特許異議申立
2024-700093
加飾パネル及び表示部
- 審判番号
- 2024-700093
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-051495
- 登録番号
- 7320471
- 請求日
- 2024年02月05日
- 審決日
- 2025年03月25日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社東海理化電機製作所
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 分類
- P1651.113-YAA(G09F) / P1651.121-YAA(G09F) / P1651.536-YAA(G09F) / P1651.537-YAA(G09F) / P1651.55 -YAA(G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7320471号発明「加飾パネル及び表示部」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7320471号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7320471号の請求項1-7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7320471号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年3月23日の出願であって、令和5年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年2月5日に、特許異議申立人真角 侑子(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月 5日 :申立人による特許異議の申立て
同年 5月10日付け:取消理由通知書
同年 7月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月 6日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和7年 1月 9日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年7月16日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるというものである。
本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層」と記載されているのを、
「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「各前記文字図柄部を形成する各々の前記開口は、互いに間隔をあけて配置されている加飾パネル。」と記載されているのを、
「各前記文字図柄部を形成する各々の前記開口は、互いに間隔をあけて配置されており、
前記開口が前記遮光層のみで形成され、
前記コート層は単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
ア 訂正事項2-1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層」と記載されているのを、
「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2-2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「各前記文字図柄部を形成する各々の前記開口は、互いに間隔をあけて配置されている加飾パネル。」と記載されているのを、
「各前記文字図柄部を形成する各々の前記開口は、互いに間隔をあけて配置されており、
前記開口が前記遮光層のみで形成され、
前記コート層は単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記基材側が遮光性を有する金属材料を含んで構成された金属層とされていると共に前記基材とは反対側が装飾層とされ、前記基材の一方側の面に沿って設けられていると共に前記基材側からの光が通過する開口が形成された遮光層」と記載されているのを、
「前記基材側が遮光性を有する金属材料を含んで構成された金属層とされていると共に前記基材とは反対側が装飾層とされ、前記基材の一方側の面に沿って設けられていると共に前記基材側からの光が通過する開口が形成され、前記基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下に設定された遮光層」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項3-2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層と、
を備えた加飾パネル。」と記載されているのを、
「透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層と、
を備え、
前記コート層は単一の暦であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7も同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1-1、2-1
訂正事項1-1、2-1に係る訂正は、「コート層」を、「前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」る構成に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)訂正事項1-2、2-2
訂正事項1-2、2-2に係る訂正は、「開口」を、「遮光層のみで形成され」る構成に限定し、「コート層」を、「単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている」構成に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1-1、2-1
本件特許の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下、同様である。)。
a 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制することができる加飾パネル及び表示部を得ることが目的である。」
「【0027】
遮光層24は、黒色のインキを第1コート層22上にグラビア印刷すること等により転写されて形成されている。この遮光層24の厚みT2(基材20と対向する方向への厚み)は、3~5μmに設定されている。また、遮光層24には、レーザーカット等の加工が施されることにより、所定の形状の開口28が形成されている。この開口28の形状は、図1に示された文字「ABC」と対応している。なお、遮光層24において文字「A」と対応する部分を文字図柄部30Aと呼ぶ。この文字図柄部30Aは、単一の開口28Aによって形成されている。また、遮光層24において文字「B」と対応する部分を文字図柄部30Bと呼ぶ。この文字図柄部30Bは、単一の開口28Bによって形成されている。さらに、遮光層24において文字「C」と対応する部分を文字図柄部30Cと呼ぶ。この文字図柄部30Cは、単一の開口28Cによって形成されている。
【0028】
第2コート層26は、遮光層24上及び第1コート層22において遮光層24の開口28と対応する部分上に塗料による塗装が施されることにより形成されている。本実施形態では、無色透明の塗料を用いて第2コート層26が形成されている。また、遮光層24上における第2コート層26の厚みT3(基材20と対向する方向への厚み)は、20μm程となっている。さらに、第2コート層26の一部26Aは、遮光層24の開口28の内部に隙間なく入り込んだ状態となっている。」
「【0030】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の表示部12では、ハウジング16内のLED14が点灯すると、LED14からの光が加飾パネル10の基材20、第1コート層22、遮光層24の開口28及び第2コート層26を通じてハウジング16の外側に照射される。これにより、加飾パネル10において文字図柄部30A、30B、30Cと対応する部分が光った状態となり、文字「ABC」が、加飾パネル10上に表示される。
【0031】
また、ハウジング16内のLED14が消灯した状態では、ハウジング16内からの光が加飾パネル10における遮光層24の開口28から照射されない状態となる。その結果、加飾パネル10において文字図柄部30A、30B、30Cと対応する部分が黒色の状態となり、加飾パネル10上の全体が黒色の状態(ブラックアウト状態)となる。
【0032】
ここで、本実施形態の表示部12では、加飾パネル10の一部を構成する遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が3~5μmに設定されている。これにより、遮光層24の開口28の縁部に生じる段差(遮光層24の厚みT2と対応する高さの差)を抑制することができる。その結果、遮光層24の開口28の内部に入り込む塗料(第2コート層26を形成する塗料)の体積を少なくすることができ、第2コート層26において遮光層24の開口28と対応する部分にヒケが生じることを抑制することができる。また、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に段差や窪みが生じることを抑制することができる。ここで、遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が10μm以下に設定されていれば、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に視覚により視認できる段差や窪みが生じないことが、試作等によりわかっている。」
「【図3】
[図:0001423461000001.jpg]
」
b 上記a【0027】、及び【0028】の記載から、T2が3~5μmであって、T3が20μm程度であることが把握できる。
c 上記a【図3】から、T2がT3より小さいことが看取できる。
d 上記a【0005】に記載された「コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制する」という課題に関し、上記a【0032】には、「ここで、本実施形態の表示部12では、加飾パネル10の一部を構成する遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が3~5μmに設定されている。これにより、遮光層24の開口28の縁部に生じる段差(遮光層24の厚みT2と対応する高さの差)を抑制することができる。」、「第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に段差や窪みが生じることを抑制することができる。ここで、遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が10μm以下に設定されていれば、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に視覚により視認できる段差や窪みが生じないことが、試作等によりわかっている。」と記載されている。
これらの記載から、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制するためには、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に段差や窪みが生じることを抑制する必要があり、T2を10μm以下とすることで実現できることが試作等によりわかっていることが把握できる。
e そして、開口部をコート層にてコートする場合、開口部の厚さを小さくし、コート層の厚さを大きくして、開口部とコート層の厚さの差を大きくするほど、開口部による段差や窪みが生じにくいことは技術常識であるところ、当該技術常識、上記b、dの把握事項、及び上記cの看取事項から、T3が20μm程度であることに鑑みると、T2が10μm以下であって、T2<T3とすることにより、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制できることが把握できる。
f そうすると、訂正事項1-1、2-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(イ)訂正事項1-2、2-2
a 上記(ア)a【0027】の「遮光層24は、黒色のインキを第1コート層22上にグラビア印刷すること等により転写されて形成されている。」との記載、「遮光層24には、レーザーカット等の加工が施されることにより、所定の形状の開口28が形成されている。」との記載、及び上記(ア)a【図3】から、開口28が遮光層24のみにより形成されることが把握できる。
b 上記(ア)a【0030】の「表示部12では、ハウジング16内のLED14が点灯すると、LED14からの光が加飾パネル10の基材20、第1コート層22、遮光層24の開口28及び第2コート層26を通じてハウジング16の外側に照射される。これにより、加飾パネル10において文字図柄部30A、30B、30Cと対応する部分が光った状態となり、文字「ABC」が、加飾パネル10上に表示される。」との記載から、第2コート層26を通じた光がハウジング16の外側に照射され、加飾パネル10上に文字「ABC」が表示されることが把握できる。
c 上記(ア)a【0028】の「第2コート層26は、遮光層24上及び第1コート層22において遮光層24の開口28と対応する部分上に塗料による塗装が施されることにより形成されている。」との記載、及び上記bから、第2コート層26が単一の層であることが把握できる。
d 上記b、c、及び上記a【図3】から、第2コート層26は、基材20とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっていることが把握できる。
e そうすると、訂正事項1-2、2-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1、1-2、2-1、2-2は、上記アに示したように、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項3-1
訂正事項3-1に係る訂正は、「遮光層」を、「基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下に設定された」構成に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(イ)訂正事項3-2
訂正事項3-2に係る訂正は、「コート層」を、「前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」る構成に限定し、「単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている」構成に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項3-1
上記(1)イ(ア)に示した理由と同様の理由により、特許明細書等の記載から、T2が10μm以下であって、T2<T3とすることにより、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制できることが把握できるから、訂正事項3-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(イ)訂正事項3-2
上記(1)イ(ア)に示した理由と同様の理由により、特許明細書等の記載から、T2が10μm以下であって、T2<T3とすることにより、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制できることが把握でき、また、上記(1)イ(イ)に示した理由と同様の理由により、特許明細書等の記載から、第2コート層26が単一の層であること、及び第2コート層26は、基材20とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっていることが把握できるから、訂正事項3-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3-1、3-2は、上記アに示したように、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書の3(2)において、概略次のとおり主張している。
ア 申立人の主張
(ア)「しかしながら、上記本件明細書の段落【0027】及び【0028】の記載は、文字通り、単に厚みT2が「3~5μm」であり、かつ厚みT3が「20μm程」である点であり、これを不当に一般化(即ち、拡張解釈)して「前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、」ることが記載されている訳ではないことは言うまでもありません。」
(イ)「【0022】乃至【0028】は、当初の特許請求の範囲においてこれらの数値限定がなかったことからも明らかなように、単にこれらの構成の一例を示したに過ぎず、単に例の一つとしての厚みの数値以上に、何ら積極的な技術的意義を持つものではありません。然るところ、T2が「3~5μm」、T3が「20μm程」という具体的な数値範囲を超えるばかりか、さらに一般的にT2とT3の大小関係についての構成を加えることは、当初明細書等の記載から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとして、新規事項の追加に該当することは明らかです。」
(ウ)「その上、甲第16号証(CAR BEAUTY PROのウェブページ、carbeauty-shine:com/archives/125/)によると、一般に塗装により形成されるクリヤーの塗膜の厚さは30~80μmですから、上記事項は、本件明細書の段落【0028】に記載された「塗装」という手法の記載から導出される事項ともいえません。」
(エ)「これに加え、その他技術常識等を参酌したとしても、仮にT3(コート層の厚み)がT2(遮光層の厚み)より大きいとした場合の両者の関係全体に関して、本件明細書記載されているとはいえません。具体的には、T2が3~5μmであるとき、T3が6~19μmであってもよい事項を明細書等から導出することはできませんし、対象の課題、効果等から開示があると認めることはできません。」
(オ)「さらに言えば、遮光層については、請求項1に厚み寸法が10μm以下という記載があり、段差の抑制という効果も記載されていますが、第2コート層については、20μm程という記載しかなく、上記段落【0027】、【0028】は単にそれぞれ別個に遮蔽層の厚さとコート層の厚さについて記載があるに過ぎず、これら両者の厚みの関係については一切言及がなく、また、本件明細書のその他の記載をみてもコート層の厚みの大小関係による効果も何ら記載されていないため、厚みの大小関係については、新規事項の追加という他はありません。」
(カ)「本件明細書の段落【0027】には、「遮光層24は、黒色のインキを第1コート層22上にグラビア印刷すること等により転写されて形成されている」ことが記載されているに過ぎません。即ち、当初明細書等に記載があるのは、開口が“黒色のインキによりグラビア印刷によって形成されていた遮光層”により形成された点、つまり、“開口が黒色の単層の遮光層”により形成された点です。従って、このような限定の無い、訂正請求された事項については、当初明細書等に記載されたものではないことは明らかです。」
(キ)「上記段落【0027】には「また、遮光層24には、レーザーカット等の加工が施されることにより、所定の形状の開口28が形成されている」と記載されているとおり、単に“遮光層に開口が形成されている”ことが記載されているのみであって、構成要件P「前記開口が前記遮光層のみで形成され、」と積極的に開口が形成される層を遮光層のみに限定する技術的事項を読み取ることはできません。」
(ク)「段落【0028】に関しては、上記被申立人の摘記部部分の1行目は、単に第2コート層が「塗料による塗装が施されることにより形成されている」ことが記載されているのみで、必ずしも「単一の層」であるとは言えず、当初そのような技術的事項が記載されていなかったことは明らかです。その上、上記被申立人の摘記部部分の1行目の「遮光層24の開口28と対応する部分上に・・・形成されている」ことは、その上(表面側)に他の層を設けることを何ら妨げるものではなく、必ずしも「前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている」とは言えず、当初そのような技術的事項が記載されていなかったことは言うまでもありません。
さらに、上記段落【0028】の、上記被申立人の摘記部部分の2行目は、「第2コート層26の一部6Aは、遮光層24の開口28の内部に隙間なく入り込んだ状態となっている」ものですが、このことから必ずしも「単一の層」であるとは言えず、当初そのような技術的事項が記載されていなかったことは明らかです。その上、第2コート層から見て、遮光層の開口は、表面側とは反対の方向にあると考えられるから、第2コート層の表面側に他の層を設けることを何ら妨げるものではなく、必ずしも「前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている」とは言えず、当初そのような技術的事項が記載されていなかったことは言うまでもありません。」
イ 申立人の主張についての検討
(ア)上記ア(ア)、(イ)、(エ)、(オ)、(キ)、及び(ク)の主張については、上記(1)イ、(2)イに示したとおりであるから採用することはできない。
(イ)上記ア(ウ)の主張について、甲第16号証は、自動車のクリアー塗装の厚みに関する事項が記載されているのみであって、本件特許の「加飾パネル」、「表示部」とは技術分野が異なるものであるから、甲第16号証に基づく当該主張は採用できない。
(ウ)上記ア(カ)の主張について、上記(1)イ(ア)d、eに示したように、開口部をコート層にてコートする場合、開口部の厚さを小さくし、コート層の厚さを大きくして、開口部とコート層の厚さの差を大きくするほど、開口部による段差や窪みが生じにくいことは技術常識であることをふまえると、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制するためには、開口28が「黒色の」遮光層24により形成される必要はなく、訂正事項1-2、2-2において「黒色の」との限定がないからといって、特許明細書等に記載した事項を不当に一般化したものとは認められない。
したがって、上記ア(カ)の主張は採用できない。
ウ 以上のことから、申立人が上記意見書でした主張は上記(1)、(2)の判断を左右するものでなく、採用できない。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~7について、請求項5、6、7は、請求項1~3を引用しているものであって、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3によって記載が訂正される請求項1~3に連動して訂正され、請求項4は、請求項3を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 まとめ
上記のとおり、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
透光性を有する素材を用いて形成された基材と、
遮光性を有する素材を用いて形成され、前記基材の一方側の面に沿って設けられていると共に前記基材側からの光が通過する開口が形成され、前記基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下に設定された遮光層と、
透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層と、
を備え、
前記遮光層には、文字及び図柄の少なくとも一方を示す文字図柄部が複数の前記開口によって形成され、
各前記文字図柄部を形成する各々の前記開口は、互いに間隔をあけて配置されており、
前記開口が前記遮光層のみで形成され、
前記コート層は単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。
【請求項2】
透光性を有する素材を用いて形成された基材と、
遮光性を有する素材を用いて形成され、前記基材の一方側の面に沿って設けられていると共に前記基材側からの光が通過する開口が形成され、前記基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下に設定された遮光層と、
透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層と、
を備え、
前記遮光層には、文字及び図柄の少なくとも一方を示す文字図柄部が複数の前記開口によって形成され、
前記文字図柄部は、格子状に交わる直線状の複数の連続した前記開口によって形成されており、
前記開口が前記遮光層のみで形成され、
前記コート層は単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。
【請求項3】
透光性を有する素材を用いて形成された基材と、
前記基材側が遮光性を有する金属材料を含んで構成された金属層とされていると共に前記基材とは反対側が装飾層とされ、前記基材の一方側の面に沿って設けられていると共に前記基材側からの光が通過する開口が形成され、前記基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下に設定された遮光層と、
透光性を有する素材を用いて形成され、前記遮光層上に設けられ、前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され、その一部が前記開口内に配置された状態で前記遮光層を覆うコート層と、
を備え、
前記コート層は単一の層であり、前記コート層における前記基材とは反対側の面が、被視認面でありかつ最表面となっている加飾パネル。
【請求項4】
前記金属層が、金属製の蒸着膜とされている請求項3記載の加飾パネル。
【請求項5】
前記遮光層は、印刷によって形成された層を有しており、
前記コート層は、印刷又は塗装によって形成された層となっている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の加飾パネル。
【請求項6】
前記遮光層には、文字及び図柄の少なくとも一方を示す文字図柄部が複数の前記開口によって形成され、
前記文字図柄部において前記開口が占める割合を開口率とした場合に、該開口率が10~7 0%の範囲に設定された請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の加飾パネル。
【請求項7】
一方側が開放されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられた光源と、
前記ハウジングに取付けられた状態で該ハウジングにおいて開放された側を閉止する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の加飾パネルと、
を備えた表示部。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」という。また、訂正前の請求項1~7に係る特許をまとめて「本件訂正前特許」という。)に対して、当審が令和6年5月10日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(サポート要件)本件訂正前特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2(実施可能要件)本件訂正前特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由3(進歩性)本件発明1~本件発明7は、甲第1号証~甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証 :国際公開第2020/040204号
甲第2号証 :特開2019-17559号公報
甲第3号証 :特開2017-207578号公報
甲第4号証 :米国特許出願公開第2019/0025954号明細書
甲第7号証 :特開2001-277285号公報
甲第8号証 :特開2013-3489号公報
甲第10号証:特開2019-17560号公報
甲第12号証:特開2001-30290号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第16号証」については、それぞれ「甲1」~「甲16」と表記する。
2 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア サポート要件の判断について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆が無くとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件訂正発明について
(ア)本件特許の特許明細書等の発明の詳細な説明には、「本発明は上記事実を考慮し、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制することができる加飾パネル及び表示部を得ることが目的である。」(【0005】)と記載されていることから、発明が解決しようとする課題は、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制することができる加飾パネル及び表示部を得ることであると解される。
(イ)そして、発明の詳細な説明には、「ここで、本実施形態の表示部12では、加飾パネル10の一部を構成する遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が3~5μmに設定されている。これにより、遮光層24の開口28の縁部に生じる段差(遮光層24の厚みT2と対応する高さの差)を抑制することができる。その結果、遮光層24の開口28の内部に入り込む塗料(第2コート層26を形成する塗料)の体積を少なくすることができ、第2コート層26において遮光層24の開口28と対応する部分にヒケが生じることを抑制することができる。また、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に段差や窪みが生じることを抑制することができる。ここで、遮光層24の厚みT2(厚み寸法)が10μm以下に設定されていれば、第2コート層26の表面26Bにおいて遮光層24の開口28と対応する部分に視覚により視認できる段差や窪みが生じないことが、試作等によりわかっている。」(【0032】)と記載されている。
(ウ)上記(イ)と、開口部をコート層にてコートする場合、開口部の厚さを小さくし、コート層の厚さを大きくして、開口部とコート層の厚さの差を大きくするほど、開口部による段差や窪みが生じにくいとの技術常識とから、上記第2の2(1)イ(ア)eに示したとおり、前記(ア)に示した課題を解決するための手段は、T2が10μm以下であって、T2<T3とすること、すなわち、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることと認められる。
(エ)そして、本件訂正が認められたことにより、本件訂正発明1~7は、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることを発明特定事項に備えたものとなり、前記(ア)に示した課題を解決するための手段が反映されたものとなった。
したがって、本件訂正発明1~7は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるとともに、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記(ア)に示した課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(オ)以上によると、特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するものである。
ウ 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書の3(3)において、概略次のとおり主張している。
(ア)申立人の主張
a 「コート層が、「前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」ている点を特定したとしても、それは本件(訂正)発明の課題(解決)とは何ら関係がなく、少なくとも、当業者がそれを発明の詳細な説明の記載から読み取ることはできず、本件訂正によっても、サポート要件違反が何ら解消していないことは明らかです。」
b 「問題となるのは「コート層以外の層が本件(訂正)発明に規定する構成をとったとき、そうでない場合に比べ、コート層の表面に段差や窪み生じるのが低減するか」と言ったことである以上、(第2) 「コート層」に関する規定を加える訂正を行ったとしても、それが本件発明の課題解決とは何ら関係がないことは言うまでもありません。」
c 「遮光層の数値範囲が単に「10μm」と規定され、下限が何ら規定されていないことから、例えば、遮光層が極々薄であり、コート層がそれよりほんの僅かに厚いときも本件訂正発明1の構成要件を満たすところ、このようなときは、コート層も極々薄であることに変わりはなく、このような薄さのコート層では「コート層の表面に段差や窪み生じることを抑制する」筈がないことは明らかです。従って、やはりコート層が「前記遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」ている点を特定したとしてとしても、サポート要件違反が解消していないことに、何ら変わりはありません。」
d 「なお、仮に被申立人が主張するとおり、本件発明に透光率が関係しないとしても、上述のとおり、ランベルト・ベールの法則における溶液の厚み、濃度が、本件(訂正)発明の各層の厚み、密度に相当するところ、段落【0032】によれば、本件(訂正)発明の遮光層の厚さ及び(密度と表裏である)体積は本願発明の課題である「コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制する」ことと極めて密接に関連するのであるから、本件(訂正)発明のサポート要件の充足の如何を考える上で、ランベルト・ベールの法則を考慮することが不可欠であることは明らかです。」
e 「一旦は特許が付与された本件(訂正)発明は上記「基材、遮光層及びコート層の透過率等の具体的な数値」と密接に関連する開口率を調整することをその技術的思想とし、「加飾パネルとしての機能を維持する」とは、単に「基材を透過する光の一部が遮光層によって遮られ、基材を透過する光の他の一部が遮光層に形成された開口を通してコート層を透過する」ことではなく、「基材を透過する光の他の一部が遮光層に形成された開口を通してコート層を透過するに際して、開口率等、光の透過量を調整することによって、点灯時と消灯時の図柄を上手く変化させる、実用に耐える加飾パネル」であることを要するは明らかです。従いまして、このような被申立人の主張が失当であることは明らかです。」
(イ)申立人の主張についての検討
a 上記(ア)a~c、及びeについて、上記イに示したとおり、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることにより、本件特許発明が解決しようとする課題が解決できると認められる。
そして、コート層が遮光層よりわずかに厚いときであっても、コート層と遮光層とが同じ厚さである場合よりも、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制することができるといえる。
そうすると、当該主張は採用できない。
b 上記(ア)dについて、上記イに示したとおり、「コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制する」ことは、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることで解決され、遮光層やコート層の密度や体積とは関連しないのであるから、ランベルト・ベールの法則を考慮する必要はなく、当該主張は採用できない。
(ウ)以上のことから、申立人が上記意見書でした主張は上記イの判断を左右するものでなく、採用できない。
(2)取消理由2(実施可能要件)について
ア 上記(1)に示したとおり、本件訂正発明が解決しようとする課題は、コート層の表面に段差や窪みが生じることを抑制することができる加飾パネル及び表示部を得ることであり、当該課題を解決するための手段は、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることと認められる。
イ そして、本件訂正が認められたことにより、本件訂正発明1~7は、「遮光層の基材と対向する方向への厚み寸法が10μm以下」であって、「遮光層上における基材と対向する方向への厚み寸法が遮光層の厚み寸法以上の寸法」であることを発明特定事項に備えたものとなった。
そうすると、本件訂正発明が解決しようとする課題を解決するために当業者に過度の試行錯誤を強いることとなるとは認められない。
ウ 以上によると、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)に適合するものである。
(3)取消理由3(進歩性)について
ア 申立人提出の証拠
(ア)甲1発明
甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「可視光を透過させる基材部と、
基材部に接して、画像光が絵柄部に入射することを抑制する遮蔽部と、遮蔽部に重ねられて絵柄部が設けられて、基材部側からの光を透過するための開口によって透過部が形成されている意匠部と、
透明な樹脂により形成された、透過部だけでなく、意匠部、すなわち絵柄部及び遮蔽部を覆うように形成される透明な保護膜を備えた加飾シート。」(【0026】~【0035】、【0042】~【0044】、図2)
(イ)甲2発明
甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「光を透過させるガラス板により構成されるガラス基材と、
前記ガラス基材の裏面に設けられ、金属からなる反射膜と、
前記反射膜の裏面に設けられ、前記反射膜の裏面を覆っている反射膜を保護する材質が限定されていない保護膜4と、
前記反射膜の表面側と前記保護膜4の裏面側との間に光が通過する経路を形成する1つ以上の透光部と、を備え、
前記1つ以上の透光部は、前記反射膜及び前記保護膜4に厚み方向に沿って形成された複数の貫通孔を有し、
透光性の透明または半透明の保護膜7が、貫通孔の内部に形成され、
1つの文字、記号、または図形は、複数の貫通孔により形成され、
複数の貫通孔は、互いに間隔をあけて配置され、
透光部の裏面側に設けられた点灯部を点灯させるだけで、鏡の表面に文字、記号、図形を表示することができる鏡(なお、表面側とは、光が鏡に反射して虚像が見える側であり、裏面側とはその反対側であって虚像が見えない側を示す)。」(【請求項1】、【0011】~【0022】、【0039】~【0042】、【0054】、図5、図8)
(ウ)甲3発明
甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「透光性の基材と、
前記基材の一面側を覆うめっき層と、
前記めっき層を覆う透光性の着色層であって、下地層及び保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定する着色層と、
を備え、
前記めっき層は、前記めっき層が文字や図形に対応する形状に除去された表示部を有し、蒸着により形成される遮光性の層であり、めっき層の厚さは1μm以下であり、
透光性の層であり、めっき層に密着し、めっき層の基材側とは反対側に配置されると共に表示部に配置される保護層を有し
1つの文字や図形は1つの開口からなる表示部により形成されており、
前記基材の他面側から光を照射すると前記着色層の表面が前記表示部の形状に発光する照光式表示板。」(【請求項1】、【0027】~【0038】、【0050】、図1、図2)
(エ)甲4技術事項
a 甲4には、以下の技術事項(以下「甲4-1技術事項」という。)が記載されている。
「光を阻止する不透明なマスク層に、微小孔が形成され、微小孔の配列は、光源によって照明されたときに文字を表示するように構成される電子デバイス。」([0005]、[0077]、[0080]、[0126]、[0142]、FIG.3A、FIG.5F)
b 甲4には、以下の技術事項(以下「甲4-2技術事項」という。)が記載されている。
「光を阻止する不透明なマスク層に、微小孔が形成され、微小孔は不透明マスク層の厚さを貫通して延びる格子状に交わる直線上の複数の連続した開口部によって形成され、微小孔の配列は、光源によって照明されたときに文字を表示するように構成される電子デバイス。」([0005]、[0077]、[0080]、[0126]、[0142]、FIG.3A、FIG.5F)
(オ)甲7技術事項
甲7には、以下の技術事項(以下「甲7技術事項」という。)が記載されている。
「加飾用シートにおいて、層形成を印刷により行うこと。」(【0031】)
(カ)甲8技術事項
甲8には、以下の技術事項(以下「甲8技術事項」という。)が記載されている。
「基板により一方側を閉止された筐体と
筐体の内部に配置された光源と、
光源からの光を順次透過させ、マークを表示させる筐体の他方の側を閉止する複数の層を備えた表示装置。」(【0021】、図2)
(キ)甲10技術事項
甲10には、以下の技術事項(以下「甲10技術事項」という。)が記載されている。
「ガラス基材と、
前記ガラス基材の裏面に設けられている反射膜と、
前記反射膜の裏面に設けられている保護膜と、
前記反射膜及び前記保護膜に厚み方向に沿って形成された透光用の1つ以上の貫通孔と、を備え、
反射膜3の膜厚は10μm程度であり、
透光部の裏側に発光部を配置し、発光部が点灯したとき、貫通孔51を通過した可視光が鏡の表面側より見えて、何らかの表示として使用者が認識することができる
鏡(なお、表面側とは、光が鏡に反射して虚像が見える側であり、裏面側とはその反対側であって虚像が見えない側を示す)。」(【請求項1】、【0015】、【0019】、【0039】)
(ク)甲12技術事項
甲12には、以下の技術事項(以下「甲12技術事項」という。)が記載されている。
「加飾成形品において、遮光層を金属層によって形成すること。」(【請求項1】、【0024】)
イ 本件訂正発明1について
(ア)甲2発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点1において相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲2発明は、ガラス基材(本件訂正発明1の「基材」に相当)の表面に文字、記号、図形を表示するものであって、「保護膜4及び保護膜7」(本件訂正発明1の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
(a)甲10技術事項の「ガラス基材」、「反射膜」、「保護膜」、及び「貫通孔」は、本件訂正発明1の「基材」、「遮光層」、「コート層」、及び「開口」に相当する。
(b)しかしながら、甲10技術事項は、「ガラス基材」の表面側に見えた可視光が、表示として使用者に認識されるものであるから、上記相違点1を充足しない。
(c)また、甲2発明は、鏡の表面に文字、記号、図形を表示する発明であるから、これを鏡の表面ではなく裏面に表示する動機付けもない。
(d)よって、甲2発明に、甲10技術事項を適用して、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2発明に、甲10技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書の3(5-1-1)において、概略次のとおり主張している。
(a)申立人の主張
申立人は、上記相違点1の想到容易性については主張していない。
一方、「本件訂正発明1に係る構成(本件訂正によって加わった全ての構成)は、以下で述べるとおり、異議申立書における甲第6号証(特開2008- 2 5 6 5 5 7号公報)等多数の公知文献に記載されているように、周知慣用の技術に過ぎない」旨の主張をしている。
(b)申立人の主張についての検討
甲6には、「裏側から文字板を照明することにより、文字板上の文字・数字(以下、文字と数字を総称して文字等という)を視認可能とする透過照明型メーター」(【0001】)が記載されているものの、上記b(c)に示したとおり、甲2発明は、鏡の表面に文字、記号、図形を表示する発明であるから、これを鏡の表面ではなく裏面に表示する動機付けがない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
(c)以上のことから、申立人が上記意見書でした主張は上記イの判断を左右するものでなく、採用できない。
(イ)甲3発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点2において相違する。
<相違点2>
本件訂正発明1は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲3発明は、着色層の表面が表示部の形状に発光するものであって、「保護層」(本件訂正発明1の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
(a)甲4-1技術事項の「不透明なマスク層」は、本件訂正発明1の「遮光層」に相当する。
(b)しかしながら、甲4-1技術事項は、本件訂正発明1の「コート層」に相当する構成を有しないから、上記相違点2を充足しない。
(c)また、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
(d)よって、甲3発明に、甲4-1技術事項を適用して、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書の3(5-1-2)において、概略次のとおり主張している。
(a)申立人の主張
申立人は、上記相違点2の想到容易性については主張していない。
一方、「本件訂正発明1に係る構成(本件訂正によって加わった全ての構成)は、以下で述べるとおり、いずれも引用文献3自体に記載されている」旨(以下「主張2-1」という。)、及び「本件訂正によって加わった全ての構成は、甲第6号証(特開2008-256557号公報)に記載されているにも記載されているように、周知慣用の技術に過ぎない」旨を主張(以下「主張2-2」という。)している。
(b)申立人の主張2-1についての検討
上記a、bに示したとおりであるから、当該主張は採用できない。
(c)申立人の主張2-2についての検討
甲6には、「裏側から文字板を照明することにより、文字板上の文字・数字(以下、文字と数字を総称して文字等という)を視認可能とする透過照明型メーター」(【0001】)が記載されているものの、上記b(c)に示したとおり、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
(d)以上のことから、申立人が上記意見書でした主張は上記(イ)の判断を左右するものでなく、採用できない。
(ウ)小括
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明、甲10技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件訂正発明2について
(ア)甲2発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点3において相違する。
<相違点3>
本件訂正発明2は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲2発明は、ガラス基材(本件訂正発明2の「基材」に相当)の表面に文字、記号、図形を表示するものであって、「保護膜4及び保護膜7」(本件訂正発明2の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
上記イ(ア)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2は、甲2発明、甲10技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、本件訂正発明1についての主張と同様の主張を行っているところ、上記イ(ア)c(b)に示したとおり、申立人の主張は採用できない。
(イ)甲3発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明2と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点4において相違する。
<相違点4>
本件訂正発明2は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲3発明は、着色層の表面が表示部の形状に発光するものであって、「保護層」(本件訂正発明2の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
上記イ(イ)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2は、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、本件訂正発明1についての主張と同様の主張を行っているところ、上記イ(イ)c(b)、(c)に示したとおり、申立人の主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、本件訂正発明2は、甲2発明、甲10技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件訂正発明3について
(ア)甲2発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明3と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点5において相違する。
<相違点5>
本件訂正発明3は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲2発明は、ガラス基材(本件訂正発明3の「基材」に相当)の表面に文字、記号、図形を表示するものであって、「保護膜4及び保護膜7」(本件訂正発明3の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
上記イ(ア)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明3は、甲2発明、甲10技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、本件訂正発明1についての主張と同様の主張を行っているところ、上記イ(ア)c(b)に示したとおり、申立人の主張は採用できない。
(イ)甲3発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明3と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点6において相違する。
<相違点6>
本件訂正発明3は、「コート層における基材とは反対側の面」が、「被視認面でありかつ最表面」となっているのに対し、甲3発明は、着色層の表面が表示部の形状に発光するものであって、「保護層」(本件訂正発明3の「コート層」に相当)に表示するものではない点。
b 判断
上記イ(イ)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明3は、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、本件訂正発明1についての主張と同様の主張を行っているところ、上記イ(イ)c(b)、(c)に示したとおり、申立人の主張は採用できない。
(ウ)甲1発明を主引例とした場合
a 対比
本件訂正発明3と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点7において相違する。
<相違点7>
本件訂正発明3は、「コート層」が、「遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」ているのに対し、甲1発明の「透明な保護膜」(本件訂正発明3の「コート層」に相当)の厚さが不明である点。
b 判断
(a)加飾成形品において、遮光層を金属層によって形成すること(甲12技術事項)は、周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
(b)しかしながら、上記周知技術1は上記相違点7を充足しない。
(c)また、甲1発明の「透明な保護膜」の、「意匠部」上の厚み寸法を、「意匠部」の厚み寸法以上とする動機付けもない。
(d)よって、甲1発明に、周知技術1を適用して、相違点7に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1発明、周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c 申立人が令和7年1月9日に提出した意見書でした主張について
申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書の3(5-1-1)において、概略次のとおり主張している。
(a)申立人の主張
申立人は、上記相違点7の想到容易性については主張していない。
一方、甲6について、「上記【図2】を見れば、確かに遮光層35の上における艶消し層37の厚みが、遮光層35の厚み以上であ」る旨を主張している。
(b)申立人の主張についての検討
甲6の図2を見ても、艶消し層37の厚みが、遮光層35の厚み以上であることは看取できるとはいえないし、甲6の明細書にもそのような記載も示唆もない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
(c)以上のことから、申立人が上記意見書でした主張は上記(ウ)の判断を左右するものでなく、採用できない。
(エ)小括
したがって、本件訂正発明3は、甲2発明、甲10技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明、甲12技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明3と同様の理由により、甲2発明、甲10技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明、甲12技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件訂正発明5~7について
本件訂正発明5~7は、本件訂正発明1~4のいずれかを引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1~4と同様の理由により、甲2発明、甲10技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲3発明、甲4-1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明、甲12技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第5 取消理由通知書において採用しなかった異議申立ての理由について
1 申立理由1(明確性要件違反)
(1)申立人は、本件特許の請求項1~3の「開口」について、「単に「前記遮光層には、文字及び図柄の少なくとも一方を示す文字図柄部が複数の前記開口によって形成され」と記載しただけでは、「開口」が文字図柄部のみに存在することを要するか否か、当業者と雖も理解することができず、これによって規定される権利範囲に関しても、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であると言わざるを得ない」旨を主張している(4-2-2)。
しかしながら、本件特許の請求項1及び2の「開口」は、「前記遮光層には、文字及び図柄の少なくとも一方を示す文字図柄部が複数の前記開口によって形成され」と記載されているとおり、「文字図柄部」を形成していればよいのであるから、「文字図柄部」のみに存在すると理解する理由がないことは明らかである。
また、本件特許の請求項3の「開口」は、「基材側からの光が通過する」ものであって、「文字図柄部」との関係は規定されていないことから、「文字図柄部」のみに存在すると理解する理由ないことは明らかである。
(2)また、申立人は、本件特許の請求項1~3の「透光性」、「遮光性」について、「これらの光の透過性は、加飾パネルとしての機能を維持した上で、許容される遮光層の厚み寸法(構成要件B)や開口率(請求項6、構成要件L)に大きく影響を与えるから、本件発明の技術的思想において重要な構成であると言える。従って、「透光性」、「遮光性」という用語は一定の範囲の値の透過率にあることを意味するものとして定義されることが不可欠と考えられるが、本件明細書の記載からも技術常識からも、これによって規定される基準を理解することが出来ず、第三者に不測の不利益を及ぼす程に不明確であると言わざるを得ない」旨を主張している(4-2-3)。
しかしながら、本件特許の請求項1~3において、少なくとも、「透光性を有する素材」の透光性は「遮光性を有する素材(金属材料)」の透光性よりも高いことは明らかであって、「透光性」と「遮光性」の透過率の関係は明確に規定されているといえる。
(3)よって、本件特許の請求項1~3に係る発明は明確である。また、請求項1~3を引用して記載する請求項4~7に係る発明も同様に明確である。
2 申立理由4-1(甲1を主引用例とする新規性)
(1)本件訂正発明1について
ア 甲1発明は、上記第4の2(3)ア(ア)のとおりであり、本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点8で相違する。
<相違点8>
本件訂正発明1は、「コート層」が、「遮光層上における前記基材と対向する方向への厚み寸法が前記遮光層の厚み寸法以上の寸法に設定され」ているのに対し、甲1発明の「透明な保護膜」の厚さが不明である点。
イ そうすると、本件訂正発明1は甲1ではない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点8で相違する。
よって、本件訂正発明2は甲1ではない。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲1発明とを対比すると、上記第4の2(3)エ(ウ)aのとおり、両者は少なくとも上記相違点7で相違する。
よって、本件訂正発明1は甲1ではない。
3 申立理由4-2(甲1を主引用例とする進歩性)
(1)本件訂正発明1について
甲11、甲12、甲13、及び提出された他の証拠のいずれにも、上記相違点8を充足する事項の記載はなく、また、甲1発明の「透明な保護膜」の、「意匠部」上の厚み寸法を、「意匠部」の厚み寸法以上とする動機付けもない。
よって、甲1発明に、甲11、甲12、甲13に記載された事項を適用して、上記相違点8に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(2)本件訂正発明2について
甲4、甲11、甲12、甲13、及び提出された他の証拠のいずれにも、上記相違点8を充足する事項の記載はなく、また、甲1発明の「透明な保護膜」の、「意匠部」上の厚み寸法を、「意匠部」の厚み寸法以上とする動機付けもない。
よって、甲1発明に、甲4、甲11、甲12、甲13に記載された事項を適用して、上記相違点8に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(3)本件訂正発明3について
甲5、甲11、甲12、及び提出された他の証拠のいずれにも、上記相違点7を充足する事項の記載はなく、また、甲1発明の「透明な保護膜」の、「意匠部」上の厚み寸法を、「意匠部」の厚み寸法以上とする動機付けもない。
よって、甲1発明に、甲5、甲11、甲12に記載された事項を適用して、上記相違点7に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明3と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5~7は、本件訂正発明1~4のいずれかを引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1~4と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由5(甲2を主引用例とする進歩性)
(1)本件訂正発明1について
甲2発明は、上記第4の2(3)ア(イ)のとおりであり、本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点1で相違する。
しかしながら、甲1発明、甲3発明は上記相違点1を充足するものではなく、また甲9、甲11、甲13、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点1を充足する事項の記載はない。
また、甲2発明は、鏡の表面に文字、記号、図形を表示する発明であるから、これを鏡の表面ではなく裏面に表示する動機付けもない。
よって、甲2発明に、甲1発明、甲3発明、甲9、甲11、甲13に記載された事項を適用して、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点3で相違する。
しかしながら、甲4-1発明、甲4-2発明は上記相違点3を充足するものではなく、また甲11、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点3を充足する事項の記載はない。
また、甲2発明は、鏡の表面に文字、記号、図形を表示する発明であるから、これを鏡の表面ではなく裏面に表示する動機付けもない。
よって、甲2発明に、甲4-1発明、甲4-2発明、甲11に記載された事項を適用して、相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点5で相違する。
しかしながら、甲5、甲11、甲12、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点5を充足する事項の記載はない。
また、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
よって、甲2発明に、甲5、甲11、甲12に記載された事項を適用して、相違点5に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明3と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5~7は、本件訂正発明1~4のいずれかを引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1~4と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立理由6(甲3を主引用例とする進歩性)
(1)本件訂正発明1について
甲3発明は、上記第4の2(3)ア(ウ)のとおりであり、本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点2で相違する。
しかしながら、甲5、甲11、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点2を充足する事項の記載はない。
また、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
よって、甲3発明に、甲5、甲11に記載された事項を適用して、相違点2に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点4で相違する。
しかしながら、甲4-1発明、甲4-2発明は上記相違点4を充足するものではなく、また甲11、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点4を充足する事項の記載はない。
また、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
よって、甲3発明に、甲4-1発明、甲4-2発明、甲11に記載された事項を適用して、相違点4に係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(3)本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも上記相違点6で相違する。
しかしながら、甲5、甲11、甲12、及び提出された他の証拠のいずれにも上記相違点6を充足する事項の記載はない。
また、甲3発明の「着色層」は、保護層の色彩と相互作用しつつ照光式表示板の色彩を決定するものであるから必須のものといえるところ、これを排除して「保護層」を最表面とする動機付けもない。
よって、甲3発明に、甲5、甲11、甲12に記載された事項を適用して、相違点6に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者にとって想到容易ではない。
(4)本件訂正発明4について
本件訂正発明4は、本件訂正発明3を引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明3と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件訂正発明5について
本件訂正発明5~7は、本件訂正発明1~4のいずれかを引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明1~4と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~7に係る発明の特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700093