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特許異議申立

2024-701008

表示体

審判番号
2024-701008
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-087521
登録番号
7468137
請求日
2024年10月15日
審決日
2025年11月12日
公報発行日
2025年12月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
  • 【権利者代理人】蔵田 昌俊
  • 【権利者代理人】井上 正
  • 【異議申立人】鈴木 佐知子
審判長/審判官
  • 審判長 川俣 洋史
  • 審判官 門 良成
  • 審判官 道祖土 新吾
分類
P1651.113-Y (G09F) / P1651.121-Y (G09F) / P1651.536-Y (G09F) / P1651.537-Y (G09F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7468137号発明「表示体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7468137号の請求項1~16に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7468137号(以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、令和2年5月19日の出願であって、令和6年4月8日にその特許権の設定登録がされ、同月16日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和6年10月15日に、特許異議申立人鈴木 佐知子(以下「申立人」という。)による請求項1~16に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年10月15日 :申立人による特許異議の申立て 同年12月25日付け:取消理由通知書 令和7年 3月 7日 :特許権者による意見書の提出 同年 4月11日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 6月13日 :意見書及び訂正請求書の提出 同年 7月 9日 :手続補正書 同月23日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 8月26日 :意見書及び手続補正書の提出 なお、令和7年8月26日に提出の手続補正書により、令和7年6月13日付けの訂正請求書における全ての訂正事項(訂正事項1~3)は削除されたため、事実上、本件特許明細書に対する訂正請求はされていない。 第2 本件特許 本件特許の請求項1~16に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明16」ということがある。また、これらを併せて「本件特許発明」ということがある。)は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、 前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、 前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、 前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され、 前記三次元画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記三次元画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される表示体。 【請求項2】 前記第1立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が0.5mm以上である請求項1に記載の表示体。 【請求項3】 前記三次元画像は、第3対象物の像を更に含み、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第3対象物に対応した第3立体物は、前記表示面内に全体が復元される請求項2に記載の表示体。 【請求項4】 前記第1対象物の像と前記第2対象物の像とはホログラムによって表示され、前記第3対象物の像は回折格子によって表示される請求項3に記載の表示体。 【請求項5】 前記第2対象物の像の明るさは、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第2対象物の像の明るさの1/10以下であり、前記第3対象物の像の明るさは、前記第2対象物の像が最も明るく表示される観察角度では、前記第3対象物の像が最も明るく表示される観察角度における前記第3対象物の像の明るさの1/10以下である請求項3又は4に記載の表示体。 【請求項6】 前記第1立体物は、前記表示面内に全体が復元される請求項1に記載の表示体。 【請求項7】 前記第1対象物の像は回折格子によって表示され、前記第2対象物の像はホログラムによって表示される請求項6に記載の表示体。 【請求項8】 前記第2立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が30mm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。 【請求項9】 前記三次元画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、 前記主面のうち前記レリーフ構造が設けられた領域を少なくとも部分的に被覆した反射層と を備え、前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。 【請求項10】 前記表示面と向き合った印刷層を更に備え、前記印刷層は、前記表示体の表面に複数の凸部を生じさせている請求項9に記載の表示体。 【請求項11】 前記複数の凸部の高さは5乃至40μmの範囲内にある請求項10に記載の表示体。 【請求項12】 前記複数の凸部は、互いから離間して幅方向に配列した複数のラインパターンを含んだ請求項10又は11に記載の表示体。 【請求項13】 前記複数のラインパターンの各々の幅は0.02乃至0.1mmの範囲内にあり、前記複数のラインパターンは0.2乃至0.5mmの範囲内のピッチで配列している請求項12に記載の表示体。 【請求項14】 請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、 前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と を備えた転写箔。 【請求項15】 請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、 前記表示体上に設けられた粘着層と を備えた粘着ラベル。 【請求項16】 請求項1乃至13の何れか1項に記載の表示体と、 前記表示体を支持した物品と を備えた表示体付き物品。」 第3 取消理由の概要 令和7年4月11日付け取消理由通知書(決定の予告)において、請求項1~16に係る特許に対して通知した取消理由(以下単に「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。 1 [明確性要件違反]本件請求項1~16に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、概略、下記2の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。 2 本件特許発明1は、「「前記三次元画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記三次元画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される」との構成を有しているが、どのように「ホログラム」と「回折格子」を区別すれば良いのか明らかであるとはいえない。 したがって、請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、本件特許発明1は不明確である。 また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~16も同様に不明確である。 第4 当審の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由(明確性)について (1)明確性要件の判断の前提 特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにあると解される。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)本件特許明細書における開示 本件特許発明1に関連し、本件特許明細書には、下記の記載が認められる。 「【0004】 ホログラム又は回折格子によって表示される三次元画像は、偽造防止などに広く利用された結果、その特殊性が低くなりつつある。 【0005】 本発明は、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示可能な表示体を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明の一側面によると、第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する表示体であって、前記三次元画像から立体物を三次元復元した場合、前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され、前記三次元画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記三次元画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される表示体が提供される。 …(中略)… 【0010】 上記の通り、本発明の一側面に係る表示体によると、第1立体物は、第2立体物と比較して、表示面から近い位置に復元される。このような設計を採用しているので、第1対象物の像は、照明角度や観察角度を僅かに変化させても、形状及び位置を大きくは変化させない。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、直接光によって生じる視差画像と、これと第1対象物の像の形状及び位置がほぼ等しい1以上の視差画像とを含み得る。 【0011】 これら視差画像において、第1対象物の像は形状及び位置がほぼ等しいので、直接光によって生じさせるべき視差画像における第1対象物の像の表示には、他の1以上の視差画像も寄与し得る。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像が、直接光によって生じる視差画像とは第1対象物の像の形状及び位置が大きく異なる1以上の視差画像を含んでいたとしても、それら視差画像と比較して、直接光によって生じさせるべき視差画像は遥かに明るい。従って、この表示体は、拡散光による照明条件下であっても、第1対象物の像を明るく且つ鮮明に表示する。 【0012】 また、本発明の一側面に係る表示体によると、第2立体物は、第1立体物と比較して、表示面から遠い位置に復元される。このような設計を採用しているので、第2対象物の像は、照明角度や観察角度を僅かに変化させただけで、形状及び位置を大きく変化させる。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、直接光によって生じる視差画像と第2対象物の像の形状及び位置がほぼ等しい視差画像を殆ど含まない。それ故、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、互いに対してノイズとして振舞う。従って、この表示体は、拡散光による照明条件下では、第2対象物の像を表示しないか、又は、表示したとしても、暗く且つ不鮮明に表示する。 【0013】 また、この表示体を高強度の平行光又はそれに近い発散若しくは収束光で照明した場合、この表示体が観察者の右目又は左目に対して表示する複数の視差画像は、例えば、1つのみとなるか、又は、第1及び第2対象物の各々の像の形状及び位置がほぼ等しい複数の視差画像のみとなる。発光ダイオードなどの点光源からの光は、表示体へ向けて伝播するもののみに着目すれば、通常、平行光に近い発散光である。そして、この表示体を、上記の光源と比較して表示体に対してより近い位置に点光源を設置し、表示体に対して点光源を近づけると、点光源からの光が表示へ及ぼす影響は、屋内照明などの光源からの拡散光が表示へ及ぼす影響に対して相対的に大きくなる。従って、この表示体は、屋内環境下であっても、これに十分に近い位置から点光源で照明すると、第1対象物の像だけでなく、第2対象物の像も明るく且つ鮮明に表示する。 【0014】 以上の通り、この表示体は、屋内照明などからの拡散光によって照明した場合には、第2対象物の像を表示しないか、又は、表示したとしても、暗く且つ不鮮明に表示する。そして、この表示体は、十分に近い位置で点光源によって照明した場合には、第2対象物の像を表示する。それ故、この表示体では、第2対象物の像は、潜像として記録され得る。 【0015】 また、上記の現象を知らない人が、表示体が表示する像を観察するために、後者の照明条件を採用する可能性は低い。そして、第1対象物の像は、後者の照明条件下だけでなく、前者の照明条件下でも表示される。それ故、第1対象物の像は、この表示体が第2対象物の像を表示し得るものであることを悟られ難くする。 【0016】 このように、上記表示体は、ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示することが可能である。 【0017】 本発明の他の側面によると、前記第1立体物は、前記表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元される上記側面の何れかに係る表示体が提供される。このような表示体は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときに、第1対象物の像をより明るく且つより鮮明に表示する。 【0018】 本発明の更に他の側面によると、前記第1立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が0.5mm以上である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この距離は、2mm以上であることが好ましい。この距離が大きいほど、観察者は運動視差による立体感を強く感じる。 …(中略)… 【0023】 本発明の更に他の側面によると、前記第1対象物の像は回折格子によって表示され、前記第2対象物の像はホログラムによって表示される上記側面に係る表示体が提供される。この場合、第1対象物の像は、視差画像によって観察者に立体感を感じさせる三次元画像ではなく、二次元画像であってもよい。 【0024】 本発明の更に他の側面によると、前記第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この表示体によると、第2対象物の像は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときにより認識され難い。 【0025】 本発明の更に他の側面によると、前記第2立体物のうち前記表示面から最も遠い部分は、前記表示面からの距離が30mm以下である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この距離は、10mm以下であることが好ましい。 【0026】 この距離を大きくすると、第2対象物の像の表示に、平行光を射出する特殊な光源が必要になる。また、第2立体物が表示面から過剰に遠い部分を含んでいる場合、第2対象物の像における対応部分の位置は、観察方向を僅かに変化させただけで大きく変化する。それ故、第2対象物の像を観察するために必要な条件の設定が難しくなる。」 (3)本件特許発明1の要旨 ア 課題解決手段や技術効果からみた本件特許発明1 前記(2)から明らかなように、本件特許発明の課題は「ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示可能な表示体を提供すること」(【0005】)である。 そして、第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する際に、「前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され」(【0017】)、「前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される」(【0024】)ようにすることによって、「屋内照明などからの拡散光によって照明したときに、第1対象物の像をより明るく且つより鮮明に表示する」(【0017】)一方で、「第2対象物の像は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときにより認識され難い」(【0024】)ものであって、かつ「十分に近い位置で点光源によって照明した場合には、第2対象物の像を表示する」(【0014】)という効果を奏するものである。 イ 本件特許発明1における「ホログラム」と「回折格子」 (ア)本件特許発明1における「ホログラム」及び「回折格子」の位置づけ 段落【0006】の「第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する」との記載からも明らかなように、本件特許発明1において、第1対象物や第2対象物を表示させるのにあたっては「ホログラム」、「回折格子」のいずれを用いても良いことは明らかである。 このことは、以下のようなことからも裏付けられる。 a 本件特許明細書の全体を通じて、三次元画像を表示させるものとして、「ホログラム」及び「回折格子」のいずれの用語も特段の区別なく用いられていること。 b 回折格子による三次元表示とホログラムによる三次元表示は、いずれも実現可能であること(令和7年8月26日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)でも主張されているとおり、このことは技術常識である。)。 c 三次元画像を表示させるものが「ホログラム」であるか「回折格子」であるかに関わらず、異議申立において提示された甲第1号証~甲第19号証からみて、本件特許発明1が進歩性を有すること(後記2(4)を参照)。 (イ)「ホログラム」及び「回折格子」との用語について a ホログラムについて 一般に、「ホログラム」という用語はその製造方法に着目した用語であって、特許権者が提出する乙第4号証(JIS工業用語大辞典第5版(2001年3月30日財団法人日本規格協会発行)には、「物体から出る光波と、それと干渉性がある光波との干渉パターンを写真感光材料などに記録したもの」と記載されている。 b 回折格子について 一般に、「回折格子」という用語はその機能に着目した用語であって、乙第4号証によれば、「光の回折を利用してスペクトルを得るために用いる光学素子。平面光子、凹面格子などがある」と記載されている。 c 両者の区別について 前記a及びbにおいて示したように、「ホログラム」は製造方法に着目した用語であって、「回折格子」は機能に着目した用語であるから、両者は厳密には区別できず、双方の用語で表現される部材の範囲としては重なりがあるものと認められる(例えば特定の部材Aが「ホログラム」でありかつ「回折格子」でもあることは、当然に起こりえる。)。 このことは、取消理由において引用した、久保田敏弘「ホログラフィによる立体像表示」光学16巻11号(1987)466頁における「ホログラムは一種の回折格子であり・・・」との記載からも明らかである。 (ウ)本件特許発明1の明確性と「ホログラム」及び「回折格子」について 前記(イ)cで検討したとおり、「ホログラム」と「回折格子」の区別は明らかとはいえない。しかし、本件特許発明1の要旨は前記アで検討したとおりのものであって、すなわち、第1対象物や第2対象物を表示させる際の表示面からの距離は重要であるものの、それぞれを表示させる光学部材が「ホログラム」及び「回折格子」のどちらでも良いことが明らかである。 そのような視点に立ってみれば、本件特許発明1における「ホログラム」及び「回折格子」との発明特定事項は、単に、少なくともそのように呼称可能である部材が用いられていることを特定しているにすぎないというべきであって、本件特許発明1の要旨を不明確にするものではない。 してみれば、「ホログラム」と「回折格子」とを明確に区別できないことのみをもって、本件特許発明1という技術的思想が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない、というべきである。 (4)取消理由についてのまとめ 前記(1)~(3)で検討したことからみて、本件特許発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~16に係る発明についても同様である。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)異議申立人が主張する申立理由1(明確性要件違反)について ア 異議申立人の主張 異議申立人は、申立書の33頁~34頁(4(2)ア(イ)欄)において、概略、本件特許発明1では「前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され[る]」及び「前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され[る]」との特定が存在しているところ、本件特許発明1を引用する本件特許発明9の「前記表示面は、前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面である」との特定は、表示面から立体物までの距離が一義的に定まらないこととなるので、本件特許発明9~16は不明確である旨主張している。 イ 当合議体の判断 本件訂正発明1において「前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され[る]」ことの技術的意義は、「このような表示体は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときに、第1対象物の像をより明るく且つより鮮明に表示する」(【0017】)からであり、一方で「前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され[る]」ことの技術的意義は、「この表示体によると、第2対象物の像は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときにより認識され難い」(【0024】)からである。このような技術的意義からみて、この距離の具体的な数値は、その値を境として格別顕著な技術的効果が奏されるというような臨界的な意義をもったものではなく、その範囲であれば一定の技術効果が認められる、といった目安を与える程度の意味のものと解される。また一般に、光学部材における反射層の厚みはせいぜい数10μm程度であるという技術常識に鑑みれば、表示される対象物との距離を決定するための基準面を「前記反射層の表面又は前記レリーフ構造と前記反射層との間の界面」のいずれとするかは、もはや誤差の範囲であって、そのような範囲に基準面が存在することを規定するにとどまるものといえる。 してみれば、本件特許発明9は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項10~16に係る発明についても同様である。 ウ まとめ 前記イのとおりであるから、前記申立理由1(明確性要件違反)は、採用すべき理由がない。 (2)異議申立人が主張する申立理由2(サポート要件違反)について ア 異議申立人の主張 異議申立人は、申立書の34頁(4(2)イ欄)において、概略、本件特許発明は、実質的には表示面から4mm以下の範囲内に全体が表示される第1対象物の像と、表示面から5mm以上の範囲内に全体が配置される像(第2対象物の像)とを含むことを特定しているにすぎず、表示される像の表示面からの距離を測定するときの照明の条件や、表示される像の明るさなど、上述の特殊な三次元画像の表示の実現のために特定が必要であると考えられる構成について何ら特定していないから、サポート要件を満たさない旨主張している。 イ 当合議体の判断 前記1(3)アで検討したように、課題を解決するための手段は、第1対象物の像と第2対象物の像とを含む三次元画像を回折画像として表示する際に、「前記第1対象物に対応した第1立体物は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され」(【0017】)、「前記第2対象物に対応した第2立体物は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される」(【0024】)ようにすることである。そして、このような課題解決手段を発明特定事項として含んでいる本件特許発明1の構成は、照明光の状態に応じ、「屋内照明などからの拡散光によって照明したときに、第1対象物の像をより明るく且つより鮮明に表示する」(【0017】)、「第2対象物の像は、屋内照明などからの拡散光によって照明したときにより認識され難い」(【0024】)、「十分に近い位置で点光源によって照明した場合には、第2対象物の像を表示する」(【0014】)といった具体的な技術効果を奏することによって、「ホログラム又は回折格子によって特殊な三次元画像を表示可能な表示体を提供すること」(【0005】)という課題を解決することができるものと認められる。 したがって、本件特許発明1はサポート要件を満たしている。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~16に係る発明についても同様である。 ウ まとめ 前記イのとおりであるから、前記申立理由2(サポート要件違反)は、採用すべき理由がない。 (3)異議申立人が主張する申立理由3(実施可能要件違反)について ア 異議申立人の主張 異議申立人は、申立書の35頁(4(2)ウ欄)において、概略、本件特許発明1は表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される第2対象物の像を「回折格子」によって表示する場合も含むが、本件特許明細書には、「回折格子」によって、表示面から離れた位置に立体物の像を表示する方法についての記載が存在しないから、本件特許発明は実施可能要件を満たさない旨主張している。 イ 当合議体の判断 前記1(3)イ(イ)cで検討したように、「ホログラム」と「回折格子」は明確に区別できるものではないところ、「ホログラム」の機能を有する「回折格子」も当然に存在するのであるから、回折格子によって、表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される第2対象物の像を表示できることは明らかである。 ウ まとめ 上記イのとおりであるから、前記申立理由3(実施可能要件違反)は、採用すべき理由がない。 (4)異議申立人が主張する申立理由4(新規性)、申立理由5(進歩性) ア 異議申立人の主張 異議申立人は、申立書の36~149頁(4(3)ア~(5)欄)において、概略、本件特許発明は甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるか、または、甲第1~3号証に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張している。 イ 特許異議申立人が提出した証拠方法 甲第1号証 :国際公開第2020/004633号 甲第2号証 :特表2013-532300号公報 甲第3号証 :特開2005-49675号公報 甲第4号証 :特開2004-309709号公報 甲第5号証 :特開平11-24539号公報 甲第6号証 :特開2005-195846号公報 甲第7号証 :特開2007-212529号公報 甲第8号証 :国際公開第2020/080367号 甲第9号証 :特開2001-83866号公報 甲第10号証:特開2001-109362号公報 甲第11号証:特開2019-215498号公報 甲第12号証:特開2017-129802号公報 甲第13号証:米国特許出願公開第2011/0049865号明細書 甲第14号証:特開2010-58511号公報 甲第15号証:実願昭63-29222号(実開平1-137265号) のマイクロフィルム 甲第16号証:特開2002-301852号公報 甲第17号証:特開2005-246746号公報 甲第18号証:特開2019-20594号公報 甲第19号証:特開2011-175374号公報 以下、甲号証に付された番号を使って、それぞれ、「甲1」などという。 ウ 甲1~甲3に記載の発明 (ア)甲1について a 甲1記載事項 甲1(国際公開第2020/004633号)には、次の記載がある。 「[0001] 本発明の実施形態は、認証体、認証体の製造方法、認証体の読み取り方法、および認証体の検証方法に関する。 …(中略)… 背景技術 [0002] 個人情報を含む認証体として、パスポートや運転免許証などの各種ID(IDentification)カードが知られている。」 「[図1] [図:0001430000000001.jpg] 」 「[0015] (認証体) 図1は、本実施形態における認証体100の平面図である。認証体1は、シート状のラミネートシート30と、ラミネートシート30の一部に形成された第一領域11および第二領域12とを備えている。 …(中略)… [0016] 第一領域11には、認証体100の個人識別情報21が記録されている。個人識別情報21は、所有者の個人識別情報とできる。個人識別情報には、カード、冊子の所有者の情報を含むことができる。個人識別情報は、個人の生体情報、個人の非生体情報、またはその対である。生体情報は個人を識別可能な生体情報とできる。生体情報により、生体認証することができる。非生体情報の実例は、名前、生年月日、出身国、出身地、個人識別番号である。また、これらは文字、数字、記号などの組合せとできる。個人の生体情報の実例は、顔画像、指紋パターン、網膜パターン、声紋、筆跡、サインである。個人識別情報21は、目視での本人確認ができるように、可視光下で視認できる構成で設けられている。 …(中略)… [0018] 個人識別情報21の記録は、レーザーエングレービングに限られない。レーザーエングレービングに替えて、ラミネートシート30上に印刷することで個人識別情報21を形成してもよい。あるいは、ラミネートシート30とは異なる樹脂シートに個人識別情報21を印刷し、ラミネートシート30に貼り合わせたり、透明なラミネートシートの内部に埋め込み配置したりしてもよい。 ラミネートシート30の表面や内部に個人識別情報21を付与すると、認証体100が偽造や模造のために破壊された場合に個人識別情報21も同時に破壊されるため、偽装行為や模造行為があったことを検知できる。」 「図2A [図:0001430000000002.jpg] 」 「[0019] 第二領域12には、ホログラム構造が形成されている。ホログラム構造は、図2Aに示すように、個人識別情報12から生成されたチェックデータ22を再生像として表示する。ホログラム構造には、チェックデータ22が記録されている。 チェックデータ22が記録されたホログラム構造は、個人の生体情報が記録されている領域に重ねて形成してもよい。つまり、個人の生体情報が記録された領域の一領域または全領域に、ホログラム構造も形成されてもよい。この場合、生体情報が改ざんされる際にホログラム構造も破壊されるため、ホログラム構造を流用する改ざんを防止できる。このとき、チェックデータ22は、個人の非生体情報から生成されてもよい。これにより、個人の国籍等の非生体情報と顔画像等の生体情報をすりかえる成りすましを防止しやすい。 チェックデータ22は、個人の非生体情報のみから生成されてもよい。これにより、チェックデータ22をより容易に生成できる。 …(中略)… [0021] 第二領域12のホログラム構造には、各種の公知構造を適用できる。中でも形成層中の屈折率を変調した体積ホログラムや表面にレリーフ構造を有する表面レリーフホログラムがホログラム構造に適している。体積ホログラムは、リップマンホログラムとできる。表面レリーフホログラムは、計算機ホログラムとできる。計算機ホログラムはキノフォームとできる。計算機ホログラムとは、再生像から回折格子ホログラムパターンを計算して形成するホログラムである。キノフォームは、キノフォームに記録する再生像のキノフォーム上での位相をキノフォームの面上に位相差として記録したものである。光学位相情報が記録されたリップマン型ホログラムや計算機ホログラムを、ホログラムフィルムとして形成できる。再生像を表示するための光学位相情報が記録されたホログラムフィルムの一部をカードやページの定位置に転写することができる。これにより、チェックデータ22の再生像を精密な位置に再生できる。 …(中略)… [0023] 表面レリーフホログラムを第二領域12のホログラム構造とする場合は、以下の手順で行える。 …(中略)… 表面レリーフホログラムは、レリーフ面を有する。レリーフ面は、凹部または凸部、もしくは凹部および凸部を有した表面レリーフを有し、回折、光反射抑制、等方性または異方性の光散乱、屈折、偏光・波長選択性の反射、透過、光反射抑制などの光学的性質を発現する。レリーフ層22に、例えば0.5μm以上2μm以下のピッチ、0.05μm以上0.5μm以下の深さで、回折格子構造の領域を設けることで、ホログラム構造は光を回折させる性質を発現する。 …(中略)… [0024] ホログラムフィルムに形成された微細凹凸構造により生じる回折光の輝度を向上させるため、微細凹凸構造を形成したホログラムフィルムの、微細凹凸構造を反射層でカバーしてもよい。つまり、ホログラム構造は、反射層でカバーされてもよい。反射層は、微細凹凸構造に気相堆積することで、凹凸構造をカバーできる。気相堆積は、化学気相堆積、物理気相堆積とできる。物理気相堆積は、真空蒸着やスパッタが適用できる。反射層の材質は、金属酸化物、金属、酸化ケイ素とできる。金属酸化物は、硫化金属、酸化金属、チッ化金属、フッ化金属とできる。」 「図2B [図:0001430000000003.jpg] 」 「[0026] 本実施形態の実例では、チェックデータ22を示す空間23に、4つの数字「9」、「8」、「7」、および「6」を情報セグメントとするチェックデータ22が表示される。したがって、第二領域12には、4つの情報セグメント9、8、7、6を再生像とするホログラム構造が形成されている。ホログラム構造は、4つの各情報セグメントを再生するホログラムセグメントを有する。さらに、ホログラム構造は、図2Bに示すように、各情報セグメントの再生像22a、22b、22c、および22dの認証体100の厚さ方向における位置(以下、「再生位置」と称する。)が互いに異なるように構成できる。すなわち、再生像22aおよび22bは、第二領域12が位置するラミネートシート30よりも下方に再生され、再生像22cおよび22dは、ラミネートシート30よりも上方に再生されるようにできる。」 「[0050] 次に、本発明の実験結果を示す。 (実験例) 計算機ホログラムにより、アルファベット大文字「A」、「B」、および「C」が、ホログラムフィルム界面を基準としてそれぞれ手前側5mm、7mm、9mmの位置に再生されるようにホログラム構造を計算し、そのホログラム構造がエンボス成型されたホログラム転写箔を作製した。参照光は緑色光とした。 作製したホログラム転写箔をポリカーボネート製シートの上面に転写した。その上に別のポリカーボネート製シートを重ねて熱ラミネート加工を行い、ホログラム構造が内部に埋め込まれたラミネートシートを作製した。 [0051] 縦53.98mm、横85.6mmの上記ラミネートシート(身分証明書カードの形状を定める国際規格ISO/IEC7810 ID-1に準ずる)を2枚用意し、1枚には架空の人物Aの情報を個人識別情報として記録した(実験例1)。もう1枚には架空の人物Bの情報を個人識別情報として記録した(実験例2)個人識別情報を、いずれも波長1064nmの赤外レーザーでラミネートシートの表面に記録した。 [0052] フルカラーLED光源、光学プリズム、CMOSセンサを備えた読み取り装置を用意した。この読み取り装置に認証体をセットすると、光源から出射された光が認証体に対して垂直に入射し、ホログラム構造の再生像がCMOSセンサへ結像する。CMOSセンサの設置位置(撮像条件)を変えることで、各再生位置における再生像のみを選択的に取得できる。 [0053] 実験例1および2の認証体に緑色光を照射すると、ホログラム転写箔界面の手前5mm、7mm、9mmの位置にそれぞれ「A」、「B」、および「C」の再生像が再生された。 実験例1および2の認証体に赤色光を照射すると、ホログラム転写箔界面の手前3mm、5mm、7mmの位置にそれぞれ「A」、「B」、および「C」の再生像が再生された。すなわち、光源から出射される光の波長により、ホログラム構造の再生位置が変化した。 [0054] 検証における条件が、「緑色光、手前7mm」である場合、実験例におけるチェックデータは「B」となる。すなわち、「A」および「C」はチェックデータを構成しないダミー再生像となる。読み取り装置の読み取り条件(出射光波長およびCMOSセンサの設置位置)が条件通りであれば、読み取り装置は、正しいチェックデータ「B」のみを取得する。読み取り条件が条件情報と異なる場合、読み取り装置は、正しいチェックデータを取得できない。例えば、読み取り条件が「赤色光、手前7mm」であると、読み取り装置は「C」のみを取得する。読み取り条件が「緑色光、手前3mm」であると、読み取り装置は再生像を取得できない。」 b 甲1から把握できる事項 アルファベット大文字「A」、「B」および「C」はチェックデータとして用いられるものであって、その役割からみて立体物ではなく平面状の物であることは明らかであり、このことは図2Aからも看て取れる事項である。 c 甲1発明 前記a及びbから、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 [甲1発明] 「 計算機ホログラムにより、アルファベット大文字「A」、「B」および「C」が、ホログラムフィルム界面を基準としてそれぞれ手前側5mm、7mm、9mmの位置に平面上の物として再生されるようにホログラム構造を計算し、そのホログラム構造がエンボス成型されたホログラム転写箔であって、([0050]) 赤色光を照射すると、ホログラム転写箔界面の手前3mm、5mm、7mmの位置にそれぞれ「A」、「B」、および「C」の再生像が再生される、([0053]) ホログラム転写泊。」 (イ)甲2について a 甲2記載事項 甲2(特表2013-532300号公報)には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、貴重な物品、例えば銀行券などへの使用のためのセキュリティ装置に関する。 【背景技術】 【0002】 よく知られているセキュリティ装置の群には、表面レリーフミクロ構造が含まれており、入射輻射線に応答して、ホログラム、Kinegrams、Pixelgramsおよび他の回折効果を再現する。 …(中略)… 【0007】 本発明によれば、セキュリティ装置は、回折画像を発生する3つの構造の重ね合わせによって形成された、光学的に可変の効果を発生させる表面レリーフ構造を備える基材を含んでおり、この構造は、白色光のそれぞれの異なる色成分もしくは波長範囲に応答して、その基材の表面から間隔を空けた平面に位置する、第1の、実質的にアクロマティックな画像または背景パターンを発生させる。 【0008】 我々は、アクロマティックなホログラムの形態における有意な進歩が、本装置に「深さの」観点を導入することによって達成することができることを見出した。全ての現在のアクロマティックなホログラムは、基本的な回折格子の複雑な配置を基に、2D画像を発生させる。それが、ドットマトリックス装置が、それらの2Dの性質のために、そのようなアクロマティックなホログラムを直ぐに模倣することができることの理由である。本発明は、アクロマティックな画像を、顕著なホログラム深さと組み合わせて、それによってその装置が傾けられたときに、そのアクロマート画像または背景が、その装置の端部に対して動くようにした。 【0009】 幾つかの例では、本装置は、単純に、第1のアクロマティックな画像または背景パターンを含むことができるが、しかしながらこのことは、このセキュリティ装置が傾けられた時に、その画像の動きに気付くことを困難にさせる可能性がある。従って、好ましくは、この光学的に可変な効果を発生させる構造は、基材の平面に第2の画像を形成する。 【0010】 この第2の画像は、アクロマティックであることができ、ならびに、もしくは、あるいは非回折性もしくは非ホログラム画像であることができる。 【0011】 第1のアクロマティックな画像が位置している平面は、基材の表面の前または後ろのいずれかであることができる。 【0012】 動きの効果を最適化するために、第1のアクロマティックな画像または背景パターンの平面と、基材の平面の間の間隔は、好ましくは、本装置を傾けたときに、第1のアクロマティックな画像または背景が、基材平面に対して識別可能な動きを示し、動きの比率は、傾きのラジアン当たりに少なくとも6mmであり、そして動きの比率と視域の包含される角度との積は、距離を、第1のアクロマティックな画像もしくはパターンの動きの方向における本装置の寸法の少なくとも18%に規定するようなものである。 【0013】 更なる例では、本装置は、第2のアクロマティックな画像を更に含むことができ、第1および第2のアクロマティックな画像は、基材の表面の前と後ろのそれぞれの、第1と第2 の平面のそれぞれに見えてくる。 【0014】 このことが、更により容易に検証可能な装置であるが、しかしながら偽造することが特に困難である装置を提供する。この場合には、好ましくは、第1のアクロマティックな画像または背景パターンの平面と、第2のアクロマティックな画像の平面の間の間隔は、本装置を傾けたときに、第1のアクロマティックな画像または背景が、第2のアクロマティックな画像に対して識別可能な動きを示し、動きの比率は、傾きのラジアン当たりに少なくとも6mmであり、そして動きの比率と視野の包含される角度の積は、距離を、第1のアクロマティックな画像もしくはパターンの動きの方向における本装置の寸法の少なくとも18%に規定するようなものである。 …(中略)… 【0019】 本発明による装置は、物品、例えば貴重な物品、例えば書証、例えば銀行券などの上、または中に与えることができる。この物品は、紙もしくはプラスチック基材を備えることができ、またはセキュリティスレッドとして与えることができる。更に、そのような装置は、慣用の方法で、担体上に転写可能なラベルとして与えることができる。 …(中略)… 【0022】 表面レリーフミクロ構造は、典型的には、反射する裏材、例えば金属被覆(連続もしくはインクデメット(demet)パターン)または高屈折率層、例えばZnS、を与えられている。 …(中略)… 【0031】 我々は、図4および5を示すことから始めるが、本発明のアクロマティックなホログラム装置の単純な例であり、これは、画像「50」を含んでおり、ここでは、上記のように、この「5」の画像要素は、本装置の表の平面上に位置した画像平面を有しており(すなわち、焦点のその画像または平面は、本装置の表の平面と一致する)、一方で、「0」の画像要素は、本装置の表面の後ろに、LDmmの距離に位置する画像平面を有しており、ここでLDは、表面の平面画像に対して、少なくとも6mm/(傾きのラジアン)の、視差移動の比率を発生するのに十分に大きい。この特定の態様では、このことは、LDが、少なくとも6mmであることを必要とする。」 「【図4】 [図:0001430000000004.jpg] 」 「【図5】 [図:0001430000000005.jpg] 」 「【0072】 本発明のセキュリティ装置は、保護書証にラベルとして適用するのに好適であり、保護書証は、通常、保護書証に接触する装置の外側表面への、熱もしくは圧力感受性接着剤の適用を必要とする。更に、随意の保護コーティング/ ワニスを、本装置の露出した外側表面に適用することができる。この保護コーティング/ ワニスの機能は、セキュリティ基材上への転写の間および循環における、本装置の耐久性を向上させることである。 【0073】 ラベルではなく、パッチまたは細片の形態の転写要素の場合には、本セキュリティ装置は、好ましくは担体基材上に予め作られ、そして次の作業工程で、基材へと転写される。本セキュリティ装置は、接着層を用いて、書証に適用することができる。この接着層は、本セキュリティ装置か、または本装置が適用される保護書証の表面のいずれかに適用される。転写の後に、担体細片は、取り除いて、露出された層として本セキュリティ装置を残すか、あるいは担体層は、外側保護層として作用する構造の一部として残すことができる。ミクロ光学構造を含む注型硬化装置に基づくセキュリティ装置の好適な転写方法は、欧州特許第1897700号に記載されている。」 b 甲2発明 前記aから、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 [甲2発明] 「 「5」の画像要素の像と「0」の画像要素の像とを表示するホログラム装置によって構成されるセキュリティ装置であって、 「5」の画像要素は、ホログラム装置の表の平面上に位置した画像平面を有しており、「0」の画像要素は、ホログラム装置の表面の後ろに、少なくとも6mmの距離に位置する画像平面を有しており、(【0001】、【0031】)、 ホログラム装置は、金属被覆または高屈折層などの反射する裏材が与えられた表面レリーフミクロ構造を有する、(【0022】) セキュリティ装置。」 (ウ)甲3について a 甲3記載事項 甲3(特開2005-49675号公報)には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、付加情報の付いたホログラム記録フィルム、及び、その記録方法とその真偽判定方法に関し、特に、立体物等が記録された反射型の体積ホログラムに平面の文字・画像等のパターンを各ホログラムの個別情報(可変情報)として重畳記録したホログラム記録フィルム、及び、その記録方法とその真偽判定方法に関するものである。 …(中略)… 「【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成する本発明の付加情報の付いたホログラム記録フィルムは、反射型で体積ホログラムからなるホログラム記録フィルムにおいて、前記体積ホログラムからの再生像に重畳して、平面付加情報がホログラム面の前方あるい後方に再生可能に記録され、ホログラム面にはその平面付加情報の影像が再生しないように記録されていることを特徴とするものである。 …(中略)… 【0036】 さて、本発明に基づいて、以上のような可変情報5の同一パターンの二重像として記録された付加情報パターンA’、B’の中、ホログラム面に再生される第1の付加情報パターンA’をなくしてホログラム面の前方(図4)又は後方(図7)に第2の付加情報パターンB’のみが再生されるように、複製記録された体積ホログラム22を加工する方法について説明する。 【0037】 図8は、そのために付加情報パターンA’、B’が同時に再生される複製記録された体積ホログラム22をトリミングする方法を示している。図8(a)、(b)はそれぞれ図4、図7に対応する図であるが、図8(a)においては、付加情報パターンA’、B’は立体被写体Oの像I”の頭上でなく足元に記録されている点で若干異なる。」 「【図8】 [図:0001430000000006.jpg] 」 「【0038】 通常、反射型ホログラム原版1作製時の照明光(参照光)12のホログラム面への入射角は90°以外の斜め方向から所定の入射角αで入射させるため、複製照明光6、6’の入射角、立体被写体Oの像I’とI”の再生に係わる白色照明光23の入射角も同じαとなる。そのため、第1の付加情報パターンA’と第2の付加情報パターンB’の位置関係は、図8(a)(図4)の場合は、白色照明光23の入射方向に付加情報パターンB’が、その影位置に付加情報パターンA’が位置し、図8(b)(図7)の場合は、白色照明光23の入射方向に付加情報パターンA’が、その影位置に付加情報パターンB’が位置し、何れも斜め方向に整列して相互に離間して位置している。したがって、付加情報パターンA’、B’を観察者の眼E が正面方向から観測した場合には、付加情報パターンA’とB’は重なるのではなく相互に分離した二重像として見える。 【0039】 そこで、図4のケースでは、可変情報5を斜めに入射する複製照明光6の入射側とは反対側に位置する端部近傍に配置して、その可変情報5の付加情報パターンA’、B’を斜めに入射する再生に係わる白色照明光23の入射側とは反対側に位置する端部近傍に記録すると、図8(a)に示すように、ホログラム面の前方に再生される第2の付加情報パターンB’は体積ホログラム22の画面のより中心に近い位置に再生され、ホログラム面に再生される第1の付加情報パターンA’は体積ホログラム22の画面のより周辺側の位置に再生される位置関係になる。 【0040】 そこで、付加情報パターンA’、B’を正面方向から観測した場合に、付加情報パターンA’とB’の間で、かつ、可能な限り付加情報パターンA’に近い位置で切断線33によって体積ホログラム22の周辺部22’を切り落とす(トリミングする)と、残りの体積ホログラム22からは付加情報パターンA’は見えず、ホログラム面の前方にのみ第2の付加情報パターンB’が再生されるようになり、付加情報の二重像は解消される。したがって、このようにしてトリミングした体積ホログラム22からは、白色照明光23を入射させると、体積ホログラム22の面近傍に立体被写体Oの像Iの像I’(被写体Oの表側のみの像)が再生されると共に、体積ホログラム22の前方の空間中に可変情報5と同一パターンの第2の付加情報パターンB’が固定されて再生され、観察者の眼Eの移動に伴って立体被写体Oの像I’と付加情報パターンB’の相互の位置は変化するものとなる。 【0041】 また、図7のケースでは、可変情報5を斜めに入射する複製照明光6の入射側に位置する端部近傍に配置して、その可変情報5の付加情報パターンA’、B’を斜めに入射する再生に係わる白色照明光23の入射側に位置する端部近傍に記録すると、図8(b)に示すように、ホログラム面の後方に再生される第2の付加情報パターンB’は体積ホログラム22の画面のより中心に近い位置に再生され、ホログラム面に再生される第1の付加情報パターンA’は体積ホログラム22の画面のより周辺側の位置に再生される位置関係になる。 【0042】 したがって、この場合も、付加情報パターンA’、B’を正面方向から観測した場合に、付加情報パターンA’とB’の間で、かつ、可能な限り付加情報パターンA’に近い位置で切断線33によって体積ホログラム22の周辺部22’を切り落とす(トリミングする)と、残りの体積ホログラム22からは付加情報パターンA’は見えず、ホログラム面の後方にのみ第2の付加情報パターンB’が再生されるようになり、付加情報の二重像は解消される。したがって、このようにしてトリミングした体積ホログラム22からは、白色照明光23を入射させると、体積ホログラム22の面近傍に立体被写体Oの像Iの像I’の像I”(被写体Oの表側のみの像)が再生されると共に、体積ホログラム22の後方の空間中に可変情報5と同一パターンの第2の付加情報パターンB’が固定されて再生され、観察者の眼Eの移動に伴って立体被写体Oの像I”と付加情報パターンB’の相互の位置は変化するものとなる。 …(中略)… 【実施例】 【0047】 以下、図面を参照にして本発明の付加情報の付いたホログラム記録フィルム、及び、その記録方法とその真偽判定方法の実施例を説明する。 【0048】 図6は、この実施例に用いる反射型体積ホログラム原版1の模式図である。反射型体積ホログラム原版1は、その上方(像I’の頭上方向)に追加情報(可変情報)5を記録するスペースが配置されている。 【0049】 反射型体積ホログラム原版1と複製するホログラム感光材料2の距離を10mmとして、ホログラム記録フィルム2(例えば、デュポン社製フォトポリマー、オムニデックス801フィルム)を反射型体積ホログラム原版1に透明板3を介して密着させ、透明保護フィルム4(例えば、ホログラム記録フィルム2の表面保護用PETフィルム)に追加情報5を天地方向の長さを5mmとして(例えば、インクジェットプリンターで)記録し、クリプトンレーザー(波長647.1nm)、レーザーダイオード励起ヤグレーザー(波長532nm)、アルゴンレーザ(波長457.9nm)を発振させ、これらを記録フィルム2側から複製照明光6として入射角45°で入射させて露光し、被複製用反射型ホログラム原版1からの反射回折光と入射光とをホログラム記録フィルム2中で干渉させてホログラム複製を行った。このとき、2つの付加情報パターンは天地方向に10mmずれて記録されていた。付加情報パターンの天地方向の長さは5mmのため、付加情報パターンA’(図7、図8(b))の天地方向の下部0mmの位置で切断除去することにより、2つの付加情報A’、B’が同時に再生されることはなく付加情報パターンB’のみが再生されるホログラム記録フィルムが作製された。 【0050】 得られたホログラム記録フィルムにおいて再生された付加情報パターンB’のホログラム面からの距離を測ったところ、d≒10mmであり、また、正面方向から見た場合の付加情報パターンB’の天地方向の下部のホログラム記録フィルムの上側端からの距離は、s≒10mmであり、さらに、そのホログラム記録フィルムに記録された立体物の像を歪 みなく再生させるための照明光の入射角は、α≒45であったので、s≦d・tanαの関係を満足することが分かり、真偽判定の結果、真のホログラム記録フィルムと判定された。 【0051】 以上、本発明の付加情報の付いたホログラム記録フィルム、及び、その記録方法とその真偽判定方法を実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されず種々の変形が可能である。なお、本発明による付加情報パターンB’は、ホログラム感光材料面に対し浮いた位置あるいは沈んだ位置に見える像なので、図1の透明板3の厚みによっては蛍光灯下では視認性が悪くぼけた像となるが、スポットライト下では視認性の良い潜像的な像として得ることができるものである。」 b 甲3発明 前記aから、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 [甲3発明] 「 白色照明光23の入射により立体被写体Oの像I’と平面付加情報としての付加情報パターンB’とを再生する体積ホログラム22からなるホログラム記録フィルムであって、(【0001】、【0006】、【0042】) 立体被写体Oの像I’は、体積ホログラム22の面近傍に再生され、付加情報パターンB’は、体積ホログラム22のホログラム面から10mmの距離に再生される(【0042】、【0050】) ホログラム記録フィルム。」 エ 甲1を主引用例とする場合の新規性、進歩性 (ア)対比 a 甲1発明の「ホログラム転写箔」は、本件特許発明1の「表示体」に相当し、甲1発明の「A」の再生像は、本件特許発明1の「第1対象物の像」に相当し、甲1発明の「B」「C」の再生像は、本件特許発明1の「第2対象物の像」に相当する。 また、甲1発明の「A」の再生像(第1対象物の像)及び「B」「C」の再生像(第2対象物の像)を含む画像は、「回折画像」として表示されるものである(「回折画像」は、本件特許明細書の【0007】において、「ホログラム又は回折格子によって表示される画像」と定義されている。)。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は「第1対象物の像と第2対象物の像とを含む画像を回折画像として表示する表示体であ[る]」点で一致する。 b 甲1発明の「A」の再生像(第1対象物の像)は、ホログラム転写箔界面の手前3mmの位置に再生され、甲1発明の「B」「C」の再生像(第2対象物の像)は、ホログラム転写箔界面の手前5mm、7mmの位置に再生されるものである。そして、「A」の再生像(第1対象物の像)に対応した表示物である「A」は、本件特許発明1の「第1立体物」と第1対象物に対応した像という点で一致し、「B」「C」の再生像(第2対象物の像)に対応した表示物である「B」「C」は、本件特許発明1の「第2立体物」と第2対象物に対応した像という点で一致し、ホログラム転写箔界面は、本件特許発明1の「表示面」に相当する。つまり、甲1発明では、「A」(第1立体物)は、表示面からの距離が3mmの位置に全体が復元され、「B」「C」(第2立体物)は、表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される。一方で、甲1発明の「A」、「B」及び「C」の再生像は平面状の物である。 したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、下記(a)の点で一致し、下記(b)の点で相違する。 (a)一致点 「画像から対象物の像を復元した場合、前記第1対象物に対応した第1の像は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、前記第2対象物に対応した第2の像は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元される」点。 (b)相違点 「前記第1対象物に対応した第1の像」及び「前記第2対象物に対応した第2の像」が、本件特許発明1では「立体物」であるのに対し、甲1発明では平面状の物である点。 c 甲1発明の「ホログラム構造」は、エンボス形成によるものであることから、表面レリーフホログラムといえる。この点、甲1には、表面レリーフホログラムは、再生像から回折格子ホログラムパターンを計算して形成するホログラムである計算機ホログラムとでき([0021])、表面レリーフホログラムでは、レリーフ層に回折格子構造の領域を設けることで、ホログラム構造が光を回折させる性質を発現すること([0024])が記載されている。このことから、甲1発明の「ホログラム構造」は、ホログラム且つ回折格子によって「A」の再生像(第1対象物の像)及び「B」「C」の再生像(第2対象物の像)を表示するものであるといえる。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は「画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される」点で一致するものといえる。 (イ)一致点、相違点 前記(ア)における対比の検討結果をまとめると、両者は、下記aの点において一致し、また、少なくとも下記bの点で相違する。 a 一致点 「 第1対象物の像と第2対象物の像とを含む画像を回折画像として表示する表示体であって、前記像から立体物を三次元復元した場合、前記第1対象物に対応した第1の像は、表示面からの距離が4mm以下の範囲内に全体が復元され、 前記第2対象物に対応した第2の像は、前記表示面からの距離が5mm以上の範囲内に全体が復元され、 前記画像が含む1以上の対象物の像はホログラムによって表示され、前記画像が含む他の1以上の対象物の像は回折格子によって表示される 表示体。」 である点。 b 相違点 「前記第1対象物に対応した第1の像」及び「前記第2対象物に対応した第2の像」が、本件特許発明1ではいずれも「立体物」であるのに対し、甲1発明では平面状の物である点。 (ウ)判断 前記相違点について検討するに、相違点に係る本件特許発明1の構成は、特許異議申立人が提出した甲1~甲19のいずれにも記載も示唆もされていない。また、相違点に係る構成を具備することが公知の技術、周知慣用技術又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。さらに、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成を具備する動機付けもないというべきである。 したがって、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ)本件特許発明2~16について 本件特許の特許請求の範囲の請求項2~16は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~16は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると上記イのとおり、本件特許発明1が、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~16も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 甲2を主引用例とする場合の新規性、進歩性について 甲2発明は、前記ウ(イ)bのとおりである。そして、甲2発明における「「5」の画像要素の像」及び「「0」の画像要素の像」はいずれも立体物ではなく平面状の物であるから、本件特許発明1と甲2発明を対比すると、両者は、少なくとも前記エ(イ)bの相違点で相違する。 そして、上記相違点についての判断は、前記エ(ウ)のとおりである。 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件特許発明2~16も、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 カ 甲3を主引用例とする場合 甲3発明は、前記ウ(ウ)bのとおりである。そして、甲3発明における「平面付加情報としての付加情報パターンB’」は立体物ではなく平面状の物であることは明らかであるから、本件特許発明1と甲3発明を対比すると、両者は、少なくとも前記エ(イ)bの相違点で相違する。 そして、上記相違点についての判断は、前記エ(ウ)のとおりである。 したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明及び甲1、甲2、甲4~19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件特許発明2~16も、甲3に記載された発明及び甲1、甲2、甲4~19に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 キ まとめ 上記エ~カのとおりであるから、前記申立理由4(新規性)、前記申立理由5(進歩性)は、採用すべき理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701008

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