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特許異議申立

2020-700723

光学フィルム

審判番号
2020-700723
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-093099
登録番号
6670967
請求日
2020年09月23日
審決日
2021年12月23日
公報発行日
2022年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友化学株式会社
  • 【権利者代理人】森住 憲一
  • 【権利者代理人】岩木 郁子
  • 【異議申立人】瀧瀬 洋輔
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 細井 龍史
分類
P1651.113-YAA(G09F) / P1651.121-YAA(G09F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6670967号発明「光学フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6670967号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。 特許第6670967号の請求項1、2及び4ないし10に係る特許を維持する。 特許第6670967号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6670967号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、令和1年5月16日(優先権主張 平成30年9月28日)の出願であって、令和2年3月4日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月23日に特許異議申立人 瀧瀬 洋輔(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、同年12月4日付けで取消理由が通知され、令和3年2月5日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年3月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年4月15日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年6月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年8月27日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年9月10日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年10月14日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 なお、令和3年2月5日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和3年8月27日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「0≦Ts≦0.35 (1)」とあるのを、 「0≦Ts≦0.27 (1)」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれJIS K 7136に準拠して測定された拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表す」とあるのを、 「式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「を満たし、」とあるのを、 「を満たし、 JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり、」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に 「該ポリアミドイミド樹脂は、」とあるのを、 「厚さは30μm超であり、 該ポリアミドイミド樹脂は、」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に 「該ポリアミドイミド樹脂は、式(10): 【化1】 [図:0001383243000001.jpg] [式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位と、式(13): 【化2】 [図:0001383243000002.jpg] [式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、」とあるのを、 「該ポリアミドイミド樹脂は、式(10): 【化1】 [図:0001383243000003.jpg] [式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位と、式(13): 【化2】 [図:0001383243000004.jpg] [式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1に 「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、0.1~6.0モルである、」とあるのを、 「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、」 に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4に 「厚さは10~150μmである」とあるのを、 「厚さは30μm超150μm以下である」 に訂正する。 併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4の引用先を、「請求項1又は2に」と訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項5の引用先を、「請求項1、2及び4のいずれか」と訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6の引用先を、「請求項1、2、4及び5のいずれか」と訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項8の引用先を、「請求項1、2及び4~7のいずれか」と訂正する。 (13)訂正事項13 明細書の【0128】に 「[実施例4:光学フィルム(4)の製造]」とあるのを、 「[実施例4(参考例):光学フィルム(4)の製造]」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「Ts」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2による請求項1についての訂正は、「Td及びTt」の測定方法を明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項3による請求項1についての訂正は、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項4による請求項1についての訂正は、「光学フィルム」の「厚さ」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項5による請求項1についての訂正は、「ポリアミドイミド樹脂」の「重量平均分子量」の限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項6による請求項1についての訂正は、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量」の「式(10)で表される繰り返し構造単位1モル」に対する「比」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし6による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項8による請求項3についての訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項4についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項4についての訂正は、「厚さ」の範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項9による請求項4についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7及び9による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項5についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項5についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項10による請求項5についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7及び10による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項6についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項6についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項6についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項11による請求項6についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7及び11による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)請求項7についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項7についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項7についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)請求項8についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項8についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項8についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項12による請求項8についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7及び12による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)請求項9及び10についての訂正について 訂正事項1ないし6による請求項9及び10についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7による請求項9及び10についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7による請求項9及び10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)明細書についての訂正について 訂正事項13による明細書についての訂正は、訂正事項1ないし12により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項13による明細書についての訂正に係る一群の請求項の全てについて訂正請求は行われている。 3 むすび 以上のとおり、請求項1ないし10についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 また、明細書についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし10は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項1ないし10についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし10〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリアミドイミド樹脂を含み、式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される] を満たし、 JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり、 厚さは30μm超であり、 該ポリアミドイミド樹脂は、式(10): 【化1】 [図:0001383243000005.jpg] [式中、Gは4価の有機基であり、Aは2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位と、式(13): 【化2】 [図:0001383243000006.jpg] [式中、G3及びA3は、それぞれ2価の有機基である] で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、 式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。 【請求項2】 80℃における引張弾性率は、4,000~9,000MPaである、請求項1に記載の光学フィルム。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 厚さは30μm超150μm以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。 【請求項5】 フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して5質量%以下である、請求項1、2及び4のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項6】 少なくとも一方の面にハードコート層を有する、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の光学フィルム。 【請求項7】 前記ハードコート層の厚さは3~30μmである、請求項6に記載の光学フィルム。 【請求項8】 請求項1、2及び4~7のいずれかに記載の光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置。 【請求項9】 さらに、タッチセンサを備える、請求項8に記載のフレキシブル表示装置。 【請求項10】 さらに、偏光板を備える、請求項8又は9に記載のフレキシブル表示装置。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和2年9月23日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第7号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし5及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第9号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(甲第1号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由5(甲第7号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由6(甲第9号証を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)証拠方法 甲第1号証:特開2017-203984号公報 甲第2号証:Elastomers and Composites. Vol.50,No.1,pp.49-54(March 2015) 甲第3号証:JIS K 7136:2000 プラスチック-透明材料のヘーズの求め方 甲第4号証:JIS K 7105:1981 プラスチックの光学的試験方法 甲第5号証:JISハンドブック JIS総目録 p.634-635 甲第6号証:特開2017-25204号公報 甲第7号証:国際公開第2018/147618号 甲第8号証:日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000W カタログ 甲第9号証:特開2018-119132号公報 甲第10号証:特開2018-119144号公報 参考資料1:JIS Z 8782:1999 参考資料2:JIS Z 8781:1999 参考資料3:JIS Z 8781-2:2012 参考資料4:「色彩工学入門」、森北出版株式会社、2007年5月1日、p.100~101、p.154~155、及び奥付 なお、参考資料1ないし4は、令和3年4月15日に特許異議申立人が提出した意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 2 取消理由(決定の予告)の概要 令和3年6月28日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由1は申立理由1及び4と同旨である。 (2)取消理由2(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし5及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲7に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由2は申立理由2及び5と同旨である。 (3)取消理由3(甲9を主引用文献とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、上記甲9に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由3は申立理由3及び6と同旨である。 第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項及び甲1発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「光学フィルム、及びこれを用いたフレキシブルデバイス」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 ・「【請求項10】 フレキシブルデバイス部材の前面板に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学フィルム。 【請求項11】 請求項1~10のいずれか一項に記載の光学フィルムを備えるフレキシブルデバイス。」 ・「【0005】 しかし、ポリイミド系高分子又はポリアミド等を含有する光学フィルムに関しては、吸湿特性等の更なる改善が必要であり、また、高い透明性(Haze<1)、少ない着色(YI<5)、及び十分な紫外線吸収能の全ての点で満足できる性能を達成することが、従来困難であった。 【0006】 そこで、本発明の一側面の目的は、ポリイミド系高分子等を含む光学フィルムに関して、吸湿特性、高い透明性(Haze<1)、少ない着色(YI<5)、及び十分な紫外線吸収能の点で改善を図ることにある。」 ・「【0069】 本実施形態に係る光学フィルムに、ハードコート層、粘着層、色相調整層などの機能層を付加した積層フィルムを形成することもできる。 【0070】 本実施形態に係る光学フィルムはフレキシブルデバイス部材の前面板などに好適に用いることができる。適用可能なフレキシブルデバイスは、表示装置に限られない。例えば、光電変換素子が形成された基板と、基板表面に設けられた前面板とを有する太陽電池にも本実施形態に係るフィルムを前面板として採用できる。この場合、太陽電池が全体として優れた耐屈曲性を有することができる。 本実施形態に係る光学フィルムを備えるフレキシブルデバイスは、透明で着色が少なく、紫外線を効率的に吸収するとともに、吸湿特性が向上した光学フィルムによって偏光板等の内部の構成部材を適切に保護できるため、視認性が優れるとともに、高い耐光性を有することができる。」 ・「【0080】 2.ポリイミドおよびポリアミドイミド(ポリイミド系高分子) 樹脂A:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(以下、6FDAと略すことがある)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(以下、TFMBと略すことがある)の共重合体であるポリイミド 樹脂B:可溶性ポリイミド(河村産業(株)製「KPI-MX300F」) 樹脂C:テレフタロイルクロリド(以下、TPCと略すことがある)、6FDA、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(以下、OBBCと略すことがある)およびTFMBの共重合体であるポリアミドイミド」 ・「【0082】 (製造例2)樹脂Cの製造 窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。 得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入した。析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(樹脂C)を得た。 【0083】 3.ポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルム(光学フィルム) (実施例1) 製造例1で準備したポリイミドワニスをγ-ブチロラクトンで希釈して濃度16質量%のポリイミドワニスを調整した。そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌した。紫外線吸収剤の量は、ポリイミドの100質量部に対して3質量部とした。 【0084】 得られたポリイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成した。ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで、Haze0.1%、YI2.2、厚み80μmのポリイミドフィルムを得た。」 ・「【0091】 (実施例5) 製造例2で準備したポリアミドイミドワニスをγ-ブチロラクトンで希釈して濃度16質量%のポリアミドイミドワニスを調整した。そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得た。紫外線吸収剤の量は、ポリアミドイミドの100質量部に対して5質量部とした。 【0092】 得られたポリアミドイミドワニスを実施例1と同様に製膜して、Haze0.3%、YI2.0、厚み50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。」 ・「【0096】 (比較例4) Sumisorb340(紫外線吸収剤)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を混合しないことの他は実施例5と同様にして、Haze0.2%、YI1.7、厚み50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。」 ・「【0097】 (評価) ヘイズ 光学フィルム(ポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルム)を、全自動直読ヘーズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM-2DP)のサンプルホルダーにセットして、光学フィルムのヘイズを測定した。Haze<1を良好、Haze≧1を不良として表2中に結果を示した。」 ・「【0101】 【表2】 [図:0001383243000007.jpg] 」 イ 甲1発明 甲1に記載された事項を、実施例5及び比較例4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例5発明」及び「甲1比較例4発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1実施例5発明> 「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行って、ポリアミドイミド樹脂を得、得たポリアミドイミド樹脂をγ-ブチロラクトンで希釈し、そこにSumisorb 340(紫外線吸収剤)のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を混合した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得、得られたポリアミドイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成し、ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで得たHaze0.3%、厚み50μmの光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)。」 <甲1比較例4発明> 「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc849.23gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA14.45g(32.52mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでTPC23.11g(113.84mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン9.98g(126.20mmol)と無水酢酸13.28g(130.10mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行って、ポリアミドイミド樹脂を得、得たポリアミドイミド樹脂をγ-ブチロラクトンで希釈した後、30分間攪拌して、ポリアミドイミドワニスを得、得られたポリアミドイミドワニスをガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分の順で加熱することにより塗膜から溶媒を除去して、フィルムを形成し、ガラス基板から剥離したフィルムを金枠に取り付け、これを210℃で1時間加熱することで得たHaze0.2%、厚み50μmの光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)。」 (2)甲7に記載された事項及び甲7発明 ア 甲7に記載された事項 甲7には、「ポリアミドイミドフィルムの製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。 ・「発明が解決しようとする課題 [8] 本発明は、向上された光学的特性および機械的特性を有するポリアミドイミドフィルムの製造方法を提供する。」 ・「[64] 実施形態において、前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の含有量を適切に調節することにより、複雑な過程がなくても光学的特性、機械的物性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリアミドイミドフィルムが得られる。」 ・「[101]前述のような方法により製造された一実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、厚さ20μm~70μm、より詳しく、約25μm~約60μmを基準に、表面硬度が約HB以上であり得る。さらにより詳しく、本実施形態によるポリアミドイミドフィルムは、前記厚さを基準に約H以上であり得る。」 ・「[107] 実施例により製造されたポリアミドイミドフィルムは、無色透明でありながらも機械的物性に優れ、柔軟性に優れ、フレキシブル(flexible)ディスプレイ分野で有用に使用することができる。」 ・「[108] 発明を実施するための形態 [109] 以下、本発明の一実施例をより詳細に説明する。しかしこれは、本発明の一実施例を例示するものであるのみ、本発明の内容が以下の内容に限定されるものではない。 [110] [111] (実施例1) [112] 温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4、4'-ジアミノビフェニル(TFDB)64g(0.2モル)を徐々に投入しながら溶解させた。 [113] 次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)26.6g(0.06モル)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。 [114] そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)23.4g(0.084モル)を投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)11.4g(0.056モル)投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製した。 [115]前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥した。乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理した。具体的に、前記熱処理は80℃~300℃の温度範囲で2℃/minの速度で昇温させながら行い、その結果、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルムを得た。 [116] [117] (実施例2~実施例4および比較例1~比較例5) [118] 各成分の含有料を下記表1のように異なるようにしたことを除いては、前記実施例1と同様の方法によりポリアミドイミドフィルムを製造した。」 ・「[127][表1] [図:0001383243000008.jpg] 」 ・「[137](2)透過度(TT)およびヘイズ(HZ) [138] 日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して、550nmにおける透過度を測定し、ヘイズを測定した。」 ・「[145] [表3] [図:0001383243000009.jpg] 」 イ 甲7発明 甲7に記載された事項を、実施例3及び4に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、順に「甲7実施例3発明」及び「甲7実施例4発明」という。)が記載されていると認める。 <甲7実施例3発明> 「温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFDB)0.2モルを徐々に投入しながら溶解させ、次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)0.08モルを徐々に投入しながら1時間撹拌し、そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)0.072モルを投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)0.048モル投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製し、前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥し、乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理して得た、ヘイズ0.3%、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルム。」 <甲7実施例4発明> 「温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFDB)0.2モルを徐々に投入しながら溶解させ、次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)0.1モルを徐々に投入しながら1時間撹拌し、そして、芳香族ジカルボニル化合物として、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)0.06モルを投入してから1時間撹拌させ、テレフタロイルクロリド(TPC)0.04モル投入してから1時間撹拌して、重合体溶液を調製し、前記重合体溶液をそのままガラス板に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥し、乾燥したポリアミドイミド重合物をガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して、窒素(N2)78体積%および酸素(O2)を21体積%含む雰囲気下で熱処理して得た、ヘイズ0.3%、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルム。」 (3)甲9に記載された事項及び甲9発明 ア 甲9に記載された事項 甲9には、「ポリアミドイミド樹脂および該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0001】 本発明は、ポリアミドイミド樹脂、および該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材に関する。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 フレキシブルディスプレイが屈曲する際には、全ての構成部材が屈曲する。各構成部材の柔軟性が不十分であると、他の構成部材の損傷させることがある。そのため、構成部材の1つである前面板にも高い柔軟性が求められる。同時に、前面板が屈曲した後、その表面に織り皺が残ると、ディスプレイの視認性に問題が生じるため、前面板は高い屈曲耐性を有する必要がある。 【0008】 そこで本発明は、高い柔軟性および屈曲耐性を両立する光学部材のためのポリアミドイミド樹脂、特に画像表示装置の前面板のためのポリアミドイミド樹脂、および該ポリアミドイミド樹脂を含む前面板等の光学部材を提供することを目的とする。」 ・「【0066】 (光学部材) 本発明の別の実施態様においては、上記ポリアミドイミド樹脂を含んでなるポリアミドイミドフィルムである光学部材も提供される。光学部材としては、例えば光学フィルムが挙げられる。該光学部材は、柔軟性、屈曲耐性および表面硬度に優れるため、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として適当である。光学部材は単層であってもよく、複層であってもよい。光学部材が複層である場合、各層は同一の組成であってよく、異なる組成であってもよい。」 ・「【0109】 実施例1 [ポリアミドイミド樹脂(1)の調製] 窒素雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)52g(162.38mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)734.10gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAc中に溶解させた。次に、フラスコに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)28.90g(65.05mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)28.80g(97.57mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン7.49g(94.65mmol)と無水酢酸26.56g(260.20mmol)とを加え、室温で30分間撹拌した後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。 得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノール中に6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(1)を得た。 【0110】 [ポリアミドイミドフィルム(1)の製膜] 得られたポリアミドイミド樹脂(1)に、濃度が15質量%となるようにDMAcを加え、ポリアミドイミドワニス(1)を作製した。得られたポリアミドイミドワニス(1)をポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の膜厚が55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、50℃30分間、次いで140℃15分間で乾燥し、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、さらに窒素雰囲気下で300℃30分間乾燥し、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム(1)を得た。上記測定方法に従ってポリアミドイミドフィルム(1)の重量平均分子量(Mw)、全光線透過率Tt、黄色度YIおよびガラス転移温度Tgを測定したところ、Mwは120,000、Ttは91%、YIは2.2、Tgは345℃であった。なお、各成分のモル比は表1の通りである。」 ・「【0113】 実施例3 [ポリアミドイミド樹脂(3)の調製] 窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc697.82gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA21.67g(48.79mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC24.00g(81.31mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)6.60g(32.52mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコにピリジン8.73g(110.42mmol)と無水酢酸19.92g(195.15mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。 得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(3)を得た。なお、各成分のモル比は表1の通りである。」 ・「【0117】 実施例5 [ポリアミドイミド樹脂(5)の調製] DMAcの使用量を884.53g、6FDAの使用量を21.67g(38.79mmol)、OBBCの使用量を4.80g(16.26mmol)、TPCの使用量を19.81g(97.57mmol)、ピリジンの使用量を8.73g(110.42mmol)、無水酢酸の使用量を19.92g(195.15mmol)に変更した以外は、実施例3の[ポリアミドイミド樹脂(3)の調製]と同様にして、ポリアミドイミド樹脂(5)を得た。なお、各成分のモル比は表1の通りである。 【0118】 [ポリアミドイミドフィルム(5)の製膜] ポリアミドイミド樹脂(1)に代えて、ポリアミドイミド樹脂(5)を用いた以外は、実施例1の[ポリアミドイミドフィルム(1)の製膜]と同様にして、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム(5)を得た。上記測定方法に従ってポリアミドイミドフィルム(5)の重量平均分子量(Mw)、全光線透過率Tt、黄色度YIおよびガラス転移温度Tgを測定したところ、Mwは345,000、Ttは91%、YIは2.2、Tgは377℃であった。」 ・「【0136】 【表1】 [図:0001383243000010.jpg] 【0137】 得られたポリアミドフィルム(1)~(9)について、上記測定方法に従って、弾性率、表面硬度、および屈曲耐性を測定した。その結果を表2に示す。 【0138】 【表2】 [図:0001383243000011.jpg] 」 イ 甲9発明 甲9に記載された事項を、実施例5に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。 「窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB52g(162.38mmol)およびDMAc884.53gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させ、次に、フラスコに6FDA21.67g(38.79mmol)を添加し、室温で3時間撹拌し、その後、OBBC4.80g(16.26mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)19.81g(97.57mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌し、次いで、フラスコにピリジン8.73g(110.42mmol)と無水酢酸19.92g(195.15mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得、得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄し、次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂(5)を得、得られたポリアミドイミド樹脂(5)に、濃度が15質量%となるようにDMAcを加え、ポリアミドイミドワニスを作製し、得られたポリアミドイミドワニスをポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の膜厚が55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、50℃30分間、次いで140℃15分間で乾燥し、自立膜を得、自立膜を金枠に固定し、さらに窒素雰囲気下で300℃30分間乾燥して得た膜厚50μmm、重量平均分子量(Mw)345,000のポリアミドイミドフィルム。」 (4)甲2ないし5に記載された事項 ア 甲2に記載された事項 甲2には、おおむね次の事項が記載されている。なお、原文の摘記は省略し、訳文を摘記する。 ・「1. 1 全光線透過率とヘイズの測定 全光線透過率 (total transmittance, TT) とヘイズは、haze meter (Nippon Denshoku, NDH 5000)を用いて測定した。全光線透過率は、光が試片を通過する時に物体により拡散した拡散透過光と入射された方向に直進する平行透過光を合わせた値をいい、次の通り算定した。 全光線透過率(%)= (試片透過光/試片照射光)×100 ヘイズ(haze)は、透明材料の曇りの程度を示す指標として、次の通り算出した。 ヘイズ(%)=(拡散光/全光線透過率)×100」(第50ページ左欄第12ないし21行) イ 甲3に記載された事項 甲3には、おおむね次の事項が記載されている。なお、半角の英数字は全角の英数字で摘記した。 ・「5.装置 ・・・(略)・・・ 5.2 使用する光源及び測光器は、フィルターを通ってその組合せの特性が、ISO/CIE 10527による等色関数y(λ)(当審注:「y」には、上に「-」が引かれている。以下、「y」の上に「-」が引かれている文字を単に「y」と表記する。)と等しい明所視標準視感効率V(λ)(IEC 60050-845で定義)と、ISO/CIE 10526に規定するCIE標準の光D65の組合せに相当する出力を与えるものでなければならない。」(第2ページ第4ないし9行) ・「ヘーズは全光線透過率τtに対する拡散透過率τdの比として定義される。」(第4ページ第3行) ・「補償開口がある装置とない装置で測定値の差を比較するために,最初に予備的な共同試験を行った。8試験機関が参加して,0.2%~35.3%までのヘーズ値を持つ12種類の試験片を用いた。 結果は,補償開口のない装置で測定したヘーズ値は,補償開口のある装置による測定値よりも,平均値で8.9%低かった。」(第4ページ下から9ないし6行) ウ 甲4に記載された事項 甲4には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「6.4.5 計算方法 次の式によってヘーズ(曇価)を算出する。 H=Td/Tt×100 ここにH:ヘーズ(曇価)(%) Td:拡散透過率(%) Tt:全光線透過率(%)」(第15ページ末行ないし第16ページ第4行) エ 甲5に記載された事項 甲5には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「K 7105:81 プラスチックの光学的特性試験方法(→K 7142,Z 8741,Z 8722,Z 8730,K 7361-1,K 7355,K 7373,K 7136,Z 8714,K 7374,Z 8717)(廃 H24.3.21)」(第635ページ第28ないし30行) 2 取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 甲1実施例5発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲1実施例5発明を対比する。 甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。 甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は、「厚み50μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たす。 甲1実施例5発明における「光学フィルム(ポリアミドイミドフィルム)」は、TFMB、6FDA、OBBC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり(当審注:式(10)及び式(13)の摘記は省略。以下、同様。)、6FDA、OBBC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「4」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲内である。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ポリアミドイミド樹脂を含み、 厚さは30μm超であり、 該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、 式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1-1-1> 本件特許発明1においては、「式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される] を満たし」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、「Haze0.3%」と特定されている点。 <相違点1-1-2> 本件特許発明1においては、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-1-3> 本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲1実施例5発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、まず、相違点1-1-1について検討する。 甲2ないし4によると、「ヘーズ(%)=(拡散光透過率/全光線透過率)×100」であることは、光学フィルムの技術分野における技術常識である。 また、甲1には、「JIS K 7136」に準拠して「Haze」、すなわち「ヘーズ」を測定したことは記載されていないが、甲5によると、「JIS K 7105」は甲1の出願時には廃止されているから、甲1においては、「JIS K 7136」に準拠して「ヘーズ」を測定したと考えるのが自然である。 さらに、「JIS K 7136」に準拠している以上、測定装置による差はほとんどないと考えられる。 したがって、甲1実施例5発明における「Haze」、すなわち「ヘーズ」は、本件特許発明1における「Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する。 そうすると、甲1実施例5発明における「Haze0.3%」、すなわち「ヘーズ0.3%」は、本件特許発明1において規定された「Ts」で表すと「0.3」となるが、この値は、「式(1):0≦Ts≦0.27」の範囲外である。 よって、相違点1-1-1は、実質的な相違点である。 他方、甲1には、甲1実施例5発明における「Haze0.3%」を「0.27%」以下とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲1実施例5発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」(本件特許の明細書の【0008】及び【0132】参照。)という甲1実施例5発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1実施例5発明であるとはいえないし、また、甲1実施例5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 甲1比較例4発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲1比較例4発明を対比する。 両者の間には、上記ア(ア)と同様の相当関係が成り立つから、両者の一致点は上記ア(ア)と同様である。 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1-2-1> 本件特許発明1においては、「式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される]を満たし」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、「Haze0.2%」と特定されている点。 <相違点1-2-2> 本件特許発明1においては、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2-3> 本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲1比較例4発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、事案に鑑み、相違点1-2-2から検討する。 甲1比較例4発明は、本件特許発明1における「Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する「Haze」を有するものの、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。 したがって、相違点1-2-2は実質的な相違点である。 他方、甲1には、甲1比較例4発明において、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲1比較例4発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、Tsに相当するヘーズが0.2%と初期値が小さい。且つ、甲第1号証の比較例4の光学フィルムに用いられたポリアミドイミド樹脂(樹脂C)は、TFMB:6FDA:OBBC:TPC=10:2:1:7のモル比を有する。 このように、甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、本願の実施例3の光学フィルムのポリアミドイミド樹脂と、同一のモノマーで、同様の組成比率からなるものであって、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用したポリアミドイミドフィルムである。初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなると技術常識で考えられるが、当該傾向は、本件特許明細書の表2及び乙第6号証の実験結果からもみられる。視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用したポリアミドイミドフィルムであって、初期値のTs(ヘーズ)が2.0%の甲第1号証の比較例4の光学フィルムは、本件特許明細書の表2に記載されている実施例1(参考例1)と同様に、ΔTsも小さくなる蓋然性が高く、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高い。」旨主張する(上記意見書第6ページ第10ないし25行)。 そこで、該主張について検討する。 「初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなる」ことが技術常識であることを示す証拠は示されていないから、「初期値のTs(ヘーズ)が小さければ、差の絶対値ΔTsも小さくなると技術常識で考えられる」とはいえない。 また、本件特許の明細書の【0131】の【表2】に記載されたものは、2種類のポリアミド又は2種類のポリアミドイミドを混合して製造したフィルムであり、甲1の比較例4のような1種類のポリアミドイミドから製造したフィルムではないし、特許権者が令和3年8月27日に提出した意見書に添付された乙第6号証の実験結果は、甲1の比較例4を追試したものではないから、本件特許の明細書の表2及び乙第6号証の実験結果が甲1の比較例4に当てはまるとは直ちにはいえない。 したがって、甲1の比較例4の光学フィルムが、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高いとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (ウ)まとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1比較例4発明であるとはいえないし、また、甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2、4、5、6及び8について 本件特許発明2、4、5、6及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明であるとはいえないし、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明7、9及び10について 本件特許発明7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例5発明又は甲1比較例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)まとめ したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。 3 取消理由2(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 甲7実施例3発明との対比・判断 (ア)対比 本件特許発明1と甲7実施例3発明を対比する。 甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は向上された光学的特性を有し、フレキシブルディスプレイ分野で使用することができるものであるから、本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。 甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、TFDB(当審注:「TFMB」の別名である。)、6-FDA、BPDC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり、6FDA、BPDC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「1.5」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲外である。 甲7実施例3発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、「厚み30μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たさない。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ポリアミドイミド樹脂を含み、 該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有する、光学フィルム。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点7-1-1> 本件特許発明1においては、「式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される] を満たし」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、「ヘイズ0.3%」と特定されている点。 <相違点7-1-2> 本件特許発明1においては、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点7-1-3> 本件特許発明1においては、「厚さは30μm超」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、「厚さ30μm」と特定されている点。 <相違点7-1-4> 本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点7-1-5> 本件特許発明1においては、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である」と特定されているのに対し、甲7実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、事案に鑑み、相違点7-1-2から検討する。 甲7実施例3発明の「ヘイズ」、すなわち「ヘーズ」は、甲7の[138]によると、「日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して、550nmにおける透過度」を測定したものであるが、「日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000W」により測定した「ヘーズ」である以上、本件特許発明1で特定されるような測定方法によるものと値に大きな差はないといえる。 したがって、甲7実施例3発明は、本件特許発明1における「Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」に相当する「ヘイズ」をパラメータとして有するとはいえる。 しかし、甲7実施例3発明は、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。 したがって、相違点7-1-2は実質的な相違点である。 そして、甲7には、甲7実施例3発明において、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲7実施例3発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点7-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲7実施例3発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第7号証に記載の実施例3には、式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して1.5モルであるポリアミドイミド樹脂を含み、厚さ30μmのポリアミドイミドフィルムにおいて「ヘーズ0.3%」であることが記載されている。甲第7号証の段落0046には、「前記芳香族ジアンヒドリドおよび芳香族ジカルボニル化合物の総モルに対して、前記芳香族ジアンヒドリドを20モル%~50モル%%、前記芳香族ジカルボニル化合物を50モル%~80モル%投入して、重合体溶液を調製し得る。」と記載されているから、実施例3の「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して1.5モル」から少しでも1.5モルを超える範囲を容易に想到することができる。また、実施例3のポリアミドイミドフィルムにおいてポリアミドイミド樹脂のMwは明記されていないが、引張強度が5.3GPaであるから、Mwが200,000以上であるポリアミドイミド樹脂を含む蓋然性が高い。また、甲第7号証の段落0078には、「一実施形態により製造されたポリアミドイミドフィルムは、厚さ20μm~70μm、より詳しく、約25μm~約60μmを基準に・・・」と記載されているので、実施例3の厚さ30μmから、少しでも厚さ30μmを超える範囲を容易に想到することができる。 実施例3のポリアミドイミドフィルムにおいてTsに相当するヘーズは0.3%である。当該ヘーズ0.3%は、訂正発明1の「式(1):0≦Ts≦0.27」と比較すると、有効数字の桁数が異なるが、その範囲を満たしているか、かなり近いほぼ同様の値である。甲第7号証の発明は、向上された光学的特性および機械的特性を有するポリアミドイミドフィルムを得ることを目的としている。このような甲第7号証から、ポリアミドイミドフィルムにおいて、ヘーズをより小さくすることは容易に想到できることであり、ヘーズをより小さくすることにより視認性を高める効果を得ることは容易に予測できるものである。」旨主張するが(上記意見書第7ページ第20行ないし第8ページ第18行)、甲7の実施例3において、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とすることが容易に想到できるかどうかについては何ら主張していない。 そして、上記のとおり、甲7実施例3発明は、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする点を満足しているとはいえず、また、当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (ウ)まとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7実施例3発明であるとはいえないし、また、甲7実施例3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 イ 甲7実施例4発明との対比・判断 本件特許発明1と甲7実施例4発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲7実施例3発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者の一致点は上記ア(ア)と同様である。 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点7-2-1> 本件特許発明1においては、「式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される] を満たし」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、「ヘイズ0.3%」と特定されている点。 <相違点7-2-2> 本件特許発明1においては、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点7-2-3> 本件特許発明1においては、「厚さは30μm超」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、「厚さ30μm」と特定されている点。 <相違点7-2-4> 本件特許発明1においては、「重量平均分子量が200,000以上であり」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点7-2-5> 本件特許発明1においては、「式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である」と特定されているのに対し、甲7実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、事案に鑑み、相違点7-2-2から検討する。 相違点7-2-2は相違点7-1-2と同じであるから、その判断も同じである。 (ウ)まとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7実施例4発明であるとはいえないし、また、甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2、4、5及び8について 本件特許発明2、4、5及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明であるとはいえないし、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明6、7、9及び10について 本件特許発明6、7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7実施例3発明又は甲7実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)まとめ したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。 4 取消理由3(甲9を主引用文献とする新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲9発明を対比する。 甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は光学部材のためのものであるから、本件特許発明1における「光学フィルム」に相当する。 甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、「膜厚50μm」であるから、本件特許発明1における「厚さは30μm超」を満たす。 甲9発明における「重量平均分子量(Mw)345,000」は本件特許発明1における「重量平均分子量が200,000以上」を満たす。 甲9発明における「ポリアミドイミドフィルム」は、TFMB、6FDA、OBBC及びTPCを原料として製造したものであるから、本件特許発明1における「式(10)で表される繰り返し構造単位」と、「式(13)で表される繰り返し構造単位」を少なくとも有するものであり、6FDA、OBBC及びTPCのモル比から、「式(10)で表される繰り返し構造単位」に対して「式(13)で表される繰り返し構造単位」の比は「2.3」と計算され、本件特許発明1における「1.5モル超6.0モル以下」の範囲内である。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「ポリアミドイミド樹脂を含み、 厚さは30μm超であり、 該ポリアミドイミド樹脂は、式(10)で表される繰り返し構造単位と、式(13)で表される繰り返し構造単位を少なくとも有し、かつ重量平均分子量が200,000以上であり、 式(13)で表される繰り返し構造単位の含有量は、式(10)で表される繰り返し構造単位1モルに対して、1.5モル超6.0モル以下である、光学フィルム。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点9-1> 本件特許発明1においては、「式(1): 0≦Ts≦0.27 (1) [式(1)中、Tsは散乱光割合(%)を表し、Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される] を満たし」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点9-2> 本件特許発明1においては、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下であり」と特定されているのに対し、甲9発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 そこで、事案に鑑み、相違点9-2から検討する。 甲9発明は、本件特許発明1における「Ts=Td/Tt×100と定義され、Td及びTtは、それぞれ拡散光透過率(%)及び全光線透過率(%)を表し、Tdは、JIS K 7136に準拠して、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM3700Aにより測定され、Ttは、JIS K 7136に準拠して、日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000により測定される」「散乱光割合(%)を表す」「Ts」の「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」に相当するパラメータは有していないし、当然その値も不明である。 したがって、相違点9-2は実質的な相違点である。 そして、甲9には、甲9発明において、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTs」を「0.05%以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲9発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点9-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「広角方向の視認性に優れる」という甲9発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 なお、特許異議申立人は、令和3年10月14日に提出した意見書において、「甲第9号証の実施例5のポリアミドイミドフィルムは、本件特許の実施例3の光学フィルムのポリアミドイミド樹脂と、同ーモノマーで、同一の組成比率からなり、ほぼ同じ重量平均分子量のポリアミドイミド樹脂からなるものであって、視認性、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、着色性を低減しやすい組成物を使用しており、全光線透過率が91%と高い透明性と屈曲耐性が230,000回と優れた屈曲耐性を有するポリアミドイミドフィルムであるから、Tsが0.27以下である蓋然性が高く、ΔTsも小さくなる蓋然性が高く、「JIS K 5600-5-1に準拠した耐屈曲性試験前後の前記散乱光割合の差の絶対値ΔTsは0.05%以下である」を満足している蓋然性が高い」旨主張する(上記意見書第11ページ第17ないし24行)。 そこで、該主張について検討する。 本件特許の明細書の【0121】ないし【0128】及び【0131】によると、甲9の実施例5よりも本件特許の実施例3に近い本件特許の実施例4の「Ts」及び「ΔTs」が、それぞれ、「0.34」及び「0.06」であり、本件特許発明1の「0≦Ts≦0.27」及び「ΔTsは0.05%以下」の条件を満たさない。 そうすると、甲9の実施例5の「Ts」が「0.27」以下となり、「ΔTs」が「0.05%以下である」を満足している蓋然性が高いとはいえない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ まとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9発明であるとはいえないし、また、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2、4、5、6及び8について 本件特許発明2、4、5、6及び8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明であるとはいえないし、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明7、9及び10について 本件特許発明7、9及び10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)まとめ したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由3によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由はない。 第7 結語 上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700723

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