一方側に前記固体を移送するスクリュウ羽根」に相当する。
エ 甲1発明の「スラリ17」は、「スクリュー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入され」るものであるところ、甲1の第2図(上記第5 1(1))に示されている2本の矢印を参酌すると、甲1発明の「スクリュー2に設けられたスラリ供給口16」は、内部の「スラリ17」を遠心方向に放出する放出口であるといえ、また、甲1発明の「スクリュー2」は、内部の「スラリ17」を遠心方向に放出する放出口を備えているといえる。
そうすると、甲1発明の「スラリ供給口16」は、本件発明1の「内部の前記混合物を遠心方向に放出する放出口」に相当し、本件発明1の「内胴部」と甲1発明の「スクリュー2」とは、「内部の前記混合物を遠心方向に放出する放出口を備え」ている点で共通する。
オ 甲1発明において、「スラリ供給管3及びスクリュー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて、清澄となったろ液19は、ボウル1の一端側のセキ板4から溢流排出される」ものであるから、「ボウル1」の内周面に沿った領域には、「スラリ1」から「固形物」が分離された「ろ液19」が形成されているといえる。
そうすると、甲1発明の「スラリ1」から「固形物」が分離された「ろ液19」は、本件発明1の「前記混合物から前記固体が分離された液体層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「前記外胴部の前記内周面に沿った領域には、前記混合物から前記固体が分離された液体層が形成され」る点で共通する。
カ 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「固体と液体との混合物を収容し、回転によって前記混合物から前記固体と前記液体とを遠心分離する筒状の外胴部と、
前記外胴部の内部で前記外胴部の回転軸線に沿って配置され、前記混合物を移送すると共に、前記外胴部の回転方向と同一方向に回転する内胴部と、
前記内胴部の外周面に設けられ、前記内胴部の前記回転軸線に沿った一方側に前記固体を移送するスクリュウ羽根と、を備え、
前記内胴部は、
内部の前記混合物を遠心方向に放出する放出口を備え、
前記外胴部の前記内周面に沿った領域には、前記混合物から前記固体が分離された液体層が形成されている、遠心分離装置。」
<相違点>
相違点1:内胴部について、本件発明1は、「前記放出口から前記外胴部の内周面に向けて立設され、前記放出口から放出された前記混合物を遠心方向に案内するガイド部」を備えているのに対し、甲1発明は、そのようなガイド部を有しているかどうか不明である点。
相違点2:上記相違点1に係る「ガイド部」について、本件発明1は、更に、「前記ガイド部の先端は、前記外胴部の前記内周面に向けて開放されており、前記先端は、前記液体層と気体領域との境界面よりも、前記外胴部の内周面から離れた位置に設けられている」のに対し、甲1発明は、そもそも、ガイド部を有しているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)新規性について
a 甲1の明細書の記載について
甲1の明細書(上記第5 1(1))には、「スラリ供給口16」について、「いずれの場合においても、ケース7内のスラリ供給管3およびスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介してボウル1内面に投入されたスラリは、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて」と記載され、「スラリ供給管3およびスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介して、ボウル1の内面に投入されたスラリ17は、遠心力で円筒状に形成されたプール18内を流れる間に固形物が沈澱除去されて」と記載されている。
以上の記載から、スクリュー2内のスラリ17が、スラリ供給管3及びスクリユー2に設けられたスラリ供給口16を介してボウル1内面に投入されるものであるから、甲1の明細書には、スラリ供給口16は、スクリュー2の内部と外部とを連通する開口であることが記載されているといえる。
しかし、甲1の明細書には、上記記載の他にスラリ供給口16についての記載はないから、スラリ供給口16の具体的な構造は記載されているとはいえない。
したがって、甲1の明細書の記載を参酌しても、甲1発明は、相違点1に係る本件発明1の構成である、「前記放出口から前記外胴部の内周面に向けて立設され、前記放出口から放出された前記混合物を遠心方向に案内するガイド部」を備えているとはいえない。
b 甲1の図面の記載について
甲1は公開特許公報であるから、甲1に掲載された図は、いずれも特許出願の願書に添付された図面に描かれたものであるところ、特許出願の願書に添付された図面は、明細書を補完し、特許を受けようとする発明に係る技術内容を当業者に理解させるための説明図であるから、当該発明の技術内容を理解するために必要な程度の正確さを備えていれば足り、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らない。
そして、上記aで検討したとおり、甲1の明細書には、スラリ供給口16の具体的な構造は記載されているとはいえないから、スラリ供給口16の具体的な構造は、甲1発明の課題、解決手段及び作用効果に直接関係ない技術的事項であるといえる。
そうすると、甲1の第2図によって、スラリ供給口16の具体的な構造という、甲1発明の課題、解決手段及び作用効果に直接関係ない技術的事項が認識できるとはいえない。
したがって、甲1の第2図から、甲1発明において、「スラリ供給口16」が、放出口から「ボウル1」の内周面に向けて立設され、放出口から放出された「スラリ17」を遠心方向に案内するガイド部を備えているとはいえない。
よって、甲1の図面の記載を参酌しても、甲1発明は、相違点1に係る本件発明1の構成である、「前記放出口から前記外胴部の内周面に向けて立設され、前記放出口から放出された前記混合物を遠心方向に案内するガイド部」を備えているとはいえない。
c 以上から、相違点1は実質的な相違点である。
(イ)進歩性について
甲2、甲3のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1に甲2、甲3に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成は得られない。
したがって、引用発明1及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の9ページ下から6~3行において、甲1の第2図の矢印等から、甲1発明の「スラリ供給口16」は、ボウル1の内周面に向けて立設され、スクリュー2の壁面からスラリを遠心方向に案内しているから、本件発明1の「ガイド部」に相当する旨主張している。
しかし、上記ア(ア)bで検討したとおり、甲1の第2図から、甲1発明において、「スラリ供給口16」が、放出口から「ボウル1」の内周面に向けて立設され、放出口から放出された「スラリ17」を遠心方向に案内するガイド部を備えているとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、また、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明ではないし、また、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反されたものではなく、申立理由1、2は理由がない。
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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