特許異議申立
2023-701126
ラベル
- 審判番号
- 2023-701126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-037517
- 登録番号
- 7264668
- 請求日
- 2023年10月20日
- 審決日
- 2024年01月19日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】レンゴー株式会社
- 【権利者代理人】鎌田 直也
- 【権利者代理人】鎌田 文二
- 【権利者代理人】中谷 弥一郎
- 【権利者代理人】北川 政徳
- 【権利者代理人】地代 信幸
- 【権利者代理人】岡本 雅至
- 【異議申立人】井戸田 能幸
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 嵯峨根 多美
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1651.113-Y (G09F) / P1651.121-Y (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7264668号発明「ラベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7264668号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7264668号の請求項1に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月1日に出願され、令和5年4月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年10月20日に特許異議申立人 井戸田 能幸(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許
本件特許の請求項1に係る発明は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」という。)。
「【請求項1】
セロファンからなる基材層の両面に接着層を介して防湿層を有し、
前記防湿層は、ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり、
透湿度が1000g/m2・24h以下であり、
前記防湿層の総塗工量が、1.0g/m2以上、7.0g/m2以下であり、
前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2以上、1.0g/m2以下であることを特徴とするラベル。」
第3 申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりであり、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。なお、申立理由の番号は、当審にて付した。
甲第1号証:セルロースの事典
(セルロース学会編集、朝倉書店、2000年11月10日初版 第1刷)
甲第2号証:特開昭60-190352号公報
甲第3号証:特開2012-25411号公報
甲第4号証:特開2009-62095号公報
甲第5号証:特開2016-106063号公報
甲第6号証:特開2018-131624号公報
甲第7号証:特開2018-103402号公報
1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如)
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性欠如)
本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
3 申立理由1-3(甲第3号証を主たる証拠とした新規性欠如)
本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
4 申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件特許発明1は、甲第1号証(周知技術として甲第2号証、参考文献として甲第5、6号証)、又は、甲第1号証(周知技術として甲第2号証、参考文献として甲第5、6号証)及び甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
5 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件特許発明1は、甲第2号証(周知技術として甲第1、3号証、参考文献として甲第5、7号証)、甲第2号証(周知技術として甲第1、3号証、参考文献として甲第5、7号証)及び甲第1号証、又は甲第2号証(周知技術として甲第1、3号証、参考文献として甲第5、7号証)及び甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
6 申立理由2-3(甲第3号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
本件特許発明1は、甲第3号証(周知技術として甲第1、2号証、参考文献として甲第5,7号証)、甲第3号証(周知技術として甲第1、2号証、参考文献として甲第5、7号証)及び甲第1号証、又は甲第3号証(周知技術として甲第1、2号証、参考文献として甲第5、7号証)及び甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
第4 各甲号証に記載の事項、発明等
1 甲第1号証について
(1)本件特許の出願前に公開された甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア 第458ページ第17行~21行
「 セロハンはセルロース70~80%,柔軟剤8~25%,水分5~10%からなっているが,これに防湿処理を施して,さらに広範な用途に向けるために,Charch-Prindleは防湿セロハンを発明した.」
イ 第459ページ第7行~21行
「 必要であれば,塗膜とセロハンとの接着力を向上させ,耐水性を向上させるためにアンカー剤を添加する場合もある.防湿塗料をセロハンにコートする直前にアンカー剤の一定比率量を添加し二液混合塗料として塗布し乾燥する方法が一般的である.
防湿塗料は海外においては硝酸セルロースを主体としたものや塩化ビニリデン樹脂などであり,国内では,還化ゴム系の樹脂からスタートし,塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合樹脂(通常,塩酢ビ樹脂と呼ぶ)を開発し今日に至る.塩化ビニリデン樹脂を使用した防湿セロハン(ハイバリヤ性)も国内では製造されている.
・・・塗布膜の厚さは2μm前後(両面)で,樹脂のタイプにもよるが,塗布しないセロハンと比較し,かなりの防湿性が得られる.」
ウ 第460ページ第1行~6行
「 セロハンの種類は防湿処理の有無によって防湿セロハンと普通セロハンに大別し,坪量によって,300番,350番,400番,500番,600番に分ける.さらに防湿セロハンについては両面コートタイプと片面コートタイプに分けられ,さらに防湿性によって1種,2種,3種にわけられる(表7.2.9).」
エ 第460ページ第10行~12行
「 セロハンの素材としての特徴は,透明性,非多遺伝性,耐熱性,易カット性,ガスバリヤ性,ヒネリ適性,包装適性にある.これらの特徴を生かし,主に食品包材,医薬品包材,粘着テープ基材等の用途に今もなお使用されている.」
オ 第460ページ
「表7.2.11 セロハンの品質その2
[図:0001406756000001.jpg]
」
カ 第461ページ
「表7.2.10 セロハンの品質その1
[図:0001406756000002.jpg]
」
(2)上記(1)から甲1について、以下の事項を把握することができる。
ア 上記(1)カに示した「表7.2.10 セロハンの品質その1」には、防湿セロハン両面コートタイプの厚さは、300番が0.020mm以上、350番が0.023mm以上、400番が0.026mm以上と開示されている。このような厚みで、上記(1)エに示したように食品包材,医薬品包材,粘着テープ基材等に使用されるので、「セロハン」は「セロハンからなる層」を構成しているといえる 。
イ 上記(1)イに示したとおり、「防湿塗料」は、塗布し乾燥する方法により、塗布膜の厚さ2μm前後(両面)で「セロハン」にコートされる。上記アを踏まえると、「セロハン」は「セロハンからなる層」を構成しているので 、「防湿塗料」は、「防湿塗料層」を構成しているといえる。
ウ 上記(1)オに示した「表7.2.11 セロハンの品質その2」には、防湿セロハン両面コートタイプの透湿度が、3種について200g/m2・24h以下であることが記載されている。
エ 上記(1)カに示した「表7.2.10 セロハンの品質その1」には、両面コートタイプ防湿セロハンの坪量基準値が、300番については32g/m2、350番については37g/m2、400番については42g/m2であるのに対して、普通セロハンの坪量基準値は、300番については30g/m2、350番については35g/m2、400番については40g/m2であることが示されている。上記イの「防湿塗料層」の総坪量基準値は、両面コートタイプ防湿セロハンの坪量基準値と普通セロハンの坪量基準値との差から、2g/m2であると認められる。
(3)上記(1)及び(2)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「防湿塗料をセロハンからなる層にコートする直前にアンカー剤を添加し塗布し乾燥させて製造された防湿塗料層がコートされた両面コートタイプ防湿セロハンであって、
前記防湿塗料層は硝酸セルロースを主体としたものや塩化ビニリデン樹脂などが塗布された層であり、
透湿度は、200g/m2・24h以下であり、
前記防湿塗料層の総坪量基準値は、2g/m2である両面コートタイプ防湿セロハン。」
2 甲第2号証
(1)本件特許の出願前に公開された甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 第1ページ右下欄第10行~17行
「 本発明は印刷仕上りがすぐれた気体遮断性積層フイルムに関するものであり,更に詳しくは,片面に印刷を施した基材フイルムの印刷面と,片面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略す。)系樹脂を塗布したヒートシール性フイルムのPVDC塗布面とを接着層を介して貼合わせた印刷仕上りがすぐれた気体遮断性積層フイルムに関するものである。」
イ 第1ページ右下欄第18行~2ページ目右上欄1行
「 従来,食品の吸湿,脱湿,酸敗(油脂分の酸化),変色,腐敗等の変質防止を目的として真空包装,ガス置換包装,脱酸素剤封入包装,乾燥剤封入包装,加熱殺菌包装,無菌包装などの包装技法が用いられているが,これらの包装材料としては酸素,炭酸ガス等の気体及び水蒸気の遮断性フイルムが用いられている。
このような気体遮断性フイルムとしてはPVDC系フイルム,ポリビニルアルコール樹脂フイルム,エチレン酢酸ビニル共重合体けん化物フイルム,ポリアミド系フイルム,アクリロニトリル系樹脂フイルム等が知られているが,これらのフイルムは単独では,機械的強度,ヒートシール性,防湿性,耐水性,耐熱性が不充分であるため,通常他のプラスチックフィルム等と積層して用いられている。中でも気体遮断性フイルムとしてPVDCを塗布した熱可塑性フイルムに,更に熱接着性を付与するためにヒートシール性フイルムを貼合わせたものが汎用されている。しかしながら,包装は単に食品等の被包装物の保存・変質防止のみを目的とするものでなく,通常,被包装物の商品名,商品の説明の他,アイキャッチを目的としてPVDC塗布面に写真印刷など美麗印刷を施す場合も多い。」
ウ 第2ページ右上欄第17行~第2ページ左下欄第5行
「 即ち,本発明は,基材フイルムに印刷を施してこの印刷面と,基材フイルムより低い軟化温度を有するヒートシール性フイルムに必要によりアンカーコート層を介してPVDC剤を塗布・乾燥した該塗布面とを積層する事を特徴とした積層包装フイルムであり,本発明の積層包装フイルムは印刷仕上りが良好であり,且,気体遮断性,ヒートシール性を有する実用性の高い包装フイルムである。」
エ 第2ページ左下欄第6行~第17行
「 本発明において用いられる基材フイルムとしては,透明性を有するフイルム例えばセロファン,二軸延伸ポリプロピレンフイルム,二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム,二軸延伸6-ナイロンフイルム,二軸延伸ポリビニルアルコールフイルム等の汎用プラスチックフイルム及びこれらと他の樹脂層とを組合わせた積層フイルム等が挙げられるが,これらに限定されるものではなく,ヒートシール層として選択されるヒートシールフイルムの軟化温度より高い軟化温度,好ましくは15℃以上高い軟化温度を有するものが好適である。」
オ 第3ページ右上欄第13行~左下欄第2行
「 次に,本発明において必要によりシール性フイルムとPVDC塗布層の間に設けられるアンカーコート層塗布剤としては例えばビニル系,アクリル系,エチレン―酢酸ビニル系,ゴム系,ポリエチレンイミン系,ポリブタジエン系,ポリエステル系,ポリエーテル系,ポリウレタン系,エポキシ系,ポリ塩化ビニリデン系等の接着剤の水分散液又は有機溶剤溶液が挙げられ,常法により固形分として0.03~1.0g/m2更に好ましくは0.1~0.5g/m2が塗布される。」
カ 第3ページ左下欄第12行~左下欄第18行
「 又,PVDC塗布層の加工特性を改良するため,必要により無機系のアンチブロッキング剤,ワックス,帯電防止剤等を配合してもよい。シーラントフイルム又はシーラントフイルムのアンカーコート層上にPVDCを塗布する方法は固形分として1~20g/m2を常法により塗布・乾燥すればよく,・・・」
キ 第3ページ右下欄第19行~第4ページ左上欄第3行
「 又,ポリエチレン押出ラミネーションにおいて印刷した基材とPVDCを塗布したヒートシール性フイルムの両接着面に塗布されるアンカーコート剤としては上記のドライラミネーション用として記載された接着剤の中から選定される。」
ク 第4ページ左上欄第17行~右下欄第15行
「 実施例 1
軟化温度155℃のポリプロピレン(ノーブレンFS-2011,住友化学工業(株)製)をTダイより押出し製膜し,次いで逐次二軸延伸して得られた厚さ20μの二軸延伸ポリプロピレン(以下OPPと略す。)の片面にコロナ放電処理し,この処理面にポリプロピレン用インキ(ラミックFG,大日精化工業(株)製)を用いて写真版を含む5色印刷を施し,この印刷面にポリウレタン系接着剤(タケラックA-310/タケネートA-3,武田薬品工業(株)製)の酢酸エチル/トルエン=50/50溶剤溶液を固形分が0.2g/m2になるように塗布乾燥した。
又,別に軟化温度96℃,密度0.922の高圧法ポリエチレン(F022,宇部興産(株)製)をインフレーション法にて製膜して得た厚さ50μのポリエチレンフイルムの片面をコロナ放電処理をした。この処理面にアクリル酸エステル主体の水分散液(モビニール981,ヘキスト合成(株)製)を固形分が0.8g/m2になるように塗布・乾燥し,更にこの塗布面上にPVDC水分散液(サランラテックスL-511,旭化成工業(株)製)を固形分が8g/m2になるように塗布・乾燥した。このPVDC塗布面にポリエチレンイミン(EL-402,東洋モートン(株)製)を固形分が0.05g/m2になるように塗布し,乾燥した。このポリエチレンイミン塗布ポリエチレンフイルムの塗布面と前記の接着剤塗布したポリプロピレンフイルムの接着剤塗面とを常法によりポリエチレン20μ押出ラミネートを行った後40℃で1日エージングした積層フイルムの性能を測定した。その結果を第一表に示した。
実施例 2
軟化温度205℃の6-ナイロン(ノバミッド1020,三菱化成工業(株)製)をチューブラー法により製膜し,次いて同時二軸延伸し,得られた15μの二軸延伸フイルム(以下O-NYと略す。)の片面にコロナ放電処理をし,この処理面に実施例1と同様に印刷を施し,更にポリウレタン系接着剤1(ポリボンドNS-30/CA-30,三洋化成工業(株)製)の酢酸エチル溶液を固形分が3g/m2になるように塗布し,乾燥した。
又別に,エチレンと1-ブテンから成る軟化温度115℃,密度0.935のリニヤ-ポリエチレン(リニレックスAF-3710,日本石油化学(株)製)をTダイーキャスト法にて製膜した厚さ40μのポリエチレン系フイルムの片面にコロナ放電処理を施し,この処理面にポリエステル系接着剤(パイロン300,東洋紡績(株)製/コロネートL,日本ポリウレタン工業(株)製)溶液を固形分が0.25g/m2となるように塗布し,乾燥し,更に,この面上に水分散系PVDC(クレハロンラテックスDO-870,呉羽化学(株)製)を固形分で5g/m2になるように塗布乾燥した。
このPVDC塗布面と前記のO-NYの接着剤塗布面とを常法によりドライラミネートし,40℃で2日間エージングをした後,得られた積層フイルムの性能を測定し,その結果を第一表に示した。」
ケ 第5ページ右下欄第10行~第16行
「 以上第一表の結果からわかるように従来方法即ちPVDC塗布面上に印刷した後、シーラントフイルムとを貼合わせた積層フイルムは印刷面にピンホール状のインキの抜けやインキの泳ぎがあり、美麗印刷としては仕上りの良くない不満足なものであったが本発明の積層フイルムは気体遮断性、水蒸気遮断性及び印刷仕上り共に良好であった。」
コ 第6ページ 第一表
「
[図:0001406756000003.jpg]
」
(2)上記(1)から甲2について、以下の事項を把握することができる。
ア 上記(1)オ及びカの「PVDC塗布層」との記載から、上記(1)アに記載される「片面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略す。)系樹脂を塗布した」ことにより、ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層が形成されると認められる。
イ 上記(1)クに示した実施例1には、二軸延伸ポリプロピレンの印刷面に接着剤を0.2g/m2塗布したポリプロピレンフイルムの接着剤塗布面と、PVDC水分散液を塗布したポリエチレンフイルムとをラミネートした積層フイルムが記載されている。上記(1)アに示した「片面に印刷を施した基材フイルムの印刷面と、片面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略す。)系樹脂を塗布したヒートシール性フイルムのPVDC塗布面とを接着層を介して貼合わせた」や上記(1)ウに示した「基材フイルムに印刷を施してこの印刷面と、基材フイルムより低い軟化温度を有するヒートシール性フイルムに必要によりアンカーコート層を介してPVDC剤を塗布・乾燥した該塗布面とを積層する事を特徴とした積層包装フイルム」との記載から、上記実施例1の「二軸延伸ポリプロピレン」が、上記(1)アや上記(1)エでいうところの「基材フイルム」に対応することは明らかである。
ウ 上記(1)オに示した「アンカーコート層塗布剤としては例えば・・・等の接着剤の水分散液又は有機溶剤溶液が挙げられ」との記載から、上記実施例1において0.2g/m2塗布される接着剤が、上記(1)オ等でいうところの「アンカーコート層」を形成することは明らかである。
エ 上記(1)コには、上記実施例1の透湿度が、2.5g/m2・24hであることが示されている。
上記(1)及び(2)から、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「片面に印刷した基材フイルムの印刷面と、片面にポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を設けたヒートシール性フイルムのポリ塩化ビニリデン樹脂塗布面とをアンカーコート層を介して貼合わせた気体遮断性積層フイルムであって、
前記基材フイルムがセロファンであり、
前記ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層は前記アンカーコート層上にPVDCを1~20g/m2塗布されたものである気体遮断性積層フイルム。」
また、上記(1)及び(2)から、甲2には、次の事項(以下、「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「基材フイルムとポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層をアンカーコート層を介して貼合わせた気体遮断性積層フイルムにおいて、
透湿度が、2.5g/m2・24hであり、
前記アンカーコート層として、接着剤を0.2g/m2塗布すること(実施例1)。」
3 甲第3号証
本件特許の出願前に公開された甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性を有する基材フィルムと、基材フィルムにパターン状に設けられた透湿阻害剤層とを有する透湿調整フィルムと、
透湿調整フィルムに設けられたヒートシール剤層とを備えたことを特徴とする透湿性包装用材料。
・・・
【請求項3】
基材フィルムは、プレーンセロハンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、MXDナイロン共押し出しナイロンフィルム、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体共押し出しナイロンフィルム、酸素バリア層コートナイロンフィルム、またはエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムからなることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。
【請求項4】
透湿阻害剤層は、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の透湿性包装用材料。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体に係り、とりわけ水分を含有する固体の飲食品、医薬品、化粧品等の内容物を包装しても、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥し過ぎない透湿性包装用材料、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体に関する。」
(3)「【0036】
図1に示すように、透湿性包装用袋10を構成する透湿性包装用材料1は、透湿性を有する基材フィルム2と、基材フィルム2の下面にパターン状に設けられた透湿阻害剤層4と、基材フィルム2の下面に、透湿阻害剤層4を覆って設けられたヒートシール剤層3とを備えている。
【0037】
このうち、基材フィルム2と透湿阻害剤層4とにより、透湿調整フィルム2Aが構成される。なお、図1において透湿調整フィルム2Aの下面にヒートシール剤層3が設けられているが、図2に示すように透湿調整フィルム2Aの下面に接着層5を介して透湿性を有する追加基材フィルム2aを設け、この追加基材フィルム2aの下面にヒートシール剤層3を設けてもよい。」
(4)「【0041】
具体的には、基材フィルム2および追加基材フィルム2aは、40℃、90%R.H.における水蒸気透過度が50g/m2・d(測定条件、40℃、90%R.H.、以下同様)以上、吸水率が5%以上であることが好ましい。
・・・
【0044】
上記の透湿性を有する基材フィルム2および追加基材フィルム2aとしては、具体的に、プレーンセロハンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム、MXD(メタキシレンジアミン)ナイロン共押し出しナイロンフィルム(株式会社興人製、商品名「SPY」等)、MXDナイロンブレンドナイロンフィルム(出光ユニテック株式会社製、商品名「ユニアスロン」等)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)共押し出しナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、商品名「エンブレムE300」等)、酸素バリア層コートナイロンフィルム(株式会社興人製、商品名「コーバリア」、呉羽化学工業株式会社製、商品名「ベセーラ」、株式会社クラレ製、商品名「クラリスタ」等)、またはEVOHフィルムを使用できる。」
(5)「【実施例3】
【0090】
実施例3は、図1に示す透湿性包装用材料1を用いた透湿性包装用袋10に対応している。
【0091】
吸水性を有する基材フィルム2として、実施例1と同じナイロンフィルムを用い、実施例1で用いた透湿阻害剤を、線幅0.8mm、スペース幅2mm、塗布量4g/m2、角度45度の格子模様で前記フィルム2全面に印刷し、ヒートシール剤層3および透湿阻害剤層4を一体に形成し、本発明に係る透湿性包装用材料1を製造した。尚、当該透湿性包装用材料の透湿阻害剤層4の塗付面積率は50%である。」
(6)「【0108】
(水蒸気透過度の測定結果) 上記で得られた透湿性包装用フィルムの構成をまとめて表1に、水蒸気透過度とヒートシール強度(ヒートシール条件、140℃、0.1MPa、2秒)の測定結果を表2に示す。
[図:0001406756000004.jpg]
」
(7)「
【図2】
[図:0001406756000005.jpg]
」
上記(1)乃至(7)から、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材フィルム2と、基材フィルム2の下面に設けられた透湿阻害剤層4とにより構成される透湿調整フィルム2Aと、
前記透湿調整フィルム2Aの下面に接着層5を介して設けられた追加基材フィルム2aと、ヒートシール剤層3とを有する透湿性包装用材料1であって、
前記基材フィルム2がプレーンセロハンフィルムからなり、
前記透湿阻害剤層4は、ポリ塩化ビニリデン樹脂からなり、
水蒸気透過度は約180g/m2・dであり、
前記透湿阻害剤層4は透湿阻害剤を4g/m2塗布して形成した透湿性包装用材料1。」
4 甲第4号証
本件特許の出願前に公開された甲第4号証(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とし、更に、黒色顔料と白色顔料とを含み、かつ、黒色顔料の含有量が、2.0重量%~25.0重量%からなり、白色顔料の含有量が、黒色顔料の含有量に対し1倍~15倍からなる樹脂組成物と、熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とし、更に、白色顔料を含み、かつ、白色顔料の含有量が、5.0重量%~30.0重量%からなる樹脂組成物と、熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とする樹脂組成物とを使用して共押出して、透明ないし半透明の樹脂層と白色着色層と灰色着色層と白色着色層の順に積層した4層の積層構造、または、透明ないし半透明の樹脂層と白色着色層と灰色着色層と白色着色層と透明ないし半透明の樹脂層の順に積層した5層の積層構造からなる共押出多層積層フィルムを製造し、
次に、上記の共押出多層積層フィルムの一方の面に、少なくとも、基材フィルムを積層して積層材を製造し、
しかる後、上記の積層材を使用し、その共押出多層積層フィルムの面を対向させて重ね合わせて重合体を製造し、
次いで、上記の重合体の周辺端部を、その内面層を構成する共押出多層積層フィルムをヒ-トシ-ル性樹脂層としてヒ-トシ-ルして製袋することを特徴とする包装用袋の製造法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(マルチサイト触媒を使用して重合したポリマ-、LLDPE)、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、熱可塑性ポリエステル系樹脂、または、熱可塑性ポリアミド系樹脂からなることを特徴とする上記の請求項1に記載する包装用袋の製造法。
・・・
【請求項9】
基材フィルムが、プラスチックフィルム、紙基材、酸素ガスあるいは水蒸気等の透過を阻止するバリア性基材、セロハン、織布ないし不織布、または、ガラス板の1種ないし2種以上からなることを特徴とする上記の請求項1~7のいずれか1項に記載する包装用袋の製造法。」
(2)「【0015】
次に、本発明において、上記のような本発明にかかる多層積層樹脂フィルムを使用し、これと他の基材フィルム等と任意に積層して製造する包装用材料としての積層材についてその一例を例示すると、上記の図1に示す本発明にかかる多層積層樹脂フィルムAを使用する場合で説明すると、まず、図6に示すように、所望の基材フィルム11のコロナ処理等からなる裏面に、所望の文字、記号、絵柄、図形、その他等からなる印刷模様層12を形成した後、該印刷模様層12を含む基材フィルム11の面に、上記の図1に示す多層積層樹脂フィルムAを、それを構成する一方の面を対向させて重ね合わせ、次いで、その両者の層間を、例えば、ラミネ-ト用接着剤層13等を介して積層して、本発明にかかる多層積層樹脂フィルムを使用した積層材Bを製造することができる。」
(3)「【0020】
而して、上記のような熱可塑性樹脂の1種ないし2種以上を使用して、本発明にかかる多層積層樹脂フィルムを構成する灰色着色層、白色着色層、および、透明ないし半透明の樹脂層等を形成することにより、各層の相互において親和性等を有し、共押出成形時に、各層が強固に密接着し、その強度等に優れ、かつ、耐侯性、耐熱性、耐水性、その他等の諸物性に優れた多層積層樹脂フィルムを構成し得るものである。」
上記(1)乃至(3)から、甲4には、次の事項(以下、「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「熱可塑性樹脂をビヒクルの主成分とした共押出多層積層フィルムの一方の面に、ラミネ-ト用接着剤層を介して、基材フィルムを積層した積層材であって、
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリアミド系樹脂からなり、
前記基材フィルムがセロハンからなる積層材。」
5 甲第5号証
本件特許の出願前に公開された甲第5号証(以下「甲5」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
包装材に使用する積層フィルムであって、樹脂基材上に耐熱コート層を有し、前記樹脂基材の耐熱コート層を有する面とは他面の表層がヒートシール性熱可塑性樹脂層からなり、前記耐熱コート層が酢酸セルロース及び有機溶媒を含有する酢酸セルロース系コーティング剤からなる層であることを特徴とする積層フィルム。」
(2)「【0011】
本発明の耐熱性熱可塑性積層フィルムは、酢酸セルロース系コーティング剤からなる耐熱コート層を有することで、簡易な構成により極めて高い耐熱性を実現できることから、薄肉化された構成においても高いヒートシール温度でのヒートシールが可能となり、シール可能な温度幅が大幅に拡大するため、生産効率の向上や製造コストの低減に大きく貢献できる。また、ヒートシール性熱可塑性樹脂層を有する樹脂基材上に耐熱コーティング剤を塗布することにより簡便に得られるものである。目的とする性能(透明性、剛性、加工性等)や用途(包装材、ポスター、ラベル等)に応じて当該多層フィルムの層構成を選択することで容易に設計変更が可能であり、汎用性に優れる。また、コーティング剤の溶媒として有機溶媒を使用することで耐熱コート層と樹脂基材の密着性が高く、包装機械適性も良好である。」
甲5から、次の事項が把握できる。
「セルロースからなるコート層を含む積層フィルムを、ラベルに用いること。」
6 甲第6号証
本件特許の出願前に公開された甲第6号証(以下「甲6」という。)には、次の事項が記載されている。
(3)「【0061】
本発明の積層体は、フィルム基材層と、フィルム基材層の一方に、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤およびアルコール系溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種と、バイオマス由来成分とを含有するバイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂を含み、前記バイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂のアミン価が1~13mgKOH/gであり、かつ、前記バイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である裏刷り用溶剤型グラビア印刷インキ組成物が、グラビア印刷法により塗工されて形成された印刷層と、該印刷層上にラミネート層とを有し、前記印刷層のバイオマス度(顔料を含まない)が3~40質量%であることが好ましい。
【0062】
前記フィルム基材層は、プラスチックフィルムまたはシートならびにこれらの積層体から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、PETとナイロンの共押出フィルム、ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでもよく、一種類または二種類以上を積層していてもよい。」
(4)「【0075】
本発明の積層体を用いて作成される形態としては、二方シール、三方シール、四方シール、ピローシール、スタンディングパウチ、封筒貼り、合掌貼り、ガゼット、溶断シール、角底袋、チューブ、キャラメル包装、オーバーホールド、フィンシール、まんじゅう包装、ひねり、ロケット、三角パック、ゲーブルトップ、ブリック、シボリ、カップ、トレイ、ボトル、ブリック、コンテナ、ボックス、ケース、番重、カバー、蓋材、キャップ、ラベル、インモールドカップなど包装用途に用いられる周知の形態のいずれでもよい。また、必要に応じて、包装袋に注出口や開閉用ジッパーなどを任意に取り付けることができる。」
甲6から、次の事項が把握できる。
「防湿セロハンからなるフィルム基材層を含む積層体を、ラベルに用いること。」
7 甲第7号証
本件特許の出願前に公開された甲第7号証(以下「甲7」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【0032】
[中間層]
本発明の多層フィルムは、さらに中間層を含み、この中間層は、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む。本発明では、中間層が二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含むことにより、熱処理によるカールを抑制し、多層フィルムに腰感も付与できる。
・・・
【0038】
(有機系バリア膜)
中間層は、前記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに加えて、有機系バリア膜をさらに含んでいてもよい。本発明では、有機系バリア膜を含むことにより、バリア膜の高い柔軟性により、酸素ガスバリア性の向上だけでなく、包装や移送時のダメージでバリア層にクラックが入ることによる酸素ガスバリア性の低下も抑制できる。
【0039】
有機系バリア膜を構成する有機系バリア性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体など)、水溶性多糖類(水溶性セルロース誘導体、水溶性澱粉、キトサンなど)などが挙げられる。これらの有機系バリア性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機系バリア性樹脂のうち、湿気や水分よる酸素ガスバリア性の低下も抑制できる点から、塩化ビニリデン系樹脂が好ましい。」
(2)「【0049】
二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムと有機系バリア膜とを組み合わせる場合、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの両面に有機系バリア膜を積層してもよく、有機系バリア膜の両面に二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層してもよいが、通常、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に有機系バリア膜が積層される。」
上記(1)及び(2)から、甲7には、次の事項(以下、「甲7記載の技術的事項」という。」)が記載されていると認められる。
「二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムと有機系バリア膜とを含む多層フィルムにおいて、
前記有機系バリア膜を構成する有機系バリア性樹脂としては、湿気や水分による酸素ガスバリア性の低下も抑制できる点から、塩化ビニリデン系樹脂が好ましく、
前記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの両面に前記有機系バリア膜を積層してもよいが、通常、前記二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの一方の面に前記有機系バリア膜が積層されること。」
第5 当審の判断
1 申立理由1-1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明における「セロハンからなる層」は、本件特許発明1における「セロファンからなる基材層」に相当する。
イ 甲1発明における「防湿塗料層」は、「セロハンからなる層」に両面コートされており、本件特許発明1において「セロファンからなる基材層の両面に」有する「防湿層」に相当する。甲1発明の「防湿塗料層」は、「硝酸セルロースを主体としたものや塩化ビニリデン樹脂などが塗布された層であ」るので、本件特許発明1の「防湿層」と、甲1発明の「防湿塗料層」とは、「硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であ」るとの概念で一致する。
ウ 本件特許発明1の「ラベル」と、甲1発明における「両面コートタイプ防湿セロハン」とは、「透湿度が200g/m2・24h以下」である点で一致する。
エ 坪量とは、1m2あたりの重量であり、甲1発明における「前記防湿塗料層の総坪量基準値は、2g/m2」であるので、本件特許発明1の「ラベル」と、甲1発明の「両面コートタイプ防湿セロハン」とは、で一致する。「前記防湿層の総塗工量が、2.0g/m2であ」る点で一致する。
オ 本件特許発明1の「セロファンからなる基材層の両面に」「防湿層を有」する「ラベル」と、甲1発明の「両面コートタイプ防湿セロハン」とは、「防湿セロファン」との概念で一致する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、
<一致点>
「セロファンからなる基材層の両面に防湿層を有し、
前記防湿層は、ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり、
透湿度が200g/m2・24h以下であり、
前記防湿層の総塗工量が、2g/m2である防湿セロファン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1は、セロファンからなる基材層の両面に「接着層を介して」防湿層を有し、「前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2以上、1.0g/m2以下である」のに対して、甲1発明は、防湿塗料をセロハンからなる層にコートする直前にアンカー剤を添加しているので防湿塗料層にアンカー剤は含まれるが、防湿塗料層とは別のセロハンと防湿塗料が構成する層を介在する接着層は存在しない点。
<相違点2>
本件特許発明1は「ラベル」であるのに対して、甲1発明は「両面コートタイプ防湿セロハン」であって「ラベル」ではない点。
(2)判断
ア (1)に示したとおり、本件特許発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び2において相違するものであって、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
イ したがって、本件特許発明1は、甲1から特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書9~10ページにおいて、次のように主張している。
ア 「甲1文献では、セロハン(基材層に相当)と塗膜(防湿層に相当)との間にアンカー剤(接着層に相当)が介在されること(本件特許発明1の構成{A})が記載されているものの、アンカー剤の塗工量(本件特許発明1の構成{E})について具体的に記載されていない点で本件特許発明1と一見相違する。」
イ 「しかしながら、本件特許発明1の段落「0021」において「塗工量の上限は、1.0g/m2よく、0.9g/m2が好ましく、0.8g/m2がより好ましい。1.0g/m2より多いと、使用する材質が生分解性でない場合が通常であるため、生分解性を十分に担保できないおそれがある。」と記載されるように、接着層の塗工量の上限は任意に設定した事項にすぎない。」
ウ 「また、防湿層(構成{B}{C})を備えた積層フィルムにおいて、接着層の塗工量を0.2g/m2以上、1.0g/m2以下程度とすること(構成{E})は、甲2文献(特に3ページ目右上欄13行~3ページ目左下欄2行(後述の記載事項2-5)参照)に記載されるように周知であり、一般的な接着層の塗工量を特定したものである。」
エ 「従って、本件特許発明1の構成{E}は単なる設計的事項にすぎず、甲1文献との実質的な差異はない。」
オ 「このように、甲1文献には、本件特許発明1のラベルの物性を特定する構成{A}~{E}がすべて開示又は示唆されているといえる。
そうすると、本件特許発明1の構成{A}~{E}は、単なる公知の防湿セロハンの物性を特定した事項であるから、本件特許発明1のラベル(構成{F})は、公知の防湿セロハンの使用形態を特定するにすぎない。
なお、防湿セロハン等の積層フィルムや防湿セロハンを用いた積層体等においては、材料の配合や積層構造等の構成を同一として、包装材やラベル等の様々な形態で使用されることが一般的である(例えば、参考文献1として甲5文献の段落「0011」等、参考文献2として甲6文献の段落「0062」「0075」等参照)から、防湿セロハンの使用形態を特定することは発明特定事項とはなり得ない。」
カ 「よって、本件特許発明1は、甲1文献(周知技術として甲2文献、参考文献として甲5,6文献)と同一であるか又は甲1文献(周知技術として甲2文献、参考文献として甲5,6文献)に基づいて当業者が容易になし得たものである。」
キ しかし、上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると相違点1及び2があるので、上記(3)エ及びカの新規性に関する申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
よって、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではないから、申立理由1-1により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2について
(1)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明における「セロファンであ」る「基材フイルム」は、本件特許発明1における「セロファンからなる基材層」に相当する。
イ 甲2発明における「アンカーコート層」は、本件特許発明1における「接着層」に相当する。
ウ 甲2発明における「ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層」は、本件特許発明1における「防湿層」に相当する。本件特許発明1における「防湿層」と、甲2発明における「ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層」とは、「ポリ塩化ビニリデン系樹脂」「を含有する層であり」との概念で一致する。
エ 甲2発明において「前記ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層は前記アンカーコート層上にPVDCを1~20g/m2塗布されたものである」ので、甲2発明の「気体遮断性積層フイルム」と本件特許発明1の「ラベル」とは、本件特許発明1における「前記防湿層の総塗工量が、1.0g/m2以上、7.0g/m2以下であり」との概念で一致する。
オ 上記第4 2(1)ケに示したとおり、甲2発明の「気体遮断性積層フイルム」は、水蒸気遮断性が良好なものであり、水蒸気遮断性が良好であるからには防湿性を有するものといえる。本件特許発明1の「セロファンからなる基材層の両面に」「防湿層を有」する「ラベル」と、甲2発明の「気体遮断性積層フイルム」とは、「セロファンからなる層を有する防湿性の積層体」との概念で一致する。
したがって、本件特許発明1と甲2発明は、
<一致点>
「セロファンからなる基材層に接着層を介して防湿層を有し、
前記防湿層は、ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり、
前記防湿層の総塗工量が、1.0g/m2以上、7.0g/m2以下であるセロファンからなる層を有する防湿性の積層体。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件特許発明1はセロファンからなる基材層の「両面」に接着層を介して防湿層を有するのに対して、甲2発明は基材フイルムの「片面」にアンカーコート層を介してポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を有している点。
<相違点4>
本件特許発明1は「透湿度が1000g/m2・24h以下であ」るのに対して、甲2発明は基材フイルムがセロハンである場合の透湿度が明らかでない点。
<相違点5>
本件特許発明1は「前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2以上、1.0g/m2以下であること」という発明特定事項を有するのに対して、甲2発明は基材フイルムがセロハンである場合のアンカーコート層の塗工量が明らかでない点。
<相違点6>
本件特許発明1は「ラベル」であるのに対して、甲2発明は「気体遮断性積層フイルム」であって「ラベル」ではない点。
(2)判断
ア (1)に示したとおり、本件特許発明1と甲2発明とは、相違点3乃至6において相違するものであって、本件特許発明1は、甲2発明ではない。
イ したがって、本件特許発明1は、甲2から特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書12~14ページにおいて、次のように主張している。
ア 「また、甲2文献の積層フィルムでは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂塗布層(防湿層に相当)が基材フィルムの片面に設けられるのに対して、本件特許発明1では基材層の両面に防湿層を有する積層構造(本件特許発明1の構成{A})とされている点で一見相違する。
しかしながら、例えば甲1文献の防湿セロハンでは両面コートタイプと片面コートタイプが開示されており(「記載事項1-6」等参照)、甲2文献の積層フィルムは甲1文献の防湿セロハン片面コートタイプに相当するといえる。
また、参考文献3(甲7文献の段落「0038」~「0040」「0048」~「0050」等参照)においても防湿効果を有する層(塩化ビニリデン系樹脂の有機系バリア膜)を基材層の両面に積層しても一方の面に積層してもよいことが開示されている。
このように、所望の防湿効果を発現させるにあたって、基材層の片面あるいは両面のいずれに防湿層を積層するかは任意であり、単なる設計事項にすぎず、実質的な差異はない。」
イ 「以上の通り、本件特許発明1は、防湿性を備えた積層フィルムにおける公知の物性を特定したに過ぎないものである。
よって、本件特許発明1は、甲2文献(周知技術として甲1,3文献、参考文献として甲5,7文献)と同一であるか又は甲2文献(周知技術として甲1,3文献、参考文献として甲5,7文献)に基づいて当業者が容易になし得たものである。」
ウ しかし、上記第4 2(2)のとおり、甲2発明は、基材フイルムの「片面」にアンカーコート層を介してポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を設けるものであって、甲2に、基材フイルムの「両面に」アンカーコート層を介してポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を設けることは、記載も示唆もされていないから、相違点3は、実質的な相違点である。したがって、上記2上記(1)及び(2)に示したとおり、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると相違点3乃至6があるので上記(3)イの新規性に関し同一との申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
よって、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではないから、申立理由1-2により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由1-3について
(1)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
ア 甲3発明における「プレーンセロハンフィルムからな」る「基材フィルム2」は、本件特許発明1における「セロファンからなる基材層」に相当する。
イ 甲3発明において「水蒸気透過度は約180g/m2・dであ」るので、本件特許発明1における「ラベル」と、甲3発明における「透湿性包装用材料1」とは、「透湿度が180g/m2・24h」である点で一致する。
ウ 甲3発明における「ポリ塩化ビニリデン樹脂からな」る「透湿阻害剤層4」は、本件特許発明1における「防湿層」に相当する。本件特許発明1における「防湿層」と、甲3発明における「ポリ塩化ビニリデン樹脂からな」る「透湿阻害剤層4」とは、「ポリ塩化ビニリデン系樹脂」「を含有する層であり」との概念で一致する。
エ 甲3発明において「前記透湿阻害剤を塗布量4g/m2で形成」されているので、本件特許発明1における「ラベル」と、甲3発明における「透湿性包装用材料1」とは、「前記防湿層の総塗工量が、4g/m2」である点で一致する。
オ 本件特許発明1における「ラベル」と、甲3発明における「透湿性包装用材料1」とは、「セロファンからなる基材層を有する物品」との概念で一致する。
したがって、本件特許発明1と甲3発明は、
<一致点>
「セロファンからなる基材層に防湿層を有し、
前記防湿層は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を含有する層であり、
透湿度が180g/m2・24hであり、
前記防湿層の総塗工量が、4g/m2であるセロファンからなる基材層を有する物品。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点7-1>
本件特許発明1は「セロファンからなる基材層」「に接着層を介して防湿層を有」するのに対して、甲3発明は「基材フィルム2と、基材フィルム2の下面に設けられた透湿阻害剤層4とにより構成される透湿調整フィルム2A」の下に接着層5を有するが、前記「基材フィルム2」と前記「透湿調整フィルム2A」とを介在する接着層は有さない点。
<相違点7-2>
本件特許発明1は「前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2以上、1.0g/m2以下である」という発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は上述のとおり「基材フィルム2」と前記「透湿調整フィルム2A」とを介在する接着層を有さないので、当該発明特定事項も有していない点。
<相違点8>
本件特許発明1は「セロファンからなる基材層」の「両面」に「防湿層」を有するのに対して、甲3発明は「プレーンセロハンフィルムを使用でき」る「基材フィルム2」の「片面」に「透湿阻害剤層4」を有している点。
<相違点9>
本件特許発明1は「ラベル」であるのに対して、甲3発明は「透湿性包装用材料」であって「ラベル」ではない点。
(2)判断
ア (1)に示したとおり、本件特許発明1と甲3発明とは、相違点7-1、7-2、8及び9において相違するものであって、本件特許発明1は、甲3発明ではない。
イ したがって、本件特許発明1は、甲3から特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書16ページにおいて、次のように主張している。
ア 「さらに、甲3文献では、基材フィルム(基材層に相当)と透湿阻害剤層(防湿層に相当)との間に接着層が介在されること(本件特許発明1の構成{A})が記載されているものの、接着層の塗工量(本件特許発明1の構成{E})について具体的に記載されていない点で一見相違する。
しかしながら、前記の通り本件特許発明1の接着層の塗工撮の上限は当業者が適宜設定した事項であり(段落「0021」等参照)、接着層の塗工量を0.2g/m2以上、1.0g/m2以下程度とすることは一般的な接着層の塗工量を特定したもの(周知技術として甲2文献の「記載事項2-5」等参照)であるから、単なる設計的事項にすぎず、甲3文献との実質的な差異はない。
従って、甲3文献には、本件特許発明1のラベルの物性を特定する構成{A}~{E}がすべて開示又は示唆されている。」
イ 「以上の通り、本件特許発明1は、防湿性を備えた積層フィルムにおける公知の物性を特定したに過ぎないものである。
よって、本件特許発明1は、甲3文献(周知技術として甲1,2文献、参考文献として甲5,7文献)と同一であるか又は甲3文献(周知技術として甲1,2文献、参考文献として甲5,7文献)に基づいて当業者が容易になし得たものである。」
ウ 申立人は、上記(3)アに示したとおり「甲3文献では、基材フィルム(基材層に相当)と透湿阻害剤層(防湿層に相当)との間に接着層が介在されること(本件特許発明1の構成{A})が記載されている」と主張するが、上記(1)に示した相違点7-1を看過しており、甲3を誤認している。
上記(3)イの申立人の新規性に基づく主張は、甲3の誤認に基づくものであり、採用できない。
(4)小括
よって、本件特許発明1は、甲3発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではないから、申立理由1-3により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由2-1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、上記1(1)に示した一致点、相違点1及び相違点2を有する。
(2)判断
まず、相違点1について検討する。
ア 甲2記載の技術的事項における「基材フイルム」、「アンカーコート層」及び「ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層」は、本件特許発明1の「基材層」、「接着層」「防湿層(「ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり」と特定されるうちの「ポリ塩化ビニリデン系樹脂」の部分)」に相当し、上記相違点1に関し、本件特許発明1の「防湿層」と、甲2記載の技術的事項における「ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層」とは、基材層に「接着層を介して」設けられ、「前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2である」点で一致する。
そうすると、上記相違点1は、甲2記載の技術的事項に示されているといえる。
イ そこで、上記相違点1について、甲1発明に甲2記載の技術的事項を組み合わせることが当業者にとって容易であるかを検討する。
甲1発明は、上記第4 1(2)に示したとおり、アンカー剤を添加する一般的な方法として、「防湿塗料をセロハンにコートする直前にアンカー剤を添加し塗布」する方法を採用し、以て、防湿塗料の接着力を確保しているので、防湿塗料をセロハンにコートする前に、アンカー剤を添加された防湿塗料により構成される層とは別の接着層を塗布しようとする動機がなく、甲1発明に甲2記載の技術的事項を組み合わせることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。また、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)との接着しやすさは、接着対象の材料によって異なるところ、甲1発明は防湿セロハンであるのに対して、甲2において接着剤の塗布量が示されている実施例1における「基材フィルム」はポリプロピレンであり、接着対象の材料が異なることからしても、甲1発明に甲2記載の技術的事項を組み合わせることが、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 上記第4 4(3)に示した甲4記載の技術的事項における「『セロハンからなる』『基材フィルム』」、「ラミネ-ト用接着剤層」及び「『熱可塑性ポリアミド系樹脂からな』る『記熱可塑性樹脂』」は、それぞれ本件特許発明1の「基材層」、「接着層」及び「防湿層(「ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり」と特定されるうちの「ポリアミド系樹脂」の部分)」に相当するが、甲4には、上記相違点1に関し、「ラミネ-ト用接着剤層」の塗工量についての開示はない。申立人が提出した甲3、5乃至7にも、上記相違点1に関連する事項は記載されていない。
エ 本件特許発明1は、発明の詳細な説明の段落【0021】に記載のとおり、「セロファンからなる基材層の両面に接着層を介して防湿層を有」し、「前記接着層の塗工量が、それぞれの接着層において、0.2g/m2以上、1.0g/m2以下であること」により、基材層1と防湿層3の間の十分な接着性能を付与できないおそれや、生分解性を十分に担保できないおそれを無くし、発明の詳細な説明の段落【0007】に記載の「環境への負荷の低いラベルを提供する」という目的を達しており、甲1及び甲2に対して有利な効果を奏するものである。とりわけ、接着層の塗工量を1.0g/m2以下とすることで、生分解性を十分に担保するという効果は、甲1にも甲2にも開示されておらず、甲1発明や甲2記載の技術的事項から予測できるものともいえない。したがって、相違点1における接着層の塗工量を「0.2g/m2以上、1.0g/m2以下」とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項ということもできない。
(3)申立人の主張について
申立人は、上記1(3)ア乃至カのとおり、甲1を主たる証拠として、上記1(3)ウに示したとおり甲2について述べた上で、本件特許発明1の進歩性欠如を主張している。
しかし、甲1発明に甲2記載の技術的事項を組み合わせることが、当業者にとって容易に想到し得ないことは、上記4(2)ア、イにおいて示したとおりである。
さらに、また、上記4(2)ウに示したとおり、接着層の塗工量を設定することで、本件特許発明1は甲1及び甲2に対して有利な効果を奏するので、申立人が上記1(3)イ乃至エで述べるように、接着層の塗工量の数値範囲を設計的事項として進歩性を否定することはできない。
よって、上記1(3)カの進歩性に関する申立人の主張を、採用することはできない。
(4)小括
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、申立理由2-1により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由2-2について
(1)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、上記1(2)に示した一致点、相違点3乃至6を有する。
(2)判断
まず、相違点3について検討する。
ア 甲2発明は、上記第4 2(2)に示したとおり、食品等の包装材料としての気体遮断性積層フイルムであり、上記第4 2(9)及び(10)に示したとおり、基材フイルムの「片面」にポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を貼合わせた当該気体遮断性積層フイルムでもって、2.5~5.6g/m2・24h程度の透湿度を実現でき、水蒸気遮断性が良好なものである。
イ 上記第5 1(1)ア及びイに示したとおり、甲1発明における「セロハンからなる層」及び「防湿塗料層」は、本件特許発明1における「セロファンからなる基材層」及び「防湿層」に相当し、上記第4 1(4)等に示したとおり、甲1には両面コートタイプ防湿セロハンと片面コートタイプ防湿セロハンとが並記されており、上記相違点3に関し、甲1発明と本件特許発明1とは、セロファンからなる基材層の「両面」に「防湿層」を有する点で一致する。
ウ また、上記第4 4に示した甲7記載の技術的事項における「二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム」及び「有機系バリア膜」は、本件特許発明1における「基材層」及び「防湿層」に相当し、甲7記載の技術的事項と本件特許発明1とは、基材層の「両面」に「防湿層」を有する点で一致する。
エ しかし、上記第4 2(1)イに「これらのフイルムは単独では,機械的強度,ヒートシール性,防湿性,耐水性,耐熱性が不充分であるため」と記載されているように、甲2発明は、単独のフイルムではなく、基材フイルムの「片面」にポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を貼合わせた気体遮断性積層フイルムとすることで、良好な水蒸気遮断性を実現しているのであるから、当業者が甲2発明を主の引用発明とした場合に防湿性の観点から甲1又は甲7に記載の事項を組み合わせて、「片面」でなく「両面」にポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層を貼合わせようとする動機がないし、良好な水蒸気遮断性を実現するために「片面」を採用した甲2発明に対して、「両面」の甲1又は甲7に記載の事項を組み合わせることは阻害要因があるといえる。
したがって、上記相違点3に関し、甲2発明に甲1発明又は甲7記載の技術的事項を組み合わせることは当業者にとって容易に想到し得ることではない。
オ また、甲4記載の技術的事項は、共押出多層積層フィルムの「一方の面」に基材フィルムを積層した積層材であって、上記相違点3に関し、基材フィルムの「両面」に共押出多層積層フィルムを設けることは甲4に開示されていない。申立人が提出した甲3、5及び6にも、上記相違点3に関連する事項は記載されていない。
カ 本件特許発明1は、発明の詳細な説明の段落【0031】に記載のとおり、「冷凍や冷蔵で輸送や保管をすることがあり得る、飲料や食品等の容器、例えば、ボトル、ビン、ケース等のラベル」として用いることが想定され、基材層の「両面」に防湿層を有することで、大気中からの水蒸気のみならず、飲料や食品等の容器に生じる「結露等により水分がラベルに接触しても、ラベルにしわが発生したり、基材層と印刷層との間の層間剥離が生じたりするのを抑制できる」という甲2発明に対して有利な効果を奏するものと認められる。
キ このような効果を踏まえると、上記相違点3は設計的事項といえるものでもない。
(3)申立人の主張について
申立人は、上記2(3)ア及びイのとおり、甲2を主たる証拠として、本件特許発明1の進歩性欠如を主張している。
上記2(3)アにおいて、申立人は、甲1や甲7に記載の事項を示した上で、「基材層の片面あるいは両面のいずれに防湿層を積層するかは任意であり、単なる設計事項にすぎず、実質的な差異はない。」と主張するが、上記5(2)アに示したとおり、甲2発明に甲1又は甲7に記載の事項を組み合わせることは当業者にとって容易に想到し得ることではない。
さらに、上記5(2)イに示したとおり、接着層の塗工量を設定することで、本件特許発明1は有利な効果を奏するので、上記相違点3は、申立人が上記2(3)アで述べるように「単なる設計事項にすぎず、実質的な差異はない」といえるものでもない。
よって、上記2(3)イの進歩性に関する申立人の主張を、採用することはできない。
(4)小括
したがって、相違点4乃至6について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明に基いて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、申立理由2-2により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由2-3について
(1)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、両者は、上記1(3)に示した一致点、相違点7-1、7-2、8及び9を有する。
(2)判断
まず、相違点7-1について検討する。
ア 上記第4 2(2)に示した甲2記載の技術的事項における「基材フイルム」、「アンカーコート層」及び「ポリ塩化ビニリデン樹脂塗布層」は、本件特許発明1の「基材層」、「接着層」「防湿層(「ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり」と特定されるうちの「ポリ塩化ビニリデン系樹脂」の部分)」に相当するので、甲2記載の技術的事項は上記相違点7-1に関し、「セロファンからなる基材層に接着層を介して防湿層を有し」との構成を開示している。
イ 上記第4 4(3)に示した甲4記載の技術的事項における「『セロハンからなる』『基材フィルム』」、「ラミネ-ト用接着剤層」及び「『熱可塑性ポリアミド系樹脂からな』る『記熱可塑性樹脂』」は、それぞれ本件特許発明1の「基材層」、「接着層」及び「防湿層(「ポリアミド系樹脂、硝化綿系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する層であり」と特定されるうちの「ポリアミド系樹脂」の部分)」に相当するので、甲4記載の技術的事項は上記相違点7-1に関し、「セロファンからなる基材層に接着層を介して防湿層を有し」との構成を開示している。
ウ しかし、甲3には、「基材フィルム2」と前記「透湿調整フィルム2A」とを介在する接着層を設けることは記載も示唆もされていない。そして、甲3発明は、「基材フィルム2と、基材フィルム2の下面に設けられた透湿阻害剤層4とにより構成される透湿調整フィルム2A」の下に接着層5を有し、当該透湿阻害剤層4はパターン状であるから、上記第4 3(7)に示したとおり、接着層5は透湿阻害剤層4のみならず基材フィルム2とも接している。この構成からすると、接着層5により透湿阻害剤層4が基材フィルム2から剥離することを抑制できることは明らかであるので、甲2に接した当業者であったとしても、甲3発明において透湿阻害剤層4と基材フィルム2とを介在する接着層を設けて接着力を強化することは容易に想到し得ない。
エ 一方、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の段落【0020】や図1に示されるとおり、全面形成されている基材層1と全面形成されている前記防湿層3とを介在する接着層2により、「前記基材層1が前記防湿層3や前記印刷層4から剥離するのを抑制する」という効果を有する。
オ 上記第5 1(1)ア及びイに示したとおり、甲1発明における「セロハンからなる層」及び「防湿塗料層」は、本件特許発明1における「セロファンからなる基材層」及び「防湿層」に相当するが、上記第5 1(1)に相違点1として示したとおり、甲1発明は、上記相違点7-1に関し、「セロハンからなる層」及び「防湿塗料層」を介在する接着層を有していない。これらに加え、申立人が提出した甲5-7を踏まえても、上記相違点7-1を設計的事項とする根拠はない。
(3)申立人の主張について
申立人は、上記3(3)ア及びイのとおり、甲3を主たる証拠として、本件特許発明1の進歩性欠如を主張している。
しかし、上記3(3)ウに示したとおり、申立人の主張は、甲3の誤認に基づくものであり、採用できない。
(4)小括
したがって、相違点7-2、8、9について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明に基いて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでもないから、申立理由2-3により、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した申立理由によって、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701126